JP3927720B2 - 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の構造を有するアゾ顔料を含有する電子写真感光体、該電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体に用いる光導電性物質としては、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機光導電性物質が広く用いられていた。有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、有機光導電性物質の成膜性が良く、塗工によって生産できるため、極めて生産性が高く、安価な電子写真感光体を提供できるという利点を有している。また、使用する染料や顔料等の選択により、感度を有する波長域を自在にコントロールできるという利点も有し、これまで幅広い検討がなされてきた。
【0003】
特に最近では、有機光導電性染料や顔料を含有した電荷発生装置と、光導電性ポリマーや低分子の光導電性物質を含有した電荷輸送層を積層した機能分離型感光体の開発により、従来の有機電子写真感光体の欠点とされてきた感度や耐久性に著しい改善がなされてきた。
【0004】
アゾ顔料は優れた光導電性を示し、しかもアゾ成分とカプラー成分の組み合わせ方で様々な特性を有する化合物が容易に得られることから、これまで数多くの化合物が提案されており、例えば特開昭47−37543号公報、特開昭53−132347号公報、特開昭54−22834号公報、特開昭58−70232号公報、特開昭60−131539号公報、特開昭62−2267号公報、特開昭62−192747号公報、特開昭63−262656号公報、特開昭63−264762号公報及び特開平1−180554号公報に開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のアゾ顔料を用いた電子写真感光体は、感度や繰り返し使用時の電位安定性の面で必ずしも十分であるとは言えず、実用化されているのは極僅かな材料のみである。
【0006】
本発明の目的は、新規な電子写真感光体を提供すること、実用的な高感度特性と繰り返し使用時の安定した電位特性を有する電子写真感光体を提供すること、また該電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、支持体及び該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層が、下記式(2)で示されるアゾ顔料:
【0008】
【外7】
【0009】
(式(2)中、Arは
【0010】
【外8】
【0011】
から選ばれる何れかを示し、Cpはフェノール性水酸基を有するカプラー残基を示し、該Cpの少なくともひとつは下記式(1)で示される有機基:
【0012】
【外9】
【0013】
(式(1)中、X 1 は式中のベンゼン環と結合して置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換もしくは無置換の複素環基を形成するのに必要な基を示し、Bは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基及び置換もしくは無置換のアルコキシ基から選ばれる何れかを示し、R1及びR2は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基及び置換もしくは無置換の、R1とR2が結合して式中の窒素原子を環内に含む環状アミノ基を形成するための基から選ばれる何れかを示し、Z1は酸素原子及び硫黄原子から選ばれる何れかを示し、k1は0または1を示し、Aは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、
【0014】
【外10】
【0015】
から選ばれる何れかを示し、R3は置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、k2は0または1を示す。但し、k1とk2とが同時に0であることはない。)
である。)
を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0016】
また、本発明は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【0017】
【発明の実施の形態】
式(1)中のX1は式中のベンゼン環と縮合して置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のアントラセン環、置換もしくは無置換のカルバゾール環、置換もしくは無置換のベンゾカルバゾール環、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、置換もしくは無置換のベンゾナフトフラン環、置換もしくは無置換のジフェニレンサルファイト環、置換もしくは無置換のキノリン環、置換もしくは無置換のイソキノリン環及び置換もしくは無置換のアクリジン環等の芳香族炭化水素環及び複素環を形成するのに必要な基を示す。
【0018】
X1が有していてもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル基、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルカルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、水酸基及びトリフルオロメチル等のハロメチル基等が挙げられる。
【0019】
式(1)中のBはフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、置換基もしくは無置換のメチル、エチル及びプロピル等のアルキル基、置換もしくは無置換のベンジル及びフェネチル等のアラルキル基及び置換もしくは無置換のメトキシ、エトキシ及びプロポキシ等のアルコキシ基を示す。
【0020】
Bが有していてもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル基、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のジアルキルアミノ基、フェニルカルバモイル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル基等のハロメチル基等が挙げられる。
【0021】
また、R1及びR2のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル及びブチル等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル、フェネチル及びナフチルメチル等が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ビフェニル、ナフチル及びアンスリル等が挙げられ、複素環基としては、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、カルバゾリル、ジベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリルが挙げられる。
【0022】
上記アルキル基が有してもよい置換基としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられ、上記アラルキル基、アリール基及び複素環基の有していてもよい。置換基としてはメチル、エチル及びプロピル等のアルキル基、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルカルバモイル基、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル等のハロメチル基等が挙げられる。
【0023】
R1とR2が結合することによって形成される式中の窒素原子を環内に含む環状アミノ基としてはピロリル、ピロリニル、ピロリジル、インドリル、ピベリジニル、ピペラジニル、イソインドリル、カルバゾリル、ベンゾインドリル、イミダゾリル、ピラゾリン、プラゾニリル、オキサジニル、フェノキサジニル及びベンゾカルバゾリル等から誘導される環状アミノ基が挙げられる。
【0024】
この環状アミノ基が有してもよい置換基としてはメチル、エチル及びプロピル等のアルキル基、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル等のハロメチル基等が挙げられる。
【0025】
水素結合能力による顔料分子間の相互作用の点から、R1は水素原子であることが好ましい。また、R1が水素原子である場合、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましく、そのなかでも置換基もしくは無置換のアリール基であることが好ましく、特には置換もしくは無置換のフェニル基であることが好ましい。
【0026】
Aのアルキレン基としては、メチレン、エチレン及びプロピレン等が挙げられ、アルケニレン基としてはビニレン及びプロペニレン等が挙げられる。
【0027】
上記アルキレン基及びアルケニレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基などが挙げられる。
【0028】
R3のアルキレン基としては、メチレン、エチレン及びプロピレン等が挙げられる。
【0029】
上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基などが挙げられる。
【0030】
なお、Aのアルキレン基及びアルケニレン基としては、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−CH2CH2CH2−及び−CH=CH−であることが好ましく、R3としては−CH2−であることが好ましく、この際、Bは全て水素原子であることが好ましい。
【0031】
また、Aが
【0032】
【外11】
【0033】
であるときは、Z1は酸素原子であることが好ましい。
【0034】
本発明に用いられるアゾ顔料は下記式(2)で示される。
【0035】
【外12】
【0036】
(式(2)中、Arは
【0037】
【外13】
【0038】
から選ばれる何れかを示し、Cpはフェノール性水酸基を有するカプラー残基を示し、該Cpの少なくともひとつは式(1)で示される有機基である。)
【0039】
式(2)中、式(1)で示される有機基以外のCpの好ましい例としては、下記式(3)〜(17)で示される基が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0040】
【外14】
【0041】
【外15】
【0042】
【外16】
【0043】
上記式中のX2はベンゼン環と縮合して、置換もしくは無置換のナフタレン環、置換もしくは無置換のアントラセン環、置換もしくは無置換のカルバゾール環、置換もしくは無置換のベンゾカルバゾール環、置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、置換もしくは無置換のベンゾナフトフラン環、置換もしくは無置換のジフェニレンサルファイト環、置換もしくは無置換のキノリン環、置換もしくは無置換のイソキノリン環及び置換もしくは無置換のアクリジン環等の芳香族炭化水素環及び複素環を形成するのに必要な基を示す。
【0044】
R4及びR5は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基及び置換もしくは無置換の、R4とR5が結合して式中の窒素原子を環内に含む環状アミノ基を形成するための基を示す。R6及びR7は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基及び置換もしくは無置換の複素環基を示す。R8及びR9は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基及び置換もしくは無置換の複素環基を示す。
【0045】
Y1は置換もしくは無置換の2価の炭化水素環基及び複素環基を形成するための基を示す。
【0046】
形成される炭化水素環基及び複素環基は、Y1を含む下記の有機基
【0047】
【外17】
【0048】
であり、好ましい例としては下記の基等が挙げられる。
【0049】
【外18】
【0050】
Y2は置換もしくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基を示し、o−フェニレン、o−ナフチレン、ペリナフチレン、1,2−アンスリレン及び9,10−フェナンスレン等の基が挙げられ、Y3は置換もしくは無置換の2価の芳香族炭化水素環基あるいは窒素原子を環内に含む2価の複素環基を示し、2価の芳香族炭化水素環基としてはo−フェニレン、o−ナフチレン、ペリナフチレン、1,2−アンスリレン及び9,10−フェナンスレン等の基が挙げられ、窒素原子を環内に含む2価の複素環基としては、3,4−ピラゾールジイル、2,3−ピリジンジイル、4,5−ピリジンジイル、6,7−インダゾールジイル、5,6−ベンズイミダゾールジイル及び6,7−キノリンジイル等の基が挙げられる。
【0051】
Dは酸素原子、硫黄原子及びN−置換または無置換のイミノ基を示し、Nの置換基としては置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基を示す。
【0052】
Z2は酸素原子及び硫黄原子を示す。
【0053】
上記R4乃至R9及びDのアルキル基としてはメチル、エチル及びプロピル等の基が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル及びナフチルメチル等の基が挙げられ、アリール基としてはフェニル、ジフェニル、ナフチル及びアンスリル等の基が挙げられ、複素環基としてはピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、カルバゾリル、ジベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル及びベンゾチアゾリル等の基が挙げられ、窒素原子を環内に含む環状アミノ基としては、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、インドール、インドリン、イソインドール、カルバゾール、ベンゾインドール、イミダゾール、ピラゾール、ピラゾリン、オキサジン、フェノキサジン及びベンゾカルバゾール等から誘導される基が挙げられる。
【0054】
また、X2、R4乃至R9、Y1、Y2、Y3及びDが有してもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル及びブチル等のアルキル基、メトキシ及びエトキシ等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子、ジメチルアミノ及びジエチルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルカルバモイル基、ニトロ基、シアノ基及びトリフルオロメチル等のハロメチル基等が挙げられる。
【0055】
本発明に用いるアゾ顔料の好ましい例を以下に列挙する。なお、本発明に用いるアゾ顔料はこれらの代表例に限定されるものではない。
【0056】
【外19】
【0057】
【外20】
【0058】
【外21】
【0059】
【外22】
【0060】
【外23】
【0061】
【外24】
【0062】
【外25】
【0063】
【外26】
【0064】
【外27】
【0065】
【外28】
【0066】
【外29】
【0067】
【外30】
【0068】
【外31】
【0069】
【外32】
【0070】
【外33】
【0071】
【外34】
【0072】
【外35】
【0073】
【外36】
【0074】
【外37】
【0075】
【外38】
【0076】
【外39】
【0077】
【外40】
【0078】
【外41】
【0079】
【外42】
【0080】
【外43】
【0081】
【外44】
【0082】
【外45】
【0083】
【外46】
【0084】
【外47】
【0085】
【外48】
【0086】
【外49】
【0087】
【外50】
【0088】
【外51】
【0089】
【外52】
【0090】
【外53】
【0091】
【外54】
【0092】
【外55】
【0093】
【外56】
【0094】
【外57】
【0095】
【外58】
【0096】
【外59】
【0097】
本発明に用いられるアゾ顔料は、下記式(18)
【0098】
【外60】
【0099】
(式(18)中、X1、B、R1、R2、Z1、k1及びAは式(1)のものと同様。)で示されるカプラー成分とジアゾニウム塩構造を有する化合物とをアルカリの存在下でカップリングすることによって容易に合成することができる。
【0100】
更に、上記式(18)で示されるカプラー成分は、k 1が0のときは、下記式(19)
【0101】
【外61】
【0102】
(式(19)中、X1は式(1)のものと同様。)
で示されるカルボン酸を下記式(20)
【0103】
【外62】
【0104】
(式(20)中、B、R1、R2及びAは式(1)のものと同様。)
で示されるアニリン類とを、k1が1のときは、上記式(19)で示されるカルボン酸と下記式(21)
【0105】
【外63】
【0106】
(式(21)中、B、R1、R2、Z1及びAは式(1)のものと同様。)
で示される尿素類とをベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等から選ばれる芳香族系溶剤中、三塩化リンの存在した、80〜200℃で加熱縮合するか、または下記式(22)
【0107】
【外64】
【0108】
(式(22)中、X1は式(1)のものと同様。)
で示される酸クロリドと前記アニリン類または尿素類とを上記芳香族系溶剤中で反応させることにより合成することができる。
【0109】
本発明に用いられるアゾ顔料は、このようにして得られた式(18)で示されるカプラー成分を、例えば下記式(23)
【0110】
【外65】
【0111】
(式(23)中、Arは式(2)のものと同様。)
で示されるアミノ化合物を常法によりジアゾ化したものと、アルカリ存在下で水系カップリング反応させることにより合成することができる。また、このアミノ化合物のジアゾニウム塩をホウフッ化塩あるいは塩化亜鉛複塩等の形で一旦単離した後、適当な溶剤、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシド等の有機溶剤中、酢酸ソーダ、ピリジン、トリメチルアミン及びトリエチルアミン等の塩基の存在下で有機溶剤系カップリング反応することによっても、本発明に用いられるアゾ顔料を合成することができる。
【0112】
また、本発明に用いられるアゾ顔料は、同一分子内に式(1)で示される有機基を1個含んでいればよいが、好ましくは2個である。
【0113】
式(1)で示される有機基以外のカプラー残基を有するアゾ顔料は、下記式(24)
【0114】
【外66】
【0115】
(式(24)中、Arは式(2)のものと同様。)
で示されるアミノ化合物を常法によりジアゾ化し、得られたジアゾニウム塩を前記式(18)で示されるカプラー成分とアルカリ存在下でカップリングした後、例えば塩酸等鉱酸類で加水分解し、下記式(25)
【0116】
【外67】
【0117】
(式(25)中、Ar、X1、B、Z1、k1、R1、R2及びAは式(1)のものと同様。)で示される反応生成物を得、この生成物を再度常法によりジアゾ化後、式(18)とは別の例えば、式(3)〜(17)に示されるような基を誘導するフェノール性水酸基を有するカプラー成分と逐次カップリング反応させることによって合成することができる。また、常法により得た式(23)で示されるアミノ化合物のジアゾニウム塩を式(18)で示されるカプラー成分を少なくとも1種含む混合カプラー溶液中に添加し、アルカリ存在下でカップリング反応させて目的のアゾ顔料を合成してもよい。また、式(18)で示されるカプラー成分の1種とアルカリ存在下で一次カップリング後、別種のカプラー成分のアルカリ存在溶液を順次添加し、カップリング反応を行わせる方法でも目的のアゾ顔料を合成することができる。
【0118】
合成例1(顔料例(2)−1の合成)
300ミリリットルビーカーに水150ミリリットル、濃塩酸20ミリリットル(0.23モル)とo−ジアニシジンを7.8g(0.032モル)を入れ、0℃迄冷却し、亜硝酸ソーダ4.6g(0.076モル)を水10ミリリットルに溶かした液を液温を5℃に保ちながら10分間で滴下した。15分間撹拌した後カーボンろ過し、この溶液の中にホウフッ化ナトリウム10.5g(0.096モル)を水90ミリリットルに溶解した液を撹拌下に適化した。析出したホウフッ化塩をろ過し、冷水で洗浄した後、アセトニトリルで洗浄し、室温で減圧乾燥した。収量は12.0gで、収率は85%であった。
【0119】
次に、1リットルビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50ミリリットルを入れ、下記
【0120】
【外68】
【0121】
で示される化合物16.7g(0.042モル)を溶解し、液温を5℃に冷却した後、先に得たホウフッ化塩8.8g(0.020モル)を溶解し、次いでトリエチルアミン5.1g(0.050モル)を5分間で滴下した。2時間撹拌した後、析出した顔料をろ取し、DMFで4回、水で3回洗浄した後、凍結乾燥した。収量は19.1gで、収率は90%であった。
【0122】
元素分析値
元素 計算値(%) 実験値(%)
C 72.58 72.63
H 4.76 4.82
N 10.58 10.43
【0123】
合成例2(顔料例(6)−1の合成)
1リットルビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)50ミリリットルを入れ、下記式
【0124】
【外69】
【0125】
で示される化合物18.5g(0.042モル)を溶解し、液温を5℃に冷却した後、合成例1と同様にして得たホウフッ化塩8.8g(0.020モル)を溶解し、次いでトリエチルアミン5.1g(0.050モル)を5分間で滴下した。2時間撹拌した後、析出した顔料をろ取し、DMFで4回、水で3回洗浄した後、凍結乾燥した。収量は21.3gで収率は93%であった。
【0126】
元素分析値
元素 計算値(%) 実験値(%)
C 69.22 69.41
H 4.58 4.52
N 12.23 12.19
【0127】
合成例3(顔料例(10)−14)
300ミリリットルビーカーに水150ミリリットル、濃塩酸20ミリリットル(0.23モル)と下記式
【0128】
【外70】
【0129】
で示されるアミン化合物7.5g(0.032モル)を入れ、0℃迄冷却し、亜硝酸ソーダ4.6g(0.067モル)を水10ミリリットルに溶かした液を液温2℃以下に保ちながら10分間で液中に滴下した。15分間撹拌した後、カーボンろ過し、この溶液の中にホウフッ化ナトリウム10.5g(0.096モル)を水90ミリリットルに溶解した液を撹拌下に滴下した。析出したホウフッ化塩を冷水で洗浄した後、アセトニトリルで洗浄し、室温で減圧乾燥した。収量は10.9gで、収率は79%であった。
【0130】
次に、2リットルビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)800ミリリットルを入れ、下記式
【0131】
【外71】
【0132】
で示される化合物17.9g(0.030モル)を溶解し、液温を5℃に冷却した後、先に得たホウフッ化塩6.1g(0.014モル)を溶解し、次いでトリエチルアミン3.5g(0.035モル)を5分間で滴下した。2時間撹拌した後、析出した顔料をろ過し、DMFで4回、水で3回洗浄した後、凍結乾燥した。収量は16.5gで、収率は81%であった。
【0133】
元素分析値
元素 理論値(%) 測定値(%)
C 65.34 65.25
H 3.54 3.53
N 12.54 12.39
【0134】
合成例4(顔料例(14)−21の合成)
3リットルビーカーにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)920ミリリットルを入れ、下記式
【0135】
【外72】
【0136】
で示される化合物19.2g(0.030モル)を一旦40〜50℃迄加熱して溶解した後、液温を5℃に冷却し、合成例3と同様にして得たホウフッ化塩6.1g(0.014モル)を溶解し、次いでトリエチルアミン3.5g(0.035モル)を5分間で滴下した。2時間撹拌した後、析出した顔料をろ取し、DMFで5回、水で3回洗浄した後、凍結乾燥した。収量は16.6gで、収率は77%であった。
【0137】
元素分析値
元素 理論値(%) 測定値(%)
C 63.25 63.37
H 3.47 3.59
N 13.66 13.38
【0138】
本発明の電子写真感光体は、支持体上に式(1)で示される有機基を有するアゾ顔料を含有する感光層を有する。本発明の電子写真感光体の好ましい例として、感光層を電荷発生層と電荷輸送層に機能分離した電子写真感光体が挙げられる。
【0139】
電荷発生層は、前記のアゾ顔料を適当な溶剤中でバインダー樹脂と共に分散した塗布液を、支持体上に公知の方法によって塗布することによって形成することができる。その膜厚は5μm以下であることが好ましく、特に0.1〜1μmであることが好ましい。
【0140】
この際に用いられるバインダー樹脂は、広範な絶縁性樹脂から選択でき、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン及びポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマーからも選択できる。好ましくはポリビニルブチラール、ポリビニルベンザール、ポリアリレート(ビスフェノールとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート、ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、ポリウレタン、カゼイン、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等が挙げられる。また、バインダー樹脂の電荷発生層中における含有率は、80重量%以下であることが好ましく、特には40重量%以下であることが好ましい。
【0141】
また、使用する溶剤は、前記の樹脂を溶解し、後述の電荷輸送層や下引き層を溶解しないものから選択することが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール系化合物、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系化合物、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系化合物、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系化合物、酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル系化合物、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエチレン、四塩化炭素、ジクロルヘキサン及びトリクロルエチレン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素あるいはベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン及びジクロルベンゼン等の芳香族化合物等を用いることができる。
【0142】
塗工は浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法及びカーテンコーティング法等のコーティング法を用いて行うことができる。
【0143】
乾燥は、室温における指触乾燥後、加熱乾燥する方法が好ましい。加熱乾燥は30〜200℃で5分間〜2時間の範囲で静止または送風下で行うことができる。
【0144】
電荷輸送層は電荷発生層の上または下に積層され、電界の存在下電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。
【0145】
電荷輸送物質は電子輸送性物質と正孔輸送性物質とがあり、電子輸送性物質としては、例えばクロラニル、ブロモアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4−7−トリニトロ−9−ジシアノメチレンフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン及び2,4,8−トリニトロチオキサントン等の電子吸引性物質やこれら電子吸引性物質を高分子化したもの等が挙げられる。
【0146】
正孔輸送性物質としては、N−エチルカルバゾール及びN−イソプロピルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン及びp−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物、1−〔ピリジル(2)〕−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−ジフェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン及び1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン及びスピロピラゾリン等のピラゾリン系化合物、4−ジエチルアミノ−β−ナフチルスチレン及び4−ジフェニルアミノ−4′−メトキシスチルベン等のスチリル系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンズオキサゾール及び2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジエチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾール等のオキサゾール系化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンゾチアゾール等のチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン及び2−(N,N−p−ジトリル)アミノ−9,9−ジメチルフルオレン等のトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン及び1,1,2,2−テトラキス(4−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)エタン等のポリアリールカルカン系化合物、トリフェニルアミン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂及びエチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの有機電荷輸送物質の他にセレン、セレン−テルル、アモルファスシリコン及び硫化カドミウム等の無機材料も用いることができる。また、これらの電荷輸送物質は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0147】
電荷輸送物質が成膜性を有していないときには、適当なバインダー樹脂を選択することによって被膜形成できる。バインダー樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリアクリルアミド、ポリアミド及び塩素化ゴム等の絶縁性樹脂あるいはポリ−Nービニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン及びポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。
【0148】
電荷輸送層は、電荷キャリアを輸送できる限界があるので、必要以上に膜厚を厚くすることができない。一般的には5〜30μm、好ましくは10〜25μmである。塗工によって電荷輸送層を形成する際には、前述したような適当なコーティング法を用いることができる。
【0149】
本発明の別の具体例として、前述のアゾ顔料と電荷輸送物質を同一層に含有する感光層を有する電子写真感光体を挙げることができる。また、この例において、前記電荷輸送物質に加えて、ポリ−N−ビニルカルバゾールとトリニトロフルオレノンからなる電荷移動錯体化合物を用いることができる。この場合は、前述のアゾ顔料と電荷移動錯体化合物をテトラヒドロフランに溶解したポリエステル溶液中に分散した後、被膜形成させて作成する。
【0150】
いずれの感光層においても、式(1)で示される有機基を有するアゾ顔料を少なくとも1種含有する。その結晶形は非晶質であっても結晶質であってもよく、また必要に応じて光吸収の異なる顔料を組み合わせて用いることによって感光体の感度を高めたり、パンクロマチックな感光体を作成する等の目的で式(1)で示される有機基を有するアゾ顔料を2種以上組み合わせたり、あるいは公知の電荷発生物質と組み合わせて用いることも可能である。
【0151】
本発明に用いられる支持体は、導電性を有していれば、いずれのものでもよく、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス、パナジウム、モリブデン、クロム、チタン、ニッケル、インジウム、金及び白金を用いることができる。その他にはアルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム、酸化スズ及び酸化インジウム−酸化スズ合金等を真空蒸着法によって被膜形成された層を有するプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート及びアクリル樹脂、ポリフッ化エチレン等)、導電性粒子(例えばアルミニウム粉末、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック及び銀粒子等)を適当なバインダー樹脂と共にプラスチップまたは前記支持体の上に被覆した支持体、導電性粒子をプラスチックや紙に含浸させた支持体や導電性ポリマーを有するプラスチック等を用いることができる。
【0152】
本発明においては、支持体と感光層の中間にバリヤー機能と接着機能を有する下引き層を設けることができる。下引き層の膜厚は0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmである。下引き層はカゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、共重合ナイロン及びN−アルコキシメチル化ナイロン等)、ポリウレタン及び酸化アルミニウム等によって形成することができる。
【0153】
また、本発明においては、感光層を外部からの機械的及び化学的悪影響から保護すること等を目的として、保護層として樹脂層や、導電性粒子や電荷輸送物質を含有する樹脂層を感光層上に設けることもできる。
【0154】
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の近赤外光源を用いたデジタル記録システムの多数の電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0155】
次に、本発明のプロセスカートリッジ及び電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0156】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理がされた後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0157】
本発明においては、上述の感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0158】
なお、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0159】
【実施例】
実施例1
アルミニウム支持体上にメトキシメチル化ナイロン(重量平均分子量32,000)5gとアルコール可溶性共重合ナイロン(重量平均分子量29,000)10gをメタノール95gに溶解した液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
【0160】
次に、前記顔料例(2)−1の顔料5gをシクロヘキサノン95gにポリビニルブチラール(ブチラール化度63モル%)2gを溶かした液に加え、サンドミルで20時間分散した。この分散液を下引き層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0161】
次いで、下記式
【0162】
【外73】
【0163】
で示されるヒドラゾン化合物5gとポリメチルメタクリレート(数平均分子量100,000)5gをクロロベンゼン35gに溶解し、この液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の電子写真感光体とした。
【0164】
実施例2〜14、19〜32
顔料例(2)−1の顔料に代えて、表1に示される顔料を用いた他は、実施例1と同様にして実施例2〜14、19〜32の電子写真感光体を作成した。
【0165】
作成した各電子写真感光体を静電複写紙試験装置(商品名SP−428、川口電機(株)製)を用いて−5KVのコロナ放電で負に帯電し、1秒間暗所放置した後、ハロゲンランプを用いて照度10ルックスの光で露光し、帯電特性を評価した。帯電特性としては帯電直後の表面電位V0と暗所放置後の表面電位が1/2に減衰するのに必要な露光量E1/2を測定した。結果を表1に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
比較例1〜5
顔料例(2)−1の顔料に代えて、下記式で示される比較顔料1〜5を用いた他は、実施例1と同様にして比較例1〜5の電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0168】
【外74】
【0169】
【外75】
【0170】
【表2】
【0171】
これらの評価結果から、本発明の電子写真感光体はいずれも十分な帯電能と優れた感度特性を有していることがわかる。
【0172】
実施例37〜45、49〜57
実施例1で作成した電子写真感光体を外径30φmmのシリンダーに貼り付け、−6.5KVのコロナ帯電器、露光光学系、現像器、転写帯電器、除電露光光学系及びクリーナーを備えた電子写真複写機の感光体として取り付けた。
【0173】
初期の暗部電位VDと明部電位VLをそれぞれ−700V、−200V付近に設定し、5,000回繰り返し使用した際の初回と5,000回転目での暗部電位の変動量ΔVDと明部電位の変動量ΔVLを測定した。結果を表3に示す。なお、電位の変動量における負符号は電位の絶対値が減少したことを表わし、正符号は電位の絶対値が増加したことを表わす。1〜14、19〜32
【0174】
実施例4、5、7、9、11〜14、19、20、22、24、26、28、29、30及び32で作成した電子写真感光体についても同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
比較例6〜10
比較例1〜5で作成した電子写真感光体を実施例37にと同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0177】
【表4】
【0178】
これらの結果から、本発明の電子写真感光体は繰り返し使用時の電位変動が少ないことがわかる。
【0179】
実施例61
アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのアルミニウム面上に0.8μmの膜厚を有するポリビニルアルコールの下引き層を形成し、この上に実施例1と同様の電荷発生層用の分散液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0180】
次いで、下記式
【0181】
【外76】
【0182】
で示されるスチリル化合物5gとポリカーボネート(重量平均分子量55,000)5gをテトラヒドロフラン40gに溶かした液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することにいよって、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
【0183】
作成した電子写真感光体の帯電特性と耐久特性を実施例1及び実施例37と同様の方法によって評価した。結果を示す。
V0:−705V、E1/2:1.62lux・secΔVD:−5V、ΔVL:+5V
【0184】
実施例62
実施例29と同様の電荷発生層用の分散液を用いた他は、実施例61と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を示す。
V0:−710V、E1/2:1.13lux・secΔVD:−10V、ΔVL:+10V
【0185】
実施例63
アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのアルミニウム面上に0.5μmの膜厚を有するポリビニルアルコールの下引き層を形成し、この上に実施例11と同様の電荷発生層用分散液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0186】
次いで、下記式
【0187】
【外77】
【0188】
で示されるトリアリールアミン化合物5gとポリカーボネート(重量平均分子量55,000)5gをテトラヒドロフラン40gに溶かした液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が21μmの電荷輸送層を形成した。
【0189】
作成した電子写真感光体の帯電特性と耐久特性を実施例1及び実施例37と同様の方法によって評価した。結果を示す。
V0:−720V、E1/2:1.07lux・secΔVD:0V、ΔVL:+15V
【0190】
実施例64
実施例22と同様の電荷発生層用の分散液を用いた他は、実施例63と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を示す。
V0:−725V、E1/2:1.57lux・secΔVD:0V、ΔVL:+10V
【0191】
実施例67
実施例8と同様にして電荷発生層まで形成した。2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン5gとポリ−4,4′−ジオキシジフェニル−2,2−プロパンカーボネート(重量平均分子量300,000)5gをテトラヒドロフラン50gに溶解した液を上記電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0192】
作成した電子写真感光体の帯電特性を実施例1と同様の方法で評価した。ただし帯電は正帯電とした。結果を示す。
V0:+700V、E1/2:2.55lux・sec
【0193】
実施例68
実施例23と同様の電荷発生層用の分散液を用いた他は実施例67と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を示す。
V0:+710V、E1/2:2.75lux・sec
【0194】
実施例71
アルミニウム支持体上にメトキシメチル化ナイロン(重量平均分子量30,000)4.5gとアルコール可溶性共重合ナイロン(重量平均分子量25,000)9.5gをメタノール90gに溶解した液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。
【0195】
次に、顔料例(10)−1の顔料4.5gをシクロヘキサノン95gにポリビニルブチラール(ブチラール化度63モル%、重量平均分子量35,000)2.2gを溶かした液に加え、サンドミルで24時間分散した。この分散液を下引き層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0196】
次いで、下記式
【0197】
【外78】
【0198】
で示されるアミン化合物4gとポリカーボネート(重量平均分子量40,000)5gをクロロベンゼン40gに溶解した液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって膜厚が24μmの電荷輸送層を形成し、実施例71の電子写真感光体を作成した。
【0199】
作成した電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。結果を表5に示す。
【0200】
実施例72〜86、91〜106
顔料例(10)−1の顔料に代えて、表5に示される顔料を用いた他は、実施例71と同様にして実施例72〜86、91〜106の電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表5に示す。
【0201】
【表5】
【0202】
比較例11〜14
顔料例(10)−1の顔料に代えて、下記式で示される比較顔料11〜14を用いた他は、実施例71と同様にして比較例11〜14の電子写真感光体を作成し、評価した。結果を表6に示す。
【0203】
【外79】
【0204】
【表6】
【0205】
これらの評価結果から、本発明の電子写真感光体はいずれも十分な帯電能と優れた感度特性を有していることがわかる。
【0206】
実施例109〜119、122〜132
実施例71,72,74,76〜80,84〜86,91,92,94,97〜99及び101〜105で作成した電子写真感光体を用いた他は、実施例37と同様にして評価を行った。結果を表7に示す。
【0207】
【表7】
【0208】
比較例15〜18
比較例11〜14で作成した電子写真感光体を実施例109と同様にして評価した。結果を表8に示す。
【0209】
【表8】
【0210】
これらの結果から、本発明の電子写真感光体は繰り返し使用時の電位変動が少ないことがわかる。
【0211】
実施例135
アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのアルミニウム面上に、膜厚0.5μmのポリビニルアルコールの下引き層を形成した。
【0212】
下引き層の上に実施例97と同様の電荷発生層用の分散液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0213】
次に、下記式
【0214】
【外80】
【0215】
で示されるスチリル化合物5gとポリカーボネート(重量平均分子量40,000)5gをテトラヒドロフラン40gに溶解した液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が23μmの電荷輸送層を形成した。
【0216】
作成した電子写真感光体の帯電特性と耐久特性を実施例71及び実施例109と同様の方法によって評価した。結果を示す。
V 0 :−705V、E 1/2 :1.31lux・secΔV D :−5V、ΔV L :+0V
【0217】
実施例136
アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのアルミニウム面上に0.3μmの膜厚を有するポリビニルアルコールの下引き層を形成した。
【0218】
下引き層の上に実施例85と同様の電荷発生層用の分散液をマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が、0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0219】
次に、下記式
【0220】
【外81】
【0221】
で示されるトリアリールアミン化合物5gとポリカーボネート(重量平均分子量30,000)5gをモノクロロベンゼン40gに溶解した液を電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成した。
【0222】
作成した電子写真感光体の帯電特性と耐久特性を実施例71及び実施例109と同様の方法によって評価した。結果を示す。
V0:−705V、E1/2:0.90lux・secΔVD:−5V、ΔVL:+0V
【0223】
実施例137
実施例105と同様の電荷発生層用の分散液を用いた他は、実施例136と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を示す。
V0:−705V、E1/2:0.87lux・secΔVD:−5V、ΔVL:+10V
【0224】
実施例138
電荷発生層と電荷輸送層の逆の順番で積層した他は、実施例71と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。ただし、帯電の極性は正とした。結果を示す。
V0:+690V、E1/2:1.62lux・sec
【0225】
実施例140
実施例77と同様にして電荷発生層まで形成した。2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン5gとポリカーボネート(重量平均分子量30,000)7gをテトラヒドロフラン50gに溶解した液を上記電荷発生層の上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0226】
作成した電子写真感光体の帯電特性を実施例71と同様にして評価した。ただし、帯電の極性は正とした。結果を示す。
V0:+695V、E1/2:1.82lux・sec
【0227】
実施例141
実施例91と同様の電荷発生層用の分散液を用い、電荷輸送層の膜厚を24μmとした他は、実施例140と同様にして電子写真感光体を作成し、評価した。結果を示す。
V0:+705V、E1/2:1.77lux・sec
【0228】
実施例142
顔料例(10)−10の顔料0.6gをシクロヘキサノン9.5gに加え、ペイントシェイカーで10時間分散した。この分散液に実施例136で用いたのと同じ電荷輸送物質5.2gとポリカーボネート(重量平均分子量60,000)5gをテトラヒドロフラン40gに溶解した液を加え、更に1.5時間振とうした。調製した塗布液をアルミニウム支持体上にマイヤーバーで塗布し、乾燥することによって、膜厚が20μmの感光層を形成した。
【0229】
作成した電子写真感光体の帯電特性を実施例71と同様にして評価した。ただし、帯電の極性は正とした。結果を示す。
V0:+700V、E1/2:1.51lux・sec
【0230】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、感光層に特定の構造を有するアゾ顔料を含有することにより、感光層内部における電荷キャリアの発生効率ないしは注入効率のいずれか一方あるいは双方が改善され、感度や繰り返し使用時の電位安定性に優れた特性が得られるという顕著な効果を奏する。また、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に装着して同様に優れた効果的を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す図。
Claims (9)
- 支持体及び該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該感光層が、下記式(2)で示されるアゾ顔料:
【外1】
(式(2)中、Arは
【外2】
から選ばれる何れかを示し、Cpはフェノール性水酸基を有するカプラー残基を示し、該Cpの少なくともひとつは下記式(1)で示される有機基:
【外3】
(式(1)中、X1は式中のベンゼン環と結合して置換もしくは無置換の芳香族炭化水素環基または置換もしくは無置換の複素環基を形成するのに必要な基を示し、Bは同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基及び置換もしくは無置換のアルコキシ基から選ばれる何れかを示し、R1及びR2は同一または異なって、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基及び置換もしくは無置換の、R1とR2が結合して式中の窒素原子を環内に含む環状アミノ基を形成するための基から選ばれる何れかを示し、Z1は酸素原子及び硫黄原子から選ばれる何れかを示し、k1は0または1を示し、Aは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルケニレン基、
【外4】
から選ばれる何れかを示し、R3は置換もしくは無置換のアルキレン基を示し、k2は0または1を示す。但し、k1とk2とが同時に0であることはない。)
である。)
を含有することを特徴とする電子写真感光体。 - 前記式(1)中のR1が水素原子である請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 前記式(1)中のR2が置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基及び置換もしくは無置換のアリール基から選ばれる何れかである請求項4に記載の電子写真感光体。
- 前記式(1)中のR2が置換もしくは無置換のアリール基である請求項5に記載の電子写真感光体。
- 前記式(1)中のR2が置換もしくは無置換のフェニル基である請求項6に記載の電子写真感光体。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくともひとつの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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