JP3689548B2 - 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単層型電子写真感光体並びに該電子写真感光体を備えたプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体にはセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機光導電性物質が広く用いられていた。
【0003】
近年、有機光導電性物質を用いた電子写真感光体の多くはアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の比較的低分子量の電荷発生物質を適当な結着樹脂に分散して用いる場合が多い。
【0004】
その中で、感光層が電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層に機能分離された、いわゆる積層型電子写真感光体が感度、電位特性及び耐久性等の点で優れるため、現在有機電子写真感光体の主流となっている。
【0005】
このような電子写真感光体においては、感光層のキャリアの発生及び輸送効率、電荷発生層から電荷輸送層へのキャリア注入効率等が感光体の特性を決める重要な要因となる。これらの要因は電荷発生物質や電荷輸送物質の特性はもちろん、結着樹脂の特性にも影響される。
【0006】
従来結着樹脂の特性としては、粘着性、顔料分散性、機械的強度や耐溶剤性等が比較的強調され、検討されてきた。特開昭62−30254号公報には、結着樹脂の構造、官能基や分子量等が、感光体の感度等の電子写真特性に影響を与えることが記載されており、結着樹脂を機能性樹脂として認識している。
【0007】
しかしながら、近年の更なる高画質化、高耐久化の要求に伴い、よりすぐれた電子写真特性を有する電子写真感光体が検討されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた感度特性を有する電子写真感光体を提供することである。また該電子写真感光体を用いたプロセスカ−トリッジ並びに電子写真装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層が、アミド酸構造またはアミド酸エステル構造の少なくとも一方の繰り返し単位を有する樹脂を含有し、
該アミド酸構造またはアミド酸エステル構造の繰り返し単位が、下記一般式(1)で示されるもの、下記一般式(2)で示されるもの、または、下記一般式(3)で示されるものである
ことを特徴とする電子写真感光体から構成される。
一般式(1)
【化4】
(上記式(1)中、A 1 は2価の有機基を示し、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 及びR 6 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはシアノ基を示し、R 7 及びR 8 は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示す。)
一般式(2)
【化5】
(上記式(2)中、A 2 は2価の有機基を示し、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはシアノ基を示し、R 15 及びR 16 は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示し、Xは酸素原子、置換もしくは無置換のアルキレン基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。)
一般式(3)
【化6】
(上記式(3)中、A 3 は2価の有機基を示し、R 17 及びR 18 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のア ルコキシ基またはシアノ基を示し、R 19 及びR 20 は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示す。)
【0010】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体、及び帯電手段、現像手段及びクリ−ニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジから構成される。
【0011】
また、本発明は、前記本発明の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置から構成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる前記樹脂が有するアミド酸構造を有する繰り返し単位及びアミド酸エステル構造を有する繰り返し単位としては様々な単位が挙げられるが、特に下記一般式(1)、(2)及び(3)で示される単位が好ましい。
【0013】
一般式(1)
【化4】
式中、A1 は2価の有機基を示し、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 及びR6 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはシアノ基を示し、R7 及びR8 は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示す。
【0014】
一般式(2)
【化5】
式中、A2 は2価の有機基を示し、R9 、R10、R11、R12、R13及びR14は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはシアノ基を示し、R15及びR16は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示し、Xは酸素原子、置換もしくは無置換のアルキレン基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。
【0015】
一般式(3)
【化6】
式中、A3 は2価の有機基を示し、R17及びR18は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基またはシアノ基を示し、R19及びR20は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシアルキル基または置換もしくは無置換のアラルキル基を示す。
【0016】
一般式(1)、(2)及び(3)の式中、A1、A2 及びA3 の示す有機基としては、後述するように様々な基が挙げられるが、特に下記一般式(4)及び(5)で示される基であることが好ましい。
【0017】
一般式(4)
−Ar1−
式中、Ar1 は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を示す。
一般式(5)
−Ar2−Y−Ar3−
式中、Ar2 及びAr3 は同一または異なって、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を示し、Yは酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。
【0018】
上記Ar1 、Ar2 及びAr3 の芳香族炭化水素環基としてはフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン等の基が挙げられ、芳香族複素環基としてはピリジンジイル、チオフェンジイル等の基が挙げられ、Xのアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン等の基が挙げられる。
【0019】
A1、A2 及びA3 の2価の有機基の好ましい例としては、下記の基が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
【化10】
【0024】
また、一般式(1)、(2)及び(3)の式中、R1 〜R6 、R9 〜R14、R17及びR18の示す基において、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル等の基、アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ等の基が挙げられる。置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0025】
また、一般式(1)、(2)及び(3)の式中、R7 、R8 、R15、R16、R19及びR20の示す基において、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル等の基、アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ等の基、アラルキル基としてはベンジル基が挙げられる。置換基としてはハロゲン原子が挙げられる。
【0026】
また、一般式(2)の式中、Xの示すアルキレン基としてはメチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン等の基が挙げられる。置換基としてはハロゲン原子、アセチル、ベンゾイル等のアシル基及びシアノ基等が挙げられる。
【0027】
本発明において用いられる樹脂の数平均分子量は500〜100,000が好ましく、特には3,000〜50,000が好ましい。
【0028】
本発明においては、電子写真感光体を作成する際通常行われる乾燥条件によっては、ポリアミド酸及びポリアミド酸エステル構造のアミド部分と酸もしくは酸エステル部分が脱水もしくは脱アルコ−ル反応することにより、ポリイミド構造を形成することがある。
【0029】
本発明においては、アミド酸構造を有する繰り返し単位及びアミド酸エステル構造を有する繰り返し単位が、樹脂全体の繰り返し単位の20〜80モル%存在することが好ましく、特には40〜60モル%存在することが好ましい。
【0030】
本発明の電子写真感光体はアミド酸構造及びアミド酸エステル構造の少なくとも一方の繰り返し単位を有する樹脂を感光層に使用することによって顕著な感度の向上が認められる。これは電荷発生物質と前記樹脂との電子的相互作用によるキャリア発生効率または注入効率の向上に起因すると考えられる。即ち、前記樹脂と電荷発生物質との電子的相互作用によりキャリアの解離効率が促進され、かつ、キャリアの再結合が抑制されてフリ−キャリア生成に有利に作用しているものと考えられる。
【0031】
表1〜9に前記樹脂の好ましい具体例を挙げるが、これ等に限られるものではない。
【0032】
【表1】
【表2】
【表3】
【0033】
【表4】
【表5】
【表6】
【0034】
【表7】
【表8】
【表9】
【0035】
前記樹脂は、テトラカルボン酸二無水物またはこの無水物をハ−フエステル化したジカルボン酸誘導体とジアミンとの有機極性溶媒中での開環重付加反応により合成される。かかる有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、クレゾ−ル、クロロフェノ−ル等のフェノ−ル系溶媒、ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル等のエ−テル系溶媒あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0036】
また、樹脂の分子量を制御するために水を5%以下含有させて反応を行うこともできる。反応温度は20〜120℃が好ましく、特には20〜40℃が好ましい。
【0037】
原料であるジアミンと無水物等とのモル比は1:1であることが好ましく、原料を3種類以上用いる場合、全体でのジアミンと無水物とのモル比が1:1であれば、それぞれの比率は任意に決めることができる。
【0038】
合成例(化合物例3のポリアミド酸の合成)
500ml四ッ口フラスコに乾燥窒素ガスを送りながら、4,4’−ビフタル酸無水物14.7g(0.05モル)と160gのN,N−ジメチルアセトアミドを加えた。これを25℃激しく撹拌し、1分間乃至2分間かけて、4,4−ジアミノジフェニルエ−テル10.0g(0.05モル)を加えた。引き続き窒素ガスを送りながら2時間撹拌すると反応液は粘稠な淡黄色液体となった。反応液に更に160gのN,N−ジメチルアセトアミドを加え、均一溶液とし、激しく撹拌した5リットルのメタノ−ルに滴下し、析出したポリアミド酸をろ取した。この生成物を250gのN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、不溶物をろ別し、ろ液をメタノ−ル5リットルに滴下し、ポリマ−を析出させた。析出したポリマ−をろ取し、メタノ−ル2リットルで分散洗浄し、乾燥して化合物例3のポリアミド酸16.3gを得た。
【0039】
本発明に用いられる他の樹脂も上記と同様の方法で合成することができる。
【0040】
本発明の電子写真感光体はの感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を同一の層に含有する、いわゆる単一層型および電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を有する、いわゆる積層型に大別される。積層型は、更に、導電性支持体、電荷発生層および電荷輸送層をこの順に有するタイプと導電性支持体、電荷輸送層および電荷発生層をこの順に有するタイプに分けられる。本発明においては、積層型、特に電荷発生層の上に電荷輸送層を積層したタイプであることが好ましい。積層型の場合、前記樹脂は電荷発生層に含有されていることが好ましい。
【0041】
また、本発明における前記樹脂は、他の樹脂と共に用いてもよく、他の樹脂としては、ポリビニルブチラ−ル、ポリビニルベンザ−ル、ポリアリレ−ト、ポリカ−ボネ−ト、ポリエステル、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン及びアクリロニトリル−スチレンコポリマ−等の樹脂、あるいはポリ−N−ビニルカルバゾ−ルやポリビニルアントラセン等の有機光導電性ポリマ−等が挙げられる。
【0042】
電荷発生物質としては、モノアゾ、ジスアゾ及びトリスアゾ等のアゾ系顔料、金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、インジゴ及びチオインジゴ等のインジゴ系顔料、アントアントロン及びピレンキノン等の多環キノン系顔料、ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミド等のペリレン系顔料、スクワリリウム系色素、ピリリウム、チアピリリウム塩類及びトリフェニルメタン系色素等が挙げられる。
【0043】
電荷輸送層は、成膜性を要する樹脂の溶液に下記のような電荷輸送物質を溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成される。
【0044】
電荷輸送物質は電子輸送性物質と正孔輸送性物質に大別される。電子輸送性物質としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、クロラニル、テトラシアノキノジメタン等の電子受容性物質やこれら電子受容性物質を高分子化したものが挙げられる。
【0045】
正孔輸送性物質としては、ピレン、アントラセン等の多環芳香族化合物、カルバゾ−ル、インド−ル、イミダゾ−ル、オキサゾ−ル、チアゾ−ル、オキサジアゾ−ル、ピラゾ−ル、ピラゾリン、チアジアゾ−ル、トリアゾ−ル等の複素環化合物、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾ−ル等のヒドラゾン系化合物、α−フェニル−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベン、5−[4−(ジ−p−トリルアミノ)ベンジリデン]−5H−ジベンゾ[a、d]シクロヘプテン等のスチリル系化合物、ベンジジン系化合物、トリアリ−ルメタン系化合物、トリアリ−ルアミン系化合物、トリフェニルアミンあるいはこれらの化合物からなる基を主鎖または側鎖に有するポリマ−(例えばポリ−N−ビニルカルバゾ−ル、ポリビニルアントラセン等)が挙げられる。
【0046】
成膜性を有する樹脂としては、ポリエステル、ポリカ−ボネ−ト、ポリメタクリルさんエステル及びポリスチレン等が挙げられる。
【0047】
感光層の層構成が積層型の場合、電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.01〜1μmが好ましい。電荷輸送層は電荷発生層の上または下に積層され、その膜厚は3〜40μmが好ましく、特には5〜30μmが好ましい。単一層型の場合には、前述したように電荷発生物質と電荷輸送物質とをバインダ−樹脂中に分散及び溶解させた溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。単一層型の場合、感光層の膜厚は3〜40μmが好ましく、特には5〜30μmが好ましい。
【0048】
感光層が形成される導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、チタン、ニッケル、インジウム、金や白金等が挙げられる。また、かかる金属あるいは合金を真空蒸着法により被膜形成したプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレ−ト、アクリル樹脂等)や導電性粒子(例えばカ−ボンブラック、銀粒子等)を適当なバインダ−と共にプラスチックまたは金属基板上に被覆した支持体、あるいは導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体等が挙げられる。支持体の形状としてはドラム状、シ−ト状及びベルト状等が挙げられるが、適用される電子写真感光体に最も適した形状にすることが好ましい。
【0049】
導電性支持体と感光層の中間にバリヤ−機能と接着機能を有する下引き層を設けることができる。下引き層の材料としてはカゼイン、ポリビニルアルコ−ル、ニトロセルロ−ス、ポリアミド、ポリウレタンまたは金属アルコキシド等の有機金属化合物とシランカップリング剤等が挙げられる。下引き層の膜厚は5μm以下が好ましく、特には0.1〜3μmが好ましい。
【0050】
更に、本発明の電子写真感光体は感光層上に保護層として樹脂層や導電性粒子を含有する層を積層することもできる。
【0051】
前述した各種層の塗布方法としては、浸漬コ−ティング法、スプレ−コ−ティング法、ビ−ムコ−ティング法、スピンナ−コ−ティング法、ロ−ラ−コ−ティング法、マイヤ−バ−コ−ティング法及びブレ−ドコ−ティング法等が挙げられる。
【0052】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機、レ−ザ−ビ−ムプリンタ−、CRTプリンタ−、LEDプリンタ−、液晶プリンタ−等の電子写真装置一般に適用し得るが、更に、電子写真技術を応用したディスプレ−、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0053】
次に、本発明のプロセスカ−トリッジ並びに電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、じく2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレ−ザ−ビ−ム走査露光等の像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0054】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナ−現像され、現像されたトナ−現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピ−)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリ−ニング手段9によって転写残りトナ−の除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理がされた後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ロ−ラ−等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0055】
本発明においては、上述の感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリ−ニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ−トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ−トリッジを複写機やレ−ザ−ビ−ムプリンタ−等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば一次帯電手段3、現像手段5及びクリ−ニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカ−トリッジ化し、装置本体のレ−ル12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカ−トリッジ11とすることができる。また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンタ−である場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、あるいは、センサ−で原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレ−ザ−ビ−ムの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッタ−アレイの駆動等により照射される光である。
【0056】
【実施例】
実施例1
アルミニウム支持体上にメトキシメチル化ナイロン(数平均分子量32,000)5gとアルコ−ル可溶性共重合ナイロン(数平均分子量29,000)10gをメタノ−ル95gに溶かした液をマイヤ−バ−で塗布し、乾燥後の膜厚が1μmの下引き層を形成した。
【0057】
次に、下記構造式のビスアゾ顔料
【化11】
5gをジメチルアセトアミド90gに加えてサンドミルで20時間分散した。更にこの液に樹脂例3のポリアミド酸樹脂(数平均分子量10,000)2gをジメチルアセトアミド20gに溶かした液を加え更に2時間分散した。この分散液にジメチルアセトアミド200gを加えて希釈し、先に形成した下引き層の上にマイヤ−バ−で塗布し、90度で1時間乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0058】
次いで、下記構造式のスチリル化合物
【化12】
5gとポリカ−ボネ−ト(数平均分子量55,000)5gをモンモクロルベンゼン40gに溶解し、この液を電荷発生層の上にマイヤ−バ−で塗布し、乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作成した。
【0059】
作成した電子写真感光体を静電複写紙試験装置(商品名Model SP−428、川口電機(株)製)を用いて、−5KVのコロナ放電で負に帯電させ、1秒間暗所で放置後、ハロゲンランプを用いて照度10ルックスの光で露光することにより、帯電特性を評価した。帯電特性としては表面電位V0 、1秒間暗所放置後の表面電位を1/2に減衰するのに必要な露光量(即ち感度)E1/2 及び残留電位Vrを測定した。
【0060】
実施例2
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、樹脂例7のポリアミド酸メチルエステル樹脂(数平均分子量9,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0061】
実施例3
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、樹脂例10のポリアミド酸樹脂(数平均分子量10,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例4
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、樹脂例13のポリアミド酸樹脂(数平均分子量11,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、樹脂例22のポリアミド酸樹脂(数平均分子量9,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例6
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、樹脂例27のポリアミド酸樹脂(数平均分子量10,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例7
実施例1におけるビスアゾ顔料に代えて、下記構造式のビスアゾ顔料
【化13】
を用い、電荷発生層用結着樹脂として樹脂例22のポリアミド酸樹脂(数平均分子量9,000)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例8
実施例1におけるビスアゾ顔料に代えて、下記構造式のビスアゾ顔料
【化14】
を用い、スチリル化合物に代えて下記構造式のトリアリ−ルアミン化合物
【化15】
を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、ポリカ−ボネ−ト(商品名ユ−ピロンZ200、三菱瓦斯化学(株)製)を用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例2
実施例1における樹脂例3の樹脂に代えて、下記構造式で示される構造を繰り替えあい単位として有するポリビニルアセタ−ル樹脂(アセタ−ル化度75〜80%)
【化16】
を用い、分散・希釈溶剤としてシクロヘキサノンを用いた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0069】
【表10】
【0070】
実施例9
実施例1で用いたと同様のナイロン樹脂溶液をアルミニウムシリンダ−(外径30mm×長さ254mm)上に浸漬コ−ティング法により塗布し、90℃で10分間乾燥して、膜厚1μmの下引き層を形成した。
【0071】
次に、実施例1におけるビスアゾ顔料に代えて下記構造式のオキシチタニウムフタロシアニン顔料
【化17】
を用いた他は、実施例1と同様にして調製した電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬コ−ティング法により塗布し、90℃で60分間乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0072】
次に、実施例1で用いたと同様の電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬コ−ティング法により塗布し、90℃で60分間乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を作成した。
【0073】
作成した電子写真感光体を、帯電−露光−現像−転写−クリ−ニングのプロセスを1.5秒のサイクルで行う反転現像方式のレ−ザ−ビ−ムプリンタ−に装着し、暗部電位Vd及び明部電位Vlの測定を行ったところ、Vd=−700V、Vl=−120Vであった。
【0074】
比較例3
電荷発生層用結着樹脂として比較例2で用いたポリビニルアセタ−ルを用いた他は、実施例9と同様にして電子写真感光体を作成し、その特性を測定したところ、Vd=−695V、Vl=−160Vであった。
【0075】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、感光層に用いる結着樹脂としてアミド酸構造及びアミド酸エステル構造の少なくとも一方の繰り返し単位を有する樹脂を用いたことによって、感度特性に優れるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
1 本発明の電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 画像露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリ−ニング手段
10 前露光光
11 プロセスカ−トリッジ
12 レ−ル
Claims (9)
- 導電性支持体及び該導電性支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層が、アミド酸構造またはアミド酸エステル構造の少なくとも一方の繰り返し単位を有する樹脂を含有し、
該アミド酸構造またはアミド酸エステル構造の繰り返し単位が、下記一般式(1)で示されるもの、下記一般式(2)で示されるもの、または、下記一般式(3)で示されるものである
ことを特徴とする電子写真感光体。
一般式(1)
一般式(2)
一般式(3)
- 前記一般式(1)〜(3)中のA1〜A3が、各々独立に、下記一般式(4)及び(5)で示される基からなる群から選ばれる請求項1に記載の電子写真感光体。
一般式(4)
−Ar1−
(上記式(4)中、Ar1は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい芳香族複素環基を示す。)
一般式(5)
−Ar2−Y−Ar3−
(上記式(5)中、Ar2及びAr3は同一または異なって、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換もしくは無置換の芳香族複素環基を示し、Yは酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基、カルボニル基またはスルホニル基を示す。) - 前記樹脂中の、アミド酸構造を有する繰り返し単位及びアミド酸エステル構造を有する繰り返し単位の割合が、該樹脂が有する全ての繰り返し単位に対し、20〜80モル%である請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂中の、アミド酸構造を有する繰り返し単位及びアミド酸エステル構造を有する繰り返し単位の割合が、該樹脂が有する全ての繰り返し単位に対し、40〜60モル%である請求項3に記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂の数平均分子量が、500〜100,000である請求項1〜4の何れかに記載の電子写真感光体。
- 前記樹脂の数平均分子量が、3,000〜50,000である請求項5に記載の電子写真感光体。
- 前記感光層が電荷発生層及び電荷輸送層を有し、該電荷発生層が前記樹脂を含有している請求項1〜6の何れかに記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜7の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリ−ニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
- 請求項1〜7の何れかに記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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