以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサ
まず、図1に示すように、本発明の一実施形態に係るセラミック部品の製造方法により製造される積層セラミックコンデンサ2について説明する。積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。
交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数百μmのものが一般的である。特に本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.6〜5.6mm、好ましくは0.6〜3.2mm)×横(0.3〜5.0mm、好ましくは0.3〜1.6mm)×厚み(0.1〜1.9mm、好ましくは0.3〜1.6mm)程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。まず、図2(A)に示す重合体層22が形成された基材フィルム20から成る剥離フィルム25を準備する。
剥離フィルム25における基材フィルム20は、図2(A)において紙面に垂直な方向に細長い形状を有し、その長手方向に垂直な横幅W0は、特に限定されないが、好ましくは100〜500mmである。基材フィルム20の表面に形成してある重合体層22の横幅W2は、基材フィルム20の横幅W0よりも、2×W1ほど短い。
基材フィルム20の表面において、その両側には、重合体層22が形成されていない未形成部分24が、略同じ横幅W1で長手方向に沿って形成してある。横幅W1は、特に限定されないが、好ましくは3〜15mmである。この剥離フィルム25の詳細と製造方法については後述する。
本実施形態では、重合体層22が形成してある側の剥離フィルム25の表面に、図2(A)に示すように、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシート(セラミック部品シート)10aを、たとえばドクターブレード法などの方法で形成する。
図2(A)では、グリーンシート10aの横幅W3は、重合体層22の横幅W2よりも小さく形成してあるが、横幅W2よりも大きく形成しても良い。すなわち、グリーンシート10aの両端部が未形成部分24の表面に位置するように構成しても良い。グリーンシート10aの厚みは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜2μmである。
グリーンシート10aを構成する誘電体塗料(グリーンシート用塗料)は、たとえば誘電体原料(セラミック粉体)と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系塗料で構成される。
誘電体原料としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。誘電体原料は、通常、平均粒子径が0.4μm以下、好ましくは0.1〜0.3μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダ樹脂としては、特に限定されないが、たとえばエチルセルロース、アクリル樹脂、ブチラール系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体などが用いられる。これらのうち、ブチラール系樹脂、具体的にはポリビニルブチラール系樹脂を用いることが好ましい。
ブチラール系樹脂を用いることによって、セラミックグリーンシート10aの機械的強度を高くすることができる。また、この場合、重合体層22の原料としてアルカン(ジオール)ジ(メタ)アクリレートモノマーを用いることによって、セラミックグリーンシート10aの剥離性を一層優れたものとすることができる。
ポリビニルブチラール系樹脂の重合度は、好ましくは1000〜1700であり、より好ましくは1400〜1700である。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤としては、たとえばテルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸ベンジルなどの有機溶剤を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
誘電体塗料中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電除剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されても良い。
図2(B)に示すように、グリーンシート10aの表面には、図1に示す内部電極層12となる所定パターンの電極層12aを、たとえば印刷法あるいは転写法により形成する。電極層12aの厚さは、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.1〜1.0μm程度である。電極層12aは、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
電極層12aを構成する電極塗料は、たとえば各種導電性金属や合金からなる導電体材料、あるいは焼成後に上記した導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、またはレジネート等と、有機ビヒクルとを混練して調製する。電極層12aに用いられる有機ビヒクルとしては、特に限定されず、誘電体塗料の有機ビヒクルと同様である。
電極塗料を製造する際に用いる導体材料としては、NiやNi合金さらにはこれらの混合物を用いる。このような導体材料は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導体材料の平均粒子径は、通常、0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いればよい。
次に、図2(B)に示す電極層12aが形成されたグリーンシート10aを、剥離フィルム25から引き剥がし、これらを多数積層し、得られた積層体を所定のパターンで切断してグリーンチップとする。その後に、グリーンチップは、脱バインダ処理、焼成処理が行われ、そして、誘電体層を再酸化させるため、熱処理が行われ、図1に示す素子本体4が得られる。その後に、端子電極6および8を形成して、図1に示す積層セラミックコンデンサ2が得られる。
剥離フィルム
次に、図2(A)および図2(B)に示す剥離フィルム25について詳細に説明する。前述したように、剥離フィルム25は、基材フィルム20の片側表面に、重合体層22が形成してある。
基材フィルム20としては、合成樹脂からなるものが用いられる。合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂などのアクリル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましく、力学的性質、透明性、コストなどを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
基材フィルム20の厚みt0は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。厚みt0(μm)が、この範囲である場合に、剥離フィルム25の寸法安定性等の物理特性が損なわれず、しかも、剥離フィルム25の単位面積当たりの製造コストの増大を抑制することができる。
基材フィルム20は、剥離フィルム25の機械的強度を十分に高める観点から、透明性を悪化させない程度のフィラー(充填剤)を含有させることが好ましい。フィラーは、特に限定されるものではなく、たとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、酸化チタン、フュームドシリカ、アルミナ、有機粒子などを用いることができる。
重合体層22は、(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分とを含有しており、重合体層22の基材フィルム20側とは反対側の表面(グリーンシート10a側)には、(メタ)アクリレート重合体成分を含む層の表面の一部をシリコーン重合体成分が被覆している。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびそれに対応するメタクリロイルを意味する。
(メタ)アクリレート重合体成分とは、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリレートオリゴマーの重合体(硬化物)で構成される成分をいい、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはアクリレートオリゴマーを重合することによって得ることができる。(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルプロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
シリコーン重合体成分とは、(メタ)アクリロイル基および/またはビニル基で変性された変性シリコーンオイルの重合体で構成される成分をいい、該変性シリコーンオイルを重合することによって得ることができる。変性シリコーンオイルの好ましい例としては、片末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、片末端ビニル変性シリコーンオイル、両末端ビニル変性シリコーンオイル、側鎖ビニル変性シリコーンオイル、両末端側鎖ビニル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。また、必要に応じて、上記変性シリコーンオイルを数種類選択してブレンドしてもよい。
重合体層22の形成時において、変性シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基および/またはビニル基と(メタ)アクリレート成分とが反応することによって、変性シリコーンオイルが(メタ)アクリレート重合体に固定され、シリコーン重合体成分を含む膜を形成することができる。また、上記反応の際に、変性シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基および/またはビニル基の一部同士が反応してもよい。本実施形態の剥離フィルムでは、未反応のシリコーンオイルを非常に少なくすることができ、誘電体ペースト等を塗布した場合にハジキを十分に低減することができる。一方、非反応性のシリコーンオイルを用いると、誘電体ペースト等を塗布したときにハジキが発生しやすい。これは、非反応性シリコーンオイルは重合体層において固定化されていないので、保存中にシリコーンオイルが表面を移動したり、ロール状に巻かれた場合に剥離層が形成されていない面に転写したりして、巨視的なレベルで重合体層の表面が不均一になるためと考えられる。
重合体層22の厚み(μm)は、好ましくは0.5〜3μmであり、より好ましくは1〜2μmであり、さらに好ましくは1〜1.5μmである。該厚み(μm)が0.5μm以下の場合、剥離フィルム25の表面14aにおける平滑性が損なわれる傾向にあり、表面14にグリーンシート10aを形成した場合に、ピンホールや厚みのばらつきが発生し易くなる傾向がある。一方、該厚み(μm)が3μmを超える場合、基材フィルム20が薄いときは剥離フィルム25がカールする傾向がある。
重合体層22における(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分との含有量は、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対して、シリコーン重合体成分が0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜2質量部であることがより好ましく、0.1〜0.2質量部であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対するシリコーン重合体成分の含有量が0.001質量部未満の場合、重合体層22の表面(グリーンシート10a側)において十分優れた剥離性が損なわれる傾向がある。一方、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対するシリコーン重合体成分の含有量が10質量部を超える場合、セラミックペーストや電極ペーストを重合体層22の表面(剥離面)に塗布した場合に、ペーストがはじかれて均一な厚みに塗布することが困難になる傾向がある。
重合体層22の密度d(g/cm3 )は、好ましくは0.95〜1.25g/cm3 であり、より好ましくは1.0〜1.2g/cm3 であり、さらに好ましくは1.05〜1.15g/cm3 である。このような密度を有する重合体層22は、カールの発生を十分に抑制することができる。
基材フィルム20の表面に形成される重合体層22における単位面積当たりのシリコーン重合体成分の量(mg/m2 )は、10×b×t×dで計算することができる。この数式で計算されるシリコーン重合体成分の量は、好ましくは0.2〜6mg/m2 であり、より好ましくは0.2〜4mg/m2 であり、さらに好ましくは0.2〜3mg/m2 であり、特に好ましくは0.2〜2mg/m2 である。シリコーン重合体成分の量が多すぎると、誘電体ペーストを塗布した場合に十分優れた塗布性が損なわれる傾向がある。一方、シリコーン重合体成分の量が少なすぎると、十分優れた剥離性が損なわれる傾向がある。
重合体層22は、(メタ)アクリレート重合体成分およびシリコーン重合体成分以外に、シリカなどの無機粒子を含んでいてもよい。
重合体層22の一方の表面(グリーンシート10a側)は、凹凸が十分に低減されていること、すなわち平滑であることが好ましい。これによって、重合体層22の表面にセラミックグリーンシート10aや電極グリーンシートを形成した場合に、グリーンシートにおけるピンホールの発生を十分に抑制し、厚みのばらつきを十分に低減することができる。
重合体層22の表面の最大突起高さ(SRp)は、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以下である。該最大突起高さは、例えば、重合体層22を形成する際に、重合体層22の厚みを変えることによって調整することができる。最大突起高さ(SRp)は、JIS B0601に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて測定することができる。
重合体層22は、その表面に、(メタ)アクリレート重合体成分の硬化物を含む層の一部を被覆するシリコーン重合体成分を含む膜を有する。該膜によって被覆された部分と被覆されていない部分との割合は、重合体層22の形成時に、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの添加量を調製することによって、制御することができる。なお、表面の一部には、(メタ)アクリレート重合体成分が露出している。重合体層22の形成時に、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの使用比率を少なくすると、重合体層22の表面における(メタ)アクリレート重合体成分の露出量が多くなる。一方、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの使用比率を多くすると、重合体層22の表面における(メタ)アクリレート重合体成分の露出量が少なくなる。これによって、剥離フィルム25は、優れた剥離性と塗布性とを両立させることが可能となる。
剥離フィルムの製造方法
次に、本実施形態の剥離フィルム25の製造方法を以下に説明する。
まず、図3に示すように、図2(A)に示す剥離フィルム25における基材フィルム20となる幅広フィルム20bが巻回してあるロール20aを準備する。このロール20aに巻回してある幅広フィルム20bは、重合体層が形成される前のフィルムである。
ロール20aから巻き解された幅広フィルム20bは、塗布装置30に送られる。この塗布装置30は、グラビア塗布装置であり、図2(A)に示す重合体層22を形成するための塗布液22aが貯留してあるインクパン32を有する。そのインクパン32の上には、グラビアローラ34と、バックアップローラ36とが相互に近接して配置してあり、相互に逆方向に回転するようになっている。
図4に示すように、グラビアローラ34の外周面には、その回転軸方向に沿って複数(図示では3つ)の版面22bが所定間隔で形成してある。グラビアローラ34の版面22bには、図3に示す塗布液22aが付着し、余剰な塗布液をドクターブレードにて掻き落とし、バックアップローラ36の外周面に約半周ほど巻き付いて反転される幅広フィルム20bの表面に、塗布液22aを転写し、幅広フィルム20bの長手方向に沿って複数列(図示では3列)の塗布膜22cを形成する。
幅広フィルム20bの表面に形成された各塗布膜22cの間には、塗布膜22cが形成されていない未形成部分24aが形成される。また、幅広フィルム20bの表面において、幅方向の両端部にも、塗布膜22cが形成されていない未形成部分24bが形成される。
未形成部分24aの横幅W4は、図2(A)に示す剥離フィルム25における未形成部分24の横幅W1の約2倍である。また、図4に示す各塗布膜22cの横幅W2は、図2に示す重合体層22の横幅W2と同じである。幅広フィルム20bの表面において、幅方向の両側部に形成してある未形成部分24bの横幅W5は、図示する例では、未形成部分24aの横幅W4と同等以上の幅であるが、その横幅W4を図2(A)に示す横幅W1と同じにしても良い。その場合には、後述する幅広フィルム20bの切断工程において、幅広フィルム20bの両側に位置する部分では切断が不要となる。
塗布膜22cを構成するための塗布液は、たとえば次のようにして調整される。塗布液調製工程では、まず、互いに相溶しない(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとを準備する。「互いに相溶しない」とは、それぞれの成分を混合した時に相分離が生じたり白濁したりして、均一な溶液とならないことを意味する。
(メタ)アクリレート成分とは、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリレートオリゴマーを意味し、その好ましい例としては、A−NOD−N、A−DOD(以上、新中村化学工業社製、商品名)が挙げられる。変性シリコーンオイルの好ましい例としては、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426(以上、信越化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。これらを用いることによって、剥離面14aの凹凸を一層低減し平滑性に一層優れる剥離フィルム25を得ることができる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、下記一般式(2)で表わされるものを用いることが好ましい。変性シリコーンオイルは、(メタ)アクリロイル基および/またはビニル基で変性されたシリコーンオイルであり、下記一般式(3)または(4)で表わされるものを用いることが好ましい。
上記一般式(2)中、nは5〜20の整数を示す。
上記一般式(3)中、R3およびR4は、単結合または2価の炭化水素基を示し、mは1以上の整数を示す。R3およびR4は、炭素数1〜10程度のポリメチレン基、または炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましい。また、mは10〜1000程度であることが好ましい。
上記一般式(4)中、R5およびR6は、単結合または2価の炭化水素基を示し、kは1以上の整数を示す。R5およびR6は、炭素数1〜10程度のポリメチレン基、または炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましい。また、kは10〜1000程度であることが好ましい。
光重合開始剤としては、ラジカル系光開始重合剤を用いることができる。紫外線を使用する場合、例えば、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン等を用いればよい。市販品としては、IRGACURE184、IRGACURE127、IRGACURE907、IRGACURE379、DAROCURE1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)を用いることができる。
有機溶剤としては、(メタ)アクリレート成分および変性シリコーンオイルの双方を溶解させることができる溶剤を用いる。これによって、(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分とが均一に溶解した、重合体層22を形成するための塗布液を得ることができる。均一でない塗布液では表面の特性が場所によって不均一となる傾向がある。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンおよびメチルエチルケトン等が挙げられる。
上述の有機溶剤150質量部に対し、例えば、(メタ)アクリレート成分を50〜150質量部、変性シリコーンオイルを0.005〜10質量部、光重合開始剤を1〜10質量部配合し、攪拌混合することによって、塗布液を調製することができる。
(メタ)アクリレート成分に対する変性シリコーンオイルの量が過剰であると、重合体層22中に未反応成分が残存して、誘電体ペーストに対する十分優れた塗布性が損なわれる傾向がある。一方、(メタ)アクリレート成分に対する変性シリコーンオイルの量が少なすぎると、十分優れた剥離性が損なわれる傾向がある。
図3に示すように、塗布膜22cが形成された幅広フィルム20bは、次に、乾燥装置40に送られて乾燥処理される。乾燥条件については、特に限定されないが、たとえば50〜150℃の温度で10秒間〜10分間乾燥して、有機溶剤を蒸発除去し、幅広フィルム20bの一表面上に前駆体層を形成する。
塗布液に含まれる(メタ)アクリレート成分の比重は、通常0.95〜1.5程度であり、シリコーンオイルの比重は通常0.95〜1.5程度である。すなわち、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルの比重はほぼ同等か、変性シリコーンオイルの方が、若干軽い傾向がある。また、(メタ)アクリレート成分よりも変性シリコーンオイルの方が、低い表面エネルギーを有する。ここで、複数種類の相溶しない成分を含有する塗布液の場合、エネルギー状態が低くなるように、各成分が移動する。
本実施形態の剥離液(塗布液)では、上述の通り、変性シリコーンオイルの方が比重が軽く且つ表面エネルギーが低い。したがって、前駆体形成工程で剥離液を幅広フィルム20bの一表面上に塗布した後、溶剤を乾燥除去すると、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーン成分とが相溶しないので、塗布膜22c内でシリコーンオイルの方が幅広フィルム20b側とは反対側の表面(剥離面となる面/実施形態ではグリーンシート側)に移動しやすい。
通常、変性シリコーンオイルの方が、(メタ)アクリレート成分よりも光重合開始剤を溶解し難い傾向がある。溶剤を除去した剥離液に紫外線照射すると反応開始剤によりラジカルが発生して、(メタ)アクリレート成分はラジカル化され、(メタ)アクリレート成分はラジカル重合する。また、シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基および/またはビニル基もラジカル重合する。
本実施形態では、図3に示すように、塗布膜22cが乾燥された後に、幅広フィルム20bは、重合装置50に送られて、塗布膜22cの重合処理が行われる。重合装置50では、幅広フィルム20bの一表面上に形成された前駆体層に光や電子線を照射して、重合体層22(図5参照)を形成する。
光としては、紫外線を用いることが好ましい。紫外線の光源としては水銀ランプ、メタルハライドランプ等の市販のものを用いることができ、前駆体層の厚みに応じて紫外線の照射量を調製する。これによって、前駆体層を十分に硬化させることができる。また、ラジカル重合時の酸素阻害を防止するために窒素雰囲気下で紫外線照射することも好ましい。
紫外線の照射によって、前駆体層に含まれる(メタ)アクリレート成分および変性シリコーンオイルがラジカル重合する。(メタ)アクリレート成分は重合することによって、(メタ)アクリレート重合体成分となり、変性シリコーンオイルは、シリコーン重合体成分となる。また、場合によって、変性シリコーンオイルの反応基((メタ)アクリロイル基および/またはビニル基)と(メタ)アクリレートモノマーの反応基((メタ)アクリロイル基)とが反応する。このように重合反応が進行することによって、前駆体層から重合体層22を得ることができる。
剥離フィルムの剥離性は、(メタ)アクリレート成分の種類、変性シリコーンオイルの分子量、反応基の種類、変性の方法(両末端、方末端、側鎖の組み合わせ)等で調整することができる。(メタ)アクリレート重合体成分を含む層の表面において、シリコーン重合体成分を含む膜が、該層の表面を被覆する割合(被覆率)によっても、剥離性を調整することができる。一般的にはシリコーン重合体成分による被覆率が高い方が剥離は軽くなり、被覆率が低い方が剥離は重くなる。
被覆率は、重合体層22の表面において、純水の接触角を測定することによって求めることができる。以下にその理由を説明する。本発明では相溶しない(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとを用いているために、有機溶剤を乾燥除去すると、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとが分離し、変性シリコーンオイルが(メタ)アクリレート成分の層を被覆することとなる。ここで、単位面積におけるシリコーンオイル量が多ければ多いほど、重合体層22におけるシリコーン重合体成分による被覆率が1(百分率で表すと100%)に近くなる。
表面に液体を存在させたときの関係としてはヤングの式がある。θを接触角、γ1 を固体の表面張力、γ2 を液体個体間の界面張力、γL を液体の表面張力をしたときに以下の関係式が示される。
γ1=γL×cosθ+γ2
ここで、(メタ)アクリレート重合体成分のみの表面に液体を存在させたとき、接触角をθA、(メタ)アクリレート重合体成分の表面張力をγA、液体−(メタ)アクリレート重合体間の界面張力をγALとすると以下の関係式が示される。
γA=γL×cosθA+γAL・・・(i)
次に、シリコーン重合体成分で表面が覆い尽くされた面に液体を存在させた場合の接触角をθS 、シリコーン重合体成分の表面張力をγS 、液体−シリコーン重合体成分間の界面張力をγSLとすると以下の関係式(ii)が示される。
γS=γL×cosθS+γSL・・・(ii)
(メタ)アクリレート重合体成分の層の一部がシリコーン重合体成分で被覆された面(シリコーン重合体成分で被覆されていないところは(メタ)アクリレート重合体成分が露出している)に液体を存在させたとき、接触角をθX、重合体成分の表面張力をγX、液体―重合体成分間の表面張力をγXLとすると以下の関係式(iii)が示される。
γX=γL×cosθX+γXL・・・(iii)
重合体層22の表面全体における(メタ)アクリレート重合体成分が露出している面積の割合(露出率)をa、変性シリコーンオイルで被覆された面積の割合(被覆率)をs(単位面積における変性シリコーンオイルで被覆された面積÷単位面積)とし、a+s=1とする。γXにおけるγAとγSの寄与はその面積割合に比例する。つまり、下記式(iv)の関係が成立する。
γX=a×γA+s×γS・・・(iv)
γXLも同様に考えると、下記式(v)の関係が成立する。
γXL=a×γAL+s×γSL・・・(v)
上記式(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)より下記式(vi)が導き出せる。
cosθX=a×cosθA+s×cosθS=(1−s)×cosθA+s×cosθS・・・(vi)
上記式(vi)によって、θA、θS、θXからシリコーン重合体成分による被覆率sを特定できる。また、基準量における被覆率がわかっていれば、任意のシリコーン重合体成分による被覆率は計算からもとめることが可能である。特にシリコーン重合体成分の量が多い場合、接触角測定値の誤差に隠れて被覆率が1(百分率で表すと100%)になってしまうことがある。このような場合は次のようにして被覆率を特定できる。例えば、1m2 当たり1mgのシリコーン重合体成分が存在するものと考え、シリコーン重合体成分による被覆率をs0とし、(メタ)アクリレート重合体の露出率をa0とする(a0+s0=1)。
1m2 当たり任意量n(mg)のシリコーン重合体成分で被覆されたときの被覆率をsn、(メタ)アクリレート重合体成分の露出率をanとする(an+sn=1)。
ここで、an=a0 n=(1−s0)n
であり、sn=1−an=1−(1−s0)nとなる。
また、n(mg)のときの接触角をθNとすると、
cosθN=(1−s0)n×cosθA+{1−(1−s0)n}×cosθS
となり、s0 を求めることもできる。なお、nは(メタ)アクリレート重合体成分の密度をd(g/cm3 )、厚みをt(μm)、重合体層における変性シリコーンオイルの割合をb(質量%)としたとき、n=10×b×t×dとなる。
シリコーン重合体成分による被覆率としては、0.33〜0.99999(百分率で表すと33%〜99.999%)が好ましく、0.55〜0.98(百分率で表すと55〜98%)がより好ましい。
塗布膜22cが重合処理されると、塗布膜22cは、図5に示すように、幅広フィルム20bの表面で重合体層22となる。複数列の重合体層22が形成された幅広フィルム20bは、図3に示すように、ロール状に巻回されて切断前ロール20cと成る。切断前ロール20cは、たとえば別の場所に搬送されて、切断処理が行われる。切断処理に用いられる切断装置の一例を図5および図6に示す。
図5および図6を例にとると、本実施形態の切断装置60は、上刃ローラ62および下刃ローラ64を有する。上刃ローラ62には、その回転軸方向に沿って4つの上刃66が所定間隔で装着してある。上刃66は、取付具67により、上刃ローラ62に対して着脱自在に装着してある。
上刃ローラ62の上刃66は、下刃ローラ64の段差状の下刃68に噛み合うようになっている。図5に示すように、図3に示す切断前ロール20cから巻き解された幅広フィルム20bは、切断装置60における上刃ローラ62と下刃ローラ64との間に送られる。切断装置60では、上刃ローラ62と下刃ローラ64とが相互に逆方向に回転し、幅広フィルム20bにおける未形成部分24a,24bに対応して設けられた上刃66と下刃68との組合せにより、各未形成部分24a,24bが長手方向に沿って切断される。
幅広フィルム20bにおける各重合体層22の間の未形成部分24aに対応して設けられた上刃66と下刃68との組合せは、未形成部分24aのおよそ中央を横幅が約1/2になるように切断する。また、幅広フィルム20bの両側に設けられた未形成部分24bに対応して設けられた上刃66と下刃68との組合せは、未形成部分24bを、各剥離フィルム25における重合体層22の両側に同じ幅の未形成部分24が残るように切断する。切断後に発生した切断残り片24cは、廃棄処分またはリサイクル処理される。
切断処理後に、複数(図示では、3つ)の剥離フィルム25が得られ、各剥離フィルム25は、ロール状に巻回されて保管あるいは搬送され、その後の処理に用いられる。その後の処理としては、たとえば図2(A)および図2(B)に示すような積層セラミックコンデンサの製造工程が例示される。
ただし、本実施形態の剥離フィルム25の用途は、上述した実施形態に限定されず、粘着剤の保護フィルムなどの用途に用いられる。
本実施形態による剥離フィルム25の製造方法によれば、剥離層と平滑化層を個別に形成する必要がなく、一種類の剥離液(塗布液)を用いて、幅広フィルム20bに重合体層22を複数列で形成することができる。しかも本実施形態の方法では、剥離性および塗布性に十分優れる剥離フィルム25を、一度に多量に容易に製造することができる。
また本実施形態に係る剥離フィルム25の製造方法によれば、図5に示すように、重合体層22が形成されていない未形成部分24a,24bに沿って切断を行うために、幅広フィルム20bから重合体膜22の脱落を生じさせることなく、複数の剥離フィルム25を形成することができる。
なお、一般的な方法では、重合体層22が形成された部分で幅広フィルムを切断するために、重合体層の脱落は切断刃の交換直後に起こりやすいという課題があった。たとえば、上下の刃同士は事前にかみ合わせ部分でお互いに力をかけあうようになっているが、刃の交換(組み付け)直後では刃先の馴染みはややかけている。
そのため、交換直後の刃ではフィルムにかかるせん断力が若干ではあるが滑らかにかからない傾向がある。これは、上下の刃のかみ合わせ部の微妙な角度がフィルムへのせん断力に影響するからである。せん断力は集中した方がきれいに切れるのだが、交換直後の刃では角度が微妙にずれている傾向があり、そのためせん断力が集中しない場合がある。せん断力が集中しないと過度の応力が重合体膜にかかり、重合体膜の脱落が起こると考えられる。特に、重合体膜が厚い場合には、重合体膜の脱落が生じやすい。
本実施形態では、重合体層22が形成されていない未形成部分24a,24bに沿って切断を行うために、重合体層22が厚い場合(たとえば0.5〜3μmであり、表面の平滑性に優れる)でも、幅広フィルム20bから重合体膜22の脱落を生じさせることなく、複数の剥離フィルム25を形成することができる。
本実施形態に係るセラミックグリーンシートの製造方法によれば、凹凸が十分に低減されるとともに、優れた剥離性と塗布性とを兼ね備える剥離フィルム25を用いていることから、セラミックグリーンシート10aや電極グリーンシートの形成が容易になるとともに、各グリーンシートにおけるピンホールの発生や各グリーンシートの厚みのばらつきを十分に抑制することができる。また、製造工程の簡略化を図りつつ製造コストを低減することが可能となる。
さらに本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法では、上述の特徴を有する剥離フィルム25を有するセラミックグリーンシート10aを用いているため、不良品の発生を十分に抑制し、高い製造歩留まりで高品質の積層セラミックコンデンサ2を製造することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、塗布膜22cの形成方法は、前述したグラビア塗布法に限らず、リバースコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等を用いて塗布してもよい。また、切断装置としては、図5および図6に示す装置に限定されず、その他の切断装置であっても良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
<予備実験>
原料として、下記式(5)で表されるアクリレートモノマー(比重:0.99)、下記式(6)で表される両末端がアクリロイル基で変性された変性シリコーンオイル(比重:0.98)、および反応開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを準備した。下記式(5)のアクリレートモノマー100質量部と下記式(6)の変性シリコーンオイル5質量部をビーカーで攪拌して混合液を調整したところ、混合液は白濁分離した。このことから、アクリレートモノマーと変性シリコーンオイルが相溶しないことが確認された。さらに、この混合液にトルエン125質量部を加えると透明になることを確認した。その後、以下のようにして剥離フィルムを作製した。
上記式(5)のアクリレートモノマー100質量部に対して、上記式(6)の変性シリコーンオイル0.186質量部、トルエン150質量部を金属製容器に入れて、攪拌混合し、無色透明の溶液を得た。
上記溶液に、反応開始剤を2.5質量部加えて塗布液を調製した。調製した塗布液を、幅300mmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅広フィルム、厚み38μm)に塗布した。塗工はグラビア方式を使用し、グラビアローラに溝を掘っていない部分を作ることで重合体層22の未形成部分24a,24bができるようにした。
図6に示すように、幅広フィルム20bの両側には横幅W5が10mmの未形成部24bを形成し、その内側に、横幅W2が80mmの塗布膜22cを、3箇所形成し、それらの塗布膜22cの間には、横幅W4が20mmの未形成部24aを形成した。
これらの塗布膜22cが形成してある幅広フィルム20bを図3に示す乾燥装置40に送り込み、加熱温度70℃の熱風で30秒間、乾燥してトルエンを蒸発させた後、紫外線により重合するため紫外線照射装置50に送り込み、酸素濃度100ppmの窒素雰囲気下にて紫外線を照射した。その結果、幅広フィルム20bの表面には、厚みが1μmの重合体層22が形成された。
次に、この幅広フィルム20bを、図5および図6に示す切断装置60に送り込み、横幅W4が20mmの未形成部分24aの中央を切断して、3本の剥離フィルム25を得て、ロール状に巻回した。中央のロールを試験用とした。重合体層22の厚みは、分光光度計(日本分光(株)製、商品名:V−670)を用いて測定した。紫外線照射は、積算光量を250mJ/cm2とした。
<SRpおよび水の接触角の測定>
得られた剥離フィルムの最大突起高さ(SRp)および水の接触角を以下の手順で評価した。基材フィルム側とは反対側の重合体層表面(剥離面)の最大突起高さ(SRp)を測定した。測定は、JIS B0601に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて行った。SRpは0.05μmであった。
次に、室温(20℃)において、重合体層の剥離面上に純水を滴下し、剥離面における純水の接触角を測定した。測定結果は103°であった。
<誘電体スラリーの調製>
BaTiO3 系セラミック粉末、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)、および溶媒としてメタノールを準備した。次に、該セラミック粉末100質量部に対して、10質量部の有機バインダと、165質量部の溶媒とを、ボールミルで混練してスラリー化することによって誘電体スラリーを得た。
<はじき性の評価>
上述の通り作製した剥離フィルム25の重合体層22上に、調製した誘電体スラリーを、それぞれドクターブレード法によって所定厚みで長さ3000mに亘って幅90mmで塗布して、ピンホールを評価した。ピンホール検出機にてピンホールの数を検査した。ピンホールは観察されなかった。
比較例1
未形成部24a,24bを設けない以外は実施例1と同じようにして剥離フィルムを形成した。この比較例1に係る剥離フィルムの表面に、90mm幅で3000mの長さにわたり誘電体スラリーを塗布し、実施例1と同様にして、ピンホール検出器にてピンホールを検出した結果、4箇所のピンホールを検出した。ピンホール箇所を解析したところ、重合体層の切断クズが検出された。
実施例2
上記式(5)のアクリレートモノマー100質量部に対して、上記式(6)の変性シリコーンオイル0.093質量部、およびトルエン150質量部を金属製容器に入れて、攪拌混合し、無色透明の溶液を得た以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
SRpは0.05μmで接触角は99°であった。また、同様にはじき性を評価したがピンホールは観察されなかった。
比較例2
未形成部24a,24bを設けない以外は実施例2と同じようにして剥離フィルムを形成した。この比較例2に係る剥離フィルムの表面に、90mm幅で3000mの長さにわたり誘電体スラリーを塗布し、実施例2と同様にして、ピンホール検出器にてピンホールを検出した結果、3箇所のピンホールを検出した。ピンホール箇所を解析したところ、重合体層の切断クズが検出された。
実施例3
実施例2の塗布液を使用して、重合体層の厚みが2μmになるようにした以外は実施例2と同様に剥離フィルムを作製した。SRpは0.05μmで、接触角は103°であった。また、同様にはじき性を評価したがピンホールは観察されなかった。
比較例3
未形成部24a,24bを設けない以外は実施例3と同じようにして剥離フィルムを形成した。この比較例3に係る剥離フィルムの表面に、90mm幅で3000mの長さにわたり誘電体スラリーを塗布し、実施例3と同様にして、ピンホール検出器にてピンホールを検出した結果、7箇所のピンホールを検出した。ピンホール箇所を解析したところ、重合体層の切断クズが検出された。