JP5412699B2 - 全粒小麦粉を配合したうどんの製造方法 - Google Patents

全粒小麦粉を配合したうどんの製造方法 Download PDF

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本発明は製麺技術分野に属し、特に、全粒小麦粉を配合したうどんを製造する方法に関する。
うどんの製造方法は既に数多く知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9参照)。また、全粒小麦粉を配合した麺類は公知である(特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13及び特許文献14参照)。
特開2008−178373号公報 特開2005−328790号公報 特開2003−169590号公報 特開平11−266812号公報 特開平10−42810号公報 特開平08−275746号公報 特開平07−111874号公報 特開平06−169714号公報 特開平06−113767号公報 特開2007−125003号公報 特開2007−082542号公報 特開2005−218418号公報 特開平07−194329号公報 特表2007−514443号公報
全粒小麦粉を使用することにより、特有の香りと味わいを有し、栄養価の高いうどんを製造することができる。しかしその反面、うどん本来の食感が損なわれてしまう傾向がある。
全粒小麦粉を使用した場合においても、原料粉として、全粒小麦粉を20〜30重量%含み、残りを果皮及び種皮の挽き込まれていない従来のうどん用小麦粉としたものを用いてうどんを製造するのであれば、従来の製造方法でもさほど食感を損なうことなくうどんを製造することができる。
しかし、原料粉における全粒小麦粉の含有率が20〜30重量%程度では、全粒小麦粉特有の香り高いうどんを得ることは難しい。
また、原料粉に全粒小麦粉を高い含有率で配合したうどんは、製麺直後に茹で上げればおいしく食すことができるが、製麺後における時間の経過とともにうどんの性状が急速に劣化してしまうため、1日以上の保存には向かない。
本発明が解決しようとする課題は、うどん本来の食感を損なうことなく、全粒小麦粉を配合したことによる特有の香味と高い栄養価を有し、且つ保存性の良いうどんを製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のうどんの製造方法は、全粒中力小麦粉を40〜60重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を40〜60重量%含む原料粉に、食塩を溶解させた麦茶液を加えて混練することにより麺生地を造り、その麺生地を麺に加工することを特徴としている。
原料粉に含まれる全粒中力小麦粉の分量が40〜60重量%であることにより、全粒小麦粉特有の香り高いうどんを得ることができる。この原料粉に食塩を溶解させた麦茶液を加えて混練することにより、全粒粉を40〜60重量%混合した原料粉を用いているにもかかわらず、うどん本来の食感を損なうことなく、全粒粉を配合したことによる特有の香りと味わいを有し、且つ栄養価に於いても強化されたうどんを製造することができる。原料粉を麦茶液で混練することにより、製造されるうどんの味わいと保存性が共に向上する。
原料粉に含まれる全粒中力小麦粉の割合が40重量%未満であると全粒粉ならではの特徴的な香味をさほど強く感じることができない。原料粉に含まれる全粒中力小麦粉の割合が60重量%を超えるとうどんならではの伸びやかさに欠け、歯に張り付く感覚が不快でうどんとしての美味しい食感を得られない。太く打ったそばといった印象のうどんになる。
本発明のうどんの製造方法において、前記麦茶液は食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液であることが望ましい。黒糖を溶解させた麦茶液を使用することにより、製造されるうどんの味わいと保存性をより向上させることができる。
また、前記原料粉は全粒中力小麦粉を50重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を50重量%含む原料粉であることが望ましい。原料粉に含まれる全粒中力小麦粉の割合を50重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉の割合を50重量%とすることにより、全粒粉ならではの香味を有しうどんならではの伸びやかな食感を得ることができる。そして生うどんの状態での折れの発生も最小限にとどめることができる。また、前記中力小麦粉として、国産のうどん用中力小麦粉を用いることが望ましい。前記中力小麦粉として、オーストラリア産の中力小麦粉を用いることもできる。
また、全粒中力小麦粉を40〜60重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を40〜60重量%、グラハム粉を10重量%含む原料粉に、食塩と黒糖を溶解させた麦茶液を加えて混練することにより麺生地を造り、その麺生地を麺に加工することにより、全粒小麦粉を配合したことによる特有の香りと味わいをより強く有し、且つ栄養価に於いてもより強化されたうどんを製造することができる。グラハム粉として、食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液で湿潤させたものを使用することにより、グラハム粉に含まれる外皮、胚乳部分を、心地良く咀嚼できる程に軟化させることができると同時に、製造されるうどんの味わいと保存性を向上させることができる。
グラハム粉を含む原料粉を使用する場合、その原料粉は、全粒中力小麦粉を50重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を40重量%、グラハム粉を10重量%含むことが望ましい。グラハム粉として、食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液に9時間以上浸漬して十分湿潤させたものを使用することが望ましい。浸漬時間が9時間を大きく下回ると、グラハム粉の外皮及び胚乳部分の湿潤度が不足するため、グラハム粉によるざらつき感が顕著となって、食感の良いうどんを製造することが難しくなる。
本発明によれば、うどん本来の食感を損なうことなく、全粒小麦粉を配合したことによる特有の香味と高い栄養価を有し、且つ保存性の良いうどんを製造することができる。
以下、本発明のうどんの製造方法の実施形態について説明する。
この実施形態では、国内産軟質小麦の全粒粉(日清製粉社製「スーパーファイン(登録商標)」)50重量%と国内産軟質小麦うどん用小麦粉(日清製粉社製「薫風(登録商標)」)50重量%とを混合したものを原料粉として用いる。
そして、原料粉に麦茶液を加えて混練することにより麺生地を造り、その麺生地を麺に加工することによりうどんを製造する。麦茶液と原料粉の割合は、原料粉40重量%に対し麦茶液60重量%とする。
また、麦茶液として、PH値を5.8に調整した水に麦茶成分を抽出し、その麦茶抽出液に食塩約14重量%を溶解させ、さらに黒糖を約3重量%溶解させた液体を用いる。麦茶成分の抽出の仕方は任意であるが、たとえば伊藤園社製のパック麦茶を使用し、1パック分8.5g)の乾燥麦を1リットルの水に入れて約3時間放置することによりミネラルを適度に含む麦茶成分を抽出することができる。
混練した生地からうどんを製麺する方法は公知の方法であり特に限定されるものではない。なお、製造するうどんは生麺、茹で麺、乾麺のいずれでもよい。
この実施形態の製造方法によれば、従来のうどんと比較して保存性を著しく向上させたうどんを製造することができる。この製造方法により得られた生うどんは、1日〜2日間であれば通常の冷温保存により品質を安定に保った状態で保存可能である。
また、従来の生うどんと比較して、(a)外観、(b)香り、(c)味わい、(d)食感のいずれの点に於いても向上している。特に茹で上げたうどんの(d)食感の向上は著しく、全粒粉を50重量%混合した原料粉を用いているにもかかわらず、通常のうどん用小麦粉のみで製麺された生うどんを茹で上げたが如くの伸びやかさを兼ね備えたうどんの腰を感じることができる。
また、原料粉として、食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液で湿潤したグラハム粉(粗挽き全粒粉)を配合したものを使用し、その原料粉に食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液を加えて混練することにより麺生地を造り、その麺生地を麺に加工することにより、従来にない特有の香味と新たな食感を有し、且つ保存性の良いうどんを製造することができる。
本発明に係る製造方法の実施例と比較例を以下に示す。
[比較例1]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)50重量%を混合した原料粉を作成した。この原料粉40重量%に、PH値5.8、塩分濃度14%の食塩水60重量%を少しずつ加えながら混練した。その際、食塩水を50〜55重量%加えたところで混練を一時休止し、ビニール袋をかけてそのままの状態で10分ほど放置し、小麦粉に食塩水が良く馴染んできたところで、残りの5〜10重量%の食塩水をさらに少しずつ加えながら混練した。
麺生地が程よくまとまってきたところで、その麺生地の塊をビニール袋に入れて密閉し、麺生地を休ませるために常温にてそのまま2時間ほど放置した。
その後ビニール袋から麺生地を取り出しさらに圧力をかけて練りこんでいった。練りこみを続けるに従って弾力が増した。麺生地が身割れする手前で練りこみをやめて再びビニール袋に入れて密閉し、麺生地を休ませるために常温にて3時間ほど放置した。
その後ビニール袋から麺生地を取り出しさらにもう一度圧力をかけて練りこんでいくと、麺生地の表面が滑らかにそして艶やかになってきた。
そこで、麺生地を麺棒などで伸ばしたさいに割れ目や繋ぎ目が極力でないようにまとめながら窄めていった。窄めたところが下になるように麺生地をビニール袋に入れて密閉し4時間常温で休ませた。
その後麺生地を麺棒で厚さ2mmに延ばし、包丁で幅4mmに切って生うどんを製麺し、得られたうどんに下記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
(A):製麺したうどんを沸騰した湯で7分30秒間茹でた後直ぐに水で締める。
(B):製麺した生うどんを冷蔵庫にて1日保存し、沸騰した湯で7分30秒間茹でる。
(C):製麺した生うどんを冷蔵庫にて2日保存し、沸騰した湯で7分30秒茹でる。
<比較例1の結果>
比較例1の結果は以下の通りであった。
結果1:(A)の実施結果
茹で上がりに折れることなく良好な色沢で茹で上がった。水で締めたうどんを試食したところ、芳ばしくこんがり焦げたような香りがして、味わいは優しい甘みとほのかな苦味とえぐ味が特徴的であった。食感は程よいシコシコ感が心地良くやや伸びやかでその後潔くプツンと切れる腰のある印象のうどんであった。
結果2:(B)の実施結果
1日保存した後に生うどんをばらす際に取り粉が沢山塗されているものは何とか折れずに剥がすことができた。取り粉が少ない生うどんでは折れてしまうものが1/4程度あった。折れずに残ったものだけを茹でたところ、1/3程度は折れてしまった。茹でたうどんを試食したところ、外見・香り・味わいについては結果2とほぼ同等であったが、茹で上がりに若干の尚早感を感じたのでさらに1分茹でたところ、外見・香り・味わいについては官能的に同等と判断できた。しかし食感については伸びやかさがあまり無く、ブツッと突然切れるような、心地良いとは言えない食感となっていた。
結果3:(C)の実施結果
2日保存した後生うどんをばらすが生うどん同士が張り付き思うように剥がすことができず、ほとんどが折れてしまいこの段階でうどんとして提供できるものではなくなっていた。念のため茹でてみるも、茹で上がりの際にほとんど全て折れてしまい食感はネチネチとして歯に張り付く感じがあった。香りと味わいについては結果1、結果2とほぼ同等といえるものであった。
<比較例1から得られた結論>
スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)50重量%とを配合した原料粉に塩分濃度14%の食塩水を加えていわゆる従来どおりのうどんの製麺方法を採った場合、生うどんに製麺した後直ちに茹で上げてしまえば、(a)良好な外観を有し、(b)芳ばしい香りを有し、(c)甘み・苦味・エグ味のバランスが良く味わいが豊かである、(d)良好な食感を有する、新規な味わいのうどんを得ることができる。しかし、製造後1日以上の保存には向かないという問題点を有する。
[実施例1]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)50重量%とを混合したものを原料粉として用いた。
PH値5.8の水1リットルに伊藤園社製麦茶を1パック分抽出しそこに食塩14重量%を溶解させた液体を麦茶抽出液として用いた。
原料粉40重量%に麦茶抽出液60重量%を少しずつ加えながら混練した。
混練した麺生地から比較例1と同じ方法で製麺し、得られたうどんに上記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
<実施例1の結果>
実施例1の結果は以下の通りであった。
結果4:(A)の実施結果
茹で上がりに折れることなく良好な色沢で茹で上がった。比較例1における結果1に比べやや色調が濃くなった印象がある。試食したところ芳ばしくこんがり焦げたような香りがした。味わいは優しい甘みとほのかな苦味とえぐ味が特徴的であった。食感は程よいシコシコ感が心地良くやや伸びやかでその後潔くプツンと切れる腰のある印象のうどんであった。結果1に比べ香り・味わい・食感ともやや強まった印象はあるが顕著ではない。
結果5:(B)の実施結果
1日保存した後に生うどんをばらす際に難なく剥がすことができた。それを茹でて試食した。外観上目立って折れたうどんがあるわけでもなく、官能的にも結果4と同等の結果が得られた。
結果6:(C)の実施結果
2日保存した後に生うどんをばらす際これも難なく剥がすことができた。結果5とほぼ同等の結果が得られた。
<実施例1から得られた結論>
実施例1の製造方法により得られた生うどんは、比較例1の製造方法により得られた生うどんと比較して明らかに保存性が向上している。
比較例1と実施例1との差異は、比較例1においてはPH値5.8塩分濃度14%の単なる食塩水を使用しているのに対し、実施例1においてはPH値5.8塩分濃度14%の麦茶液を使用している点のみである。このことから、麦茶抽出液を使用したことにより、生うどんにした後の保存性が向上したものと結論付けられる。
また、実施例1の製造方法により得られた生うどんは、比較例1の製造方法により得られた生うどんと比較して、(a)外観、(b)香り、(c)味わい、(d)食感のいずれの点に於いても向上している。したがって、麦茶抽出液を使用してうどんを作ることはこれらの点においても有効であるといえる。
[実施例2]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)50重量%とを混合したものを原料粉とした。
PH値5.8の水1リットルに伊藤園社製麦茶を1パック分抽出し、そこに食塩14重量%と黒糖3重量%とを溶解させた液体を麦茶液として用いた。
原料粉40重量%に麦茶液60重量%を少しずつ加えながら混練した。
混練した麺生地から比較例1と同じ方法で製麺し、得られたうどんに上記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
<実施例2の結果>
実施例2の結果は以下の通りであった。
結果7:(A)の実施結果
茹で上がりに折れることなく良好な色沢で茹で上がった。比較例1における結果1に比べやや色調が濃くなった印象がある。試食したところ芳ばしくこんがり焦げたような香りが実施例1の結果4よりもやや強まった印象で、味わいは優しい甘みとほのかな苦味とえぐ味が特徴的で結果4より膨らみのある味わいに感じた。食感は程よいシコシコ感が心地良く伸びやかさが圧倒的にでてきた印象で極めて良好な食感であった。結果1に比べ香り・味わい・食感とも明らかに強まった印象で安定した印象が顕著に感じられた。
結果8:(B)の実施結果
1日保存した後に生うどんをばらす際に難なく剥がすことができた。びくともしない印象であった。それを茹でて試食した。外観上折れたうどんは特に確認されず、官能的にも結果7と同等の結果が得られた。
結果9:(C)の実施結果
2日保存した後に生うどんをばらす際、これも難なく剥がすことができた。結果7とほぼ同等の結果が得られた。
<実施例2から得られた結論>
実施例2の製造方法により得られた生うどんは、比較例1の製造方法により得られた生うどんと比較して明らかに保存性が著しく向上している。
比較例1と実施例2との差異は、比較例1においてはPH値5.8、塩分濃度14%の単なる食塩水を使用しているのに対し、実施例2においてはPH値5.8、塩分濃度14%、黒糖濃度3重量%の麦茶液を使用している点のみである。このことから、黒糖を溶解させた麦茶液を使用したことにより、生うどんにした後の保存性が向上したものと結論付けられる。
また、実施例2の製造方法により得られた生うどんは、実施例1の製造方法により得られた生うどんと比較しても明らかに保存性が向上している。
実施例1と実施例2との差異は、実施例1においては黒糖を溶解させていない麦茶液を使用しているのに対し、実施例2においては3重量%の黒糖を溶解させた麦茶液を使用している点のみである。このことから、麦茶液に黒糖成分が含まれていることにより、生うどんにした後の保存性が更に向上したものと結論付けられる。
[比較例2]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)40重量%とグラハム粉10重量%とを混合した原料粉を作成した。この原料粉100重量%に、PH値5.8、塩分濃度14%の食塩水60重量%を加え混練した。その際、食塩水を50〜55重量%加えたところで混練を一時休止し、ビニール袋をかけてそのままの状態で10分ほど放置し、小麦粉に食塩水が良く馴染んできたところで、残りの5〜10重量%の食塩水をさらに少しずつ加えながら混練した。
混練した麺生地から比較例1と同じ方法で製麺し、得られたうどんに上記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
<比較例2の結果>
比較例2の結果は以下の通りであった。
結果10:(A)の実施結果
茹で上がりに折れることなく見た目にもグラハム粉のツブツブの存在(粒の存在)が極めて印象的なうどんが茹で上がった。水で締めたうどんを試食したところ、グラハム粉のツブツブの存在からガサガサとガラス質のものを口に含んだかのような印象を受けた。不快な口触りであった。その後さらに食べ進めようと思えるものではない。特にグラハム粉が歯に当たる感覚が不快な、咀嚼しようとは思えない食感のため、早く飲み込んでしまおうという衝動に駆られる。ただし、芳ばしくこんがり焦げたような香りと、味わいの優しい甘みとほのかな苦味とえぐ味は従来通りであった。
結果11:(B)の実施結果
1日保存した生うどんをばらす際に折らずに剥がすことがとても困難であった。特にグラハム粉がひび割れを助長し、そこから折れてしまった。香りと味わいについては結果1とほぼ同等であったが、食感はネチネチと歯に張り付くようで伸びやかさが無くブツッと切れるような、心地よいとはいえないものであった。
結果12:(C)の実施結果
2日保存した生うどんをばらそうするが、グラハム粉により助長されたひび割れからどんどん折れてしまい、うどんとして提供できるものではなくなった。念のため茹でてみるもほとんど折れてしまい長さ2〜3cmのマカロニのようなものが茹で上がった。食感はネチネチと歯に張り付くような不快な感覚であるが、グラハム粉のガサガサ感は弱まっていた。
[実施例3]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と、薫風(登録商標)40重量%と、予めPH値5.8、塩分濃度14%の食塩水に9時間浸漬して湿潤させたグラハム粉10重量%とを混合した原料粉を作成した。
この原料粉100重量%に、PH値5.8、塩分濃度14%の食塩水60重量%を少しずつ加えながら混練した。
混練した麺生地から比較例1と同じ方法で製麺し、得られたうどんに上記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
<実施例3の結果>
結果13:(A)の実施結果
茹で上がりに折れることなく見た目にもグラハム粉のツブツブの存在が極めて印象的なうどんが茹で上がった。水で締めたうどんを試食したところ、グラハム粉のツブツブが心地良い刺激となり唇から舌先を通っていった。硬いガラス質のようなガサガサ感は無くなっていた。噛み締めると適度な抵抗感の後に潔く噛み切れるグラハム粉の外皮、グラハム粉の胚乳部分、これらがツブツブ感として心地良く感じられた。同時に芳ばしい香りと甘み・苦味・エグ味の特徴的な味わいは少々増したように思えた。それらを確認したいという衝動が生まれさらに無意識のうちにグラハム粉のツブツブを探しながら咀嚼してしまった。その結果無意識のうちに咀嚼回数が増進した。その結果芳ばしい香りと特徴的な味わいが増幅して感じられた。
結果14:(B)の実施結果
1日保存した生うどんをばらす際に折らずに剥がすことがとても困難であった。特にグラハム粉がひび割れを助長し、そこから折れてしまった。香りと味わいについては結果13とほぼ同等であったが、食感はネチネチと歯に張り付くようで伸びやかさが無くブツッと切れるような感じは否めなかった。
結果15:(C)の実施結果
2日保存した生うどんをばらそうするが、グラハム粉により助長されたひび割れからどんどん折れてしまい、うどんとして提供できるものではなくなった。念のため茹でてみるもほとんど折れてしまい長さ2〜3cmのマカロニのようなものが茹で上がった。香りと味わいについては結果13とほぼ同等であったが、食感はやはりネチネチと歯に張り付くような不快な感じであった。
<実施例3から得られた結論>
実施例3の製造方法により得られた生うどんは、比較例2の製造方法により得られた生うどんと比較して明らかに味わいにおいて向上している。しかし保存性においては、特に変化は見られない。
比較例2と実施例3との差異は、比較例2においては乾燥したままのグラハム粉を含む原料粉を使用しているのに対し、実施例3においては予め食塩水に9時間浸漬して十分湿潤させたグラハム粉を含む原料粉を使用している点のみである。
このことから、予め食塩水に9時間浸漬して十分湿潤させたグラハム粉を使用したことにより、生うどんの味わいが向上したものと結論付けられる。
[実施例4]
スーパーファイン(登録商標)50重量%と、薫風(登録商標)40重量%と、予め麦茶液に9時間浸漬させることにより湿潤させたグラハム粉10重量%とを混合した原料粉を作成した。
この原料粉100重量%に、麦茶液60重量%を少しずつ加えながら混練した。
麦茶液として、PH値5.8の水1リットルに伊藤園社製麦茶を1パック分抽出し、それに食塩14重量%と黒糖3重量%とを溶解させたものを使用した。
混練した麺生地から比較例1と同じ方法で製麺し、得られたうどんに上記(A)、(B)及び(C)の工程を実施した。
<実施例4の結果>
結果16:Aの実施結果
茹で上がりに折れることなく見た目にもグラハム粉のツブツブが極めて印象的なうどんが茹で上がった。水で締めたうどんを試食したところ、グラハム粉のツブツブが心地良い刺激となり唇から舌先を通っていった。硬いガラス質のようなガサガサ感は無くなっていた。噛み締めると適度な抵抗感の後に潔く噛み切れるグラハム粉の外皮、グラハム粉の胚乳部分、これらのツブツブ感が心地良く感じられた。結果13よりも芳ばしい香りと甘み・苦味・エグ味の特徴的な味わいは明らかに増していた。それらを確認したいという衝動が生まれさらに無意識のうちにグラハム粉のツブツブを探しながら咀嚼してしまった。その結果無意識のうちに咀嚼回数が増進した。その結果芳ばしい香りと特徴的な味わいが増幅して感じられた。結果13よりも香味の増幅は明確で、明らかに全粒粉を使っただけのうどんとは一線を画すうどんとして完成していた。
結果17:(B)の実施結果
1日保存した生うどんをばらした。特に困難は無くうどん同士がはらりと解れていった。安定感があった。それを茹でて試食した。特に折れたうどんは確認されず、官能的にも結果16と同等の結果が得られた。
結果18:(C)の実施結果
2日保存した後に生うどんをばらす際、これも難なくばらすことができた。結果17と同等の結果が得られた。
<実施例4から得られた結論>
実施例4の製造方法により得られた生うどんは、比較例2の製造方法により得られた生うどんと比較して、味わいにおいても、保存性においても飛躍的に向上している。
また、実施例4の製造方法により得られた生うどんは、実施例3の製造方法により得られた生うどんと比較しても、味わい、保存性の両面において明らかに向上している。
実施例3と実施例4との差異は、グラハム粉を湿潤させるために、実施例3においては食塩水を使用し、当該食塩水で原料粉を混練するのに対し、実施例4においては食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液を使用し、その麦茶液で原料粉を混練する点である。
このことから、原料粉に混ぜるグラハム粉を予め食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液で湿潤させておき、そのグラハム粉を混ぜた原料粉を食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液で混練することにより、味わいにおいても、保存性においても飛躍的に向上したものと結論付けられる。
一方、比較例2と実施例3とでは保存性に差がないことから、実施例3のようにグラハム粉を食塩水で湿潤させただけでは保存性は高まらないと結論付けられる。また、実施例1と実施例2との比較結果から、グラハム粉を混ぜた原料粉を使用する場合においても、黒糖を溶解させた麦茶液を使用することにより、黒糖を溶解させていない麦茶液を使用した場合と比較して、生うどんにした後の保存性が向上するものと推測される。
実施例4の製造方法により得られた生うどんは、スーパーファインに加えてグラハム粉を含有していることにより、芳ばしい香りと甘み・苦味・エグ味からなる全粒小麦粉ならではの特徴的な味わいを有している。そして、噛み締めると適度な抵抗感の後に潔く噛み切れるグラハム粉の外皮、グラハム粉の胚乳部分、これらがツブツブ感として心地良く感じられる。これを食す者は、その芳ばしい香りと特徴的な味わいと心地よい食感をより強く感じたいという欲求に駆られ、無意識のうちにグラハム粉のツブツブを探しながら咀嚼してしまう。その結果無意識のうちに咀嚼回数が増進する。その結果芳ばしい香りと特徴的な味わいが更に増幅して感じられる。これは食材の香味と食感により人間の咀嚼本能を刺激する、新しい食のメカニズムであるといえる。
なお、上記実施形態では、スーパーファイン(登録商標)50重量%と薫風(登録商標)50重量%とを混合したものを原料粉として用いているが、スーパーファイン(登録商標)40〜60重量%、薫風(登録商標)40〜60重量%という条件を満たす限りにおいて、原料粉に他の材料を配合してもよい。たとえば、原料粉に果皮及び種皮の挽きこまれていない強力小麦粉を10〜20重量%配合することにより、うどんの耐久性を高める上で最も重要な要素である蛋白質を増強することができる。強力小麦粉に加えて、馬鈴薯、タピオカ又はコーン由来の澱粉を5〜15重量%配合した原料粉を使用することにより、耐久性の良さに加えて、うどん用国産中力小麦粉のみを原料粉に使用したうどんに勝るとも劣らない食感や滑らかさを併せ持つうどんが得られる。

Claims (5)

  1. 全粒中力小麦粉を40〜60重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を40〜60重量%含む原料粉に、食塩を溶解させた麦茶液を加えて混練することにより麺生地を造り、その麺生地を麺に加工することを特徴とするうどんの製造方法。
  2. 前記麦茶液は食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液である、請求項1記載のうどんの製造方法。
  3. 前記原料粉は全粒中力小麦粉を50重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を50重量%含む原料粉である、請求項1又は2記載のうどんの製造方法。
  4. 前記原料粉は、グラハム粉10重量%を含み、残りの90重量%が全粒中力小麦粉と果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉とからなり、
    前記グラハム粉として、食塩と黒糖とを溶解させた麦茶液で湿潤させたものを使用する、請求項2記載のうどんの製造方法。
  5. 前記原料粉は、全粒中力小麦粉を50重量%、果皮及び種皮の挽き込まれていない中力小麦粉を40重量%、グラハム粉を10重量%含む原料粉である、請求項4記載のうどんの製造方法。
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