JP3809398B2 - 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは特定の構造を有する樹脂を含有する中間層を有する電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体は、適用される電子写真プロセスに応じた感度、電気特性、光学特性および画像欠陥がない高品位な画質が要求され、また、低温低湿から高温高湿のいずれの環境においてもその特性が十分に発揮されるような環境安定性を有していることが要求される。
【0003】
画像欠陥の代表的なものとしては、画像スジ、白地部分の黒点、黒字部分の白点、白地部分の地カブリ、さらにはデジタル複写機やレーザービームプリンターなどのレーザーダイオードを光源として露光を行う場合には、支持体の表面形状や感光体の膜厚ムラなどの要因によって発生する干渉縞などが挙げられる。
【0004】
このような画像欠陥を防止する方法として、必要に応じて中間層が用いられる。
【0005】
中間層は、電子写真感光体に電圧を印加したとき、支持体から電荷注入が起こらないように、電気的ブロッキング機能が要求される。なぜなら、支持体から電荷注入があると、帯電能の低下、画像コントラストの低下や、反転現像方式の場合は白地に黒点や地カブリの原因になり画質を著しく低下させるからである。
【0006】
一方、中間層の電気的抵抗が高すぎると、感光層で発生した電荷が感光層内部に滞留し、結果として、残留電位の上昇や、繰り返し使用による電位変動の原因になる。したがって、中間層は、電気的ブロッキング機能を有しつつも、電気的抵抗値はある程度小さいことが必要であり、そして、ブロッキング機能や電気的抵抗特性が低温低湿から高温高湿のいずれの環境下においても大きく変化してはならない。
【0007】
ブロッキング機能および適度な範囲の電気的抵抗特性を有する中間層として、例えば、特開昭46−47344号公報や特開昭52−100240号公報には、有機高分子を有する中間層が開示されており、また、特開昭54−151843号公報や特開平1−118848号公報などには、金属酸化物や金属窒化物を有機高分子中に分散した中間層が開示されている。
【0008】
また、繰り返し使用時の電位安定性に関して、すでに、特許第3083049号公報に記載されているが、例えば、高速度(特にはプロセススピード200mm/s以上)の電子写真プロセスなどの過酷な条件での電位の安定化には、中間層の電子注入や電子輸送効果をさらに高める必要がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の材料を中間層として用いた電子写真感光体は、温湿度の変化に応じて中間層の電気抵抗の変化が大きく、低温低湿下から高温高湿下の全環境において安定して優れた電位特性を有し、優れた画像を形成し得る電子写真感光体を作製することが困難であった。
【0010】
また、電位の安定性向上のために電子注入や電子輸送効果をさらに高める手段としては、芳香環を増加してイミド構造の共役性を高める方法もあるが、溶解性や成膜性など実用性に乏しくなるのが実情である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、低温低湿下から高温高湿下に至る全環境において、安定して優れた電位特性を発揮するとともに、初期の優れた画像を継続して形成し得る電子写真感光体を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、支持体への密着性および成膜性に優れた中間層を介在させることによって、欠陥のない良好な画像を形成し、かつ、高感度の電子写真感光体を提供することにある。
【0013】
さらに、本発明の目的は、上記のような電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、支持体上に中間層および感光層をこの順に有する電子写真感光体において、該中間層が下記式(1)で示される繰り返し構造単位を有する樹脂を含有し、該樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、下記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が80%以上100%未満であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0015】
【外4】
【0016】
(式(1)中、A11は、2価の有機基を有し、R11、R12、R13、R14は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または、シアノ基を示す。)
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
上記式(1)中、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基(特には、無置換のメチル基やトリフルオロメチルなどのハロメチル基など)、エチル基、プロピル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0018】
また、上記式(1)中、2価の有機基を示すA11としては、好適なものとして、下記式(4)で示される構造を有する基、または、下記式(5)で示される構造を有する基が挙げられる。
−Ar41− (4)
(式(4)中、Ar41は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基、または、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を示す。)
−Ar51−X51−Ar52− (5)
(式(5)中、Ar51、Ar52は、同一または異なって、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基、または、置換もしくは無置換の芳香族複素環基を示し、X71は、酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、または、スルホニル基を示す。)
上記式(4)、(5)中、Ar41、Ar51、Ar52の芳香族炭化水素環基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられ、Ar41、Ar51、Ar52の芳香族複素環基としては、ピリジンジイル基、チオフェンジイル基などが挙げられる。
【0019】
また、X51のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基などが挙げられる。
【0020】
また、本発明の電子写真感光体が有する中間層は、上記式(1)で示される繰り返し構造単位と、下記式(2)で示される繰り返し構造単位および下記式(3)で示される繰り返し構造単位の少なくとも一方の繰り返し構造単位とを有する樹脂を含有し、該樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、上記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が80%以上100%未満であることが好ましい。
【0021】
【外5】
【0022】
【外6】
【0023】
(式(2)、(3)中、A21、A31は2価の有機基を示し、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または、シアノ基を示し、R25、R26、R35、R36は、同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基、または、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換基もしくは無置換のシリル基を示す。)
上記式(2)、(3)中、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。また、アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基などが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基などが挙げられる。
【0024】
また、上記各基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フッ素、塩素および臭素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基などのハロメチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどのアルキルアミノ基、アセチル、ベンゾイルなどのアシル基、シアノ基などが挙げられる。
【0025】
また、上記式(2)、(3)中、2価の有機基を示すA21、A31としては、好適なものとして、上記式(4)で示される構造を有する基、または、上記式(5)で示される構造を有する基が挙げられる。
【0026】
上記式(1)で示されるポリイミド構造は、電子輸送能を有しており、その構造を有する樹脂を中間層に含有させることによって、負帯電型積層感光体や負帯電型単層感光体の場合、感光層中で発生した電子を、該中間層を経由させて、支持体側に速やかに注入、移動させることができる。
【0027】
その結果として、感光層や中間層の界面またはバルク内における電子の滞留が減少し、繰り返し使用による電位の安定化や環境変動に対する電位の安定化に効果が認められる。
【0028】
また、溶解性や成膜性など実用性を損なわずに、電子注入や電子輸送効果をさらに高める手段としては、本発明の中間層に用いられる上記樹脂中のポリイミド構造の比率を高めることであり、上述の通り、該樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、上記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が80%を超える必要があり、特には85%以上であることが好ましい。
【0029】
一方、ポリイミド構造の比率を高くして、100%イミド化してしまうと、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる支持体や、導電性金属酸化物を樹脂中に分散した導電層などに対する密着性や膜の柔軟性が低下し、特に、中間層の膜厚が厚い場合、クラックなどの亀裂が発生する場合があり、また、感度や残留電位の悪化など、電子写真特性的にも良好な結果が得られないため、上述の通り、上記比率は100%未満でなければならず、特には95%以下であることが好ましい。
【0030】
これは、完全に100%イミド化すると、中間層が疎水的で硬い膜を形成することになるから、電荷発生層と電荷輸送層をこの順に有する感光層を有する積層感光体の場合は電荷発生層と中間層の界面、単層の感光層を有する単層感光体の場合は感光層と中間層の界面での2つの層の接触面積が小さくなり、電荷の注入が阻害される結果であると考えられる。
【0031】
これを回避する手段として、ポリアミド酸構造、ポリアミド酸エステル構造、ポリアミド酸アミド構造などの親水基を適度な範囲で残存させること必要なのである。
【0032】
また、本発明の中間層に用いられる上記樹脂の体積抵抗率は、低温低湿下から高温高湿下に至る全環境において、1×1012Ω・cm以上であることが好ましい。体積抵抗率が低下すると、電気的ブロッキング機能が低下して、支持体からの電荷注入が起こり、帯電能の低下や画質劣化を引き起こすことがある。
【0033】
本発明に用いられる樹脂の数平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、特には10,000〜50,000であることがより好ましい。
【0034】
以下に、本発明の中間層に用いられる上記樹脂が有する繰り返し構造単位の好ましい具体例を表1に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【表1】
【0036】
上記式(1)で示されるポリイミド構造と、上記式(2)または(3)のポリアミド酸構造またはポリアミド酸エステル構造の少なくとも一方の構造とを有する樹脂は、例えば、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの有機極性溶媒中での開環重付加反応により合成される。また、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物と、あらかじめN−シリル化したジアミンとの開環重付加反応によっても合成される。
【0037】
他の合成例として、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物をエステル化、塩素化した後、ジアミンとの有機極性溶媒中での重合反応により合成してもよく、特にエステル化をポリアミド酸とアルコールを適当な触媒の存在下で行うことにより合成できる。
【0038】
有機極性溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、クレゾール、クロロフェノールなどのフェノール系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0039】
また、樹脂の分子量を制御するために、必要に応じて水を5%以下含有させて反応を行うこともできる。
【0040】
反応温度は、20〜120℃であることが好ましく、特には20〜60℃であることが好ましい。
【0041】
また、ポリイミド構造は、上記ポリアミド酸構造またはポリアミド酸エステル構造をさらに加熱処理することにより増加する。処理温度は50〜250℃であることが好ましく、処理時間は5分〜2時間であることが好ましい。
【0042】
この処理温度や処理時間は、上記樹脂中の総ての繰り返し構造単位に対する上記式(1)の繰り返し構造単位(ポリイミド構造)の比率に大きな影響を与える。
【0043】
この比率は、例えば、樹脂粉末や樹脂塗布膜の赤外吸収スペクトルを測定し、ナフチレン基特有のものである1500cm−1付近における吸収の吸光度とイミド基特有のものである1670〜1720cm−1における吸収の吸光度の比を求めることによって、あるいは、サンプルの1H−NMRスペクトルを測定し、カルボン酸およびカルボン酸エステル基のプロトンの量を求めることによって得ることができる。
【0044】
本発明の電子写真感光体の中間層は、上記樹脂を用いた層の1層のみで構成され中間層であってもよく、上記樹脂を用いた層にそれ以外の樹脂を用いた層を加えた複数の層で構成された中間層であってもよい。中間層が複数の層で構成される場合、本発明の樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0045】
また、本発明の中間層は、必要に応じて他の樹脂、添加剤および導電性物質などを本発明の効果が得られる範囲の量で含有することができる。他の樹脂としては、ポリアミド、ポリエステルおよびフェノール樹脂などが挙げられ、添加剤としては、2,5,7−トリニトロフルオレノンおよびベンゾキノンなどの電子受容性有機化合物などが挙げられ、また、酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物および金属硫化物が挙げられる。
【0046】
いずれの場合も、本発明の電子写真感光体の中間層中の上記樹脂の含有量は、該中間層全質量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、特には30〜70質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明の中間層の厚さは、電子写真特性および支持体上の欠陥などを考慮して適宜設定され得るものであるが、0.1〜50μmであることが好ましく、特には0.5〜30μmであることがより好ましい。
【0048】
本発明の電子写真感光体の感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を同一の層に含有する、いわゆる単層型、または、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する、いわゆる積層型に大別される。積層型は、さらに、支持体、電荷発生層および電荷輸送層をこの順に有するタイプと、支持体、電荷輸送層および電荷発生層をこの順に有するタイプに分けられる。本発明においては、積層型、特に、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層したタイプであることが好ましい。
【0049】
電荷発生層は、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ系顔料、アントアントロン、ピレンキノンなどの多環キノン系顔料、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン系顔料、スクワリリウム系色素、ピリリウム、チアピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの電荷発生物質を適当な溶剤を用いて結着樹脂、例えば、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルピロリドンおよびセルロース系樹脂などの樹脂中に分散させた溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0050】
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、特には0.05〜2μmであることがより好ましい。
【0051】
電荷輸送層は、成膜性を有する樹脂の溶液に下記のような電荷輸送物質を溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成される。電荷輸送物質は電子輸送物質と正孔輸送物質に大別される。
【0052】
電子輸送物質としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタンなどの電子受容性物質やこれらを高分子化したものが挙げられる。
【0053】
正孔輸送物質としては、ピレン、アントラセンなどの多環芳香族化合物や、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、ピラゾリン、チアジアゾルおよびトリアゾールなどの複素環化合物や、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾールなどのヒドラゾン系化合物や、α−フェニル−4′−N,N−ジアミノスチルベン、5−[4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン]−5H−ジベンゾ[a,d]ジシクロヘプテンなどのスチリル系化合物や、ベンジジン系化合物、トリアリールアミン系化合物、トリフェニルアミン、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有するポリマー(例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびポリビニルアントラセンなど)が挙げられる。
【0054】
成膜性を有する樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステルおよびポリスチレンなどが挙げられる。
【0055】
電荷輸送層の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることがより好ましい。
【0056】
単層型の場合には、前述したような電荷発生物質と電荷輸送物質とを結着樹脂中に分散および溶解させた溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0057】
単層型の場合、感光層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることが好ましい。
【0058】
また、本発明ではポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンなどの有機光導電性ポリマー層、前述した電荷発生物質の蒸着層、セレン蒸着層、セレン−テルル蒸着層、アモルファスシリコン層なども感光層として用いることができる。
【0059】
本発明に用いられる支持体は、導電性を有していれば、いずれのものでもよく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、チタン、ニッケル、インジウム、金および白金などが挙げられる。
【0060】
また、こうした金属や合金を、真空蒸着法によって被膜形成したプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートおよびアクリル樹脂など)や、導電性粒子(例えばカーボンブラックおよび銀粒子など)を適当なバインダー樹脂と共に上記のようなプラスチック、金属または合金支持体上に被覆した支持体、あるいは、導電性粒子をプラスチックや紙に含浸した支持体などを用いることができる。
【0061】
支持体の形状としてはドラム状、シート状およびベルト状などが挙げられるが、適用される電子写真感光体に最も適した形状にすることが好ましい。
【0062】
さらに、本発明においては、感光層上に保護層として樹脂層や導電性粒子を含有する樹脂層を積層することもできる。
【0063】
上述した各種層の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、ビームコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法およびプレードコーティング法などが挙げられる。
【0064】
図1に本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0065】
図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は、回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0066】
形成された静電潜像は、次いで、現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取り出されて給紙された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。
【0067】
像転写を受けた転写材7は、感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0068】
像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、さらに、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理された後、繰り返し像形成に使用される。なお、図のように、一次帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0069】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などの構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば、一次帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1とともに一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール12などの案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0070】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動および液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
【0071】
本発明の電子写真用感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンターなどの電子写真装置一般に適応し得るが、更に電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリなどの装置にも幅広く適用し得るものである。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
なお、「部」は「質量部」を意味する。
【0074】
(実施例1)
アルミニウムシリンダー(外径30mm×長さ357.5mm)上に、例示化合物No.1で示される樹脂10部をN,N−ジメチルアセトアミド90部に溶解した液を浸漬塗布し、180℃で1時間加熱硬化することによって、膜厚が1μmの中間層を形成した。
【0075】
本実施例において、中間層膜のイミド化率は、赤外吸収スペクトルを測定し、ジフェニルエーテル特有のものである1500cm−1付近の吸収の吸光度と、イミド基特有のものである1240cm−1付近や1670〜1720cm−1における吸収の吸光度の比率から算出した。
【0076】
本実施例の中間層のイミド化率は93%であった。
【0077】
また、該中間層膜の体積抵抗率を微小電流測定装置を用いて、低温低湿環境(15℃、10%RH)および高温高湿環境(30℃、85%RH)で測定した。
【0078】
本実施例の中間層の体積抵抗率は、いずれの環境においても1×1012Ωcm以上であった。
【0079】
次に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料6部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業株式会社製)3部およびシクロヘキサノン40部からなる混合液をサンドミルで10時間分散した後テトラヒドロフラン60部を加えて電荷発生層用の分散液を調合し、前記中間層上に浸漬塗布し、さらに100℃で10分間乾燥して、膜厚0.1μmの電荷発生層を形成した。
【0080】
次に、下記式で示される構造を有するトリアリ−ルアミン化合物50部
【外7】
【0081】
およびビスフェノ−ルZ型ポリカ−ボネ−ト樹脂50部をモノクロルベンゼン400部に溶解した溶液を前記電荷発生層上に浸漬塗布し、110℃の雰囲気中で1時間加熱乾燥して膜厚17μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0082】
得られた電子写真感光体を帯電−露光−現像−転写−クリーニングプロセスを有する反転現像方式の複写機(キヤノン(株)製GP−40の改造機(プロセススピード:210mm/s)、露光量を0.28μJ/cm2に調整)に装着し、低温低湿環境(15℃、10%RH)、常温常湿環境(25℃、40%RH)および高温高湿環境(30℃、85%RH)での電位(暗部電位VD、明部電位VL)評価および低温低湿環境での連続5時間の帯電−露光を繰り返した前後の電位変動量(ΔV)を求めた。
【0083】
評価結果を表2、3に示す。
【0084】
(実施例2)
実施例1において、例示化合物No.1で示されるポリアミド酸10部をN,N−ジメチルアセトアミド90部に溶解した液を浸漬塗布し、150℃で1時間加熱硬化すること以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。イミド化率は87%であった。
【0085】
評価結果を表2、3に示す。
【0086】
(実施例3および4)
実施例1において、例示化合物No.1のポリアミド酸の代わりに表1に示したポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。イミド化率は88%であった。
【0087】
評価結果を表2、3に示す。
【0088】
(比較例1)
実施例1において、中間層を、アルコール可溶性共重合ナイロン(アミランCM−8000、東レ(株)製)5部をメタノール95部に溶解した溶液を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0089】
評価結果を表2、3に示す。
【0090】
(比較例2)
実施例1において、中間層の乾燥を100℃で30分間加熱処理することにより行った以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。赤外吸収スペクトルによる分析の結果、中間層に用いた樹脂中のイミド化率は47%であった。
【0091】
評価結果を表2、3に示す。
【0092】
(比較例3)
実施例1において、中間層の乾燥を130℃で1時間加熱処理することにより行った以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。赤外吸収スペクトルによる分析の結果、中間層に用いた樹脂中のイミド化率は75%であった。
【0093】
評価結果を表2、3に示す。
【0094】
(比較例4)
実施例1において、中間層の乾燥を300℃で4時間熱処理することにより行った以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。赤外吸収スペクトルによる分析の結果、中間層に用いた樹脂中のイミド化率は100%であった。
【0095】
評価結果を表2、3に示す。
【0096】
また、繰り返し試験を行った結果、電子写真感光体の端部の現像部材当接部位において、感光層の一部がアルミニウムから剥離し、ベタ白画像にカブリが発生した。
【0097】
(実施例5)
酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム微粒子からなる粉体(被覆率50質量%、粉体比抵抗700Ω・cm)120部とレゾール型フェノール樹脂(プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業製、固形分70%)70部と、2−メトキシ−1−プロパノール100部とからなる溶液を約20時間、ボールミルで分散した。この分散液を外径30mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダー上に浸漬塗布し、150℃で30分間加熱硬化することにより、厚み15μmの第一の中間層を形成した。
【0098】
次いで、前記第一中間層上に、実施例1と同様にして中間層(以下、第二中間層という)、電荷発生層および電荷輸送層を設けた。ただし、第二中間層の膜厚は1μmとした。
【0099】
得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。
【0100】
評価結果を表2、3に示す。
【0101】
(比較例5)
第二中間層を、アルコール可溶性共重合ナイロン(アミランCM−8000、東レ(株)製)5部をメタノール95部に溶解した溶液を用いて形成した以外は、実施例11と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
【0102】
評価結果を表2、3に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、低温低湿下から高温高湿下に至る全環境において、環境安定性や繰り返し使用による安定性に対して優れた電位特性および画像特性を有し、かつ、生産安定性に優れた電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
【符号の説明】
1 本発明の電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 レール
Claims (6)
- 前記中間層が、前記式(1)で示される繰り返し構造単位と、下記式(2)で示される繰り返し構造単位および下記式(3)で示される繰り返し構造単位の少なくとも一方の繰り返し構造単位とを有する樹脂を含有し、該樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、前記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が80%以上100%未満である請求項1に記載の電子写真感光体。
【外2】
【外3】
(式(2)、(3)中、A21、A31は2価の有機基を示し、R21、R22、R23、R24、R31、R32、R33、R34は、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または、シアノ基を示し、R25、R26、R35、R36は、同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基、または、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換基もしくは無置換のシリル基を示す。) - 前記中間層が含有する前記樹脂が有する総ての繰り返し構造単位に対して、前記式(1)で示される繰り返し構造単位の比率が85%以上95%以下である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記中間層が含有する前記樹脂の体積抵抗率が1×1012Ω・cm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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