JP5440717B2 - トラクション伝動容量制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、トラクション伝動式動力伝達装置の伝動容量制御装置に関し、
特に該伝動容量制御装置によるトラクション伝動容量制御動作の基準点を、製造上の寸法誤差やバラツキにかかわらず常に正確に設定し得るようにした、トラクション伝動容量制御装置に関するものである。
動力伝達装置としては、例えば特許文献1に記載のようなトラクション伝動式に構成したものがある。
この特許文献1で提案されているトラクション伝動式の動力伝達装置は、第1ローラおよび第2ローラを相互に径方向へ押圧接触させ、これらローラ間の摩擦接触により動力伝達(トラクション伝動)を行うようにしたものである。
上記のような動力伝達装置は、そのトラクション伝動容量、つまり第1ローラおよび第2ローラの径方向相互押圧接触部におけるトラクション伝動容量を、伝達要求駆動力に応じたものとなすトラクション伝動容量制御が必要な場合がある。
このトラクション伝動容量制御について特許文献1には、ローラ間の径方向相互押圧力が自動的に、伝達トルクに応じたトラクション伝動容量となるよう構成する提案がなされている。
特開2002−349653号公報
ところで上記のようなトラクション伝動容量制御装置は、第2ローラをクランクシャフトの偏心軸部に回転自在に支持して該クランクシャフトの回転操作により、第1ローラおよび第2ローラ間の径方向相互押圧力を加減してトラクション伝動容量を制御するような構成を踏襲するのが一般的である。
この場合、上記クランクシャフトの回転操作により第2ローラをクランクシャフト回転軸線の周りに旋回させることにより、第1ローラおよび第2ローラが相互に離れていてトラクション伝動を行わない非トラクション伝動状態と、第1ローラおよび第2ローラが最接近して両ローラのオーバーラップ量が最大となるトラクション伝動容量最大状態との間でトラクション伝動容量制御を行うこととなる。
このためトラクション伝動容量制御に当たっては、クランクシャフトを回転させるアクチュエータの制御出力動作量(クランクシャフト回転角)と、当該アクチュエータの制御出力トルクとの関係が判っている必要がある。
一方でアクチュエータの制御出力動作量は、アクチュエータの或る動作位置を基準とし、この基準点からの動作量であり、当該基準点が明確でないと、アクチュエータの制御出力動作量および制御出力トルク間の関係を正確に把握することができず、トラクション伝動容量制御を狙い通りに遂行することができない。
なお、上記のアクチュエータ基準点が明確に定義されていた場合であっても、この基準点は、アクチュエータの制御出力動作量および制御出力トルク間の関係と共に、トラクション伝動式動力伝達装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにより変化する。
しかし、特許文献1に記載のものに代表される従来のトラクション伝動容量制御技術では、アクチュエータ基準点を明確に定義することが行われていなかったし、仮にこの定義がなされた場合であっても、当該定義されたアクチュエータ基準点が、アクチュエータの制御出力動作量および制御出力トルク間の関係と共に、トラクション伝動式動力伝達装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにより変化するため、狙い通りのトラクション伝動容量制御を期待し難いのが実情であった。
本発明は、上記のアクチュエータ基準位置(トラクション伝動容量制御動作の基準点)を、トラクション伝動式動力伝達装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにかかわらず常に正確に求め得るようにした、駆動力配分装置のトラクション伝動容量制御装置を提案し、
これにより上記の問題解決を実現して、常に狙い通りにトラクション伝動容量制御を遂行し得るようにすることを目的とする。
この目的のため、本発明のトラクション伝動容量制御装置は、これを以下のごとくに構成する。
先ず、前提となる動力伝達装置を説明するに、これは、第1ローラおよび第2ローラの径方向相互押圧接触により得られるトラクション伝動によって動力伝達を行うものである。
また前提となるトラクション伝動容量制御装置は、
上記第2ローラを、該第2ローラの回転軸線からオフセットした偏心軸線周りで旋回させる第2ローラ旋回手段を具え、
この手段により、第1ローラおよび第2ローラ間の径方向相互押圧力を制御して、上記動力伝達装置のトラクション伝動容量を制御するものである。
本発明は、かかるトラクション伝動容量制御装置に対し、以下のような旋回トルク検出手段および旋回速度検出手段の少なくとも一方と、特異点検出手段と、第2ローラ旋回動作基準点設定手段とを設けた構成に特徴づけられる。
旋回トルク検出手段は、上記第2ローラ旋回手段により第2ローラを旋回させて、該旋回時における第2ローラの旋回トルクを検出し、また、
旋回速度検出手段は、上記第2ローラ旋回手段により第2ローラを旋回させて、該旋回時における第2ローラの旋回速度を検出するものである。
更に特異点検出手段は、上記の旋回トルク検出手段および旋回速度検出手段により検出した第2ローラの旋回トルクおよび旋回速度のうち、少なくとも一方の特異な時系列変化に関した特異点を検出するものである。
また第2ローラ旋回動作基準点設定手段は、上記の特異点検出手段により検出した特異点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定するものである。
そして本発明のトラクション伝動容量制御装置は、当該設定した第2ローラ旋回動作基準点に基づき前記のトラクション伝動容量制御を行う。
上記した本発明によるトラクション伝動容量制御装置にあっては、
第2ローラの旋回トルクおよび/または旋回速度の特異な時系列変化に関した特異点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定し、この基準点をトラクション伝動容量制御に資するため、
第2ローラ旋回動作基準点(トラクション伝動容量制御動作の基準点)を、動力伝達装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにかかわらず、また温度変化による動作特性やフリクションの変化にかかわらず、常に正確に求め得ることとなり、トラクション伝動容量制御を常に狙い通りに遂行することができる。
本発明の第1実施例になるトラクション伝動容量制御装置を内包した駆動力配分装置をトランスファーとして具える四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。 図1における駆動力配分装置の縦断側面図である。 図2の駆動力配分装置で用いたベアリングサポートを示し、 (a)は、ベアリングサポートを駆動力配分装置のハウジングと共に示す正面図、 (b)は、ベアリングサポートを単体で示す縦断側面図である。 図2の駆動力配分装置で用いたクランクシャフトの縦断正面図である。 図2に示す駆動力配分装置の動作説明図で、 (a)は、クランクシャフト回転角が基準点の0°である位置における第1ローラおよび第2ローラの離間状態を示す動作説明図、 (b)は、クランクシャフト回転角が90°である時における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図、 (c)は、クランクシャフト回転角が180°である時における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図である。 図2に示した駆動力配分装置のクランクシャフト回転角に対するクランクシャフト駆動トルクの変化特性を示す特性線図である。 図1におけるトランスファコントローラが、駆動力配分制御に当たって実行するクランクシャフト回転角基準点の設定プログラムを示すフローチャートである。 図7の制御プログラムにより、クランクシャフトを定速回転させてクランクシャフト回転角基準点を設定するときの動作タイムチャートである。 図7の制御プログラムにより、クランクシャフトを定力回転させてクランクシャフト回転角基準点を設定するときの動作タイムチャートである。 図7の制御プログラムにより、クランクシャフトを定力回転させようとしたが、逆起電力に起因してトルクが予定値未満の状態のまま、クランクシャフト回転角基準点の設定が行われた場合の動作タイムチャートである。 本発明の第2実施例になるトラクション容量制御装置がクランクシャフト回転角基準点を設定する時の制御プログラムを示す、図7に対応するフローチャートである。 図11の制御プログラムにより、クランクシャフトを一方向へ1回転させてクランクシャフト回転角基準点を設定するときに用いるクランクシャフト駆動トルク推定値の時系列変化を、クランクシャフトの駆動を行うモータの実トルクと比較して示すチャートである。
1 駆動力配分装置
2 エンジン
3 変速機
4 リヤプロペラシャフト
5 リヤファイナルドライブユニット
6L,6R 左右後輪(主駆動輪)
7 フロントプロペラシャフト
8 フロントファイナルドライブユニット
9L,9R 左右前輪(従駆動輪)
11 ハウジング
12 入力軸
13 出力軸
18,19 ローラベアリング
23,25 ベアリングサポート
31 第1ローラ
32 第2ローラ
45 ローラ間押し付け力制御モータ(第2ローラ旋回手段)
51L,51R クランクシャフト(第2ローラ旋回手段)
51Lc,51Rc リングギヤ(第2ローラ旋回手段)
55 クランクシャフト駆動ピニオン(第2ローラ旋回手段)
56 ピニオンシャフト
以下、この発明の実施例を添付の図面に基づいて説明する。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になるトラクション伝動容量制御装置を内包した駆動力配分装置1をトランスファーとして具える四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。
図1の四輪駆動車両は、エンジン2からの回転を変速機3による変速後、リヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を経て左右後輪6L,6Rに伝達される後輪駆動車をベース車両とし、
これら左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、駆動力配分装置1より、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。
駆動力配分装置1は、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力することにより、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分比を決定するもので、本実施例においては、この駆動力配分装置1を図2に示すように構成する。
図2において、11はハウジングを示し、このハウジング11内に入力軸12および出力軸13を相互に平行に配して横架する。
入力軸12は、その両端におけるボールベアリング14,15によりハウジング11に対し軸線O1の周りで自由に回転し得るよう支持する。
入力軸12は更に、ローラベアリング18,19を介しベアリングサポート23,25に対しても回転自在に支持する。
このためベアリングサポート23,25にはそれぞれ、図3(a),(b)に示すごとくローラベアリング18,19が嵌合するための開口23a,25aを設ける。
これらベアリングサポート23,25はそれぞれ、入出力軸12,13の共通な回転支持板であり、図2に示すごとくハウジング11の対応する内側面11b,11cに接触させてハウジング11内に配置するが、これらハウジング内側面11b,11cに対し固着させないこととする。
入力軸12の両端をそれぞれ図2に示すごとく、シールリング27,28による液密封止下でハウジング11から突出させ、
該入力軸12の図中左端を変速機3(図1参照)の出力軸に結合し、図中右端をリヤプロペラシャフト4(図1参照)を介してリヤファイナルドライブユニット5に結合する。
入力軸12の軸線方向中程には、第1ローラ31を同心に一体成形して設け、
出力軸13の軸線方向中程には、第2ローラ32を同心に一体成形して設け、これら第1ローラ31および第2ローラ32を共通な軸直角面内に配置する。
出力軸13は、以下のような構成によりハウジング11に対し間接的に回転自在に支持する。
つまり、出力軸13の軸線方向中程に一体成形した第2ローラ32の軸線方向両側に配置して、出力軸13の両端部に中空のクランクシャフト51L,51Rを遊嵌する。
これらクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra(半径をRiで図示した)と、出力軸13の両端部外周との間に軸受52L,52Rを介在させることにより、出力軸13をクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra内において、これら中心孔51La,51Raの中心軸線O2の周りに自由に回転し得るよう支持する。
クランクシャフト51L,51Rには図4に明示するごとく、中心孔51La,51Ra(中心軸線O2)に対し偏心した外周部51Lb,51Rb(半径をRoで図示した)を設定し、これら偏心外周部51Lb,51Rbの中心軸線O3は中心孔51La,51Raの軸線O2(第2ロータ32の回転軸線)から、両者間の偏心分εだけオフセットしている。
クランクシャフト51L,51Rの偏心外周部51Lb,51Rbはそれぞれ図2に示すごとく、軸受53L,53Rを介して対応する側におけるベアリングサポート23,25内に回転自在に支持する。
このためベアリングサポート23,25にはそれぞれ、図3(a),(b)に示すごとく軸受53L,53Rが嵌合するための開口23b,25bを設ける。
ベアリングサポート23,25は、前記した通り入出力軸12,13の共通な回転支持板であるが、これら入出力軸12,13がそれぞれ第1ローラ31および第2ローラ32を一体に有することから、第1ローラ31および第2ローラ32の共通な回転支持板でもある。
そしてベアリングサポート23,25は、図2,3に示すように、入力軸12を挟んで出力軸13から遠い側におけるハウジング11の内壁11aに接触せず、且つ、図3に示すように、出力軸13を挟んで入力軸12から遠い側におけるハウジング11の内壁11dにも接触しない大きさとする。
ベアリングサポート23,25は更に、図3に示すように、入力軸12(第1ローラ31)の軸線O1周りにおける揺動を防止するための突起23c,25cおよび23d,25dを設け、これら突起23c,25cおよび23d,25dを、対応するハウジング内側面11e,11fに設けたガイド溝11g,11hの底面に当接させる。
ガイド溝11g,11hは図3(a)に示すごとく、ベアリングサポート23,25に設けた開口23b,25bの接線方向に細長い形状とし、これにより同方向における突起23c,25cの変位を拘束しないようにする。
前記のごとくにしてベアリングサポート23,25に回転自在に支持したクランクシャフト51L,51Rはそれぞれ、図2に示すように第2ローラ32と共に、スラストベアリング54L,54Rで、ベアリングサポート23,25間に軸線方向位置決めする。
図2に示すように、クランクシャフト51L,51Rの相互に向き合う隣接端にそれぞれ、偏心外周部51Lb,51Rbと同心のリングギヤ51Lc,51Rcを一体に設け、これらリングギヤ51Lc,51Rcをそれぞれ同仕様のものとする。
リングギヤ51Lc,51Rcには、共通なクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させ、この噛合に当たっては、クランクシャフト51L,51Rを両者の偏心外周部51Lb,51Rbが円周方向において相互に整列する回転位置にした同期状態で、クランクシャフト駆動ピニオン55をリングギヤ51Lc,51Rcに噛合させる。
クランクシャフト駆動ピニオン55はピニオンシャフト56に結合し、ピニオンシャフト56の両端を軸受56a,56bによりハウジング11に回転自在に支持する。
図2の右側におけるピニオンシャフト56の右端を、液密封止してハウジング11の外に露出させ、
該ピニオンシャフト56の露出端面には、ハウジング11に取着して設けたローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合する。
よって、ローラ間押し付け力制御モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御するとき、出力軸13および第2ローラ32の回転軸線O2が図4に破線で示す軌跡円γに沿って旋回する。
従って、これらローラ間押し付け力制御モータ45、ピニオン55、リングギヤ51Lc,51Rcおよびクランクシャフト51L,51Rは、本発明における第2ローラ旋回手段を構成する。
図4の軌跡円γに沿った回転軸線O2(第2ローラ32)の旋回により、第2ローラ32が図5(a)〜(c)に示すごとく第1ローラ31に対し径方向へ接近する。
このとき第1ローラ31および第2ローラ32のローラ軸間距離L1(図2も参照)は、クランクシャフト51L,51Rの回転角θの増大につれ、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも小さくなる。
かかるローラ軸間距離L1の低下により、第1ローラ31に対する第2ローラ32の径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)が大きくなり、ローラ軸間距離L1の低下度合いに応じてローラ間径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)を任意に制御することができる。
なお図5(a)に示すように本実施例では、第2ローラ回転軸線O2がクランクシャフト回転軸線O3の直下に位置し、第1ローラ31および第2ローラ32の軸間距離L1が最大となる下死点でのローラ軸間距離L1を、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも大きくする。
これにより当該クランクシャフト回転角θ=0°の下死点においては、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に径方向へ押し付けられることがなく、ローラ31,32間でトラクション伝動が行われないトラクション伝動容量=0の状態を得ることができ、
トラクション伝動容量を下死点での0と、図5(c)に示す上死点(θ=180°)の時に得られる最大値との間で任意に制御することができる。
なお本実施例では実際上、後で詳述するようにクランクシャフト51L,51Rの回転角基準点を設定し、当該基準点のクランクシャフト回転角θを0°とし、当該基準点からの回転量をクランクシャフト回転角θとするが、
クランクシャフト回転角基準点の設定要領について説明するまでは、説明の便宜上、クランクシャフト回転角基準点が下死点であることとして説明を展開する。
クランクシャフト51Lおよび出力軸13をそれぞれ図2の左側においてハウジング11から突出させ、該突出部においてハウジング11およびクランクシャフト51L間にシールリング57を介在させると共に、クランクシャフト51L および出力軸13間にシールリング58を介在させ、
これらシールリング57,58により、ハウジング11から突出するクランクシャフト51Lおよび出力軸13の突出部をそれぞれ液密封止する。
なおシールリング55,56の介在に際しては、これらシールリング55,56を位置させるクランクシャフト51Lの端部においてその内径と外径の中心を、出力軸13の支持位置と同様に偏心させ、
クランクシャフト51Lの上記端部外径とハウジング11との間にシールリング55を介在させ、クランクシャフト51Lの上記端部内径と出力軸13との間にシールリング56を介在させる。
かかるシール構造によれば、出力軸13および第2ローラ32の上記旋回によりその回転軸線O2が旋回変位するにもかかわらず、出力軸13をハウジング11から突出する箇所において良好にシールし続けることができる。
<駆動力配分作用>
上記した図1〜5に示す実施例の駆動力配分を以下に説明する。
変速機3(図1参照)から駆動力配分装置1の入力軸12に達したトルクは、一方でこの入力軸12からそのままリヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5(ともに図1参照)を順次経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)に伝達され、これら左右後輪6L,6Rの駆動に供される。
他方で本実施例の駆動力配分装置1は、ローラ間押し付け力制御モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御し、ローラ軸間距離L1を第1ローラ31および第2ローラ32の半径の和値よりも小さくすることにより、ローラ31,32を径方向に相互に押圧接触させている場合、
これらローラ31,32が径方向相互押圧力に応じたローラ間伝達トルク容量を持つことから、このトルク容量に応じて、左右後輪6L,6R(主駆動輪)へのトルクの一部を、第1ローラ31から第2ローラ32を経て出力軸13に向かわせることができる。
なお、この伝動中における第1ローラ31および第2ローラ32間の径方向押圧反力は、これらに共通な回転支持板であるベアリングサポート23,25で受け止められるため、ハウジング11に伝達されることがない。
従ってハウジング11を、第1ローラ31および第2ローラ32間の径方向押圧反力に抗し得るほど高強度に造る必要がなくて、重量的およびコスト的に不利になるのを回避することができる。
その後トルクは、出力軸13の図2中左端から、フロントプロペラシャフト7(図1参照)およびフロントファイナルドライブユニット8(図1参照)を経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達され、これら左右前輪9L,9Rの駆動に供される。
かくして車両は、左右後輪6L,6R(主駆動輪)および左右前輪9L,9R(従駆動輪)の全てを駆動しての四輪駆動走行が可能である。
トラクション伝動容量制御>
上記の四輪駆動走行に際し、クランクシャフト51L,51Rの回転角θが図5(b)に示すごとく90°であって、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に、この時のオフセット量OSに対応した径方向押圧力で押し付けられた摩擦接触状態である場合、これらローラ31,32間におけるオフセット量OSに対応したトラクション伝動容量で左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへの動力伝達が行われる。
そして、クランクシャフト51L,51Rを図5(b)に示すθ=90°の回転位置から、図5(c)に示すクランクシャフト回転角θ=180°の上死点に向け回転させてクランクシャフト回転角θを増大させると、
ローラ軸間距離L1が更に減少して第1ローラ31および第2ローラ32の相互オーバーラップ量OLが増大する結果、第1ローラ31および第2ローラ32は径方向相互押圧力を増大され、これらローラ31,32間のトラクション伝動容量を増大させることができる。
クランクシャフト51L,51Rが図5(c)の上死点位置(θ=180°)に達すると、第1ローラ31および第2ローラ32は相互に、最大のオーバーラップ量OLに対応した径方向最大押圧力で径方向へ押し付けられて、これらの間のトラクション伝動容量を最大にすることができる。
なお最大のオーバーラップ量OLは、第2ローラ回転軸線O2およびクランクシャフト回転軸線O3間の偏心量εと、図5(b)につき上記したオフセット量OSとの和値である。
以上の説明から明らかなように、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=0°の回転位置から、クランクシャフト回転角θ=180°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの増大につれ、ローラ間トラクション伝動容量を0から最大値まで連続変化させることができ、
逆に、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=180°の回転位置から、θ=0°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの低下につれ、ローラ間トラクション伝動容量を最大値から0まで連続変化させることができ、
ローラ間トラクション伝動容量をクランクシャフト51L,51Rの回転操作により自在に制御し得る。
図6は、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=0°のクランクシャフト回転角基準点から、クランクシャフト回転角θ=180°(θfin)の回転位置まで回転操作した時における、またクランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=0°のクランクシャフト回転角基準点から、逆方向へクランクシャフト回転角θ=−180°(−θfin)の回転位置まで回転操作した時における、クランクシャフト51L,51Rの駆動トルクTc(モータ45の駆動電流iに比例)の変化特性を示す。
いずれ方向への回転時もクランクシャフト駆動トルクTc(モータ駆動電流i)は、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に接触し始めるクランクシャフト回転角θ=±θstとなった時より発生し、クランクシャフト回転角θ=±θmaxとなった時に最大値となり、以後は徐々に低下してクランクシャフト回転角θ=±θfinとなった時に0となる。
上記トラクション伝動容量制御のため、本実施例においては、図1に示すようにトランスファコントローラ111を設け、これによりローラ間押し付け力制御モータ45の回転制御(クランクシャフト回転角θの制御)を行うものとする。
そしてトランスファコントローラ111には、
エンジン2の出力を加減するアクセル開度APO(アクセルペダル踏み込み量を検出するアクセル開度センサ112からの信号と、
左右後輪6L,6R(主駆動輪)の回転周速Vwrを検出する後輪速センサ113からの信号と、
車両の重心を通る鉛直軸線周りにおけるヨーレートφを検出するヨーレートセンサ114からの信号と、
トランスファコントローラ111からローラ間押し付け力制御モータ45の駆動電流iを検出するモータ駆動電流センサ115からの信号とを入力するほか、
図2に示すごとくハウジング11内に設けられてクランクシャフト51L,51Rの実回転角θ´を検出するクランクシャフト回転角センサ116からの信号を入力する。
トランスファコントローラ111は、これら入力情報を基に、左右後輪6L,6R(主駆動輪)の駆動力および前後輪目標駆動力配分比を求め、これら左右後輪駆動力および前後輪目標駆動力配分比から、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力を演算する。
そしてトランスファコントローラ111は、第1ローラ31および第2ローラ32間のトラクション伝動容量が上記の目標前輪駆動力に対応したものとなるような目標クランクシャフト回転角を求め、クランクシャフト51L,52Rの実回転角θ´がこの目標クランクシャフト回転角となるようローラ間押し付け力制御モータ45の回転制御を行う。
<クランクシャフト回転角基準点の設定>
ところで、ローラ間押し付け力制御モータ45によるクランクシャフト51L,52Rの回転角(θ)制御は、クランクシャフト51L,52Rの或る回転角基準点からのクランクシャフト回転角θを上記の目標クランクシャフト回転角となす制御であり、
当該クランクシャフト51L,52Rの回転角基準点(トラクション伝動容量制御動作の基準点)が明確でないと、この基準点によって異なるクランクシャフト回転角θとクランクシャフト駆動トルクTc(モータトルク)との関係も正確に把握し得ず、上記のトラクション伝動容量制御を狙い通りに遂行することができない。
また、上記クランクシャフト51L,52Rの回転角基準点が明確に定義されていた場合であっても、このクランクシャフト回転角基準点は、駆動力配分装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにより変化し、トラクション伝動容量制御を正確に遂行することができない。
本実施例は、上記のクランクシャフト回転角基準点を、駆動力配分装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにかかわらず常に正確に求め得るようにして、常に狙い通りに前記のトラクション伝動容量制御を遂行できるようにしたものである。
そのため、トランスファコントローラ111が前記のトラクション伝動容量制御に際し、図7に示す制御プログラムを実行してクランクシャフト回転角基準点を求め、これを基に前記のトラクション伝動容量制御を行うようになす。
図7の制御プログラムは、ローラ間径方向押し付け力制御モータ45の応答性に対して遅れをとることのないような周期、例えば5msecごとの定時割り込みにより繰り返し実行する。
ステップS1においては、モータ駆動電流センサ115で検出したモータ駆動電流iと、クランクシャフト回転角センサ116で検出したクランクシャフト実回転角θ'を読み込む。
ところでモータ駆動電流iは、クランクシャフト駆動トルクTc(第2ローラ旋回トルク)を表す情報であり、従ってステップS1は、本発明における旋回トルク検出手段に相当する。
ステップS2においては、ステップS1で検出したクランクシャフト回転角θ'を基にクランクシャフト回転速度ωを演算する。
ところで、クランクシャフト回転速度ωは第2ローラ旋回速度そのものであり、従ってステップS2は、本発明における旋回速度検出手段に相当する。
かかるクランクシャフト回転速度ωの演算に当たっては、クランクシャフト回転角θ'の今回読み込み値(ステップS1)と、1演算周期前の前回読み込み値(メモリ値)との差分を1演算周期(5msec)で除算して求めたり、或いは、クランクシャフト回転角θ'をハイパスフィルタに通過させるフィルタ処理により求めることができる。
ステップS3においては、クランクシャフト回転角θ'を基に、クランクシャフト51L,52Rが図5(b)および図5(c)に示すように正方向に回転して、この方向へ1回転したか否かをチェックする。
ステップS3でクランクシャフト51L,52Rが未だ正方向に1回転していないと判別する間は、制御をステップS4へ進めて、クランクシャフト51L,52Rの正方向1回転を行わせる。
つまりステップS4では、モータ45にモータ駆動電流iを与えて、このモータ45によりクランクシャフト51L,51Rを図5(b)および図5(c)に示すように正方向へ回転駆動し、これにより第2ローラ32を同方向(正方向)へ旋回させる。
ステップS4では更に、当該クランクシャフト51L,51Rの正方向回転(第2ローラ32の同方向旋回)に際し、この回転(旋回)を遂行する形態として以下の3形態、
(1)クランクシャフト51L,51Rを一定速度で回転させる第1形態、
(2)クランクシャフト51L,51Rを一定トルク指令により指令通りの一定トルクで回転させる第2形態、
(3)一定トルクを指令するも逆起電圧の影響で指令通りの一定トルクを出力できないままクランクシャフト51L,51Rが回転される第3形態、
があることから、
これらのうちの1形態を選択して決定し、当該決定した形態により上記クランクシャフト51L,51Rの正方向回転(第2ローラ32の同方向旋回)を行わせる。
なおクランクシャフト51L,51Rは第2ローラ32の旋回を行うものであり、従ってステップS4は、本発明における第2ローラ定速旋回手段および第2ローラ定力旋回手段に相当する。
なお、「クランクシャフト51L,51Rを一定速度で回転させる」第1形態は、例えばクランクシャフト回転角θ´を、一定速度で変化するクランクシャフト回転角指令値に追従するよう制御演算する角度サーボ系を用い、その演算結果であるモータ駆動電流指令値をトランスファコントローラ111がモータ45に与えてモータ45を駆動することにより実現可能である。
また、「クランクシャフト51L,51Rを一定トルク指令により指令通りの一定トルクで回転させる」第2形態や、「一定トルクを指令するも逆起電圧の影響で指令通りの一定トルクを出力できないままクランクシャフト51L,51Rが回転される」第3形態は、トランスファコントローラ111とは別に、任意のモータ駆動電流指令値をモータ45に与えてモータ45を駆動することにより実現可能である。
ステップS5においては、ステップS1で読み込んだモータ駆動電流iや、ステップS2で演算したクランクシャフト回転速度ωの特異な時系列変化(以下、これを特異点と称する)が出現したか否かをチェックする。
従ってステップS5は、本発明における特異点検出手段に相当する。
なお、上記特異点検出対象であるモータ駆動電流iとクランクシャフト回転速度ωとの間には、モータ駆動電源電圧をVとし、抵抗をRとし、逆起電圧定数(=トルク定数)をKeとすると、
i=(V-Ke×ω)/R
の関係が存在し、
モータ駆動電流iや、クランクシャフト回転速度ωの特異点としては、上記の回転(旋回)形態(第1形態〜第3形態)ごとに、以下のようなものがある。
(1)第1形態の「クランクシャフト51L,51Rを一定速度で回転させる」場合、図8の正回転域に示すようにクランクシャフト回転速度ωが一定値に保たれていることから、モータ駆動電流iに、クランクシャフト51L,51Rの駆動トルク変化に呼応した以下のような特異点(a),(b),(c),(d)、つまり、
(a)クランクシャフト正回転駆動トルクが最大値になるのに呼応し、モータ駆動電流iが最大値になる特異点
(b)クランクシャフト正回転駆動トルクが立ち上がったのに呼応し、モータ駆動電流iが増加を開始する特異点
(c)クランクシャフト正回転駆動トルクが低下から増大に転じたのに呼応し、モータ駆動電流iが減少から増加に反転する特異点
(d)クランクシャフト正回転駆動トルクが0になったのに呼応し、モータ駆動電流iが減少を終了する特異点
がそれぞれ出現する。
(2)第2形態の「クランクシャフト51L,51Rを一定トルク指令により指令通りの一定トルクで回転させる」場合、図9の正回転域に示すようにクランクシャフト51L,51Rの駆動トルクが、一定のモータ駆動電流iにより、これに対応した一定値に保たれていることから、クランクシャフト駆動負荷の変化に起因して、クランクシャフト回転速度ωに以下のような特異点(e),(f),(g),(h)、つまり、
(e)クランクシャフト駆動負荷が最大値になったのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが最小値になる特異点
(f)クランクシャフト駆動負荷の立ち上がりに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが減少を開始する特異点
(g)クランクシャフト駆動負荷が低下から増大へ反転したのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが増加から減少に転じる特異点
(h)クランクシャフト駆動負荷が0になったのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが増加を終了する特異点
がそれぞれ出現する。
(3)第3形態の「一定トルクを指令するも逆起電圧の影響で指令通りの一定トルクを出力できないままクランクシャフト51L,51Rが回転される」場合、図10の正回転域に示すごとく、一定のモータ駆動電流指令値i*により一定トルクを指令したが、逆起電圧の影響でモータ駆動電流指令値i*に対応したモータトルクが得られず、これよりも小さなトルクでクランクシャフト51L,51Rが回転されることから、モータ駆動電流iに、クランクシャフト51L,51Rの駆動トルク変化に呼応した以下のような特異点(a),(b),(c),(d)、また、クランクシャフト回転速度ωにクランクシャフト駆動負荷の変化に呼応した以下のような特異点(e),(f),(g),(h)、つまり、
(a)クランクシャフト正回転駆動トルクが最大値になるのに呼応し、モータ駆動電流iが最大値になる特異点
(b)クランクシャフト正回転駆動トルクが立ち上がったのに呼応し、モータ駆動電流iが増加を開始する特異点
(c)クランクシャフト正回転駆動トルクが低下から増大に転じたのに呼応し、モータ駆動電流iが減少から増加に反転する特異点
(d)クランクシャフト正回転駆動トルクが0になったのに呼応し、モータ駆動電流iが減少を終了する特異点
(e)クランクシャフト駆動負荷が最大値になったのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが最小値になる特異点
(f)クランクシャフト駆動負荷の立ち上がりに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが減少を開始する特異点
(g)クランクシャフト駆動負荷が低下から増大へ反転したのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが増加から減少に転じる特異点
(h)クランクシャフト駆動負荷が0になったのに呼応し、クランクシャフト回転速度ωが増加を終了する特異点
がそれぞれ出現する。
ステップS5で上記特異点(a)〜(h)の出現を確認するまでは、制御をステップS1に戻して、これら特異点の出現まで、ステップS1〜ステップS5のループを繰り返す。
ステップS5で上記特異点(a)〜(h)の出現を確認したとき、制御をステップS6に進め、このステップS6においては、これら特異点(a)〜(h)のうち、選択した任意の特異点が出現した時のクランクシャフト回転角検出値θ´をθ1として更新し、記憶する。
ステップS3でクランクシャフト51L,52Rが図5(b)および図5(c)に示す正方向への1回転を終えたと判別する時、制御をステップS7以降に進めて、クランクシャフト51L,52Rを逆方向へ1回転させると共に、この逆回転中に同様な特異点の出現チェックを行う。
そのため先ずステップS7において、クランクシャフト回転角θ'を基に、クランクシャフト51L,52Rが上記の正方向1回転位置から逆方向へ1回転したか否かをチェックする。
ステップS7でクランクシャフト51L,52Rが未だ逆方向への1回転を終了していないと判別する間は、制御をステップS8へ進めて、クランクシャフト51L,52Rの当該逆方向1回転を行わせる。
つまりステップS8では、モータ45にモータ駆動電流iを与えて、このモータ45によりクランクシャフト51L,51Rを正方向1回転終了位置から逆方向へ回転駆動し、これにより第2ローラ32を同方向(逆方向)へ旋回させて、正回転開始時と同じ元の位置に復帰させる。
なお、かかる逆方向への回転(旋回)を遂行する形態は、前述した形態(1)〜(3)のうち、正方向への回転(旋回)時と同じ形態とする。
ステップS9においては、当該逆回転中にモータ駆動電流iやクランクシャフト回転速度ωの特異点が出現したか否かをチェックする。
当該逆回転中においても、図8〜10の逆回転域に示すごとくモータ駆動電流iやクランクシャフト回転速度ωに、正回転時と同様な特異点(a)〜(h)が出現し(ただし前記した各特異点の解説中における「正」を「逆」と読み替えるものとする)、ステップS9では、図8〜10の逆回転域における特異点(a)〜(h)の出現チェックを行う。
ステップS9で逆転時における上記特異点(a)〜(h)の出現を確認するまでは、制御をステップS1に戻して、これら特異点の出現まで、ステップS1〜ステップS3およびステップS7〜ステップS9のループを繰り返す。
ステップS9で逆転時における上記特異点(a)〜(h)の出現を確認したとき、制御をステップS10に進め、このステップS10においては、逆転時における特異点(a)〜(h)のうち、ステップS6で選択したと同種(同符号)の特異点が出現した時のクランクシャフト回転角検出値θ´をθ2として更新し、記憶する。
ステップS7でクランクシャフト51L,52Rの逆方向への1回転が終了したと判別する時、制御をステップS11へ進め、
このステップS11において、ステップS6およびステップS10で記憶した、正回転時および逆回転時における同種(同符号)の特異点の出現時クランクシャフト回転角θ1およびθ2から求め得る両者の中間点を基に、図5(a)に例示したクランクシャフト回転角基準点を設定する。
従ってステップS11は、本発明におけるクランクシャフト回転角基準点設定手段に相当する。
当該クランクシャフト回転角基準点の設定に際しては、θ1>θ2であるとき、θ1とθ2の中間点を、クランクシャフト回転角基準点=0°とした時の0°に設定する。
このとき、クランクシャフト回転角基準点からのクランクシャフト回転角θは、
θ=θ'+{0-(θ1+θ2)/2})
となる。
また逆にθ1<θ2であるときは、θ1とθ2の中間点を、クランクシャフト回転角基準点=0°としたときの基準点から180°回転した点に設定する。
このとき、クランクシャフト回転角基準点からのクランクシャフト回転角θは、
θ=θ'+{180-(θ1+θ2)/2}
となる。
つまり第1実施例においては上記した処から明らかなように、クランクシャフト回転角基準点の設定に際し、クランクシャフト51L,51Rをモータ45により正転方向へ1回転だけ駆動して、第2ローラ32を同方向(正方向)へ1回転だけ旋回させ、この間にモータ駆動電流iまたはクランクシャフト回転速度ωの特異点(a)〜(h)の1つが出現した時のクランクシャフト回転角θ1を検出し、
その後、クランクシャフト51L,51Rをモータ45により逆転方向へ1回転だけ戻し駆動して、第2ローラ32を同方向(逆方向)へ元の位置まで戻し旋回させ、この間にモータ駆動電流iまたはクランクシャフト回転速度ωの同種(同符号)の特異点が出現した時のクランクシャフト回転角θ2を検出し、
これらクランクシャフト回転角θ1,θ2の中間点からクランクシャフト回転角基準点を求めるものである。
図1のトランスファコントローラ111は、上記のように設定したクランクシャフト回転角基準点を、図5(a)に示した(クランクシャフト回転角θ=0)のクランクシャフト回転動作基点とし、ここからのクランクシャフト回転角θに基づき前記トラクション伝動容量制御を行う。
<第1実施例の効果>
上記した第1実施例になる駆動力配分装置のトラクション伝動容量制御装置によれば、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を両方向へ旋回させ、この間にモータ駆動電流iまたはクランクシャフト回転速度ωの特異点(a)〜(h)の1つが出現した時のクランクシャフト回転角θ1,θ2(第2ローラ旋回位置)を検出し、クランクシャフト回転角θ1,θ2(第2ローラ旋回位置)の中間点からクランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)を求め、かかるクランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)からの第2ローラ旋回量に基づき駆動力配分装置のトラクション伝動容量制御を行うため、
クランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)、つまりトラクション伝動容量制御動作の基準点を、駆動力配分装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにかかわらず、また温度変化による動作特性やフリクションの変化にかかわらず、常に正確に求め得ることとなり、トラクション伝動容量制御を常に狙い通りに遂行することができる。
また本実施例においては、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を一定速度で旋回させ、この間におけるクランクシャフト駆動トルク(第2ローラ旋回トルク)の特異点(a),(b),(c),(d)を検出し、これら特異点を基に上記クランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)の設定を行うため、
クランクシャフト駆動トルク(第2ローラ旋回トルク)の時系列変化をモニタするだけで、上記の特異点(a),(b),(c),(d)を簡単、且つ容易に検出し得る。
また、クランクシャフト駆動トルク(第2ローラ旋回トルク)の値そのものが上記特異点(a),(b),(c),(d)の出現に影響しないことから、
クランクシャフト駆動トルク(第2ローラ旋回トルク)の値に影響するイナーシャ分の補正が不要であり、クランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)の設定精度が向上して、上記の効果を更に顕著なものにすることができる。
本実施例においては更に、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を一定トルクで旋回させ、この間におけるクランクシャフト回転速度ω(第2ローラ旋回速度)の特異点(e),(f),(g),(h)を検出し、これら特異点を基に上記クランクシャフト回転角基準点(第2ローラ旋回動作基準点)の設定を行うため、
クランクシャフト回転速度ω(第2ローラ旋回速度)の時系列変化をモニタするだけで、上記の特異点(e),(f),(g),(h)を簡単、且つ容易に検出し得る。
また、モータ45からクランクシャフト51L,51R(第2ローラ32)への上記一定トルクを大きく設定することで、クランクシャフト51L,51Rの回転(第2ローラ32の旋回)を速やかに完了させることができ、結果的に特異点(e),(f),(g),(h)の検出を速やかに行い得て、前記の効果を更に顕著なものにすることができる。
加えて、モータ45などで回転速度に応じた逆起電圧が発生し、指令通りのトルクが得られなくなる場合には、クランクシャフト駆動トルクが増加するほど旋回速度が減少し、また旋回速度が減少すると逆起電圧が減少して駆動トルクが増加することから、
図10につき前述したように、クランクシャフト駆動トルク(第2ローラ旋回トルク)の特異点(a),(b),(c),(d)と、クランクシャフト回転速度ω(第2ローラ旋回速度)の特異点(e),(f),(g),(h)との双方が出現して、特異点の選択許容度が増して有利である。
<第2実施例の構成>
図11は、本発明の第2実施例になるトラクション容量制御装置がクランクシャフト回転角基準点を設定する時の制御プログラムである。
本実施例においても、駆動力配分装置は図1〜6に示すと同様なものとし、図1におけるトランスファコントローラ111が前記のトラクション伝動容量制御に際し、図11に示す制御プログラムを実行してクランクシャフト回転角基準点を求め、これを基に前記のトラクション伝動容量制御を行うものとする。
図11の制御プログラムは、ローラ間径方向押し付け力制御モータ45の応答性に対して遅れをとることのないような周期、例えば5msecごとの定時割り込みにより繰り返し実行する。
先ずステップS21において、モータ駆動電流センサ115で検出したモータ駆動電流iと、クランクシャフト回転角センサ116で検出したクランクシャフト実回転角θ'を読み込む。
次のステップS22においては、ステップS21で検出したクランクシャフト回転角θ'を基にクランクシャフト回転速度ωを演算する。
ステップS23においては、クランクシャフト回転角θ'を基に、クランクシャフト51L,52Rが任意の一方向へ1回転したか否かをチェックする。
ステップS23でクランクシャフト51L,52Rが未だ1回転していないと判別する間は、制御をステップS24へ進めて、クランクシャフト51L,52Rの回転を行わせる。
つまりステップS24においては、第1実施例につき前述した形態(1)〜(3)のうち、任意の1形態を選択し、選択した形態に応じた要領でモータ45にモータ駆動電流iを与え、このモータ45によりクランクシャフト51L,51Rを上記の一方向へ回転駆動し、これにより第2ローラ32を同方向へ旋回させる。
次のステップS25においては、イナーシャ分や、作動油粘性分の抵抗トルクが大きくて、当該抵抗トルク分の補正が必要である場合に、トルク補正量を演算してクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´を演算する。
当該クランクシャフト駆動トルク推定値Tc´の演算方法としては、以下の2つの方法が或る。
(1)モータ駆動電流iにトルク定数Kをかけて得られるモータトルクTm=(K×i)から、事前に取得しておいたイナーシャJおよび粘性Dと、ステップS22で求めたクランクシャフト回転速度ωと、このクランクシャフト回転速度ωを基に演算したクランクシャフト回転加速度αとを用いて得られた、イナーシャ分のトルク(J×α)と、粘性分のトルク(D×ω)を差し引いてクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´を算出する。
なお、クランクシャフト回転加速度αの演算に当たっては、クランクシャフト回転速度ωの現在値と1制御周期前の前回値との差分を制御周期で除算して算出する方法や、クランクシャフト回転速度ωにハイパスフィルタをかけて算出する方法などがある。
(2)クランクシャフト回転速度ωやクランクシャフト回転加速度αの演算によるノイズを除去するために、上記の(1)で算出したクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´をローパスフィルタに通してフィルタ処理する外乱オブザーバを用いて、最終的なクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´を求める。
次のステップS26においては、図7におけるステップS5と同様なチェックにより、ステップS21で読み込んだモータ駆動電流iや、ステップS22で演算したクランクシャフト回転速度ωの特異な時系列変化(特異点)が出現したか否かをチェックする。
ただし、ステップS25での補正を行った場合は、モータ駆動電流iの代わりに、ステップS25で求めたクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´に、前記(a)〜(d)の特異点に対応する特異点が出現したか否かをチェックする。
かように、モータ駆動電流iではなく、クランクシャフト駆動トルク推定値Tc´の特異点をチェックする理由は、以下のためである。
図12に、モータトルクTmからイナーシャ分のトルク(J×α)および粘性分のトルク(D×ω)を差し引いて求めたクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´の時系列変化を、クランクシャフト回転角θの時系列変化と共に示す。
この図から明らかなように、モータトルクTmが最大値になるクランクシャフト回転角θと、クランクシャフト駆動トルク推定値Tc´が最大値になるクランクシャフト回転角θとの間には誤差Δθがあり、クランクシャフト駆動トルク推定値Tc´を用いた方が、精度良くクランクシャフト回転角基準点を設定し得る。
よって本実施例においては、モータ駆動電流iに代え、クランクシャフト駆動トルク推定値Tc´の特異点を検出することとした。
ステップS26で特異点の出現を確認するまでは、制御をステップS11に戻して、これら特異点の出現まで、ステップS11〜ステップS26のループを繰り返す。
ステップS26で特異点の出現を確認したとき、制御をステップS27に進め、このステップS27においては、これら特異点のうち、最終的な特異点が出現した時のクランクシャフト回転角検出値θ´をθ1として更新し、記憶する。
ステップS23でクランクシャフト51L,52Rが前記一方向の1回転を終えたと判別する時、制御をステップS28に進める。
このステップS28においては、図6に示すクランクシャフト駆動特性(クランクシャフト回転角θに対するクランクシャフト駆動トルクTcの変化特性)と、ステップS26で最終的に特異点を検出したときのクランクシャフト回転角θ1とから、クランクシャフト回転角基準点を設定する。
つまり、ステップS26で最終的に特異点を検出したときのクランクシャフト回転角θ1と、図6に示すクランクシャフト駆動特性上において同種の特異点が出現するクランクシャフト回転角θとが一致するため、当該一致するクランクシャフト回転角をクランクシャフト回転角基準点θ0に設定する。
このとき、クランクシャフト回転角基準点からのクランクシャフト回転角θは、
θ=θ'+(θ0-θ1)
となる。
ちなみに、前記したクランクシャフト回転形態(1)〜(3)と、特異点(a)〜(h)との組み合わせごとのクランクシャフト回転角基準点θ0は、以下の通りである。
(1)+(a)の組み合わせ、(2)+(e)の組み合わせ、(3)+(a)の組み合わせ、および(3)+(d)の組み合わせの場合、クランクシャフト回転角基準点θ0は、θ0=θmaxである。
(1)+(b)の組み合わせ、(2)+(f)の組み合わせ、(3)+(b)の組み合わせ、および(3)+(f)の組み合わせの場合、クランクシャフト回転角基準点θ0は、θ0=θstである。
(1)+(c)の組み合わせ、(2)+(g)の組み合わせ、(3)+(c)の組み合わせ、および(3)+(g)の組み合わせの場合、クランクシャフト回転角基準点θ0は、θ0=-θmaxである。
(1)+(d)の組み合わせ、(2)+(h)の組み合わせ、(3)+(d)の組み合わせ、および(3)+(h)の組み合わせの場合、クランクシャフト回転角基準点θ0は、θ0=θfinである。
図1のトランスファコントローラ111は、上記のように設定したクランクシャフト回転角基準点θ0を、クランクシャフト回転角θ=0のクランクシャフト回転動作基点とし、ここからのクランクシャフト回転角θに基づき前記トラクション伝動容量制御を行う。
<第2実施例の作用・効果>
上記した第1実施例になる駆動力配分装置のトラクション伝動容量制御装置によれば、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を一方向へ旋回させ、この間にモータ駆動電流iまたはクランクシャフト回転速度ωの特異点(a)〜(h)の1つが出現した時のクランクシャフト回転角θ1(第2ローラ旋回位置)を検出し、このクランクシャフト回転角θ1(第2ローラ旋回位置)と、図6に示すクランクシャフト駆動トルク特性上において同種の特異点が存在するクランクシャフト回転角とからクランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)を求め、かかるクランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)からの第2ローラ旋回量に基づき駆動力配分装置のトラクション伝動容量制御を行うため、
クランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)、つまりトラクション伝動容量制御動作の基準点を、駆動力配分装置の製造上の寸法誤差やバラツキなどにかかわらず、また温度変化による動作特性やフリクションの変化にかかわらず、常に正確に求め得ることとなり、トラクション伝動容量制御を常に狙い通りに遂行することができ、第1実施例と同様な効果を奏し得る。
また本実施例においては、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を旋回させるに際し、一方向へ旋回させるだけでよいため、
クランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)の設定を短時間で行うことができて、トラクション伝動容量制御の応答性を高めることができる。
更に本実施例では、イナーシャ分や、作動油粘性分の抵抗トルクが大きくて、クランクシャフト駆動トルクを代表するモータ駆動電流i(モータトルクTm)が実際のクランクシャフト駆動トルクを表していない場合は、モータ駆動電流iの特異点ではなく、ステップS25につき前述したごとくモータトルクTm=(K×i)からイナーシャ分のトルク(J×α)と、粘性分のトルク(D×ω)を差し引いて得られるクランクシャフト駆動トルク推定値Tc´の特異点が出現した時のクランクシャフト回転角θ1(第2ローラ旋回位置)と、図6に示すクランクシャフト駆動トルク特性上において同種の特異点が存在するクランクシャフト回転角とからクランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)を求めるため、
イナーシャ分の抵抗トルク(J×α)および粘性分の抵抗トルク(D×ω)が大きい条件のもとでも、クランクシャフト回転角基準点θ0(第2ローラ旋回動作基準点)を正確に設定し得て、このような環境下でも上記の効果を確実に得ることができる。
その他の実施例
なお、上記した第1実施例および第2実施例のいずれにおいても、モータ45によりクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を旋回させるとき、360°に亘って旋回させることとしたが、
クランクシャフト駆動トルク(モータトルク)を制限して、クランクシャフト51L,51Rの回転(第2ローラ32の旋回)が360°未満の特異点出現時に停止するようになし、当該停止時のクランクシャフト回転角情報を基にクランクシャフト回転角基準点を設定することもできる。
しかしこの場合、部品のばらつきや劣化、温度変化による粘性やフリクションの変化によって、クランクシャフト51L,51Rの回転停止トルク(第2ローラ32の旋回停止トルク)が変化することから、上記のように制限するクランクシャフト駆動トルク(モータトルク)が小さすぎると回転せず、大きすぎると停止せずに回転し続けてしまうといった問題を生じたり、適切な制限トルクを探すのに長時間を要して、クランクシャフト回転角基準点を設定するまでの時間が長くなるといった問題を生ずる。
特に、モータ45およびクランクシャフト51L,51R間にトルクダイオードが存在する場合は、反力最大角度付近でクランクシャフト回転角基準点の設定を開始して動き出したトルクで回転させると、停止しないで回転し続けてしまうといった問題、
また、トルクダイオードのロック解除トルクが大きいと、一定トルクでは反転できずにクランクシャフト回転角基準点を設定し得ないといった問題を生ずる。
前記した第1実施例および第2実施例のように、モータ45でクランクシャフト51L,51Rを介し第2ローラ32を360°に亘って旋回させる場合、このような諸問題を生ずることなく、高精度にクランクシャフト回転角基準点を設定可能であり、
この点においても前記した第1実施例および第2実施例は、その優位性を享受することができて有利である。
なお前記した第1実施例および第2実施例の何れにおいても、トラクション伝動容量制御装置をトランスファ1の前後輪駆動力配分制御に用いる場合につき説明したが、本発明のトラクション伝動容量制御装置はこの用途に限られるものでなく、あらゆる型式のトラクション伝動式動力伝達装置のトラクション伝動容量制御に用いることができ、この場合も前記したと同様な作用・効果を奏し得ること勿論である。

Claims (7)

  1. 第1ローラおよび第2ローラの径方向相互押圧接触により得られるトラクション伝動によって動力伝達を行う動力伝達装置に用いられ、
    第2ローラを、該第2ローラの回転軸線からオフセットした偏心軸線周りで旋回させる第2ローラ旋回手段により、第1ローラおよび第2ローラ間の径方向相互押圧力を制御して前記動力伝達装置のトラクション伝動容量を制御するようにした装置において、
    前記第2ローラ旋回手段により第2ローラを旋回させて、該旋回時における第2ローラの旋回トルクを検出する旋回トルク検出手段、および、
    前記第2ローラ旋回手段により第2ローラを旋回させて、該旋回時における第2ローラの旋回速度を検出する旋回速度検出手段の少なくとも一方を具え、
    これら旋回トルク検出手段および旋回速度検出手段により検出した第2ローラの旋回トルクおよび旋回速度のうち、少なくとも一方の特異な時系列変化に関した特異点を検出する特異点検出手段と、
    この手段により検出した特異点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定する第2ローラ旋回動作基準点設定手段とを設け、
    該手段により設定した第2ローラ旋回動作基準点を前記トラクション伝動容量制御に資するよう構成したことを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  2. 請求項1に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記特異点検出手段は、前記旋回トルク検出手段および/または旋回速度検出手段が第2ローラの一方向旋回中に検出した前記旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出すると共に、前記旋回トルク検出手段および/または旋回速度検出手段が第2ローラの他方向旋回時に検出した前記旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出するものであり、
    前記第2ローラ旋回動作基準点設定手段は、第2ローラの前記一方向旋回時における旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出した第2ローラ回転位置と、第2ローラの前記他方向旋回時における旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出した第2ローラ回転位置との中間点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定するものであることを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  3. 請求項1または2に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記旋回速度検出手段に代えて、第2ローラを前記第2ローラ旋回手段により一定速度で旋回させる第2ローラ定速旋回手段を設け、
    前記特異点検出手段は、前記第2ローラ定速旋回手段による第2ローラの定速旋回中、前記旋回トルク検出手段で検出した第2ローラ旋回トルクの特異な時系列変化に関した特異点を検出するものであり、
    前記第2ローラ旋回動作基準点設定手段は、前記特異点検出手段が第2ローラの前記定速旋回中に検出した第2ローラ旋回トルクの特異点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定するものであることを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  4. 請求項1または2に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記旋回トルク検出手段に代えて、第2ローラを前記第2ローラ旋回手段により一定トルクで旋回させる第2ローラ定力旋回手段を設け、
    前記特異点検出手段は、前記第2ローラ定力旋回手段による第2ローラの定力旋回中、前記旋回速度検出手段で検出した第2ローラ旋回速度の特異な時系列変化に関した特異点を検出するものであり、
    前記第2ローラ旋回動作基準点設定手段は、前記特異点検出手段が第2ローラの前記定力旋回中に検出した第2ローラ旋回速度の特異点を基に第2ローラの旋回動作基準点を設定するものであることを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  5. 請求項1に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記特異点検出手段は、前記旋回トルク検出手段および/または旋回速度検出手段が第2ローラの1旋回中に検出した前記旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出するものであり、
    前記第2ローラ旋回動作基準点設定手段は、第2ローラの前記1旋回中における旋回トルクおよび/または旋回速度の特異点を検出した第2ローラ回転位置と、予め取得しておいた第2ローラ回転位置と旋回トルクおよび/または旋回速度との関係において同種の特異点が存在する第2ローラ回転位置とから第2ローラの旋回動作基準点を設定することを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  6. 請求項5に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記特異点検出手段は、前記旋回トルク検出手段が第2ローラの1旋回中に検出した前記旋回トルクからイナーシャ分および粘性分のトルクを差し引いて補正した補正後旋回トルクの特異点を検出するものであることを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載されたトラクション伝動容量制御装置において、
    前記動力伝達装置は、前記第1ローラが主駆動輪へのトルク伝達経路を成す回転部材と共に回転するよう、また前記第2ローラが従駆動輪へのトルク伝達経路を成す回転部材と共に回転するよう配置して、主駆動輪および従駆動輪間での駆動力配分を行う駆動力配分装置の用に供し、
    前記第2ローラ旋回動作基準点設定手段により設定した第2ローラ旋回動作基準点からの、前記第2ローラ旋回手段による第2ローラ旋回量に基づき、前記トラクション伝動容量制御を行って前記主従駆動輪間駆動力配分を制御可能にしたことを特徴とするトラクション伝動容量制御装置。
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