JP5416915B2 - 電子写真感光体、および画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体、および画像形成装置に関する。
画像形成装置等に用いられる電子写真感光体としては、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層とを有する電子写真感光体が知られている。また、近年、リークを抑える程度に絶縁された感光体として、導電性基体と感光層の間に下引き層を介在させた電子写真感光体が提案されている。
このような電子写真感光体は、電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、導電性基体上または下引き層上に塗布し、乾燥させて感光層を形成することで製造される。
電荷輸送剤としては、エナミンヒドラゾン化合物が知られている。エナミンヒドラゾン化合として、例えば下記一般式(14)、(15)で表される化合物、およびこれを用いた電子写真感光体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
Figure 0005416915
一般式(14)、または(15)において、R、R、R、Rはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環を示し、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基を示す。m、nは0〜1の整数を示す。Rは置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環を示す。R、R、R10、R11はそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環を示す。また、R12は窒素原子と共に環を形成するのに必要な原子群を表す。
特開平10−133401号公報
しかしながら、一般式(14)で表される化合物のうち、R、R、R、R、Rが一つでもアリール基でない化合物を電荷輸送剤として用いた電子写真感光体は、感度等の電気特性が不十分になりやすかった。
一方、R、R、R、R、Rの全てがアリール基、例えば全てがフェニル基である化合物(特許文献1に記載のA−19に示す構造式に相当する化合物)は、電荷輸送剤としての特性(例えば移動度など)に優れるものの、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性が乏しく、電子写真感光体の作製時に電荷輸送剤の一部が結晶化して析出しやすく、実用的ではなかった。
また、このようにして作製された電子写真感光体は、感度等の電気特性が低下しやすかった。特に、高温高湿環境下では、電子写真感光体の電気特性が低下しやすかった。さらに、電気特性が不十分な電子写真感光体を備えた画像形成装置では、得られる画像の品質が低下しやすかった。
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、電荷輸送剤が結晶化して析出することなく作製でき、高温高湿環境下においても電気特性に優れる電子写真感光体、およびこれを備えた画像形成装置の実現を目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式(14)で表される化合物のRとして、特定の置換基を有するアリール基を選択して用いることで、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性が向上することを見出した。
また、Rとして特定の置換基を有するアリール基を選択して用いることで、一般式(14)で表される化合物のR、R、R、R、Rの全てをアリール基、例えば全てをフェニル基としても、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性を低下させることなく、電子輸送剤としての特性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を含有する感光層が形成された電子写真感光体において、前記電荷輸送剤が、下記一般式(1)で表されるエナミンヒドラゾン化合物のうち、後述する式(1−1)〜(1−5)で示される化合物から選択された一種であることを特徴とする。


Figure 0005416915
式(1)中、Rは炭素数2以上のアルキル基であり、Ra、Rb、Rc、Rd、Reはそれぞれ同一または異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアルケニル基、または−OR(ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)であり、置換基の数を示すmは0〜4の整数、n、o、p、qは0〜5の整数である。
前記Rが、炭素数4以上のアルキル基であることが好ましい。
また、前記バインダー樹脂が、下記一般式(2)〜(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有するポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
Figure 0005416915
式(2)〜(4)中、Rf、Rg、Rhはそれぞれ同一または異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアルケニル基、または−OR (ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)であり、置換基の数を示すr、s、tはそれぞれ0〜4の整数である。
また、前記感光層が、前記電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を同一層に含有する単層構造であることが好ましい。
さらに、前記感光層が、少なくとも前記電荷発生剤を含む電荷発生層と、前記電荷輸送剤および前記バインダー樹脂を含む電荷輸送層とを有する積層構造であることが好ましい。
また、本発明の画像形成装置は、像担持手段と、該像担持手段の表面を帯電させる帯電手段と、前記像担持手段の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を前記像担持手段から被転写体へ転写する転写手段とを備え、かつ、前記像担持手段の表面の電荷を除去する除電手段を具備しない画像形成装置において、前記像担持手段が、前記電子写真感光体であることを特徴とする。
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送剤が結晶化して析出することなく作製でき、高温高湿環境下においても電気特性に優れる。
また、本発明の画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を備えるので、高品質の画像が得られる。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を含有する感光層が形成されている。
<導電性基体>
導電性基体の材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属、該金属に陽極酸化処理によって酸化皮膜を形成したもの;該金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料;ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス;カーボンブラック等の導電性微粒子を分散させたプラスチック材料等が挙げられる。
なお、本発明において「導電性」とは、抵抗値が1.0×10Ω・cm以下であることを意味する。
導電性基体の形状としては、シート状、ドラム状等が挙げられる。導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜決定すればよい。
導電性基体は、その表面に粗面化処理を施してもよい。これにより、干渉縞の発生を防止できる。粗面化処理の方法としては、エッチング、陽極酸化、ウエットブラスティング法、サンドブラスティング法、粗切削、センタレス切削等の方法が挙げられる。
<感光層>
感光層は、電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を含有する。
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、公知の電荷発生剤を用いることができる。具体的には、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等の有機光導電体;セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電剤等が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、電荷発生剤としては、化合物(10−1)〜(10−4)が好ましい。
Figure 0005416915
(電荷輸送剤)
本発明においては、感光層が電荷輸送剤として下記一般式(1)で表されるエナミンヒドラゾン化合物を含有することを特徴とする。以下、一般式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の化合物も同様に記す。
Figure 0005416915
は炭素数2以上のアルキル基である。
アルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
としては、炭素数4以上のアルキル基が特に好ましい。
Ra、Rb、Rc、Rd、Reはそれぞれ同一または異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアルケニル基、または−ORである。これらアルキル基、アリール基、およびアルケニル基は置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
アルキル基としては、先に例示したアルキル基や、メチル基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソブテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基等が挙げられる。
−ORは、Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。アルキル基およびアリール基としては、先に例示した各アルキル基およびアリール基が挙げられる。
Ra、Rb、Rc、Rd、Reとしては、メチル基が好ましい。
m、n、o、pはそれぞれ置換基の数を示す。mは0〜4の整数であり、n、o、p、qは0〜5の整数である。合成の観点からm〜qは0が好ましい。
化合物(1)としては、例えば、化合物(1−1)〜(1−5)が挙げられる。
Figure 0005416915
化合物(1)は、例えば、以下のようにして製造する。反応式中、R、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、m、n、o、p、qは、式(1)の説明と同じである。
(a)工程:
酸触媒の存在下、有機溶剤中にて2級アミン化合物(5)とアルデヒド化合物(6)とを反応させてエナミン中間体(7)とし、エナミン中間体(7)を抽出、精製する。
Figure 0005416915
2級アミン化合物(5)とアルデヒド化合物(6)との反応割合(モル比)は、1:1〜1:2.5が好ましい。アルデヒド化合物(6)が少なすぎると、2級アミン化合物(5)が残り精製が困難となる。アルデヒド化合物(6)が多すぎると、コストアップとなる。
反応温度は、50〜120℃が好ましく、反応時間は、1〜30時間が好ましい。該範囲とすることにより、比較的簡易な製造設備で、所望の反応を効率的に実施できる。
酸触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ピリジニュウム−p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
酸触媒の添加量は、アルデヒド化合物(6)100質量部に対して、0.05〜100質量部が好ましく、0.2〜40質量部がより好ましい。酸触媒の添加量が0.05質量部未満では、2級アミン化合物(5)とアルデヒド化合物(6)との反応性が著しく低下するおそれがある。酸触媒の添加量が100質量部を超えると、2級アミン化合物(5)とアルデヒド化合物(6)との反応を制御することが困難になるおそれがある。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
なお、(a)工程では、反応中に水が副生成物として生成するが、この水は反応を妨げるので、生成した水を有機溶剤と共沸させて、反応系外に取除くのが好ましい。
(b)工程:
Vilsmeier試薬に、エナミン中間体(7)を加え、Vilsmeier反応によるホルミル化を行い、反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を添加し、加水分解してエナミン−アルデヒド中間体(8)を得る。
Figure 0005416915
エナミン中間体(7)とVilsmeier試薬との反応割合(質量比)は、1:1〜1:2が好ましい。Vilsmeier試薬が少なすぎると、エナミン中間体(7)が残り精製が困難となる。Vilsmeier試薬が多すぎると、コストアップとなる。
反応温度は、60〜120℃が好ましく、反応時間は、1〜10時間が好ましい。該範囲とすることにより、比較的簡易な製造設備で、所望の反応を効率的に実施できる。
Vilsmeier試薬は、溶剤中に、N,N−二置換ホルムアミドと酸塩化物とを加えて調製できる。
溶剤としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジクロロエタン等が挙げられる。
N,N−二置換ホルムアミドとしては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−N−フェニルホルムアミド、N,N−ジフェニルホルムアミドなどが挙げられる。
酸塩化物としては、例えばオキシ塩化リン、塩化チオニル、塩化オキザリルなどが挙げられる。
(c)工程:
酸性条件下、有機溶剤中にてエナミン−アルデヒド中間体(8)とヒドラジン化合物(9)とを加熱縮合反応させて化合物(1)とし、化合物(1)を抽出、精製する。
Figure 0005416915
エナミン−アルデヒド中間体(8)とヒドラジン化合物(9)との反応割合(モル比)は、1:1〜1:1.3が好ましい。ヒドラジン化合物(9)が少なすぎると、化合物(1)の収量が少なくなる。ヒドラジン化合物(9)が多すぎると、未反応のヒドラジン化合物(9)が多くなり、副反応などにより化合物(1)の精製が困難となるおそれがある。
反応温度は、40〜80℃が好ましく、反応時間は、3〜8時間が好ましい。該範囲とすることにより、比較的簡易な製造設備で、所望の反応を効率的に実施できる。
酸性条件下とするには、例えば酢酸、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等の酸触媒を反応系に添加すればよい。このような酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸触媒の添加量は、エナミン−アルデヒド中間体(8)1モルに対して、0.0001〜2モルが好ましい。酸触媒の添加量が0.0001モル未満では、エナミン−アルデヒド中間体(8)とヒドラジン化合物(9)との反応性が著しく低下するおそれがある。酸触媒の添加量が2モルを超えると、エナミン−アルデヒド中間体(8)とヒドラジン化合物(9)との反応を制御することが困難になるおそれがある。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
以上説明した化合物(1)は、上記一般式(1)のRとして炭素数2以上のアルキル基に特定することで、すなわち、上記一般式(14)で表される化合物のRとして、炭素数2以上のアルキル基を有するアリール基(フェニル基)を選択して用いることで、結晶性が低下し、その結果、溶剤への溶解性、および後述するバインダー樹脂との相溶性が向上する。特に、Rが炭素数4以上のアルキル基の場合、より結晶性が低下しやすくなるので溶解性および相溶性がより向上する。
なお、溶剤とは、詳しくは後述するが、感光層を構成する各成分を溶解させて塗布液を調製する際に用いる溶剤のことであり、具体的には芳香族系炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類等を例示できる。
ところで、一般式(14)で表される化合物のR、R、R、R、Rの全てがアリール基、例えば全てがフェニル基である化合物の場合、分子としての平面性が大きくなるため、電荷輸送剤としての特性(例えば移動度など)がより向上するものの、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性が著しく低下しやすかった。
しかし、本発明であれば、一般式(1)のRとして炭素数2以上のアルキル基に特定することで、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性が向上する。従って、電荷輸送剤として一般式(1)で表されるエナミンヒドラゾン化合物を用いることで、溶剤への溶解性、およびバインダー樹脂との相溶性を低下させることなく、電子輸送剤としての特性を向上できる。
本発明においては、上述した化合物(1)を電荷輸送剤として用いるが、化合物(1)以外の電荷輸送剤を併用してもよい。
ところで、電荷輸送剤は、正孔輸送剤と電子輸送剤とに大別できる。上述した化合物(1)は、正孔輸送剤に分類される。
その他の電荷輸送剤のうち、正孔輸送剤としては、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリル系化合物、カルバゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニレンジアミン系化合物等が挙げられる。正孔輸送剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、電子輸送剤としては、キノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。電子輸送剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら電子輸送剤の中でも、電子受容性および電荷発生剤との相溶性が優れており、感度特性および耐久性に優れた電子写真感光体が得られることから、化合物(11−1)〜(11−5)が特に好ましい。
Figure 0005416915
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、ビスフェノールZ型、ビスフェノールZC型、ビスフェノールC型、ビスフェノールA型等のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのバインダー樹脂の中でも、感光層の膜強度や、正孔輸送剤および電子輸送剤との相溶性の観点から、下記一般式(2)〜(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有するポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
Figure 0005416915
Rf、Rg、Rhはそれぞれ同一または異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアルケニル基、または−OR である。これらアルキル基、アリール基、およびアルケニル基は置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
アルキル基、アリール基、およびアルケニル基としては、先に例示した各アルキル基、アリール基、およびアルケニル基が挙げられる。
−ORは、Rが炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。アルキル基およびアリール基としては、先に例示した各アルキル基およびアリール基が挙げられる。
r、s、tはそれぞれ置換基の数を示す。r、s、tは0〜4の整数であり、合成の観点から0が好ましい。
(その他)
感光層には、電子写真特性に影響を与えない範囲で、公知の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散補助剤、ワックス、アクセプター、ドナーなどが挙げられる。
また、感光体層の感度を向上させるために、テルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
これら添加剤としては、具体的にビフェニル化合物が挙げられる。ビフェニル化合物を添加することで、クラックの発生を抑制し、感光層がひび割れるのを防止できる。ビフェニル化合物としては、(12−1)〜(12−20)が例示できる。
Figure 0005416915
また、分散補助剤としては、化合物(12−21)が例示できる。
Figure 0005416915
<感光層の構造>
感光層は、上述した電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を同一層に含有する単層構造であってもよく、少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層と、電荷輸送剤およびバインダー樹脂を含む電荷輸送層とを有する積層構造であってもよい。
なお、積層構造の感光層中における、電荷発生層と電荷輸送層の積層の順番は特に制限されない。ただし、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて膜厚が薄いため、電荷発生層を保護するために、電荷発生層の上に電荷輸送層を設けることが好ましい。
ここで、本発明において、単層構造の感光層を有する電子写真感光体を「単層型電子写真感光体」、積層構造の感光層を有する電子写真感光体を「積層型電子写真感光体」とする。
(単層構造の感光層)
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜30質量部がより好ましい。
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して20〜500質量部が好ましく、30〜200質量部がより好ましい。
電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して5〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましい。
感光層の厚さは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
(積層構造の感光層)
電荷発生層は、上述した電荷発生剤およびバインダー樹脂を含む。また、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、公知の添加剤を含有していてもよい。
電荷発生層中における、電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して5〜1000質量部が好ましく、30〜500質量部がより好ましい。
電荷発生層の厚さは、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。
電荷輸送層は、上述した電荷輸送剤とバインダー樹脂を含む。また、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、公知の添加剤を含有していてもよい。
電荷輸送層の正孔輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して10〜500質量部が好ましく、25〜200質量部がより好ましい。
電荷輸送層に電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
電荷輸送層の厚さは、2〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
<その他の層>
本発明の電子写真感光体には、導電性基体と感光層の間に下引き層を介在させてもよい。下引き層を介在させた電子写真感光体は、リークの発生を効果的に抑制できる。また、感光層上に、保護層を設けてよい。
下引き層は、無機粒子を含有する。無機粒子を含有することで、リークの発生を抑制しつつ、電子写真感光体を露光した際に円滑に電流を流して抵抗の上昇を抑えることができる。無機粒子としては金属または金属酸化物が挙げられ、具体的にはアルミニウム、鉄、銅、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。中でも、酸化チタンが好ましい。特に、適度な絶縁性を付与できる観点から、ルチル型の酸化チタンが好ましい。
下引き層は、上述した無機粒子の他に、バインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂としては、感光層の説明において先に例示したバインダー樹脂の中から、1種以上を選択して使用することができる。
下引き層の厚さは、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。
下引き層中における、無機粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して10〜1000質量部が好ましく、30〜400質量部がより好ましい。
<電子写真感光体の作製>
本発明の電子写真感光体は、例えば以下のようにして作製できる。
(単層型電子写真感光体)
正孔輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂、および必要に応じて電子輸送剤を溶剤に溶解または分散させた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて、導電性基体上に感光層が形成された電子写真感光体を作製する。
塗布液の調製は、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて、各成分を溶剤に溶解または分散させることによって行われる。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
塗布方法は、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法等の公知の方法が挙げられる。
乾燥装置としては、高温乾燥機、減圧乾燥機等が挙げられる。乾燥温度は、60〜150℃が好ましい。
なお、感光層を形成する前に、導電性基体上に下引き層を形成させてもよい。この場合、下引き層に含まれる各成分を上述した溶剤に溶解または分散させて下引き層用塗布液を調製し、該塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させて下引き層を形成すればよい。
塗布液の調製方法、塗布方法、乾燥条件等は、感光層を形成させる場合と同様である。
(積層型電子写真感光体)
まず、電荷発生層に含まれる各成分を上述した溶剤に溶解または分散させて、電荷発生層用塗布液を調製する。同様に、電荷輸送層に含まれる各成分を上述した溶剤に溶解または分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製する。
ついで、導電性基体上に、上述した各塗布液を順次塗布および乾燥させて、電荷発生層および電荷輸送層を形成する。
各塗布液の塗布および乾燥の順番は特に制限されない。また、塗布液の調製方法、塗布方法、乾燥条件等は、単層型電子写真感光体の感光層を形成させる場合と同様である。
さらに、単層型電子写真感光体の場合と同様に、電荷発生層および電荷輸送層を形成する前に、導電性基体上に下引き層を形成させてもよい。
このようにして得られる本発明の電子写真感光体は、溶剤への溶解性やバインダー樹脂との相溶性に優れた、特定の化合物(1)を電荷輸送剤として用いて作製するので、作製時に電荷輸送剤の一部が結晶化するのを抑制でき、析出しにくい。従って、本発明の電子写真感光体は、感度等の電気特性に優れる。
また、本発明の電子写真感光体は、高温高湿環境下で使用しても、電気特性を維持できる。
[画像形成装置]
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。この例の画像形成装置10は、像担持手段11と、帯電手段12と、露光手段13と、現像手段14と、転写手段15と、クリーニング手段16を備える。
像担持手段11は、本発明の電子写真感光体であり、ドラム状の導電性基体上に、電荷発生剤および電荷輸送剤を含む感光層が形成されている。
帯電手段12は、像担持手段11の表面を帯電させる手段であり、コロナ帯電装置、帯電ローラ、帯電ブラシ等が挙げられる。
露光手段13は、像担持手段11の表面を露光して静電潜像を形成する手段である。
現像手段14は、トナーを用いて静電潜像をトナー像として現像する手段である。
転写手段15は、トナー像を像担持手段11から被転写体(図示略)へ転写する手段である。
クリーニング手段16は、感光体ドラムに付着する紙粉等を除去する手段であり、弾性ブレード、ファーブラシ等が挙げられる。
一般的に、画像形成装置には、像担持手段の表面の電荷を除去する除電手段が設けられている場合が多い。
しかし、本発明の画像形成装置であれば、像担持手段として本発明の電子写真感光体を用いるので、感光層内部に露光によって生じた電荷が蓄積されにくい。そのため、除電手段を具備しなくても、感光体が次のサイクルで帯電された時に、露光部と非露光部との表面電位差が小さい。従って、除電ランプ等の除電手段を設ける必要がなく、製造コストを削減できる。
また、本発明の画像形成装置は感光層が十分な膜強度と、耐リーク性を有しているため、帯電手段として帯電ローラを使用することが可能となる。帯電ローラを使用することで、帯電手段から発生するオゾンや窒素酸化物等の活性ガスの排出を抑え、活性ガスによる電子写真感光体の感光層の劣化を防止すると共に、オフィス環境等に配慮した設計をすることができる。
以上説明した画像形成装置にあっては、電荷輸送層における電荷輸送剤の結晶化が抑えられ、電気特性に優れる本発明の電子写真感光体を用いているため、結晶が原因となる画像欠損や画像かぶり等が発生しにくく、高品質の画像を得ることができる。また、本発明の電子写真感光体は高温高湿環境下においても、電気特性を維持できるので、高品質の画像が得られる。
このような画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等が挙げられる。
[電荷輸送剤の合成]
<化合物(1−1)の合成>
(a)工程:
反応容器に、p−トルエンスルホン酸モノハイドレード6.0g(0.03mol)、2級アミン化合物(5−1)19.7g(0.1mol)、アルデヒド化合物(6−1)23.5g(0.12mol)、トルエンを入れ、130℃で加熱しながら4時間撹拌し、水を系外へ取り除きながら反応させた。室温まで冷却した後、エナミン中間体(7−1)を抽出、精製した。
Figure 0005416915
(b)工程:
まず、N,N−ジメチルホルムアミド中に、N−ジメチルホルムアミド300mLとオキシ塩化リン18.6g(0.12mol)とを加えてVilsmeier試薬を調製した。
得られたVilsmeier試薬40gに、エナミン中間体(7−1)30.0g(0.08mol)を加え、95℃で加熱しながら1時間撹拌し、Vilsmeier反応によるホルミル化を行い、反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、加水分解してエナミン−アルデヒド中間体(8−1)を得た。
Figure 0005416915
(c)工程:
反応容器に、1N−塩酸44mL、エナミン−アルデヒド中間体(8−1)16.1g(0.04mol)とヒドラジン化合物(9−1)8.1g(0.044mol)、テトラヒドロフランを入れ、50℃で加熱しながら3時間撹拌し、加熱縮合反応させた。室温まで冷却した後、化合物(1−1)を抽出、精製した。
Figure 0005416915
<化合物(1−2)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−2)21.1g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(1−2)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(1−3)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−3)22.5g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(1−3)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(1−4)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−4)23.9g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(1−4)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(1−5)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−5)25.3g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(1−5)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(14−1)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−6)18.3g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(14−1)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(14−2)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−7)18.3g(0.1mol)を用い、(c)工程において、化合物(9−1)の代わりに、化合物(9−2)5.4g(0.044mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(14−2)を得た。
Figure 0005416915
<化合物(14−3)の合成>
(a)工程において、化合物(5−1)の代わりに、化合物(5−8)16.9g(0.1mol)を用いた以外は、化合物(1−1)と同様にして合成して、化合物(14−3)を得た。
Figure 0005416915
[電荷発生剤(チタニルフタロシアニン)の合成]
(顔料化前処理)
アルゴン置換したフラスコ中に、o−フタロニトリル25gと、チタンテトラブトキシド28gと、キノリン300gとを加え、撹拌しつつ150℃まで昇温した。
つぎに、反応系から発生する蒸気を系外へ留去しながら215℃まで昇温した後、この温度を維持しつつさらに2時間、撹拌して反応させた。
反応終了後、150℃まで冷却した時点で反応混合物をフラスコから取り出し、ガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をN,N−ジメチルホルムアミド、およびメタノールで順次洗浄した後、真空乾燥して、青紫色の固体24gを得た。
得られた青紫色の固体10gを、N,N−ジメチルホルムアミド100mL中に加え、撹拌しつつ130℃に加熱して2時間、撹拌処理を行った。
つぎに、2時間経過した時点で加熱を停止し、23±1℃まで冷却した後、撹拌も停止し、この状態で12時間、液を静置して安定化処理を行った。
そして安定化された液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、真空乾燥して、チタニルフタロシアニン化合物の粗結晶9.83gを得た。
(顔料化処理)
得られたチタニルフタロシアニン化合物の粗結晶5gを、濃硫酸100mLに加えて溶解した。
次にこの溶液を、氷冷下の水中に滴下した後、室温で15分間撹拌し、さらに23±1℃付近で30分間、静置して再結晶させた。
次に上記液をガラスフィルターによってろ別し、得られた固体を洗浄液が中性になるまで水洗した後、乾燥させずに水が存在した状態で、クロロベンゼン200mL中に分散させて50℃に加熱して10時間、撹拌した。
そして液をガラスフィルターによってろ別したのち、得られた固体を50℃で5時間、真空乾燥させて、チタニルフタロシアニン(10−2)の結晶(青色粉末)4.1gを得た。
得られたチタニルフタロシアニン(10−2)は、初期および1,3−ジオキソランまたはテトラヒドロフラン中に7日間、浸漬しても、ブラッグ角度2θ±0.2°=7.4°および26.2°にピークが発生していないこと、および吸着水の気化に伴う90℃付近のピーク以外は50℃から400℃まで温度変化のピークを示さないことを確認した。
[試験1:積層型電子写真感光体]
<実施例1>
(積層型電子写真感光体の作製)
アルミナとシリカで表面処理した後、湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン(テイカ社製、「SMT−02」、数平均一次粒子径10nm)2.8質量部と、共重合ポリアミド樹脂 (ダイセルデグサ社製「ダイアミドX4685」)1質量部とを、エタノール10質量部およびブタノール2質量部に、ビーズミルを用いて5時間分散させ、下引き層用塗布液を調製した。
得られた下引き層用塗布液を5μmのフィルタにてろ過した後、導電性基体として直径30mm、全長238.5mmのアルミニウム製のドラム状基体に、ディップコート法にて塗布し、130℃30分で熱処理し、膜厚1.5μmの下引き層を形成した。
次に電荷発生剤として先に合成したチタニルフタロシアニン(10−2)1質量部、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(電気化学工業社製、「デンカブチラール#6000EP」)1質量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部、テトラヒドロフラン40質量部を混合し、ビーズミルにて2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を作製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、3μmのフィルタにてろ過した後、上記で作製した下引き層上にディップコート法にて塗布し、50℃で5分間乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
次に、正孔輸送剤として化合物(1−1)70質量部と、添加剤としてヨシックスBHT(ジ−t−ブチル−p−クレゾール)5質量部、およびメタ・ターフェニル(12−3)3質量部、バインダー樹脂として下記に示す粘度平均分子量50,500のポリカーボネート樹脂(13−1)100質量部、溶剤としてテトラヒドロフラン430質量部とトルエン430質量部を混合溶解し、電荷輸送層用塗布液を調製した。
調製した電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層用塗布液と同様にして電荷発生層上に塗布し、130℃で30分乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形成し、積層型電子写真感光体を作製した。
Figure 0005416915
(評価1:電気特性試験)
積層型電子写真感光体を、負帯電反転現像プロセスを採用したプリンタ(沖データ社製、「MicroLine−22N」、除電手段非搭載)に設置し、常温常湿環境下(23℃、40RH%)にて、10000枚印刷処理した。印刷後、表面電位計を用いて、現像位置での電位を測定し、電気特性(表面電位、明電位、露光メモリー)を評価した。表面電位は白紙部電位(V)、明電位はベタ部の電位(V)、露光メモリは前周露光部の次の白紙部電位(V0b)から、(V−V0b)として求めた。結果を表1に示す。
(評価2:画像かぶり)
電気特性試験と同様にして、積層型電子写真感光体をプリンタに設置し、高温高湿環境下(35℃、85RH%)にて白紙画像を20枚印刷した。10枚目の白紙画像について、マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、「SPM−50」)を用い、かぶり値(FD値)を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2〜14、比較例1〜3>
表1に示す電荷発生剤を用いて電荷発生層用塗布液を調製し、表1に示す正孔輸送剤およびバインダー樹脂を用いて電荷輸送層用塗布液を調製した以外は、実施例1と同様にして積層型電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表1に示す。
なお、バインダー樹脂(13−2)〜(13−6)は以下に示すものである。
Figure 0005416915
Figure 0005416915
表1から明らかなように、実施例で得られた積層型電子写真感光体は、比較例で得られた積層型電子写真感光体に比べて、明電位および露光メモリが低く、電気特性に優れていた。また、かぶり値が低く、高品質の画像を形成できるものである。
一方、比較例1で得られた積層型電子写真感光体は、電荷輸送層用塗布液を塗布する際に、正孔輸送剤が結晶化して感光体の表面に析出したため、明電位および露光メモリを測定することができなかった。そのため、評価試験は実施しなかった。
比較例2で得られた積層型電子写真感光体は、明電位が実施例に比べて高く、感度が劣っていた。
比較例3で得られた積層型電子写真感光体は、電荷輸送層用塗布液を塗布する際に、正孔輸送剤が結晶化して析出しやすかった。そのため、明電位および露光メモリが実施例に比べて高く、感度が劣っていた。また、かぶり値が高かった。
[試験2:単層型電子写真感光体]
<実施例15>
(単層型電子写真感光体の作製)
まず、電荷発生剤としてx型無金属フタロシアニン(10−1)3質量部、正孔輸送剤として、化合物(1−1)50質量部、電子輸送剤として、ジフェノキノン化合物(11−1)40質量部、添加剤としてメタ・ターフェニル(12−3)3質量部、バインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂(13−1)100質量部を、有機溶媒としてテトラヒドロフラン600質量部とともに、超音波分散機にて混合分散し、感光層用塗布液を調製した。
次に、得られた感光層形成用塗布液を、実施例1と同様にして導電性基体上に形成した下引き層上に、ディップコート法にて塗布し、その後、130℃で40分間熱風乾燥し、膜厚25μmの感光層を形成して、単層型電子写真感光体を作製した。
(評価3:電気特性試験)
単層型電子写真感光体をプリンタ(京セラミタ社製、「プリンタDP−560」)に設置し、常温常湿環境下(23℃、40RH%)にて、10000枚印刷処理した。印刷後、表面電位計を用いて、現像位置での電位を測定し、電気特性(明電位、露光メモリー)を評価した。明電位はベタ部の電位(V)、露光メモリは前周露光部の次の白紙部電位(V0b)から、(V−V0b)として求めた。結果を表2に示す。
なお、プリンタの電子写真感光体の回転速度は周速60mm/秒、光量を1.0μJ/cmとした。プリンタは、現像同時クリーニング方式による画像形成装置であり、スコロトロン帯電器と、露光器と、現像器と、転写ローラを具備している。また、プリンタは除電ランプを取り外してから使用した。
(評価4:画像かぶり)
電気特性試験(評価3)と同様にして、単層型電子写真感光体をプリンタに設置し、高温高湿環境下(35℃、85RH%)にて白紙画像を20枚印刷した。10枚目の白紙画像について、マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、「SPM−50」)を用い、かぶり値(FD値)を測定した。結果を表2に示す。
<実施例16〜28>
表2に示す電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、およびバインダー樹脂を用いて感光層用塗布液を調製した以外は、実施例15と同様にして単層型電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表2に示す。
なお、実施例24については、正孔輸送剤としてチタニルフタロシアニン(10−2)を3質量部と、分散補助剤としてC.I.Pigment Yellow93(PY93)を2質量部併用した。
Figure 0005416915
表2から明らかなように、実施例で得られた単層型電子写真感光体は、明電位および露光メモリが低く、電気特性に優れていた。また、かぶり値が低く、高品質の画像を形成できるものである。
本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
10:画像形成装置、11:像担持手段(電子写真感光体)、12:帯電手段、13:露光手段、14:現像手段、15:転写手段。

Claims (5)

  1. 導電性基体上に、電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を含有する感光層が形成された電子写真感光体において、
    前記電荷輸送剤が、下記式(1−1)〜(1−5)で示される化合物から選択された一種であることを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 0005416915
  2. 前記バインダー樹脂が、下記一般式(2)〜(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有するポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項記載の電子写真感光体。
    Figure 0005416915
    式(2)〜(4)中、Rf、Rg、Rhはそれぞれ同一または異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数6〜30のアルケニル基、または−OR (ただし、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基である。)であり、置換基の数を示すr、s、tはそれぞれ0〜4の整数である。
  3. 前記感光層が、前記電荷発生剤、電荷輸送剤、およびバインダー樹脂を同一層に含有する単層構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記感光層が、少なくとも前記電荷発生剤を含む電荷発生層と、前記電荷輸送剤および前記バインダー樹脂を含む電荷輸送層とを有する積層構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  5. 像担持手段と、該像担持手段の表面を帯電させる帯電手段と、前記像担持手段の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記トナー像を前記像担持手段から被転写体へ転写する転写手段とを備え、かつ、前記像担持手段の表面の電荷を除去する除電手段を具備しない画像形成装置において、
    前記像担持手段が、請求項1〜のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
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