JP5430355B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
複写機やレーザービームプリンターのような電子写真装置に使用される電子写真感光体は、主として、ドラム状電子写真感光体とベルト状電子写真感光体に区別される。ベルト状電子写真感光体は、フレキシビリティに優れているため、鋼体であるドラム状電子写真感光体に比べて省スペース設計が可能であり、帯電、露光、現像、転写、クリーニングのような周辺ユニットの配置についても自由に行うことができる。このような利点から、ベルト状電子写真感光体が広く使用されている。
しかしながら、ベルト状電子写真感光体は、複写機やプリンターに配設するとき、自由度向上およびマシンサイズ小型化のために駆動ローラーや案内ローラーの小径化が進んだことによって、屈曲された状態で使用される。したがって、ローラー間張力が常時働くこと、および、局所的な屈曲状態で繰り返し使用されることで、割れやクラックが発生しやすい。
このような問題点を改善するために、特許文献1のようにポリエステルフィルム上にAl蒸着層を設けてなるベルト状支持体に感光層を設けたものが提案されている。この方法では、ポリエステルフィルムとAl蒸着層との間で接着が十分でなく、繰り返し使用することで剥がれを生じる場合がある。
また、特許文献2、特許文献3のように、ポリエステルやポリイミドのような樹脂にカーボンブラックのような導電性フィラーを含有させてなる導電性樹脂製のベルト状支持体上に感光層を設けた構成が提案されている。この方法では、電子写真感光体として必要とされる導電領域とするために、カーボンブラックのような導電性フィラーを樹脂に多量に分散含有させなければならない。したがって、導電性フィラーの分散が均一になりにくく、ベルト状支持体の電気抵抗値にバラツキが生じ、画像スジ、白地部分の黒点、黒字部分の白点、白地部分の地カブリ等の画像欠陥が発生する。また、導電性フィラーを多量に含有させるため、樹脂の強度が低下してしまい、ベルトが割れやすくなってしまう。
またさらに、特許文献4、特許文献5においては、導電性支持体として金属製ベルトを用いることが提案されている。これらの金属製ベルトの多くはNi電鋳により得られる。すなわち、電鋳槽に一方の電極としてNiを用い、他方の電極として円柱状金型を用いる。そして、電極間に直流を通電して該円柱状金型の表面にNi厚肉メッキを施し、このメッキ層を金型から外し、Niベルトとして用いる方法である。この方法では、金型にNiが徐々に積層していくため、所望の厚さを得るためには長時間が必要である。一般的に、0.5〜1.0mmの有効厚みを得るためには約1日必要である。最近開発された高速Ni電鋳浴でさえも1日に3〜4mm程度である。このように電鋳ベルトは多大な電力と加工時間を要し、かなりコストが高い。また、加工時間を短縮した場合、Ni電鋳面に微小の凹凸や空孔が生じ、また、膜厚も均一にならず、電子写真感光体としたときに画像欠陥が生じる場合がある。
一方で、電子写真感光体は、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気特性、光学特性および画像欠陥がない高品位な画質が要求される。
画像欠陥の代表的なものとしては、画像スジ、白地部分の黒点、黒字部分の白点、白地部分の地カブリが挙げられる。さらには、デジタル複写機やレーザービームプリンターのレーザーダイオードを光源として露光を行う場合には、支持体の表面形状や電子写真感光
体の各層の膜厚ムラの要因によって発生する干渉縞が挙げられる。
前記の割れや画像欠陥を防止する方法として、感光層と支持体の間に層を設ける方法がある。支持体と感光層との間に設けられる層には、接着性、導電性、電気的バリア性の他に、支持体の欠陥を隠蔽させる隠蔽性の機能も要求される場合がある。それら特性を達成する手段として、支持体上に導電性材料を含有させた層を厚く設けた上に、電気的ブロッキング機能を有し導電性材料を含有しない樹脂層を薄く設ける積層タイプの構成が知られている。一般的に、上記の導電性材料を含有した層は導電層と呼ばれる。また、導電性材料を含有しない層は中間層、下引き層またはバリア層と呼ばれる。
特許文献6、特許文献7のように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にAl蒸着層を設け、その上に導電性粒子として酸化チタンを分散させた硬化性樹脂の層を形成した構成が提案されている。上記のように、剥がれの問題が生じやすいことに加え、硬化性樹脂を用いているため、割れやクラックも発生しやすい。さらに、画像欠陥の1つであるゴースト特性が低下してしまう。ゴーストとは、画像1枚の中で光が照射された部分が次回転目にハーフトーン画像において前記光照射部分のみの濃度が濃くなる現象で、ポジゴースト画像が現れる画像欠陥である。
また、熱硬化性樹脂を使用した場合、残留モノマーや不純物の影響で、露光、帯電を繰り返すことで残留電位、滞留電荷が増加し、ゴースト画像が現れる現象が起きると考えられている。また、ベルト状電子写真感光体とすることで、繰り返し使用時のゴースト画像の悪化が顕著となる。この原因は特定されていないが、おそらく、ベルト状支持体に常時かかる張力や部分的な屈曲により、何らかの化学的特性の変化が生じることで、電気特性に変化をきたすことが原因の1つであろうと考えられる。
特許第3870597号公報 特開平02−233765号公報 特開2007−033826号公報 特許第2913104号公報 特開平07−078639号公報 特許第3914685号公報 特開2006−243650号公報
本発明の課題は、ゴースト特性に優れた導電層を有するベルト状電子写真感光体、該ベルト状電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
本発明から、以下の電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置が提供される。
(1)ベルト状支持体上に導電層および感光層をこの順に設けてなるベルト状電子写真感光体において、前記導電層が、導電性粒子とポリオレフィン樹脂を含有すし、
該ポリオレフィン樹脂が下記(A1)、(A2)および(A3)を含み、
該導電層における該ポリオレフィン樹脂全体に占める(A1)の質量比が50質量%以上であり、
該導電層における該ポリオレフィン樹脂の(A1)、(A2)および(A3)の質量比が下記式を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
0.01≦[(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}]×100≦10
(A1):下記式(11)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355

(式(11)中、R 11 〜R 14 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基を示す。)(A2):下記式(21)または(22)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355

(式(21)および(22)中、R 21 〜R 24 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基または−Y 21 COOH(式中、Y 21 は、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される1価の基を示し、R 25 およびR 26 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示し、X 21 は、−Y 22 COOCOY 23 −(式中、Y 22 およびY 23 は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される2価の基を示す。ただし、R 21 〜R 24 のうち少なくとも1つは−Y 21 COOHで示される1価の基である。)
(A3):下記式(31)、(32)、(33)または(34)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355

(式(31)〜(34)中、R 31 〜R 35 は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、R 41 〜R 43 は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R 51 〜R 53 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
(2)(1)に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材上に転写した後の前記電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(3)(1)に記載の電子写真感光体、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を行って前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
本発明によれば、ゴースト特性に優れた導電層を有するベルト状電子写真感光体、該ベルト状電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。加えて、支持体上の膜剥がれの問題も生じにくく、割れやクラックも抑制できる導電層を有するベルト状電子写真感光体、プロセスカートリッジあるいは電子写真装置を提供することができる。
本発明のベルト状電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。 本発明における電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。 ゴースト画像評価の際に用いるゴースト評価用印字を説明するための図である。
本発明におけるベルト状電子写真感光体は、ベルト状支持体上に導電層および感光層をこの順に設けてなるものである。
感光層は、本発明の構成を満足するものであれば、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であってもよい。本発明においては、電子写真特性の観点から積層型感光層が好ましい。また、積層型感光層には、支持体側から電荷発生層および電荷輸送層をこの順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層および電荷発生層をこの順に積層した逆層型感光層がある。本発明においては、電子写真特性の観点から順層型感光層が好ましい。本発明における電子写真感光体の好ましい構成の概略が図2に示される。図2の電子写真感光体においては、支持体21上に、後述の導電層22、中間層(下引き層)23、電荷発生層24、電荷輸送層25がこの順に積層されている。
ベルト状支持体は継目が無い、シームレスであることが好ましい。また、本発明においてシームレスベルトとは、可撓性を有する円筒状部材のことを指し、ベルト形状のものであれば特に何ら限定されるものではない。
本発明におけるベルト状支持体の材質としては、任意のものを用いることができる。例えば、有機化合物、無機化合物、これらの複合体、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴムを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が用いられる。
より具体的には、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、液晶性ポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサ
ルホン、ポリフェニレンサルファイト、ポリビスアミドトリアゾール、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、脂肪族ポリケトン、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、メタクリル樹脂、その他各種共重合体などから選ばれる1種または2種を使用することができる。
また、これらの樹脂に任意の添加剤を添加してもよい。具体的には、タルク、マイカ、炭酸カルシウムのような充填剤、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンのような難燃剤、酸化防止剤(フェノール系、リン系、硫黄系)を挙げることができる。もちろん、添加剤は上記物質に限定されるものではない。特にベルト状支持体として、ポリエチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。
上述のとおり、本発明のベルト状電子写真感光体は、ベルト状支持体上に導電層および感光層をこの順に設けてなる電子写真感光体である。そして、導電層は導電性粒子とポリオレフィン樹脂を含有する。導電層に導電性粒子とポリオレフィン樹脂を用いることで、ゴースト特性が良好となる。また、導電層とベルト状支持体の密着性も良好となるため、支持体上の層の膜剥がれやクラックを抑制することができる。
本発明の導電層に用いられるポリオレフィン樹脂は、より具体的には、主鎖が炭素と水素からなる脂肪族炭化水素鎖で構成されているものが好ましく、加えて主鎖が炭素と水素からなる脂肪族炭化水素部位のポリオレフィン樹脂全体に占める質量比が50質量%以上であることが好ましい。このような樹脂を用いることにより、樹脂中の極性官能基が減少し、繰り返し使用時に樹脂の化学特性の変化が少なくなり、本発明の効果が向上する。上記主鎖が炭素と水素からなる脂肪族炭化水素鎖で構成されているものの具体例としては、後述する成分(A1)、(A2)、(A3)などが挙げられる。
さらに本発明の導電層に用いられるポリオレフィン樹脂は、下記(A1)および(A2)を含む共重合体であって、(A1)の質量比がポリオレフィン樹脂全体の50質量%以上であるポリオレフィン樹脂であることが好ましい。このような樹脂を用いることにより、導電層とベルト状支持体の密着性が向上し、繰り返し使用における物理的破壊が抑制され、微視的な電気特性の悪化が減少し、本発明の効果が一層向上する。
(A1):下記式(11)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355
上記式(11)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を示す。R11〜R14は、好ましくは、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
(A2):下記式(21)または(22)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355
上記式(21)および(22)中、R21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基または−Y21COOH(式中、Y21は、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される1価の基を示し、R25およびR26は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示し、X21は、−Y22COOCOY23−(式中、Y22およびY23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される2価の基を示す。ただし、R21〜R24のうち少なくとも1つは−Y21COOHで示される1価の基である。好ましくは、上記アルキル基、およびアルキレン基は炭素数が1〜7ある。最も好ましくは、R21〜R24のうち3つが水素原子であって1つが−COOHである場合、または、R25およびR26が水素原子であり、X21が−COOCO−である場合である。
また、本発明の導電層に用いられるポリオレフィン樹脂は、上記(A1)および(A2)ならびに下記(A3)を含み、(A1)、(A2)、(A3)の質量比が、下記式
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦10
70/30≦(A1)/(A3)≦99.5/0.5
を満たすポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。このような樹脂を用いることにより、密着性がさらに向上し、繰り返し使用における物理的破壊が抑制され、微視的な電気特性の悪化が減少し、本発明の効果がより一層向上する。
(A3):下記式(31)、(32)、(33)または(34)で示される繰り返し構造単位
Figure 0005430355
上記式(31)〜(34)中、R31〜R35は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、R41〜R43は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R51〜R53は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。好ましくは、上記アルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基である。より好ましい繰り返し単位は式(31)であり、R41がメチル基またはエチル基の場合である。
上記ポリオレフィン樹脂中の(A1)〜(A3)の質量比が、
0.01≦(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}×100≦5
であることが、本願の効果の向上の観点からより好ましい。また、上記ポリオレフィン樹脂中の(A1)および(A3)の質量比が、
91/9≦(A1)/(A3)≦95/5
であることが、本願の効果の向上の観点からより好ましい。
本発明の導電層に用いるポリオレフィン樹脂の(A2)を構成するためのモノマーとしては、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミドが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合が挙げられる。
本発明の導電層に用いるポリオレフィン樹脂の(A1)を構成するためのモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。これらの中でも、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンのような炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、特にエチレンが好ましい。
本発明の導電層に用いるポリオレフィン樹脂の(A3)を構成するためのモノマーとしては、式(31)の場合、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。また、式(32)の場合、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルのようなマレイン酸エステル類が挙げられる。また、式(33)の場合、例えば、(メタ)アクリル酸アミド類が挙げられる。また、式(34)の場合、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル類、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルのようなビニルエステル類およびビニルエステル類を塩基性化合物でケン化して得られるビニルアルコールが挙げられる。また、上記化合物の混合物を用いることもできる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。
本発明の導電層に用いられるポリオレフィン樹脂としては、エチレンと、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルと、無水マレイン酸とからなる三元共重合体が最も好ましい。ここで、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各成分の比率が規定の範囲にあればよい。また、本発明において、樹脂のカルボキシル基量を基準として量を規定する場合には、樹脂中の酸無水物基はすべて開環してカルボキシル基をなしていると仮定して算出する。
本発明のポリオレフィン樹脂は、本発明の効果を阻害しない程度に、上記繰り返し構造単位(A1)〜(A3)以外の成分が含まれていてもよい。上記繰り返し構造単位(A1)〜(A3)以外の成分を構成するためのモノマーとしては、例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化炭素が挙げられる。本発明のポリオレフィン樹脂中、上記(A1)〜(A3)の含有量は90〜100質量%であることが好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂は、水性媒体に分散もしくは溶解されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体からなる媒体であり、後述する水溶性の有機溶剤を含有していてもよい。なお、ここでいう主成分とは、含有量の最も大きい成分のことをいう。
本発明において、ポリオレフィン樹脂中の各成分の質量比の測定は、オルトジクロロベンゼン(d4)中、温度120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行って求めた。
本発明の導電層に用いられる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズのような導電性金属酸化物が好ましい。さらには、酸素欠損型の酸化スズで酸化チタンをコートしたタイプの金属酸化物が好ましい。
本発明の導電層を形成するための導電層用塗布液は、上記導電性粒子を溶剤とともに分散し、得られた分散液を前述のポリオレフィン樹脂水性分散体と混合し、攪拌することによって得られる。
導電層用塗布液中における導電性粒子の分散方法としては、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。その導電層用塗布液を支持体上に塗布し、これを乾燥させることによって導電層を形成することができる。
導電層用塗布液に用いられる溶剤としては、有機溶剤が挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコールや、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノンのようなケトンや、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテルや、酢酸メチル、酢酸エチルのようなエステルや、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素が挙げられる。
本発明においては、有機溶剤で分散された導電性粒子とポリオレフィン樹脂を混合させることによって導電層用塗布液を調製することができる。導電層用塗布液中の有機溶剤量は、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合があるため、安定性が低下しない程度に有機溶剤を含有させることが好ましい。つまり、塗布する導電層の膜厚を考慮した塗布液粘度と分散体の安定性を考慮し、導電性粒子を分散した分散液の固形分比、ポリオレフィン樹脂水性分散液の固形分比・有機溶剤混合比、両者の混合比を選択する。具体的には、導電層用塗布液中には、ポリオレフィン樹脂を質量比で2.5〜30%含有させることが好ましく、5〜25%含有させることがより好ましい。また、導電層用塗布液中には、導電性粒子を質量比で10〜80%含有させることが好ましく、25〜65%含有させることがより好ましい。
導電層には、上記ポリオレフィン樹脂に加えて、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂のような硬化性樹脂を、特性を満足する範囲で混合して用いることができる。
また、導電層の表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するために、導電層に、導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を添加することも可能である。表面粗し付与材としては、平均粒径1〜6μmの樹脂粒子が好ましい。例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂のような硬化性樹脂の粒子が挙げられる。これらの中でも、凝集しにくいシリコーン樹脂の粒子が好ましい。
また、導電層の表面性を高めるためにレベリング剤を添加してもよい。
支持体の表面欠陥を隠蔽するという観点から、導電層の膜厚は10〜35μmであることが好ましく、特には15〜30μmであることがより好ましい。なお、本発明において、導電層を含む電子写真感光体の各層の膜厚は、(株)フィッシャーインストルメンツ社製のFISHERSCOPE mmsで測定した。
本発明においては、導電層から感光層への電荷注入を阻止するために、電気的バリア性を有する中間層(下引き層)を導電層と感光層との間に設けることが好ましい。この場合、用いる中間層の体積抵抗率は1×10〜1×1013Ω・cmであることが好ましい。中間層の体積抵抗率が小さすぎると、電気的バリア性が乏しくなり、導電層からの電荷注入に起因するポチやカブリの発生が顕著になる傾向にある。一方、中間層の体積抵抗率が大きすぎると、画像形成時に電荷(キャリア)の流れが滞り、残留電位の上昇(電位安定性の欠如)が顕著になる傾向にある。中間層の膜厚は0.05〜10μmであることが好ましく、特には0.3〜5μmであることがより好ましい。
本発明の電子写真感光体の感光層は、先に述べたように単層型感光層であっても積層型感光層であってもよいが、電荷発生層と電荷輸送層とに分離した積層型感光層を例にとって以下説明する。
電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾのようなアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴのようなインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドのようなペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノン、ジベンズピレンキノンのような多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩およびチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンのような無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、キノシアニンのようなシアニン染料や、アントアントロン顔料や、ピラントロン顔料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛が挙げられる。これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂が挙げられる。特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物が挙げられる。
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
電荷輸送層は、分子分散状態の電荷輸送物質と結着樹脂とを含有し、成膜性を有する結着樹脂と電荷輸送物質を溶剤に溶解させて得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。
電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン系化合物、オキサゾール系化合物、トリアリルメタン系化合物およびチアゾール系化合物が挙げられる。
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜35μmであることがより好ましい。
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤を必要に応じて添加することもできる。さらに、フッ素原子含有樹脂やシリコーン含有樹脂を含有させてもよく、前記樹脂により構成される粒子を含有してもよい。加えて、金属酸化物粒子や無機粒子を含有してもよい。ただし、電荷輸送層を電子写真感光体の表面層として用いる場合は、その帯電列の位置に影響を及ぼさない範囲でそれらを含有させることができる。電荷輸送層内の電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、1:2〜2:1(質量比)の範囲であることが好ましい。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法のような公知の塗布方法を用いることができる。
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電する帯電手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材に転写した後の電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジである。
また、本発明の電子写真装置は、本発明の電子写真感光体、電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された電子写真感光体に対して露光を行って電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備える電子写真装置である。
以下、図1に沿って本発明のベルト状電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1はベルト状の電子写真感光体であり、2本以上の軸2によって張架され、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動されるベルト状電子写真感光体1の周面(表面)は、帯電手段(一次帯電手段)3により、負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光のような露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうしてベルト状電子写真感光体1の周面に対し、目的のフルカラー画像の第1の色成分像(例えば、イエロー色成分像)の画像情報に対応した静電潜像が順次形成されていく。
次いで、その静電潜像が第1の現像器(イエロー色現像器5Y)により第1色であるイエロートナーYにより現像される。このとき、第2〜第4の現像器(マゼンタ色現像器5M、シアン色現像器5Cおよびブラック色現像器5BK)の各現像器は作動オフになっていて、ベルト状電子写真感光体1には作用せず、第1色のイエロートナー像は第2〜第4の現像器による影響を受けない。
以下、同様に第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が順次ベルト状電子写真感光体1上に重ね合わせられる。
形成されたトナー像の転写材7への転写は転写手段6がベルト状電子写真感光体1に当接されるとともに、不図示の給紙部からベルト状電子写真感光体1と転写手段6との当接ニップに所定のタイミングで転写材7が給紙され、ベルト状電子写真感光体1の表面に担持形成されているトナー像が転写手段6により順次転写されていく。このとき転写手段にはバイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧が引加される。
トナー像の転写を受けた転写材7は、ベルト状電子写真感光体1の周面から分離されて定着手段8へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後のベルト状電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段3が帯電ローラーを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体1、帯電手段3およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、帯電手段3およびクリーニング手段9の少なくとも1つと電子写真感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールのような案内手段(不図示)を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されるものではない。なお、以下の「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
導電層に用いるポリオレフィン樹脂として、表1の組成を示すポリオレフィン樹脂を用意した。表1に記載されている樹脂の構成は、オルトジクロロベンゼン中、120℃にてH−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
なお、表1(a),(b)に示したポリオレフィン樹脂PO−1〜PO−16は、「新高分子実験学2 高分子の合成・反応(1)」の第1章〜第4章(共立出版株式会社)、特開2003−105145号公報、特開2003−147028号公報に記述された公知の方法を用いて合成した。
(a)
Figure 0005430355
(b)
Figure 0005430355
次に、ヒーター付の密閉できる耐圧1リットルガラス容器を備えた撹拌機を用いて、以下のように攪拌を行った。60.0部のポリオレフィン樹脂PO−1、30.0部のエタノール、3.9部のN,N−ジメチルエタノールアミンおよび206.1部の蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体を得た。
次に、酸素欠損型SnOを被覆したTiO粒子(粉体抵抗率100Ω・cm、SnOの被覆率(質量比率)は35%)80部、溶剤としてのメタノール15部、メトキシプロパノール15部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。この分散液における、酸素欠損型SnOを被覆したTiO粒子の平均粒径は0.30μmであった。
この分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2.0μm)3.9部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電性粒子分散液を調製した。
次に、上記ポリオレフィン樹脂水性分散体を145部、導電性粒子分散液110部を容器内で十分に攪拌し、導電層用塗布液を調製した。
ベルト状支持体としてのPET樹脂フィルム上に、上記導電性用塗布液を浸漬塗布し、これを10分間温度100℃で乾燥させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。ただし、後述の導電層の剥がれを確認することができるように、導電層の塗布端部が以下の中間層、電荷発生層、電荷輸送層の各端部より支持体の端部に近くなるよう塗布した。
なお、上記のように作製した導電層中のポリオレフィン共重合体の組成を分析した結果、ポリオレフィン樹脂水性分散体を作製する前のポリオレフィン樹脂の原材料の組成比率と同じであることが確認できた。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)4.5部および共重合ナイロン樹脂(アミランCM8000、東レ(株)製)1.5部を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解させることによって、中間層用塗布液を調製した。この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを10分間温度100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.8μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部を用意した。それに、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で1時間分散処理した。次に、酢酸エチル250部を分散液に加えて電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬塗布し、これを10分間温度100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式で示される構造を有するアミン化合物8部、
Figure 0005430355
下記式で示される構造を有するアミン化合物1部、
Figure 0005430355
および下記式で示される構造を有するポリアリレート樹脂(Mw:110,000)10部、
Figure 0005430355
を、最終重量比率でモノクロルベンゼン:ジメトキシメタンが7:3である混合溶媒に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送用塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、これを1時間温度120℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、電荷輸送層が表面層であるベルト状電子写真感光体を作製した。
作製した電子写真感光体を、温度15℃、湿度10%RHの環境下にて、ヒューレットパッカード製LaserJet4700に装着し、初期と5,000枚通紙耐久試験後の画像の評価を行った。
通紙時は各色の印字率1%の文字画像をA4サイズの普通紙でフルカラープリント操作を行い、前露光を点灯せずに5,000枚の画像出力を行った。そして、評価開始時と5,000枚終了時に、1枚目にベタ白画像を出力し、ゴースト画像(図3に示すように、画像の先頭部にベタで四角の画像を出した後、図3に示す1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像を作成)を連続5枚出力し、次に、ベタ画像を1枚出力した後に再度ゴースト画像を5枚出力した。
ゴースト画像の評価は、1ドット桂馬パターンのハーフトーン画像濃度とゴースト部の画像濃度との濃度差を、分光濃度計X−Rite504/508(X−Rite(株)製)で、1枚のゴースト画像で10点測定し、それら10点の平均をとり1枚の結果とした。前述の10枚のゴースト画像すべてを同様に測定し、それらの平均値を求めた。結果を表2に示す。この濃度差は、値が小さいほど、ゴースト特性が良好であることを意味する。
別途、導電層膜の評価を行った。導電層膜のクラックの有無は、支持体上に導電層を設けた後に光学顕微鏡(1,000倍)にて導電層の表面の観察を実施し、A、B、C、Dのランク分けを行った。Aはクラックが見られず非常に良好な膜であり、Bは膜の一部に点状の凹みが観察されるものの、問題無いレベルである。Cは、膜全面に点状の凹みがあり、Dは膜全面にクラックが発生している。
導電層の剥がれに関しては、上記5,000枚耐久終了後、導電層の端部の剥がれを確認した。Aは剥がれが生じておらず、Bは微小な剥がれが生じているものの、剥がれは画
像形成領域にかからない問題の無いレベルであり、Cは画像形成領域にかかるレベルの剥がれが生じている。
評価結果を表2に示す。
(実施例2〜23)
実施例1において、導電層に用いるポリオレフィン樹脂を、表1に示すポリオレフィン樹脂PO−1に変えてポリオレフィン樹脂PO−2〜PO−23を用いた以外は実施例1と同様にして、電子写真感光体を作製した。ゴースト評価および導電層膜の評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
なお、実施例1〜14を参考例1〜14とする。
(比較例1)
実施例1において、導電層用塗布液の調製の際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いずに、以下のように導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。
導電性粒子分散液110部、およびフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、メタノール溶液、樹脂固形分60%)30部を容器内で1時間攪拌した。このようにして得られた導電性用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、140℃で30分間乾燥することによって30μmの導電層を形成した。
(比較例2)
実施例1において、導電層用塗布液の調製の際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いずに、以下のように導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。
導電性粒子分散液110部にメラミン樹脂30部、メタノール30部を混合し、1時間攪拌した。このようにして得られた導電性用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間温度140℃で乾燥させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
(比較例3)
実施例1において、導電層用塗布液の調製の際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いずに、以下のように導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。
ベルト状支持体としてのPETフィルム上に50nmの厚さでアルミニウムを蒸着し、この蒸着層を導電層とした。
(比較例4)
実施例1において、PETフィルムをベルト状支持体として用いず、導電層用塗布液の調製の際に、ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いずに、以下のように支持体および導電層を形成した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作製し、評価を行った。
電鋳層より得られた厚み25μmのNi電鋳ベルトを実施例におけるベルト状支持体および導電層に相当するものとして用いた。
Figure 0005430355
1 ベルト状電子写真感光体
11 プロセスカートリッジ
21 支持体
22 導電層
23 中間層(下引き層)
24 電荷発生層
25 電荷輸送層

Claims (5)

  1. ベルト状支持体上に導電層および感光層をこの順に設けてなるベルト状電子写真感光体において、
    前記導電層が、導電性粒子とポリオレフィン樹脂を含有し、
    該ポリオレフィン樹脂が下記(A1)、(A2)および(A3)を含み、
    該導電層における該ポリオレフィン樹脂全体に占める(A1)の質量比が50質量%以上であり、
    該導電層における該ポリオレフィン樹脂の(A1)、(A2)および(A3)の質量比が下記式を満たすことを特徴とする電子写真感光体。
    0.01≦[(A2)/{(A1)+(A2)+(A3)}]×100≦10
    (A1):下記式(11)で示される繰り返し構造単位
    Figure 0005430355

    (式(11)中、R 11 〜R 14 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基を示す。)(A2):下記式(21)または(22)で示される繰り返し構造単位
    Figure 0005430355

    (式(21)および(22)中、R 21 〜R 24 は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フェニル基または−Y 21 COOH(式中、Y 21 は、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される1価の基を示し、R 25 およびR 26 は、それぞれ
    独立に、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示し、X 21 は、−Y 22 COOCOY 23 −(式中、Y 22 およびY 23 は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。)で示される2価の基を示す。ただし、R 21 〜R 24 のうち少なくとも1つは−Y 21 COOHで示される1価の基である。)
    (A3):下記式(31)、(32)、(33)または(34)で示される繰り返し構造単位
    Figure 0005430355

    (式(31)〜(34)中、R 31 〜R 35 は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を示し、R 41 〜R 43 は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を示し、R 51 〜R 53 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
  2. 前記導電層の膜厚が10〜35μmである請求項に記載の電子写真感光体。
  3. 前記ポリオレフィン樹脂が、エチレンとアクリル酸エステルと無水マレイン酸とからなる三元共重合体、または、エチレンとメタクリル酸エステルと無水マレイン酸とからなる三元共重合体である請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段およびトナー像を転写材上に転写した後の前記電子写真感光体上に残余するトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段とを共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、帯電された前記電子写真感光体に対して露光を行って前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像手段および前記電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。
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