本発明の第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明の製造対象としている「積層型電子部品」には、積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタなどの積層型電子部品が含まれる。以下、積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを一例に挙げて説明する。
先ず、積層型電子部品製造装置について説明する。
図1に示すように、積層型電子部品製造装置10は、主として、セラミックシートS(セラミックグリーンシート)を形成し当該セラミックシートSを搬送するコーティング搬送ロール12(シート搬送部材)と、コーティング搬送ロール12で搬送されてきたセラミックシートSを巻き取ることにより転写させる転写ロール14(シート転写部材)と、転写ロール14の外周面に転写されたセラミックシートSを所定の長さに切断する切断機構16(シート切断部材)と、転写ロール14に転写されかつ切断機構16により所定の長さに切断されたセラミックシートSの切断片STを積層してセラミックシートSの積層構造体を形成する平板状の積層ステージ18(シート積層部材)と、を有している。コーティング搬送ロール12の表面(外周面)には離型処理が施されている。
コーティング搬送ロール12の周囲には、コーティング搬送ロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段20(成膜形成部)と、成膜手段20にセラミックスラリーを供給するための給液手段22と、コーティング搬送ロール回転方向下流側に位置しコーティング搬送ロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置26と、上記した転写ロール14と、が配置されている。
転写ロール14の近傍には、セラミックシートSを所定の長さに切断するための切断機構16と、切断機構16で所定の長さに切断されたセラミックシートSの切断片STが転写されて積層する積層ステージ18と、が配置されている。
さらに、積層ステージ18の近傍には、積層ステージ18に転写されたセラミックシートSの切断片STに対して電極回路24(図2及び図3参照)を形成するための電極回路形成手段28(電極回路形成部)と、電極回路24の形成によりセラミックシートSの表面に発生する段差部34に誘電体塗膜36を形成するための誘電体塗膜形成手段30(誘電体塗膜形成部)と、電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥させるための乾燥硬化装置32と、が配置されている。
具体的に、コーティング搬送ロール12は、表面に離型処理が施された金属などの剛体ロール(円柱状あるいは円筒状)で構成されている。コーティング搬送ロール12は、図示しない駆動源により回転駆動されるように構成されている。なお、離型処理とは、例えば、フッ素系めっき処理などが該当する。
積層ステージ18は、例えば、剛体平板が用いられる。ただし、剛体平板に限られるものではなく、円筒状あるいは円柱状のスタッキングロールを使用してもよい。スタッキングロールを使用する場合には、セラミックシートSの切断片STを外周面上に巻き付けて積層する。また、積層ステージ18は、図示しない駆動機構により直線上(水平方向)に水平移動するように構成されている。特に、積層ステージ18は、セラミックシートSの切断片STが転写ロール14から転写される転写ポジション19と、セラミックシートSの切断片ST上に電極回路24及び誘電体塗膜36を形成する印刷ポジション29と、の間を水平方向に往復移動する。
転写ロール14は、吸着(吸引、静電吸着あるいは粘着)などの手段により、コーティング搬送ロール12からセラミックシートSを受け取り、受け取ったセラミックシートSを積層ステージ18に供給する機能を有している。
転写ロール14は、例えば、外周面(表面)に弾性体を取り付けた回転可能な金属ロールで構成されている。この転写ロール14は、図示しない駆動装置により、移動可能に設けられている。詳細には、転写ロール14は、コーティング搬送ロール12の所定の円弧に沿って移動し、かつ、コーティング搬送ロール12側と積層ステージ18側との間を自在に移動することができるように構成されている。具体的には、転写ロール14は、初期位置Aが決定されており、この初期位置Aからコーティング搬送ロール12の円弧に沿って所定の円弧長の距離となる離脱位置Bまで移動する。さらに、転写ロール14は、離脱位置Bから積層ステージ18に接触可能な転写位置Cまで移動することができる。なお、転写ロール14が転写位置Cまで移動した後は、所定の経路をたどって初期位置Aまで移動することができるが、転写位置Cから初期位置Aまで直線経路にて移動すると時間的に有利である。
セラミックシートSをコーティング搬送ロール12から転写ロール14へ確実に転写するためには、転写ロール14をコーティング搬送ロール12に適度に押し付けながら転写するのが好ましい。仮に、コーティング搬送ロール12と転写ロール14の間に空間があると、搬送中のセラミックシートSが他の部材に支持されていない区間をつくることになり、その区間でシート破れの起きる可能性がある。そこで、セラミックシートSの支持されていない区間をつくらないように、転写ロール14をコーティング搬送ロール12に適度に押し付けている。押し付けるとき機械的なこじれが生じないように、転写ロール14の表面は弾性体となっている。
また、積層ステージ18上のセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。転写ロール14がセラミックシートSを保持する力は、コーティング搬送ロール12がセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに積層ステージ18がセラミックシートSを保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSはコーティング搬送ロール12から剥離されて転写ロール14に保持され、その後、積層ステージ18へ転写される。
転写ロール14は、セラミックシートSを吸引して剥離する真空引きの吸引ロールでもよい。このとき、転写ロール14は、セラミックシートSを吸着する部位と吸着しない部位とを制御するように構成されることが好ましい。コーティング搬送ロール12からセラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する転写ロール14の所定部位に吸着機能をもたせ、受け取ったセラミックシートSを積層ステージ18に転写するときにセラミックシートSに接触する転写ロール14の所定部位に非吸着領域をもたせることにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。
成膜手段20としては、例えば、ダイコータ、ドクターブレード、ロールコータなどが適宜採用される。なお、コーティング搬送ロール12の外周面に形成されるセラミックシートSの膜厚をより薄くするためには、ダイコータに上流減圧機構を設けることが好ましい。成膜手段20からコーティング搬送ロール12に対して連続的(非間欠的)にセラミックスラリーを塗布して、セラミックシートSが形成される。このように、同一のコーティング搬送ロール12に対して、セラミックスラリーが連続的に供給される。
給液手段22としては、例えば、ギヤポンプが採用される。なお、給液手段22は、ギヤポンプに限られるものではなく、シリンダ型ディスペンサ、ダイヤフラムポンプなど適宜採用してもよい。
切断機構16は、セラミックシートSを切断できるものであれば、はさみ状のものやナイフ状のものなど形状や構成は特に問われない。ただし、転写ロール14にセラミックシートSが転写された後、セラミックシートSを切断するため、転写ロール14と一緒に移動(連動)することが好ましい。これにより、切断機構16は、転写ロール14に取り付けられており、転写ロール14と共に移動することができるように構成しておくことが好ましい。なお、切断機構16は、転写ロール14とは別に設けてもよく、この場合には、転写ロール14の離脱位置Bの近傍に配置されていることが好ましい。
電極回路形成手段28としては、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。電極回路形成手段28は、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の電極回路24を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷など手段は問わない。また、電極回路形成手段28で使用される電極材インクは、例えば、有機溶媒にNi粉末(ニッケル粉末)と樹脂を溶融分散させたものが使用される。UV硬化性の樹脂にNi粉末を分散させたものでもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
誘電体塗膜形成手段30としては、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。誘電体塗膜形成手段30は、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の誘電体塗膜を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、ロータリースクリーン印刷など手段は問わない。また、誘電体塗膜形成手段30で使用される誘電体材料は、セラミックスインク、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂を溶融分散させたものである。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
乾燥硬化装置26としては、例えば、熱風により乾燥する方法やコーティング搬送ロール12の外周面を加熱する方法が採用される。具体的には、乾燥硬化装置26は、乾燥炉(電熱乾燥炉あるいは減圧乾燥炉)が用いられる。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置26は、コーティング搬送ロール12上に塗布されたセラミックスラリーを乾燥または硬化させてセラミックシートSを形成するためのものである。
乾燥硬化装置32としては、例えば、熱風により乾燥する方法や積層ステージ18の表面を加熱する方法が採用される。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置32は、積層ステージ18上のセラミックシートSに形成された電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥または硬化させるためのものである。
セラミックスラリーとしては、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂成分を溶融分散させたものが採用される。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。なお、溶媒は、水系でもよい。
次に、積層型電子部品製造装置10を用いたセラミックシートSの積層構造体の製造方法について説明する。なお、転写ロール14は、初期位置Aに待機している。
離型処理を施したコーティング搬送ロール12を所定の速度で回転させ、この外周面にセラミックスラリーを成膜手段20により塗布する。なお、セラミックスラリーの供給は、給液手段22であるギヤポンプを用いて行われる。そして、コーティング搬送ロール12上でセラミックスラリーを、乾燥硬化装置26を用いて乾燥し固化させる。ここで、乾燥硬化装置26によるセラミックスラリーの乾燥には、所定の温度の熱風を用いる。コーティング搬送ロール12の外周面が適温となるように別途温度調整する。なお、これらの温度は、セラミックシートSの材料により適宜調整する。このようにして、成膜手段16及び給液手段18によって、セラミックスラリーがコーティング搬送ロール12に対して連続的に供給され、コーティング搬送ロール12上でセラミックシートSが形成され続ける。
次に、所定のタイミングで、転写ロール14が初期位置Aから離脱位置Bに向かってコーティング搬送ロール12の円弧上を移動する。このとき、転写ロール14は、回転しながらコーティング搬送ロール12上のセラミックシートSを巻き取っていく。このように、転写ロール14は、自身で回転しながら、コーティング搬送ロール12の回転方向に対して逆方向に向かってコーティング搬送ロール12上の円弧に沿って移動する。これにより、転写ロール14の外周面にコーティング搬送ロール12上のセラミックシートSが転写される。
転写ロール14の外周面の円弧にわたってセラミックシートSが巻き付けられて転写されたときに、切断機構16によりセラミックシートSが切断される。これにより、転写ロール14の外周面に転写されたセラミックシートSとコーティング搬送ロール12上のセラミックシートSとが分離する。セラミックシートSが切断された後、転写ロール14は、離脱位置Bから離れ、積層ステージ18側に向けて移動する。このとき、転写ロール14は、セラミックシートSの切断端部が下方に向くように回転しながら積層ステージ18に向けて移動する。
転写ロール14が積層ステージ18の転写位置Cに到達したときに停止する。そして、転写ロール14の外周面に転写されているセラミックシートSの切断片STの一部と所定の圧力で接触する。転写ロール14がセラミックシートSの切断片STの一部と所定の圧力で接触し、積層ステージ18が水平移動する。このとき、転写ロール14は、積層ステージ18の駆動力を受けて回転する。このように、積層ステージ16が水平移動し、かつ積層ステージ16が転写ロール14に転写されたセラミックシートSの切断片STに接触している間、転写ロール14が回転し続けることになる。この結果、転写ロール14の外周面に転写されていたセラミックシートSの切断片STは、全て、積層ステージ18の平面に転写される。なお、転写ロール14は図示しない駆動モータに連結し、積層ステージ18の水平移動と同期させながら回転させてもよい。
転写されていたセラミックシートSの切断片STが転写ロール14から積層ステージ18に転写された後、転写ロール14は、所定の経路をたどって初期位置Aに戻り、再度、コーティング搬送ロール12上のセラミックシートSを転写する。
積層ステージ18にセラミックシートSの切断片STが転写された後、積層ステージ18が印刷ポジション29に移動する。この印刷ポジション29には、電極回路形成手段28と誘電体塗膜形成手段30が配置されている。積層ステージ18が印刷ポジション29に移動したときに、電極回路形成手段28からセラミックシートSの切断片STに対して電極材インクが塗布され、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24が印刷される。また、セラミックシートSの切断片STに形成された電極回路24によって発生した段差部(凹部)34に対して、誘電体塗膜形成手段30(例えば、インクジェット印刷)からセラミック材料(誘電体材料)が塗布され、所定の図形パターンの誘電体塗膜36が印刷される。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。
ここで、誘電体塗膜36の形成位置は、セラミックシートS上の電極回路24間に形成された凹部になる。すなわち、図2に示すように、セラミックシートS上に電極回路24が形成されると、セラミックシートS上が凸凹になり、いわゆる段差部34が発生する。図3に示すように、この電極回路24間に形成された段差部34に、誘電体塗膜36を印刷することにより、段差部(凹部)34が低減され、セラミックシートSの表面が平坦状になる。
次に、電極回路24及び誘電体塗膜36の印刷後に、乾燥硬化装置32から電極回路24及び誘電体塗膜36に対して所定温度の温風が吹き付けられ、電極回路24及び誘電体塗膜36が乾燥する。
積層ステージ18上のセラミックシートSの切断片STに電極回路24及び誘電体塗膜36が形成された後、積層ステージ18は、転写ポジション19に水平移動する。そして、転写位置に移動してきた転写ロール14から新たなセラミックシートSの切断片STが、電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されたセラミックシートSの切断片STの上面に転写される(上積みされる)。その後、転写ロール14は、初期位置に移動し、転写ロール14上にコーティング搬送ロール12上のセラミックシートSが転写される。また、積層ステージ18は、印刷ポジション29に移動し、上積みされた新たなセラミックシートSの切断片STに電極回路24及び誘電体塗膜36が形成される。ここで、電極回路24の形成工程では、積層ステージ18に転写されるセラミックシートSの切断片STが積層されていったときに、各層(各周)ごとに電極回路24が対向電極となるように図形パターン及び形状を変えて電極印刷が行われる。また、誘電体塗膜36の形成工程では、各層(各周)ごとに誘電体塗膜36が隣接する電極間を埋めるように図形パターン及び形状を変えて印刷が行われる。上記各工程の繰り返しにより、連続して、セラミックシートSの切断片STが次々に積層され、さらに、電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されて、セラミックシートSの積層構造体が形成されていく。
なお、積層ステージ18に形成されたセラミックシートSの積層構造体が積層ステージ18から取り外され、ダイサーカットによりチップ状に切断される。その後、焼成、電極回路(外部電極回路)が形成されるなどして通常の製造プロセスを経て、積層セラミックコンデンサが製造される。
第1実施形態の積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法によれば、セラミックシートSの積層構造体を連続で形成することができるので、間欠形成の装置を利用してセラミックシートSの形成を行う設備と比較して、設備が安価で小型にすることができ、セラミックシートSの製造工程の高速化が容易になる。これにより、セラミックシートSの積層構造体の製造効率を高めることができる。また、セラミックシートSの形成での間欠動作が不要になる分、消費エネルギーが小さくなり、セラミックシートSの品質(膜厚バラツキが低減、シートスジが低減、電極形状の精度が良くなるなど)が良くなる。この結果、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる。
特に、転写ロール14は、コーティング搬送ロール12の回転方向に対して逆方向に向かってコーティング搬送ロール12上の円弧に沿って移動する。転写ロール14の初期位置をコーティング搬送ロール12の回転方向下流側に設定しておくことにより、転写ロール14は、積層ステージ18にセラミックシートSの切断片STを転写させた後、上記初期位置Aに戻り、再度、離脱位置Bまで移動するだけで、コーティング搬送ロール12上に残っているセラミックシートSを巻き付けることができる。転写ロール14がセラミックシートSを迎えに行きながら受け取ることにより、迎えにいった時間とセラミックシートSの送り時間との差に相当する余裕時間ができ、その余裕時間を積層ステージ18への積層時間にあてることができる。その結果、連続搬送されてきたセラミックシートSの動きを止めずに、セラミックシートSの切断片STを積層ステージ18へ積層することができる。また、コーティング搬送ロール12の回転を停止させることなく、コーティング搬送ロール12上のセラミックシートSを全て(コーティング搬送ロール12上にセラミックシートSを残すことなく)転写ロール14上に転写させることができる。この結果、コーティング搬送ロール12上のセラミックシートSの形成効率を上げることができる。ひいては、セラミックシートSの積層構造体の形成効率を上げることができる。
また、図2及び図3に示すように、セラミックシートSに電極回路24を形成すると、電極回路24間に凹部が生じ、セラミックシートS上に段差部(凹部)34が発生するが、この段差部34に、誘電体塗膜36を印刷することにより、段差部34を無くすことができる。このように、電極回路間の段差部34を誘電体塗膜36で埋めることにより、セラミックシートSの積層数が増加した場合に発生し易くなる、積みズレや接着不良を防止することができ、また、段差部34が存在することに起因する構造欠陥を抑制することができる。この結果、製造される電子部品の品質不良を防止することができる。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。
特に、電気回路24及び誘電体塗膜36が積層ステージ18上で略同じタイミングで形成されることにより、電気回路24及び誘電体塗膜36の位置精度を高めることができる。これにより、CCDカメラなどの検知手段を別途設置しなくても、高精度のセラミックシートSの積層構造体を製造することができる。
また、セラミックシートSが剛体であるコーティング搬送ロール12上に形成され、シート成形からシート積層工程までをコーティング搬送ロール12や転写ロール14でシート面を支持されながら搬送するので、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、セラミックシートSの破れや傷つきの発生を抑制することができる。この結果、薄くて低強度のセラミックシートSのハンドリング性を高めることができる。また、積層ステージ18が剛体である金属で構成されているため、セラミックシートSの切断片STの積層工程において、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、位置ずれ(積層ズレ)することがない。
また、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成にインクジェットなどの無版印刷工法を用いることにより、セラミックシートSの各層毎において異なる電極パターンを備えた電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能である。特に、セラミックシートSの積層の進行に伴いセラミックシートSの歪みや積層ステージ18の大きさが変化しても、電極回路24及び誘電体塗膜36のパターンや形成位置を自在に変更することができるため、電極回路24間及び誘電体塗膜36間のピッチ(間隔)を適宜調整して、位置ズレのない電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能になる。
なお、第1実施形態では、コーティング搬送ロール12が本発明の「シート搬送部材」に対応し、また、積層ステージ18が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、転写ロール14が本発明の「シート転写部材」に対応し、切断機構16が本発明の「シート切断部材」に対応する。さらに、電極回路形成手段28が本発明の「電極回路形成部」に対応し、また、誘電体塗膜形成手段30が本発明の「誘電体塗膜形成部」に対応する。
次に、本発明の第2実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図2、図3及び図4に示すように、第2実施形態の積層型電子部品製造装置は、主として、表面(外周面)に離型処理が施されセラミックシートS(セラミックグリーンシート)を形成し当該セラミックシートSを搬送するコーティング搬送ロール12(シート搬送部材)と、外周面上でセラミックシートSに電極回路24及び誘電体塗膜36が形成される印刷搬送ロール38と、コーティング搬送ロール12で搬送されてきたセラミックシートSを印刷搬送ロール38に供給する中間ロール40と、印刷搬送ロール38上のセラミックシートSを受け取り搬送ロール44に供給する中間ロール42と、電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されたセラミックシートSが搬送される受け取り搬送ロール44と、受け取り搬送ロール44上のセラミックシートSを巻き取り転写させる転写ロール14(シート転写部材)と、転写ロール14の外周面に転写されたセラミックシートSを所定の長さに切断する切断機構16(シート切断部材)と、転写ロール14に転写されかつ切断機構16により所定の長さに切断されたセラミックシートSの切断片STを積層してセラミックシートSの積層構造体を形成する平板状の積層ステージ18(シート積層部材)と、を有している。
コーティング搬送ロール12の周囲には、成膜手段20と、給液手段22と、乾燥硬化装置26と、中間ロール40と、が配置されている。
印刷搬送ロール38の周囲には、電極回路形成手段28(電極回路形成部)と、誘電体塗膜形成手段30と、乾燥硬化装置32と、が配置されている。
転写ロール14の近傍には、切断機構16と、積層ステージ18と、が配置されている。転写ロール14は、受け取り搬送ロール44の所定の円弧に沿って移動し、かつ、受け取り搬送ロール44側と積層ステージ18側との間を自在に移動することができるように構成されている。具体的には、転写ロール14は、初期位置Aが決定されており、この初期位置Aから受け取り搬送ロール44の円弧に沿って所定の円弧長の距離となる離脱位置Bまで移動する。さらに、転写ロール14は、離脱位置Bから積層ステージ18に接触可能な転写位置Cまで移動することができる。なお、転写ロール14が転写位置Cまで移動した後は、所定の経路をたどって初期位置Aまで移動することができるが、転写位置Cから初期位置Aまで直線経路にて移動すると時間的に有利である。
なお、中間ロール40、中間ロール42及び受け取り搬送ロール44の構成は、転写ロール14の構成と同じであり、例えば、表面に弾性体を取り付けた金属ロールで構成されている。また、中間ロール40、中間ロール42及び受け取り搬送ロール44は、吸引、静電吸着あるいは粘着などの手段により、セラミックシートSの剥離及び供給を行うようにしてもよい。
転写ロール14は、吸着(吸引、静電吸着あるいは粘着)などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、積層ステージ18上のセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。転写ロール14がセラミックシートSを保持する力は、受け取り搬送ロール44がセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに積層ステージ18がセラミックシートSを保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSは受け取り搬送ロール44から剥離されて転写ロール14に保持され、その後、積層ステージ18へ転写される。
なお、転写ロール14は、セラミックシートSを吸引して剥離する真空引きの吸引ロールでもよい。このとき、転写ロール14は、セラミックシートSを吸着する部位と吸着しない部位とを制御するように構成されることが好ましい。受け取り搬送ロール44からセラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する転写ロール14の所定部位に吸着機能をもたせ、受け取ったセラミックシートSを積層ステージ18に転写するときにセラミックシートSに接触する転写ロール14の所定部位に非吸着領域をもたせることにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。
次に、積層型電子部品製造装置10を用いたセラミックシートSの積層構造体の製造方法について説明する。第1実施形態で説明した工程と重複する工程は、適宜、説明を省略する。なお、転写ロール14は、受け取り搬送ロール44の外周上の初期位置Aに待機している。
離型処理を施したコーティング搬送ロール12を所定の速度で回転させ、この外周面にセラミックスラリーを成膜手段20により塗布する。なお、セラミックスラリーの供給は、給液手段22であるギヤポンプを用いて行われる。そして、コーティング搬送ロール12上でセラミックスラリーを、乾燥硬化装置26を用いて乾燥し固化させる。このようにして、成膜手段16及び給液手段18によって、セラミックスラリーがコーティング搬送ロール12に対して連続的に供給され、コーティング搬送ロール12上でセラミックシートSが形成され続ける。
コーティング搬送ロール12上で形成されたセラミックシートSは、中間ロール40を経て印刷搬送ロール38に移動する。印刷搬送ロール38上では、電極回路形成手段28からセラミックシートSに対して電極材インクが塗布され、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24が印刷される。また、セラミックシートSに形成された電極回路24によって発生した段差部(凹部)34に対して、誘電体塗膜形成手段(例えば、インクジェット印刷)からセラミック材料(誘電体材料)が塗布され、所定の図形パターンの誘電体塗膜36が印刷される。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。
続いて、電極回路24及び誘電体塗膜36の印刷後に、乾燥硬化装置32から電極回路24及び誘電体塗膜36に対して所定温度の温風が吹き付けられ、電極回路24及び誘電体塗膜36が乾燥する。
電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されたセラミックシートSは、中間ロール42を経て、受け取り搬送ロール44に移動する。そして、所定のタイミングで、転写ロール14が初期位置Aから離脱位置Bに向かって受け取り搬送ロール44の円弧上を移動する。このとき、転写ロール14は、回転しながら受け取り搬送ロール44上のセラミックシートSを巻き取っていく。このように、転写ロール14は、自身で回転しながら、受け取り搬送ロール44の回転方向に対して逆方向に向かって受け取り搬送ロール44上の円弧に沿って移動する。これにより、転写ロール14の外周面に受け取り搬送ロール44上のセラミックシートSが転写される。
転写ロール14の外周面の全周にわたってセラミックシートSが巻き付けられて転写されたときに、切断機構16によりセラミックシートSが切断される。これにより、転写ロール14の外周面に転写されたセラミックシートSと受け取り搬送ロール44上のセラミックシートSとが分離する。セラミックシートSが切断された後、転写ロール14は、離脱位置Bから離れ、積層ステージ18側に向けて移動する。
転写ロール14が積層ステージ18の転写位置Cに到達したときに停止する。そして、転写ロール14の外周面に転写されているセラミックシートSの切断片STの一部と所定の圧力で接触する。転写ロール14がセラミックシートSの切断片STの一部と所定の圧力で接触し、積層ステージ18が水平移動する。このとき、転写ロール14は、積層ステージ18の駆動力を受けて回転する。このように、積層ステージ18が水平移動し、かつ積層ステージ18が転写ロール14に転写されたセラミックシートSの切断片STに接触している間、転写ロール14が回転し続けることになる。この結果、転写ロール14の外周面に転写されていたセラミックシートSの切断片STは、全て、積層ステージ18の平面に転写される。
なお、転写されていたセラミックシートSの切断片STが転写ロール14から積層ステージ18に転写された後、転写ロール14は、初期位置Aに戻り、再度、離脱位置Bまで移動して、受け取り搬送ロール44上のセラミックシートSを転写する。そして、セラミックシートSが転写された転写ロール14は、積層ステージ18上の転写位置Cに向って移動する。
さらに、積層ステージ18上に転写された前回のセラミックシートSの切断片STの上面に新たなにセラミックシートSの切断片STが転写ロール14によって転写される(上積みされる)。この各工程の繰り返しにより、連続して、セラミックスクシシートSの切断片ST(電極回路24及び誘電体塗膜36が形成済みのもの)が積層ステージ18上に次々に積層されて、セラミックシートSの積層構造体が形成されていく。
なお、積層ステージ18に形成されたセラミックシートSの積層構造体が積層ステージ18から取り外され、ダイサーカットによりチップ状に切断される。その後、焼成、電極回路(外部電極回路)が形成されるなどして通常の製造プロセスを経て、積層セラミックコンデンサが製造されていく。
第2実施形態によれば、セラミックシートSの切断片STが積層ステージ18に積層される前に電極回路24及び誘電体塗膜36が形成される。セラミックシートSが積層ステージ18に積層された後にセラミックシートSに電極回路24及び誘電体塗膜36が形成されると下層のセラミックシートSに形成された電極回路24及び誘電体塗膜36、あるいは下層の電極回路及び誘電体塗膜形成済みのセラミックシートSに電極溶媒及び誘電体塗膜溶媒が原因となってシートアタックが発生する。本発明のように単層のセラミックシートの状態で電極回路が形成されると、シートアタックの影響を単層のみの最小限に抑えることが可能となり、ショートあるいはIR不良(絶縁抵抗不良)などの不具合を低減することができる。
また、積層ステージ18上で電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が繰り返し行われることによるセラミックシートSの切断片STに与える悪影響(損傷、ダメージ)を抑制することができる。この結果、セラミックシートSの積層体、ひいては電子部品の品質不良を抑制することができる。
印刷搬送ロール38上でセラミックシートSの電極回路24及び誘電体塗膜36を同時に形成するため、設備全体をシンプルでコンパクトにでき、設備価格を低く、面積を小さくすることができ、また設備の信頼性を上げることができる。
なお、第2実施形態では、コーティング搬送ロール12、中間ロール40、中間ロール42、印刷搬送ロール38及び受け取り搬送ロール44が本発明の「シート搬送部材」に含まれ、また、積層ステージ18が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、転写ロール14が本発明の「シート転写部材」に対応し、切断機構16が本発明の「シート切断部材」に対応する。さらに、電極回路形成手段28が本発明の「電極回路形成部」に対応し、また、誘電体塗膜形成手段30が本発明の「誘電体塗膜形成部」に対応する。
次に、本発明の第3実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の構成と重複する構成には同符号を付するとともに、重複する構成及び作用効果の説明を省略する。
図2、図3及び図5に示すように、第3実施形態の積層型電子部品製造装置は、第1実施形態をベースにして改良したものであり、コーティング搬送ロール12上でセラミックシートSを形成する工程を削除したものである。すなわち、シート搬送ロール46は、キャリアフィルムF付きのセラミックシートS(予め形成されたもの)を搬送する。このため、第3実施形態では、コーティング搬送ロール12と、成膜手段20(図1参照)と、給液手段22と、セラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置26と、を不要にすることができる。これにより、設備の小型化を実現することができる。
第3実施形態では、シート搬送ロール46によって搬送されてきたセラミックシートSのキャリアフィルムFに切り込みが入るまで、切断機構16によって切断し、セラミックシートSの部分だけが転写ロール14に転写される。すなわち、転写ロール14は、セラミックシートSの部分をキャリアフィルムFから剥離させる。なお、キャリアフィルムFは、シート搬送ロール46にそのまま搬送されていく。転写ロール14に転写されたセラミックシートSの切断片STが積層ステージ18に積層されるまでの工程、及び積層ステージ18上のセラミックシートSの切断片STに電極回路24及び誘電体塗膜36が形成される工程は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第3実施形態によれば、セラミックシートSとして、既にキャリアフィルムFに付着されたものを使用するため、セラミックスラリーを塗布してセラミックシートが形成される場合と比較して、セラミックシートSの切断が容易になる。これにより、セラミックシートSの切断片STの積層をさらに高速に行うことができる。また、セラミックシートSの切断片STの積層停止状態から積層開始状態におけるセラミックスラリーのロスを無くすことができる。セラミックシートSにあらかじめ電極回路24及び誘電体塗膜36を形成したものを使用してもよい。
なお、第3実施形態では、シート搬送ロール46が本発明の「シート搬送部材」に含まれ、また、積層ステージ18が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、転写ロール14が本発明の「シート転写部材」に対応し、切断機構16が本発明の「シート切断部材」に対応する。さらに、電極回路形成手段28が本発明の「電極回路形成部」に対応し、また、誘電体塗膜形成手段30が本発明の「誘電体塗膜形成部」に対応する。