JP2013152002A - 不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置 - Google Patents

不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置 Download PDF

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豊 金子
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Abstract

【課題】不可逆回転伝動系に挿置したトルクダイオードを、入力トルクの0から目標値への増大でロックオフさせるとき、スティックスリップを防止する。
【解決手段】トルクダイオードが入力軸から出力軸へ目標トルクを伝達する伝動時、回転方向が負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向である場合のロックオフ時は、最終規範応答算出部96が、無条件に基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0を最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとせず、dθをスティックスリップ防止用の最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minより大きくならないよう、dθ=dθ_minに上限設定する。クランクシャフト回転角目標値tθに対するdθの過渡応答が、dθ_minの変化速度により規定されるスティックスリップ防止用の速度下限値より低速にならず、トルクダイオードのスティックスリップを防止できる。
【選択図】図10

Description

本発明は、回転位置制御などに有用な不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置に関するものである。
例えば回転位置制御を行うなどのための回転伝動系は、アクチュエータからのトルクを制御対象に伝達し、制御対象が目標の回転位置になるときアクチュエータを停止状態に保って当該目標回転位置を保つよう作用する。
かかる回転伝動系としては従来、例えば特許文献1に記載のごとく、摩擦伝動式駆動力配分装置の駆動力配分制御(トラクション伝動容量制御)用に構成した、以下のようなものが知られている。
先ず特許文献1に記載の摩擦伝動式駆動力配分装置を説明するに、これは、主駆動輪に機械的に結合された第1ローラと、従駆動輪に機械的に結合された第2ローラとを具え、
これら第1ローラおよび第2ローラを両者の外周面において相互に摩擦接触させることにより、主駆動輪へのトルクの一部を従駆動輪へ分配して出力させ得るように構成したものである。
かかる駆動力配分装置にあっては、第1ローラおよび第2ローラ間における径方向押し付け力を加減することにより、
これらローラ間のトルク伝達容量(トラクション伝動容量)、従って主駆動輪および従駆動輪間の駆動力配分を制御することができる。
この駆動力配分制御を行うための回転伝動機構として特許文献1には、第2ローラの回転軸をモータ等のアクチュエータで偏心軸線周りに旋回させることにより第2ローラを第1ローラに対し径方向へ相対変位させ、これにより第1ローラおよび第2ローラ間の径方向押し付け力、つまり主駆動輪および従駆動輪間の駆動力配分を制御し得るようにしたものが提案されている。
この用に供する回転位置制御のための回転伝動系は、アクチュエータからのトルクで第2ローラ回転軸を上記偏心軸線周りに旋回させ、第2ローラ回転軸が目標の旋回位置になるときアクチュエータを停止状態に保って当該目標旋回位置を保持するものである。
ところで上記した摩擦伝動式駆動力配分装置にあっては、第2ローラ回転軸をアクチュエータにより旋回させつつ、第1ローラに対する第2ローラの径方向押し付け力を加減する構成のため、
第2ローラ回転軸を目標旋回位置に保つべくアクチュエータを停止状態に保持するとき、アクチュエータに一定方向の反力(以下、負荷トルクと言う)が逆入力される。
この場合、第2ローラ回転軸を目標旋回位置に保つべくアクチュエータを停止状態に保持するためには、アクチュエータへ逆入力される一定方向の負荷トルクと同じ大きさの逆向き対抗トルクを出力し続けるようアクチュエータを絶えず駆動制御する必要があり、
アクチュエータの駆動エネルギーが多くなるという問題のほかに、制御が煩わしくなるという問題をも生ずる。
上記したアクチュエータへ逆入力される負荷トルクに対する対策としては、第2ローラ回転軸の旋回位置制御用の回転伝動系に、例えば特許文献2に記載のような逆入力防止クラッチ等の不可逆回転伝動素子を挿入して、当該回転伝動系を不可逆回転伝動系となすことが考えられる。
この不可逆回転伝動素子は、アクチュエータからのトルクを入力される入力軸と、該入力軸からのトルクを出力する出力軸との間に介挿され、入力軸から出力軸へトルクを伝達する伝動時は該トルクによりロックオフ状態にされてトルク伝達可能となり、入力軸から出力軸へトルクが伝達されない非伝動時は出力軸への上記負荷トルクによりロックオン状態にされて負荷トルクが入力軸へ伝達されるのを阻止するものである。
かかる不可逆回転伝動素子を挿入された不可逆回転伝動系を用いる場合、アクチュエータトルクによる第2ローラ回転軸の旋回位置制御中は、アクチュエータトルクが不可逆回転伝動素子をロックオフ状態となしているため、第2ローラ回転軸の旋回位置制御を何ら妨げない。
しかして、第2ローラ回転軸が目標旋回位置になったことで、アクチュエータトルクを0にして制御を終了するとき、不可逆回転伝動素子が上記逆入力される負荷トルクによりロックオン状態にされ、当該逆入力される負荷トルクがアクチュエータへ向かうのを防止することができる。
不可逆回転伝動系を用いる場合、上記のように、アクチュエータトルクを0にしておいても、不可逆回転伝動素子がロックオン状態により負荷トルクをアクチュエータへ向かわせなくし得るため、アクチュエータトルク=0の非作動状態でも第2ローラ回転軸を目標旋回位置に保つことができる。
このため、アクチュエータを絶えず駆動制御する必要がなくて、アクチュエータの駆動エネルギーが多くなるという問題や、制御が煩わしくなるという問題を解消することができる。
特開2009−173261号公報(図5) 特開2010−127349号公報
ところで、第2ローラ回転軸を目標旋回位置に制御し終えて、アクチュエータトルクを0にした状態で、目標旋回位置の変化により当該新たな目標旋回位置へ第2ローラ回転軸を旋回させるに際しては、
当該新たな目標旋回位置を実現するためのアクチュエータトルクが、先ず不可逆回転伝動素子をロックオフ状態となし、次にかかるロックオフ状態の不可逆回転伝動素子を介しアクチュエータトルクが第2ローラ回転軸に向かって、この第2ローラ回転軸を上記新たな目標旋回位置に旋回させることとなる。
しかし、不可逆回転伝動素子がロックオフ状態にされたとき、その出力側メンバが前記の負荷トルクに応動し得るようになる。
そして、負荷トルクによる出力側メンバの回転方向と同じ方向へアクチュエータを駆動させて行う回転制御中は、この負荷トルクに応動する不可逆回転伝動素子の出力側メンバが、アクチュエータトルクにより駆動されている不可逆回転伝動素子の入力側メンバを追いかける方向へ回転する。
従って、不可逆回転伝動素子の出力側メンバが負荷トルクの大きさなどに起因して入力側メンバよりも高速回転される条件下だと、出力側メンバが入力側メンバに追いつくことで、上記のごとくアクチュエータトルクによりロックオフ状態にされた不可逆回転伝動素子が再度ロックオン状態となり、
この再ロックオン状態により不可逆回転伝動素子の出力側メンバが再停止されるのに対し、入力側メンバは引き続きアクチュエータトルクにより回転され続けることから、不可逆回転伝動素子が再度ロックオフ状態となる。
このため不可逆回転伝動素子は、かかる再ロックオンおよび再ロックオフを繰り返す現象、所謂スティックスリップを発生し、不快な異常振動や異音の発生箇所になる懸念があった。
この懸念を緩和するため特許文献2には、不可逆回転伝動素子の入力側メンバおよび出力側メンバ間に、両者の相対回転速度を制限する摩擦リングを介在させる技術が提案されている。
かかる技術によれば、負荷トルクに応動する不可逆回転伝動素子の出力側メンバが、アクチュエータトルクにより駆動されている不可逆回転伝動素子の入力側メンバを追いかける方向へ回転するときの回転速度を摩擦リングにより低下させることができ、
不可逆回転伝動素子のスティックスリップを抑制して、不可逆回転伝動素子が不快な異常振動や異音の発生箇所になるのを緩和することができる。
しかし特許文献2所載のものに代表される従来のスティックスリップ対策技術は何れも、出力側メンバの回転速度を摩擦により抑制するものであるため、
部品の追加が不可欠であってコスト上の不利益を招くだけでなく、スティックスリップを生じない条件下では上記の摩擦が無用になって不可逆回転伝動系の伝動効率を低下させ、アクチュエータのエネルギー消費を無駄に増大させるという決定的な問題が不可避である。
本発明は、特許文献2によるような部品の追加に頼ることなく、入力側メンバを高速で回転させるという制御上の対策により不可逆回転伝動素子のスティックスリップを回避、若しくは少なくとも抑制して、上記の問題を解消し得るようにした不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置を提案することを目的とする。
この目的のため本発明による不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置は、これを以下のように構成する。
先ず前提となる不可逆回転伝動系を説明するに、これは、
アクチュエータからのトルクを入力される入力軸と、
該入力軸からのトルクを出力する出力軸と、
これら入力軸および出力軸間にあって、入力軸から出力軸へトルクを伝達する伝動時は、該トルクが目標回転位置を所定応答で達成するための指令回転位置を実現可能なトルクとなるよう上記アクチュエータを駆動制御することでロックオフ状態にされて上記トルク伝達により入力軸および出力軸を該出力軸への負荷トルクに抗し上記目標回転位置へ回転可能であるが、入力軸から出力軸へトルクが伝達されない非伝動時は出力軸への前記負荷トルクによりロックオン状態にされて出力軸の負荷トルクが入力軸へ伝達されるのを阻止する不可逆回転伝動素子とを具えたものである。
本発明は、かかる不可逆回転伝動系に対し、以下のような入出力軸間伝動時回転方向検知手段と、指令回転位置応答決定手段と、指令回転位置所定変化速度決定手段とを設けた構成に特徴づけられる。
入出力軸間伝動時回転方向検知手段は、上記入力軸から出力軸へトルク伝達する伝動時であって、これら入力軸および出力軸の回転方向が上記負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向であるのを検知するものである。
また指令回転位置応答決定手段は、入出力軸間伝動時回転方向検知手段により入出力軸間伝動時の回転方向が負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向であると検知される場合、上記目標回転位置に対する指令回転位置の追従応答を所定変化速度以上となすものである。
そして指令回転位置所定変化速度決定手段は、上記不可逆回転伝動素子のロックオン状態を作り出すロックオン部の最大摩擦係数から、不可逆回転伝動素子のロックオンおよびロックオフが繰り返されるスティックスリップ状態を防止可能な、負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向における上記指令回転位置の変化速度に関したスティックスリップ防止下限速度を演算し、
このスティックスリップ防止下限速度を上記指令回転位置の所定変化速度として上記指令回転位置応答決定手段に供する。
上記した本発明による不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置によれば、
入出力軸間伝動時であって、その回転方向が負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向である場合、目標回転位置に対する指令回転位置の追従応答をスティックスリップ防止下限速度以上となすため、
指令回転位置が実現されるように行われるアクチュエータの駆動制御により目標回転位置を達成する制御中に、負荷トルクに応動して不可逆回転伝動素子の入力側メンバを追いかけている出力側メンバが、アクチュエータにより駆動されている入力側メンバに追いつくことがなく、不可逆回転伝動素子のスティックスリップを確実に防止することができる。
しかもこのスティックスリップ防止効果を、アクチュエータの駆動制御に供する指令回転位置の目標回転位置に対する応答制御のみにより得ることができ、従来のように摩擦部材のごとき部品の追加に頼る必要がないため、
コスト上の不利益を生ずることがないと共に、摩擦部材のごとき追加部品が不可逆回転伝動系の伝動効率を低下させてアクチュエータのエネルギー消費を無駄に増大させるという問題を生ずることもない。
本発明の一実施例になる不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置を内蔵する駆動力配分装置をトランスファとして具えた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。 図1における駆動力配分装置の縦断側面図である。 図2に示す駆動力配分装置で用いたクランクシャフトを示す縦断正面図である。 図2に示すトランスファの動作説明図で、 (a)は、クランクシャフト回転角が基準点の0°である位置における第1ローラおよび第2ローラの離間状態を示す動作説明図、 (b)は、クランクシャフト回転角が90°である時における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図、 (c)は、クランクシャフト回転角が180°である時における第1ローラおよび第2ローラの接触状態を示す動作説明図である。 図2に示す駆動力配分装置のクランクシャフト回転角に対するクランクシャフト駆動反力トルク(負荷トルク)の変化特性を示す特性線図である。 図2の駆動力配分装置におけるトルクダイオードを、その出力軸側から軸線方向に見て示す端面図である。 図6に示すトルクダイオードの縦断側面図である。 図6,7に示すトルクダイオードの作用説明図で、 (a)は、駆動力配分制御用の入力トルクが存在しない状態における、トルクダイオードの不可逆回転伝動作用を説明するための説明図、 (b)は、駆動力配分制御用の入力トルクが発生した直後における状態を説明するための説明図、 (c)は、駆動力配分制御用の入力トルクが出力軸に伝達され始めた時の状態を説明するための説明図である。 図1におけるトランファコントローラの機能別ブロック線図である。 図9におけるクランクシャフト回転角指令値演算部の詳細を示す機能別ブロック線図である。 図6〜8に示したトルクダイオード内における噛み込みローラの押し付け力変化特性を示す特性線図である。 図6〜8に示したトルクダイオードの内部摩擦係数がクランクシャフト回転速度に対して如何様に変化するかを示す特性線図である。 図1における駆動力配分装置のクランクシャフト回転角と、クランクシャフト最高回転速度との関係を例示した特性線図である。 図1に示した四輪駆動車両が四輪駆動状態から急に二輪駆動状態に切り替えられた場合に走行不安定となる急2WD禁止領域を示す領域マップ図である。 図2に示す駆動力配分装置のクランクシャフト回転角に対するクランクシャフト駆動反力トルク(負荷トルク)の変化特性を示す図5と同様な特性線図上に、小負荷トルク制御領域A1および大負荷トルク制御領域A2を追記して例示した説明図である。 図6〜8に示したトルクダイオードの内部摩擦係数がクランクシャフト回転速度に対して如何様に変化するかを示す図12と同様な特性線図上に、図15における小負荷トルク制御領域A1および大負荷トルク制御領域A2でのクランクシャフト回転速度下限値ωmin_A1, ωmin_A2およびクランクシャフト最高回転速度ωmax_A1, ωmax_A2を追記して例示した説明図である。 クランクシャフト回転角目標値に対するクランクシャフト回転角指令値の応答遅れを示す、クランクシャフト回転角目標値およびクランクシャフト回転角指令値の変化タイムチャートで、 (a)は、図15における小負荷トルク制御領域A1である場合のクランクシャフト回転角目標値およびクランクシャフト回転角指令値の時系列変化を示すタイムチャート、 (b)は、図15における大負荷トルク制御領域A2である場合のクランクシャフト回転角目標値およびクランクシャフト回転角指令値の時系列変化を示すタイムチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、図示の実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置を内蔵する駆動力配分装置1をトランスファとして具えた四輪駆動車両のパワートレーンを、車両上方から見て示す概略平面図である。
本実施例においては不可逆回転伝動系を後述するごとく、トランスファ1の駆動力配分制御系として用いる。
図1の四輪駆動車両は、エンジン2からの回転を変速機3による変速後、リヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5を順次経て左右後輪6L,6Rに伝達するようにした後輪駆動車をベース車両とし、
左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を、トランスファ1により、フロントプロペラシャフト7およびフロントファイナルドライブユニット8を順次経て左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ伝達することにより、四輪駆動走行が可能となるようにした車両である。
トランスファ1は、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力することにより、左右後輪(主駆動輪)6L,6Rおよび左右前輪(従駆動輪)9L,9R間の駆動力配分比を決定するもので、本実施例においては、この駆動力配分装置1を図2に示すように構成する。
図2において、11はハウジングを示し、このハウジング11内に主軸12および副軸13を、それぞれの回転軸線O1およびO2が相互に平行になるよう配して、回転自在に横架する。
主軸12の両端をそれぞれ、ハウジング11から突出させ、図2において該主軸12の左端を変速機3(図1参照)の出力軸に結合し、右端はリヤプロペラシャフト4(図1参照)を介してリヤファイナルドライブユニット5に結合する。
主軸12の軸線方向中程には、第1ローラ31を同心に一体成形して設け、副軸13の軸線方向中程には、第2ローラ32を同心に一体成形して設け、これら第1ローラ31および第2ローラ32を共通な軸直角面内に配置する。
副軸13は、第1ローラ31の軸線方向両側で主軸12に対し相対回転可能に吊下したベアリングサポート23,25を介し、以下のような構成によりハウジング11に対し間接的に回転自在に支持する。
つまり、副軸13の軸線方向中程に一体成形した第2ローラ32の軸線方向両側に配置して、副軸13の両端部に中空のクランクシャフト51L,51Rを遊嵌する。
これらクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra(半径をRiで図示した)と、副軸13の両端部との遊嵌部に軸受52L,52Rを介在させて、副軸13をクランクシャフト51L,51Rの中心孔51La,51Ra内で、これらの中心軸線O2の周りに自由に回転し得るよう支持する。
クランクシャフト51L,51Rには図3に明示するごとく、中心孔51La,51Ra(中心軸線O2)に対し偏心した外周部51Lb,51Rb(半径をRoで図示した)を設定し、これら偏心外周部51Lb,51Rbの中心軸線O3は中心孔51La,51Raの軸線O2(第2ロータ32の回転軸線)から、両者間の偏心分εだけオフセットしている。
クランクシャフト51L,51Rの偏心外周部51Lb,51Rbはそれぞれ図2に示すごとく、軸受53L,53Rを介して対応する側におけるベアリングサポート23,25内に回転自在に支持する。
クランクシャフト51Lおよび副軸13をそれぞれ図2の左端においてハウジング11から突出させ、ハウジング11から突出するクランクシャフト51Lの左端は、フロントプロペラシャフト7(図1参照)およびフロントファイナルドライブユニット8を介して左右前輪9L,9Rに結合する。
図2に示すように、クランクシャフト51L,51Rの相互に向き合う隣接端にそれぞれ、偏心外周部51Lb,51Rbと同心で、同仕様のリングギヤ51Lc,51Rcを一体に設け、これらリングギヤ51Lc,51Rcに、共通なクランクシャフト駆動ピニオン55を噛合させる。
なおこの噛合に当たっては、クランクシャフト51L,51Rを両者の偏心外周部51Lb,51Rbが円周方向において相互に整列する回転位置にした状態で、クランクシャフト駆動ピニオン55をリングギヤ51Lc,51Rcに噛合させる。
クランクシャフト駆動ピニオン55はピニオンシャフト56に結合し、ピニオンシャフト56の両端を軸受56a,56bによりハウジング11に回転自在に支持する。
図2の右側におけるピニオンシャフト56の右端をハウジング11に貫通してこれから突出させ、
該ピニオンシャフト56の露出端部は、不可逆回転伝動素子であるトルクダイオード61を介してローラ間押し付け力制御モータ45(アクチュエータ)のモータ軸45aに駆動結合する。
ローラ間押し付け力制御モータ45によりトルクダイオード61、ピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御するとき、副軸13および第2ローラ32の回転軸線O2が図3に破線で示す軌跡円αに沿って旋回する。
図3の軌跡円αに沿った回転軸線O2(第2ローラ32)の旋回により、第2ローラ32が図4(a)〜(c)に示すごとく第1ローラ31に対し径方向へ接近し、これら第1ローラ31および第2ローラ32のローラ軸間距離L1(図2も参照)をクランクシャフト51L,51Rの回転角θの増大につれ、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも小さくすることができる。
かかるローラ軸間距離L1の低下により、第1ローラ31に対する第2ローラ32の径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)が大きくなり、ローラ軸間距離L1の低下度合いに応じてローラ間径方向押圧力(ローラ間伝達トルク容量)を任意に制御することができる。
なお図4(a)に示すように本実施例では、第2ローラ回転軸線O2がクランクシャフト回転軸線O3の直下に位置し、第1ローラ31および第2ローラ32の軸間距離L1が最大となる下死点でのローラ軸間距離L1を、第1ローラ31の半径と第2ローラ32の半径との和値よりも大きくする。
これにより当該クランクシャフト回転角θ=0°の下死点においては、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に径方向へ押し付けられることがなく、ローラ31,32間でトラクション伝動が行われないトラクション伝動容量=0の状態を得ることができ、
トラクション伝動容量を下死点での0と、図4(c)に示す上死点(θ=180°)で得られる最大値との間で任意に制御することができる。
なお本実施例では、クランクシャフト51L,51Rの回転角基準点をクランクシャフト回転角θ=0°の下死点であることとして説明を展開する。
また本実施例では、上記のごとく第2ローラ32の回転軸線O2モータ45により軸線O3の周りに旋回させつつ、第1ローラ31に対する第2ローラ32の径方向押し付け力を加減する構成のため、
クランクシャフト回転角θに応じクランクシャフト51L,51Rには、図5に示すような駆動反力トルク(負荷トルク)Tcrが作用する。
<トルクダイオード>
図2のごとくモータ軸45aとピニオンシャフト56との結合部に介在させたトルクダイオード61は、
ローラ間押し付け力制御モータ45(モータ軸45a)からの回転操作力が何れ方向のものであっても、ローラ間押し付け力制御モータ45(モータ軸45a)からピニオンシャフト56への伝動を自由に行わせるが、
逆にピニオンシャフト56からローラ間押し付け力制御モータ45(モータ軸45a)への逆伝動をピニオンシャフト56の両方向回転ロックにより行わせないようにする不可逆回転伝動素子の用をなすもので、図6〜8につき以下に説明するような構成とする。
つまりトルクダイオード61は、その円筒形のケース62を図2に示すごとくハウジング11に取着して固定する。
図6,7に示すごとく、かかる固定ケース62の軸線方向一方側から入力軸63を、また軸線方向他方側から出力軸64を、相互に同軸となるよう配して固定ケース62内に進入させる。
入力軸63は軸受65により固定ケース62に対し回転自在に支持し、出力軸64は軸受66により固定ケース62に対し回転自在に支持する。
固定ケース62内における出力軸64の進入端部を図8に明示するごとく、軸線方向に見て六角形の拡大端部64aとなす。
かかる六角形拡大端部64aの各辺を成す外周平坦面と、固定ケース62の円筒内周面との間に、一対1組の噛み込みローラ67L,67Rを、ローラ軸線が入出力軸63,64の軸線と平行になるよう配して介在させる。
図6,8に示すごとく、これら噛み込みローラ67L,67R間にバネ68を介在させて噛み込みローラ67L,67Rを相互に離間する方向へ附勢し、
これにより噛み込みローラ67L,67Rをそれぞれ図6および図8(a)に示すごとく、六角形拡大端部64aの対応する外周平坦面と、固定ケース62の円筒内周面との間における円周方向漸減隙間に噛み込ませる。
固定ケース62内における入力軸63の進入端部には、図6および図8(a)に示すごとく、各一対1組の噛み込みローラ67L,67Rをローラ配列方向両側から挟んでローラ保持器の用をなすよう、六角形拡大端部64aの各角部と、固定ケース62の円筒内周面との間における最小隙間に位置させて、ローラ保持爪63L,63Rを設ける。
しかして、ローラ保持爪63L,63Rと、これに隣接するローラ67L,67Rとの間には、図6(a)にαで示すごとく、常態で隙間が存在するようになす。
固定ケース62内における入力軸63の進入端部には更に、図7および図8(a)に示すごとく、六角形拡大端部64aに向け軸線方向に突出する複数の駆動ピン63aを設け、
六角形拡大端部64aの端面には、これら各駆動ピン63aが所定の径方向隙間β(β>α)をもって遊嵌する盲孔64bを穿設する。
上記の構成になるトルクダイオード61の実用に際しては、図2に示すように、ケース62をハウジング11に固着し、入力軸63をローラ間押し付け力制御モータ45のモータ軸45aに結合し、出力軸64をピニオンシャフト56に結合して、トルクダイオード61をトランスファ1に用いる。
<トルクダイオードの不可逆回転伝動作用>
トルクダイオード61の作用を、図8(a),(b),(c)に基づき以下に説明する。
図8(a)は、図2のモータ45が非作動状態でモータ45から入力軸63へトルクが入力されないときの状態を示す。
この場合、入力軸63のローラ保持爪63L,63Rが、隣接するローラ67L,67Rからそれぞれ隙間αをもって離れた中立位置にあり、また入力軸63の駆動ピン53aが、出力軸64(六角形拡大端部64a)に設けた盲孔64bの中心位置にある。
この状態で出力軸64(六角形拡大端部64a)から、図5につき前述した負荷トルクの逆入力があっても、出力軸64(六角形拡大端部64a)は以下のようにして回転を阻止される。
出力軸64(六角形拡大端部64a)からの逆入力が図8(a)において時針方向のトルクである場合は、六角形拡大端部64aのトルク方向遅れ側における角部が固定ケース62の内周面との間にローラ67Lを更に噛み込ませるよう作用して、逆入力による出力軸64(六角形拡大端部64a)の回転を阻止する(トルクダイオード61のロックオン状態)。
また出力軸64(六角形拡大端部64a)からの逆入力が図8(a)において反時針方向のトルクである場合は、六角形拡大端部64aのトルク方向遅れ側における角部が固定ケース62の内周面との間にローラ67Rを更に噛み込ませるよう作用して、逆入力による出力軸64(六角形拡大端部64a)の回転を阻止する(トルクダイオード61のロックオン状態)。
よって、図2のモータ45の非作動によりこれから入力軸63へトルクが入力されない状態である間、出力軸64(六角形拡大端部64a)が上記何れ方向における負荷トルクの逆入力によっても回転されることなく現在の回転位置を保ち得て、クランクシャフト51L,51Rを現在の回転位置に保つことができ、かかる不可逆回転伝動作用によりローラ31,32間の径方向押し付け力(ローラ間伝達トルク容量)、つまり駆動力配分比を現在のままに保持することができる。
しかして、図2に示すモータ45の作動によりこれから入力軸63へトルクが入力される場合は、このトルクをトルクダイオード61が以下のようにして六角形拡大端部64a(出力軸64)に伝達し、駆動力配分制御系へ向かわせることができる。
モータ45から入力軸63へのトルクが、図8(b),(c)に矢印で示す方向のものである場合につき説明すると、
入力軸63の回転方向遅れ側におけるローラ保持爪63Lが隙間αだけ回転した後、図8(b)に示すように対応するローラ67Lに衝接し、このローラ67Lをバネ68に抗しローラ67Rに接近する方向へ押動して、図8(c)に示すごとく六角形拡大端部64aの対応する外周平坦面と固定ケース62の内周面との間隔が大きくなる方向へ変位させる。
ローラ67Rは、かかる変位により固定ケース62に対する六角形拡大端部64a(出力軸64)の回転ロックを解除する(トルクダイオード61のロックオフ状態)。
このロックオフがなされたとき、図8(c)に示すごとく入力軸63の駆動ピン63aが隙間βの回転により盲孔64bの内周面と係合し、入力軸63は駆動ピン63aと盲孔64bとの係合を介して六角形拡大端部64a(出力軸64)にトルクを伝達し、ローラ31,32間の径方向押し付け力(ローラ間伝達トルク容量)、つまり駆動力配分比を当該トルクの加減(モータ45のトルク制御)により任意に制御することができる。
モータ45から入力軸63へのトルクが、図8(b),(c)に矢印で示すと逆方向のものである場合も、入力軸63の回転方向遅れ側におけるローラ保持爪63Rが隙間αだけ回転した後、対応するローラ67Rに衝接してこのローラ67Rを押動することでロックオフを行い(トルクダイオード61のロックオフ状態)、
このとき入力軸63の駆動ピン63aが盲孔64bとの係合を介して六角形拡大端部64a(出力軸64)にトルクを伝達することで、ローラ31,32間の径方向押し付け力(ローラ間伝達トルク容量)、つまり駆動力配分比を当該トルクの加減により任意に制御することができる。
<駆動力配分作用>
図1〜4につき上述したトランスファ1の駆動力配分作用を以下に説明する。
変速機3(図1参照)からトランスファ1の主軸12に達したトルクは、一方でこの主軸12からそのままリヤプロペラシャフト4およびリヤファイナルドライブユニット5(ともに図1参照)を経て左右後輪6L,6R(主駆動輪)へ伝達される。
他方でトランスファ1は、モータ45によりピニオン55およびリングギヤ51Lc,51Rcを介しクランクシャフト51L,51Rを回転位置制御して、ローラ軸間距離L1を第1ローラ31および第2ローラ32の半径の和値よりも小さくするとき、これらローラ31,32が径方向相互押圧力に応じたローラ間伝達トルク容量を持つことから、このトルク容量に応じて、左右後輪6L,6R(主駆動輪)へのトルクの一部を、第1ローラ31から第2ローラ32を経て副軸13に向かわせ、左右前輪9L,9R(副駆動輪)をも駆動することができる。
かくして車両は、左右後輪6L,6R(主駆動輪)および左右前輪(従駆動輪)9L,9Rの全てを駆動しての四輪駆動走行が可能である。
なお、この伝動中における第1ローラ31および第2ローラ32間の径方向押圧反力Ftは、これらに共通な回転支持板であるベアリングサポート23,25で受け止められ、ハウジング11に達することがない。
そして径方向押圧反力Ftは、クランクシャフト回転角θが0°〜90°である間は0となり、クランクシャフト回転角θが90°〜180°である間、θの増大に応じて増加し、クランクシャフト回転角θが180°になるとき最大値となる。
かかる径方向押圧反力Ftに起因して、クランクシャフト51L,51Rには、次式によって表されるクランクシャフト駆動反力トルク(負荷トルク)Tcrが作用し、
Tcr=Ft×Ro×sinθ
このクランクシャフト駆動反力トルク(負荷トルク)Tcrは、上式から明らかなように、クランクシャフト回転角θに対し図5に示すごとき非線形な特性を呈する。
かような四輪駆動走行中、クランクシャフト51L,51Rの回転角θが図4(b)に示すごとく基準位置の90°であって、第1ローラ31および第2ローラ32が相互に、この時のオフセット量OSに対応した径方向押圧力で押し付けられて摩擦接触している場合、
これらローラ間のオフセット量OSに対応したトラクション伝動容量で左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへの動力伝達が行われる。
そして、クランクシャフト51L,51Rを図4(b)の基準位置から、図4(c)に示すクランクシャフト回転角θ=180°の上死点に向け回転操作してクランクシャフト回転角θを増大させるにつれ、ローラ軸間距離L1が更に減少して第1ローラ31および第2ローラ32の相互オーバーラップ量OLが増大する結果、第1ローラ31および第2ローラ32は径方向相互押圧力を増大され、これらローラ間のトラクション伝動容量を増大させることができる。
クランクシャフト51L,51Rが図4(c)の上死点位置に達すると、第1ローラ31および第2ローラ32は相互に、最大のオーバーラップ量OLに対応した径方向最大押圧力で径方向へ押し付けられて、これらの間のトラクション伝動容量を最大にすることができる。
なお最大のオーバーラップ量OLは、第2ローラ回転軸線O2およびクランクシャフト回転軸線O3間の偏心量εと、図4(b)につき上記したオフセット量OSとの和値である。
以上の説明から明らかなように、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=0°の回転位置から、クランクシャフト回転角θ=180°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの増大につれ、ローラ間トラクション伝動容量を0から最大値まで連続変化させることができる。
また逆に、クランクシャフト51L,51Rをクランクシャフト回転角θ=180°の回転位置から、θ=0°の回転位置まで回転操作することにより、クランクシャフト回転角θの低下につれ、ローラ間トラクション伝動容量を最大値から0まで連続変化させることができ、ローラ間トラクション伝動容量をクランクシャフト51L,51Rの回転操作により自在に制御し得る。
<トラクション伝動容量制御>
上記した四輪駆動走行中はトランスファ1が、上記のごとく左右後輪(主駆動輪)6L,6Rへのトルクの一部を左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配して出力するため、第1ローラ31および第2ローラ32間のトラクション伝動容量を、左右後輪6L,6R(主駆動輪)の駆動力と、前後輪目標駆動力配分比とから求め得る、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力に対応させる必要がある。
この要求にかなうトラクション伝動容量制御のために本実施例においては、図1に示すようにトランスファコントローラ111を設け、これによりモータ45の回転制御(クランクシャフト回転角θの制御)を行うものとする。
そのためトランスファコントローラ111には、
エンジン2の出力を加減するアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ112からの信号と、
左右後輪6L,6R(主駆動輪)の回転周速Vwrおよび左右前輪9L,9R(従駆動輪)の回転周速Vwfをそれぞれ検出する車輪速センサ群113からの信号と、
車両の重心を通る鉛直軸線周りにおけるヨーレートφを検出するヨーレートセンサ114からの信号と、
ステアリングホイール操舵角γを検出する操舵角センサ115からの信号とを入力するほか、
図2に示すごとくハウジング11内に設けられてクランクシャフト51L,51Rの回転角θを検出するクランクシャフト回転角センサ116からの信号を入力する。
トランスファコントローラ111は、これら入力情報を基に、トランスファ1のトラクション伝動容量制御(四輪駆動車両の前後輪駆動力配分制御)を行うため、図9のブロック線図で示すごときものとする。
つまりトランスファコントローラ111は、クランクシャフト回転角目標値演算部70と、クランクシャフト回転速度演算部80と、クランクシャフト回転角指令値演算部90と、モータ駆動電流演算部100とで構成する。
クランクシャフト回転角目標値演算部70は、アクセル開度APO、後輪速Vwr、およびヨーレートφに基づき、先ず左右後輪6L,6R(主駆動輪)の駆動力および前後輪目標駆動力配分比を周知の要領で求める。
次にクランクシャフト回転角目標値演算部70は、当該求めた左右後輪6L,6R(主駆動輪)の駆動力および前後輪目標駆動力配分比から、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ分配すべき目標前輪駆動力を求める。
更にクランクシャフト回転角目標値演算部70は、第1ローラ31および第2ローラ32がこの目標前輪駆動力を伝達するのに必要なローラ間径方向押圧力(第1ローラ31および第2ローラ32間のトラクション伝動容量)をマップ検索などにより求め、このローラ間径方向押圧力(第1ローラ31および第2ローラ32間のトラクション伝動容量)を実現するのに必要なクランクシャフト51L,51R(図2,3参照)の回転角目標値tθ(本発明における目標回転位置)、つまり第2ローラ軸線O2の目標旋回位置を演算する。
クランクシャフト回転速度演算部80は、センサ116で検出したクランクシャフト回転角θを基にクランクシャフト回転速度(角速度)ωを求める。
クランクシャフト回転角θからクランクシャフト回転速度ωを求めるに際しては、クランクシャフト回転角θの現在値(検出値)と、1制御周期前の値との差分を制御周期で除算することによりクランクシャフト回転速度ωを求める方法や、検出したクランクシャフト回転角θをハイパスフィルタに通してフィルタ処理することによりクランクシャフト回転速度ωを求める方法などがある。
クランクシャフト回転角指令値演算部90は、クランクシャフト回転角目標値tθが実クランクシャフト回転角θよりも小さいか否かにより、トルクダイオード61がモータ45のトルクを入力軸63から出力軸64へ伝達する伝動時であって、その回転方向が負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同じ回転方向であるか否かを判定し、トルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同じ方向の伝動中であるのを検知するとき、
クランクシャフト回転角目標値tθを所定応答で実現するために必要なクランクシャフト回転角指令値dθ(本発明における指令回転位置に相当する)を求めるためのものである。
従ってクランクシャフト回転角指令値演算部90は、本発明における入出力軸間伝動時回転方向検知手段および指令回転位置応答決定手段に相当する。
クランクシャフト回転角指令値dθはクランクシャフト回転角目標値tθに対し上記の所定応答で追従するよう変化し、この指令値dθに実クランクシャフト回転角θが一致するよう、この指令値dθを後述の通りモータ45の駆動制御(クランクシャフト回転角制御)に供することで、実クランクシャフト回転角θをクランクシャフト回転角目標値tθに向け上記の所定応答で追従させることができるようになす。
そのためクランクシャフト回転角指令値演算部90は、トルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同じ方向への伝動中であるのを検知する間、図10の機能別ブロック線図で示すような処理を行ってクランクシャフト回転角指令値dθを求めるものとし、
このクランクシャフト回転角指令値演算部90を、規範応答算出部91と、クランクシャフト許容回転速度領域判定部92と、最高速度リミッタ93と、最低速度リミッタ94と、急2WD切り替え禁止判定部95と、最終規範応答算出部96とで構成する。
規範応答算出部91は、クランクシャフト回転角目標値tθを一般的な基本応答で実現するのに必要な基本となるクランクシャフト回転角指令値dθ_0を求める。
この基本的なクランクシャフト回転角指令値dθ_0の算出に際しては、例えば、設計者の希望する規範応答が一次遅れの時定数Trefを持つものである場合、次式の演算により求めることができる。
dθ_0={1/(Tref+1)}tθ ・・・(1)
クランクシャフト許容回転速度領域判定部92は、クランクシャフト回転角θおよびクランクシャフト回転速度(角速度)ωを基に、トルクダイオード61の前記したスティックスリップが発生しないクランクシャフト最低回転速度ωminと、モータ45の駆動反力およびモータトルクによって決まる、負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同方向回転(逆回転)のクランクシャフト最高回転速度ωmaxとを算出し、これらωminおよびωmaxで規定されるクランクシャフト許容回転速度領域を判定する。
かかるクランクシャフト最低回転速度ωminおよびクランクシャフト最高回転速度ωmax(クランクシャフト許容回転速度領域)を求めるに際しては、
先ず、図11に示すごとくに予め求めておいた、トルクダイオード61の噛み込みローラ(67L,67R)押し付け力Nと、クランクシャフト回転角θとの関係マップを基に、クランクシャフト回転角θから、トルクダイオード61の固定ケース(62)内周面に対する噛み込みローラ67L,67R(本発明におけるロックオン部に相当)の押し付け力Nを求める。
次に、図5につき前述したクランクシャフト負荷トルクTcrの変化特性に関するマップを基に、クランクシャフト回転角θから、クランクシャフト負荷トルクTcrを検索して求める。
そして、上記のように求めたトルクダイオード61の噛み込みローラ(67L,67R)押し付け力Nおよびクランクシャフト負荷トルクTcr、並びにモータ45の軸中心からトルクダイオード61の固定ケース(62)内周面までの距離rを用いた次式の演算により、トルクダイオード61のスティックスリップを防止可能な、トルクダイオード61内の(噛み込みローラ67L,67Rと固定ケース62の内周面との間における)最大摩擦係数μmaxを算出する。
μmax=Tcr/(N・r) ・・・(2)
次いで、図12のごとく予め求めておいた、クランクシャフト回転速度ωに対するトルクダイオード内の(噛み込みローラ67L,67Rと固定ケース62の内周面との間における)摩擦係数μの変化特性マップを基に、上記したトルクダイオード内最大摩擦係数μmaxから、この最大摩擦係数μmaxが実現されてトルクダイオード61のスティックスリップを防止可能にするクランクシャフト回転速度下限値ωminを求め、これをスティックスリップ防止下限速度と定める。
従ってクランクシャフト許容回転速度領域判定部92は、本発明における指令回転位置所定変化速度決定手段に相当する。
次に、図13のごとく予め求めておいた、クランクシャフト回転角θおよびクランクシャフト最高回転速度ωmaxの関係マップを基に、クランクシャフト回転角θから、クランクシャフト最高回転速度ωmaxを求める。
なおクランクシャフト最高回転速度ωmaxは、クランクシャフト負荷トルクTcrとモータ45の出力可能最大トルクとの相関関係により決まり、クランクシャフト回転角θに応じて図13に例示するごとくに変化し、予め求めておくことができる。
最高速度リミッタ93は、クランクシャフト回転角目標値tθに対し変化率リミッタ処理を施して、その変化速度が、クランクシャフト許容回転速度判定部92で上記のごとく算出したクランクシャフト最高回転速度ωmaxを超えて速くなることのないようにするための最高速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxを算出する。
最低速度リミッタ94は、クランクシャフト回転角目標値tθに対し変化率リミッタ処理を施して、その変化速度が、クランクシャフト許容回転速度判定部91で上記のごとく算出したクランクシャフト最低回転速度ωminを超えて遅くなることのないようにするための最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minを算出する。
急2WD切り替え禁止判定部95は、図14のごとく予め実験などにより求めておいた領域マップを基に、ステアリングホイール操舵角γおよび前後輪間回転差ΔVw(=|Vwf-Vwr|)から、急2WD切り替え禁止領域か否かをチェックする。
従って急2WD切り替え禁止判定部95は、本発明における車両運転状態判定手段に相当する。
つまり、車両を前後輪駆動力配分制御による四輪駆動状態(例えば前輪50%:後輪50%)から急に後輪のみによる二輪駆動状態に切り替えると、強いオーバーステアー状態などで走行不安定になる領域を、急2WD切り替え禁止領域と設定しておく。
そして、ステアリングホイール操舵角γおよび前後輪間回転差ΔVwがそれぞれ、図14の領域境界線上の設定値を超えるとき、急2WD切り替え禁止判定部95は、車両が走行不安定になる急2WD切り替え禁止領域と判定して、このことを示すように、出力である急2WD禁止フラグFLAGを1にセットし、それ以外では急2WD禁止フラグFLAGを0にリセットしておくものとする。
最終規範応答算出部96は、クランクシャフト回転角目標値tθと、基本的なクランクシャフト回転角指令値dθ_0と、最高速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxと、最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minと、急2WD禁止フラグFLAGとに基づき、以下のごとくに最終的な規範応答であるクランクシャフト回転角指令値dθを求める。
最終規範応答算出部96は先ず、クランクシャフト回転角目標値tθが実クランクシャフト回転角θよりも小さいか否かにより、トルクダイオード61がモータ45のトルクを入力軸63から出力軸64へ伝達する伝動時であって、その回転方向がクランクシャフト回転角低下方向(負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同方向の負側回転方向)であるか否かを、つまりトルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同方向の伝動中であるか否かを判定する。
最終規範応答算出部96は、トルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同方向の伝動中でない、つまり前記したロックオン状態であるか、若しくは、ロックオフ状態であっても回転方向がクランクシャフト回転角増大方向(負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と逆方向の正側回転方向)であると判定する場合、基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθと定める。
dθ=dθ_0 ・・・(3)
最終規範応答算出部96は、トルクダイオード61がロックオフ状態で、且つ回転方向がクランクシャフト回転角低下方向(負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同方向の負側回転方向)であると判定する場合、以下の論理に基づいて最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを決定する。
先ず、急2WD禁止フラグFLAGが0である場合、つまり車両を前後輪駆動力配分制御による四輪駆動状態から急に後輪のみによる二輪駆動状態に切り替えても走行不安定になることのない領域での運転中である場合における、最終的な規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθの決定論理(a),(b)を説明する。
(a) 基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0が最高速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_max以上である(dθ_0≧ dθ_maxの)場合、最終規範応答算出部96は、次式のごとく規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとするが、
dθ=dθ_0 ・・・(4)
基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0が最高速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxよりも小さい(dθ_0< dθ_maxの)場合、最終規範応答算出部96は、基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとせず、最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを、これが最高速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_max を超えて小さくなることのないよう、次式のごとく下限設定する。
dθ= dθ_max ・・・(5)
(b) 基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0が最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_min以下である(dθ_0≦ dθ_minの)場合、最終規範応答算出部96は、上記(4)式のごとく基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとするが、
基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0が最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minよりも大きい(dθ_0> dθ_minの)場合、最終規範応答算出部96は、基本的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθ_0をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとせず、最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを、これが最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_min を超えて大きくなることのないよう、次式のごとく上限設定する。
dθ= dθ_min ・・・(6)
ところで、急に二輪駆動状態へ切り替えると走行不安定になる領域での運転中において、上記(a)の論理に基づき(5)式のごとくに最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを決定すると、例えばdθ= dθ_maxによるmax_A1に対応した高速で二輪駆動状態への切り替えが行われ、車両の走行不安定を惹起する。
(c)そこで、上記の走行不安定を生ずる運転状態のため急2WD禁止フラグFLAGが1にされている場合、最終規範応答算出部96は、無条件に上記 (b)の論理における式(6)を採用して、最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_min をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθと定める。
図9のクランクシャフト回転角指令値演算部90が上記のごとく、図10の機能別ブロック線図で示す処理により求めた最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθは、図9におけるモータ駆動電流演算部100に供給される。
モータ駆動電流演算部100は、最終的なクランクシャフト回転角指令値dθにクランクシャフト回転角θを所定の応答で追従させる(例えば最終的なクランクシャフト回転角指令値dθに時定数0.1secの1次ローパスフィルタをかけた値にクランクシャフト回転角θを一致させる)のに必要なモータ駆動電流Iを、PID制御や非線形反力補償などにより求めてローラ間押し付け力制御モータ45に指令する。
なおローラ間押し付け力制御モータ45は、モータ駆動電流Iに応じたに応じた実駆動電流により駆動されるとき、クランクシャフト51L,51Rの回転角θをクランクシャフト回転角指令値dθに基づき所定の応答でクランクシャフト回転角目標値tθに一致させることができる。
かかるモータ45の駆動制御により、対応する力で第1ローラ31および第2ローラ32を相互に径方向に押圧接触させ、これらローラ31,32間のトラクション伝動容量を、左右前輪(従駆動輪)9L,9Rへ前記した目標前輪駆動力が向かうよう制御することができる。
かようにしてクランクシャフト回転角θがクランクシャフト回転角目標値tθに制御され終えた後は、モータ45の出力トルクを0に向けて低下させることで、図5に示す負荷トルクTcrによりトルクダイオード61が図8(a)につき前述した通りロックオン状態に保たれるため、モータトルク無しで安価に、しかも簡単にクランクシャフト回転角θを指令値dθに保持することができる。
演算部70で求めたクランクシャフト回転角目標値tθが変化すると、これに呼応して演算部90(図10)で求める最終的なクランクシャフト回転角指令値dθも変化し、上記したと同様にしてモータ45が、前記演算により狙った応答で新たなクランクシャフト回転角目標値tθを実現するよう駆動制御される。
この時モータトルクが、トルクダイオード61を図8(b),(c)につき前述したようにロックオフ状態となして、クランクシャフト51L,51Rに向かい得ることとなり、新たなクランクシャフト回転角目標値tθを実現することができる。
ところで、この時におけるクランクシャフト51L,51Rの回転方向が、図5のような変化特性を呈する負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同位相の回転方向(クランクシャフト回転角低下方向)である間は、この負荷トルクに応動するトルクダイオード61の出力軸64が、モータ45により駆動されているトルクダイオード61の入力軸63を追いかける方向へ回転する。
従って、トルクダイオード61の出力軸64が負荷トルクTcrの大きさなどに起因して入力軸63よりも高速回転される条件下だと、出力軸64が入力軸63に追いつくことで、上記のごとくモータトルクによりロックオフ状態にされたトルクダイオード61が再度ロックオン状態となる。
この再ロックオン状態によりトルクダイオード61の出力軸64が再停止されるのに対し、入力側軸63は引き続きモータトルクにより回転され続けることから、トルクダイオード61が再度ロックオフ状態となる。
このためトルクダイオード61は、上記の再ロックオンおよび再ロックオフを繰り返す、所謂スティックスリップを発生し、不快な異常振動や異音を生じさせる懸念がある。
<トルクダイオードのロックオフ制御およびその効果>
ところで本実施例においては、図9のクランクシャフト回転角指令値演算部90が図10の機能別ブロック線図で示す処理により、ローラ間押し付け力制御用(トラクション伝動容量制御用)モータ45の駆動制御に資する最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを求めるに際し、
トルクダイオード61が負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同位相の負側回転(クランクシャフト回転角低下)方向への伝動中である場合、最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθを、クランクシャフト回転角目標値tθに対する指令値dθの応答(目標値tθへのクランクシャフト回転角制御応答)が、スティックスリップを防止可能な下限速度ωminを超えて遅くならないよう、このωminに対応する最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_min以下に定めるため、トルクダイオード61の上記したスティックスリップを以下のように防止することができる。
図15に矢A1で示すように、負荷トルクTcrの小さい領域でトルクダイオード61が負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同位相の負側回転(クランクシャフト回転角低下)方向への伝動中である場合と、同じく図15に矢A2で示すように、負荷トルクTcrの大きい領域でトルクダイオード61が負荷トルクTcrによる出力軸64の回転方向と同位相の負側回転(クランクシャフト回転角低下)方向への伝動中である場合とにつき、図16および図17(a),(b)を併せ参照しつつ説明する。
図15の小負荷トルク領域A1での伝動中は、図11のマップを基にクランクシャフト回転角θから求まるトルクダイオード61の噛み込みローラ(67L,67R)押し付け力Nも小さく、この押し付け力Nを分母とする前記(2)式の演算により求まる、スティックスリップを防止可能な噛み込みローラ67L,67Rの最大摩擦係数μmaxが、図12と同様な図16にμmax_A1で示すような大きい値となる。
そのため、図12(図16)のマップを基に上記の最大摩擦係数μmaxから求まる、この最大摩擦係数μmaxを実現してトルクダイオード61のスティックスリップを防止可能なクランクシャフト回転速度下限値(スティックスリップ防止下限速度)ωminは、図16においてωmin_A1で示すような低速となる。
図10における最低速度リミッタ94は当該小負荷トルク領域A1においては、かかるクランクシャフト回転速度下限値(スティックスリップ防止下限速度)ωmin_A1の変化速度でクランクシャフト回転角目標値tθに追従する、図17(a)に破線で示すような最低速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minを求める。
一方で図10におけるクランクシャフト許容回転速度判定部92は当該小負荷トルク領域A1においては、図13のマップを基にクランクシャフト回転角θからクランクシャフト最高回転速度ωmaxを、図16にωmax_A1で示すごとくに求め、
また同図における最高速度リミッタ93は、かかるクランクシャフト最高回転速度ωmax_A1の変化速度でクランクシャフト回転角目標値tθに追従する、図17(a)に一点鎖線で示すような最高速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxを求める。
図10における最終規範応答算出部96は当該小負荷トルク領域A1においては、トルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同方向(クランクシャフト回転角低下方向)の伝動中であることから、判定部95からの急2WD禁止フラグFLAGが0である(四輪駆動状態から急に二輪駆動状態に切り替えても走行不安定にならない)運転中であれば、前記した決定論理(a),(b)に基づき、最終的な規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθを求めて、モータ45の駆動制御に資する。
そのため小負荷トルク領域A1においては、クランクシャフト回転角θが、図17(a)に破線で示す最低速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minの変化速度である、スティックスリップ防止可能クランクシャフト回転速度下限値ωmin_A1と、図17(a)に一点鎖線で示す最高速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxの変化速度である、クランクシャフト最高回転速度ωmax_A1との間の速度応答、つまり図17(a)のハッチング領域における速度応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることとなる。
よって、クランクシャフト回転角θが、図17(a)に破線で示すスティックスリップ防止可能クランクシャフト回転速度下限値ωmin_A1よりも低速の応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることはなく、トルクダイオード61のスティックスリップを確実に防止することができる。
しかもこのスティックスリップ防止効果を、モータ45の駆動制御の部分的な変更のみにより達成し、前記した従来対策のように摩擦部材のごとき部品の追加に頼る必要がないため、
コスト上の不利益を生ずることがないと共に、摩擦部材のごとき追加部品がトルクダイオード61の伝動効率を低下させてモータ45のエネルギー消費を無駄に増大させるという問題を生ずることもない。
またクランクシャフト回転角θが、図17(a)に一点鎖線で示すクランクシャフト最高回転速度ωmax_A1よりも高速の応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることがなく、
クランクシャフト回転角目標値tθに対するクランクシャフト回転角θの追従制御応答を不要に高速化して、急な二輪駆動への移行により車両が挙動変化を生ずるという問題を生ずることもない。
図15の大負荷トルク領域A2での伝動中は、図11のマップを基にクランクシャフト回転角θから求まるトルクダイオード61の噛み込みローラ(67L,67R)押し付け力Nも大きく、この押し付け力Nを分母とする前記(2)式の演算により求まる、スティックスリップを防止可能な噛み込みローラ67L,67Rの最大摩擦係数μmaxが、図12と同様な図16にμmax_A2で示すような小さい値となる。
そのため、図12(図16)のマップを基に上記の最大摩擦係数μmaxから求まる、この最大摩擦係数μmaxを実現してトルクダイオード61のスティックスリップを防止可能なクランクシャフト回転速度下限値(スティックスリップ防止下限速度)ωminは、図16においてωmin_A2で示すような高速となる。
図10における最低速度リミッタ94は当該大負荷トルク領域A2においては、かかるクランクシャフト回転速度下限値(スティックスリップ防止下限速度)ωmin_A2の変化速度でクランクシャフト回転角目標値tθに追従する、図17(b)に破線で示すような最低速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minを求める。
一方で図10におけるクランクシャフト許容回転速度判定部92は当該大負荷トルク領域A2においては、図13のマップを基にクランクシャフト回転角θからクランクシャフト最高回転速度ωmaxを、図16にωmax_A2で示すごとくに求め、
また同図における最高速度リミッタ93は、かかるクランクシャフト最高回転速度ωmax_A2の変化速度でクランクシャフト回転角目標値tθに追従する、図17(b)に一点鎖線で示すような最高速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxを求める。
図10における最終規範応答算出部96は当該大負荷トルク領域A2においては、トルクダイオード61が負荷トルクによる出力軸64の回転方向と同方向(クランクシャフト回転角低下方向)の伝動中であることから、判定部95からの急2WD禁止フラグFLAGが0である(四輪駆動状態から急に二輪駆動状態に切り替えても走行不安定にならない)運転中であれば、前記した決定論理(a),(b)に基づき、最終的な規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθを求めて、モータ45の駆動制御に資する。
そのため大負荷トルク領域A2においては、クランクシャフト回転角θが、図17(b)に破線で示す最低速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_minの変化速度である、スティックスリップ防止可能クランクシャフト回転速度下限値ωmin_A2と、図17(b)に一点鎖線で示す最高速規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_maxの変化速度である、クランクシャフト最高回転速度ωmax_A2との間の速度応答、つまり図17(b)のハッチング領域における速度応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることとなる。
よって、クランクシャフト回転角θが、図17(b)に破線で示すスティックスリップ防止可能クランクシャフト回転速度下限値ωmin_A2よりも低速の応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることはなく、トルクダイオード61のスティックスリップを確実に防止することができる。
しかもこのスティックスリップ防止効果を、モータ45の駆動制御の部分的な変更のみにより達成し、前記した従来対策のように摩擦部材のごとき部品の追加に頼る必要がないため、
コスト上の不利益を生ずることがないと共に、摩擦部材のごとき追加部品がトルクダイオード61の伝動効率を低下させてモータ45のエネルギー消費を無駄に増大させるという問題を生ずることもない。
またクランクシャフト回転角θが、図17(b)に一点鎖線で示すクランクシャフト最高回転速度ωmax_A2よりも高速の応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることがなく、
クランクシャフト回転角目標値tθに対するクランクシャフト回転角θの追従制御応答を不要に高速化して、急な二輪駆動への移行により車両が挙動変化を生ずるという問題を生ずることもない。
ところで、急な二輪駆動状態への切り替えが行われると車両が走行不安定になる走行状態のため急2WD禁止フラグFLAGが1にされている場合、図10における最終規範応答算出部96は、前記した(c)の論理により無条件に前記の式(6)を採用して、図17(a),(b)に破線で示す最低速度規範応答用クランクシャフト回転角指令値dθ_min をそのまま最終的な規範応答用のクランクシャフト回転角指令値dθとする。
このため、この場合はクランクシャフト回転角θが、図17(a),(b)に破線で示す制御上最低速のスティックスリップ防止下限速度ωmin(ωmin_A1またはωmin_A2)の低速応答でクランクシャフト回転角目標値tθに追従するよう制御されることとなる。
従ってクランクシャフト回転角θが、制御上の最低速ωminでクランクシャフト回転角目標値tθに向け低下されることとなり、クランクシャフト回転角θの低下が急速に行われて、急な二輪駆動への移行により車両が挙動変化を生ずるという問題を回避することができる。
<その他の実施例>
なお上記実施例では、不可逆回転伝動系がトランファ(駆動力配分制御装置)1のクランクシャフト回転位置制御系である場合について説明したが、本発明の上記した着想は、それ以外の不可逆回転伝動系にも用い得るのは言うまでもない。
また上記実施例では、不可逆回転伝動素子として図2,6〜8に示すようなトルクダイオード61を用いる場合について説明したが、不可逆回転伝動素子はこれに限られるものでないこと勿論である。
1 駆動力配分装置
2 エンジン
3 変速機
4 リヤプロペラシャフト
5 リヤファイナルドライブユニット
6L,6R 左右後輪(主駆動輪)
7 フロントプロペラシャフト
8 フロントファイナルドライブユニット
9L,9R 左右前輪(従駆動輪)
11 ハウジング
12 主軸
13 副軸
23,25 ベアリングサポート
31 第1ローラ
32 第2ローラ
45 ローラ間押し付け力制御モータ(アクチュエータ)
51L,51R クランクシャフト
51La,51Ra 中心孔
51Lb,51Rb 偏心外周部
51Lc,51Rc リングギヤ
55L,55R クランクシャフト駆動ピニオン
56 ピニオンシャフト
61 トルクダイオード(不可逆回転伝動素子)
62 固定ケース
63 入力軸
63a 駆動ピン
63L,63R ローラ保持爪
64 出力軸
64a 六角形拡大端部
64b 盲孔
65,66 軸受
67L,67R 噛み込みローラ
68 バネ
70 クランクシャフト回転角目標値演算部
80 クランクシャフト回転速度演算部
90 クランクシャフト回転角指令値演算部(入出力軸間伝動時回転方向検知手段、指令回転位置応答決定手段)
91 規範応答算出部
92 クランクシャフト許容回転速度領域判定部(指令回転位置所定変化速度決定手段)
93 最高速度リミッタ
94 最低速度リミッタ
95 急2WD切り替え禁止判定部(車両運転状態判定手段)
96 最終規範応答算出部
100 モータ駆動電流演算部
111 トランスファコントローラ
112 アクセル開度センサ
113 車輪速センサ群
114 ヨーレートセンサ
115 操舵角センサ
116 クランクシャフト回転角センサ

Claims (6)

  1. アクチュエータからのトルクを入力される入力軸と、
    該入力軸からのトルクを出力する出力軸と、
    これら入力軸および出力軸間にあって、入力軸から出力軸へトルクを伝達する伝動時は、該トルクが目標回転位置を所定応答で達成するための指令回転位置を実現可能なトルクとなるよう前記アクチュエータを駆動制御することでロックオフ状態にされて前記トルク伝達により入力軸および出力軸を該出力軸への負荷トルクに抗し前記目標回転位置へ回転可能であるが、入力軸から出力軸へトルクが伝達されない非伝動時は出力軸への前記負荷トルクによりロックオン状態にされて出力軸の負荷トルクが入力軸へ伝達されるのを阻止する不可逆回転伝動素子とを具えた不可逆回転伝動系において、
    前記入力軸から出力軸へトルク伝達する伝動時であって、これら入力軸および出力軸の回転方向が前記負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向であるのを検知する入出力軸間伝動時回転方向検知手段と、
    該手段により、入出力軸間伝動時の回転方向が負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向であると検知される場合、前記目標回転位置に対する指令回転位置の追従応答を所定変化速度以上となす指令回転位置応答決定手段と、
    前記不可逆回転伝動素子のロックオン状態を作り出すロックオン部の最大摩擦係数から、不可逆回転伝動素子のロックオンおよびロックオフが繰り返されるスティックスリップ状態を防止可能な、負荷トルクによる出力軸の回転方向と同じ回転方向における前記指令回転位置の変化速度に関したスティックスリップ防止下限速度を演算し、このスティックスリップ防止下限速度を前記指令回転位置の所定変化速度として前記指令回転位置応答決定手段での決定に資する指令回転位置所定変化速度決定手段と
    を具備してなることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
  2. 請求項1に記載された、不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置において、
    前記指令回転位置所定変化速度決定手段は、前記ロックオン部の最大摩擦係数を、該ロックオン部の押し付け力および前記負荷トルクから演算により求めるものであることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
  3. 請求項1または2に記載された、不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置において、
    前記指令回転位置所定変化速度決定手段は、予め求めておいた、前記不可逆回転伝動素子の回転速度に対する前記ロックオン部摩擦係数の変化特性を基に前記ロックオン部の最大摩擦係数から、該ロックオン部の最大摩擦係数が実現される不可逆回転伝動素子の回転速度を求めて前記スティックスリップ防止下限速度とするものであることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された、不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置において、
    一対のローラを径方向に押圧接触させた摩擦伝動ユニットに前記不可逆回転伝動系を用い、該不可逆回転伝動系により一方のローラを偏心軸線周りに旋回させてローラ軸線間距離を変更することでローラ間径方向押圧力を制御するものであることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
  5. 前記摩擦伝動ユニットが、前記ローラの一方を主駆動輪と共に回転され、他方のローラを従駆動輪と共に回転されるようにして四輪駆動車両に用いられ、主従駆動輪間駆動力配分制御を司るものである、請求項4に記載された、不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置において、
    前記主従駆動輪間駆動力配分比を急変させると走行安定性が損なわれる車両運転状態であるか否かを判定する車両運転状態判定手段を設け、
    前記指令回転位置応答決定手段は、該車両運転状態判定手段の判定結果に応答し、前記主従駆動輪間駆動力配分比を急変させると走行安定性が損なわれる車両運転状態であるとき、前記目標回転位置に対する指令回転位置の追従応答を前記所定変化速度となすものであることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
  6. 請求項5に記載された、不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置において、
    前記車両運転状態判定手段は、ステアリングホイール操舵角および主従駆動輪間回転差が設定値以上であるとき、駆動力配分比を急変させると走行安定性が損なわれる車両運転状態であると判定するものであることを特徴とする不可逆回転伝動系のロックオフ制御装置。
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