以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を場合により省略する。
図1は、本発明の剥離フィルムの好適な実施形態を模式的に示す断面図である。剥離フィルム10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方面上に設けられる重合体層14とを有する。
重合体層14は、(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分とを含む重合体と酸とを含有しており、好ましくは表面14aでは、(メタ)アクリレート重合体成分を含む層の表面の一部をシリコーン重合体成分が被覆している。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
(メタ)アクリレート重合体成分とは、(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(メタ)アクリレートオリゴマーの重合体(硬化物)で構成される成分をいい、(メタ)アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマーを重合することによって得ることができる。(メタ)アクリレートモノマーの好ましい例としては、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルプロパンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
シリコーン重合体成分とは、(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基で変性された変性シリコーンオイルの重合体で構成される成分をいい、該変性シリコーンオイルを重合することによって得ることができる。変性シリコーンオイルの好ましい例としては、片末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、両末端側鎖(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル、片末端ビニル変性シリコーンオイル、両末端ビニル変性シリコーンオイル、側鎖ビニル変性シリコーンオイル、両末端側鎖ビニル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。また、必要に応じて、上記変性シリコーンオイルを数種類選択してブレンドしてもよい。
酸としては、ヒドロキシル基と可逆的にエステル結合を形成しうる酸が用いられ、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸も使用することができるが、溶剤への溶解性が良好な有機酸が好ましく使用される。有機酸としては、カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、スルホン酸等が挙げられる。これらの中でも好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸または脂肪酸が用いられる。アルキルベンゼンスルホン酸としては、たとえばパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が用いられ、また脂肪酸としては、たとえばステアリン酸、パルミチン酸等が用いられる。これらの酸の中でも特にpKa(解離定数の常用対数表示)が−3〜5の酸が好ましく用いられる。これらの酸の1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合体層14の形成時において、変性シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基と(メタ)アクリレート成分とが反応することによって、変性シリコーンオイルが(メタ)アクリレート重合体に固定され、シリコーン重合体成分を含む膜を形成することができる。また、上記反応の際に、変性シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基の一部同士が反応してもよい。本実施形態の剥離フィルムでは、未反応のシリコーンオイルを非常に少なくすることができ、セラミックペースト等を塗布した場合にハジキを十分に低減することができる。一方、非反応性のシリコーンオイルを用いると、セラミックペースト等を塗布したときにハジキが発生しやすい。これは、非反応性シリコーンオイルは重合体層において固定化されていないので、保存中にシリコーンオイルが表面を移動したり、ロール状に巻かれた場合に剥離層が形成されていない面に転写したりして、巨視的なレベルで重合体層の表面が不均一になるためと考えられる。
重合体層14の厚みt(μm)は、好ましくは0.5〜3μmであり、より好ましくは1〜2μmであり、さらに好ましくは1〜1.5μmである。該厚みt(μm)が0.5μm以下の場合、剥離フィルム10の表面14aにおける平滑性が損なわれて、表面14aにグリーンシートを形成した場合に、ピンホールや厚みのばらつきが発生し易くなる傾向がある。一方、該厚みt(μm)が3μmを超える場合、基材フィルムが薄いときは剥離フィルム10がカールする傾向がある。
重合体層14における(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分との含有量は、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対して、シリコーン重合体成分が0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜2質量部であることがより好ましく、0.1〜0.2質量部であることがさらに好ましい。(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対するシリコーン重合体成分の含有量が0.001質量部未満の場合、重合体層14の表面14aにおいて剥離性が損なわれる傾向がある。一方、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対するシリコーン重合体成分の含有量が10質量部を超える場合、セラミックペーストや電極ペーストを重合体層14の表面(剥離面)14aに塗布した場合に、ペーストがはじかれて均一な厚みに塗布することが困難になる傾向がある。
また、重合体層における酸の含有量は、酸の種類により適宜決めればよく、強酸であれば含有量は少なくてもよく、弱酸では多くすればよい。例えば、pKa(解離定数の常用対数表示)が−1以下では(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対して0.005質量部〜0.5質量部程度の範囲で用いればよい。pKaが−1〜2では0.05質量部〜1質量部、pKaが2〜5では0.5質量部〜5質量部程度である。具体例として、パラトルエンスルホン酸であれば、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対して0.01質量部〜1質量部が好ましく、0.05質量部〜0.2質量部がより好ましい。ステアリン酸であれば、(メタ)アクリレート重合体成分100質量部に対して0.1質量部〜5質量部が好ましく、0.5質量部〜2質量部がより好ましい。酸の含有量が少ないと、シート相互間作用の向上が不十分になり、多く入れすぎると、セラミックペーストを塗布したときに、ハジキを発生させたり、剥離フィルムを構成する(メタ)アクリレート重合体成分を分解したりする。
重合体層14の密度d(g/cm3)は、好ましくは0.95〜1.25g/cm3であり、より好ましくは1.0〜1.2g/cm3であり、さらに好ましくは1.05〜1.15g/cm3である。このような密度を有する重合体層14は、カールの発生を十分に抑制することができる。
基材フィルム12の表面に形成される、重合体層14における単位面積当たりのシリコーン重合体成分の量(mg/m2)は、10×b×t×dで計算することができる(ここで、bは重合体層におけるシリコーン重合体成分の含有量(質量%)である)。この数式で計算されるシリコーン重合体成分の量は、好ましくは0.2〜6mg/m2であり、より好ましくは0.2〜4mg/m2であり、さらに好ましくは0.2〜3mg/m2であり、特に好ましくは0.2〜2mg/m2である。シリコーン重合体成分の量が多すぎると、セラミックペーストを塗布した場合に塗布性が損なわれる傾向がある。一方、シリコーン重合体成分の量が少なすぎると、剥離性が損なわれる傾向がある。
重合体層14は、(メタ)アクリレート重合体成分、シリコーン重合体成分および酸以外に、シリカなどの無機粒子を含んでいてもよい。
重合体層14の一方の表面14aは、凹凸が十分に低減されていること、すなわち平滑であることが好ましい。これによって、表面14a上にセラミックグリーンシートや電極グリーンシートが形成した場合に、グリーンシートにおけるピンホールの発生を十分に抑制し、厚みのばらつきを十分に低減することができる。
重合体層14の表面14aの最大突起高さ(SRp)は、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以下である。最大突起高さは、例えば、重合体層14を形成する際に、重合体層14の厚みtを変えることによって調整することができる。最大突起高さ(SRp)は、JIS B0601に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて測定することができる。
重合体層14は、(メタ)アクリレート重合体成分、シリコーン重合体成分および酸を含有し、好ましくは表面14aに、(メタ)アクリレート重合体成分の硬化物を含む層の一部を被覆するシリコーン重合体成分を含む膜を有する。該膜によって被覆された部分と被覆されていない部分との割合は、重合体層14の形成時に、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの添加量を調製することによって、制御することができる。なお、表面14aの一部には、(メタ)アクリレート重合体成分が露出している。重合体層14の形成時に、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの使用比率を少なくすると、表面14aにおける(メタ)アクリレート重合体成分の露出量が多くなる。一方、(メタ)アクリレート成分に対するシリコーンオイルの使用比率を多くすると、表面14aにおける(メタ)アクリレート重合体成分の露出量が少なくなる。これによって、剥離フィルム10は、優れた剥離性と塗布性とを両立させることが可能となる。
基材フィルム12としては、合成樹脂からなるものが用いられる。合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂などのアクリル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリエステル樹脂が好ましく、力学的性質、透明性、コストなどを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
基材フィルム12の厚みsは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。厚みs(μm)が、10μm未満の場合、剥離フィルム10の寸法安定性等の物理特性が損なわれる傾向があり、100μmを超える場合、剥離フィルムの単位面積当たりの製造コストが上昇してしまう傾向がある。
基材フィルム12は、剥離フィルム10の機械的強度を十分に高める観点から、透明性を悪化させない程度のフィラー(充填剤)を含有させることが好ましい。フィラーは、特に限定されるものではなく、たとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、酸化チタン、フュームドシリカ、アルミナ、有機粒子などを用いることができる。
次に、本実施形態の剥離フィルム10の製造方法を以下に説明する。
本実施形態の剥離フィルム10の製造方法は、光重合開始剤と有機溶剤と互いに相溶しない(メタ)アクリレート成分並びに(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基で変性された変性シリコーンオイルと、酸とを含有する塗布液を調製する塗布液調製工程と、調製した塗布液を基材フィルム12上に塗布して乾燥させて前駆体層を形成する前駆体層形成工程と、前駆体層に光を照射して前駆体層に含まれる(メタ)アクリレート成分及び変性シリコーンオイルを重合(硬化)させて、基材フィルム12上に重合体層14を形成する重合体層形成工程と、を有する。以下、各工程の詳細について説明する。
塗布液調製工程では、まず、互いに相溶しない(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとを準備する。「互いに相溶しない」とは、それぞれの成分を混合した時に相分離が生じたり白濁したりして、均一な溶液とならないことを意味する。
(メタ)アクリレート成分とは、(メタ)アクリレートモノマー及び/又は(メタ)アクリレートオリゴマーを意味し、その好ましい例としては、A−NOD−N、A−DOD(以上、新中村化学工業社製、商品名)が挙げられる。変性シリコーンオイルの好ましい例としては、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426(以上、信越化学工業株式会社製、商品名)が挙げられる。これらを用いることによって、剥離面14aの凹凸を一層低減し平滑性に一層優れる剥離フィルム10を得ることができる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、下記一般式(1)で表わされるものを用いることが好ましい。
上記一般式(1)中、nは5〜20の整数を示す。
変性シリコーンオイルは、(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基で変性されたシリコーンオイルであり、下記一般式(2)または(3)で表わされるものを用いることが好ましい。
上記一般式(2)中、R3及びR4は、単結合または2価の炭化水素基を示し、mは1以上の整数を示す。R3及びR4は、炭素数1〜10程度のポリメチレン基、または炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましい。また、mは10〜1000程度であることが好ましい。
上記一般式(3)中、R5及びR6は、単結合または2価の炭化水素基を示し、kは1以上の整数を示す。R5及びR6は、炭素数1〜10程度のポリメチレン基、または炭素数1〜10のアルキレン基であることが好ましい。また、kは10〜1000程度であることが好ましい。
酸としては、前述の酸が用いられ、好ましくは有機酸、さらに好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸または脂肪酸が用いられる。
光重合開始剤としては、ラジカル系光開始重合剤を用いることができる。紫外線を使用する場合、例えば、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン等を用いればよい。市販品としては、IRGACURE184、IRGACURE127、IRGACURE907、IRGACURE379、DAROCURE1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)を用いることができる。
有機溶剤としては、(メタ)アクリレート成分及び変性シリコーンオイルの双方を溶解させることができる溶剤を用いる。これによって、(メタ)アクリレート重合体成分とシリコーン重合体成分とが均一に溶解した、重合体層14を形成するための塗布液を得ることができる。均一でない塗布液では表面の特性が場所によって不均一となる傾向がある。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン及びメチルエチルケトン等が挙げられる。
上述の有機溶剤150質量部に対し、例えば、(メタ)アクリレート成分を50〜150質量部、変性シリコーンオイルを0.005〜10質量部、光重合開始剤を1〜10質量部配合し、また、(メタ)アクリレート成分から形成される重合体成分100質量部に対して、前記した量の酸を配合し、攪拌混合することによって、塗布液を調製することができる。
(メタ)アクリレート成分に対する変性シリコーンオイルの量が過剰であると、重合体層14中に未反応成分が残存して、セラミックペーストに対する塗布性が損なわれる傾向がある。一方、(メタ)アクリレート成分に対する変性シリコーンオイルの量が少なすぎると、剥離性が損なわれる傾向がある。酸の含有量が少ないと、シート相互間作用の向上が不十分になり、多く入れすぎると、セラミックペーストを塗布したときに、ハジキを発生させたり、剥離フィルムを構成する(メタ)アクリレート重合体成分を分解したりする。
前駆体形成工程では、上記の通り調製した塗布液を基材フィルム12の一表面上に、例えばバーコーターを用いて塗布する。その後、乾燥機中、例えば50〜150℃の温度で10秒間〜10分間乾燥して、有機溶剤を蒸発除去し、基材フィルム12の一表面上に前駆体層を形成する。
塗布液の塗布方法は、特に限定されるものではなく、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等を用いて塗布してもよい。
塗布液に含まれる(メタ)アクリレート成分の比重は通常0.95〜1.5程度であり、シリコーンオイルの比重は通常0.95〜1.5程度である。すなわち、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルの比重はほぼ同等か、変性シリコーンオイルの方が、若干軽い傾向がある。また、(メタ)アクリレート成分よりも変性シリコーンオイルの方が、低い表面エネルギーを有する。ここで、複数種類の相溶しない成分を含有する塗布液の場合、エネルギー状態が低くなるように、各成分が移動する。本実施形態の塗布液では、上述の通り、変性シリコーンオイルの方が比重が軽く且つ表面エネルギーが低い。したがって、前駆体形成工程で塗布液を基材フィルム12の一表面上に塗布した後、溶剤を乾燥除去すると、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーン成分とが相溶しないので、シリコーンオイルの方が基材フィルム12側とは反対側の表面(剥離面14aとなる面)に移動しやすい。
通常、変性シリコーンオイルの方が、(メタ)アクリレート成分よりも光重合開始剤を溶解し難い傾向がある。溶剤を除去した塗布液に紫外線照射すると反応開始剤によりラジカルが発生して、(メタ)アクリレート成分はラジカル化され、(メタ)アクリレート成分はラジカル重合する。また、シリコーンオイルの(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基もラジカル重合する。
重合体形成工程では、基材フィルム12の一表面上に形成された前駆体層に光や電子線を照射して、重合体層を形成する。光としては、紫外線を用いることが好ましい。紫外線の光源としては水銀ランプ、メタルハライドランプ等の市販のものを用いることができ、前駆体層の厚みに応じて紫外線の照射量を調製する。これによって、前駆体層を十分に硬化させることができる。また、ラジカル重合時の酸素阻害を防止するために窒素雰囲気下で紫外線照射することも好ましい。
紫外線の照射によって、前駆体層に含まれる(メタ)アクリレート成分及び変性シリコーンオイルがラジカル重合する。(メタ)アクリレート成分は重合することによって、(メタ)アクリレート重合体成分となり、変性シリコーンオイルは、シリコーン重合体成分となる。また、場合によって、変性シリコーンオイルの反応基((メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基)と(メタ)アクリレートモノマーの反応基((メタ)アクリロイル基)とが反応する。このように重合反応が進行することによって、前駆体層から重合体層14を得ることができる。
剥離フィルムの剥離性は、(メタ)アクリレート成分の種類、変性シリコーンオイルの分子量、反応基の種類、変性の方法(両末端、片末端、側鎖の組み合わせ)等で調整することができる。(メタ)アクリレート重合体成分を含む層の表面において、シリコーン重合体成分を含む膜が、該層の表面を被覆する割合(被覆率)によっても、剥離性を調整することができる。一般的にはシリコーン重合体成分による被覆率が高い方が剥離は軽くなり、被覆率が低い方が剥離は重くなる。
被覆率は、重合体層14の表面14aにおいて、純水の接触角を測定することによって求めることができる。以下にその理由を説明する。本発明では相溶しない(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとを用いているために、有機溶剤を乾燥除去すると、(メタ)アクリレート成分と変性シリコーンオイルとが分離し、変性シリコーンオイルが(メタ)アクリレート成分の層を被覆することとなる。ここで、単位面積におけるシリコーンオイル量が多ければ多いほど、重合体層14におけるシリコーン重合体成分による被覆率が1(百分率で表すと100%)に近くなる。
表面に液体を存在させたときの関係としてはヤングの式がある。θを接触角、γ1を固体の表面張力、γ2を液体個体間の界面張力、γLを液体の表面張力をしたときに以下の関係式が示される。
γ1=γL×cosθ+γ2
ここで、(メタ)アクリレート重合体成分のみの表面に液体を存在させたとき、接触角をθA、(メタ)アクリレート重合体成分の表面張力をγA、液体−(メタ)アクリレート重合体間の界面張力をγALとすると以下の関係式が示される。
γA=γL×cosθA+γAL・・・(i)
次に、シリコーン重合体成分で表面が覆い尽くされた面に液体を存在させた場合の接触角をθS、シリコーン重合体成分の表面張力をγS、液体−シリコーン重合体成分間の界面張力をγSLとすると以下の関係式(ii)が示される。
γS=γL×cosθS+γSL・・・(ii)
(メタ)アクリレート重合体成分の層の一部がシリコーン重合体成分で被覆された面(シリコーン重合体成分で被覆されていないところは(メタ)アクリレート重合体成分が露出している)に液体を存在させたとき、接触角をθX、重合体成分の表面張力をγX、液体―重合体成分間の表面張力をγXLとすると以下の関係式(iii)が示される。
γX=γL×cosθX+γXL・・・(iii)
重合体層14の表面14a全体における(メタ)アクリレート重合体成分が露出している面積の割合(露出率)をa、変性シリコーンオイルで被覆された面積の割合(被覆率)をs(単位面積における変性シリコーンオイルで被覆された面積÷単位面積)とし、a+s=1とする。γXにおけるγAとγSの寄与はその面積割合に比例する。つまり、下記式(iv)の関係が成立する。
γX=a×γA+s×γS・・・(iv)
γXLも同様に考えると、下記式(v)の関係が成立する。
γXL=a×γAL+s×γSL・・・(v)
上記式(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)より下記式(vi)が導き出せる。
cosθX=a×cosθA+s×cosθS=(1−s)×cosθA+s×cosθS・・・(vi)
上記式(vi)によって、θA、θS、θXからシリコーン重合体成分による被覆率sを特定できる。また、基準量における被覆率がわかっていれば、任意のシリコーン重合体成分による被覆率は計算からもとめることが可能である。特にシリコーン重合体成分の量が多い場合、接触角測定値の誤差に隠れて被覆率が1(百分率で表すと100%)になってしまうことがある。このような場合は次のようにして被覆率を特定できる。例えば、1m2当たり1mgのシリコーン重合体成分が存在するものと考え、シリコーン重合体成分による被覆率をs0とし、(メタ)アクリレート重合体の露出率をa0とする(a0+s0=1)。
1m2当たり任意量n(mg)のシリコーン重合体成分で被覆されたときの被覆率をsn、(メタ)アクリレート重合体成分の露出率をanとする(an+sn=1)。
ここで、an=a0 n=(1−s0)n
であり、sn=1−an=1−(1−s0)nとなる。
また、n(mg)のときの接触角をθNとすると、
cosθN=(1−s0)n×cosθA+{1−(1−s0)n}×cosθS
となり、s0を求めることもできる。なお、nは(メタ)アクリレート重合体成分の密度をd(g/cm3)、厚みをt(μm)、重合体層における変性シリコーンオイルの割合をb(質量%)としたとき、n=10×b×t×dとなる。
シリコーン重合体成分による被覆率としては、0.33〜0.99999(百分率で表すと33%〜99.999%)が好ましく、0.55〜0.98(百分率で表すと55〜98%)がより好ましい。
本実施形態による剥離フィルム10の製造方法によれば、剥離層と平滑化層を個別に形成する必要がなく、一種類の塗布液を用いて、基材フィルムに重合体層一層のみを形成することによって、剥離フィルム10を得ることができる。この製造方法によれば、剥離面14aの凹凸が十分に低減されるとともに、剥離性及び塗布性に十分優れる剥離フィルム10を容易に製造することができる。
図2は、本発明のセラミック部品シートの好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。セラミック部品シート20は、剥離フィルム10と、重合体層14の剥離面14a上にセラミックグリーンシート22と、セラミックグリーンシート22上に形成された電極グリーンシート24とを備える。
セラミックグリーンシート22としては、例えば、積層セラミックコンデンサを形成するための誘電体グリーンシートが挙げられる。セラミックグリーンシート22の厚みは、例えば、数μm〜数百μmとすることができる。セラミックグリーンシート22は、剥離フィルム10から剥離された後、焼成されて、例えばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム及び/又はチタン酸バリウムなどを含む誘電体となる。
電極グリーンシート24の厚みは、例えば、数μm〜数百μmとすることができる。電極グリーンシート24は、剥離フィルム10から剥離された後、焼成されて、例えば、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などを含む電極となる。
セラミック部品シートの製造方法について、以下に詳細に説明する。本実施形態のセラミック部品シート20の製造方法は、光重合開始剤と有機溶剤と互いに相溶しない(メタ)アクリレートモノマー並びに(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基で変性された変性シリコーンオイルと、酸とを含有する塗布液を調製する塗布液調製工程と、調製した塗布液を基材フィルム12上に塗布して乾燥させて前駆体層を形成する前駆体層形成工程と、前駆体層に光を照射して前駆体層に含まれる(メタ)アクリレートモノマー及び変性シリコーンオイルを重合させて、基材フィルム上に重合体層14を形成して剥離フィルム10を得る重合体層形成工程と、得られた剥離フィルム10の重合体層14の剥離面14a上に、バインダおよびセラミック粉末を含有するセラミックペーストを塗布して乾燥させてセラミックグリーンシート22を形成し、電極材料を含有する電極ペーストを塗布して乾燥させてセラミックグリーンシート22上に電極グリーンシート24を形成し、剥離フィルム10上にセラミックグリーンシート22と電極グリーンシート24とが順次積層されたセラミック部品シートを得るシート形成工程とを有する。塗布液調製工程〜重合体層形成工程によって剥離フィルム10を製造する方法は、既に説明したので、シート形成工程について以下に詳細に説明する。
シート形成工程では、重合体層形成工程で得られた剥離フィルム10の基材フィルム12側とは反対側の表面14a上に、セラミック粉末を含有するペースト(セラミックペースト)及び電極材料を含有するペースト(電極ペースト)をそれぞれ塗布する。
セラミックペーストは、例えば、誘電体原料(セラミック粉体)と有機ビヒクルとを混練して調製できる。誘電体原料としては、焼成によって複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。誘電体原料は、平均粒子径が0.4μm以下、好ましくは0.1〜0.3μm程度の粉体を用いることができる。
電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、焼成後に導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、またはレジネート等と、有機ビヒクルとを混練して調製することができる。
電極ペーストを製造する際に用いる導電体材料としては、Ni金属、Ni合金、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。接着性向上のために、電極ペーストは、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが挙げられる。
セラミックペースト及び電極ペーストに含まれる有機ビヒクルは、バインダ樹脂を有機溶剤中に溶解して調製される。有機ビヒクルに用いられるバインダ樹脂としては、例えばブチラール系樹脂、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体などが用いられる。しかしながら、これらのうちでも、本発明の剥離フィルムを用いる場合においては、バインダ樹脂が、ヒドロキシル基を有するブチラール系樹脂、具体的にはヒドロキシル基を有するポリビニルブチラール系樹脂であることが特に好ましい。ヒドロキシル基を有するブチラール系樹脂を用いることによって、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24の機械的強度を高くすることができる。
さらに、剥離フィルムに酸を添加することでシート間相互作用も向上する。本発明の剥離フィルムでは、剥離層表面には添加した酸の一部が析出していると考えられる。バインダが、ヒドロキシル基を有するブチラール樹脂である場合には、剥離フィルム上の酸とブチラールのヒドロキシル基はエステル結合を形成し、ブチラール樹脂のヒドロキシル基が消費される。ヒドロキシル基が消費されるとブチラール樹脂は軟らかくなるが、これはセラミック部品シートの剥離面側の表面近傍で起こるために、セラミックグリーンシートの強度を落とさずに、セラミック部品シートの表面を軟らかくすることができ、この結果、接着力が向上し、シート間相互作用も増大する。
ポリビニルブチラール系樹脂の重合度は、好ましくは1000〜1700であり、より好ましくは1400〜1700である。また、ポリビニルブチラール系樹のヒドロキシル基含量は、本願発明の効果が顕著となる20〜40モル%程が適当であるが、シート強度、シート間相互作用を考慮すると30〜40モル%程度がより好ましい。本発明では、セラミックペーストのバインダとして、上記のようなヒドロキシル基含量が比較的多いポリビニルブチラール系樹脂を使用することが特に好ましい。
また、重合体層14の原料としてアルカン(ジオール)ジ(メタ)アクリレートモノマーを用いることによって、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24の剥離性を一層優れたものとすることができる。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤としては、例えばテルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸ベンジルなどの有機溶剤を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
セラミックペーストは、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電除剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物を含有してもよい。
上述のセラミックペーストを、例えばドクターブレード装置などにより、剥離フィルム10の表面14a上に塗布する。そして、塗布したセラミックペーストを、市販の乾燥装置内で、例えば50〜100℃の温度で1〜20分間乾燥させて、セラミックグリーンシート22を形成する。セラミックグリーンシート22は、乾燥前に比較して5〜25%収縮する。
次に、形成したセラミックグリーンシート22の表面22a上に、例えばスクリーン印刷装置を用いて、所定のパターンとなるように、電極ペーストを印刷する。そして、塗布した電極ペーストを、市販の乾燥装置内で、例えば50〜100℃の温度で1〜20分間乾燥させて、電極グリーンシート24を形成する。これによって、剥離フィルム10、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24が順次積層されたセラミック部品シート20を得ることができる。
このセラミック部品シート20は、重合体層14を有する剥離フィルム10を用いて製造されるため、セラミックグリーンシート22及び電極グリーンシート24からなるグリーンシート26の剥離性に十分に優れており、グリーンシート26の剥離残りを十分に低減することができる。このため、グリーンシート26の厚みのばらつきが十分に低減され、ピンホールの発生を十分に抑制することができる。
さらに、重合体層14の表面14aで、はじきの発生が十分に抑制されているため、セラミックペーストを塗布する際に、ピンホールや厚みのばらつきの少ないグリーンシート26を容易に形成することができる。これによって、積層セラミックコンデンサの製造を一層容易に行うことができる。
さらに、本発明においては、セラミック部品シート20を製造する際に使用する剥離フィルムの剥離層(重合体層)に酸を添加することで、この上に形成されるセラミックグリーンシート22との接触面近傍において、セラミックグリーンシート22を軟質化し、高い接着性を得て、シート間相互作用を向上させている。また、セラミックグリーンシート22の接触面近傍以外では、比較的硬度の高いバインダが主体となるため、十分な強度が付与される。この結果、セラミック部品シートの積層時における変形および位置ズレを抑制することができる。
次に、本発明のセラミック部品の製造方法の好適な一実施形態である積層セラミックコンデンサの製造方法を以下に説明する。
本実施形態の積層セラミックコンデンサの製造方法は、複数のセラミック部品シートを準備する工程と、セラミック部品シートのグリーンシートを複数積層して積層体を得る積層工程と、積層体を焼成して焼結体を得る焼成工程と、該焼結体に端子電極を形成して積層セラミックコンデンサを得る電極形成工程とを有する。
準備工程では、上記実施形態のセラミック部品シートの製造方法によって製造されたセラミック部品シート20を複数準備する。次に、積層工程では、複数のセラミック部品シート20のグリーンシート26を積層して、複数のグリーンシート26が積層された積層体を得る。
積層工程の一例を詳細に説明する。まず、セラミック部品シート20の剥離フィルム10を剥離してグリーンシート26を得る。このグリーンシート26の面22bと別のセラミック部品シート20の電極グリーンシート24とが向き合うようにして、グリーンシート26とセラミック部品シート20とを積層する。その後、積層したセラミック部品シート20から剥離フィルム10を剥離する。このような手順を繰り返し行って、グリーンシート26を積層することによって、積層体を得ることができる。すなわち、この積層工程では、グリーンシート26上にセラミック部品シート20を積層した後に、剥離フィルム10を剥離する手順を複数回繰り返すことによって、積層体を形成している。
積層工程の別の例を説明する。グリーンシート26の面22aと、剥離フィルム10を剥離した別のグリーンシート26の面22bとが向かい合うようにして、グリーンシート26を積層する。このような手順を繰り返し行い、グリーンシート26を順次積層することによって、積層体を得ることができる。すなわち、この積層工程では、剥離フィルム10を剥離したグリーンシート26を積層する手順を複数回繰り返すことによって、積層体を形成している。
積層体におけるグリーンシートの積層枚数に特に制限はなく、例えば、数十層から数百層であってもよい。積層体の積層方向に直交する両端面に、電極層が形成されない厚めの外装用グリーンシートを設けてもよい。積層体を形成した後、積層体を切断してグリーンチップとしてもよい。
焼成工程では、積層工程で得られた積層体(グリーンチップ)を焼成して焼結体を得る。焼成条件は、1100〜1300℃で、加湿した窒素と水素との混合ガス等の雰囲気下で行うとよい。ただし、焼成時の雰囲気中の酸素分圧は、好ましくは10−2Pa以下、より好ましくは10−2〜10−8Paとする。なお、焼成前には、積層体の脱バインダ処理を施すことが好ましい。脱バインダ処理は、通常の条件で行うことができる。例えば、内部電極層(電極グリーンシート24)の導電体材料として、NiやNi合金等の卑金属を用いる場合、200〜600℃で行うことが好ましい。
焼成後、焼結体を構成する誘電体層を再酸化させるために、熱処理を行ってもよい。熱処理における保持温度又は最高温度は、1000〜1100℃であることが好ましい。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であることが好ましく、10−2Pa〜1Paであることがより好ましい。このようにして得られた焼結体に、例えばバレル研磨、サンドブラスト等にて端面研磨を施すことが好ましい。
電極形成工程では、焼結体の側面上に、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサを得ることができる。
本実施形態のセラミック部品の製造方法では、上記実施形態のセラミック部品シートを用いているため、得られるセラミック部品、すなわち積層セラミックコンデンサのピンホールの発生を十分に抑制することができる。このため、高い歩留まりで積層セラミックコンデンサを形成することができる。
図3は、上記実施形態の製造方法によって得られるセラミック部品の一例を示す模式断面図である。図3に示す積層セラミックコンデンサ100は、内装部40と、この内装部40を積層方向に挟む一対の外装部50とを備えている。本実施形態に積層セラミックコンデンサ100は、側面に端子電極60を有している。
内装部40は、複数(本実施形態では13層)のセラミック層42と、複数(本実施形態では12層)の内部電極層44とを有している。セラミック層42と内部電極層44とは、交互に積層されている。内部電極層44は、端子電極60と電気的に接続されている。
外装部50は、セラミック層により形成されている。このセラミック層は、外装用グリーンシートから形成されるものであり、例えばセラミック層42と同様の成分を含有する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<予備実験>
原料として、下記式(4)で表されるアクリレートモノマー(比重:0.99)、下記式(5)で表される両末端がアクリロイル基で変性された変性シリコーンオイル(比重:0.98)、及び反応開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを準備した。下記式(4)のアクリレートモノマー100質量部と下記式(5)の変性シリコーンオイル5質量部をビーカーで攪拌して混合液を調整したところ、混合液は白濁分離した。このことから、アクリレートモノマーと変性シリコーンオイルが相溶しないことが確認された。さらに、この混合液にトルエン100質量部、メチルエチルケトン100質量部を加えると透明になることを確認した。その後、以下のようにして剥離フィルムを作製した。
<剥離フィルムの作製>
金属容器中にて、メチルエチルケトン100質量部にパラトルエンスルホン酸0.5質量部を溶解し、さらに上記式(4)のアクリレートモノマー100質量部、上記式(5)の変性シリコーンオイル0.186質量部を加え攪拌混合した後に、トルエン100質量部をさらに加えて攪拌混合し、無色透明の溶液を得た。
上記溶液に、反応開始剤を2.5質量部加えて塗布液を調製した。調製した塗布液を、バーコーターにて2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基材フィルム、厚み38μm)に塗布し、加熱温度80℃の熱風で30秒間、乾燥してメチルエチルケトン、トルエンを蒸発させた後、酸素濃度100ppmの窒素雰囲気下にて紫外線を照射して、基材フィルム上に厚み1μmの重合体層が形成された剥離フィルムを得た。なお、厚みtは、分光光度計(日本分光(株)製、商品名:V−670)を用いて測定した。紫外線照射は、積算光量を250mJ/cm2とした。
<SRp及び水の接触角の測定>
得られた剥離フィルムの最大突起高さ(SRp)及び水の接触角を評価した。基材フィルム側とは反対側の重合体層表面(剥離面)の最大突起高さ(SRp)を測定した。測定は、JIS B0601に準拠して、株式会社菱化システムのMicromap System(光学干渉式三次元非接触表面形状測定システム)を用いて行った。SRpは0.05μmであった。次に、室温(20℃)において、重合体層の剥離面上に純水を滴下し、剥離面における純水の接触角を測定した。接触角は103°であった。
<セラミックグリーンシートの塗布>
BaTiO3系セラミック粉末、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB、ヒドロキシル基含量:34モル%)、及び溶媒としてメタノールを準備した。次に、該セラミック粉末100質量部に対して、10質量部の有機バインダと、165質量部の溶媒とを混練してセラミックペーストを得た。上記剥離フィルムに乾燥後の膜厚みが1μmになるようにセラミックグリーンシートを形成した。
<電極の印刷>
Ni粉末、有機バインダとしてエチルセルロース、及び溶媒としてテルピネオールを準備した。次に、Ni粉末100質量部に対して、4質量部の有機バインダと、100質量部の溶媒とを混練して電極ペーストを得た。上記セラミックグリーンシート上に乾燥後の膜厚みが1μmになるように電極を形成して、セラミック部品シートを得た。
<シート間相互作用の測定>
セラミック部品シートを2枚用意した(A、B)。40mm×40mmの平板に両面粘着テープを貼り付け、セラミック部品シートAを剥離フィルムがついた状態で電極側を両面粘着テープに貼り付け、カッターにて平板の淵に合わせてセラミック部品シートAを切断し、後に剥離フィルムを剥がした。次に、40mm×40mmに切断されたセラミック部品シートBを用意し、電極面を前記剥離フィルムが剥がされたセラミック部品シートAのセラミックグリーンシート面と接するように重ね、70℃、190N/cm2、1分間の条件で圧力を加え、後にセラミック部品シートBの剥離フィルムを剥がした(測定用サンプル)。φ20mmの円盤に両面粘着テープを貼り付け測定用サンプルの剥離フィルムが剥がされたセラミック部品シートBのセラミックグリーンシート面に貼り付け、円盤の淵に沿ってカッターでセラミック部品シートAおよびBに切り込みを入れ試験用サンプルを作製した。上記で作製した試験用サンプルを引っ張り試験機にセットし、円盤の両面テープがついていない方を引っ張り試験機の力計に接続した。引っ張り試験機を起動させ、2枚のセラミック部品シートが剥がれたときに要した力をシート間相互作用の強さとして測定した。実施例1のセラミック部品シートのシート間相互作用は6Nであった。
<積層時のズレの確認>
積層機にてセラミック部品シートを、セラミックグリーンシート面と電極面とが接着するように400枚積層して、切断前の積層後シートを切断して9ブロックにわけ、それぞれ1ブロックから1個をサンプリングし9個の焼成前チップコンデンサの切断面を観察して積層ズレを確認した(ズレの許容範囲は40μmとした)。積層後シートを10シート作製し、ズレの発生している積層後シートが何シートあったかを調査した。9個のうち1個でも規格外れが合った場合はそのシートは不良とした。実施例1では積層ズレのシートはなかった。
(実施例2〜3)
パラトルエンスルホン酸の量を実施例2では0.15質量部、実施例3では0.05質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2のシート間相互作用は5.8Nで、積層ズレのシートはなかった。接触角は103°であった。SRpは0.05μmであった。
実施例3のシート間相互作用は5.8Nで、積層ズレのシートはなかった。接触角は103°であった。SRpは0.05μmであった。
(実施例4)
実施例1のパラトルエンスルホン酸をステアリン酸に変更し、添加量を1質量部とした以外は実施例1と同様に作製した。シート間相互作用は4.5Nで、積層ズレのシートはなかった。接触角は103°であった。SRpは0.05μmであった。
(比較例1)
実施例1において、酸を添加しなかった以外は実施例1と同様にしたシート間相互作用は2Nで、積層ズレは10シート中に4シートであった。接触角は103°であった。SRpは0.05μmであった。