JP2013253629A - トランクション伝動機構の伝動容量制御装置 - Google Patents

トランクション伝動機構の伝動容量制御装置 Download PDF

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憲一 森
Kazutaka Adachi
和孝 安達
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豊 金子
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Abstract

【課題】第2ローラをクランクシャフトにより第1ローラに対し径方向へ押圧させるトランクション伝動容量制御を、クランクシャフト回転角情報無しに遂行させる。
【解決手段】判定部150がクランクシャフト回転角センサ116の正常を判定する間、クランクシャフト回転角θに基づいて求めたセンサ正常時モータ駆動電流Irをクランクシャフト駆動モータ45へ印加する。判定部がセンサ116の異常を判定すると、演算部140がクランクシャフト回転角に依存することなく求めたセンサ異常時モータ駆動電流Icをクランクシャフト駆動モータ45へ印加する。演算部はクランクシャフト回転角に依存することなく、クランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動反力トルク特性から得られる、クランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動モータ電流特性の特性を基に、クランクシャフト回転角指令値θodrからセンサ異常時モータ駆動電流を求める。
【選択図】図7

Description

本発明は、例えば四輪駆動車両のトランスファーとして用い得るトランクション伝動機構の伝動容量制御装置に関し、特に制御入力情報を低減可能にした当該伝動容量制御装置の改良提案に関するものである。
トラクション伝動機構としては従来から種々のものが提案されており、例えば特許文献1に記載のようなものがある。
当該先の提案になるトラクション伝動機構は、四輪駆動車両のトランスファーとして構成し、主駆動輪へのトルク伝達経路を成す回転部材と共に回転する第1ローラと、従駆動輪へのトルク伝達経路を成す回転部材と共に回転する第2ローラとを、外周面において相互に径方向へ押圧接触させ、これらローラ外周面間のトラクション力により主駆動輪へのトルクの一部を従駆動輪へ分配出力可能となし、駆動力を主駆動輪と従駆動輪とに分配し得るようにしたものである。
かかるトラクション伝動機構は、ローラ間のトラクション伝動容量を制御することで、主従駆動輪間の駆動力配分比を制御可能である。
トラクション伝動容量制御に際してはローラ間の径方向相互押圧力を制御することになるが、このローラ間径方向相互押圧力制御について特許文献1には、第2ローラをクランクシャフトの偏心軸部に回転自在に支承し、クランクシャフトの回転により生起させた第2ローラの固定旋回軸線(クランクシャフト回転軸線)周りにおける旋回によってローラ軸間距離を変更することで目的を達成する技術が提案されている。
特開2010−090951号公報
ところで、ローラ間径方向相互押圧力制御に際し特許文献1所載の技術では、トラクション伝動容量の目標値を実現するためのクランクシャフトの目標回転角度(第2ローラの目標旋回角度)にクランクシャフトの実角度(第2ローラの実旋回角度)が収斂するようクランクシャフトを駆動制御するため、クランクシャフトの実角度に係わる情報が不可欠であり、クランクシャフトの回転位置を検出する手段が必須であった。
一方で、クランクシャフトの回転位置検出手段はレゾルバなど高価なものであることが多く、コスト上不利である。
加えて従来のトラクション伝動容量制御では、この回転位置検出手段が故障すると、上記のごとく不可欠なクランクシャフトの実角度(第2ローラの実旋回角度)に係わる情報が消失して、トラクション伝動容量制御が不能な事態に陥る。
本発明は、上記の問題がすべからく、ローラ旋回角度情報に依存する伝動容量制御であることに起因するとの事実認識に基づき、ローラ旋回角度情報が無くても伝動容量制御を行い得るようなトラクション伝動機構の伝動容量制御装置を提案し、
もって、上記の回転位置検出手段が存在する場合においては、これが故障したとしてもトラクション伝動容量制御を引き続き遂行することができ、また上記の回転位置検出手段を設置しなくてもトラクション伝動容量制御を遂行することができるようにすることを目的とする。
この目的のため、本発明によるトランクション伝動機構の伝動容量制御装置は、これを以下のごとくに構成する。
先ず前提となるトラクション伝動機構を説明するに、これは、
複数のローラを外周面間のトラクションにより伝動可能に相関させて具え、これらローラ間におけるトラクション伝動容量制御のためのローラ間径方向相互押圧力制御を、任意ローラの固定旋回軸線周りにおける旋回によるローラ軸間距離の変更によって遂行するようにしたものである。
本発明は、かかるトラクション伝動機構に対し、
トラクション伝動容量の目標値を実現可能な上記任意ローラの目標旋回角度を演算する目標ローラ旋回角度演算手段を設け、更に、
ローラ間径方向相互押圧反力によって上記任意ローラの旋回に抗するよう作用するローラ旋回駆動反力の、ローラ旋回角度に対するローラ旋回駆動反力特性から得られた、ローラ旋回角度ごとのローラ旋回駆動反力と釣り合う上記任意ローラの旋回制御入力に係わるローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性を基に上記目標ローラ旋回角度から、該目標ローラ旋回角度を実現するための上記任意ローラの旋回制御入力を求めるローラ旋回制御入力演算手段を設け、
この手段により求めたローラ旋回制御入力を上記任意ローラの旋回駆動源に印加してトラクション伝動容量制御に資するよう構成したことを特徴とするものである。
上記した本発明によるトランクション伝動機構の伝動容量制御装置にあっては、
上記した特異なローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性を基に、トラクション伝動容量の目標値を実現可能な上記任意ローラの目標旋回角度から、該目標ローラ旋回角度を実現するための上記任意ローラの旋回制御入力を求め、このローラ旋回制御入力を上記任意ローラの旋回駆動源に印加してトラクション伝動容量制御に資するため、
現在のローラ旋回角度に係わる情報を検出することなしにトラクション伝動容量制御を行い得ることとなる。
このため、当該ローラ旋回角度情報を検出する手段が存在する場合において、これが故障したとしても上記のトラクション伝動容量制御を継続的に遂行することができ、
また上記ローラ旋回角度情報を検出する手段を設置しなくてもトラクション伝動容量制御を遂行することができる。
よって、上記ローラ旋回角度情報を検出する手段が不要であってコスト上有利であると共に、この手段が設置してある場合において当該手段が故障したときも(ローラ旋回角度情報の消失によっても)、トラクション伝動容量制御が不能になることがない。
本発明の一実施例になる伝動容量制御装置を内包するトランクション伝動機構を、前後輪駆動力配分装置(トランスファー)として用いた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。 図1におけるトランクション伝動機構(駆動力配分装置)の縦断側面図である。 図2のトランクション伝動機構(駆動力配分装置)で用いたベアリングサポートを示し、 (a)は、その正面図、 (b)は、その縦断側面図である。 図2のトランクション伝動機構(駆動力配分装置)で用いたクランクシャフトの縦断正面図である。 図2に示すトランクション伝動機構(駆動力配分装置)の伝動容量制御作用に係わる動作説明図で、 (a)は、クランクシャフト回転角が基準点の0°である場合における第1ローラおよび第2ローラの離間状態を示す動作説明図、 (b)は、クランクシャフト回転角が90°である場合における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図、 (c)は、クランクシャフト回転角が180°である場合における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図である。 図2のトランクション伝動機構(駆動力配分装置)におけるクランクシャフトの回転角度に対する駆動反力トルクの変化特性図である。 図1におけるトランファコントローラの機能別ブロック線図である。 図7におけるセンサ異常時モータ制御入力演算部の詳細を示す機能別ブロック線図である。 図6のクランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動反力トルク特性から得られる、クランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動モータ電流特性の特性線図である。 図8におけるクランクシャフト回転角指令値リミッタにより上限設定された制限済クランクシャフト回転角指令値によって制限されるトルク伝達可能領域を示す領域線図である。 図8におけるマップ出力補正部が出力する異常時モータ駆動電流の時系列変化特性を示すタイムチャートである。 図7に機能別ブロック線図として示すトランファコントローラの動作を、クランクシャフト回転角センサが故障した異常時について示す動作タイムチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる伝動容量制御装置を内包するトランクション伝動機構1を、前後輪駆動力配分装置(トランスファー)として用いた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。
図1の四輪駆動車両は、エンジン2からの回転を変速機3による変速後、リヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を経て左右後輪6L,6Rに伝達される後輪駆動車をベース車両とし、
これら左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、駆動力配分装置1より、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。
駆動力配分装置1は、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力することにより、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分比を決定するもので、本実施例においては、この駆動力配分装置1を図2に示すように構成する。
図2において、11はハウジングを示し、このハウジング11内に入力軸12および出力軸13を相互に平行に配して横架する。
入力軸12は、その両端におけるボールベアリング14,15によりハウジング11に対し軸線O1の周りに回転自在に支持する。
入力軸12は更に、ローラベアリング18,19を介しベアリングサポート23,25に対しても回転自在に支持する。
このためベアリングサポート23,25にはそれぞれ、図3(a),(b)に示すごとくローラベアリング18,19が嵌合するための開口23a,25aを設ける。
これらベアリングサポート23,25はそれぞれ、入出力軸12,13の共通な回転支持板であり、図2に示すごとくハウジング11の対応する内側面11b,11cに接触させてハウジング11内に配置するが、これらハウジング内側面11b,11cに対し固着させないようにする。
入力軸12の両端をそれぞれ図2に示すごとく、シールリング27,28による液密封止下でハウジング11から突出させ、該入力軸12の図中左端を変速機3(図1参照)の出力軸に結合し、図中右端をリヤプロペラシャフト4(図1参照)を介してリヤファイナルドライブユニット5に結合する。
入力軸12の軸線方向中程には、第1ローラ31を同心に一体成形して設け、出力軸13の軸線方向中程には、第2ローラ32を同心に一体成形して設け、これら第1ローラ31および第2ローラ32を共通な軸直角面内に配置する。
出力軸13は、以下のような構成によりハウジング11に対し間接的に回転自在に支持する。
つまり、出力軸13の軸線方向中程に一体成形した第2ローラ32の軸線方向両側に配置して、出力軸13の両端部に中空のクランクシャフト51L,51Rを遊嵌する。
これらクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra(半径をRiで図示した)と、出力軸13の両端部との遊嵌部に軸受52L,52Rを介在させて出力軸13をクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra内で、これらの中心軸線O2の周りに自由に回転し得るよう支持する。
クランクシャフト51L,51Rには図4に明示するごとく、中心孔51La,51Ra(中心軸線O2)に対し偏心した外周部51Lb,51Rb(半径をRoで図示した)を設定し、これら偏心外周部51Lb,51Rbの中心軸線O3は中心孔51La,51Raの軸線O2(第2ローラ32の回転軸線)から、両者間の偏心分εだけオフセットさせる。
クランクシャフト51L,51Rの偏心外周部51Lb,51Rbはそれぞれ図2に示すごとく、軸受53L,53Rを介して対応する側におけるベアリングサポート23,25内に回転自在に支持する。
このためベアリングサポート23,25にはそれぞれ、図3(a),(b)に示すごとく軸受53L,53Rが嵌合するための開口23b,25bを設ける。
ベアリングサポート23,25は、前記した通り入出力軸12,13の共通な回転支持板であるが、これら入出力軸12,13がそれぞれ第1ローラ31および第2ローラ32を一体に有することから、第1ローラ31および第2ローラ32の共通な回転支持板でもある。
そしてベアリングサポート23,25は、図2,3に示すように、入力軸12を挟んで出力軸13から遠い側におけるハウジング11の内壁11aに当接せず、且つ、図3に示すように、出力軸13を挟んで入力軸12から遠い側におけるハウジング11の内壁11dに当接しない大きさとする。
ベアリングサポート23,25は更に、図3に示すように、入力軸12(第1ローラ31)の軸線O1周りにおける揺動を防止するための突起23c,25cおよび23d,25dを設け、これら突起23c,25cおよび23d,25dを、対応するハウジング内側面11e,11fに設けたガイド溝11g,11hの底面に当接させる。
ガイド溝11g,11hは図3(a)に示すごとく、ベアリングサポート23,25に設けた開口23b,25bの接線方向に細長い形状とし、これにより同方向における突起23c,25cの変位を拘束しないようにする。
前記のごとくにしてベアリングサポート23,25に回転自在に支持したクランクシャフト51L,51Rはそれぞれ、図2に示すように第2ローラ32と共に、スラストベアリング54L,54Rで、ベアリングサポート23,25間に軸線方向位置決めする。
図2に示すように、クランクシャフト51L,51Rの相互に向き合う隣接端にそれぞれ、偏心外周部51Lb,51Rbと同心で、同仕様のリングギヤ51Lc,51Rcを一体に設け、
これらリングギヤ51Lc,51Rcに、共通なクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。
なおこの噛合に当たっては、クランクシャフト51L,51Rを両者の偏心外周部51Lb,51Rbが円周方向において相互に整列する回転位置にした状態で、クランクシャフト駆動ピニオン55をリングギヤ51Lc,51Rcに噛合させる。
クランクシャフト駆動ピニオン55はピニオンシャフト56に結合し、ピニオンシャフト56の両端を軸受56a,56bによりハウジング11に回転自在に支持する。
図2の右側におけるピニオンシャフト56の右端を、液密封止してハウジング11の外に露出させ、
該ピニオンシャフト56の露出端面には、ハウジング11に取着して設けたローラ間押し付け力制御モータ45の出力軸45aをセレーション嵌合などにより駆動結合する。
ローラ間押し付け力制御モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御するとき、出力軸13および第2ローラ32の回転軸線O2が図4に破線で示す軌跡円αに沿って旋回する。
従って、これらローラ間押し付け力制御モータ45、ピニオン55、リングギヤ51Lc,51Rcおよびクランクシャフト51L,51Rは、第2ローラ32を軸線O3の周りに旋回させるための手段を構成し、ローラ間押し付け力制御モータ45は、本発明におけるローラ旋回駆動源に相当する。
図4の軌跡円αに沿った回転軸線O2(第2ローラ32)の旋回により、第2ローラ32が図5(a)〜(c)に示すごとく第1ローラ31に対し径方向へ接近し、これら第1ローラ31および第2ローラ32のローラ軸間距離L1(図2も参照)をクランクシャフト51L,51Rの回転角θの増大につれ、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも小さくすることができる。
かかるローラ軸間距離L1の低下により、第1ローラ31に対する第2ローラ32の径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)が大きくなり、ローラ軸間距離L1の低下度合いに応じてローラ間径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)を任意に制御することができる。
なお図5(a)に示すように本実施例では、第2ローラ回転軸線O2がクランクシャフト回転軸線O3の直下に位置し、第1ローラ31および第2ローラ32の軸間距離L1が最大となる下死点でのローラ軸間距離L1を、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも大きくする。
これにより当該クランクシャフト回転角θ=0°の下死点においては、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に径方向へ押し付けられることがなく、ローラ31,32間でトランクション伝動が行われないトランクション伝動容量=0の状態を得ることができ、トランクション伝動容量を下死点での0と、図5(c)に示す上死点(θ=180°)で得られる最大値との間で任意に制御することができる。
かくして、第2ローラ32が図5(a)〜(c)に示すごとく第1ローラ31に対し径方向へ接近する間における第1ローラ31および第2ローラ32間の径方向押圧反力Ftは、θ=0°〜90°で0となり、θ=90°〜180°ではθの増大につれ増加し、θ=180°では最大値となる。
このローラ間径方向押圧反力Ftは、第1ローラ31および第2ローラ32に共通な回転支持板であるベアリングサポート23,25で受け止められ、ハウジング11に伝達されることがないため、ハウジング11を、ローラ間径方向押圧反力Ftに抗し得るほど高強度に造る必要がなくて、重量的におよびコスト的に不利になることがない。
他方でローラ間径方向押圧反力Ftは、クランクシャフト51L,51Rの回転角度増大(第2ローラ32の旋回角度増大)に対して抵抗するようクランクシャフト51L,51Rに作用するクランクシャフト駆動反力トルク(第2ローラ旋回駆動反力)Tcr=Ft×Ro×sinθを発生させ、このクランクシャフト駆動反力トルク(第2ローラ旋回駆動反力)Tcrはクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)θに対して図6に例示するごとき非線形な特性を呈する。
クランクシャフト51Lおよび出力軸13をそれぞれ図2の左側においてハウジング11から突出させ、該突出部においてハウジング11およびクランクシャフト51L間にシールリング57を介在させると共に、クランクシャフト51L および出力軸13間にシールリング58を介在させ、
これらシールリング57,58により、ハウジング11から突出するクランクシャフト51Lおよび出力軸13の突出部をそれぞれ液密封止する。
なおシールリング57,58の介在に際しては、これらシールリング57,58を位置させるクランクシャフト51Lの端部においてその内径と外径の中心を、出力軸13の支持位置と同様に偏心させ、
クランクシャフト51Lの上記端部外径とハウジング11との間にシールリング57を介在させ、クランクシャフト51Lの上記端部内径と出力軸13との間にシールリング58を介在させる。
かかるシール構造によれば、出力軸13および第2ローラ32の上記旋回によりその回転軸線O2が旋回変位するにもかかわらず、出力軸13をハウジング11から突出する箇所において良好にシールし続けることができる。
<駆動力配分作用>
上記した図1〜5に示す前後輪駆動力配分装置1による駆動力配分作用を以下に説明する。
変速機3(図1参照)から駆動力配分装置1の入力軸12に達したトルクは、一方でこの入力軸12からそのままリヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5(ともに図1参照)を経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)に伝達される。
他方で本実施例の前後輪駆動力配分装置1は、ローラ間押し付け力制御モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御し、ローラ軸間距離L1を第1ローラ31および第2ローラ32の半径の和値よりも小さくしている場合、
これらローラ31,32が径方向相互押圧力に応じたローラ間伝達トルク容量を持つことから、このトルク容量に応じて、左右後輪6L,6R(主駆動輪)へのトルクの一部を、第1ローラ31から第2ローラ32を経て出力軸13に向かわせることができる。
出力軸13に達したトルクはその後、出力軸13の図2中左端から、フロントプロペラシャフト7(図1参照)およびフロントファイナルドライブユニット8(図1参照)を経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達される。
かくして車両は、左右後輪6L,6R(主駆動輪)および左右前輪(従駆動輪)9L,9Rの全てを駆動しての四輪駆動走行が可能である。
この四輪駆動走行中、クランクシャフト51L,51Rの回転角θが図5(b)に示すごとく基準位置の90°であって、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に、この時のオフセット量OSに対応した径方向押圧力で押し付けられて摩擦接触している場合、これらローラ間のオフセット量OSに対応したトランクション伝動容量で左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへの動力伝達が行われる。
そして、クランクシャフト51L,51Rを図5(b)の基準位置から、図5(c)に示すクランクシャフト回転角θ=180°の上死点に向け回転操作してクランクシャフト回転角θを増大させるにつれ、ローラ軸間距離L1が更に減少して第1ローラ31および第2ローラ32の相互オーバーラップ量OLが増大する結果、第1ローラ31および第2ローラ32は径方向相互押圧力を増大され、これらローラ間のトランクション伝動容量を増大させることができる。
クランクシャフト51L,51Rが図5(c)の上死点位置に達すると、第1ローラ31および第2ローラ32は相互に、最大のオーバーラップ量OLに対応した径方向最大押圧力で径方向へ押し付けられて、これらの間のトランクション伝動容量を最大にすることができる。
なお最大のオーバーラップ量OLは、第2ローラ回転軸線O2およびクランクシャフト回転軸線O3間の偏心量εと、図5(b)につき上記したオフセット量OSとの和値である。
以上の説明から明らかなように、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=0°の回転位置から、クランクシャフト回転角θ=180°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの増大につれ、ローラ間トランクション伝動容量を0から最大値まで連続変化させることができ、
逆に、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=180°の回転位置から、θ=0°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの低下につれ、ローラ間トランクション伝動容量を最大値から0まで連続変化させることができ、
ローラ間トランクション伝動容量をクランクシャフト51L,51Rの回転操作により自在に制御し得る。
<トランクション伝動容量制御>
四輪駆動走行中は前後輪駆動力配分装置1が、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力するため、
第1ローラ31および第2ローラ32間のトランクション伝動容量を、左右後輪6L,6R(主駆動輪)の駆動力と、前後輪目標駆動力配分比とから求め得る、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力に対応させる必要がある。
この要求にかなうトランクション伝動容量制御のために本実施例においては、図1に示すようにトランスファコントローラ111を設け、これによりローラ間押し付け力制御モータ45の回転制御(クランクシャフト回転角θの制御)を行うものとする。
そのためトランスファコントローラ111には、
エンジン2の出力を加減するアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ112からの信号と、
左右後輪6L,6R(主駆動輪)の回転周速Vwrを検出する後輪速センサ113からの信号と、
車両の重心を通る鉛直軸線周りにおけるヨーレートφを検出するヨーレートセンサ114からの信号と、
トランスファコントローラ111からローラ間押し付け力制御モータ45への電流iを検出するモータ電流センサ115からの信号とを入力するほか、
図2に示すごとくハウジング11内に設けられてクランクシャフト51L,51Rの回転角θを検出するクランクシャフト回転角センサ116からの信号を入力する。
トランスファコントローラ111は、上記のトラクション伝動容量制御を行うために、図7のブロック線図で示すごときものとし、
クランクシャフト回転速度演算部120と、クランクシャフト回転角指令値演算部130(目標ローラ旋回角度演算手段)と、センサ正常時モータ制御入力演算部140と、クランクシャフト回転角センサ異常判定部150(ローラ旋回角度検出異常判定手段)と、センサ異常時モータ制御入力演算部160(ローラ旋回制御入力演算手段)と、モータ制御入力選択部170とにより構成する。
クランクシャフト回転速度演算部120は、クランクシャフト回転角センサ116で検出したクランクシャフト回転角θを基に、クランクシャフト回転速度ωを求める。
この演算に当たっては、クランクシャフト回転角θの現在値と1制御周期前の前回値との差分を制御周期で除算してクランクシャフト回転速度ωを算出する方法や、クランクシャフト回転角θにハイパスフィルタをかけてクランクシャフト回転速度ωを求める方法など、周知の方法を用いることがでできる。
クランクシャフト回転角指令値演算部130は、センサ112で検出したアクセル開度APO、センサ113で検出した後輪速Vwr、およびセンサ114で検出したヨーレートφを基に周知の要領で、クランクシャフト回転角指令値(目標ローラ旋回角度)θodrを例えば以下のように求める。
(1)アクセル開度APO、後輪速Vwr、およびヨーレートφから、現在の運転状態に最適な前後輪目標駆動力配分比を求めると共に、現在の左右後輪駆動力を求め、
(2)次にこれら前後輪目標駆動力配分比および現在の左右後輪駆動力から、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力Tfを演算し、
(3)次いで、第1ローラ31および第2ローラ32がこの目標前輪駆動力Tfを実現するのに必要なトラクション伝動容量を持つに際して要求されるローラ間径方向押圧力Frをマップ検索などにより求め、
(4)更に、ローラ間径方向押圧力Frと、ローラ間径方向押し付け力制御モータ45の制御出力動作量であるクランクシャフト回転角θとの関係を表す予定のモータ動作特性マップを基に、上記した目標前輪駆動力Tfに対応するローラ間径方向押圧力Frから、この目標前輪駆動力Tfを第1ローラ31および第2ローラ32が伝達可能なトラクション伝動容量となるのに必要なクランクシャフト回転角指令値θodr(目標ローラ旋回角度)を求める。
センサ正常時モータ制御入力演算部140は、クランクシャフト回転角センサ116が正常である時、クランクシャフト回転角指令値θodrを所定の応答で実現するためにローラ間径方向押し付け力制御モータ45へ印加すべきセンサ正常時モータ駆動電流指令値Ir(センサ正常時モータ制御入力)を演算する。
この演算に際しては例えば、クランクシャフト回転角指令値θodrを上記所定応答に対応した時定数0.1sの一次ローパスフィルタに通し、当該フィルタ処理後のクランクシャフト回転角指令値にクランクシャフト回転角度θが追従するようになすPID制御や非線形反力補償などによって、センサ正常時モータ駆動電流指令値Ir(センサ正常時モータ制御入力)を求める。
クランクシャフト回転角センサ異常判定部150は例えば、センサ116で検出したクランクシャフト回転角θと、演算部13で求めたクランクシャフト回転角指令値θodrとの偏差Δθ=|θ−θodr|が所定値以上(Δθ≧Δθs)であれば、クランクシャフト回転角センサ116が異常であると判定し、偏差Δθが所定値未満であれば、クランクシャフト回転角センサ116が正常であると判定する。
本発明におけるローラ旋回制御入力演算手段を成すセンサ異常時モータ制御入力演算部160は、クランクシャフト回転角センサ116が故障した異常時にローラ間径方向押し付け力制御モータ45へ印加して用いるセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常時モータ制御入力)を演算するもので、
この演算に際しては、クランクシャフト回転角指令値演算部130で求めたクランクシャフト回転角指令値(目標ローラ旋回角度)θodrを基に、図8につき後述する要領でセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常時モータ制御入力)を求める。
モータ制御入力選択部170は、クランクシャフト回転角センサ異常判定部150からの異常判定結果に応答し、
クランクシャフト回転角センサ116が正常であれば、センサ正常時モータ制御入力演算部140で求めたセンサ正常時モータ駆動電流指令値Ir(センサ正常時モータ制御入力)を選択し、これをモータ駆動電流指令値Iとしてローラ間径方向押し付け力制御モータ45に印加し、
クランクシャフト回転角センサ116が異常であれば、センサ異常時モータ制御入力演算部160で求めたセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常時モータ制御入力)を選択し、これをモータ駆動電流指令値Iとしてローラ間径方向押し付け力制御モータ45に印加する。
なおローラ間径方向押し付け力制御モータ45は、その制御入力であるモータ駆動電流iを、上記のモータ電流指令値Iに対し所定の応答で制御されるものとし、
ローラ間径方向押し付け力制御モータ45は、かかる電流iにより駆動されるとき、クランクシャフト51L,51Rの回転角θを所定の応答で指令値θodrとなし、対応する力で第1ローラ31および第2ローラ32を相互に径方向に押圧接触させて、これらローラ31,32間のトラクション伝動容量を、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ前記した目標前輪駆動力Tfが伝達されるような値に制御することができる。
図7における前記したセンサ異常時モータ制御入力演算部160は、図8の機能別ブロック線図に示すごときもので、クランクシャフト回転角指令値リミッタ161と、制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流演算部162と、マップ出力補正部163と、センサ異常判定直後モータ制御入力演算部164と、モータ制御入力切り替え部165とで構成する。
なお以下では、クランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)θが増加する方向の回転を正回転として、またクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)θが減少する方向の回転を逆回転として説明を行う。
クランクシャフト回転角指令値リミッタ161は、図7のクランクシャフト回転角指令値演算部130で求めたクランクシャフト回転角指令値θodrを上限設定して制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limを求めるものである。
このリミット処理に際しては、図6に例示するクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)θに対するクランクシャフト駆動反力トルク(ローラ旋回駆動反力)Tcrの変化特性から図9のように得られた、クランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)θごとのクランクシャフト駆動反力トルク(ローラ旋回駆動反力)Tcrと釣り合うクランクシャフト駆動モータ電流(第2ローラの旋回制御入力)に係わるクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)・クランクシャフト駆動モータ電流(第2ローラの旋回制御入力)特性において、クランクシャフト駆動モータ電流(第2ローラの旋回制御入力)が最大となるモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_maxを上限値とし、
クランクシャフト回転角指令値θodrがこの上限値θ_i_maxを超えることのないよう上限設定して、制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limを求める。
上記したクランクシャフト回転角指令値θodrの上限設定により求めた制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limによれば、第1,2ローラ31,32によるトラクション伝動が可能な領域、つまり左右前輪(左右従動輪)9L,9Rへのトルク伝達が可能な領域を、図10に示すようにクランクシャフト回転角度θが90度〜θ_i_maxの間であって、図10にハッチングを付して示した領域に決定し得ることとなる。
制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流演算部162は、図9のクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)・クランクシャフト駆動モータ電流(第2ローラの旋回制御入力)特性を基に、制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limから、この制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limを実現するのに必要なモータ45の駆動電流(制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流)Ic_limを求める。
マップ出力補正部163は、リミッタ161からの制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limと、モータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_maxと、演算部162からの制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limとを入力され、
制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limおよびモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_max間の偏差が所定値以下であるとき、制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limを図11に示すごとく経過時間に応じ補正した電流値をセンサ異常時モータ駆動電流(センサ異常時モータ制御入力)Ic1と定める。
つまり、所定時間Δt中の当初は制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limから所定値を差し引いた電流値をセンサ異常時モータ駆動電流(センサ異常時モータ制御入力)Ic1とし(図11ではIc1=0)、その後、制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limおよびモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_max間の偏差が所定値以下であれば、センサ異常時モータ駆動電流(センサ異常時モータ制御入力)Ic1を所定勾配ΔIcで徐々に大きくして最終的に元の制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limに戻す。
センサ異常判定直後モータ制御入力演算部164は、図7におけるクランクシャフト回転角センサ異常判定部150からのクランクシャフト回転角センサ異常判定信号(Δθ≧Δθs)を受けた時からクランクシャフト回転角指令値(目標ローラ旋回角度)θodrおよび制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limをそれぞれ所定の時間変化勾配で0に向かわせて、徐々にクランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角への移行を指令するような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成すると共に、クランクシャフト回転角センサ異常判定信号(Δθ≧Δθs)の受信時から所定時間Δtが経過するときまでの間θodr=0およびIc_lim=0の状態(クランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角)を保持するような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成する。
図12により付言するにセンサ異常判定直後モータ制御入力演算部164は、クランクシャフト回転角センサ異常判定信号(Δθ≧Δθs)を受けた瞬時t1から所定時間Δtが経過する瞬時t2までの間、クランクシャフト回転角指令値(目標ローラ旋回角度)θodrおよび制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limをそれぞれ所定の時間変化勾配で0に向かわせて、徐々にクランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角への移行を指令するような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成し、その後、上記θodr=0およびIc_lim=0の状態(クランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角)が保持されるような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成する。
モータ制御入力切り替え部165は、図7におけるクランクシャフト回転角センサ異常判定部150からのクランクシャフト回転角センサ異常判定信号(Δθ≧Δθs)を受けた図12の瞬時t1から所定時間Δtが経過する瞬時t2までの間、上記の異常判定直後モータ駆動電流Ic0をセンサ異常時モータ駆動電流指定値Icとして出力し、図7におけるモータ制御入力選択部70に向かわせる。
図12の瞬時t1から所定時間Δtが経過した瞬時t2以後、モータ制御入力切り替え部165はマップ出力補正部163からのセンサ異常時モータ駆動電流(センサ異常時モータ制御入力)Ic1をセンサ異常時モータ駆動電流指定値Icとして出力し、図7におけるモータ制御入力選択部70に向かわせる。
<実施例の効果>
上記した本実施例のトランクション伝動容量制御による効果を、図12に基づき以下に説明する。
クランクシャフト回転角センサ異常判定部150が(Δθ≧Δθs)よってクランクシャフト回転角センサ116の故障(異常)判定を行う瞬時t1以前においては、クランクシャフト回転角センサ116が正常であることから、その検出値θに基づきセンサ正常時モータ制御入力演算部140で求めたセンサ正常時モータ駆動電流指令値Ir(クランクシャフト回転角指令値θodrを所定の応答で実現するためにローラ間径方向押し付け力制御モータ45へ印加すべきセンサ正常時モータ制御入力)がモータ駆動電流Iとしてモータ45へ印加される(モータ制御入力選択部70)。
クランクシャフト回転角センサ異常判定部150が(Δθ≧Δθs)よってクランクシャフト回転角センサ116の故障(異常)判定を行った瞬時t1以降においては、クランクシャフト回転角センサ116による検出値θに依存せず、図8につき前述したセンサ異常時モータ制御入力演算部160からのセンサ異常時モータ駆動電流指令値Icをモータ駆動電流Iとしてモータ制御入力選択部70がモータ45へ印加する。
センサ異常時モータ駆動電流指令値Icには、クランクシャフト回転角センサ116の故障(異常)判定瞬時t1から所定時間Δtが経過する瞬時t2までのセンサ異常直後は、演算部64で求めた異常判定直後モータ駆動電流Ic0が与えられ(モータ制御入力切り替え部165)、瞬時t2以降は、マップ出力補正部163で求めたセンサ異常時モータ駆動電流Ic1が与えられる(モータ制御入力切り替え部165)。
従って、センサ異常判定直後t1〜t2においてはモータ制御入力選択部70がモータ駆動電流Iを異常判定直後モータ駆動電流Ic0と定め、このモータ駆動電流Iを所定の時間変化勾配で0に向かわせて、徐々にクランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角への移行を指令した後、このI=0(クランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角)を保持するような指令を発する。
そして瞬時t2以降においてはモータ制御入力選択部70がモータ駆動電流Iを、図11に示すような経時変化を呈するセンサ異常時モータ駆動電流Ic1と定める。
上記したセンサ異常時のトランクション伝動容量制御にあっては、図6のクランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動反力トルク特性から得られる図9のようなクランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動モータ電流特性を基に、トラクション伝動容量の目標値を実現可能なクランクシャフト回転角指令値θodr(第2ローラの目標旋回角度)から、このクランクシャフト回転角指令値θodr(第2ローラの目標旋回角度)を実現するためのセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常直後はIc0、その後はIc1)を求め、このセンサ異常時モータ駆動電流指令値Icをモータ45に印加してトラクション伝動容量制御に資するため、
現在のローラ旋回角度であるクランクシャフト回転角度θに係わる情報が無くてもトラクション伝動容量制御を行い得る。
このため、クランクシャフト回転角センサ116が故障してこれからのθ検出信号が得られなくなっても、トラクション伝動容量制御を継続的に遂行することができる。
また本実施例においては、クランクシャフト回転角指令値リミッタ161でクランクシャフト回転角指令値θodrをモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_maxに上限設定し、これにより得られた制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limに基づきセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常直後はIc0、その後はIc1)を求めるため、以下の効果が奏し得られる。
図6に例示する変化特性のクランクシャフト駆動反力トルクTcrがクランクシャフト回転角度θの増大につれ低下する負勾配領域においては、クランクシャフト駆動反力トルクTcrより少しでも大きなモータ駆動トルクを与えると、クランクシャフト駆動反力トルクTcrが小さくなる方向へ回転し続けてしまい、逆にクランクシャフト駆動反力トルクTcrより少しでも小さなモータ駆動トルクを与えると、クランクシャフト駆動反力トルクTcrが大きくなる方向へ押し戻され続けてしまう。
このため、図6のマップ誤差などを考慮すると、負勾配領域において、クランクシャフト駆動反力トルクTcrとモータ駆動トルクとを釣り合わせることは至難であって、当該負勾配領域では狙い通りの制御を期しがたい。
しかして本実施例においては、クランクシャフト回転角指令値リミッタ161の設置によりクランクシャフト回転角指令値θodrをモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_maxに上限設定するため、
クランクシャフト駆動反力トルクTcrがクランクシャフト回転角度θの増大につれ増加する正勾配領域に限定して伝動容量制御を行うこととなり、当該正勾配領域だけであっても所定の伝動容量制御を引き続き安定的に実現可能である。
更に本実施例では、センサ異常判定直後モータ制御入力演算部164が、クランクシャフト回転角センサ異常判定(Δθ≧Δθs)時t1から所定時間Δtが経過する瞬時t2までのセンサ異常直後において、先ず所定の時間変化勾配で徐々にクランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角への移行を指令するような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成し、その後、クランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角が保持されるような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成し、センサ異常直後t1〜t2ではこの異常判定直後モータ駆動電流Ic0をトランクション伝動容量制御に用いるため、以下の効果が奏し得られる。
正勾配領域であれば、クランクシャフト駆動反力トルクTcrとモータ駆動トルクとを釣り合わせることができることから、クランクシャフト回転角指令値リミッタ161によりクランクシャフト回転角指令値θodrをモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_maxに上限設定すれば、センサ故障時も引き続き安定したトランクション伝動容量制御が可能である。
しかし、当該上限設定を行った上で図9のクランクシャフト回転角度・クランクシャフト駆動モータ電流特性から得られるクランクシャフト駆動モータ電流は、正負勾配の双方で上記の釣り合いが成立する特性を持っているため、
センサ異常発生時のクランクシャフト回転角度(第2ローラ旋回角度)が負勾配領域のものであった場合、継続的にセンサ異常時モータ駆動電流指令値Icをモータ45に印加してトラクション伝動容量制御を行うと、クランクシャフト駆動反力トルクTcrとモータ駆動トルクとの釣り合いを維持することが困難となりトランクション伝動容量制御が不安定になってしまう。
しかし本実施例においては、センサ異常判定直後モータ制御入力演算部164が、クランクシャフト回転角センサ異常判定(Δθ≧Δθs)時t1から所定時間Δtが経過する瞬時t2までのセンサ異常直後に、先ず所定の時間変化勾配で徐々にクランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角への移行を指令するような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成し、その後、クランクシャフト駆動反力トルクTcr=0のクランクシャフト回転角が保持されるような異常判定直後モータ駆動電流Ic0を生成し、センサ異常直後t1〜t2ではこの異常判定直後モータ駆動電流Ic0をトランクション伝動容量制御に用いるため、
クランクシャフト駆動反力トルクTcrとモータ駆動トルクとの釣り合いをセンサ異常時も維持することができ、トランクション伝動容量制御を引き続き安定的に行うことができる。
本実施例においては更に、マップ出力補正部163が異常時モータ駆動電流Ic1をセンサ異常直後の0から元の制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limに戻すに際し、図11に示すごとく、制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limおよびモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_max間の偏差が所定値以下である場合は、異常時モータ駆動電流Ic1を所定勾配ΔIcで徐々に大きくして最終的に元の制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limに戻すようにしたため、以下の効果が奏し得られる。
制限済クランクシャフト回転角指令値θodr_limおよびモータ電流最大時クランクシャフト回転角θ_i_max間の偏差が所定値以下である場合に、いきなり異常時モータ駆動電流Ic1を制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limに戻すと、第2ローラ旋回駆動系のイナーシャによる影響などで第2ローラが目標旋回角度を超えて旋回される虞がある。
この過旋回でクランクシャフト駆動反力トルクTcrが負勾配領域に入ると、クランクシャフト駆動反力トルクTcrとモータ駆動トルクとの釣り合いを維持するのが困難になってトランクション伝動容量制御が困難になる。
しかるに本実施例では、異常時モータ駆動電流Ic1を所定勾配ΔIcで徐々に制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流Ic_limに戻すため、第2ローラが目標旋回角度を超えて旋回される過旋回の虞がなく、上記の問題を回避することができる。
<その他の実施例>
なお上記実施例では、クランクシャフト回転角センサ116による検出値θに基づくトランクション伝動容量制御を前提とし、クランクシャフト回転角センサ116の故障でクランクシャフト回転角度θを検出できなくなった場合でも、引き続きトランクション伝動容量制御を遂行可能にするために本発明の着想を用いる場合につき説明したが、
本発明の伝動容量制御装置は、クランクシャフト回転角センサ116からのクランクシャフト回転角度θに係わる情報が無くてもトランクション伝動容量制御を行い得ることから、当該センサが存在しない型式のトランクション伝動容量制御装置、つまりクランクシャフト回転角指令値演算部130(目標ローラ旋回角度演算手段)およびセンサ正常時モータ制御入力演算部140のみから成り、正常時も含めて常にセンサ異常時モータ制御入力演算部160で求めたセンサ異常時モータ駆動電流指令値Ic(センサ異常時モータ制御入力)をそのままモータ駆動電流指令値Iとしてローラ間径方向押し付け力制御モータ45に印加する構成にすることができ、この場合も上記した実施例におけると同様な作用効果が奏し得られること勿論である。
また上記実施例では、図2に示すごとく第2ローラ32を、偏心軸線O3周りに回転自在に支持したクランクシャフト52L,52Rの偏心孔52La,52Raにより回転自在に支持し、
クランクシャフト52L,52Rを回転させて、第2ローラ32を第1ローラ31と接しない非伝動位置から第1ローラ31に押圧接触された伝動位置へと旋回させるようにした場合について述べたが、この代わりに、
図示しなかったが第2ローラ32を、偏心軸線O0周りに回転自在に支持したクランクシャフトの偏心軸部上に回転自在に支持し、
このクランクシャフトを回転させて、第2ローラ32を第1ローラ31と接しない非伝動位置から第1ローラ31に押圧接触された伝動位置へと旋回させるようにした駆動量配分装置に対しても本発明の前記した着想は適用可能で、この場合も同様な作用効果を奏し得ることは言うまでもない。
1 トラクション伝動機構(前後輪駆動力配分装置)
2 エンジン
3 変速機
4 リヤプロペラシャフト
5 リヤファイナルドライブユニット
6L,6R 左右後輪(主駆動輪)
7 フロントプロペラシャフト
8 フロントファイナルドライブユニット
9L,9R 左右前輪(従駆動輪)
11 ハウジング
12 入力軸
13 出力軸
18,19 ローラベアリング
23,25 ベアリングサポート
31 第1ローラ
32 第2ローラ
45 ローラ間押し付け力制御モータ(第2ローラ旋回駆動源)
51L,51R クランクシャフト
51Lc,51Rc リングギヤ
55 クランクシャフト駆動ピニオン
56 ピニオンシャフト
57,58 シールリング
111 トランスファコントローラ
112 アクセル開度センサ
113 後輪速センサ
114 ヨーレートセンサ
115 モータ電流センサ
116 クランクシャフト回転角センサ
120 クランクシャフト回転速度演算部
130 クランクシャフト回転角指令値演算部(目標ローラ旋回角度演算手段)
140 センサ正常時モータ制御入力演算部
150 クランクシャフト回転角センサ異常判定部(ローラ旋回角度検出異常判定手段)
160 センサ異常時モータ制御入力演算部(ローラ旋回制御入力演算手段)
161 クランクシャフト回転角指令値リミッタ
162 制限済クランクシャフト回転角指令値実現モータ電流演算部
163 マップ出力補正部
164 センサ異常判定直後モータ制御入力演算部
165 モータ制御入力切り替え部
170 モータ制御入力選択部

Claims (5)

  1. 複数のローラを外周面間のトラクションにより伝動可能に相関させて具え、これらローラ間におけるトラクション伝動容量制御のためのローラ間径方向相互押圧力制御を、任意ローラの固定旋回軸線周りにおける旋回によるローラ軸間距離の変更によって遂行するようにしたトラクション伝動機構において、
    トラクション伝動容量の目標値を実現可能な前記任意ローラの目標旋回角度を演算する目標ローラ旋回角度演算手段を具え、
    ローラ間径方向相互押圧反力によって前記任意ローラの旋回に抗するよう作用するローラ旋回駆動反力の、ローラ旋回角度に対するローラ旋回駆動反力特性から得られた、ローラ旋回角度ごとのローラ旋回駆動反力と釣り合う前記任意ローラの旋回制御入力に係わるローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性を基に、前記目標ローラ旋回角度演算手段で演算した目標ローラ旋回角度から、該目標ローラ旋回角度を実現するための前記任意ローラの旋回制御入力を求めるローラ旋回制御入力演算手段を設け、
    該手段により求めたローラ旋回制御入力を前記任意ローラの旋回駆動源に印加してトラクション伝動容量制御に資するよう構成したことを特徴とするトランクション伝動機構の伝動容量制御装置。
  2. 前記任意ローラの旋回角度を検出するローラ旋回角度検出手段からの信号を前記トラクション伝動容量制御に資するものである、請求項1に記載された、トランクション伝動機構の伝動容量制御装置において、
    前記ローラ旋回角度検出手段の異常を判定するローラ旋回角度検出異常判定手段を設け、
    該手段により前記ローラ旋回角度検出手段の異常判定がなされたとき、前記ローラ旋回角度検出手段からの信号に代え、前記ローラ旋回制御入力演算手段により求めたローラ旋回制御入力を前記任意ローラの旋回駆動源に印加してトラクション伝動容量制御に資するよう構成したことを特徴とするトランクション伝動機構の伝動容量制御装置。
  3. 請求項1または2に記載された、トランクション伝動機構の伝動容量制御装置において、
    前記ローラ旋回制御入力演算手段は、前記目標ローラ旋回角度演算手段で演算した前記任意ローラの目標旋回角度を、前記ローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性においてローラ旋回制御入力の変化方向が反転するローラ旋回角度以下に上限設定し、該上限設定した目標ローラ旋回角度を実現するための前記任意ローラの旋回制御入力を求めるものであることを特徴とするトランクション伝動機構の伝動容量制御装置。
  4. 請求項3に記載された、トランクション伝動機構の伝動容量制御装置において、
    前記ローラ旋回制御入力演算手段は、前記ローラ旋回角度検出異常判定手段により前記ローラ旋回角度検出手段の異常判定がなされたとき、前記任意ローラの旋回制御入力を一旦0にした後、前記ローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性を基に、前記上限設定された目標ローラ旋回角度から、該上限設定された目標ローラ旋回角度を実現するための前記任意ローラの旋回制御入力を求めるものであることを特徴とするトランクション伝動機構の伝動容量制御装置。
  5. 請求項4に記載された、トランクション伝動機構の伝動容量制御装置において、
    前記ローラ旋回制御入力演算手段は、前記目標ローラ旋回角度が設定値以上に制御最大値に接近している場合、前記ローラ旋回角度検出異常判定手段による前記ローラ旋回角度検出手段の異常判定で一旦0にされた前記任意ローラの旋回制御入力を、前記ローラ旋回角度・ローラ旋回制御入力特性に基づき前記上限設定済の目標ローラ旋回角度から求めた旋回制御入力へと所定の時間変化勾配で接近させるものであることを特徴とするトランクション伝動機構の伝動容量制御装置。
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