しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、円筒状の積層体を形成する場合、円筒状の積層体を静水圧プレスするための装置容積が大きくなり、価格も高くなる。反面、装置容積を小さくするには、バッチ量を少なくしなければならない。また、円筒状の積層体をカット(平刃不可)することで能力が低くなる。さらに、円筒状の積層体を平板状に伸ばす工程が必要となる。その際の積層体ひずみ(層ハガレ、層間絶縁不良)が発生する。同様に、積層体の厚み分上層より下層の長さが短くなり、積層体の形状不良(積みズレ、ギャップ小)が発生する。
また、短冊状の積層ステージにセラミックグリーンシートを積層する場合、供給は間欠動作となり間欠動作機構をもたせることで装置が高価になり、容積も大きくなり、電力などの消費エネルギーも大きくなる。また、品質ばらつきの要因(グリーンシート搬送および剥離の際のキズ、ひずみ、ハンドリングミス、カット屑)が発生する。そして、サクションロールの重量が重いため、加減速時の慣性が大きくなり高速化が難しい。
一方、上記特許文献2の従来技術では、グリーンシート形成、電極形成を含めた工程とする場合、グリーンシート形成、電極形成したものを短冊状の積層体への積層動作が間欠動作となる。特に、グリーンシート形成、電極形成を1層毎に停止する場合、材料ロス、品質ばらつき(グリーンシート膜厚、シートスジ、電極膜厚、電極面積)が発生する。間欠動作をすることで電力などの消費エネルギーが大きくなる。ロールの重量が重いため、加減速時の慣性が大きく高速化が難しい。また、コンペンセータのようなバッファ機構をもたせる場合、装置容積が大きくなり、価格も高くなる。また、電力などの消費エネルギーが大きくなる。さらに、高速化が難しくなる。
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法を提供することである。
本発明は、セラミックシートを所定方向に回転させながら連続搬送するシート搬送部材と、前記セラミックシートを所定の長さに切断し、セラミックシートの第1の切断片及び第2の切断片を形成するシート切断部材と、前記シート搬送部材とは逆方向に回転しながら前記シート搬送部材から前記第1の切断片及び前記第2の切断片を受け取る第1のシート受け渡し部材と、前記第1のシート受け渡し部材とは逆方向に回転しながら前記第1のシート受け渡し部材から前記第2の切断片を受け取る第2のシート受け渡し部材と、前記第1のシート受け渡し部材の回転接線方向と同方向に移動しながら第1のシート受け渡し部材から前記第1の切断片を転写された後、前記第2のシート受け渡し部材の回転接線方向と同方向に移動しながら第2のシート受け渡し部材から前記第2の切断片を転写されるシート積層部材と、を有することを特徴とする積層型電子部品製造装置である。
この構成によれば、シート切断部材で切断されたセラミックシート(セラミックグリーンシート)の第1の切断片が、第1のシート受け渡し部材によってシート積層部材に転写される。続いて、シート切断部材で切断されたセラミックシートの第2の切断片が、第2のシート受け渡し部材によってシート積層部材に転写される。本発明によれば、セラミックシートを連続的に(停止することなく)供給しつつ、1つの平板上に積層することができる。その結果、装置コストを低減できる。また、等速での加工となるため、セラミックシートへのダメージを低減でき、搬送位置決めバラツキ低減により積み重ね精度の向上が可能となる。
また、前記セラミックシートに電極回路を形成する電極回路形成部を有し、前記電極回路形成部は、前記シート積層部材上の前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片に、前記電極回路を形成することが好ましい。
この構成によれば、セラミックシートの成形・電極回路(内部電極回路)の印刷・積層を一貫して行う場合に、連続成形、連続印刷が可能となるため、品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。
また、前記電極回路の形成により生じる前記セラミックシート上の段差部に誘電体塗膜を形成する誘電体塗膜形成部を有し、前記誘電体塗膜形成部は、前記シート積層部材上の前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片に発生した前記段差部に、前記誘電体塗膜を形成することが好ましい。
この構成によれば、セラミックシートの成形・電極回路・誘電体塗膜の印刷・積層を一貫して行う場合に、連続成形、連続印刷が可能となるため、品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。
また、セラミックシート上の電極回路間の段差部を誘電体塗膜(誘電体材料)で埋めることにより、電極回路間の段差を低減することができる。これにより、セラミックシートの切断片の積層数が増加した場合に発生しやすくなる、積みズレや接着不良を防止することができ、また、上記段差部があることに起因する構造欠陥などの不良を抑制することができる。
特に、前記シート搬送部材にセラミックスラリーを塗布して前記セラミックシートを形成する成膜形成部を有し、前記成膜形成部による前記セラミックシートの形成が継続された状態で、前記第1のシート受け渡し部材又は前記第2のシート受け渡し部材による前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片の前記シート積層部材に対する転写が行われることが好ましい。セラミックシートの形成での間欠動作が不要になる分、消費エネルギーが小さくなり、セラミックシートの品質(膜厚バラツキが無くなる、シートスジも無くなる、電極形状の精度が良くなるなど)が良くなる。この結果、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる。
また、前記セラミックシートは、フィルムに付着されたものであり、前記第1のシート受け渡し部材は、前記シート搬送部材で搬送される前記セラミックシートを前記フィルムから剥離させることが好ましい。
この構成によれば、セラミックシートとして、フィルム付きのものも搬送対象とすることができるため、設備の汎用性を高めることができる。これにより、複雑な設備が不要になるため、新規設備投資コストの低減を図ることができる。
さらに、セラミックシートとして、既にフィルムに付着されたものを使用するため、セラミックスラリーを塗布してセラミックシートが形成される場合と比較して、シート切断部材による切断が容易になる。これにより、セラミックシートの各切断片の積層を一層高速に行うことができる。
また、前記電極回路形成部又は前記誘電体塗膜形成部は、無版印刷装置であることが好ましい。
この構成によれば、セラミックシートの各層毎に異なるパターンの電極回路又は誘電体塗膜を容易かつ高速に形成することができる。また、シート積層部材の位置制御に誤差が発生しても、電極回路間又は誘電体塗膜間のピッチを自在に調整して、位置ズレのない電極回路又は誘電体塗膜を形成することができる。この結果、複雑な設備が不要になるため、新規設備投資コストの低減を図ることができる。
さらに、本発明は、シート搬送部材によってセラミックシートを所定方向に回転させながら連続搬送するシート搬送工程と、前記セラミックシートをシート切断部材によって所定の長さに切断し、セラミックシートの第1の切断片及び第2の切断片を形成するシート切断工程と、第1のシート受け渡し部材が前記シート搬送部材とは逆方向に回転しながら前記シート搬送部材から前記第1の切断片及び前記第2の切断片を受け取る第1のシート受け渡し工程と、第2のシート受け渡し部材が前記第1のシート受け渡し部材とは逆方向に回転しながら前記第1のシート受け渡し部材から前記第2の切断片を受け取る第2のシート受け渡し工程と、シート積層部材が前記第1のシート受け渡し部材の回転接線方向と同方向に移動することにより前記第1のシート受け渡し部材から前記第1の切断片が前記シート積層部材に転写された後、前記シート積層部材が前記第2のシート受け渡し部材の回転接線方向と同方向に移動することにより前記第2のシート受け渡し部材から前記第2の切断片が前記シート積層部材に転写されるシート積層工程と、を有することを特徴とする積層型電子部品の製造方法である。
また、前記セラミックシートに電極回路形成部によって電極回路を形成する電極回路形成工程を有し、前記電極回路形成工程では、前記シート積層部材上の前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片に、前記電極回路を形成することが好ましい。
また、前記電極回路の形成により生じる前記セラミックシート上の段差部に誘電体塗膜形成部によって誘電体塗膜を形成する誘電体塗膜形成工程を有し、前記誘電体塗膜形成工程では、前記シート積層部材上の前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片に発生した前記段差部に、前記誘電体塗膜を形成することが好ましい。
特に、成膜形成部から前記シート搬送部材にセラミックスラリーを塗布して前記セラミックシートを形成する成膜形成工程を有し、前記シート積層工程では、前記成膜形成部による前記セラミックシートの形成が継続された状態で、前記第1のシート受け渡し部材又は前記第2のシート受け渡し部材による前記セラミックシートの前記第1の切断片又は前記第2の切断片の前記シート積層部材に対する転写が行われることが好ましい。
さらに、前記セラミックシートは、フィルムに付着されたものであり、前記第1のシート受け渡し工程では、前記シート搬送部材上で前記第1のシート受け渡し部材によって前記フィルムから剥離されることが好ましい。
特に、前記電極回路形成工程又は前記誘電体塗膜形成工程では、前記電極回路形成部又は前記誘電体塗膜形成部として無版印刷装置を使用することが好ましい。
本発明によれば、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる。
本発明の第1実施形態に係る積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明の製造対象としている「積層型電子部品」には、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品が含まれる。以下、積層型電子部品として、積層セラミックコンデンサを一例に挙げて説明する。
先ず、積層型電子部品製造装置について説明する。
図1乃至図5に示すように、積層型電子部品製造装置10は、主として、セラミックシートS(セラミックグリーンシート)を形成し当該セラミックシートSを搬送するコーティングロール12(シート搬送部材)と、コーティングロール12で搬送されてきたセラミックシートSを巻き取る受け渡しロール14(第1のシート受け渡し部材)と、受け渡しロール14からセラミックシートSを受け取る受け渡しロール16(第2のシート受け渡し部材)と、セラミックシートSを所定の長さに切断する切断機構18(シート切断部材)と、切断機構18により所定の長さに切断されたセラミックシートSの各切断片を積層してセラミックシートSの積層構造体を形成する平板状の積層ステージ20(シート積層部材)と、を有している。コーティングロール12の表面(外周面)には離型処理が施されている。
コーティングロール12の周囲には、コーティングロール12の表面にセラミックシートSの材料になるセラミックスラリーを塗布するための成膜手段22と、成膜手段22にセラミックスラリーを供給するための給液手段23と、成膜手段22を基準としてコーティングロール回転方向下流側に位置しコーティングロール12の表面上のセラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置26と、上記した受け渡しロール14と、上記した切断機構18と、が配置されている。
受け渡しロール14の近傍には、上記受け渡しロール16と、上記積層ステージ20と、不要なセラミックシートSを除去するための除去ロール28と、が配置されている。
さらに、積層ステージ20の近傍には、積層ステージ20に転写されたセラミックシートSの各切断片に対して電極回路24(図6及び図7参照)を形成するための電極回路形成手段30A、30B(電極回路形成部)と、電極回路24の形成によりセラミックシートSの各切断片の表面に発生する段差部34に誘電体塗膜36を形成するための誘電体塗膜形成手段32A、32B(誘電体塗膜形成部)と、電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥させるための乾燥硬化装置38A、38Bと、が配置されている。
具体的に、コーティングロール12は、表面に離型処理が施された金属などの剛体ロール(円柱状あるいは円筒状)で構成されている。コーティングロール12は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。なお、離型処理とは、例えば、フッ素系メッキ処理などが該当する。
積層ステージ20は、例えば、剛体平板が用いられる。ただし、剛体平板に限られるものではなく、円筒状あるいは円柱状のロールを使用してもよい。ロールを使用する場合には、セラミックシートSの各切断片を外周面上に巻き付けて積層する。また、積層ステージ20は、図示しない移動装置により水平方向(図1中矢印X参照)及び垂直方向(図1中矢印Y参照)に移動するように構成されている。これにより、積層ステージ20は、水平方向(図1中では左右方向)に往復移動し、垂直方向(図1中では上下方向)に上下移動することができる。
受け渡しロール14は、例えば、脱着可能な円筒治具の外周に弾性樹脂フィルムを貼り付けて構成されている。この円筒治具を回転軸に装着し、コーティングロール12、受け渡しロール16及び積層ステージ20と同期させて回転させる。受け渡しロール14は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。
セラミックシートSをコーティング搬送ロール12から受け渡しロール14へ確実に転写するためには、受け渡しロール14をコーティング搬送ロール12に適度に押し付けながら転写するのが好ましい。仮にコーティング搬送ロール12と受け渡しロール14の間に空間があると、搬送中のセラミックシートSが他の部材に支持されていない区間をつくることになり、その区間でシート破れの起きる可能性がある。そこで、セラミックシートSの支持されていない区間をつくらないように、受け渡しロール14をコーティング搬送ロール12に適度に押し付けている。押し付けるとき機械的なこじれが生じないように、受け渡しロール14の表面は弾性を有している。
なお、受け渡しロール14に、吸着(吸引、静電吸着あるいは粘着)などの手段により、コーティングロール12からセラミックシートSを受け取るように構成してもよい。
受け渡しロール14は、吸着などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、積層ステージ20上のセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。受け渡しロール14がセラミックシートSを保持する力は、コーティングロール12がセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに積層ステージ20がセラミックシートSを保持する力より小さく設定されている。そのため、セラミックシートSはコーティングロール12から剥離されて受け渡しロール14に保持され、その後、積層ステージ20又は受け渡しロール16へ転写される。
受け渡しロール16は、例えば、脱着可能な円筒治具の外周に弾性フィルムを貼り付けて構成されている。この円筒治具を回転軸に装着し、受け渡しロール14及び積層ステージ20と同期させて回転させる。受け渡しロール16は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。
また、受け渡しロール16は、図示しない移動装置により、受け渡しロール14の円弧に沿って移動可能に設けられている。詳細には、受け渡しロール16は、受け渡しロール14の所定の円弧に沿って移動し、かつ、受け渡しロール14側と積層ステージ20側との間を自在に移動することができる。具体的には、受け渡しロール16は、待機位置Aが決定されており、この待機位置Aから受け渡しロール14の円弧に沿って所定の円弧長の距離となる転写位置Bまで移動する。受け渡しロール16は、転写位置B(図3参照)で、積層ステージ20に転写されている直下層のセラミックシートSの切断片(例えば、第1の切断片ST1)の上面に、新たなセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)を転写させる。なお、受け渡しロール16が転写位置Bまで移動した後は、所定の経路をたどって待機位置Aまで移動することができる。なお、待機位置Aは、転写位置Bから退避できる位置なら受け渡しロール14の円弧に沿った位置である必要は無い。
なお、受け渡しロール16に、吸着(吸引、静電吸着あるいは粘着)などの手段により、受け渡しロール14からセラミックシートSを受け取るように構成してもよい。
受け渡しロール16は、吸着などの手段によりセラミックシートSを保持する。また、積層ステージ20上のセラミックシートSは、重なり合うシート層同士が圧着されて互いに保持し合う。受け渡しロール16がセラミックシートSを保持する力は、受け渡しロール14がセラミックシートSを保持する力より大きく、さらに積層ステージ20がセラミックシートSを保持する力より小さく設定されているため、セラミックシートSは受け渡しロール14から剥離されて受け渡しロール16に保持され、その後、積層ステージ20へ転写される。
受け渡しロール14、16は、セラミックシートSを吸引して剥離する真空引きの吸引ロールでもよい。このとき、受け渡しロール14,16は、セラミックシートSを吸着する部位と吸着しない部位とを制御するように構成されることが好ましい。セラミックシートSを受け取るときにセラミックシートSに接触する受け渡しロール14,16の所定部位に吸着機能をもたせ、受け取ったセラミックシートSを積層ステージ20に転写するときにセラミックシートSに接触する受け渡しロール14,16の所定部位に非吸着領域をもたせることにより、セラミックシートSの受け取りと転写を円滑に行うことができる。
除去ロール28は、粘着ロールあるいは吸引ロールで構成されている。受け渡しロール14上に転写された余分なセラミックシートSを受け渡しロール14上から剥離させて除去する機能を有している。なお、除去ロール28は、図示しない回転駆動機構により回転駆動されるように構成されている。余分なセラミックシートSとは、切断機構18にて切断されたセラミックシートSのうち、積層ステージ20に積層されない領域のことである。
成膜手段22は、例えば、ダイコータ、ドクターブレード、ロールコータなどが適宜採用される。なお、コーティングロール12の外周面に形成されるセラミックシートSの膜厚をより薄くするためには、ダイコータに上流減圧機構を設けることが好ましい。成膜手段22からコーティングロール12に対して連続的にセラミックスラリーを塗布して、セラミックシートSが形成される。このように、同一のコーティングロール12に対して、セラミックスラリーが連続的(間欠的ではない)に供給される。なお、セラミックスラリーは、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂成分を溶解分散させたものが採用される。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。なお、溶媒は、水系でもよい。
給液手段23は、例えば、シリンダ型ディスペンサが採用される。なお、給液手段23は、シリンダ型ディスペンサに限られるものではなく、ギヤポンプ、ダイヤフラムポンプなど適宜採用してもよい。
切断機構18は、セラミックシートSを切断できるものであれば、はさみ状のものやナイフ状のものなど形状や構成は特に問われない。
電極回路形成手段30A、30Bは、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。電極回路形成手段30A、30Bは、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の電極回路24を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷など手段は問わない。また、電極回路形成手段30A、30Bで使用される電極材インクは、例えば、有機溶媒にNi粉末(ニッケル粉末)と樹脂を溶解分散させたものが使用される。UV硬化性の樹脂にNi粉末を分散させたものでもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
誘電体塗膜形成手段32A、32Bは、例えば、インクジェット印刷装置が採用される。誘電体塗膜形成手段32A、32Bは、無版印刷手段が好ましいが、乾燥後の誘電体塗膜を転写してもよいし、凹版印刷、凹版オフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、ロータリースクリーン印刷など手段は問わない。また、誘電体塗膜形成手段32A、32Bで使用される誘電体材料は、セラミックスインク、例えば、有機溶媒にセラミックス粉末と樹脂を溶解分解させたものである。UV硬化樹脂にセラミックス粉末を分散させたものを用いてもよい。特に、セラミック塗膜に対して、膨潤性の低い溶媒を用いることが好ましい。なお、溶媒は、水系でもよい。
ここで、電極回路形成手段30A及び誘電体塗膜形成手段32Aは、受け渡しロール14から積層ステージ20に転写されたセラミックシートSの切断片(例えば、第1の切断片ST1)に対して電極回路24及び誘電体塗膜36を形成する第1ユニット側(受け渡しロール16の待機位置側)に設けられている。また、電極回路形成手段30B及び誘電体塗膜形成手段32Bは、受け渡しロール16から積層ステージ20に転写されたセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)に対して電極回路24及び誘電体塗膜36を形成する第2ユニット側(受け渡しロール16の待機位置と反対側)に設けられている。なお、第1ユニットの電極回路形成手段30A及び誘電体塗膜形成手段32Aと、第2ユニットの電極回路形成手段30B及び誘電体塗膜形成手段32Bと、相互に離間して配置されている。
乾燥硬化装置26は、例えば、熱風により乾燥する方法やコーティングロール12の外周面を加熱する方法が採用される。一例として、真空乾燥装置が適用される。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置26は、コーティングロール12上に塗布されたセラミックスラリーを乾燥させてセラミックシートSを形成するためのものである。
乾燥硬化装置38A、38Bは、例えば、熱風により乾燥する方法や積層ステージ20の平面を加熱する方法が採用される。UV硬化性の樹脂を用いている場合、UV照射して硬化させてもよい。乾燥硬化装置38A、38Bは、積層ステージ20上のセラミックシートSに形成された電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥させるためのものである。この乾燥硬化装置38A、38Bは、受け渡しロール14から積層ステージ20に転写されたセラミックシートSの切断片(例えば、第1の切断片ST1)に対して形成された電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥するための第1ユニット側の乾燥硬化装置38Aと、受け渡しロール16から積層ステージ20に転写されたセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)に対して形成された電極回路24及び誘電体塗膜36を乾燥するための第2ユニット側の乾燥硬化装置38Bと、で構成されている。
次に、積層型電子部品製造装置10を用いたセラミックシートSの積層構造体の製造方法について説明する。なお、受け渡しロール16は、待機位置Aに待機している。
図1及び図2に示すように、離型処理を施したコーティングロール12を所定の速度で回転させ、この外周面にセラミックスラリーを成膜手段22により塗布する。なお、セラミックスラリーの供給は、給液手段23であるシリンダ型ディスペンサを用いて行われる。そして、コーティングロール12上でセラミックスラリーを、乾燥硬化装置26を用いて乾燥し固化させる。ここで、乾燥硬化装置26によるセラミックスラリーの乾燥には、所定の温度の熱風を用いる。コーティングロール12の外周面が適温となるように別途、温度調整する。なお、これらの温度は、セラミックシートSの材料により適宜調整する。このようにして、成膜手段22及び給液手段23によって、セラミックスラリーがコーティングロール12に対して連続的に供給され、コーティングロール12上でセラミックシートSが形成され続ける。
そして、セラミックシートSは、受け渡しロール14側に転写される。受け渡しロール14は、コーティングロール12に対して所定の圧力で接触しており、かつコーティングロール12には離型処理が施されているため、コーティングロール12上に形成されたセラミックシートSは、コーティングロール12と受け渡しロール14との間に挟持された後、受け渡しロール14の外周面に転写される。
セラミックシートSがコーティングロール12から受け渡しロール14に転写された後、セラミックシートSの先端部が積層ステージ20の表面に到達する直前に、切断機構18によりセラミックシートSが切断される。そして、受け渡しロールの回転と共に、セラミックシートSの切断片(例えば、第1の切断片ST1)の先端部が受け渡しロール14から積層ステージ20の表面に接触する。ここで、積層ステージ20が受け渡しロール14の回転接線方向と同方向(図1中の矢印X1方向)に移動しているため、セラミックシートSの切断片は、徐々に積層ステージ20の表面上に面接触していき、最終的には、切断片の全ての領域が積層ステージ20の表面に面接触する。このとき、受け渡しロール14と積層ステージ20の表面との間には所定の圧力が作用しているため、受け渡しロール14から積層ステージ20側へのセラミックシートSの転写が円滑に行われる。これにより、1層目となるセラミックシートSの切断片が積層ステージ20に完全に転写される。このようにして、積層ステージ20の表面に、1層目となるセラミックシートSの切断片が転写される。なお、1層目となるセラミックシートSの切断片の転写時には、受け渡しロール16が待機位置Aに留まっている。このため、1層目となるセラミックシートSの切断片の積層ステージ20に対する転写は、受け渡しロール14のみにより実現されるものである。
ここで、1層目となるセラミックシートSの切断片が積層ステージ20に転写されている最中に、第1ユニット側の電極回路形成手段30Aから1層目となるセラミックシートSの切断片に対して電極材インクが塗布され、所定の図形パターンの電極回路(内部電極回路)24が印刷される。また、1層目となるセラミックシートSの切断片に形成された電極回路24によって発生した段差部34(凹部)に対して、第1ユニット側の誘電体塗膜形成手段32A(例えば、インクジェット印刷)からセラミック材料(誘電体材料)が塗布され、所定の図形パターンの誘電体塗膜36が印刷される。そして、1層目のセラミックシートSの切断片に形成された誘電体塗膜36と電極回路24は、第1ユニット側の乾燥硬化装置38Aから温風が吹き付けられて乾燥する。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。このようにして、1層目となるセラミックシートSの切断片の転写完了と同時に、1層目となるセラミックシートSの切断片に対する電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が完了する(図3参照)。
1層目となるセラミックシートSの切断片上の誘電体塗膜36の形成位置は、セラミックシートS上の電極回路24間に形成された凹部になる。すなわち、図6に示すように、セラミックシートS上に電極回路24が形成されると、セラミックシートS上が凸凹になり、いわゆる段差部34が発生する。図7に示すように、この電極回路24間に形成された段差部34に、誘電体塗膜36を印刷することにより、段差部(凹部)34の高さが低減され、セラミックシートSの表面が平坦状になる。
次に、図2及び図3に示すように、積層ステージ20が垂直方向一方側(図2中の矢印Y1方向)に移動すると共に、受け渡しロール16が待機位置Aから受け渡しロール14と積層ステージ20との間に位置である転写位置Bに移動する。このとき、受け渡しロール16は、受け渡しロール14の円弧に沿って移動する。なお、受け渡しロール16の待機位置Aから転写位置Bまでの移動動作は、セラミックシートSが切断され、除去ロール28でセラミックシートSが取り除かれることにより受け渡しロール14と積層ステージ20との間でセラミックシートSが不連続となることにより、可能になる。
受け渡しロール16の待機位置Aから転写位置Bまで移動した後、コーティングロール12の外周面で形成されたセラミックシートSが受け渡しロール14を経て受け渡しロール16に移動する。2層目となるセラミックシートSの先端部が積層ステージ20に転写された1層目のセラミックシートSの切断片に到達する直前に、切断機構18によりセラミックシートSが切断される。そして、受け渡しロール16の回転と共に、2層目となるセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)の先端部が受け渡しロール16から積層ステージ20に転写された1層目のセラミックシートSの切断片に表面に接触する。ここで、図3及び図4に示すように、積層ステージ20が受け渡しロール16の回転接線方向と同方向(図3中の矢印X2方向)に移動しているため、2層目となるセラミックシートSの切断片は、徐々に積層ステージ20上の1層目のセラミックシートSの切断片に面接触していき、最終的には、2層目の切断片の全ての領域が1層目の切断片の全領域に面接触する。このとき、受け渡しロール16と積層ステージ20上の1層目の切断片との間には所定の圧力が作用しているため、受け渡しロール16から積層ステージ20側へのセラミックシートSの転写が円滑に行われる。セラミックシートSはバインダーを含んでおり、転写されたときにセラミックシート同士が確実に接合する。これにより、2層目となるセラミックシートSの切断片が積層ステージ20上の1層目の切断片の面に完全に転写される。このようにして、積層ステージ20上に、2層目となるセラミックシートSの切断片が転写される。なお、2層目となるセラミックシートSの切断片の積層ステージ20に対する転写は、受け渡しロール16の作用により実現されるものである。
ここで、図4及び図5に示すように、2層目となるセラミックシートSの切断片が積層ステージ20上の1層目の切断片に転写されている最中に、第2ユニット側の電極回路形成手段30Bから2層目となるセラミックシートSの切断片に対して電極材インクが塗布され、所定の図形パターンの電極回路24が印刷される。また、2層目となるセラミックシートSの切断片に形成された電極回路24によって発生した段差部34(凹部)に対して、第2ユニット側の誘電体塗膜形成手段32B(例えば、インクジェット印刷)からセラミック材料(誘電体材料)が塗布され、所定の図形パターンの誘電体塗膜36が印刷される。そして、2層目のセラミックシートSの切断片に形成された誘電体塗膜36と電極回路24は、第2ユニット側の乾燥硬化装置38Bから温風が吹き付けられて乾燥する。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。このようにして、2層目となるセラミックシートSの切断片の転写完了と同時に、2層目となるセラミックシートSの切断片に対する電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が完了する。なお、2層目のセラミックシートSの切断片の転写が完了したときに、積層ステージ20が垂直方向他方側(図5中の矢印Y2方向)に移動するとともに、受け渡しロール16が待機位置Aに移動する。
2層目となるセラミックシートSの切断片上の誘電体塗膜36は、1層目となるセラミックシートSの切断片上の誘電体塗膜36の形成位置と同様に、段差部に形成される。
3層目以降も同様にして、セラミックシートSの切断片が積層されていく。3層目のセラミックシートSの切断片(例えば、第1の切断片ST1)の積層は、1層目の積層と同様にして、受け渡しロール14によって2層目のセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)の上面に転写されて行われる。なお、受け渡しロール16は、待機位置Aに留まっており、3層目のセラミックシートSの切断片の積層に関与しない。また、4層目のセラミックシートSの切断片(例えば、第2の切断片ST2)の積層は、2層目の積層と同様にして、受け渡しロール16によって3層目のセラミックシートSの切断片の上面に転写されて行われる。なお、4層目の積層時は、受け渡しロール16が転写位置Bに移動している。以上の繰り返しにより、1層目、3層目、5層目などの奇数層に該当するセラミックシートSの各切断片の転写は、受け渡しロール14により実行され、2層目、4層目、6層目などの偶数層に該当するセラミックシートSの各切断片の転写は、受け渡しロール16により実行される。このようにして、セラミックシートSの積層構造体が形成されていく。
なお、積層ステージ20に形成されたセラミックシートSの積層構造体が積層ステージ20から取り外され、ダイサーカットによりチップ状に切断される。その後、焼成、電極回路(外部電極回路)が形成されるなどして通常の製造プロセスを経て、積層セラミックコンデンサが製造される。
第1実施形態の積層型電子部品製造装置及び積層型電子部品の製造方法によれば、セラミックシートSの積層構造体を連続で形成することができるので、間欠形成の装置を利用してセラミックシートSの形成を行う設備と比較して、設備が安価で小型にすることができ、セラミックシートSの製造工程の高速化が容易になる。これにより、セラミックシートSの積層構造体の製造効率を高めることができる。また、セラミックシートSの形成での間欠動作が不要になる分、消費エネルギーが小さくなり、セラミックシートSの品質(膜厚バラツキが低減、シートスジが低減、電極回路形状の精度が良くなるなど)が良くなる。この結果、設備の小型化及び低コスト化が可能であり、高品質の積層型電子部品を効率良く製造することができる。
特に、セラミックシートSの成形・電極回路24・誘電体塗膜36の印刷・積層を一貫して行う場合に、連続成形、連続印刷が可能となるため、品質のバラツキの低減、ライン速度の向上、材料ロスの低減が可能となる。
また、従来のような長尺のフィルム基材を用いる必要が無く、中間材料コストを抑えることができる。
また、図6及び図7に示すように、セラミックシートSに電極回路24を形成すると、電極回路24間に凹部が生じ、セラミックシートS上に段差部34(凹部)が発生するが、この段差部34に、誘電体塗膜36を印刷することにより、段差部34を無くすことができる。このように、電極回路間の段差部34を誘電体塗膜36で埋めることにより、セラミックシートSの積層数が増加した場合に発生し易くなる、積みズレや接着不良を防止することができ、また、段差部34が存在することに起因する構造欠陥を抑制することができる。この結果、製造される電子部品の品質不良を防止することができる。なお、誘電体塗膜36と電極回路24の形成順序は、特に問われない。
特に、第1ユニット(あるいは第2ユニット)で電気回路24及び誘電体塗膜36が積層ステージ20上で略同じタイミングで形成されることにより、電気回路24及び誘電体塗膜36の位置精度を高めることができる。これにより、CCDカメラなどの検知手段を別途設置しなくても、高精度のセラミックシートSの積層構造体を製造することができる。
また、セラミックシートSが剛体であるコーティングロール12上に形成されるため、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、セラミックシートSの破れや傷つきの発生を抑制することができる。この結果、薄くて低強度のセラミックシートSのハンドリング性を高めることができる。また、積層ステージ20が剛体である金属で構成されているため、セラミックシートSの切断片の積層工程において、薄くて低強度のセラミックシートSを使用しても、位置ずれ(積層ズレ)することがない。
また、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成にインクジェットなどの無版印刷工法を用いることにより、電極回路24及び誘電体塗膜36の形成を高速化することができる。また、セラミックシートSの各層毎において異なる電極パターンを備えた電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能になる。特に、セラミックシートSの積層の進行に伴いセラミックシートSの歪みや積層ステージ20の高さが変化しても、電極回路24及び誘電体塗膜36のパターンや形成位置を自在に変更することができるため、電極回路24間及び誘電体塗膜36間のピッチ(間隔)を適宜調整して、位置ズレのない電極回路24及び誘電体塗膜36の形成が可能になる。
なお、第1実施形態では、コーティングロール12が本発明の「シート搬送部材」に対応し、また、積層ステージ20が本発明の「シート積層部材」に対応する。また、受け渡しロール14が本発明の「第1のシート受け渡し部材」に対応し、受け渡しロール16が本発明の「第2のシート受け渡し部材」に対応する。また、切断機構18が本発明の「シート切断部材」に対応する。さらに、電極回路形成手段30A、30Bが本発明の「電極回路形成部」に対応し、また、誘電体塗膜形成手段32A、32Bが本発明の「誘電体塗膜形成部」に対応する。
次に、変形例について説明する。
上記実施形態では、コーティングロール12上でセラミックスラリーを塗布してセラミックシートSを形成する工程が含まれる構成を例示したが、この構成に限られるものではない。すなわち、変形例では、コーティングロール12が、キャリアフィルム(PETフィルム)付きのセラミックシートS(予め形成されたもの)を搬送するようにしてもよい。この工程を採用することにより、セラミックスラリーの塗布からセラミックシートSを形成するまでの工程が削除できるため、成膜手段22(図1参照)と、給液手段23と、セラミックスラリーを乾燥固化させるための乾燥硬化装置26と、を不要にすることができる。これにより、設備の小型化及び低コスト化を実現することができる。また、あらかじめセラミックシートSをカットしておけば切断機構18も省略することができ、より小型化できる。
本変形例では、コーティングロール12によって搬送されてきたキャリアフィルム付のセラミックシートSが受け渡しロール14によってキャリアフィルムから剥離される。そして、キャリアフィルムから剥離されたセラミックシートSが受け渡しロール14又は受け渡しロール16によって積層ステージ20に転写される。なお、キャリアフィルムは、コーティングロール12にそのまま搬送されていく。このように、本変形例では、搬送・積層対象をキャリアフィルム付のセラミックシートSまで広げることができるため、新規な設備投資コストを大きく低減させることができる。
本変形例によれば、セラミックシートSとして、既にキャリアフィルムに付着されたものを使用するため、セラミックスラリーを塗布してセラミックシートが形成される場合と比較して、セラミックシートSの切断が容易になる。これにより、セラミックシートSの切断片の積層をさらに高速に行うことができる。また、セラミックシートSの切断片の積層停止状態から積層開始状態におけるセラミックスラリーのロスを無くすことができる。