JP5440544B2 - 乾式クリーニング筐体および乾式クリーニング装置および乾式クリーニング方法 - Google Patents

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Description

この発明は、乾式クリーニング筐体および乾式クリーニング装置および乾式クリーニング方法に関する。
洗浄液を用いずに洗浄対象物(以下「クリーニング対象物」ともいう)に対するクリーニングを行う「乾式クリーニング方式」として、粒状の洗浄体を気流により飛翔させ、クリーニング対象物に衝突させてクリーニングを行うものが知られている(特許文献1、2)。また、薄片状の洗浄体を用いて乾式クリーニングを行う装置も知られている(特許文献3、4)。
特許文献1、2に記載された乾式クリーニングでは、粒状の洗浄体の材料として「スポンジ体や化学粘土質」等の柔軟な材料が用いられるので、洗浄体が衝突することによりクリーニング対象物に与える衝撃力は比較的小さく、クリーニング対象物の表面を傷める虞は少ないが、クリーニング対象物に強固に固着した「汚れ」を取り除くことは難しく、十分なクリーニングを実現するために長時間のクリーニングが必要になったりする。
また、特許文献2に記載された乾式クリーニングは、クリーニング対象物に対して、網部材を介して洗浄体を当てるので、洗浄体が柔軟であることとも相俟って「強固に付着した汚れのクリーニング」には不向きであると考えられる。
画像形成装置に関連しては、例えば、トナー粒子を用いる乾式の現像装置では、現像ユニットに「熱により融着したトナー」が固着することが多く、オーバホール時やリサイクルの工程で、このような固着トナーを除去するクリーニング作業が必要となる。
また「フローはんだ槽工程」で用いられる、ディップパレットもしくはキャリアパレットと呼ばれるマスク治具にはフラックスが塗布されるが、塗布されたフラックスが堆積して固化すると「被はんだ物」に対するマスクとしての精度が低下し、適正な「フローはんだ」の妨げになる。このため、上記マスク治具に固着したフラックスを除去するクリーニング作業が必要となる。
固着したトナーやフラックスの「固着力」は相当に強く、特許文献1や2に記載された「柔軟な洗浄剤」を用いる乾式クリーニングでは除去することが困難である。
特許文献3、4記載の乾式クリーニングは、固着したトナーやフラックスがクリーニング対象物に強く付着していても、良好なクリーニング効果を発揮できる。
しかし、特許文献3記載の乾式クリーニングでは、クリーニング対象物を「閉じた洗浄槽」の中にセットし、洗浄槽内で「薄片状の洗浄体」を飛翔させてクリーニングを行うので、クリーニング可能なクリーニング対象物は、洗浄槽内にセットできる大きさのものに限られてしまう。
また、特許文献4記載の乾式クリーニングでは、クリーニングユニットそのものはある程度小さいが、クリーニング装置そのものは大型化しやすい。
この発明は、クリーニング対象物に強い付着力で強固に付着している汚れも、良好にクリーニング除去できる新規な乾式クリーニング装置、この装置を用いる乾式クリーニング方法、上記乾式クリーニング装置に用いる乾式クリーニング筐体の実現を課題とする。
この発明の乾式クリーニング筐体は「薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を空気流により飛翔させ、クリーニング対象物に当ててクリーニング対象物のクリーニングを行う乾式クリーニング方式に用いられるもの」である。以下、乾式クリーニング筐体を「クリーニング筐体」あるいは単に「筐体」とも言う。
「洗浄媒体」は、上記の如く「薄片状の洗浄片の集合」として構成される。
洗浄片については後述する。
請求項1記載の乾式クリーニング筐体は「内部に洗浄媒体を保持して飛翔させるための空間(内部空間)」を有し、開口部と、吸気口と、通気路と、多孔手段とを有する。
「開口部」は、クリーニング対象物の表面に接して該表面により閉ざされるように、筐体に形成される。
「吸気口」は、筐体の内部を吸気するためのものであって筐体に設けられる。
「通気路」は、筐体外部からの空気を筐体内部へ通す空気流通路である。
「多孔手段」は、洗浄片の上記吸気口側への移動を阻止しつつ上記クリーニング対象物から除去された除去物を通過させる手段である。多孔手段は、その名の示すとおり「多数の孔」を有するが、この「孔」の大きさは「除去物よりも大きく、洗浄片よりも小さく」設定され、これにより除去物(汚れ)をクリーニング筐体外に排出させるが、洗浄片はクリーニング筐体内に留める。多孔手段は、例えば洗浄片の大きさよりもメッシュの細かい網状体や「洗浄片の大きさより径の細かい孔を多数穿ったパンチングメタル」等を好適に用いることができる。
上記開口部は「筐体の本体」に形成される。
吸気口、通気路、多孔手段は、何れも「筐体自体の構造の一部」として形成されることもできるし、筐体本体部とは別個に形成したものを、上記本体部に組み付けて筐体本体部と共に「乾式クリーニング筐体」を構成するようにしてもよい。
上記開口部、吸気口、通気路、多孔手段は「開口部をクリーニング対象物の表面で閉ざした状態で、吸気口を介した内部の空気の吸引により筐体内部に生じる負圧により、外部の空気が通気路を介して内部空間に導気されて、筐体内部に洗浄媒体を飛翔させる旋回空気流が発生する」ように形成されている。
吸気口は、乾式クリーニング筐体に2以上設けることもできる。吸気口の数に応じて、多孔手段も複数個設けることができる。
即ち、クリーニング筐体の開口部に、クリーニング対象物のクリーニングすべき部分を当接させて、開口部を閉ざすと、クリーニング筐体の内部と外部とは、吸気口と通気路とにより外部と連通している。
従って、この状態で吸気口から筐体内部を吸引すると、筐体内部に負圧が生じ、通気路を通して外部の空気が筐体内部に吸い込まれる。このように吸い込まれる空気により筐体内部に旋回空気流が発生し、筐体内部に保持された洗浄媒体を飛翔させる。
「旋回空気流」は、クリーニング筐体の内部空間内を旋回する空気流である。
クリーニング筐体に形成された通気路が短くなって「通気口(通気路の長さがクリーニング筐体の壁厚と同程度の状態)」となると、外部から吸引される空気は、筐体内部で拡散的な乱れた流れとなり「洗浄媒体を良好に飛翔させる旋回空気流」が形成され難い。
従って、通気路は「外部から吸引される空気の流れ」を整流できる長さを有する。
旋回空気流により飛翔する洗浄媒体の各洗浄片は、筐体内を旋回して「筐体の開口部を閉ざしているクリーニング対象物」に繰り返し衝突し、クリーニング対象物に付着している「汚れ」を除去する。「汚れ」は、洗浄片による衝突により、微細な塊や粉状物となってクリーニング対象物から離れ、多孔手段を通って吸気口から排出される。
筐体内で旋回して飛翔する洗浄片は、多孔手段を通過できず、筐体内部に留まって旋回空気流により飛翔を続け、クリーニング対象物に繰り返し衝突する。
クリーニング対象物が、乾式クリーニング筐体の開口部から離れ、開口部が開放状態になると、筐体内部の負圧が急速に減少し、通気路を通る空気流の流れも「速やかに減衰」して洗浄媒体の飛翔が止み、洗浄媒体は吸気口を介した吸引力により、多孔手段に張り付いた状態となる。
従って、「開放状態となった開口部」から洗浄媒体が筐体外部へ漏れ出ることがない。
このように「開放状態となった開口部から、洗浄媒体が筐体外部へ漏れ出る」のを、より確実に防止するには「クリーニング対象物の表面が開口部から離れたとき、通気路出口近傍の静圧が、大気圧もしくはその近傍となる位置に、通気路出口を配置する」のがよい。
「通気路出口」は、筐体内部の負圧により外部から通気路を通して引き込まれる空気流の「筐体内部側の出口」である。
乾式クリーニング筐体は「内部に、旋回空気流の旋回軸を囲繞する流路制限部材」を有することが好ましい(請求項2)。このような流路制限部材を設けると、旋回空気流は、流路制限部材と筐体内壁の間を旋回して流れ、「流路断面積」が小さくなり、旋回空気流の流速が大きくなって、洗浄媒体をより良好に飛翔させることができる。
請求項1または2記載の乾式クリーニング筐体は、通気路が「外部からの空気を開口部に向かって整流する」ように形成されていることが好ましい(請求項3)。
上記の如く、「通気路」は「吸引される空気の流れを整流する作用」を果たすが、このように整流された空気流により飛翔する洗浄媒体が、クリーニング対象物に対して有効に衝突するようにするには、整流された空気流の流速が最も大きい通気路出口部分での空気流が「開口部に向かって流れる」ようになっているのが良い。
請求項1〜3の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体における「多孔手段」は、旋回空気流の旋回軸に直交する面に配置されることが好ましい(請求項4)。
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体は、筐体内部の空間が回転体形状で、通気路を介して導気される空気流が「回転体形状の接線に近い角度」で旋回空気流を形成するように、通気路が形成されていることが好ましい(請求項5)。
即ち、導気される空気流が筐体内壁に平行に近い角度で筐体内部に導気されるようにすることが好ましい。
請求項1〜の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体は「吸気口を介して内部が吸気されている状態」において、開口部が開放しているとき導気される開放時導気流量と、開口部を閉ざしているとき導気される閉塞時導気流量の比:開放時導気流量/閉塞時導気流量が0.25以下であることが好ましい(請求項)。
なお「開放時導気流量/閉塞時導気流量」は、より好ましくは0.1以下が良い。
請求項1〜の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体は「内部の静圧に応じて通気路に流入する空気の流れを調整する開閉弁」を有することができる(請求項)。
例えば、このような開閉弁を「通気路の出口部」に設けて、出口部を開閉できるようにし、比較的弾性力の弱いばねで上記出口を閉ざすようにしておく。開口部が塞がれた状態で、吸気口により筐体内部の空気を吸引すると、内部に生じる負圧により開閉弁が開いて空気を導気するが、開口部が開放状態となって筐体内部の負圧が弱まると、「ばね」の弾性力により開閉弁が通気路の出口を閉ざし、洗浄媒体の飛翔は直ちに停止される。
このようにすると「開放状態となった開口部」からの洗浄媒体の筐体外部への漏れを、より有効に防止することができる。
この場合には、勿論、請求項の条件(開放時導気流量/閉塞時導気流量≦0.25)
が満足される。
この発明の乾式クリーニング装置は、上記乾式クリーニング筐体を用いて乾式クリーニングを行う装置であって、請求項1〜の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体と、洗浄媒体と、吸気手段とを有する(請求項)。
「洗浄媒体」は、薄片状の洗浄片の集合であって、乾式クリーニング筐体の内部に保持される。
洗浄媒体は、クリーニング機能上「乾式クリーニング装置」を構成する構成要素であるが、これを常時「乾式クリーニング筐体内に保持」する必要は無く、装置とは別に保存されたものを、クリーニング時に乾式クリーニング筐体内にセットするようにして良いことは言うまでもない。
また、洗浄媒体は乾式クリーニングが実行されるに連れ、経時的に消耗するが、消耗品として随時補給できることは言うまでもない。
「吸気手段」は、乾式クリーニング筐体の内部を、吸気口を介して吸気する。
吸気手段も、クリーニング機能上「乾式クリーニング装置」を構成する構成要素であるが、「専用の手段」である必要は必ずしも無く、例えば、家庭用あるいは業務用の電気掃除機の「真空モータ」の吸引ダクトを、乾式クリーニング筐体の吸気口に接続して「吸気手段」として用いることもできる。
「吸気手段」には、真空モータのほかに、真空ポンプや、さらにはベンチュリー効果を利用した「空気流や水流により低圧を発生させる」タイプのものなどを適宜利用できる。
請求項記載の乾式クリーニング装置は、クリーニング筐体として請求項8に記載した「内部の静圧に応じて通気路に流入する空気の流れを調整する開閉弁」を有するものを用い、この開閉弁を制御手段により「筐体内部の静圧に応じて制御」するようにすることができる。
請求項においては、開閉弁を閉じるのに、例えば、上記の如く「弾性力の弱いばね」が用いられ、この「ばね」は、乾式クリーニング筐体の1構成要素として筐体内に設けられる。
請求項における制御手段は、筐体の有する弁の開閉を「乾式クリーニング筐体とは別の機構」により制御する。請求項の条件(開放時導気流量/閉塞時導気流量≦0.25)は、この場合にも勿論満足される。
請求項または記載の乾式クリーニング装置は「吸気口を吸気手段に連結された状態において、乾式クリーニング筐体を手動で取り扱う」ようにできる(請求項10)。
請求項または記載の乾式クリーニング装置はまた「クリーニング対象物を保持するクリーニング対象物保持手段と、乾式クリーニング筐体を保持して、クリーニング対象保持手段に保持されたクリーニング対象物に対する位置・姿勢を制御する位置・姿勢制御手段と、を有する」構成とすることができる(請求項11)。
請求項11に記載の乾式クリーニング装置に用いられる洗浄媒体を構成する「薄片状の洗浄片」は、可撓性を有する材質で、面積:Sが、
1mm≦S≦200mm
の範囲にあり、厚さ:Dが、
0.03mm≦D≦0.5mm
のものであることが好ましい(請求項12)。
上記面積:S、厚さ:Dは、
2mm≦S≦100mm
0.05mm≦D≦0.2mm
であることがより好ましい。
この発明の乾式クリーニング方法は「薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を、空気流により飛翔させ、クリーニング対象物に当ててクリーニング対象物のクリーニングを行う乾式クリーニング方法」であって、以下の点を特徴とする(請求項13)。
即ち、請求項1〜の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体の内部に洗浄媒体を保持させ、乾式クリーニング筐体の開口部を、クリーニング対象物に当接させて塞ぎ、吸気口を介して乾式クリーニング筐体の内部を吸気して、筐体内部に発生する負圧により、通気路を通して外気を筐体内部に導気して、乾式クリーニング筐体内部に旋回空気流を発生させ、この旋回空気流により洗浄媒体を旋回的に飛翔させて、開口部を塞ぐクリーニング対象物の表面に当ててクリーニングを行う。
以下、若干補足する。
クリーニング筐体は、その内部に旋回空気流を発生させるので、クリーニング筐体の内部空間は「旋回空気流を発生させ易い」ように、空気流が筐体内壁に沿って循環して流れるように「連続した内壁」を持つ空間であり、断面形状として多角形形状や円形状等が好ましい。
上述のように、クリーニング筐体の有する「通気路」は、「外部から導気される空気の流れ」を整流する機能を有するので、通気路の形態としては「滑らかな内面を持った管形状」が一般的であるが、これに限らず、例えば「滑らかな面を持つ、板状の流路制御板」等を用いても、空気を板面に沿った方向に流れやすくする整流効果を発現できるので「板状の流路制御手段を用いて通気路を構成する」こともできる。
また、通気路による「空気の流れ」は、直線的であることが一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない「緩やかなカーブ」を描いて曲がっていても整流機能はあり、通気路の形態は直線状に限らない。
通気路内面の「通気路に直交する断面形状」は、円形状、楕円形状、矩形形状、スリット形状等、種々の形態のものが許容される。
通気路を通して導気された空気は、上記の如く旋回空気流を形成するが、クリーニング筐体内は多孔手段を介して吸引されているので、旋回空気流を形成した空気の一部は多孔手段を介して筐体外へ排出される。
しかし、通気路を通じて外部の空気が連続的に導気されるので、このように導気される空気が常に旋回空気流に合流し、定常的な旋回空気流が形成される。
旋回空気流は多孔手段から吸気手段側へ吸い出されるまでに、内部で何周も循環するため、旋回空気流の流量は通気路から流れこむ流量の5〜6倍に達することが気流シミュレーションにより確認されている。
ここで「洗浄媒体」を構成する「薄片状の洗浄片」について説明する。
洗浄片は「薄片状」とあるように薄い形態を有し、「片」とあるようにサイズも大きくは無い。
洗浄片の材質は、後述する実施の形態において示すように「ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂」などの樹脂や、紙、布や、雲母などの鉱物、セラミックやガラス、金属等の使用が可能である。
クリーニング対象物に付着している「汚れ」の付着強さの程度によって、上記の種々の材料のなかから適当なものを選択して用いることができる。例えば、クリーニング対象物への汚れの付着力が小さい場合であれば、紙や布などによる「軟質の洗浄片」を用いることができる。
「薄片状の洗浄片」には、以下の如き利点がある。
(イ)洗浄片1枚あたりの重さに対して「面方向の空気抵抗」が大きく、比較的弱い空気流により浮遊・飛翔・加速し易く、旋回空気流に対する追従性が高い。
(ロ)洗浄片の厚みが薄いため、クリーニング対象物の表面が複雑な形状であっても、表面形状の狭い領域にも入り込んで付着物(汚れ)を除去できる。
(ハ)大きさ・厚さが小さいので、洗浄媒体に使用する素材の量が大量とならない。
(ニ)薄片の「厚みのエッジ部」のスクレーパ効果により、強い付着力の汚れの除去に良好に適応できる。
(ホ)クリーニング対象物に付着した汚れが、クリーニング対象物から「粉状」になって分離するような場合、分離した「粉状汚れ」と、洗浄片との面積差が大きいため、多孔手段による分離が容易である。特に、洗浄片を「樹脂フィルム」の小片で形成する場合、洗浄片の表面が平滑であるようにすると、洗浄片と汚れ片の分離が容易である。
「汚れの付着力」が小さい場合には、樹脂フィルム等の「可撓性」を有するものを用いるのが良い。
「可撓性を有する洗浄片」には、以下の如き利点がある。
(ヘ)クリーニング対象物に衝突するとき、撓みにより衝撃の一部を吸収するのでクリーニング対象物を傷つけにくい。
(ト)クリーニング対象物に倣う線接触、面接触が発生し、一度の衝突でより広い面積に付着した付着物(汚れ)を除去できる。
上記利点「イ〜ト」のうち、「イ、ロ、ハ、ヘ、ト」は、従来から知られた「ショットブラスト」を用いるクリーニング方式に比して優れており、「ニ、ホ、ト」は「重曹等の粉体ブラスト」を用いるクリーニング方式に比して優れている。
また「ロ、ハ、ニ、ホ」は、スポンジ、ゴム等による弾性材ブラストを用いるクリーニング方式に比して優れている。
洗浄媒体を構成する「洗浄片」の形状には特に制限がない。クリーニング対象物の面形状や汚れの種類、付着の程度等に応じて、適宜の形状を設定できる。
例えば「矩形状の洗浄片」は形成が容易で、安価に作製できる。クリーニング対象物の細孔状部分のクリーニングを目的とする場合であれば「短冊形状や、十字型、星型等の鋭角を持つ形状」が適しており、クリーニング動作に伴う「洗浄媒体の欠け」等による発塵を最小に押さえたいときは円形状の洗浄片が適している。
なお「同時に使用される洗浄媒体」を構成する洗浄片は、大きさや形状・厚さ等が必ずしも完全に揃っていなくても良い。
可撓性を有する材質による「洗浄片」の場合、その面積が:Sが200mmを超えて大きくなると、上記「ハ」の効果を有効に得られないし、旋回空気流による飛翔が生じ難くなり、飛翔のために大きな吸気力が必要になる。
逆に、面積:Sが1mmより小さいと、上記「ニ、ホ、ト」の効果を得にくい。
前述のように、面積:Sは、上記効果を「より有効に発揮できる」ためには、
2mm≦S≦100mm
であることが好ましい。
洗浄片の厚み:Dが、0.5mmを超えて大きくなると洗浄片の剛性が強くなり、可撓性が低減して「可撓性による上記効果(ヘ、ト)」が低減する。
厚み:Dが0.03mmよりも小さいと、洗浄片の「腰」が弱くなり、クリーニング対象物への衝突の際に「汚れに与える衝撃」が小さくなってクリーニング効果が低下するほか、クリーニング筐体の内壁等に密着して再飛翔しにくくなったり、多孔手段に強く付着して目詰まりを生じたりし易い。
洗浄片の厚み:Dは「より良好なクリーニング効果」の実現のためには、0.2mmより小さく、0.05mmよりも大きいことが好ましい。
なお、洗浄片の厚さ:Dの下限は「面積:S」が小さい場合には、厚さ:Dが0.05mmより小さくても、洗浄片に所望の可撓性を与えて、上記の洗浄片の「腰」が弱くなることに起因する「再飛翔しにくい問題や、多孔手段の目詰まりの問題」を生じないようにできる。
以上に説明したように、この発明によれば、新規な乾式クリーニング筐体、この乾式クリーニング筐体を用いる乾式クリーニング装置、乾式クリーニング方法を提供できる。
この発明の乾式クリーニング筐体は、上記の如く構成され「洗浄媒体を飛翔させるためのエネルギ」が、クリーニング筐体内に負圧を発生させるための吸気のエネルギのみでよく、開口をクリーニング対象物により直接塞ぐことにより、対象物の外部からクリーニング動作を行わせることができる。
上記開口が開放状態となったときには、洗浄媒体を飛翔させる原動力となる「通気路」からの空気流が直ちに減衰し、上記吸気により洗浄媒体が多孔手段に吸い付けられるので、開口が開放状態となったままでも「洗浄媒体が、開口部から乾式クリーニング筐体外へ漏れ出す」のを有効に防止できる。
また、この発明の乾式クリーニング装置・乾式クリーニング方法によれば、洗浄媒体の種類を適宜に選択することにより、種々のクリーニング対象物や、汚れの付着状態に応じて良好なクリーニングを行うことができる。
特に、後述する実施の形態に示すように、樹脂フィルムの洗浄片を用いることにより、前述した「フローはんだ槽工程で用いられる、ディップパレットに塗布されて堆積固化したフラックス」も良好にクリーニングできる。
乾式クリーニング装置の実施の1形態を説明するための図である。 図1の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の別形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置によるクリーニングの1例を説明するための図である。 図4のクリーニング例の要部を説明するための図である。 図4、図5のクリーニングの工程を説明するフローチャートである。 開放時インレット流量/閉塞時インレット流量の測定結果の例を示す図である。 乾式クリーニング装置の実施の別形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 クリーニング筐体の変形例を示す図である。 乾式クリーニング装置の実施の他の形態を説明するための図である。 開口部からアタッチメントを取り外した状態を示す図である。 インレットの変形例を示す斜視図である。 開口部に装着するアタッチメントの斜視図である。 各アタッチメントの構成を示す要部断面図である。 図20(c)、(d)で示したアタッチメントの使用によるインレットからの気流角度の変更状態を示す図である。 薄片状の洗浄媒体の衝突時のパターンを示す模式図である。 各洗浄媒体の機械的物性の分布を示す図である。
以下、実施の形態を説明する。
図1は、乾式クリーニング装置の実施の1形態を説明するための図である。
図1において、符号10は乾式クリーニング筐体を示している。以下、乾式クリーニング筐体を単に「筐体」と称する。
筐体10は、図1の上下の図から明らかなように、円錐形状の中空体を、互いに逆向きにして、その底面側で合わせた形態となっている。図1の下図に示す符号10Aで示す部分を「上部筐体」、符号10Bで示す部分を「下部筐体」と称する。これは便宜的な称呼であって、現実の上下とは必ずしも関係ない。
これら上部筐体10Aと下部筐体10Bとは一体として形成されている。
筐体10の材質は特に限定されないが、異物の付着や洗浄媒体との摩擦による消耗を防ぐために、例えば「アルミ二ウムやステンレス」などの金属製の物は好適であるが、樹脂成型等で作製される「樹脂製」のものを用いることもできる。
また、筐体内部における旋回空気流の減衰を軽減できるように、内面は平滑であることが好ましい。後述する他の実施形態においても同様である。
上部筐体10Aと下部筐体10Bとの間には、これらの筐体の円錐形状の底面となる部分に板状の多孔手段10Cが設けられている。多孔手段10Cを以下「分離板10C」と称する。
上部筐体10Aの内部には、上部筐体10Aの円錐軸を「共通の軸」とするように、円筒状の内筒部材10Dが、筐体10の一部として設けられ、内筒部材10Dの、図における「下の部分」は分離板10Cに当接している。
下部筐体10Bの頂部側(図で下方の部分)は筒状に開口して「吸気口」を構成し、吸気ダクト20Bを介して吸引装置20Aに連結されている。
吸引装置20Aと吸気ダクト20Bとは「吸気手段」を構成する。吸引装置20Aとしては、前述の如く、真空モータや真空ポンプ、「空気流や水流により低圧を発生させるタイプのもの」などを適宜用いることができる。
吸引ダクト20Bは「一定の形状を保つ固定型」のものでも良いし、流路を自在に曲げられる形態のものでもよい。
上部筐体10Aの底面に近い部分は「円筒状」となっており、この円筒状部分の一部に開口部10Eが形成されている。開口部10Eは、前記円筒状部分を「円筒軸に平行な平断面」により切断した形状であり「矩形形状」である。
また、上記円筒状部分は、中空シリンダ10Fにより貫通され、この中空シリンダ10Fは上部筐体10Aに一体化されている。
以下、中空シリンダ10Fを「インレット10F」と称する。
インレット10Fの態位は、分離板10Cに平行的であり、その長手方向は、上部筐体10Aの円筒状部分の半径方向に対して傾き、内筒部材10Dの周面の接線に略平行な方向を持ち、上部筐体10A内に開いた出口側は、開口部10Eに対向するように位置している。
即ち、インレット10Fの内部は「通気路」をなしている。
説明中の実施の形態では、インレットは1個であるが、筐体の形状やサイズによってはインレットを2つ以上配置することもできる。
分離板10Cは「パンチングメタルのような穴が空いた円板状の部材」であって、図1の下図に示すように、下部筐体10Bと上部筐体10Aとの境目の部分に設けられて、上部協体10A内と下部筐体10B内とを隔てる。
分離板10Cは上記のものに限らず「洗浄媒体を通過させず、空気及び粉塵(クリーニング対象物から分離された汚れ)を通過させる径の細孔」を多く備える多孔形状のものであればよく、細孔の形状は円形に限らずスリット状でもよく、網状の板を用いてもよい。
分離板10Cの材質は「滑らかな面を備えて」いれば良く、樹脂や金属などを適宜に選択できる。
図1上図に符号PCで示すのは「薄片状の洗浄片」であり、この洗浄片PCの集合体が「洗浄媒体」をなす。
以上のように構成される乾式クリーニング装置によるクリーニング対象物のクリーニングを、図2を参照して説明する。
図2の上下の図は、図1に即して説明した乾式クリーニング装置を、図1に倣って示している。図2(b)は、開口部10Eを解放した状態で吸気手段による吸気を行っている状態、図2(a)は、開口部10Eをクリーニング対象物COの表面で塞いだ状態を示している。
クリーニング動作に先立って、洗浄媒体PCを乾式クリーニング筐体10内の上部筐体10A内に保持させる。このためには、薄片状の洗浄片PCの適量を、上部筐体10Aに形成された開口部10Eから上部筐体10A内に適宜の方法で取り込めば良い。
例えば、図2(b)に示すように、吸引装置20Aを駆動して吸気ダクト20Bにより下部筐体10B側から筐体内部の空気を吸気して、上部筐体10A内を負圧状態とし、この負圧による空気流AF(図2(b)上図)により、所望量の洗浄片PCを、開口部10Eから上部筐体10A内に吸引して「洗浄媒体」を上部筐体10A内に取り込むことができる。
このように取り込まれた洗浄媒体は、図2(b)下図に示すように、多孔手段である分離板10Cに吸い付けられて上部筐体10A内に保持される。
上部筐体10A内の空気は吸気手段により吸気され、上部筐体10A内は負圧状態となっているので、筐体外部の空気がインレット10Fを通して上部筐体内に導気されるが、このときのインレット10F内の流れは流速・流量ともに小さいので、筐体内に発生する旋回空気流RFは「洗浄媒体を飛翔させる強さ」には至らない。
上部筐体10A内に吸い込まれた薄片状の洗浄片PCは、上記の如く分離板10Cに付着し、分離板10Cの穴の部分を塞ぐので、吸い込まれる洗浄片PCの量が増えるに従い、分離板10Cの「空気を通し得る穴の総面積」が次第に減少して吸引力が低下する。
従って、上部筐体10A内に「ある程度の量」の洗浄片PCが吸い込まれると、洗浄片PCの吸い込みは実質的に停止する。
このようにして、吸気手段の吸気能力に応じた量の洗浄片PCが吸い込まれて上部筐体10A内に「洗浄媒体」として保持される。
このように、上部筐体10A内に洗浄媒体が保持されたら、図2(a)に示すように、上部筐体10Aの開口部10Eに、クリーニング対象物COの表面(クリーニングすべき表面で「汚れ」が付着している。)を密接させる。
開口部10Eがクリーニング対象物COの表面で塞がれると、開口部10Eからの吸気が止まるので、上部筐体10A内の負圧は一気に増大し、インレット10Fを通じて吸い込まれる空気量・流速ともに増大し、インレット10F内で整流され、インレット出口から上部筐体10A内に強い空気流となって吹き出す。
吹き出した空気流は、分離板10C上に保持されている洗浄片PCを「開口部10Eを塞いでいるクリーニング対象物COの表面」に向けて飛翔させる。
上記空気流は、旋回空気流RFとなって、上部筐体10Aの内壁に沿って円環状に流れつつ、一部は分離板10Cの穴を通って吸気手段により吸気される。
このように上部筐体10A内を円環状に流れた旋回空気流RFが、インレット10Fの出口部に戻ると「インレット10Fを通して導気され、インレット出口部から吹き出す空気流」が旋回空気流RFに合流しつつ加速する。このようにして上部筐体10A内に「安定した旋回空気流RF」が形成される。
洗浄媒体をなす洗浄片PCは、この旋回空気流により上部筐体10A内で旋回し、クリーニング対象物COの表面(の汚れ)に繰り返し衝突する。この衝突による衝撃で、上記汚れがクリーニング対象物COの表面から「微小粒状あるいは粉状」となって分離する。
分離した汚れは、分離板10Cの穴を通って吸気手段により乾式クリーニング筐体10の外部へ排出される。
上部筐体10A内に形成される旋回空気流RFは、その旋回軸が、分離板10Cの表面(上部筐体10A側の面)に直交しており、旋回空気流RFは分離板10Cの上記表面に平行方向の気流となる。
このため、旋回空気流は「分離板表面に吸い着け」られた洗浄片PCに、横方向から吹き付けて洗浄片PCと分離板10Cの間に入り込み、分離板10Cに吸い付けられている洗浄片PCを分離板10Cから引き剥がして再度飛翔させる効果が生じる。
また、開口部10Eが塞がれて上部筐体10A内の負圧が増大して、下部筐体10B内の負圧に近くなるため、洗浄片PCを分離板10C表面に「吸い付ける力」も低下して、洗浄片PCの飛翔がより容易になる効果が生じる。
これらの効果を「洗浄媒体吸着・飛翔効果」と呼ぶ。
旋回空気流RFは、一定の方向に気流が加速されるため高速の気流が生成しやすく、洗浄片PCの高速運動も容易となる。また、旋回空気流は多孔手段から吸い出されるまでに、内部で何周も循環するため、旋回空気流の流量は通気路から流れこむ流量の5〜6倍に達することが気流シミュレーションにより確認されている。流量が大きいため、より多量の洗浄媒体を飛翔させることができる。高速で旋回移動する洗浄片PCは、分離板10Cに吸い付けられにくく、洗浄片に付着した汚れが、遠心力により洗浄片から分離され易い。
図3は、乾式クリーニング装置の実施の別の形態例を、図1の形態例にならって描いたものであり、繁雑を避けるため、混同の虞が無いと思われるものについては、図1におけると同一の符号を付する。
図3の実施の形態においては、乾式クリーニング筐体30は、一体的に形成された上部筐体30Aと下部筐体30Bと、多孔手段としての分離板30Cと、インレット30Fを有している。
この形態例において、乾式クリーニング筐体30の下部筐体30Bは、図1に示した乾式クリーニング筐体10の下部筐体10Bと同様に「円錐形の漏斗状」であり、その下部は筒状に開口して「吸気口」をなし、吸気ダクト20Bを介して吸引装置20Aに連結されている。吸引装置20Aと吸気ダクト20Bとは「吸気手段」を構成する。
上部筐体30Aは円筒状であり、周面に開口部30Eが開口している。上部筐体30Aの内部には、上部筐体30Aの円筒軸を「共通の軸」とするように、円筒状の内筒部材30Dが筐体30の一部として設けられ、「下の部分」は分離板30Cに接している。
分離板30Cは、図1に示した実施の形態の分離板10Cと同様のものである。
上部筐体30Aは、通気路をなすインレット30Fにより貫通され、インレット30Fは上部筐体30Aに一体化されている。
インレット30Fは、図1に示す実施の形態におけるインレット10Fと同様のものであり、分離板30Cの面に平行的で、長手方向は、上部筐体30Aの半径方向に対して傾き、内筒部材30Dの周面の接線に略平行な方向を持ち、上部筐体30A内に開いた出口側は、開口部30Eに向いている。
図3の実施の形態でも、インレットは1個であるが、筐体の形状やサイズによってはインレットを2つ以上配置することもできる。
図1に示した実施の形態の場合と同様にして、吸引装置20Aを駆動して洗浄片PCを上部筐体30A内に吸引することにより、上部筐体30A内に洗浄媒体を保持させた後、開口部30Eを、図示されないクリーニング対象物の表面で塞ぐと、図1の実施の形態と同様、インレット30Fを通して取り込まれる外部空気により上部筐体30A内に旋回空気流が発生し、洗浄媒体の洗浄片PCを飛翔させて、上述の場合と同様のクリーニングが実行される。
図1に示す実施の形態と図3に示す実施の形態とは、乾式クリーニング装置の乾式クリーニング筐体を構成する上部筐体の形状に差がある。
図1の形態では上部筐体10Aは円錐形状をなすのに対し、図3の実施の形態では上部筐体30Aは円筒状である。これら何れの場合も、上部筐体内に「安定した旋回空気流」を形成できる。
図1の形態における「円錐形状」の上部筐体10Aの場合、旋回空気流は分離板10Cに平行に生じるが、このとき円錐状の内部空間の頂点に近い空間部分に「空気の淀み」が発生し、これがクッションとなって旋回空気流を分離板10Aの表面近い部分に安定させる。
また、図1、図3の実施の形態とも、上部筐体内に内筒部材10D、30Dを有するが、これらの内筒部材は、上部筐体内における旋回空気流の「気流としての断面積」を小さく制限する機能を持ち、上記断面積が小さくなることにより旋回空気流の流速を大きくする作用を果たす。
図4には、図1に実施の形態を示した乾式クリーニング装置によるクリーニングの1例を示す。
クリーニング対象物は前述した「フローはんだ槽工程で用いられるディップパレット」であり、符号100で示す。
ディップパレット100には、マスク開口部101、102、103が開口しており、これらマスク開口部の穴周辺にフラックスFLが堆積・固化している。この堆積・固化したフラックスFLが除去すべき「汚れ」である。
図4に示すように、乾式クリーニング筐体の下部筐体10Bの、吸気ダクト20Bとの接合部を手HDで握り、吸気状態で、上部筐体10Aの開口部10Eを「被クリーニング部位」に押し当てる。
開口部10Eが被クリーニング部位に押し当てられる以前は、上部筐体10A内は吸気され、洗浄媒体の洗浄片PCは、分離板10Cに吸い付けられているので、開口部10Eは、図4の如く下方を向いているが、上部筐体10A内から洗浄片PCが外部へ漏れることが無い。勿論、開口部10Eが被クリーニング部位に押し当てられた以後は、筐体内が気密状態となり、洗浄媒体の漏れ出しはない。
開口部10Eを被クリーニング部位に押し当てると、インレット10Fにより導気される流入気流が急増し、上部筐体10A内に強い旋回空気流RFを発生させ、分離板10Cに吸い付けられた洗浄片PCを飛翔させ、ディップパレット100の被クリーニング部位に付着固化したフラックスFLに衝突させてフラックスFLを除去する。
クリーニング作業者は、上述の如く筐体10を手HDに持ち、ディップパレット100に対して移動させて、被クリーニング部位を順次移動させ、付着・固化したフラックスFLを全て除去することができる。
図4の状態では、ディップパレット100のマスク開口部101の周辺部がクリーニングされ、マスク開口部102の周辺部がクリーニング途上である。
被クリーニング部位に対して開口部を移動させる時に「被クリーニング部位から開口部が離され」ても、前述の「洗浄媒体吸着・飛翔効果」により、洗浄片PCが筐体内から漏れ出さないため、洗浄媒体を構成する洗浄片PCの数が維持され、洗浄媒体量の減少によるクリーニング性能の低下は生じない。
開口部10Eの「クリーニング部位への密着性」を高めることは好ましいが、図4のような場合には、ディップパレット100のマスク開口部や周辺端部を完全に塞ぐことはできない。
このような場合には、図5に示すように、ディップパレット100の裏面側に、塩化ビニールやゴムのような「柔軟かつ丈夫」な材料によるシート150を配して、ディップパレット100のマスク開口部周囲に配置して「ディップパレットのマスク開口部」を閉ざすことにより「フラックスFLのクリーニング効率」をより高めることができる。
このようにすると、クリーニング部位の「マスク開口に隣接する端部」をクリーニングする際、柔軟なシート150が吸引によって変形し、筐体の開口部10Eを塞ぐため、筐体内部の気密性が高まり、洗浄媒体の洗浄片PCを有効に加速してクリーニング部位を良好にクリーニングできる。
開口部10Eの周囲にゴム等のシール部材10Gを設ければ、筐体内部の気密性をさらに高めることができる。
洗浄媒体は、繰り返し使用される間に「クリーニング部位に対する衝突による衝撃」により次第に破壊され、クリーニング部位のディップパレット100から除去したフラックス(汚れ)と共に、吸気手段の吸引装置20Aに吸引回収されるため、乾式クリーニング装置を長時間使用していると、筐体内に保持された洗浄媒体の量が減少する。
このような場合は、開口部10Eを、新しい洗浄片群に近づけて吸引し、筐体内に補給する。その際、分離板10Cに吸い付け得る分量しか、洗浄片は吸い込まれないので、適切な量の洗浄片を吸い込み、洗浄媒体の補給を容易に行える。
図6に、上に説明したクリーニングの手順を示すフローチャートを示す。
このフローチャートにおいて「吸引機の起動」は吸引装置20Aの起動であり、「洗浄媒体を吸い込んで補給」は、洗浄媒体を構成する洗浄片PCを吸い込んで上部筐体10A内に補給することを意味する。また「洗浄対象物」はクリーニング対象物である。
「洗浄対象物から開口部を離す」ことは、クリーニング部位を変える場合や、クリーニングが終了したときに行われ、「洗浄終了」即ち、クリーニング終了である場合には吸引機を停止する。
「洗浄終了」でない場合は「洗浄媒体の残量」を確認する。残量が十分でなく「不足」している場合は「洗浄媒体を吸い込んで補給」を行い、残量が十分である場合には「次の洗浄対象」即ち、次にクリーニングを行うべきクリーニング部位に筐体(の開口部)を移動する。
上に説明した実施の形態において、旋回空気流が形成されている間は、流入する空気量は「インレットを通して導気される空気量のみ」となり、開口部が開放している状態よりも流量が低下するので、長時間の連続稼動の場合には、吸引装置20Aが過負荷状態となって「焼きつき」などが発生する可能性がある。
これを防ぐために、筐体内の負圧の低下状態が、ある程度以上続いた場合に「下部筐体やダクトを大気に開放する安全弁」を設けることが好ましい。
また、洗浄媒体として「分離板を目詰まりさせ易いもの」が用いられる場合には、分離板の表面に微細な凸部を形成し、洗浄片と分離板との間に隙間を形成し、旋回空気流が上記隙間に吹き込み易くすることにより、洗浄片PCを飛翔し易くすることも有効である。
この発明の乾式クリーニング装置は、上述したように「筐体の開口部が開放されているときは、分離板両側の差圧によって洗浄媒体を成す洗浄片が分離板に吸い付けられ、開口部が閉ざされた状態では洗浄片が旋回空気流によって飛翔する現象」を利用している。
この現象を発生させる効果を「洗浄媒体吸着・飛翔効果」と呼ぶことは先述したが、この効果は「開口部が開放状態でインレットの流量が低く、開口部が閉塞状態でインレットの流量が大きい」場合ほど顕著である。
吸引装置20Aによる吸引流量を変化させて、開口部の開放時と閉塞時とでインレット流量(インレット内の通気路を流れる空気量)を計測すると、インレット流量は「開放時の流量と閉塞時の流量が比例関係にある」ことが実験により確認された。
従って、パラメータとしての「開放時インレット流量/閉塞時インレット流量」が小さいほど、即ち、閉塞時のインレット流量に対して開放時インレット流量が小さいほど、高い洗浄媒体吸着・飛翔効果を得易い。
図7は、開口部面積(横軸:単位:mm)と、インレット断面積({(インレット内径/2)2}π)を変化させてパラメータ「開放時インレット流量/閉塞時インレット流量(図中の縦軸「インレット流量比(開放時/閉塞時)」と表示している。)」を計測した結果を3例示す。
図7の折れ線7−1、7−2、7−3がそれぞれ、インレット内径が、7mm(φ7)、10mm(φ10)、14mm(φ14)の計測結果を示している。
上の説明における「開放時インレット流量/閉塞時インレット流量」が、請求項7に謂う「開放時導気流量/閉塞時導気流量」であることは容易に理解されるであろう。
開口部面積が350mm以上で「開放時インレット流量/閉塞時インレット流量」が少なくとも0.25以下、より好ましくは0.1以下であるとき「洗浄媒体吸着・飛翔効果」が十分に発揮されることが、実験により観測された。
図7のグラフを外挿することにより、開口部の大きさが600mm以上になると、開口部が開放状態のとき「インレットの流入空気流は略0」になり、開口部からの洗浄媒体の漏れは発生しないことが分かる。
ただし、この例は、最大吸引流量:2000L/min、最大差圧:約20Kpaの性能を備える吸引装置を使用した場合の例であり、グラフの数値は吸引装置の性能や乾式クリーニング装置の設計により変動することは言うまでもない。
図7の結果から、開口部開放時と閉塞時とのインレット流量比は、筐体の開口部の大きさに大きく依存するが、インレットの断面積にはそれほど影響されないことが分かる。
これは、筐体の開口部が大きくなることによって「開放時の筐体の内圧が、インレットの通気路断面積によらずに決定される」ためである。
開口部が大きくなると、その開放時に筐体内圧が大気圧に急速に近づき、大気圧に近づくにつれてインレットの入口部・出口部の気圧差が小さくなってインレットへの流入空気量が小さくなり、洗浄媒体を加速して飛翔させる力が弱まり「洗浄媒体が開口部から漏れ難く」なる。
即ち、「洗浄媒体吸着・飛翔効果」は、開口部開放時にインレット出口部(筐体の内部側)における筐体内圧が「急速に大気圧もしくは大気圧近傍となる開口部大きさ」と、開口部とインレット出口部との位置関係を備えている場合に有効に発現する。
図1に即して説明した実施の形態においては、開口部面積が350mm以上となる条件において「洗浄媒体飛翔・吸着効果」が観察され、インレットの入口部・出口部の気圧差は2Kpa以下となることが確認された。
このような関係を満たす設計であれば「洗浄媒体飛翔・吸着効果を発生させ易」く、図1の実施の形態における「内筒部材10D」を省略した、より簡易な形状でも同様の洗浄媒体吸着・飛翔効果が得られ、洗浄器具として使用することができる。
図8は、この場合の例を示す。
符号40で示す乾式クリーニング筐体は、内筒部材が無い点を除けば、図1における乾式クリーニング筐体と同様の構造である。
符号40Aは上部筐体、符号40Bは下部筐体、符号40Cは分離板を示す。符号40Fは通気路を構成するインレットを示す。符号20Aは吸引装置、符号20Bはダクトを示す。また、符号40Eは開口部、符号PCは洗浄片を示す。
クリーニング動作は、図1の実施の形態のものと同様である。
上には、乾式クリーニング筐体の形状として、回転体形状である円錐形状や円筒形状の場合を説明したが、乾式クリーニング筐体の形態は、これに限らず、楕円柱形状や多角柱形状でも、インレットによる通気路の向きにより旋回空気流を発生でき、このような形状の乾式クリーニング筐体も実施できる。
旋回空気流の流路は、滑らかでよどみがなく、流路の断面形状や断面積の変動が小さいほうが「エネルギ損失が少ない」点で好ましい。
図9には、乾式クリーニング筐体の実施の別形態を示す。
図9(a)は、乾式クリーニング筐体を開口部側から見た状態を示し、(c)は(a)のBB’断面を示し、(b)は(a)のAA’断面を示す。
筐体90の外部形状は、上部筐体90A・下部筐体90Bとも円錐台形状である。
この例では、通気路90Fが、上部筐体90Aの内部構造として上部筐体90Aの一部をなして形成されている。即ち、上部筐体90Aの内部は、図9(b)に断面形状で示すように、内部構造90e、90fを形成され、この内部構造90e、90fにより通気路90Fが形成されている。符号90Dは、円筒状の内筒部材を示す。
通気路90Fの断面形状は特に限定されないが、この例では「長方形形状」である。
通気路90Fの出口部分は、図1のインレット10Fの場合よりも開口部90Eに近接
するように設定されている。
開口部90Eは「600mm以上の十分に大きい開口面積」を有し、開放時には通気路90Fの出口部分の内部圧力を速やかに大気圧まで減衰させる。
この形態例では、通気路90Fを構成する内部構造90e、90fが、図9(b)に示すように、上部筐体90A内で「滑らかな面形状」を有するので、通気路90Fを形成する部分が、旋回空気流RFおよび飛翔する洗浄媒体の流れを阻害しない。
このため、洗浄媒体の滞留が有効に軽減され、洗浄媒体が高速で循環し易く、高いクリーニング能力を得ることができる。
また、旋回空気流RFの流通を妨げることなく、導気された空気流の出口部分を開口部90Eの近傍に配置する設計が可能である。
このように通気路90Fにより導気される「空気流の出口」を開口部90Eに近づけることにより、開口部開放時の空気流の出口近傍の静圧が大気圧に近くなり、通気路90Fから流れ込む気流が大きく減衰するため、開口部開放時に洗浄媒体が「より漏れ難い」という効果が得られる。
図9において、符号90Gは、開口部90Eの周囲に設けたゴム等のシール部材を示している。
図10は、乾式クリーニング装置の実施の別形態を示す。
図10(a)は「外観斜視図」である。
符号100Aで示す乾式クリーニング筐体は「円筒状」である。
図10(b)は、クリーニング筐体100Aの「円筒軸に直交する面での断面状態」を示し、(c)は(b)の「AA’断面」を示している。
この例では、クリーニング筐体100Aの筒軸方向の両端部は「漏斗状」であって漏斗形状の先端部は「吸気口」をなし、その何れもがダクト200B1、200B2により共通する吸引装置200Aに連結されている。
筐体内部には内筒部材200Dが設けられ、その軸方向両端部には、多孔手段である分離板200C1、200C2が配置されている。
また、筐体100Aには、通気路をなす複数のインレット200F1、200F2、・
・200Fi・・が、クリーニング筐体100Aの円筒状部分の円筒軸方向に「相互に近
接」して形成されている。これらインレット200Fi等の通気路は、円筒状の筐体部分
の側面に、円筒の母線に沿った通気路出口を備える。
多孔手段としての分離板200C1、200C2を筐体の両端側に備えることにより、
吸引装置による吸引が効率よく行われ、さらに、筐体の両端に洗浄媒体が分散されるために開口部200Eの開口面積をより大きくして、より広い面積のクリーニング部位をムラ無くクリーニングできる。
開口部200Eが縦長になると、分離板200C1、200C2から離れた開口部位置
で、洗浄媒体が漏れ易くなるので、図10(b)に示すように、一体化された複数のイン
レット200F1、200F2、・・200Fi・・の通気路の出口部分を開口部200
Eに近づけて、洗浄媒体吸着・飛翔効果の発現を確実にすると、より効果的である。
図10ではクリーニング筐体100Aの筒軸方向の両端部を形成する漏斗形状の先端部の吸気口にそれぞれ吸引ダクトを接続したが、円筒部材200Dを中空に形成し、両端の漏斗形状の内部を連通し、一方の漏斗形状の吸引口を閉塞することによって、一つの吸引ダクトで筐体の両端部から分離板200C1、200C2を介して筐体内を吸引することができるため、同様の効果を得ることができる。
さらに、図15に示したように多孔手段を筐体内部に円推状に引き込むことによって、漏斗形状の出っ張りをなくして干渉を防ぐ設計にしてもよい。
図11に乾式クリーニング装置の実施のさらに他の形態を示す。
先に説明した図4に示す実施の形態では「クリーニング作業者が乾式クリーニング筐体を手に持ってクリーニングを行う場合」を示したが、図11に示す実施の形態では、リニアモーターやロボットにより乾式クリーニング筐体を保持し、予めプログラムされた軌道に沿って移動させることによって「全自動の乾式クリーニング」を実施できる。
乾式クリーニング筐体10と、吸引手段20A、20Bの部分は、図1の実施の形態のものと同様のものであるので、これらの部分については図1におけると同一の符号を付する。
乾式クリーニング筐体10は、ばね部材110AによってXY直交ロボット110Bに固定され、ディップパレット100の凹凸に倣う変位が可能である。なお、押し付け方向にさらに可動軸を備えてもよい。
ばね部材110A、XY直交ロボット110Bと、直交ロボット110Bを制御するための制御装置(図示されず)は「位置・姿勢制御手段」を構成する一部である。
乾式クリーニング筐体10は、接触したままパレット表面を移動し易いように、図示されないコロ手段を開口部周辺に備えている。このコロ手段も位置・姿勢制御手段の一部をなす。
洗浄媒体を供給する手段114は、乾式クリーニング筐体10の移動範囲内に配置される。
クリーニング対象物であるディップパレット100は、図の如く「上下に立てた状態」で支持板116に固定するが、ディップパレット100の背後に洗浄媒体漏れ防止のためのゴムによるシート150を支持板116に吊り下げて配置する。
このようにディップパレット100を上下に立てて配置することにより、クリーニング空間を省スペースで構成できるが、勿論、ディップパレット100を横置きにしても機能的には何ら問題ない。
XY直交ロボット110Bおよび吸引装置20Aは、図示されない制御装置(コンピュータあるいはCPUユニット)により制御される。
制御装置にクリーニング開始の指令が送られると、制御装置は吸引装置20Aを稼動させ、同時に、XY直交ロボット110Bを駆動制御して、乾式クリーニング筐体10をクリーニング部位に移動させる。
ばね部材110Aにより、クリーニング対象物であるディップパレット100の表面に開口部10Eの部分を押し付けられた乾式クリーニング筐体10は、先述した如くして、ディップパレット100の表面をクリーニングしてフラックスFLを除去する。
このような状態でXY直交ロボット110Bを駆動制御し、クリーニング部位を走査して、ディップパレット100の「クリーニング領域の全領域」をクリーニングする。
ディップパレット100のマスク開口の端部や開口部においても、背後に配置したシート150により、乾式クリーニング筐体10の開口部10Eの気密性が維持されるため良好なクリーニングを実現できる。
XY直交ロボット110Bに対する制御プログラムによっては、ディップパレット開口部など「クリーニングする必要がない箇所」をよけて乾式クリーニング筐体10の移動を行うこともでき、このようにすることにより、クリーニング時間を短縮でき、洗浄媒体の消耗を低減させることができる。
なお、クリーニングプロセスの制御プログラムとして「乾式クリーニング筐体10を定期的に洗浄媒体供給手段114の位置に移動させ、洗浄媒体を適宜に補給させるプログラム」を備えることができる。
吸引装置20Aによる吸引力により、洗浄媒体供給手段114の位置に開口部を接近させることにより、洗浄媒体PCを筐体内に吸い込み補給することができる。
洗浄媒体供給手段114は洗浄媒体を適量保持し、補給量に応じた量の洗浄媒体を支持板補給する。補給は特に複雑な構造を備える必要はなく、シャッタ114Aを開き、洗浄媒体を溜めたストッカ114Bから「定量の洗浄媒体」をすべり落とせばよい。
洗浄媒体を常に補給することにより、安定したクリーニング能力を長時間維持できる。 この実施の形態では、平面的なディップパレット100をクリーニング対象物としてクリーニングを行うが、乾式クリーニング筐体を保持するロボットとして「例えば自由度6以上の垂直多関節ロボット」を用い、筐体の位置姿勢を制御して特定の移動軌跡で移動させることにより「立体的かつ複雑な形状」のクリーニング対象物の自動クリーニングを行う乾式クリーニング装置を実現できる。
図12に、通気路の開閉を制御できる機構を備えた乾式クリーニング装置の実施の形態を特徴部分のみ示す。
乾式クリーニング装置は、図1に即して説明した形態例を基本とするものであり、混同の虞が無いと思われるものについては図1におけると同一の符号を用いる。
図12に示す実施の形態では通気路を構成するインレット10F上に、通気路を開閉するインレット開閉手段10FOが設けられている。
インレット開閉手段10FOは、具体的には、図13に示すように、モータ10Mに接続された遮蔽板10Sであり、モータ10Mは図示されない制御手段によって開閉動作を制御され、開口部10Eが開放状態となったとき、遮蔽板10Sによってインレット10Fの通気路を塞ぎ、空気流の通気を制御する。
図14(b)に示すように、開口部10Eの開放時に、インレット10Fの通気路をインレット開閉手段10F0により閉じると、弱い旋回空気流も発生することがなくなり「より確実に洗浄媒体を分離板10Cに吸い付けて、洗浄媒体PCの漏れをなくす」ことができる。
また、開閉機構の他の効果として、図14(a)に示したように、クリーニング時にインレット10Fによる通気路を閉じると、上部筐体10A内が吸引され、下部筐体10Bとの圧力差が小さくなり、洗浄媒体PCを分離板10Cへ吸い付ける力が著しく軽減されるため、インレット10Fを新たに開いたときに洗浄媒体PCが飛翔し易くなる。
したがって、クリーニング中にインレット10Fを周期的に開閉すると、洗浄媒体PCの分離板10C上での滞留の発生を小さくでき、洗浄媒体の飛翔効率をあげて高いクリーニング能力を維持することができる効果が有る。
インレットの開閉は、上述したように、モータと制御手段による開閉を説明したが、これに限らず「リリーフ弁のような構造」を用い、筐体内圧に応じて、受動的に開閉しても良い、また、開閉機構をアタッチメント形式にして、本体と分離可能にしてもよい。
図16に、クリーニング筺体のさらに別の実施の形態を示す。本実施形態では、インレットの形状が断面積一定でなく、大気圧に開放された入口側が大きく広がっていることが特徴である。流体の特性として、インレットの大気に開放された空気取入口が切りっぱなしの形状の場合、入口付近で渦が発生し大きな圧力損失(以後、「圧損」という)が起こる。
インレットの圧損が大きすぎると、弱い吸引能力の吸引手段を接続した場合、インレットから気流を十分に吸いきれないために、旋回空気流が弱まり洗浄能力が低下する。これを防ぐために、大気を吸い込むインレットの入口に、テーパをつけることで気流を吸い込みやすくし、インレットの圧損を低下させる技術が一般的に知られている。
具体的には、図16に示したように、クリーニング筺体50の外周に向かってインレット50F断面積を広げる。このような設計であると、クリーニング筺体とインレットの間の空間を有効利用でき、全体の大きさには影響しない。
本実施形態では、図16(a)、図18(a)に示したように、インレットの入口側にテーパ形状を付けたが、図18(b)、(c)に示したように、フードもしくはフランジをインレットの入口に取り付けるだけでも、渦の発生を低減させ、インレットの圧損を低減させる効果がある。
また、インレットの圧損が低下したことに応じて、開口部50Eの面積をより大きくすることが望ましい。これにより、開口部の開放時には開口部から大量の気流が流れ込んでクリーニング筺体内を大気圧に近付け、一方インレットから流れ込む気流は低下するため、クリーニング筺体内に旋回空気流が生じない。このとき洗浄媒体は多孔手段に吸い付けられて飛翔しないため、クリーニング筐体内に一定量の洗浄媒体を保持することができる。
本実施形態では、中央に配置された内筒部材50Dを中空に形成して吸引手段と接続し、かつ内筒部材の側面を多孔手段50Cで構成している。内筒部材の側面は発生する旋回空気流に平行な面であるので、洗浄媒体が吸着されても旋回空気流により再飛翔させることが容易である。よって、洗浄媒体吸着・飛翔効果はこのような多孔手段の配置であっても発現する。
このように多孔手段50Cの面積を大きく取る設計により、多孔手段による圧力損失も低減することができ、全体的に圧損が低く吸引手段に負荷をかけない構成を実現できる。
また、本実施形態では、クリーニング筺体の開口部にアタッチメントを装着してクリーニング対象物の表面形状に対する局所的フィッティング性、追従性を高める構成を採っている。
図16、図17に示すように、クリーニング筺体の開口部50Eには、図中水平方向に突出する嵌め合い手段としての縁部60が設けられている。この縁部60に係合してアタッチメント62Aが装着されている。アタッチメント62Aは、図19に示すように、縁部60にスライドインさせる断面コ字形の溝64を備えている。凹凸の嵌合構造は相対的なものであり、開口部側に凹部を形成する逆態様でもよい。
アタッチメント62Aは、開口部50Eと平行な方向から凹凸をあわせて差し込むことにより、筐体の開口部とアタッチメント底面(図中上端側)開口部の位置を合わせて固定することができる。嵌め合い部分は、アタッチメントを固定するために、テーパが付いているとより望ましい。本実施形態では溝と縁の嵌め合いによる接続手段を用いたが、他にフック機構や粘着剤、磁石、マジックテープ(登録商標)などの接合手段を用いてアタッチメントを固定しても良い。
図20に各種アタッチメントの断面図を模式的に示す。図中右側は図19におけるA−A’線の断面図、左側はB−B’線での断面図である。
図19及び図20(a)は、クリーニング対象物の表面の他の部分との干渉(接触面積)を少なくした「低干渉アタッチメント」を示している。
低干渉アタッチメント62Aは、テーパの付いた中空の台形形状を有し、底面の形状は開口部に一致する。また、クリーニング筐体に取り付けたときに台形の先端部分はインレットの方向の延長線上に位置するように設計されている。
アタッチメントの先端がクリーニング対象物との接触により閉塞されると、インレットからの流入気流でクリーニング筺体内に旋回空気流が発生し、洗浄媒体が飛翔する。インレットから流入した気流で加速された洗浄媒体は、慣性力により直線に飛翔し、低干渉アタッチメント62Aの開口面積が絞られた先端を介してクリーニング対象物に衝突して異物を除去したあと、反射してクリーニング筐体内に戻り循環する。低干渉アタッチメント62Aをクリーニング筺体に取り付けることにより、より狭い領域に、クリーニング対象物と干渉することなくクリーニング筺体を接触させることができる。
クリーニング対象物が平面でない場合は、その形状に密着できるような形状の異形状対応アタッチメントを用いると良い。図20(b)には異形状対応アタッチメントの例として、角筒の側面に半円の切込み66を入れたアタッチメント62Bを示している。このようなアタッチメントをクリーニング筐体の開口部に結合することで、円柱形状のクリーニング対象物の側面にクリーニング筐体を密着させて、筐体内を負圧にして旋回空気流を発生させ、洗浄媒体を飛翔させて、円柱形状の側面に接触・衝突させてこれをクリーニングすることができるようになる。
本例では1例として円筒形状のクリーニング対象物に対応した例を示したが、クリーニング対象物の形状に合わせてアタッチメントを設計することにより、さまざまな形状のクリーニング対象物に対応することができる。
クリーニング対象物や除去対象によっては、洗浄片を衝突させる角度を調整することでクリーニング品質が上がる場合もある。
図20(c)、(d)は、クリーニング対象物に対する入射角度変更アタッチメント(1)、(2)を示している。
図20(c)に示す入射角度変更アタッチメント62Cをセットした場合には、図21(a)に示すように、該アタッチメントをセットしない場合のクリーニング対象物COに対するインレット50Fからの気流の角度θ1をθ2に変更でき、クリーニング対象物に対するインレット50Fからの気流の角度を、水平方向寄りに何ら調整操作を要することなくアタッチメントの先端面をクリーニング対象物に押し当てるだけで容易に変えることができる。
図20(d)に示す入射角度変更アタッチメント62Dをセットした場合には、図21(b)に示すように、該アタッチメントをセットしない場合のクリーニング対象物COに対するインレット50Fからの気流の角度θ1をθ3に変更でき、クリーニング対象物に対するインレット50Fからの気流の角度を、垂直方向寄りに何ら調整操作を要することなくアタッチメントの先端面をクリーニング対象物に押し当てるだけで容易に変えることができる。
洗浄媒体はインレットから流入する気流の方向に飛翔するので、クリーニング対象物に対するインレットから流入する気流の角度を、所望の角度を有するアタッチメントに交換して変えることにより、クリーニング対象物に対する洗浄媒体の衝突角度を変えることができる。
入射角度変更アタッチメント62Cを使用すると、洗浄媒体が浅い角度でクリーニング対象物に衝突するため、クリーニング対象物に直交する方向の衝撃が弱まり、さらに洗浄媒体のエッジによる接触よりも面による接触が多くなるため、クリーニング対象物にダメージを与えず異物を除去することができる。
入射角度変更アタッチメント62Dを使用すると、逆にクリーニング対象物に直交する方向の衝撃が強まるため、硬い膜状の汚れも除去することが出来るようになる。このように、汚れとクリーニング対象物の特性に応じてアタッチメントを使い分けることにより、幅広い洗浄に応用が可能になる。
本実施形態ではアタッチメントを用いてクリーニング対象物に対する洗浄媒体の入射角を変えるようにしたが、インレットとクリーニング筺体の接合部に可動部を設け、インレット自体の角度を変えても同様の効果が得られる。
アタッチメント62の形状によっては、開口部からの吸引気流によりクリーニング筺体内に旋回空気流を発生させる場合がある。特に、洗浄時の旋回空気流と逆方向に回転する旋回空気流が生じた場合、インレットの通気路出口に向かって洗浄片が飛翔するため、インレットを逆流して洗浄片が筺体外部に漏れ出る可能性がある。
これを防ぐために、インレットの通気路内のどこかに、たとえば目の粗い金属メッシュのような、空気抵抗の少ない漏れ防止部材(メッシュカバー)を配置すると、洗浄片の逆流が防止できるため、より使いやすくなる。
本実施形態では、図16に示すように、インレット50Fの入口にメッシュカバー70を配置している。
クリーニング対象物に接する各種アタッチメントの先端部分には、柔軟部材を配置すると、クリーニング対象物と隙間なく密着することができる。クリーニング対象物とアタッチメントが密着できると、洗浄片が漏れ難くなる効果が得られる。また、筐体内部の負圧が高まるため、インレットからより高速の空気流が流れ込み、強い旋回空気流が得られるため洗浄能力が向上する。
アタッチメント62自体を、ウレタンゴム等の丈夫で柔軟性のある素材で形成してもよい。
図20(e)は、洗浄終了後や非使用時に用いられる蓋アタッチメント62Eを示している。蓋アタッチメント62Eは穴のない板状の部材である。吸引手段が稼動している間は、洗浄媒体は多孔手段に吸着されているため、開口部を下に向けてもクリーニング筺体の外に漏れることはないが、吸引手段が停止すると、洗浄媒体は吸着から開放され、開口部から落下してしまう虞がある。
そのため、吸引手段を停止したら、蓋アタッチメント62Eを開口部にセットして蓋をすることで、洗浄媒体の漏れを防ぐことができる。本実施形態では蓋アタッチメントをクリーニング筺体と別パーツとしたが、これをクリーニング筺体の開口部近傍に一体的に配置し、容易に開口部に移動させて閉塞できる構成にしても良い。また、吸引手段の停止を検知して、自動的に開口部を塞ぐ機構を備えてもよい。吸引手段の停止は、下部筐体内の静圧を計測すれば容易に検知することができる。
図3に即して実施の形態を説明した乾式クリーニング装置を、以下のように実作した。
円筒状の上部筐体30Aの部分は、円筒高さ:50mm、直径:150mmとした。また内筒部材30Dは直径:80mmとした。
開口部30Eは、上部筐体の円筒軸方向に45mm、円筒周面方向に60mmの矩形状とした。またインレット30Fは内寸:45mm×5mmの矩形断面を有するものを用いた。
乾式クリーニング筐体30のこれら全体をプラスチック樹脂で形成し、下部筐体30Bの部分を「吸気手段」としての家庭用電気掃除機のダクトに接続した。
洗浄媒体の材質特性や大きさは洗浄対象物の汚れの種類に応じて適宜選択されるが、フラックス等の膜状の付着物を除去するのに適した洗浄媒体について説明する。
図22は、薄片状の洗浄媒体PCの衝突時のパターンを示す模式図である。
塑性変形し易い洗浄媒体の場合、図22(c)で示されるように洗浄媒体の端部の変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
延性破壊する洗浄媒体の場合も、図22(d)で示されるように洗浄媒体の破面端部の塑性変形が大きくなり、接触面積の増大や衝撃力の緩和が起こる。この結果、衝突時の端部における接触力が分散されてしまい、洗浄能力が低下してしまう。そのため、膜状の付着物に対する食い込み量が低下し、洗浄装置の洗浄効率が低下してしまう。
これに対し、脆性破壊する洗浄媒体では洗浄媒体の破面端部の塑性変形が小さいため、端部における接触力の分散が生じにくい。
また、洗浄媒体の端部に膜状の付着物が付着しても脆性破壊を繰り返すことにより、新たな端部を形成し続けることが可能であり、洗浄効率が低下することはない。
脆性材料としては、例えばガラス片、セラミック片、アクリル樹脂、ポリスチレン、又はポリ乳酸等の樹脂フィルム片等が挙げられる。
洗浄媒体に折り曲げられる力が繰り返し加わることで洗浄媒体が破壊される。本発明では、洗浄媒体が脆性であるか否かを耐折性によって定義している。
耐折性52以下の脆性材料である洗浄媒体を用いると、洗浄媒体が繰り返し衝突することによって発生するバリが洗浄媒体に残留せずに折れて分離されて排出される(図22(b)参照)。バリが残留しないため洗浄媒体のエッジが維持される。
さらに、洗浄媒体が耐折性10未満の脆性材料である場合、洗浄媒体はバリが発生する前に中央から折れて新しいエッジを生じさせる(図22(a)参照)。
これにより、洗浄媒体のエッジが維持される効果がある。洗浄媒体のエッジが維持されることにより洗浄媒体の衝突時の食い込み量が低下しないため、洗浄媒体の固着膜除去能力が径時劣化しないという効果がある。
ここでの洗浄媒体の薄片状とは0.02mm以上0.2mm以下の厚みを備え、面積100mm以下のものと定義する。
鉛筆硬度とはJIS K−5600−5−4に準拠した手法で計測したものであって、評価した薄片状の洗浄媒体に傷、へこみが付かない最も硬い鉛筆の芯番のことを意味する。
また、耐折性とは、JIS P8115に準拠して計測したものであり、薄片状の洗浄媒体をR=0.38mmで135度に曲げる動作を繰り返し、破損にいたるまでの往復回数を意味する。
ここではフラックスが付着した、ガラス繊維入りエポキシ樹脂製のパレットを洗浄対象物のサンプルとして使用した。パレットは、フローはんだ槽によるはんだ付け工程の際に、PCBの半田付けしない領域をマスクするために用いられている。このようなマスク治具は繰り返し使用されることによりフラックスが膜状に厚く堆積するため、定期的にフラックスを除去する必要がある。固着したフラックスの鉛筆硬度は2Bである。また膜厚は0.5〜1mmである。
洗浄装置は図3に示した乾式クリーニング筐体を備えた乾式クリーニング装置を用いた。クリーニング装置には、真空度20Kpaの吸引能力を備える吸引手段を使用し、フラックスを固着させたパレットを用意し、開口部面積45×60mmの領域を1サンプル単位として、3秒かけて洗浄した。洗浄媒体は各2gを使用した。使用した薄片状洗浄媒体と洗浄結果を表1に示した。
同表における判定記号は次の通りである。
×:ほとんど汚れが取れない。
△:一部洗浄残りがある。
○:ほぼきれいになっている。
◎:非常にきれいになっている。
−:洗浄媒体が消耗して、すべて洗浄槽内から排出されてしまう。
各洗浄媒体の物性として、耐折性および鉛筆硬度を表1に示す。
表1の初期洗浄能力の判定結果より、洗浄媒体の鉛筆硬度がフラックスの鉛筆硬度2B以下であればほとんどフラックス汚れが取れない。これは、衝突した際に、膜状のフラックス汚れに洗浄媒体が食い込めないためである。
洗浄媒体は、気流によって飛翔し洗浄対象に繰り返し衝突する。衝突によって洗浄媒体にはダメージが蓄積され、破損または変形などの劣化をおこす。
また、各洗浄媒体の機械的物性(耐折性及び鉛筆硬度)の分布を図23に示す。
表1及び図22に基づいて、洗浄媒体の劣化パターンを再度具体的に説明する。洗浄媒体の耐折性が10未満であるガラス、アクリル1(表中では丸数字で表示:以下同じ)、アクリル2、COC(ポリオレフィン)の場合、図22(a)に示したように衝突の衝撃によって、洗浄媒体の中心付近で破断する。このとき、破断面は新しいエッジとなりフラックスに食い込むため、固着除去能力は低下しない。
洗浄媒体の素材の耐折性が10以上52以下のTAC1、TAC2、PI2においては、図22(b)に示したように、中央付近では破断せず、衝突の衝撃でエッジにバリが発生し、そのバリだけが破断する。洗浄媒体の厚みが維持されるため、洗浄媒体がフラックスに食い込み、除去する効果が維持される。
洗浄媒体の素材の耐折性が65以上である場合、洗浄媒体は衝撃によって折れず、エッジ部分が塑性変形する。
図22(c)は、塑性変形してエッジが潰れて端部がだれる様子を図示しており、PI1がこのような挙動を示す。
図22(d)は、塑性変形によりエッジがカールする様子を図示しており、SUS、PS1、PS2、PE、PET、TPXがこのような挙動を示す。
図22(c)や図22(d)の例に示した洗浄媒体は、エッジが塑性変形することにより、エッジがだれ、衝突時の衝撃力が緩和されてしまうために、表1に示したように複数サンプル処理後に洗浄能力が大きく低下する。
これらの結果により、膜状に固着したフラックスの除去に対しては、まずフラックス以上の鉛筆硬度を備え、かつ耐折性が0以上52以下の脆性材料の洗浄媒体を用いると、良好な結果が長時間安定して得られることがわかる。
本実施例に挙げた数値の根拠として、表1、表2に、各洗浄媒体の耐折性数値の範囲を示す。
表1、表2に示したように耐折性の平均値や最小値が0である薄片状洗浄媒体(ここでは、ガラス、COC、アクリル2)は、折れに対して極めて脆い素材であり、表1に示したように非常に短時間で消耗してしまうため、ランニングコストが高くなる。
また、良好な洗浄特性を示したPI2の最大耐折性は52である。
したがって、洗浄媒体の耐折性が1以上52以下であると、長時間良好な洗浄能力を維持できる。
また、図22(a)のような脆性破壊を示す洗浄媒体のうちで、最大の耐折性数値はアクリル1製洗浄媒体における9であった。したがって0以上9以下の耐折性数値を示す洗浄媒体は、図22(a)に示した脆性破壊が発生し、10以上52以下の洗浄媒体は図22(b)に示した脆性破壊が発生すると分類できる。
また、耐折性最小値が0を示したアクリル2製の洗浄媒体は、きわめて脆く、表1に示したように長時間の使用に耐えない。一方耐折性最小値が1であるアクリル1製の洗浄媒体は、表1に示したように長時間洗浄能力を維持することができた。
Figure 0005440544
Figure 0005440544
表1に示した各洗浄媒体の耐折性平均値から、より確実にフラックス等の膜状の付着物を除去するには、膜状の付着物以上の鉛筆硬度を備え、且つ、2以上45以下の耐折特性を有している洗浄媒体を用いることが望ましい。
洗浄媒体としては、厚さ:0.1mmで、縦横:5mm(面積25mm)の洗浄片をアクリル樹脂で作製して用いた。
クリーニング対象物として、ディップパレットに見立てたアルミニウム平板の片面に、フラックスが0.5〜1mm程度の厚さの層に固着したものを用いた。固着したフラックス層は、その表面を爪で強く引っかいても、全く剥がれなかった。
上部筐体内に、前述の如くして2g程度の洗浄媒体を保持させた。この状態で、開口部を「手のひら」で閉ざして旋回空気流を発生させた。旋回空気流により洗浄片が飛翔し、手のひらに衝突した。このとき、手のひらに「かなりの痛み」を感じたが、手のひらを損なうことはなかった。
上記アルミ平板に固着したフラックスの層に、開口部を当接させて、上述のクリーニング動作を行ったところ、10秒程度の時間で、開口部面積:45mm×60mm(=2700mm)の部分から、固着フラックスを完全に除去することができた。また、開口部を開放しても、開口部から洗浄媒体が漏れ出すことはなかった。
この結果から、この発明の乾式クリーニング装置が良好なクリーニング機能を有することが理解される。
10 乾式クリーニング筐体
10A 上部筐体
10B 下部筐体
10C 多孔手段(分離板)
10E 開口部
10F 通気路を構成するインレット
特開昭 60−188123号公報 特開平 4− 83567号公報 特開2007− 29945号公報 特開2009−226394号公報

Claims (13)

  1. 洗浄媒体を空気流により飛翔させ、
    上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、
    上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、
    上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、
    外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、
    上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回空気流を生じさせる吸気口と、
    上記洗浄対象物から除去された除去物を通過させる多孔手段と、
    を有し
    上記通気路は、上記洗浄対象物の表面が上記開口部から離れたとき、上記通気路出口近傍の静圧が、大気圧もしくはその近傍となる位置に配置されたことを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  2. 洗浄媒体を空気流により飛翔させ、
    上記洗浄媒体を洗浄対象物に当てて洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング筐体において、
    上記洗浄媒体を飛翔させる内部空間と、
    上記洗浄対象物に当接して上記洗浄媒体を上記洗浄対象物に衝突させる開口部と、
    外部からの空気を上記内部空間へ通す通気路と、
    上記通気路を介して上記内部空間に導気された空気を吸引することにより上記内部空間に旋回空気流を生じさせる吸気口と、
    上記洗浄対象物から除去された除去物を通過させる多孔手段と、
    を有し、
    上記内部空間に、上記旋回空気流の旋回軸を囲繞する流路制限部材を有することを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  3. 請求項1または2記載の乾式クリーニング筐体において、
    上記通気路が、外部からの空気を上記開口部に向かって整流することを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  4. 請求項1〜3の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体において、
    上記多孔手段が、上記旋回空気流の旋回軸に直交する面に配置されることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  5. 請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体において、
    上記内部空間が回転体形状で、上記通気路を介して導気される空気流が、上記回転体形状の接線に近い角度で上記旋回空気流を形成するように、上記通気路が形成されていることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  6. 請求項1〜5の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体において、
    上記吸気口を介して内部が吸気されている状態において、上記開口部が開放しているとき導気される開放時導気流量と、上記開口部を閉ざしているとき導気される閉塞時導気流量の比:開放時導気流量/閉塞時導気流量が0.25以下であることを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  7. 請求項1〜6の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体において、
    内部の静圧に応じて上記通気路に流入する空気の流れを調整する開閉弁を有することを特徴とする乾式クリーニング筐体。
  8. 請求項1〜7の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体と、
    該乾式クリーニング筐体の内部に保持される薄片状の洗浄片の集合による上記洗浄媒体と、
    上記乾式クリーニング筐体の内部を、上記吸気口を介して吸気する吸気手段と、を有することを特徴とする乾式クリーニング装置
  9. 請求項記載の乾式クリーニング装置において、
    乾式クリーニング筐体が請求項7記載の乾式クリーニング筐体であり、
    上記開閉弁を筐体内部の静圧に応じて制御する制御手段を有することを特徴とする乾式クリーニング装置。
  10. 請求項8または9記載の乾式クリーニング装置において、
    上記吸気口を上記吸気手段に連結された状態において、乾式クリーニング筐体を手動で取り扱うことができることを特徴とする乾式クリーニング装置。
  11. 請求項または記載の乾式クリーニング装置において、
    上記洗浄対象物を保持する洗浄対象物保持手段と、
    乾式クリーニング筐体を保持して、上記洗浄対象物保持手段に保持された洗浄対象物に対する位置・姿勢を制御する位置・姿勢制御手段と、を有することを特徴とする乾式クリーニング装置。
  12. 請求項8〜11の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、
    薄片状の洗浄片として、可撓性を有する材質で、面積:Sが、
    1mm ≦S≦200mm
    の範囲にあり、厚さ:Dが、
    0.03mm≦D≦0.5mm
    のものを用いることを特徴とする乾式クリーニング装置。
  13. 薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を空気流により飛翔させ、洗浄対象物に当てて該洗浄対象物の洗浄を行う乾式クリーニング方法であって、
    請求項1〜7の任意の1に記載の乾式クリーニング筐体の内部に上記洗浄媒体を保持させ、
    上記乾式クリーニング筐体の上記開口部を、上記洗浄対象物に当接させて塞ぎ、上記吸気口を介して上記乾式クリーニング筐体の内部を吸気して、上記内部に負圧を発生させ、この負圧により、上記通気路を介して外部の空気を上記内部に導気して、乾式クリーニング筐体内部に旋回空気流を発生させ、この旋回空気流により上記洗浄媒体を飛翔させて、上記開口部を塞ぐ洗浄対象物の表面に当ててクリーニングを行うことを特徴とする乾式クリーニング方法。
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