本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。尚、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとしても、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとしても実施することが可能であるが、実施例は、いずれも、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。そのため、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして実施する場合を、実施例1の説明後に簡単に説明する。また、実施例2の構成は、実施例1の構成と殆ど同じである。そのため、実施例2を説明するための図10,図11は、その異なる構成部分だけを示したものである。
先ず、主に図1〜図4を用いて本実施例の構成を説明する。尚、本実施例の説明においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだとき、図1の手前側が被写体側(即ち、撮影レンズ側)であり、図1の背面側が撮像装置側であることを前提にして説明するが、周知のように、デジタルカメラの場合には、図1の手前側が撮像装置側になり、図1の背面側が被写体側になることもある。また、図3は、あくまでも図1,図2,図4に示されている構成部材の重なり関係を理解し易くするために、便宜的に示したものである。
図1において、シャッタ地板1の略中央部には、長方形を横長にした露光用の開口部1aが形成されている。また、周知のように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後羽根の羽根室を構成している。そして、中間板2と補助地板3にも、開口部1aと類似ではあるが、一部異なる形状をした開口部2a,3aが形成されている。そして、露光開口の形状は、それらの開口部1a,2a,3aの合成によって形成されることもあるが、本実施例においては、開口部1aの形状が露光開口の形状となっている。尚、補助地板3の平面形状の外形は、シャッタ地板1の外形と略同じである。また、図3には、中間板2が示されていない。
図1,図2,図4において、開口部1aの左側の領域には、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。また、補助地板3にも、長孔1b,1cと重なる領域に、略同じ形状の長孔3b,3c(図3参照)が形成されている。
シャッタ地板1には、軸1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j,1kが立設されている。それらのうち、軸1d,1e,1h,1iは、シャッタ地板1の表面側に立設され、軸1j,1kは、図3及び図4から分かるように、シャッタ地板1の背面側に立設されていて、その先端を補助地板3に形成された孔に挿入している。また、軸1f,1gは、図3から分かるようにシャッタ地板1を貫通していて、シャッタ地板1の表面側と背面側の両方に軸部が設けられており、背面側の軸部の先端を補助地板3に形成された孔に挿入している。更に、軸1iは、図3から分かるように、円盤状の頭部を有する軸部材であり、その先端をシャッタ地板1に形成された孔に圧入している。
上記の軸1d,1eの先端には、薄い金属製の支持板6と、プリント配線板7とが、支持板6をシャッタ地板1側にして、ねじ8,9によって取り付けられている。しかし、プリント配線板7は、図1及び図2において、その外形だけを二点鎖線で示してある。支持板6は、特開平9−133944号公報に記載されている「取付基板」と類似の形状をしており、シャッタ地板1側に折り曲げて形成した二つのラチェット爪6a,6bと、ばね掛け部6cを有しているほか、シャッタ地板1側に折り曲げて特殊な形状に形成された複数の折曲部によって先羽根用電磁石と後羽根用電磁石を取り付けている。
そして、それらのうち、二つのラチェット爪6a,6bは、図3にその一部だけが示されているように、先端に二つずつ爪部6a−1,6a−2,6b−1,6b−2を形成している。また、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石は同じ構成をしており、二つの脚部を有するU字形の鉄芯部材10,11と、コイル12,13を巻回したボビン14,15とからなっている。そして、鉄芯部材10,11は、一方の脚部にボビン14,15を嵌装させており、各々の両方の脚部の先端を磁極部としている。尚、図4〜図9には、鉄芯部材10,11の配置状態が、二点鎖線で示されている。
上記の軸1f,1gは、図3から分かるように、各々、シャッタ地板1の表面側の軸部に、直径の大きい部位と直径の小さな部位を有しており、先端を、支持板6とプリント配線板7に設けた孔に挿入している。そして、軸1fは、シャッタ地板1側に形成した直径の大きな部位に、先羽根用第1駆動部材16と先羽根用第2駆動部材17を回転可能に取り付けており、支持板6側に形成した直径の小さな部位に、ラチェット部材18を回転可能に取り付けている。他方、軸1gは、シャッタ地板1側に形成した直径の大きな部位に、後羽根用駆動部材19を回転可能に取り付けていて、支持板6側に形成した直径の小さな部位に、ラチェット部材20を回転可能に取り付けている。
そして、先羽根用第2駆動部材17は、筒部17aと、被押動部17bと、取付部17cと、押動部17dとを有しており、その筒部17aを、軸1fに形成された上記の直径の大きい部位に回転可能に嵌合させている。また、図2においてはその一部を切断して示しているように、取付部17cの内部には、鉄片部材21と圧縮ばね22とが収容されている。そして、鉄片部材21は、軸部21aの一端に円盤状をした頭部21bを有し、軸部21aの他端には鉄片部21cを取り付けており、軸部21aに嵌装した圧縮ばね22によって、鉄片部21cを取付部17c内から突き出すように付勢されている。
また、先羽根用第1駆動部材16は、筒部16aと、被抑止部16bと、被押動部16cと、駆動ピン16dとを有していて、図3から分かるように、その筒部16aを、先羽根用第2駆動部材17の筒部17aの外周に回転可能に嵌合させている。そして、被押動部16cは、支持板6側に設けられており、先羽根用第2駆動部材17の押動部17dによって押され得るようになっている。また、駆動ピン16dは、シャッタ地板1側に設けられていて、シャッタ地板1の長孔1bに挿入されている。この駆動ピン16dは、根元側の部位の断面が円形であって、上記の緩衝部材4に当接し得るようになっている。また、先端側の部位の断面は砲弾状をしていて、後述のように羽根室内で先羽根に連結されており、その最先端を補助地板3の長孔3bに挿入している。
また、上記のラチェット部材18は、図3に示されているように、その外周に二つのラチェット歯18a,18bを形成している。そして、それらのラチェット歯18a,18bの歯は、両方とも同じピッチで形成されているが、位相は半ピッチだけずれていて、ラチェット歯18aは、上記のラチェット爪6aの爪部6a−1と係脱し得るようになっており、ラチェット歯18bは、上記のラチェット爪6aの爪部6a−2と係脱し得るようになっている。
また、上記の先羽根用第2駆動部材17の筒部17aには、図3に示されているように、先羽根用駆動ばね23が緩く嵌装されていて、一端を先羽根用第2駆動部材17の図示していないばね掛け部に掛け、他端をラチェット車18の図示していないばね掛け部に掛けて、図1及び図2において、先羽根用第2駆動部材17を時計方向へ回転させるように付勢している。そして、周知のように、この先羽根用駆動ばね23の付勢力は、ラチェット車18を回転させて、ラチェット爪6aとの係合位置を変えることによって調整できるようになっている。
他方、軸1gに回転可能に取り付けられている上記の後羽根用駆動部材19は、筒部19aと、取付部19bと、駆動ピン19cと、を有しているほか、ローラー19dを回転可能に取り付けていて、筒部19aを軸1gに形成された上記の直径の大きい部位に回転可能に嵌合させている。また、図2において一部を切断して示してあるように、取付部19bの内部には、鉄片部材24と圧縮ばね25が収容されている。そして、その鉄片部材24は、上記の鉄片部材21と同様に、軸部24aの一端に円盤状をした頭部24bを有し、軸部24aの他端には鉄片部24cを取り付けており、軸部24aに嵌装した圧縮ばね25によって、鉄片部24cを取付部19bの内部から突き出すように付勢されている。
また、駆動ピン19cは、シャッタ地板1側に設けられていて、シャッタ地板1の長孔1cに挿入されている。そして、この駆動ピン19cも、上記の駆動ピン16dと同様に、根元側の部位の断面が円形であって、上記の緩衝部材5に当接し得るようになっている。また、先端側の部位の断面は砲弾状をしていて、後述のように羽根室内で後羽根に連結されており、その最先端を補助地板3の長孔3cに挿入している。
また、上記のラチェット部材20は、図3から分かるように、ラチェット部材18と同じ形状をしており、その外周に二つのラチェット歯20a,20bを形成している。そして、それらのラチェット歯20a,20bの歯は、両方とも同じピッチで形成されているが、位相は半ピッチだけずれていて、ラチェット歯20aは、上記のラチェット爪6bの爪部6b−1と係脱し得るようになっており、ラチェット歯20bは、上記のラチェット爪6bの爪部6b−2と係脱し得るようになっている。
また、上記の後羽根用駆動部材19の筒部19aには、図3に示されているように、後羽根用駆動ばね26が緩く嵌装されていて、一端を後羽根用駆動部材19の図示していないばね掛け部に掛け、他端をラチェット車20の図示していないばね掛け部にかけて、図1及び図2において、後羽根用駆動部材19を時計方向へ回転させるように付勢している。そして、この後羽根用駆動ばね26の付勢力も、ラチェット車20を回転させ、ラチェット爪6bとの係合位置を変えることによって調整できるようになっている。
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1hには、セット部材27が回転可能に取り付けられている。このセット部材27は、筒部27aと、押動部27b,27cと、被押動部27dと、凹部27eとを有していて、筒部27aを軸1hに回転可能に嵌合させている。それらのうち、押動部27bは、先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bを押す部位であり、押動部27cは、後羽根用駆動部材19のローラー19dを押す部位であって、被押動部27dは、図示していないカメラ本体側の部材のよって押される部位である。
また、セット部材27は筒部27aを形成している部位を含めて全体的に厚い板状に形成されており、上記の押動部27bは、そこから軸1h(即ち、筒部27a)のラジアル方向へ張り出すように形成された肉薄部の先端の部位として形成されている。そのため、その肉薄部と、本体側の肉厚部との間には、段差面が形成されていることになるが、上記の凹部27eは、シャッタ地板1側に形成されているその段差面を外周面として、軸1hの方へ向けて切り込むように長く形成されている。そして、その凹部27eの両側の端面を第1押動面27e−1,第2押動面17e−2としている。尚、本実施例の場合は、このように、段差面を外周面として凹部27eを形成しているが、上記の押動部27bの形成位置をずらしたりして、肉厚部の外周面から切り込むように形成しても構わない。
更に、上記の筒部27aには、図示していない復帰ばねが、緩く嵌装されていて、その一端をセット部材27の図示していないばね掛け部に掛け、他端を上記した支持板6のばね掛け部6cに掛けて、図1,図2,図4においてセット部材27を反時計方向へ回転させるように付勢している。図1,図2,図4は、セット部材27が、そのような復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転するのを、シャッタ地板1側の面に設けられた図示していないピンが、シャッタ地板1に設けられた図示していないストッパ部に当接して、停止させられている状態を示したものである。以下、セット部材27については、この位置を初期位置ということにする。
シャッタ地板1に立設されている上記の軸1iには、抑止部材28が回転可能に取り付けられている。この抑止部材28は、抑止部28aと、凸部28bとを有している。そして、その抑止部28aは、セット部材27が初期位置にあるときと、初期位置の近傍位置にあるとき以外は、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bの作動軌跡内に臨まされている部位である。また、ラジアル方向へ長く突き出すようにして形成されている凸部28bは、セット部材27の凹部27e内で、上記の第1押動面27e−1に押されたり、第2押動面27e−2に押されたりし得る部位である。
次に、シャッタ地板1の背面側に配置されている先羽根と後羽根の構成を、主に図4を用いて説明する。尚、この図4のほか図5〜図9においては、図1及び図2に示されている支持板6と、プリント配線板7と、二つの電磁石と、二つのラチェット部材18,20と、二つの鉄片部材21,24と、二つの圧縮ばね22,25の図示を省略してあるが、上記したように、先羽根用電磁石の鉄芯部材10と後羽根用電磁石の鉄芯部材11だけは、二点鎖線で示してある。
そこで先ず、先羽根は、シャッタ地板1の背面側において、軸1fに対して回転可能に取り付けられているアーム29と、軸1jに対して回転可能に取り付けられているアーム30と、それらの先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根31,32,33とで構成されており、羽根33が先羽根のスリット形成羽根となっている。そして、周知のように、先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16dの先端部が、アーム29に形成された図示していない長孔に嵌合している。更に、シャッタ地板1の軸1jには、セットばね34が嵌装されていて、その一端をシャッタ地板1に設けられた図示していないばね掛け部に掛け、他端をアーム30の孔30aに掛けて、アーム30を反時計方向へ回転させるように付勢している。
他方、後羽根は、シャッタ地板1の背面側において、軸1gに対して回転可能に取り付けられているアーム35と、軸1kに対して回転可能に取り付けられているアーム36と、それらの先端部に向けて順に枢支された3枚の羽根37,38,39とで構成されており、羽根39が後羽根のスリット形成羽根となっている。そして、後羽根用駆動部材19の駆動ピン19cの先端部が、周知のように、アーム35に形成された図示していない長孔に嵌合している。更に、シャッタ地板1の軸1kには、ばね40が嵌装されていて、その一端をシャッタ地板1に設けられた図示していないばね掛け部に掛け、他端をアーム36の孔36aに掛けて、アーム36を反時計方向へ回転させるように付勢している。尚、図3においては、先羽根の3枚の羽根31〜33と、後羽根の3枚の羽根37〜39の図示が省略されている。
次に、主に、図4〜図9を用いて本実施例の作動を説明する。図4は、図1に示した露光作動終了直後の停止状態を示している。このとき、先羽根用第2駆動部材17は、先羽根用駆動ばね23の付勢力によって、その押動部17dが先羽根用第1駆動部材16の被押動部16cを押し、先羽根用第1駆動部材16を伴って時計方向へ回転する力が与えられているが、先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16dが緩衝部材4に接触しているため、その回転が阻止され、この停止状態が維持されている。そして、このとき、先羽根の3枚の羽根31〜33は、重畳状態になって開口部1aの下方位置に格納されている。
他方、後羽根用駆動部材19は、後羽根用駆動ばね26の付勢力によって時計方向へ回転する力が与えられているが、駆動ピン19cが緩衝部材5に接触しているため、その回転が阻止され、この停止状態が維持されている。そして、このとき、後羽根の3枚の羽根37〜39は、展開状態になって開口部1aを覆っている。
また、このとき、セット部材27は初期位置にあり、凹部27eの第2押動面27e−2が抑止部材28の凸部28bを押し、抑止部材28の抑止部28aを、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bの作動軌跡外にそらせている。そして、このとき、セット部材27の一方の押動部27bは、先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れており、他方の押動部27cは、後羽根用駆動部材19のローラー19dから離れている。尚、図4は、抑止部材28の凸部28bが、セット部材27の凹部27eの第1押動面27e−1とは接触していて、第2押動面27e−2との間には若干の間隙があるように示されている。そのため、この状態のときには、抑止部材28が、その間隙分だけ自由に回転し得るが、その間隙は極めて僅かであり、性能上には何ら影響を及ぼさない。
このような露光作動終了状態において、撮像情報が図示していない記憶装置に転送されると、直ちにセット作動が行われるが、本実施例のセット作動は、図示していないカメラ本体側の部材がセット部材27の被押動部27dを押し、図示していない復帰ばねの付勢力に抗してセット部材27を時計方向へ回転させることによって行なわれる。そして、セット部材27が回転を開始すると、抑止部材28は、その凸部28bがセット部材27の凹部27eの第1押動面27e−1に押されることによって反時計方向へ回転し、その抑止部28aを、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bの作動軌跡内へ臨ませてゆく。
このようにして、セット部材27と抑止部材28が回転を開始すると、その後、先ず、セット部材27の押動部27bが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bを押し、先羽根用第2駆動部材17を先羽根用駆動ばね23の付勢力に抗して反時計方向へ回転させ始める。このとき、先羽根用第1駆動部材16には、セットばね34により、先羽根を介して反時計方向へ回転する力が与えられているため、先羽根用第1駆動部材16も、その被押動部16cが先羽根用第2駆動部材17の押動部17dに追従して、反時計方向へ回転し、先羽根の3枚の羽根31〜33を展開させながら上方へ移動させ始める。
そのため、それ以後は、上記のようにセット部材27によって反時計方向へ回転させられている抑止部材28の抑止部28bと、このようにして反時計方向への回転を開始させられた先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bとの間の距離が、徐々に短くなっていくことになる。そして、このような先羽根用第1駆動部材16の反時計方向への回転によって、先羽根のスリット形成羽根33が開口部1aを覆い始め、後羽根のスリット形成羽根39との重なり量が所定量に達すると、セット部材27のもう一方の押動部27cが後羽根用駆動部材19のローラー19dを押し始める。
それによって、後羽根用駆動部材19も、後羽根用駆動ばね26の付勢力に抗して、反時計方向への回転を開始するので、後羽根用駆動部材19の駆動ピン19cが後羽根のアーム35を反時計方向へ回転させ、後羽根の3枚の羽根37〜39を重畳させながら上方へ移動させ始める。そのため、その後は、先羽根の3枚の羽根31〜33は隣接する羽根同士の重なり量を小さくしながら、また、後羽根の3枚の羽根37〜39は隣接する羽根同士の重なり量を大きくしながら、共に上方へ移動していくことになるが、図5は、そのようにして、両方のスリット形成羽根33,39の重なり部が、開口部1aの略中間位置まで達した状態を示したものである。
また、この図5の状態は、抑止部材28の抑止部28aと、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bとが、両者間の距離を短くしてきて、まさに接触した状態でもある。ところで、セット部材27を時計方向へ回転させる力は、セットばね34の付勢力よりもかなり大きい。そのため、この状態になってからは、セットばね34の付勢力に抗して、抑止部28aが被抑止部16bを押し始めることになる。従って、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19は、これまでどおりセット部材27によって反時計方向へ回転させられていくが、先羽根用第1駆動部材16は、時計方向へ逆転させられていくことになり、先羽根の3枚の羽根31〜33は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ、開口部1aの下方位置へ逆戻りさせられる。
そのため、図5の状態になった後は、先羽根のスリット形成羽根33と後羽根のスリット形成羽根39との重なり量が少なくなってゆき、やがて、開口部1aの略中央から上下方向へ向けて開口部1aを開いていく。そして、開口部1aを半分以上開いた状態が図6に示されている。このような開き作動は、その後も続けられてゆくが、その後、先羽根のスリット形成羽根33が、開口部1aから下方へ退き、後羽根のスリット形成羽根39が開口部1aの上方へ退くと、開口部1aは全開になる。
このようにして、開口部1aが全開になると、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19に取り付けられている鉄片部材21,24の鉄片部21c,24cが、相前後して先羽根用電磁石と後羽根用電磁石の鉄芯部材10,11の磁極部に接触する。そして、セット部材27は、その後も僅かに回転したところで停止させられるので、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19が停止したときには、鉄片部材21,24の鉄片部21c,24cは、圧縮ばね22,25の付勢力に抗して、取付部17c,19b内に押し込まれ、反対側の頭部21b,24bが取付部17c,19bから離れているようになる。
このようなセット部材27の停止状態が、図7に示されたセット完了状態であり、セット部材27は、次の撮影が行われるまで、このセット位置に留まっている。しかも、この状態においては、開口部1aが全開になっているので、カメラの電源をオンにしておけば、被写体像を、電子ファインダで観察することが可能になる。
ところで、本実施例のセット部材27に形成されている凹部27eは、筒部27aの形成部位を中心とした肉厚部と、押動部27bを形成している肉薄部との段差面を外周面とし、略筒部27aに向けて切り込むように長く形成されている。そして、図4に示された露光作動終了直後の状態においては、抑止部材28の凸部28bは、その凹部27e内に入っていたが、セット作動の過程で、第1押動面27e−1との間のカム作用によって、凹部27eから徐々に押し出され、図7に示されたセット完了状態においては、完全に押し出された状態になっている。つまり、セット完了状態においては、セット部材27は、凹部27eの第1押動面27e−1が凸部28bを押しているのではなく、上記の段差面が凸部28bを押していることによって、抑止部材28に、先羽根用第1駆動部材16の回転を抑止させている。
しかしながら、本発明は、このような構成に限定されない。即ち、関係する各構成部材のセット作動に要する回転角度やそれらの構成部材の配置位置関係などによって、凹部27eと凸部28bについては、本実施例以外の種々の形状が考えられる。例えば、セット完了状態においても、セット部材27は、凹部27eの第1押動面27e−1によって凸部28bを押しているようにすることが可能であるし、第1押動面27e−1と上記の段差面との境界部位で押しているようにすることも可能である。そのため、それらのようにしたものも、本発明の構成である。
次に、このようなセット状態において、カメラのレリーズボタンが押された場合の作動を説明する。カメラのレリーズボタンが押されると、実際に撮影(露光作動)が開始する前に、先ず、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石のコイル12,13に通電され、それらの電磁力によって、鉄片部材21,24が鉄芯部材10,11に吸着保持される。次に、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材27の被押動部27dに対する押圧力を解くので、セット部材27は、図示していない復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、初期位置へ復帰させられていく。
そして、その復帰作動の初期段階で、セット部材27は、その押動部27bが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れ、押動部27cが後羽根用駆動部材19のローラー19dから離れる。また、抑止部材28は、その抑止部28aが、セットばね34によって間接的に付勢されている先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bに押されることによって、セット部材27に追従しながら時計方向へ回転し、凸部28bを、セット部材27の凹部27e内に入り込ませていく。また、抑止部材28の回転と並行して、先羽根の3枚の羽根31〜33は上方へ移動を開始し、開口部1aを覆い始める。そのときの状態が図8に示されている。
このようにして図8の状態になったときには、セット部材27の押動部27bが先羽根用第2駆動部材17の被押動部17bから離れたことにより、また、セット部材27の押動部27cが後羽根用駆動部材19のローラー19cから離れたことによって、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19とは、図7に示されたセット位置よりも、各々の駆動ばね23,26の付勢力と圧縮ばね22,25の付勢力とによって僅かに時計方向へ回転させられており、それらの取付部17c,19bを鉄片部材21,24の頭部21b,24bに接触させた状態になっている。そのため、この図8に示された位置が、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19にとっての露光作動開始位置であり、後羽根にとっての露光作動開始位置ということになる。
尚、周知のように、後羽根は、連結軸部材を用いて、二つのアーム35,36に3枚の羽根37〜39を、合計6箇所で回転可能に取り付けている。そのため、それらの取付け箇所の公差に起因して各羽根にガタツキが生じ、特に、露光作動開始位置におけるスリット形成羽根39の姿勢が定まらなくなって、露光時間を安定して得ることができなくなってしまうようになる。そこで、本実施例では、後羽根用駆動ばね26よりも付勢力が小さく、通称、ガタ寄せばねといわれているばね40によって、アーム36を常に反時計方向へ回転するように付勢(ガタ寄せ)し、そのようなガタツキによる影響を生じないようにしている。
セット部材27が、図8に示されている状態からさらに反時計方向へ回転し、先羽根の3枚の羽根31〜33が、開口部1aを完全に覆うころになると、抑止部材28は、抑止部28aが、被抑止部16bの作動軌跡外へ押し出される状態になる。ところが、そのころには、セット部材27の回転によって、凹部27eの第2押動面27e−2が、凸部28bに近接してきているため、それ以後は、第2押動面27e−2が凸部28bを押し、両者間のカム作用によって、抑止部材28を時計方向へ回転させるようになる。そして、被抑止部16bが抑止部28aから離れると、先羽根用第1駆動部材16は、それまでよりも速く回転し、被押動部16cが先羽根用第2駆動部材17の押動部17dに当接して停止する。図9は、その後、セット部材27が初期位置に復帰して停止した状態を示したものであり、このときの位置が先羽根用第1駆動部材16と先羽根にとっての露光作動開始位置である。
尚、本実施例は、先羽根の場合も、二つのアーム29,30に対し、3枚の羽根31〜33を、連結軸部材を介して合計6箇所で回転可能に取り付けている。そのため、上記した後羽根の場合と同様に、露光作動開始位置においてスリット形成羽根33の姿勢が定まらなくなり、所定の露光時間が安定して得られなくなってしまうことがある。しかし、本実施例の場合には、セットばね34が、上記のように先羽根用第1駆動部材16と先羽根とを、露光作動開始位置へ作動させる役目をしているほかに、上記のばね40と同じようにガタ寄せの役目もしている。
また、まれにではあるが、カメラの製作段階だけではなく、製作後の使用段階においても、カメラ本体側の制御系の誤動作によって、図9に示された状態において、セット部材27が、時計方向へ回転させられてしまうようなことがある。そして、そのよう事態が発生すると、本実施例のような構成の場合には、抑止部材28の抑止部28aが、かなり大きな力で、先羽根用第1駆動部材16の被抑止部16bの近傍部位に当接させられ、押し付けられることになる。
そのような場合、上記の近傍部位の形状が、抑止部28aに当接されたときの力の作用方向が軸1fを通るように形成されていると、抑止部材28の抑止部28aや凸部28bが、変形させられたり、破壊されたりしてしまうようになる。また、上記の近傍部位の形状が、抑止部28aに当接されたときの力によって先羽根用第1駆動部材16が反時計方向へ回転させられるように形成されていると、先羽根用第1駆動部材16は反時計方向へは僅かしか回転し得ない状態にあるので、やはり、抑止部材28の抑止部28aや凸部28bが、変形させられたり、破壊されたりしてしまうようになる。
ところが、本実施例の場合には、上記の近傍部位の形状が、抑止部28aに当接されたときの力によって先羽根用第1駆動部材16が時計方向へ回転させられるように形成されているため、そのような事態が生じても、先羽根用第1駆動部材16は、セットばね34の付勢力に抗して充分に回転し得ることになる。そのため、抑止部材28の抑止部28aや凸部28bが、変形させられたり、破壊されたりしないので、シャッタを修理したり交換したりしないで済むことになる。
図9に示されているように、セット部材27が初期位置で停止すると、先ず、先羽根用電磁石のコイル12に対する通電が断たれ、所定時間後に後羽根用電磁石のコイル13に対する通電が断たれる。そこで先ず、先羽根用電磁石のコイル12に対する通電が断たれると、鉄片部材21に対する鉄芯部材10の吸引力が失われ、先羽根用第2駆動部材17が、先羽根用駆動ばね23の付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。それによって、先羽根用第2駆動部材17は、押動部17dが被押動部16cを押し、先羽根用第1駆動部材16を、セットばね34の付勢力に抗して時計方向へ回転させる。そのため、先羽根の3枚の羽根31〜33は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしながら下方へ移動し、スリット形成羽根33の上端縁で開口部1aを開放していく。
他方、後羽根用電磁石のコイル13に対する通電が断たれると、鉄片部材24に対する鉄芯部材11の吸引力が失われ、後羽根用駆動部材19が、後羽根用駆動ばね26の付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。そのため、後羽根の3枚の羽根37〜39は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしながら下方へ移動してゆき、スリット形成羽根39の下端縁で開口部1aを覆っていく。そのため、それ以後は、先羽根と後羽根が、それらのスリット形成羽根31,39の間に形成したスリットにより、撮像素子の撮像面を上から下へ連続的に露光していくことになる。
そして、そのような露光作動の最終段階になると、最初に、先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16dが緩衝部材4に当接して、先羽根用の二つの駆動部材16,17と先羽根の作動が停止させられ、次に、後羽根用駆動部材19の駆動ピン19cが緩衝部材5に当接して、後羽根用駆動部材19と後羽根の作動も停止させられる。作動説明の最初に参照した図4は、そのようにして行われた露光作動の終了直後の状態を示したものであって、その後、CCD等の撮像装置から、情報処理回路を介して、撮像情報を記憶装置に転送すると、撮影が終了したことになる。
ところで、上記の作動説明からも分かるように、抑止部材28は、セット部材27が初期位置にあるとき、即ち図4,図9の状態にあるときに、最も時計方向へ回転した状態になっている。このとき、仮に、抑止部材28が、特許文献1における実施例1のように二股状の係合部(28b)を有していると、本実施例の場合よりも、開口部1a側に大きな作動スペースが必要になる。しかも、特許文献1における実施例1の場合には、セット部材(27)に設けられているピン状の突起部(27e)が変形や破壊をし易いので、それを防ぐために、突起部(27e)の直径を大きくしようとすると、抑止部材(28)も開口部(1a)側に大きくせざるを得なくなって、やはり、その分だけ、大きな作動スペースが必要になってくる。しかし、本実施例におけるセット部材27と抑止部材28との連動構成によれば、特許文献1における実施例2の構成のように、抑止部材28にばねを掛ける必要がなく、しかも、抑止部材28を大きくすることなく、所定の作動が得られるようになっている。
尚、本実施例の場合、セット作動は、上記のように、セット部材27が、被押動部27dをカメラ本体側の部材に直接押され、図示していない復帰ばねの付勢力に抗して回転させられることによって行われるが、本発明は、そのような構成に限定されない。周知のように、シャッタ地板1に、カメラ本体側の部材によって操作されるもう一つのセット用の部材を取り付けて置き、セット部材27は、その部材を介して回転させられるように構成してもよく、その場合には、セット部材27を初期位置へ復帰させるばねは、本実施例のように、セット部材27に掛けてもよいが、そのようなもう一つの部材に掛けても構わない。
ところで、既に述べたように、本発明は、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして実施することも可能であるし、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして実施することも可能である。そして、上記した実施例1の場合は、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。ところが、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして構成する場合については、図面を用いて詳しく説明するまでもないと考えるので、ここで、実施例1の構成を、そのような構成にする場合を、簡単に説明しておく。尚、当然のことながら、ここで行う説明は、その後に説明する実施例2の場合にも言えることである。
先ず、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19には、本実施例のように鉄片部材21,24を取り付けず、それに代わって各々被係止部を形成しておく。そして、図7のセット完了状態においては、それらの駆動部材17,19は、それらの被係止部が夫々の係止部材に係止される位置を越えるところまで回転されているようにしておき、カメラのレリーズボタンが押され、本実施例のようにセット部材27が初期位置へ復帰するときの初期段階で、夫々の係止部材に係止されるようにする。そして、その後、セット部材27が初期位置へ復帰するまでの作動は、上記の実施例1の場合と全く同じである。
他方、上記の各係止部材の係止を解除するために設けられている二つの係止解除部材は、セット部材27が、上記のようにして、初期位置へ復帰作動を開始する前に、夫々のばねの付勢力に抗して、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石に吸着保持されている。そして、その後、セット部材27が、上記のように作動して、図9に示された初期位置へ復帰すると、上記の各電磁石に対する通電を順に断つ。それにより、上記の各係止解除部材は、上記の各々のばねの付勢力で作動し、上記の各係止部材による係止を解除するので、先羽根用第2駆動部材17と後羽根用駆動部材19は、順に露光作動を開始する。そして、セット作動時には、セット部材27に連動して、上記の二つの係止解除部材が、各々の電磁石に対して接触させられるようにする。尚、このような作動が得られるようにするための構成は種々知られているが、その一例が、特開2001−215555号公報に記載されている。
次に、実施例2を説明するが、既に述べたように、本実施例の構成は、実施例1の場合と殆ど同じである。また、その作動も、実施例1の場合と殆ど同じである。しかしながら、連写を行うことの可能なカメラに採用する場合には、実施例1の構成よりも遥かに有利な構成となっている。そのため、本実施例の構成については、実施例1の場合と異なる点だけを、図10を用いて説明することにし、また、連写をする場合には、実施例1の場合よりも如何に有利であるかを、図11〜図13を用いて説明する。尚、図10は、実施例1の場合の図8に対応した状態を示したものである。
図10に示されているように、本実施例の場合は、セット部材27と抑止部材26の形状が、実施例1の場合と一部異なっているだけである。先ず、本実施例のセット部材27には係合部27fが形成されている。この係合部27fは、長さ方向の一方の側面を、実施例1で説明した凹部27eの第1押動面27e−1とし、先端面を、第1押動面27e−1に隣接して形成された弧状面としている。また、その弧状面は、180度を超え且つ凡そ270度以下の角度範囲にわたって形成されている。そして、本実施例の場合には、その弧状面は、セット部材27の肉厚部と肉薄部との段差面となっている。しかし、実施例1の説明において、凹部27eの形状について述べたように、この弧状面の場合にも、押動部27bの形成形態によっては、セット部材27の本来の外周面に形成しても構わない。セット部材27のその他の形状は、実施例1の場合と同じである。
また、本実施例の抑止部材28には、実施例1で説明した凸部28bのほか、その凸部28bに隣接して、もう一つの短い凸部28cが形成されている。そして、この短い凸部28cは、図10に示された状態では、凸部28bとは略反対側において、その先端が上記の弧状面に接し得るようになっている。抑止部材28のその他の形状は、実施例1の場合と同じである。尚、図10だけでは分かりにくいが、実施例1の説明に用いた図4〜図9に対応する状態を想定してみれば分かるように、短い方の凸部28cは、図4,図7,図9に対応する状態では、係合部27fの弧状面に接触しておらず、図5,図6,図8に対応する状態では、接触していることになる。即ち、セット部材27が、初期位置とセット位置にあるときには、接触していないが、それらの間の殆どの途中位置にあるときには、接触していることになる。
本実施例は、このように構成されているので、図4及び図9に対応した状態、即ち、セット部材27が初期位置にあるときには、凸部28cは、セット部材27の係合部27fの略真下方向の位置に離れて存在していることになる。言い換えれば、図4及び図9に対応した状態においては、凸部28cは、抑止部材28から開口部1a側に張り出した状態にはならないように形成されているわけである。そのため、特許文献1における実施例1の構成よりも、開口部1a側のスペースを有効に活用できるようになっている。
次に、このような構成をしていると、連写を行う場合には、実施例1のように構成したものよりも有利であることを説明する。そこで先ず、実施例1の構成のシャッタで連写をした場合に発生する可能性のある問題点を、図12及び図13を用いて説明する。尚、図12は、セット部材27が、図10に対応した状態にあるとき、言い換えれば、図8の状態にあるときの状態を示したものであるが、先羽根用第1駆動部材16と抑止部材28の回転位置は、図8に示された状態とは異なっている。つまり、この図12は、実施例1のシャッタで連写を行った場合には、このような状態になることがあり得ることを示したものである。
そこで、連写を行った場合には、どうして図12に示された状態になることがあり得るのかを説明する。実施例1で説明したように、図8の状態から図9の状態になると、先羽根と後羽根による露光作動が終了し、図4に示された状態になる。このとき、先羽根用第1駆動部材16は、先羽根用第2駆動部材17によって、駆動ピン16dを緩衝部材4に当接させ押し付けられるので、駆動ピン16dが緩衝部材4に当接した衝撃で、僅かにバウンドの繰り返しを行ったとしても、比較的早期に静止するようになる。
ところが、駆動ピン16dとアーム29との連結部、及び二つのアーム29,30と二つの軸1f,1jとの連結部、並びに二つのアーム29,30と3枚の羽根31,32,33との連結部には、夫々公差が設けられているので、たとえ先羽根用第1駆動部材16が静止したとしても、先羽根は、駆動ピン16dが緩衝部材4に当接したときの衝撃で、大きな振動を起こすことになる。勿論、それに対する対策は、別に講じているとはいうものの、その振動は、先羽根用第1駆動部材16が静止したあとも続くことになる。
連写を行う場合には、このような先羽根の振動状態が続いている間にも、セット部材27は、初期位置からセット位置まで回転させられた後、直ちに初期位置へ復帰させられることになる。そして、セット部材27が、再び図8に示された状態になったとき、たまたま、先羽根の振動が続いていて、その振動に起因する力が、先羽根用第1駆動部材16を、セットばね34の付勢力に抗して時計方向へ回転させるように作用していると、抑止部材28は、図8に示されているように、凸部28bが凹部27e内に充分に入り込んだ状態にならず、図12に示されているように、セット部材27の第2押動面27e−2と外周面との境界近傍部位が、凸部28bの先端に当接してしまうような状態になってしまうことがある。そして、凸部28bの先端が、外周面側に傾斜している部位に当接した場合には、抑止部材28は、図9の状態になるように時計方向へ回転することができなくなり、セット部材27が初期位置へ復帰したときには、図13に示された状態になってしまう。
ところが、本実施例の場合には、セット部材27と抑止部材28とが、上記のように構成されているので、セット部材27が、図8に対応する図10に示された状態になったとき、たとえ先羽根用第1駆動部材16が図12に示された状態と同じ状態になっていたとしても、凸部28cが係合部27fの弧状面に接触していて、図11に示されているように、凸部28bが凹部27e内に完全に入り込んでいるので、抑止部材28は、セット部材27の初期位置への復帰に伴い、確実に時計方向へ回転し得るようになる。
尚、実施例1の場合にも、部品の加工精度や組立精度を高くすれば、このような問題が生じにくいようにすることが可能である。しかしながら、コストのことを考えると、そのようにするよりも本実施例の方が遥かに有利である。また、本実施例の場合においては、抑止部材28の凸部28cは、セット部材27が、セット位置と初期位置以外の殆どの位置で、係合部27fの弧状面に接しているようにしているが、上記の説明からも分かるように、問題を発生させ易い状態のとき、即ち、セット部材27が、少なくとも初期位置とセット位置との略中間よりも初期位置側にあるときに、弧状面に接しているようにすればよく、必ずしも、実施例のとおりである必要はない。
以上のように、本実施例については、実施例1との差異だけを説明したが、その他の構成は実施例1の場合と全く同じであるし、その他の作動も実施例1の場合に準じて行われるので、それらについての説明は省略する。尚、本実施例の場合には、全ての作動工程にわたってではないとはいうものの、抑止部材28の二つの凸部28b,28cが、セット部材27の係合部27fの、弧状面を形成した先端の部位を挟むように構成されている。しかしながら、本実施例の係合部27fは、特許文献1の実施例1における突起部(27e)のようにピン状には形成されておらず、弧状面を形成した先端の部位と第1押動面17e−1を形成している細長い部位とからなっているので、その細長い部位が補強の役目をしていて、先端の部位が変形させられたり破壊させられたりするようなことがない。