JP5440889B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1の電動パワーステアリング装置では、複数のうちいずれかの電力変換器または巻線組の故障を検出したとき、故障した電力変換器を除く正常な電力変換器に指令する電流制限値を、「正常な電力変換器が故障検出以前に巻線組に供給していた電流制限値」と同等にする。例えば、2つの電力変換器のうち1つが故障した場合、1つの正常な電力変換器への電流制限値を、故障検出以前に2つの正常な電力変換器を対象として設定されていた合計の電流制限値の半分にして駆動を継続する。
これに対し、特許文献1の従来技術では、いずれかの電力変換器または巻線組が故障したときの制御について、車速との関係を考慮していない。したがって、車速に応じた適正なアシストトルクを提供するものとはなっていない。
複数系統の電力変換器は、複数の巻線組に対応して設けられ、モータに電力を供給する。
駆動回路は、指令されたアシスト電流に従い電力変換器を駆動する。
電力供給停止手段は、故障判定手段によって故障が判定されたとき、故障した系統の電力変換器への電源電力の供給を停止する。
マップ記憶手段は、操舵トルクとアシスト電流との関係であるT−I特性を決定したマップであって、少なくとも、「車速センサによる車速検出の正常時に用いられ車速に応じてT−I特性を決定した正常時車速感応マップ」を記憶する。
ここで、一系統故障用マップおよび車速検出故障用マップは、マップ記憶手段に予め記憶されている必要はなく、アシスト電流演算手段による演算過程において一時的に作成され、演算に用いられればよい。
アシスト電流指令手段は、アシスト電流演算手段が演算したアシスト電流演算値に基づき駆動回路にアシスト電流指令値を指令する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による電動パワーステアリング装置について、図1〜図4を参照して説明する。
制御部10は、マイコン50、駆動回路55、「電力変換器」としてのインバータ60、電流検出部70等を備え、モータ80に供給する電力を制御する。
本実施形態のモータ80は、三相ブラシレスモータであり、減速機89を正逆回転させる。減速機89は、モータ80の回転を減速しつつモータ80の出力トルクを増幅し、「アシストトルク」としてステアリング軸92に伝達する。
これにより、ステアリング軸92は、運転者自身がハンドル91を回す「操舵トルク」と電動パワーステアリング装置100によって得られる「アシストトルク」とが加算された「アシスト加算操舵トルク」によって回転する。
車速センサ93は、車速を検出し、CAN通信等の通信手段を通じて車速信号をマイコン50に出力する。トルクセンサ94は、ステアリング軸92に設けられ、運転者による操舵トルクを検出する。操舵角センサ95は、ステアリング軸92に設けられ、ハンドル91の操舵角度を検出する。なお、操舵角センサ95は無くてもよい。
また、モータ80には、モータ80の回転角度を検出するレゾルバまたは磁気抵抗素子等の回転角センサ85が設けられ、回転角信号をマイコン50に出力する。
駆動回路55は、マイコン50から指令されるアシスト電流指令値に基づいてインバータ60を駆動する。電流検出回路57は、電流検出部70が検出した各相の電流検出値を取得し、マイコン50にフィードバックする。マイコン50は、電流検出回路57からの電流検出値、及び回転角センサ85からの回転角信号等に基づいてフィードバック制御を行う。
インバータ60は、第1巻線組801に対応して設けられる第1系統インバータ601と、第2巻線組802に対応して設けられる第2系統インバータ602から構成される。以下、インバータ、及びそのインバータと対応する3相巻線組の組合せの単位を「系統」という。
電流検出部701、702は、インバータ601、602が巻線組801、802に供給する相電流を相毎に検出する。
「電力供給停止手段」としての電源リレー421、422は、バッテリ41からインバータ601、602への電源電力の供給を系統毎に停止可能である。
コンデンサ43は、バッテリ41と並列に接続され、電荷を蓄え、インバータ601、602への電力供給を補助したり、サージ電流などのノイズ成分を抑制したりする。
電流検出素子711〜713は、それぞれ、第1系統U、V、W相の巻線811〜813に通電される相電流を検出する。
駆動回路55は、MOS611〜616、621〜626のゲートに接続され、マイコン50の制御に基づいてスイッチング出力する。
仮に第1系統のインバータ601または巻線組801が故障したものとして説明する。具体的には、インバータ601を構成するMOS611〜616のショート故障もしくは断線故障、又は巻線組801のショート故障もしくは断線故障が起きた状況を想定する。
そして、制御部10は、第1系統インバータ601の電源ラインに設けられる電源リレー421を遮断する。これにより、例えば第1系統でショート故障が発生していた場合には、過剰な発熱を防止することができる。
一方、後述する他の実施形態では、アシスト電流指令手段52は、2つのアシスト電流演算値から1つを選択したり、一旦得られたアシスト電流指令値をさらに補正して出力したりする場合もある。
アシスト電流演算手段51は、操舵トルクTsおよび車速に基づいて、図4(a)に示す「正常時車速感応マップMR」を用いてアシスト電流Iaを演算する。正常時車速感応マップMRは、マイコン50のマップ記憶手段53に記憶され、想定しうる車速領域から選択された数個の代表車速における「操舵トルクTsとアシスト電流Iaとの関係」(以下、「T−I特性」という)を決定している。
本実施形態では、V0、V1、V2、V3の4つの代表車速におけるT−I特性が決定される。ここで、車速V0は、車速0km/hであり、車速V1、V2、V3は、例えば車速80km/h、120km/h、200km/hに相当する。
その結果、低速走行時には比較的大きな操舵アシストトルクが得られることで「ハンドルが軽く」なり、車両の取り回しに係る利便性が向上する。一方、高速走行時には操舵アシストトルクを抑制し、「ハンドルを重くする」ことで、走行安定性を確保する。
二系統のうち一系統が故障したとき、二系統がモータに供給していたアシスト電流を全て一方の正常系統が担おうとすると、正常系統に過剰な負荷がかかり異常発熱を招くおそれがある。そこで、本実施形態のアシスト電流演算手段51は、一系統が故障したとき、正常時に用いていた正常時車速感応マップMRとは異なる「一系統故障用マップMA」を用いて、アシスト電流Iaを演算する。
ここで、一系統故障用マップMA、及び、後述する車速検出故障用マップMBまたはMCは、マップ記憶手段53に予め記憶されている必要はなく、アシスト電流演算手段51による演算過程において一時的に作成され、演算に用いられればよい。
また、一系統故障用マップMAにおけるT−I特性は、第1電流制限値Im1に対応する最小操舵トルクTs未満の操舵トルク領域では、正常時車速感応マップMRにおけるT−I特性と同一であることを特徴とする。
図4(b)に示す車速検出故障用マップMBは、正常時車速感応マップMR上のT−I特性とは無関係の、言い換えれば車速とは独立したT−I特性Eを有する。図4(b)に例示したマップMBのT−I特性Eは、車速V1でのT−I特性(対比のため破線図示)に比べ、電流制限値Imbに至るまで、下側(低電流側)に膨らんだ曲線で描かれている。
このタイプの車速検出故障用マップMBを「独立型車速検出故障用マップ」という。
図16の左側のフローチャートに示すように、制御部10は、車速検出が正常であるか否かを判断する処理を実行する。なお、以下のフローチャートの説明で、記号Sは「ステップ」を示す。
制御部10は、車速センサ93による車速検出が正常であるか否か判断し(S90)、正常の場合(S90:YES)、車速センサ93が検出した現在車速Vpを制御車速Vcとする(S91)。一方、車速検出が故障している場合(S90:NO)には、仮車速Vxを制御車速Vcとする(S92)。
ここで、車速検出が故障している場合には、例えば仮車速Vxが車速V1相当であるとすると、車速感応マップMRのうち車速V1でのT−I特性の部分だけが実質的に演算に用いられることとなる。すなわち、車速感応マップMRの一部が抽出されたものが、上述の「抽出型車速検出故障用マップMC」に該当する。
仮に、車速故障用検出マップMBまたはMCを用いてアシスト電流Iaを演算すると、現在車速Vpが仮車速Vxより小さい場合には、アシスト電流Iaが正常時より低く抑えられ、低速領域での車両の取り回し性に係る利便性が損なわれるおそれがある。また、現在車速Vpが仮車速Vxより大きい場合には、アシスト電流Iaが正常時より大きくなり、高速領域での走行安定性が損なわれるおそれがある。
これにより、アシスト電流演算手段51が用いる一系統故障用マップMAは、少なくともアシスト電流制限値について、車速検出故障用マップMBまたはMCにおける電流制限値が反映される。車速検出故障用マップMBまたはMCは、車速検出ができなくなった状況で、どの車速領域についてもある程度適正なアシストトルクを確保できるように作られている。そのため、少なくともその電流制限値が反映されたマップを用いることで、車速に応じた適正なアシストトルクを確保することができる。
例えば、電流制限値Imb、Imcが二系統正常時の電流制限値Im0の半分以下である場合、正常系統への最大電流負荷は、故障前と同等以下に維持されるため、特にインバータ60やモータ80の発熱を低減することができる。
一方、電流制限値Imb、Imcが二系統正常時の電流制限値Im0の半分を若干超える場合であっても、駆動回路や放熱手段等の比較的軽微な変更によって対応可能である。
これにより、正常系統への電流負荷が問題とならない操舵トルク領域では、正常時と同様、車速に応じたアシスト電流Iaを演算することができるため、低速領域での利便性および高速領域での走行安定性を確保することができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図5、図6を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、一系統故障用マップMAにおける電流制限値の設定が異なる。
まず、本実施形態のキーワードである「アシスト加算操舵トルク」について説明する。
下記のように記号を定義する。[ ]内は単位である。
Ts:操舵トルク[Nm]
Ta:アシストトルク[Nm]
Tsa:アシスト加算操舵トルク[Nm]
Ia:アシスト電流[A]
η:減速機89の効率[−]
Z:減速機89の減速比[−](=モータ80の回転数/ステアリング軸92の回転数)
M:モータトルク定数[Nm/A]
K:総括定数(=η×Z×M)[Nm/A]
Ta =η×Z×M×Ia=K×Ia ・・・(式1)
Tsa=Ts+Ta ・・・(式2)
アシストトルクTaは、アシスト電流Iaによって発生したモータ80の出力トルクが減速機89によって増幅され、ステアリング軸92に伝達されるトルクである。また、アシスト加算操舵トルクTsaは、運転者による操舵トルクTsとアシストトルクTaとを加算したトルクである。第2実施形態では、このアシスト加算操舵トルクに着目する。
点P1、すなわち、「操舵トルクTm1、車速V1」の点に対応する「最大アシスト加算操舵トルクTsa1」は、式1にTm1、Im1を代入し、式3のように計算される。
Tsa1=Tm1+K×Im1 ・・・(式3)
Tsa2’=Tm2+K×Im1 ・・・(式4)
図6に点P2で示すように、操舵トルクTm2に対応する電流制限値として第2電流制限値Im2を設定する。この第2電流制限値Im2は、点P2に対応する最大アシスト加算操舵トルクTsa2(式5)が、点P1に対応する最大アシスト加算操舵トルクTsa1と等しくなるように(式6)算出される。式5、式6より、式7が導かれる。
Tsa2=Tm2+K×Im2 ・・・(式5)
Tsa2=Tsa1=Tm1+K×Im1 ・・・(式6)
Im2=Im1+(Tm1−Tm2)/K ・・・(式7)
これより、点P2と点P1とを結ぶ直線の傾きは、(−1/K)となる。
以下の実施形態において一系統故障用マップMAの「第1電流制限値Im1」と示すところは、いずれも「第2電流制限値Im2」に置き換えることができる。
次に、本発明の第3実施形態について、図7、図8を参照して説明する。
第3実施形態は、制御部10が、2つのアシスト電流演算手段によって演算された2つのアシスト電流演算値のうち適切な方を選択する「選択処理」を実行する。なお、2つのアシスト電流演算手段とは、必ずしも物理的に2つの演算回路を意味するわけではなく、1つの演算回路が2とおりの演算手段として機能してもよい。
第2アシスト電流演算手段512は、独立型車速検出故障用マップMBを用いて、現在車速Vpとは無関係に第2アシスト電流演算値Ic2を演算する。なお、独立型車速検出故障用マップMBに代えて抽出型車速検出故障用マップMCを用いてもよい。
なお、上述の繰り返しになるが、一系統故障用マップMAや車速検出故障用マップMB、MCは、マップ記憶手段53に予め記憶されている必要はなく、アシスト電流演算手段511、512による演算過程において一時的に作成され、演算に用いられればよい。
この処理では、アシスト電流指令手段52が第1アシスト電流演算値Ic1及び第2アシスト電流演算値Ic2を取得し(S10)、それぞれの絶対値を比較する(S30)。
第1アシスト電流演算値Ic1の絶対値が第2アシスト電流演算値Ic2の絶対値以上であれば(S30:YES)、第1アシスト電流演算値Ic1をアシスト電流指令値I*として出力する(S31、S40)。一方、第1アシスト電流演算値Ic1の絶対値が第2アシスト電流演算値Ic2の絶対値より小さければ(S30:NO)、第2アシスト電流演算値Ic2をアシスト電流指令値I*として出力する(S32、S40)。
第3実施形態では、アシスト電流指令手段52は、「第1アシスト電流演算手段511による一系統故障用マップMAに基づく第1アシスト電流演算値Ic1」と、「第2アシスト電流演算手段512による車速検出故障用マップMBに基づく第2アシスト電流演算値Ic2」とのうち、絶対値が大きい方のアシスト電流演算値を選択してアシスト電流指令値I*とする「選択処理」を実行する。
これにより、特に低速走行領域において、車両の取り回し性に係る利便性が向上する。
次に、本発明の第4実施形態について、図9、図10を参照して説明する。
第4実施形態では、第3実施形態の「選択処理」に代えて、特に高速領域での走行安定性に配慮した「高速時車速感応式選択処理」を実行する。
なお、車速センサ93は正常であるため、制御車速Vcは、現在車速Vpに一致する。
この処理では、アシスト電流指令手段52が第1アシスト電流演算値Ic1及び第2アシスト電流演算値Ic2を取得した(S10)後、まず、現在車速Vpと車速検出故障用マップMCにおける仮車速Vxとを比較する(S20)。
現在車速Vpが仮車速Vx以上であれば(S20:YES)、第1アシスト電流演算値Ic1をアシスト電流指令値I*として出力する(S25、S40)。一方、現在車速Vpが仮車速Vxより小さければ(S20:NO)、第3実施形態による「選択処理」を実行してアシスト電流指令値I*を出力する(S30、S31、S32、S40)。
したがって、現在速度Vpが仮車速Vxより大きい高速領域では、車速感応式の一系統故障用マップMAに基づく第1アシスト電流演算値Ic1がアシスト電流指令値I*として優先して採用される。これにより、高速領域において車速に応じた適正なアシストトルクが確保されるため、走行安定性が向上する。
次に、本発明の第5、第6実施形態について、図11〜図14を参照して説明する。
第5、第6実施形態では、インバータ60やモータ80の発熱の低減に配慮した「アシスト電流制限処理」を実行する。
こうして得られたアシスト電流指令値I*に対し、アシスト電流指令手段52は、第5実施形態では「低車速時アシスト電流制限処理」を、第6実施形態では「緩操舵時アシスト電流制限処理」を実行する。そして、以下に説明する一定の条件に該当する場合、アシスト電流指令値I*を補正したアシスト電流指令値I*を駆動回路55に指令する。
この処理では、アシスト電流指令値I*を取得する(S50)とともに、車速センサ93が検出した現在車速Vpが車速閾値Vt以下であるか否かを判断する(S51)。
現在車速Vpが車速閾値Vtより大きいとき(S51:NO)、又は、取得したアシスト電流指令値I*がアシスト電流基準制限値IL以下のとき(S55:NO)には、アシスト電流指令値I*をそのまま出力する(S70)。
したがって、正常系統のインバータ60やモータ80には、二系統正常時よりも大きな電流負荷がかかることはない。これにより、停車時や低速走行時に、無用な通電によるインバータ60やモータ80の発熱を低減することができる。こうしてインバータ60やモータ80の発熱を低減することで、異常発熱による電動パワーステアリング装置の過熱保護機能が働きにくくなり、長時間安定した操舵アシストトルクを提供することができる。
なお、操舵角速度ωpは、操舵角センサ95によって検出する形態に限らず、回転角センサ85の検出値を換算してもよい。
次に、本発明の第7実施形態について、図15を参照して説明する。第7実施形態は、第3または第4実施形態と第5または第6実施形態との組合せである。すなわち、アシスト電流指令手段52は、前半部分で「選択処理」または「高速時車速感応式選択処理」を実行し、後半部分で「低車速時アシスト電流制限処理」または「緩操舵時アシスト電流制限処理」を実行する。
このように、どの車速領域でのアシストトルクの適正さを優先するかによって、各処理を最適に組み合わせて実行することができる。
(ア)上記の実施形態の電動パワーステアリング装置は、二系統のインバータ601、602および巻線組801、802を備え、そのうち一系統が故障し、残り一系統の正常系統によってモータ80を駆動する場合について説明した。
その他の実施形態では、三系統以上のN系統(Nは整数)のインバータおよび巻線組を備える電動パワーステアリング装置に本発明を適用してもよい。この場合、一系統が故障し、残り(N−1)系統の正常系統によってモータ80を駆動する場合が本発明の対象となる。そして、第5〜第8実施形態におけるアシスト電流基準制限値ILは、「正常時の電流制限値Im0の(N−1)/N」として読み替えればよい。
(ウ)「電力変換器」は、インバータに限らず、DC/DCコンバータ等であってもよい。また、モータは、ブラシレスモータ以外のモータであってもよい。
51・・・アシスト電流演算手段、 52・・・アシスト電流指令手段、
53・・・マップ記憶手段、 54・・・故障判定手段、
55・・・駆動回路、
60、601、602・・・インバータ(電力変換器)、
80・・・モータ、 801、802・・・巻線組、
92・・・ステアリング軸、 93・・・車速センサ、
94・・・トルクセンサ、 100・・・電動パワーステアリング装置、
MA・・・一系統故障用マップ、MB、MC・・・車速検出故障用マップ、
MR・・・正常時車速感応マップ。
Claims (7)
- 車速を検出する車速センサ(93)と、
運転者による操舵トルクを検出するトルクセンサ(94)と、
複数の巻線組(801、802)を有し、通電によりトルクを出力するモータ(80)と、
前記モータの出力回転を減速しつつ前記モータの出力トルクを増幅し、アシストトルクとしてステアリング軸(92)に伝達する減速機(89)と、
前記モータの回転を制御する制御部(10)と、
を備え、
前記制御部は、
複数の前記巻線組に対応して設けられ、前記モータに電力を供給する複数系統の電力変換器(601、602)と、
指令されたアシスト電流に従い前記電力変換器を駆動する駆動回路(55)と、
複数系統の前記電力変換器のうちいずれか一系統の前記電力変換器または対応する前記巻線組が故障したことを判定する故障判定手段(54)と、
前記故障判定手段によって故障が判定されたとき、故障した系統の前記電力変換器への電源電力の供給を停止する電力供給停止手段(421、422)と、
操舵トルクとアシスト電流との関係であるT−I特性を決定したマップであって、少なくとも、前記車速センサによる車速検出の正常時に用いられ車速に応じてT−I特性を決定した正常時車速感応マップ(MR)を記憶するマップ記憶手段(53)と、
前記トルクセンサが検出した操舵トルク、及び前記車速センサが検出した車速に基づいてアシスト電流を演算するアシスト電流演算手段であって、前記故障判定手段によって故障が判定されたとき、故障した系統を除く正常系統の前記電力変換器を対象として用いる一系統故障用マップ(MA)におけるアシスト電流制限値である第1電流制限値を、前記車速センサによる車速検出の故障時に用いられ車速と無関係にT−I特性を決定した車速検出故障用マップ(MB、MC)におけるアシスト電流制限値と同一の値に設定するアシスト電流演算手段(51、511、512)と、
前記アシスト電流演算手段が演算したアシスト電流演算値に基づき前記駆動回路にアシスト電流指令値を指令するアシスト電流指令手段(52)と、
を有することを特徴とする電動パワーステアリング装置(100)。 - 前記第1電流制限値をIm1、前記車速検出故障用マップにおけるアシスト電流制限値に対応する最小操舵トルクをTm1、前記一系統故障用マップにおける前記第1電流制限値に対応する最小操舵トルクをTm2、前記モータおよび前記減速機の特性に基づく定数をK、第2電流制限値をIm2とすると、
前記アシスト電流演算手段は、下式
Im2=Im1+(Tm1−Tm2)/K
で算出される第2電流制限値を設定し、前記一系統故障用マップにおけるアシスト電流制限値を、前記第1電流制限値に代えて前記第2電流制限値とすることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記一系統故障用マップにおけるT−I特性は、前記第1電流制限値または前記第2電流制限値に対応する最小操舵トルク未満の操舵トルク領域では、前記正常時車速感応マップにおけるT−I特性と同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記制御部は、前記故障判定手段によって故障が判定されたとき前記正常系統へ供給するアシスト電流について、前記一系統故障用マップを用いてアシスト電流を演算する第1アシスト電流演算手段(511)、及び、前記車速検出故障用マップを用いてアシスト電流を演算する第2アシスト電流演算手段(512)を有し、
前記アシスト電流指令手段は、
前記第1アシスト電流演算手段による第1アシスト電流演算値と前記第2アシスト電流演算手段による第2アシスト電流演算値とのうち絶対値が大きい方のアシスト電流値を選択して前記アシスト電流指令値とする選択処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記第2アシスト電流演算手段が用いる前記車速検出故障用マップは、前記正常時車速感応マップにおける所定の仮車速でのT−I特性を抽出して得られたマップであり、
前記アシスト電流指令手段は、
前記車速センサが検出した現在車速と前記仮車速とを前記選択処理に先だって比較し、
現在車速が前記仮車速以上であるとき前記第1アシスト電流演算値を前記アシスト電流指令値とし、
現在車速が前記仮車速より小さいとき前記選択処理を実行することを特徴とする請求項4に記載の電動パワーステアリング装置。 - N系統(Nは2以上の整数)の前記電力変換器または対応する前記巻線組のうち一系統の故障が前記故障判定手段によって判定されたとき、
前記アシスト電流指令手段は、
現在車速が所定の車速閾値以下であって、且つ、指令された前記アシスト電流指令値が前記正常時車速感応マップにおけるアシスト電流制限値の(N−1)/Nに相当するアシスト電流基準制限値を超える場合、
前記アシスト電流指令値を前記アシスト電流基準制限値に補正することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。 - N系統(Nは2以上の整数)の前記電力変換器または対応する前記巻線組のうち一系統の故障が前記故障判定手段によって判定されたとき、
前記アシスト電流指令手段は、
前記ステアリング軸の操舵角速度が所定の操舵角速度閾値以下であって、且つ、指令された前記アシスト電流指令値が前記正常時車速感応マップにおけるアシスト電流制限値の(N−1)/Nに相当するアシスト電流基準制限値を超える場合、
前記アシスト電流指令値を前記アシスト電流基準制限値に補正することを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
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