JP5417611B2 - ビール風味アルコール飲料の製造方法 - Google Patents

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発明の分野
本発明は、ビール風味アルコール飲料の製造方法に関し、更に詳細には、サポニンを含有する糖類を糖源として発酵前液に添加して発酵を行うビール風味アルコール飲料の製造方法に関する。
環境問題への意識が高まるにつれてバイオ燃料が化石資源の代替資源として注目を浴びている。それに伴って、バイオエタノールの原料であるトウモロコシの需要が増加しつつある。また、世界的に食料需要が高まるにつれてトウモロコシを初めとする穀物の需要が増加しつつある。このような状況のもと、トウモロコシなどの穀物の価格上昇が懸念されている。
一方、ビール風味アルコール飲料の主原料の一つは液糖であり、液糖の多くはトウモロコシなどの穀物を原料にして製造されている。トウモロコシなどの穀物の価格上昇や入手困難性に鑑みれば、トウモロコシ以外の原料をベースにした糖類を使用してビール風味アルコール飲料を製造することも考慮に値する。
例えば、ホワイトソルガムやソルガム分解物を発酵原料として使用した発泡性飲料の製造方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
しかしながら、液糖が醸造工程に及ぼす影響については、酵母のアルコール発酵に必要な炭素供給源としての利用を報告するものが多く、炭素供給源以外の機能について、その機能の原因物質を特定して利用することはほとんどないのが現状である。
特開2005−40045号公報 特開2006−204172号公報
本発明は、泡持ち特性が改善されたビール風味アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ビールや発泡酒などのビール風味アルコール飲料の製造において、サポニンを含有する糖類を糖源として発酵前液に添加することにより、泡持ち特性を改善できることを見いだした。本発明者らは、また、発酵前液中のサポニン含量と泡持ち特性との間に相関関係が認められることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、サポニンを含有する糖類を糖源として発酵前液に添加して発酵を行うことを特徴とする、ビール風味アルコール飲料の製造方法である。
本発明によれば、サポニンを含有する糖類を糖源として発酵前液に添加することにより、泡持ち特性が改善されるとともに、香味・風味に優れたビール風味アルコール飲料を製造することができる。また、サポニンを含有する糖類を糖源として発酵前液に添加した場合には発酵性が高い点でも有利である。
発明の具体的説明
ビール風味アルコール飲料
本発明において「ビール風味アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、ビール風味を有するアルコール飲料を意味する。「ビール風味アルコール飲料」としては、原料として麦芽を使用しないビール風発酵飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される飲料)や、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)が挙げられる。
本発明によるビール風味アルコール飲料の製造方法は、発酵前液に添加される糖類が、サポニンを含有する糖類であることを特徴とする。本発明による製造方法は、発酵前液に添加される糖類にサポニンが含まれている限り、いずれのビール風味アルコール飲料の製造にも用いることができる。
発酵前液中のサポニン含量は、製造されるアルコール飲料の泡持ち特性の観点から196mg/L以上とすることができ、好ましくは、373mg/L以上とすることができる。
本発明による製造方法では、発酵を行う前に発酵前液中のサポニン含量を測定することができる。サポニン含量の測定は、作製された発酵前液について行っても、発酵前液に添加される前の原料について行ってもよい。原料のサポニン含量を測定する場合には、例えば、発酵前液に添加される液糖などの糖類中に含まれるサポニン含量を測定し、発酵前液中のサポニン含量が196mg/L以上(好ましくは、373mg/L以上)となるように、液糖などの糖質の添加量や発酵前液の組成を調整するか、あるいは液糖などの糖質を選択することができる。サポニン含量は、例えば、HPLCにより測定することができる。
本発明による製造方法では、製造バッチごとに発酵前液中のサポニン含量を測定してビール風味アルコール飲料を製造しても、ある原料組成の発酵前液のサポニン含量を測定し、以後、同じ組成の発酵前液を使用してビール風味アルコール飲料を製造してもよく、いずれの態様も、「発酵を行う前に発酵前液中のサポニン含量を測定する」ことに該当する。後者の具体的な態様としては、例えば、サポニンを特定量(例えば、1570mg/L以上)含有する液糖を準備し、発酵前液中のサポニン含量が196mg/L以上となるように液糖を発酵前液に添加してビール風味アルコール飲料を製造することが挙げられる。
サポニンを含有する糖類は、ビール風味アルコール飲料の製造に用いることができる植物(特に、穀物類、雑穀類、芋類)を原料とする糖類であって、その植物由来のサポニンを含有する糖類であればいずれの糖類も用いることができる。麦芽やトウモロコシ以外の植物原料としては、例えば、キヌア、ホワイトソルガム、レッドソルガム、小麦粉、コーングリッツ、ブルーコーンフラワー、紫芋、黒米、アマランサス、米、および米粉が挙げられる。泡持ち特性向上の観点から、アマランサス、キヌア、米、米粉調製品、紫芋、ソルガム、黒米、および/または小麦由来の糖類を使用することが好ましく、特に好ましくは、アマランサス由来の糖類、キヌア由来の糖類、米由来の糖類、および黒米由来の糖類である。
本発明による製造方法では、サポニンを含有する糖類を発酵前液に添加し、その結果発酵前液中にサポニンが含まれている限り、いずれの原料を単独であるいは組み合わせて用いることができる。例えば、麦芽を使用するビールや発泡酒等の製造方法では、麦芽以外の発酵原料としてキヌア、ホワイトソルガム、レッドソルガム、小麦粉、コーングリッツ、ブルーコーンフラワー、紫芋、黒米、アマランサス、米、または米粉由来の糖質を単独であるいは組み合わせて用いることができる。また、原料として麦芽を使用しないビール風発酵飲料の製造方法では、発酵原料として、キヌア、ホワイトソルガム、レッドソルガム、小麦粉、コーングリッツ、ブルーコーンフラワー、紫芋、黒米、アマランサス、米、および/または米粉由来の糖質を単独であるいは組み合わせて用いることができる。いずれの場合も、トウモロコシ、こうりゃん、馬鈴薯、澱粉、糖類、カラメルなどの、ビール風味アルコール飲料の製造に用いられる副原料を更に添加してもよい。
本発明による製造方法では、サポニンを含有する糖類として液糖を使用することができる。液糖は、運搬、計量、混合等において取り扱いが容易である点で有利である。なお、本明細書において「糖類」は「液糖」を含む意味で用いられるものとする。
サポニンを含有する液糖は、前記の植物原料由来のものを用いることができ、例えば、公知のシロップ製造方法(例えば、MODERN CEREAL SCIENCE AND TECHNOLOGY, Y. Pomeranz著, 長尾精一訳, 株式会社パンニュースに記載のコーンシロップの製造方法を参照)に従って植物原料から製造することができる。
本発明において「サポニン」は、ステロイドやトリテルペンをアグリコンとする配糖体を意味する。本発明で使用される糖類に含まれる「サポニン」は、トリテルペンをアグリコンとする配糖体であってもよく、具体的には、アグリコンが、フィトラカゲニン酸、ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸である4種のサポニンが挙げられる。好ましくは、アグリコンがヘデラゲニンであるサポニン、アグリコンがオレアノイック酸であるサポニン、アグリコンがセルジャン酸であるサポニン、またはこれらの全部もしくは一部の組み合わせを含有する糖類を使用できる。
本発明において発酵前液に添加される糖類は、液体状態(すなわち、液糖状態)で投入して発酵前液を得ても、固体状態(すなわち、原料そのもの、または加工された固体状態)あるいは固液混合状態で投入して、発酵前液を得てもよく、いずれの態様も「糖類を糖源として発酵前液に添加」することに該当する。
本発明による製造方法では、炭素源(糖源)、窒素源(例えば、タンパク質分解物、酵母エキス)、および水に、ホップ、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤などを加えて発酵前液を作製し、発酵前液を煮沸した後、発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、ビール風味アルコール飲料を醸成させることができる。得られたビール風味アルコール飲料は、低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去することができる。
本発明による製造方法では、また、発酵前液調製過程の前あるいは発酵前液調製過程において、必要に応じてアミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等の分解酵素を添加して麦芽等の穀物原料の糖化を行ってもよい。この場合には、まず液糖以外の糖源(例えば、麦芽やコーンスターチのような穀物や穀物由来の原料)に糖分解酵素を作用させて穀物等の糖質を酵母資化性糖類に転換することができる。
液糖の添加のタイミングは、糖化スタート時、糖化終了時、煮沸スタート時、仕込み工程中のいずれであってもよい。
本発明の好ましい態様によれば、サポニンを含有する液糖を糖源として発酵前液に添加して発酵を行うことを特徴とするビール風味アルコール飲料の製造方法であって、液糖がキヌア由来の液糖、ホワイトソルガム由来の液糖、レッドソルガム由来の液糖、小麦粉由来の液糖、コーングリッツ由来の液糖、ブルーコーンフラワー由来の液糖、紫芋由来の液糖、黒米由来の液糖、アマランサス由来の液糖、米由来の液糖、および米粉由来の液糖、並びにこれらの全部または一部の組み合わせからなる群から選択される液糖(好ましくは、アマランサス由来の液糖、キヌア由来の液糖、米由来の液糖、米粉調整品由来の液糖、紫芋由来の液糖、ソルガム由来の液糖、黒米由来の液糖、および小麦由来の液糖、並びにこれらの全部または一部の組み合わせからなる群から選択される液糖)である製造方法が提供される。この製造方法によれば、アマランサス由来の液糖、キヌア由来の液糖、米由来の液糖、米粉調整品由来の液糖、紫芋由来の液糖、ソルガム由来の液糖、黒米由来の液糖、および小麦由来の液糖など、麦芽やトウモロコシ以外の原料をベースにした液糖を必要十分量含む糖源として利用できるとともに、醸造工程における酵母発酵性を高く保持することができる。この製造方法によれば、更に、香味が優れたビール風味アルコール飲料を製造することができる。
本発明を下記実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1:泡持ち特性への各種液糖の影響(1)
(1)液糖のサポニン含量の分析
ビール風味アルコール飲料の製造に使用する液糖のサポニン含量を以下のようにして測定した。
まず、測定試料各1.5mLを採取し、これに水1.5mLとブタノール3mLを加えて振盪し、遠心分離してブタノール層を回収した。残った水層にさらにブタノール3mLを加えて振盪し、遠心分離してブタノール層を回収して先のブタノール層と合わせ、窒素気流下で乾固し、メタノール150μLを加え再溶解して試料溶液とした。
次に、オレアノイック酸を100μg/mLの濃度でメタノールに溶解して、検量線作成のためのオレアノイック酸標準溶液とした。
標準溶液を以下の条件で2回測定して検量線を作成した。各試料溶液は4種のアグリコン(ヘデラゲニン、オレアノイック酸、フィトラカゲニン酸、セルジャン酸)ごとにモニターイオンを変え1試料あたり4回の測定を行い、検量線を元に試料中のサポニン量を求めた。
<<HPLC条件>>
装置:API365 質量分析計 (PE Sciex社)
HPLC:HP1100(Agilent Technologies社)
カラム:Inertsil ODS−3(2.1mmI.D.×250mm、ジーエルサイエンス社)
カラム温度:40℃
移動層:A;0.1vol% ギ酸
B;0.1vol% ギ酸−95vol% アセトニトリル
グラジエント:時間(分) 3 30 35 45
B(%) 97 40 5 5
流速:45μL/分
試料注入量:5μL
検出波長:UV 190〜400nm(SPD−20A)
イオン化式:ESI
測定イオン:正イオン
イオンスプレー電圧:5000V
温度:450℃
ネブライザーガス:窒素
コリジョンガス:窒素
測定モード:MRM(Multipul Reaction Monitoring)
モニターイオン:
(ヘデラゲニン)m/z767.5 → m/z455.4,m/z811.4 → m/z455.4,m/z929.5 → m/z455.4,m/z943.5 → m/z455.4,m/z1121.6 → m/z455.4
(オレアノイック酸)m/z795.5 → m/z439.4,m/z913.5 → m/z439.4,m/z927.5 → m/z439.4,m/z1075.6 → m/z439.4
(フィトラカゲニン酸)m/z811.4 → m/z499.3,m/z,973.5 → m/z499.3,m/z973.5 → m/z499.3,m・z1003.5 → m/z499.3,m/z1135.6 → m/z499.3,m/z1165.6 → m/z499.3
(セルジャン酸)m/z957.5 → m/z483.3,m/z1119.6 → m/z483.3
ビール風味アルコール飲料の製造に使用する液糖のサポニン含量(アグリコン含量)を上記測定方法に従って測定したところ表1の通りであった。
Figure 0005417611
(2)発酵性ビール風味アルコール飲料の製造と泡持ち特性の分析
各種液糖を用いてラボスケールで発酵性ビール風味アルコール飲料の製造を行い、ミクロルディン法により泡持ち特性の評価を行った。
まず、糖化用ビーカーに325mLの湯を張り、大豆タンパク質7.2gを投入した。次いで、糖化用ビーカーにタンパク質分解酵素151mgを投入し、180分間攪拌した。麦汁煮沸用丸底フラスコに1000mLの湯を張り、糖化用ビーカーの混合物をフラスコに移すと共に、各種液糖258gを溶解させた。各種液糖としては、キヌア由来の液糖1(KI1)、キヌア由来の液糖2(KI2)、キヌア由来の液糖3(KI3)、キヌア由来の液糖4(KI4)、ホワイトソルガム由来の液糖(WS)、レッドソルガム由来の液糖(RS)、小麦粉由来の液糖、小麦粉由来の液糖A(小麦粉A)、小麦粉由来の液糖B(小麦粉B)、ブルーコーンフラワー由来の液糖(BCF)、コーングリッツ由来の液糖(CG)、紫芋由来の液糖(MU)、黒米由来の液糖1(KU1)、黒米由来の液糖2(KU2)、黒米由来の液糖3(KU3)、米由来の液糖(米)、米粉調整品由来の液糖1(米粉調整1)、米粉調整品由来の液糖2(米粉調整2)、米粉調整品由来の液糖3(米粉調整3)、およびアマランサス由来の液糖(AMA)をそれぞれ使用した。これらの液糖は公知のコーンシロップの製造方法に準じて調製した。また、対照(コントロール)の液糖としては、MC−55(日本食品加工社製)を使用した。
次に、液糖を添加した発酵前液にホップを添加して30分間煮沸した。煮沸後、混合液をろ過して固形物を除去し、ろ液を発酵前液とした。冷却した発酵前液に酵母を添加し、6℃〜20℃で主発酵させた。得られた発酵液からろ過で酵母を取り除いて、麦芽を使用していないビール風味アルコール飲料を製造した。
得られた飲料の泡持ち特性をミクロルディン法により分析した結果は図1に示される通りであった。アマランサス由来の液糖を用いた場合がコントロールの10倍近い泡持ちとなり、キヌア・米・米粉調製品由来の液糖でも通常の1.5〜3倍に泡持ちが向上した。また、紫芋、ソルガム、黒米、小麦の一部等でも若干の泡持ち向上が確認された。一方、ブルーコーンフラワーやコーングリッツ由来の液糖では泡持ちが悪くなることが分かった。
(3)サポニンと泡持ち特性の相関関係分析
液糖中のサポニン量と、泡持ち特性(ミクロルディン法による)との関係を分析した。その結果、液糖中のサポニン量と泡持ち特性との関係は図2〜6に示される通りであった。
図2によると、液糖中のヘデラゲニン量と泡持ち特性との間には相関関係が認められた(近似式:y=0.5812x−26.876、相関係数:R=0.5758)。
図3によると、液糖中のオレアノイック酸量と泡持ち特性との間には相関関係が認められた(近似式:y=0.0761x+32.234、相関係数:R=0.569)。
図4によると液糖中のフィトラカゲニン酸量と泡持ち特性との間には相関関係が認められなかった(近似式:y=0.0423x+181.08、相関係数:R=0.0014)。
図5によると液糖中のセルジャン酸量と泡持ち特性との間には相関関係が認められた(近似式:y=1.8815x+38.046、相関係数:R=0.9396)。
図6によると液糖中のサポニン量(4種合計)と泡持ち特性との間には相関関係が認められた(近似式:y=0.067x+7.4149、相関係数:R=0.6026)。
図7によると液糖中のサポニン量(ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の3種合計)と泡持ち特性との間には相関関係が認められた(近似式:y=0.0687x+16.374、相関係数:R=0.6162)。
このように、液糖中のサポニン含量と泡持ち特性との間には相関関係が認められた。従って、サポニンを含有する液糖を使用して発酵性ビール風味アルコール飲料や発泡性アルコール飲料を製造することにより、泡持ち特性が向上した製品を製造することができる。
また、サポニンの主要成分である4種のアグリコンのうち、ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の3種については得られた飲料の泡持ち特性との間に相関関係が認められた。従って、ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の3種を少なくとも含むサポニンを含有する液糖を使用して発酵性ビール風味アルコール飲料や発泡性アルコール飲料を製造することにより、泡持ち特性が向上した製品を製造することができる。
また、図6から、液糖中のサポニン量(フィトラカゲニン酸、ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の4種のアグリコンの合計)が1570μg/ml以上である場合に泡持ち特性の改善が認められた。発酵前液に添加した各種液糖容量は発酵前液の全体容量の約8分の1であることから、発酵前液中に196mg/L以上のサポニン(フィトラカゲニン酸、ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の4種のアグリコンの合計)が含まれるように、発酵前液中に液糖を添加することにより、ビール風味アルコール飲料の泡持ち特性を改善することができる。
また、図7から、液糖中のサポニン量としてヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の3種のアグリコンに着目した場合には、これら3種のアグリコンの合計量が1170μg/ml以上である場合に泡持ち特性の改善が認められると考えられる。発酵前液に添加した各種液糖容量は発酵前液の全体容量の約8分の1であることから、発酵前液中に146mg/L以上のサポニン(ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の3種のアグリコンの合計)が含まれるように、発酵前液中に液糖を添加することにより、ビール風味アルコール飲料の泡持ち特性を改善することができる。
また、図5から、液糖中のセルジャン酸量が25μg/ml以上である場合に泡持ち特性の改善が認められた。発酵前液に添加した各種液糖容量は発酵前液の全体容量の約8分の1であることから、発酵前液中に3mg/L以上のセルジャン酸が含まれるように、発酵前液中に液糖を添加することにより、ビール風味アルコール飲料の泡持ち特性を改善することができる。
(4)キヌア由来の液糖を使用した発酵性ビール風味アルコール飲料の製造
キヌア由来の液糖(KI)およびコントロールの液糖(MC−55)を用いてミニプラントスケールで発酵性ビール風味アルコール飲料の製造を行い、グラス法およびミクロルディン法により泡持ち特性の評価を行った。製造手順は上記(2)に記載された方法を200倍にスケールアップして行った。
得られた飲料の泡持ち特性をグラス法およびミクロルディン法により分析した結果は表2に示される通りであった。
Figure 0005417611
製造工程をスケールアップした場合でも、コントロールの液糖をキヌア由来の液糖に代替することにより泡持ち特性が向上することが確認された。
なお、コントロールの液糖をキヌア由来の液糖に代替することによって酵母浮遊性が極度に増大しており、発酵性が著しく改善されていた(データ省略)。
発酵性ビール風味アルコール飲料の製造において、各種液糖を使用した場合の泡持ち特性(ミクロルディン法)を示した図である。 各種液糖に含まれるヘデラゲニン(Hederagenin)の量と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。 各種液糖に含まれるオレアノイック酸(Oleanoic acid)の量と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。 各種液糖に含まれるフィトラカゲニン酸(Phytolaccagenic acid)の量と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。 各種液糖に含まれるセルジャン酸(Serjanic acid)の量と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。 各種液糖に含まれるサポニンの量(ヘデラゲニン、オレアノイック酸、フィトラカゲニン酸、およびセルジャン酸の合計量)と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。 各種液糖に含まれるサポニンの量(ヘデラゲニン、オレアノイック酸、およびセルジャン酸の合計量)と、泡持ち特性との相関関係を示した図である。

Claims (4)

  1. サポニンを含有する液糖を糖源として発酵前液に添加して発酵を行うビール風味アルコール飲料の製造方法であって、発酵前液に含まれるサポニン含量が146mg/L以上であり、ただし、該サポニン含量が、アグリコンがヘデラゲニンであるサポニン、アグリコンがオレアノイック酸であるサポニン、およびアグリコンがセルジャン酸であるサポニンのアグリコン総量である、製造方法。
  2. 発酵を行う前に発酵前液中のサポニン含量を測定する、請求項1に記載の製造方法。
  3. サポニンを含有する液糖が、アマランサス、キヌア、米、米粉調製品、紫芋、黒米、または小麦由来である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、ビール風味アルコール飲料。
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