JP5436111B2 - 潤滑油供給構造 - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車等の内燃機関に好適な変速機軸への潤滑油供給構造に関する。
自動二輪車の内燃機関には、クランクケースに変速機軸であるメイン軸を回転自在に支持し、このメイン軸の軸心に潤滑油路を設け、この潤滑油路から軸の放射方向に油路を形成することによって、メイン軸に設けた歯車の内周部やメイン軸を支持する軸受に潤滑油を供給する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−77650号公報
しかし、上記特許文献1の潤滑油供給構造では、メイン軸の軸端部を支持する軸受の両側が広く開放しており、軸受に必要以上の潤滑油が流れ込んでしまい、メイン軸内の潤滑油路に各部の潤滑に十分な潤滑油を流し込むために多量の潤滑油を供給する必要があった。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、変速機軸内の潤滑油路への多量の潤滑油の供給を回避しつつ、変速機軸周辺部品への油供給量を適量にすることが容易な潤滑油供給構造を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するため、本発明は、変速機軸(41)の軸端部を支持する軸受(41C)の外方に設けられるケース(81)に、前記軸端部の軸受外方に位置するとともに潤滑油供給源(50)に連なる軸収容凹部(81R)を設け、該軸収容凹部(81R)に前記軸受(41C)と前記変速機軸(41)の軸端から軸内に設けた潤滑油路(41H)を臨ませて配置し、前記軸収容凹部(81R)を介して前記潤滑油路(41H)及び前記軸受(41C)に潤滑油を供給する潤滑油供給構造において、前記軸収容凹部(81R)に配置されるオイルガイド部材(91)を備え、このオイルガイド部材(91)は、一端が開口する有底筒部(92)と、前記有底筒部(92)の開口端側で外周側に拡径する鍔部(93)と、前記有底筒部(92)の内外を連通するオイル穴(94)とを有し、前記鍔部(93)を、前記軸受(41C)のアウターレース(41CA)に当接させるとともに前記軸受(41C)のインナーレース(41CB)との間に隙間を空けて配置し、前記潤滑油供給源(50)からの潤滑油を、前記オイル穴(94)を通して前記有底筒部(92)内に入れ、前記有底筒部(92)内の潤滑油の一部を、前記隙間を通して前記軸受(41C)に供給するとともに、前記有底筒部(92)内の潤滑油の残りを、前記潤滑油路(41H)に供給することを特徴とする。
この構成によれば、軸収容凹部に配置されるオイルガイド部材を備え、このオイルガイド部材は、一端が開口する有底筒部と、前記有底筒部の開口端側で外周側に拡径する鍔部と、前記有底筒部の内外を連通するオイル穴とを有し、前記鍔部を前記軸受のアウターレースに当接させて前記軸収容凹部内に配置されるので、変速機軸内の潤滑油路への多量の潤滑油の供給を回避しつつ、変速機軸周辺部品への油供給量を適量にすることができる。
上記構成において、前記オイルガイド部材(91)の有底筒部(92)は、前記鍔部(93)の反対側の端面が前記ケース(81)と当接する側とされ、この端面に環状凹部(92C)が形成され、該環状凹部(92C)にOリング(95)を装着してもよい。この構成によれば、簡単な構造で部品の寸法誤差を吸収してオイルガイド部材を装着できる。
また、上記構成において、前記環状凹部(92C)に、前記Oリング(95)を保持するための複数の狭窄部(92D)を設けてもよい。この構成によれば、Oリングの脱落を防止して組み付け性が向上する。
上記構成において、前記オイルガイド部材(91)の周方向側面に廻り止め用壁部(96)が突出し、前記ケース(81)に設けられて前記潤滑油供給源(50)に連なる凹溝(81A)に、前記廻り止め用壁部(96)を嵌入させてもよい。この構成によれば、凹溝をオイルガイド部材の廻り止めと潤滑油路とに兼用でき、加工が少なくて済む。
また、上記構成において、前記変速機軸(41)の軸端部は、前記オイルガイド部材(91)の有底筒部(92)内に延長して設けられるようにしてもよい。この構成によれば、軸端部の延長部はオイルガイド部材内径部と適度なクリアランスとすることで、軸受部への給油を確保している。また、オイルガイド部材の鍔部外周はケースにインロー嵌合することにより、軸端部の延長部とオイルガイド部材内径部とのクリアランス量を適正化させている。
また、上記構成において、前記廻り止め用壁部(96)の突出部分(96A)の先端が、前記鍔部(93)側から見て、この鍔部(93)の外周縁から突出するように形成されるようにしてもよい。また、上記構成において、前記廻り止め用壁部(96)は、前記鍔部(93)と前記有底筒部(92)に渡って結合されるようにしてもよい。
本発明は、軸収容凹部に配置されるオイルガイド部材を備え、このオイルガイド部材は、一端が開口する有底筒部と、前記有底筒部の開口端側で外周側に拡径する鍔部と、前記有底筒部の内外を連通するオイル穴とを有し、前記鍔部を前記軸受のアウターレースに当接させて前記軸収容凹部内に配置されるので、変速機軸内の潤滑油路への多量の潤滑油の供給を回避しつつ、変速機軸周辺部品への油供給量を適量にすることができる。
また、前記オイルガイド部材の有底筒部は、前記鍔部の反対側の端面が前記ケースと当接する側とされ、この端面に環状凹部が形成され、該環状凹部にOリングを装着するようにすれば、簡単な構造で部品の寸法誤差を吸収してオイルガイド部材を装着できる。
また、前記環状凹部に、前記Oリングを保持するための複数の狭窄部を設けるようにすれば、Oリングの脱落を防止して組み付け性が向上する。
また、前記オイルガイド部材の周方向側面に廻り止め用壁部が突出し、前記ケースに設けられて前記潤滑油供給源に連なる凹溝に、前記廻り止め用壁部を嵌入させるようにすれば、凹溝をオイルガイド部材の廻り止めと潤滑油路とに兼用でき、加工が少なくて済む。
また、前記変速機軸の軸端部は、前記オイルガイド部材の有底筒部内に延長して設けられるようにすれば、軸端部の延長部はオイルガイド部材内径部と適度なクリアランスとすることで、軸受部への給油を確保している。また、オイルガイド部材の鍔部外周はケースにインロー嵌合することにより、軸端部の延長部とオイルガイド部材内径部とのクリアランス量を適正化させている。
本発明の実施の形態に係る内燃機関が搭載される自動二輪車を示す側面図である。 内燃機関を示す断面図である。 図2におけるIII−III断面図である。 油圧シリンダを周辺構成とともに示す図である。 (A)はオイルガイド部品の平面図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は側面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る内燃機関が搭載される自動二輪車を示す側面図である。なお、以下の説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は車体に対してのものとする。
自動二輪車100の車体フレーム111は、車体前部に位置するヘッドパイプ112と、このヘッドパイプ112から車体中央まで後方に延びる左右一対のメインフレーム114と、メインフレーム114の後端部から下方に延びる左右一対のピボットプレート115と、メインフレーム114の後端部から車両後部まで延びるリヤフレーム(不図示)とを備えている。
ヘッドパイプ112には、フロントフォーク116が回動自在に取り付けられ、このフロントフォーク116の下端に前輪117が回転自在に支持されている。また、ヘッドパイプ112の上部には、操舵用ハンドル118が取り付けられている。
メインフレーム114の下方には、前後V型4気筒の内燃機関(エンジン、パワーユニットとも言う)1が配置されている。この内燃機関1は、クランク軸2を左右水平方向に指向させる横置き配置であって、OHC型の水冷式で、クランクケース3を備え、このクランクケース3から2気筒ずつ前後に傾いたフロントバンク(シリンダ)Bfと、リヤバンク(シリンダ)BrとがV型に構成され、互いのバンク角が90度よりも小さい狭角V型エンジンである。
フロントバンクBfの排気口には、左右一対の排気パイプ119の一端が接続され、排気口から下側に延びた後に、車体後方に向かって引き回され、リヤバンクBrの排気口から延びる左右一対の排気パイプ120に接続されて集合され、一本の排気管(不図示)を介して、内燃機関1の後方に設けられたマフラー(不図示)に連結されている。
内燃機関1の後方には、ピボット軸121が設けられており、このピボット軸121には、リヤフォーク122がピボット軸121を中心に上下方向に揺動自在に取り付けられている。リヤフォーク122の後端部には、後輪131が回転自在に支持されている。後輪131と内燃機関1とは、リヤフォーク122内に設けられたドライブシャフト123によって連結されており、内燃機関1からの回転動力がドライブシャフト123を介して後輪131へと伝達される。また、リヤフォーク122と車体フレーム111との間には、リヤフォーク122からの衝撃を吸収するリヤクッション124が掛け渡されている。
内燃機関1の後部には、車体を停めるためのスタンド125が設けられている。また、内燃機関1の左側面の下部には、サイドスタンド126が設けられている。
メインフレーム114の上部には、内燃機関1の上方を覆うようにして燃料タンク141が搭載されている。この燃料タンク141の後方には、シート142が位置し、該シート142は上記リヤフレームに支持されている。シート142の後方には、テールランプ143が配置され、テールランプ143の下方には、後輪131の上方を覆うリヤフェンダ144が配置されている。
また、自動二輪車100は、車体を覆う樹脂製の車体カバー150を有し、この車体カバー150は、車体フレーム111の前方から内燃機関1の前部までを連続的に覆うフロントカバー151と、シート142の下方を覆うリヤカバー152とを備えている。フロントカバー151の上部には、左右一対のミラー153が取り付けられている。また、フロントフォーク116には、前輪117の上方を覆うフロントフェンダ146が取り付けられている。
図2は、内燃機関1を示す断面図である。なお、図2では、図の上下を内燃機関1の上下、図の左側を内燃機関1の前側、図の右側を内燃機関1の後側として説明する。
フロントバンクBfとリヤバンクBrとの間には側面視でV字状に形成された空間であるVバンク空間Kが形成されている。
クランクケース3は上下割りで構成され、上クランクケース(上ケース部材)3Uと下クランクケース(下ケース部材)3Lとを有している。クランク軸2はクランクケース3U,3Lにより挟まれるようにして回転自在に軸支され、上クランクケース3Uには、それぞれ左右に2気筒が配列される前シリンダブロック3fと後シリンダブロック3rとが、側面視でV字をなすように斜め上方に延出されて一体に形成されている。
下クランクケース3Lの下部には、内燃機関1のオイル(潤滑油)が貯留されるオイルパン3Gが下方に膨出するように設けられている。内燃機関1内にオイルを循環させるオイルポンプ50は、下クランクケース3L内においてクランク軸2の下方に位置している。
前シリンダブロック3fには前シリンダヘッド4fが前方斜め上に重ねられて締結ボルト(不図示)により締結され、前シリンダヘッド4fの上を前シリンダヘッドカバー5fが覆っている。同様に、後シリンダブロック3rには後シリンダヘッド4rが後方斜め上に重ねられて締結ボルト(不図示)により締結され、後シリンダヘッド4rの上を後シリンダヘッドカバー5rが覆っている。
前シリンダブロック3f及び後シリンダブロック3rには、それぞれシリンダボア3aが形成され、シリンダボア3aにはシリンダボア3a内を往復運動するピストン6が配置されている。各ピストン6は、各ピストン6に共通な1本のクランク軸2に対し、各コンロッド7f,7rを介して連結されている。
また、各シリンダブロック3f,3rには、各シリンダブロック3f,3rを冷却する冷却水が流れるウォータージャケット8が、シリンダボア3aを囲うようにそれぞれ設けられている。
前シリンダヘッド4f及び後シリンダヘッド4rには、シリンダボア3aの上方に位置する燃焼室20、吸気ポート21及び排気ポート22が設けられている。各吸気ポート21には、各吸気ポート21に流れる混合気の量を調整するスロットルボディ23がそれぞれ接続されている。
また、各シリンダヘッド4f,4rには、各シリンダヘッド4f,4rを冷却する冷却水が流れるウォータージャケット9が、吸気ポート21及び排気ポート22を囲うようにそれぞれ設けられている。
また、各シリンダヘッド4f,4rには、一対の吸気バルブ11がバルブスプリング11aによって吸気ポート21を閉鎖する方向(弁閉方向)に付勢されて開閉可能に配置され、一対の排気バルブ12がバルブスプリング12aによって排気ポート22を閉鎖する方向に付勢されて開閉可能に配置されている。
これらの吸気バルブ11及び排気バルブ12は、各シリンダヘッド4f,4rごとに1本ずつ配設されたカムシャフト25で駆動されるユニカム方式の動弁装置10によって開閉駆動される。
動弁装置10は、吸気バルブ11の上方の各シリンダヘッド4f,4rに回転自在に軸支されるカムシャフト25と、カムシャフト25と平行な軸線を有して各シリンダヘッド4f,4rに固定されるロッカシャフト26と、ロッカシャフト26に揺動可能に軸支されるロッカアーム27とを有している。
カムシャフト25は、カムシャフト25の外周側に突出した吸気カム30及び排気カム31を有し、クランク軸2の回転に同期して回転させられる。吸気カム30及び排気カム31は、中心から外周までの距離(半径)が一定でないカムプロフィールを有し、吸気カム30及び排気カム31が回転した際の半径の変化によって、吸気バルブ11及び排気バルブ12を上下運動させる。
また、カムシャフト25と吸気バルブ11との間には、カムシャフト25の下方で各シリンダヘッド4f,4rに摺動可能に嵌合されるバルブリフタ13が設けられている。
ロッカシャフト26に軸支されたロッカアーム27の一端には排気カム31に転がり接触するローラ27aが設けられ、他端には排気バルブ12の上端に当接するタペットねじ27bが進退位置を調節可能として螺合されている。
そして、カムシャフト25と一体に吸気カム30及び排気カム31が回転されると、吸気カム30がバルブリフタ13を介して吸気バルブ11を押し下げ、排気カム31がロッカアーム27を介して排気バルブ12を押し下げ、吸気カム30及び排気カム31の回転の位相によって定まる所定のタイミングで吸気ポート21及び排気ポート22が開閉される。
図3は、図2におけるIII−III断面図である。この図3では、リヤバンクBrの断面を示しているが、フロントバンクBf内部はリヤバンクBr内部と同様に構成されているため、フロントバンクBfの説明は省略する。
図3に示すように、シリンダヘッド4rの各気筒には、シリンダボア3aの中心軸線であるシリンダ軸線C上に、プラグ差込孔15が形成されており、このプラグ差込孔15には点火プラグ16(右側の気筒の点火プラグは不図示)がその先端を燃焼室20内に臨ませて配置されている。
クランク軸2は、軸方向の両端部及び中間部に設けられたメタルベアリング2Aを介してクランクケース3内に回転自在に支持されている。
クランク軸2の一端側には、クランク軸2の回転を出力するカムシャフト駆動スプロケット17が設けられている。内燃機関1のカムシャフト駆動スプロケット17側には、各バンクBf,Br内で上下に延在するカムチェーン室35が設けられており、カムシャフト25と一体に回転する従動スプロケット36は、カムシャフト25の一端に固定されてカムチェーン室35内に位置している。従動スプロケット36とカムシャフト駆動スプロケット17とには、カムチェーン37が巻き回されており、カムシャフト25はカムチェーン37及び従動スプロケット36を介して、クランク軸2の回転の半分の回転速度で回転されるようになっている。
また、クランク軸2の他端側には、発電機としてのジェネレータ18が設けられている。
クランクケース3内には、クランク軸2とそれぞれ平行に配置されるメイン軸41、カウンタ軸42、及び、出力軸43が設けられている。クランク軸2を含むこれらの軸41,42,43は、クランク軸2の回転をメイン軸41、カウンタ軸42、及び、出力軸43の順に伝達する歯車伝達機構を構成している。
クランク軸2は、図2に示すように、上クランクケース3Uと下クランクケース3Lとの合わせ面3S上に配置されている。このクランク軸2の後方にメイン軸41が配置され、メイン軸41の後方にカウンタ軸42が配置されている。メイン軸41及びカウンタ軸42は、合わせ面3S上に配置されている。また、カウンタ軸42の前方かつ下方に出力軸43が配置されている。すなわち、メイン軸41及びカウンタ軸42の軸心O1,O2は合わせ面3S上に前後に位置し、出力軸43の軸心O3は、メイン軸41の軸心O1の後方であって、カウンタ軸42の軸心O2の前方かつ下方に位置している。
ここで、図3は、リヤバンクBr、クランク軸2、メイン軸41、カウンタ軸42、及び、出力軸43を各々直線で結ぶ断面で切断した断面図である。
クランク軸2のカムチェーン室35側の端には、メイン軸41を回転させるクランク側駆動歯車2Bが固定され、クランク側駆動歯車2Bはメイン軸41のメイン軸側被動歯車41Aと噛み合っている。メイン軸41は、両端に設けられた軸受41Cを介して支持されている。
メイン軸側被動歯車41Aは、メイン軸41上にメイン軸41と相対回転自在に設けられるとともに、クラッチ機構44に接続されており、このクラッチ機構44の作動によってクランク軸2とメイン軸41との間の動力の伝達が断続可能となっている。
また、メイン軸側被動歯車41Aには、オイルポンプ50(図2参照)を駆動するオイルポンプ駆動歯車41Bが設けられている。オイルポンプ駆動歯車41Bは、クラッチ機構44のオンオフとは無関係にメイン軸側被動歯車41Aと一体に回転し、図2に示すように、オイルポンプ50の駆動軸50Aに固定された被動歯車50Bに駆動チェーン45を介してクランク軸2の回転を伝達し、オイルポンプ50を駆動する。
図3に示すように、カウンタ軸42は両端に設けられた軸受42Cによって支持されている。カウンタ軸42とメイン軸41との間には、変速歯車群が跨って配置され、これらによって変速装置46が構成される。詳述すると、メイン軸41には、6速分の駆動歯車m1〜m6が設けられ、カウンタ軸42には6速分の被動歯車n1〜n6が設けられ、各駆動歯車m1〜m6及び被動歯車n1〜n6は、対応する変速段同士で互いに噛み合い、それぞれ各変速段に対応する変速歯車対(歯車の組み合わせ)を構成する。なお、各変速歯車対は、1速から6速の順に減速比が小さくなる(高速ギヤとなる)。最も変速比の大きい1速歯車対m1,n1はメイン軸側被動歯車41Aが支持されるメイン軸41の一端側に配置され、2速歯車対m2,n2はメイン軸41の他端側に配置されている。1速歯車対m1,n1と2速歯車対m2,n2との間には、一端側から順に、5速歯車対m5,n5、4速歯車対m4,n4、3速歯車対m3,n3、及び6速歯車対m6,n6が配置されている。
メイン軸41上の3速駆動歯車m3及び4速駆動歯車m4は、一体となってメイン軸41にスプライン結合されており、シフタとなって軸方向に移動して、隣接する5速駆動歯車m5又は6速駆動歯車m6に選択的に着脱可能に構成されている。カウンタ軸42上の5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6は、それぞれカウンタ軸42にスプライン結合されており、シフタとなって軸方向に移動して、それぞれ隣接する4速被動歯車n4、3速被動歯車n3に着脱可能に構成されている。
シフタとなるメイン軸41上の3速駆動歯車m3及び4速駆動歯車m4と、カウンタ軸42上の5速被動歯車n5及び6速被動歯車n6とを変速切換機構47(図2参照)によって移動して変速がなされる。
図2に示すように、変速切換機構47は、軸41〜43に平行なシフトドラム47Aを備えている。シフトドラム47Aは、このシフトドラム47Aの回転量を制御するラチェット機構47D(図3参照)を介してシフトスピンドル(シフトシャフトとも言う)47E(図3参照)に連結される。シフトスピンドル47Eの端部(車体左側端部)には、運転者が変速操作を行うチェンジペダル(不図示)が取り付けられ、チェンジペダルの変速操作に伴い回動し、ラチェット機構47Dを介してシフトドラム47Aを回動させる。
シフトドラム47Aは、メイン軸41及びカウンタ軸42の間、かつ、上方に配置されるとともに、その軸心O4が出力軸43の軸心O3より後方となるように配置されている。このシフトドラム47Aの前後には、フォーク軸47B,47Cがシフトドラム47Aに平行に配置されている。フォーク軸47Bは、シフトドラム47Aの前方に配置されるとともに、その軸心O5がシフトドラム47Aの軸心O4よりもやや下方になるように配置されている。フォーク軸47Cは、シフトドラム47Aの後方に配置されるとともに、その軸心O6がシフトドラム47Aの軸心O4と略同じ高さとなるように配置されている。
フォーク軸47Bにはメイン軸41のシフタに係合するシフトフォーク47B1が支持され、フォーク軸47Cにはカウンタ軸42のシフタに係合するシフトフォーク47C1が支持されている。変速歯車対は、変速切換機構47のシフトフォーク47B1,47C1を移動させることによって変更され、変更された変速歯車対を介して、メイン軸41の回転がカウンタ軸42に伝達される。図3に示すように、カウンタ軸42は、カウンタ軸42の回転を出力軸43に伝達する中間駆動歯車42Aを有している。
出力軸43は、カウンタ軸42の両端に設けられた軸受43Cによって支持され、中間駆動歯車42Aと噛み合う被動歯車43Aを有している。出力軸43には、被動歯車43Aに隣接してカム式トルクダンパ51が配置されている。カム式トルクダンパ51は、トルク変動が加わった場合にそれを緩和するものであり、出力軸43に軸方向に移動可能にスプライン結合された円筒部材52を備えている。円筒部材52の被動歯車43A側の端面には、被動歯車43Aに形成された凹カム43Bに噛み合う凸カム52Aが形成されている。出力軸43の略中央には、ばね受け部材53が固定され、円筒部材52とばね受け部材53との間にコイルばね54が設けられ、円筒部材52が被動歯車43Aに付勢されている。カム式トルクダンパ51は、円筒部材52、ばね受け部材53及びコイルばね54を備えて構成されている。
出力軸43の左端部には駆動傘歯車48が一体的に設けられ、この駆動傘歯車48は、車体の前後方向に延びるドライブシャフト49の前端に一体に設けられた被動傘歯車49Aに噛み合う。これによって、出力軸43の回転がドライブシャフト49に伝達される。
次に、図2を参照して、内燃機関1の内部レイアウトについて説明する。
この内燃機関1では、クランク軸2の後方にメイン軸41を配置し、メイン軸41の後方にカウンタ軸42を配置したため、クランク軸2、メイン軸41、及びカウンタ軸42は、この順で前後に配置されるので、クランクケース3の上下長を短く抑えることができる。この構成では、メイン軸41に固定されるメイン軸側被動歯車41Aの直径が大きくても、メイン軸がクランク軸及びカウンタ軸の上方に配置される場合に比べ、メイン軸側被動歯車41Aが上方に突出せず、クランクケース3が上方に張り出すのを抑制することが可能となる。したがって、リヤバンクBrとクランクケース3の上面3bとの間に補記類を配置することも可能となる。
さらに、メイン軸41及びカウンタ軸42は、上下クランクケース3U,3Lの合わせ面3S上に配置されるので、メイン軸41及びカウンタ軸42の軸受41C,42Cの構造が単純化し、メイン軸41及びカウンタ軸42の組み付けが容易になる。
出力軸43は、カウンタ軸42の前方に配置されるので、カウンタ軸42の後方に配置される場合に比べ、クランクケース3の前後長を短く抑えることができる。この出力軸43は、カウンタ軸42の下方に位置してメイン軸41及びカウンタ軸42とともに三角形の頂点に配置されており、メイン軸41及びカウンタ軸42間の空間を有効利用して配置されるので、出力軸43がカウンタ軸42の前方に配置されることによるクランクケース3の下方への張り出しを抑制できる。したがって、クランクケース3の前後長を短く抑えた上で、クランクケース3の上下長も短く抑えることができ、内燃機関1を小型化、軽量化できる。
このように、クランクケース3の前後長を短く抑えたことで、ホイールベースが短くなるので、自動二輪車100(図1参照)をコンパクトにすることができるとともに、自動二輪車100の旋回性能も向上する。
シフトドラム47Aは、メイン軸41及びカウンタ軸42の間、かつ、上方に配置されるので、カウンタ軸42の後方に配置される場合に比べ、クランクケース3の前後長を短く抑えることができる。このシフトドラム47Aは、メイン軸41及びカウンタ軸42とともに三角形の頂点に配置されており、メイン軸41及びカウンタ軸42の間の空間を有効利用して配置されるので、シフトドラム47Aがメイン軸41及びカウンタ軸42の上方に配置されることによるクランクケース3の上方への張り出しを抑制でき、クランクケース3の上下長を短く抑えることができる。したがって、リヤバンクBrとクランクケース3の上面3bとの間に補記類を配置することも可能となる。また、シフトドラム47Aと、メイン軸41及びカウンタ軸42との距離を短くできるので、フォーク軸47B,47Cに支持されるシフトフォーク47B1,47C1を短くでき、内燃機関1の小型化、軽量化を図ることができる。
シフトドラム47Aは、その軸心O4が出力軸43の軸心O3より後方となるように配置されているので、シフトドラムの軸心と出力軸の軸心が上下に並んで配置される場合に比べ、クランクケース3の上下長を短く抑えることができる。したがって、リヤバンクBrとクランクケース3の上面3bとの間に補記類を配置することも可能となる。
これに加え、フォーク軸47Bは、メイン軸41及びシフトドラム47Aとともに三角形の頂点に配置されており、メイン軸41及びシフトドラム47Aの間の空間を有効利用して配置されるので、フォーク軸47Bがメイン軸41の上方に配置されることによるクランクケース3の上方への張り出しを抑制でき、クランクケース3の上下長を短く抑えることができる。したがって、リヤバンクBrとクランクケース3の上面3bとの間に補記類を配置することも可能となる。また、フォーク軸47Bと、メイン軸41及びシフトドラム47Aとの距離を短くできるので、フォーク軸47Bに支持されるシフトフォーク47B1を短くでき、内燃機関1の小型化、軽量化を図ることができる。
同様に、フォーク軸47Cは、カウンタ軸42及びシフトドラム47Aとともに三角形の頂点に配置されており、カウンタ軸42及びシフトドラム47Aの間の空間を有効利用して配置されるので、フォーク軸47Cがカウンタ軸42の上方に配置されることによるクランクケース3の上方への張り出しを抑制でき、クランクケース3の上下長を短く抑えることができる。したがって、リヤバンクBrとクランクケース3の上面3bとの間に補記類を配置することも可能となる。また、フォーク軸47Cと、カウンタ軸42及びシフトドラム47Aとの距離を短くできるので、フォーク軸47Cに支持されるシフトフォーク47C1を短くでき、内燃機関1の小型化、軽量化を図ることができる。
ところで、この自動二輪車100は、クラッチ機構44を油圧で作動させるクラッチ油圧機構61を備えている。このクラッチ油圧機構61は、中空円筒状に形成されたメイン軸41を軸方向に移動自在に挿通されたプッシュロッド62と、プッシュロッド62を押動させる油圧シリンダ63と、油圧シリンダ63に油圧(クラッチ作動油圧)を供給する油圧供給源(不図示)とを備えている。油圧供給源としては、クラッチレバー近傍に取り付けられ、ライダー(運転者)によるクラッチレバーの手動操作で油圧を発生させるピストンとシリンダとを備えるマスターシリンダ、或いは、ライダーによるクラッチレバーの手動操作またはECU(電子制御装置)からの指示に応じて電動モーターにより油圧を発生させる電動式のアクチュエータが用いられる。
図4は、油圧シリンダ63を周辺構成とともに示す図である。
図4に示すように、油圧シリンダ63は、有底筒状のシリンダ本体71と、このシリンダ本体71に形成されたシリンダ穴71Aに移動自在に挿入されたピストン72と、このピストン72及びシリンダ本体71の底壁71Bのそれぞれの間に設けられてピストン72をプッシュロッド62側に押し出すスプリング73とを備える。この油圧シリンダ63は、シリンダ軸がメイン軸41と同軸上に揃うように、メイン軸41におけるクラッチ機構44の反対側(車体左側)にてクランクケース3にカップリングケース(油圧シリンダ連結用のケース)81を介して連結され、内燃機関1と一体的に連結されている。
図4中、符号71Rはシリンダ本体71内の油室であり、この油室71Rに、油圧供給源からのクラッチ作動油圧が供給される。ピストン72には、プッシュロッド62の一端が挿入されるロッド挿入穴72Aが形成され、ピストン72のメイン軸41側への移動によりプッシュロッド62がメイン軸41の貫通穴41H内をクラッチ機構44側に移動する。なお、スプリング73はクラッチ作動油圧が供給されていない状態でプッシュロッド62の遊びをなくすためのものである。
また、図4中、符号75,75はシリンダ穴71Aとピストン72との間をシールするためにピストン72に装着されたOリングであり、符号76、77は、プッシュロッド62とピストン72間及びプッシュロッド62とカップリングケース81間とに設けられるオイルシールであり、符号78はシリンダ本体71内のオイルに混入したエアを抜くエア抜き用プラグであり、符号79は、シリンダ本体71とカップリングケース81を連結するための連結ボルトである。
この油圧シリンダ63では、シリンダ本体71内の油室71Rにクラッチ作動油圧が供給されていない場合、プッシュロッド62は、クラッチ機構44のリフターピース44P(図3参照)を介してクラッチ機構44自体のばね付勢力(クラッチ接続側へのばね付勢力)により油圧シリンダ63側に押され、油圧シリンダ63側に移動した状態に保持されてクラッチ機構44が接続状態に保持される。
一方、油室71Rにクラッチ作動油圧が供給されると、クラッチ機構44のばね付勢力に抗してピストン72がクラッチ機構44側へ移動し、プッシュロッド62がクラッチ機構44側へと移動し、クラッチ機構44のリフターピース44Pを移動してクラッチ機構44を非接続状態に切り替える。これによって、クラッチ機構44が断続される。
油圧シリンダ63とクランクケース3とを連結するためのカップリングケース81は、当該カップリングケース81と、メイン軸41や軸受41Cとの間に軸収容凹部となる空間部81Rを形成する。
この空間部81Rは、メイン軸41の軸端部の軸受41C外方(左方)に位置するようにカップリングケース81を凹ませて形成され、メイン軸41の径方向に拡径して軸受41Cの外径とほぼ同径でメイン軸41の軸方向に延びる中空空間に形成されている。このため、カップリングケース81は、軸受41Cには接触せず、軸受41Cの外周側にてクランクケース3に当接している。
また、この空間部81Rには、内燃機関1の各部に潤滑油を供給する潤滑油供給源となるオイルポンプ50に油路(図4中、符号Y1、Y2、Y3で示す油路)を介して連なっており、エンジン駆動時はオイルポンプ50からの潤滑油(オイル)が空間部81R内に供給される。
この場合、油路Y3は、クランクケース3のカップリングケース81側の端面から軸受41Cの外周部に沿って延びる溝形状に形成され、この溝形状の油路Y3がカップリングケース81に設けられた後述する凹溝81A(図4参照)と連通し、油路Y3から空間部81Rへと潤滑油が供給されるようになっている。
図4に示すように、この空間部81Rには、つまり、カップリングケース81と軸受41Cとの間には、空間部81Rを介してメイン軸41の貫通穴41H及び軸受41Cへ潤滑油をガイドするオイルガイド部品(オイルガイド部材)91が設けられている。
ここで、メイン軸41には、貫通穴41Hから軸放射方向(径方向)に延びる変速歯車潤滑用の複数の油路41Jが軸方向に間隔を空けて設けられており、オイルガイド部品91を経由してメイン軸41の貫通穴41H内に潤滑油が供給されると、各油路41Jを介して、メイン軸41に設けられた駆動歯車m1〜m6の内周部に潤滑油が供給され、変速装置46が潤滑される。
なお、図3及び図4に示すように、カウンタ軸42にも、軸方向に貫通してオイルポンプ50からの潤滑油が供給される貫通穴42Hが設けられるとともに、この貫通穴42Hから軸放射方向(径方向)に延びる変速歯車潤滑用の複数の油路42Jが軸方向に間隔を空けて設けられており、潤滑油が貫通穴42H内に導入されると、各油路42Jを介してカウンタ軸42に設けられた被動歯車n1〜n6の内周部に潤滑油が供給されるようになっている。
次にオイルガイド部品91について説明する。
図5(A)はオイルガイド部品91の平面図、図5(B)は図5(A)のB−B断面図、図5(C)は側面図を示している。
オイルガイド部品91は、一端が開口する有底筒部92と、有底筒部92の開口端側で外周側に拡径する鍔部93とを一体に備える単一部品で形成され、有底筒部92には、有底筒部92の内外を連通するオイル穴94が設けられている。
図4に示すように、オイルガイド部品91は、有底筒部92の他端側に設けられる円板部92Aをカップリングケース81側、鍔部93を軸受41C側にした姿勢で空間部81R内に配置され、かつ、プッシュロッド62が貫通するように形成されている。
より具体的には、円板部92Aから鍔部93までの長さLAは、空間部81Rにおけるメイン軸41方向の長さと略同一(同一若しくは若干短い長さ)に形成され、鍔部93の外径LBは、空間部81Rの最大内径と略同一(同一若しくは若干小さい径)に形成されている。
有底筒部92の円板部92Aは、プッシュロッド62が貫通する貫通穴92Bを有するとともに、カップリングケース81側の面に、Oリング95が入る環状凹部92Cが形成される。この環状凹部92Cは、周方向に間隔を空けて複数の狭窄部(本実施形態では45度間隔で4個の狭窄部)92D(図5参照)が設けられており、これら狭窄部92DによりOリング95を挟んで保持し、Oリング95の組み付けを容易にするとともにオイルガイド部品91からの脱落を防止する。
この環状凹部92Cに装着されたOリング95は、円板部92A表面よりも外側(カップリングケース81側)に露出し、オイルガイド部品91が空間部81R内に配置された場合にカップリングケース81に当接して弾性変形し、この弾性変形による復元力によりオイルガイド部品91をカップリングケース81と反対側に付勢し、鍔部93を軸受41Cに押し当てる。つまり、Oリング95は、オイルガイド部品91を軸受41Cに押し当てる付勢部材として機能し、オイルガイド部品91やカップリングケース81の空間部81R等に寸法誤差があっても、オイルガイド部品91を確実に軸受41Cに押し当てることができる。
なお、プッシュロッド62とオイルガイド部品91との間にはオイルシール77が設けられているため、このOリング95はオイルシールとして機能する必要はない。
鍔部93は、転がり軸受である軸受41Cのアウターレース(外輪とも言う)41CAに当接し、軸受41Cのインナーレース(内輪とも言う)41CBには当接しない。つまり、鍔部93には、軸受41Cのインナーレース41CBに接触しないように鍔部93側に凹んだ内側段部93Aが形成され、この内側段部93Aの外周部分93Bが軸受41Cのアウターレース41CAに当接する。このため、内側段部93Aと軸受41Cのインナーレース41CBとの間に隙間が形成され、この隙間が軸受41Cへ潤滑油を供給する油路として機能する。
また、この鍔部93は、内燃機関1駆動時にメイン軸41と一体に回転する軸受41Cのインナーレース41CBに接触しないので、その回転力が鍔部93に伝わらず、オイルガイド部品91の回転防止や回転摩擦の発生が防止される。
また、オイルガイド部品91は、有底筒部92から外径方向に直線的に延びる平板状の廻り止め用壁部96を一体に備えている。この廻り止め用壁部96は、鍔部93よりも更に外周側に突出し、この突出部分96Aが、カップリングケース81に設けられた凹溝81A(図4参照)に嵌入する。
すなわち、カップリングケース81の凹溝81Aは、オイルガイド部品91の廻り止め用壁部96が係止する被係止部として機能し、この係止構造によりオイルガイド部品91の廻り止め及びカップリングケース81への位置決めが行われる。また、この廻り止め用壁部96は、有底筒部92から鍔部93の径方向に渡って延びるように鍔部93に一体に形成されており、鍔部93を含めてオイルガイド部品91を剛性を向上させる補強リブとしても機能する。
このオイルガイド部品91の有底筒部92には、円板部92Aと鍔部93との間で径方向に貫通する貫通穴であるオイル穴94が、周方向に間隔を空けて設けられている。このため、空間部81R内に潤滑油が導入されると、潤滑油は、図4に波線矢印で示すように、オイルガイド部品91の各オイル穴94を通って有底筒部92内に入り、その一部が、鍔部93と軸受41Cのインナーレース41CBとの間の隙間を通って軸受41Cに供給され、残りが、メイン軸41の貫通穴41Hを通って(より具体的には、貫通穴41Hとプッシュロッド62との間の隙間を通って)、貫通穴41Hから軸放射方向(径方向)に延びる各油路41Jに入り、各駆動歯車m1〜m6等を潤滑する。
このようにオイルガイド部品91に設けた小径のオイル穴94を介してメイン軸41の貫通穴41Hに潤滑油を供給するため、オイルガイド部品91を設けない場合に比して軸受41Cや各駆動歯車m1〜m6へ多量に潤滑油が流れないようにすることができ、しかも、オイル穴94の穴径、穴数等を調整することによって潤滑油の供給量を容易かつ精度よく調整することが可能である。本構成では、オイル穴94を、180度間隔で2カ所に設けることによって、オイルガイド部品91を通過する潤滑油量を適量にしている。
以上説明したように、本構成によれば、軸収容凹部である空間部81Rに配置されるオイルガイド部品91を備え、このオイルガイド部品91は、一端が開口する有底筒部92と、有底筒部92の開口端側で外周側に拡径する鍔部93と、有底筒部92の内外を連通するオイル穴94とを有し、鍔部93を軸受41Cのアウターレース41CAに当接させて空間部81R内に配置されるので、メイン軸(変速機軸)41内の潤滑油路への多量の潤滑油の供給を回避しつつ、メイン軸周辺部品(軸受41Cや変速歯車)への油供給量を適量にすることができる。しかも、このオイルガイド部品91は、カップリングケース81と軸受41Cとの間に挟み込むだけなので、組み付けが容易である。
また、オイルガイド部品91の有底筒部92は、鍔部93の反対側の端面がカップリングケース81と当接する側とされ、この端面に環状凹部92Cが形成され、該環状凹部92CにOリング95を装着したので、簡単な構造で部品の寸法誤差を吸収してオイルガイド部品91を適切に装着できる。
また、環状凹部92Cに、Oリング95を保持するための複数の狭窄部92Dを設けたので、Oリング95の脱落を防止して組み付け性が向上する。
また、オイルガイド部品91の周方向側面に廻り止め用壁部96が突出し、カップリングケース81に設けられて潤滑油供給源に連なる凹溝81Aに、廻り止め用壁部96を嵌入させたので、オイルガイド部品91を容易に位置決めでき、組み付け性が向上するとともに、この凹溝81Aをオイルガイド部品91の廻り止めと潤滑油路とに兼用でき、加工が少なくて済み、部品形状の複雑化も回避できる。
さらに、本構成では、図4に示すように、変速機軸であるメイン軸41の軸端部が、軸受41Cよりもカップリングケース81側に出っ張り、オイルガイド部品91の有底筒部92内に延長して設けられている。このため、軸端部の延長部はオイルガイド部品91内径部と適度なクリアランスとすることで、軸受部への給油を確保している。また、オイルガイド部品91の鍔部93外周はカップリングケース81にインロー嵌合することにより、軸端部の延長部とオイルガイド部品91内径部とのクリアランス量を適正化させている。
上記実施形態では、自動二輪車100が、手動で変速操作を行うマニュアルトランスミッション(Manual Transmission:以下、MTという)タイプの場合を説明した。
近年では、マニュアルトランスミッション(MT)の構造を有し、クラッチ操作と変速操作をコンピューター制御によるモーターや油圧で行う自動マニュアルトランスミッション(Automated Manual Transmission:以下、AMTという)タイプが注目されており、今後は、同じ車種であっても、MTタイプとAMTタイプとを製造して販売することが考えられる。しかし、AMTタイプでは、クラッチ操作と変速操作を自動で行う機構を追加する分、部品点数が増えるため、部品の配置スペースを確保することが重要となる。
上記したように自動二輪車100をMTタイプで構成する場合は、軸収容凹部である空間部81Rに、オイルガイド部品91を配置したが、AMTタイプで構成する場合は、オイルガイド部品91を配置せず、この空間部81Rを、AMTタイプで使用する部品の配置スペースに使用することが可能である。例えば、この空間部81Rを、ナット部品やスペーサ部品等の配置スペースに使用することができる。
この場合、空間部81Rに配置されたナット部品等により、軸受41Cやメイン軸41の貫通穴41H内に供給する潤滑油量をある程度、抑えることができる。これによって、この内燃機関1をMTタイプにする場合とAMTタイプにする場合とで、カップリングケース81や油圧シリンダ63等を共用することが可能となり、部品種類の低減及びコストダウンを図ることができる。
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、上記実施形態では、図1に示す自動二輪車に本発明を適用する場合について説明したが、これに限らず、他の自動二輪車などの鞍乗り型車両に本発明を適用してもよい。なお、鞍乗り型車両とは、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。
100 自動二輪車
111 車体フレーム
1 内燃機関
2 クランク軸
41 メイン軸(変速機軸)
41C 軸受
41CA アウターレース
41CB インナーレース
42 カウンタ軸
43 出力軸
44 クラッチ機構
61 クラッチ油圧機構
81 カップリングケース(ケース)
81R 空間部(軸収容凹部)
81A 凹溝
91 オイルガイド部品(オイルガイド部材)
92C 環状凹部
92 有底筒部
92D 狭窄部
93 鍔部
93A 内側段部
94 オイル穴
95 Oリング
96 廻り止め用壁部

Claims (7)

  1. 変速機軸(41)の軸端部を支持する軸受(41C)の外方に設けられるケース(81)に、前記軸端部の軸受外方に位置するとともに潤滑油供給源(50)に連なる軸収容凹部(81R)を設け、該軸収容凹部(81R)に前記軸受(41C)と前記変速機軸(41)の軸端から軸内に設けた潤滑油路(41H)を臨ませて配置し、前記軸収容凹部(81R)を介して前記潤滑油路(41H)及び前記軸受(41C)に潤滑油を供給する潤滑油供給構造において、
    前記軸収容凹部(81R)に配置されるオイルガイド部材(91)を備え、このオイルガイド部材(91)は、一端が開口する有底筒部(92)と、前記有底筒部(92)の開口端側で外周側に拡径する鍔部(93)と、前記有底筒部(92)の内外を連通するオイル穴(94)とを有し、前記鍔部(93)前記軸受(41C)のアウターレース(41CA)に当接させるとともに前記軸受(41C)のインナーレース(41CB)との間に隙間を空けて配置し、前記潤滑油供給源(50)からの潤滑油を、前記オイル穴(94)を通して前記有底筒部(92)内に入れ、前記有底筒部(92)内の潤滑油の一部を、前記隙間を通して前記軸受(41C)に供給するとともに、前記有底筒部(92)内の潤滑油の残りを、前記潤滑油路(41H)に供給することを特徴とする潤滑油供給構造。
  2. 前記オイルガイド部材(91)の有底筒部(92)は、前記鍔部(93)の反対側の端面が前記ケース(81)と当接する側とされ、この端面に環状凹部(92C)が形成され、該環状凹部(92C)にOリング(95)を装着したことを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給構造。
  3. 前記環状凹部(92C)に、前記Oリング(95)を保持するための複数の狭窄部(92D)を設けたことを特徴とする請求項2に記載の潤滑油供給構造。
  4. 前記オイルガイド部材(91)の周方向側面に廻り止め用壁部(96)が突出し、前記ケース(81)に設けられて前記潤滑油供給源(50)に連なる凹溝(81A)に、前記廻り止め用壁部(96)を嵌入させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の潤滑油供給構造。
  5. 前記変速機軸(41)の軸端部は、前記オイルガイド部材(91)の有底筒部(92)内に延長して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の潤滑油供給構造。
  6. 前記廻り止め用壁部(96)の突出部分(96A)の先端が、前記鍔部(93)側から見て、この鍔部(93)の外周縁から突出するように形成されることを特徴とする請求項4に記載の潤滑油供給構造。
  7. 前記廻り止め用壁部(96)は、前記鍔部(93)と前記有底筒部(92)に渡って結合されることを特徴とする請求項4又は6に記載の潤滑油供給構造。
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