JP5411137B2 - 薄肉部材の切削方法 - Google Patents
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Description
この回転体は、中心軸と平行な方向の所定範囲にわたって内周面と外周面を有する場合がある。この場合、回転体は次のように製作する。内周面の粗切削加工、外周面の粗切削加工、内周面の中仕上げ切削加工、外周面の中仕上げ切削加工、内周面の仕上げ切削加工、外周面の仕上げ切削加工をこの順で素材に対し行う。
前記薄肉部材は、その中心軸と平行な方向の所定範囲にわたって内周面と外周面を有し、
(A)前記薄肉部材に対して取り代がある素材を準備し、
(B)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、切削工具を前記素材に対して前記中心軸の一端側から他端側へ前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記内周面を切削し、
(C)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、前記切削工具を前記素材に対して前記中心軸の一端側から他端側へ前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記外周面を切削し、
(D)前記(B)と(C)を交互に繰り返すことで、前記所定範囲にわたって前記内周面と外周面を仕上げ、
前記(A)の後、前記(B)、(C)の順で、または、前記(C)、(B)の順で、前記(D)を行う、ことを特徴とする薄肉部材の切削方法が提供される。
前記(C)において、前記内周面側における未切削領域内へ前記所望の距離以内の距離だけ中心軸と平行な方向に進入した位置まで、前記切削工具を中心軸の一端側から他端側へに送る。
前記薄肉部材の半径方向における切削工具による切削位置を、前記外周面の位置に一致させながら、前記(C)を行う。
一方、前記内周面または外周面の半径方向位置が、前記(B)または(C)の切削範囲において、軸方向位置に応じて変化する場合には、前記中心軸と平行な方向の切削工具送り量に応じて、半径方向に関する前記切削位置を変化させる。このようにして、内周面または外周面がテーパ状となっているリング(薄肉部材)も製作できる。
前記薄肉部材は、中心軸に対する外周面と内周面の少なくともいずれかを有するとともに、この外周面または内周面から半径方向外側または内側に延びるフランジを有し、このフランジは、前記半径方向の所定範囲にわたって、中心軸と平行な方向の一方側を向く第1側面と、中心軸と平行な方向の他方側を向く第2側面と、を有し、
(A)前記フランジに対して取り代がある素材を準備し、
(B)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、切削工具を前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ、前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記第1側面を切削し、
(C)前記素材を前記中心軸を中心に回転させながら、前記切削工具を前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ、前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記第2側面を切削し、
(D)前記(B)と(C)を交互に繰り返すことで、フランジの前記所定範囲にわたって前記第1側面と第2側面とを仕上げ、
前記(A)の後、前記(B)、(C)の順で、または、前記(C)、(B)の順で、前記(D)を行う、ことを特徴とする薄肉部材の切削方法が提供される。
第1発明または第2発明における第1の工具向き調節方法では、前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面と、素材5の加工面の側を向く素材側面とを有し、
前記送り側面の向きを、前記切削工具の送り方向から前記加工面の側へ少し傾いた向きにした状態で、前記(B)および(C)を行う。
なお、第1の工具向き調節方法は、好ましくは、法線一定領域において行う。法線一定領域は、第1発明では、前記内周面または外周面の法線の向きが、軸方向位置(中心軸方向の位置)によって変化しない領域であり、第2発明では、前記第1側面または第2側面の法線の向きが、半径方向位置(中心軸に対する半径方向の位置)によって変化しない領域である。
すなわち、第1発明における第2の工具向き調節方法では、前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面を有し、前記法線変化領域において、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下になるように、前記切削工具の向きを制御しながら、前記(B)または(C)を行う。
従来では、切り刃の送り側面と素材の加工面とのなす角度が、軸方向位置によって変化する場合には、中心軸方向の加工区域毎に、切削工具に取り付ける切り刃を当該区域に適切なものに交換していた。また、従来では、各軸方向位置において、切り刃の送り側面が素材の加工面に対し80度以上、100度以下とならないため、素材に作用する切削力が大きくなってしまう。
これに対し、第1本発明における第2の工具向き調節方法では、内周面または外周面の切削中に、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下となるように、前記切削工具の向きを制御するので、中心軸方向の加工領域毎に、切り刃を交換することなく、1つの切り刃で全加工領域を切削できる。
しかも、第1本発明における第2の工具向き調節方法では、内周面または外周面の切削中に、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度を80度以上、100度以下に維持できるので、素材に作用する切削力を小さく抑えることができる。従って、前記(B)または前記(C)において、素材への切り刃の切り込みを深くでき、これにより、中間加工(即ち、中仕上げ旋削)をしなくても、内周面または外周面を1回で切削できる。
すなわち、第2発明における第2の工具向き調節方法では、前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面を有し、前記法線変化領域において、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下になるように、前記切削工具の向きを制御しながら、前記(B)または(C)を行う。
従来では、切り刃の送り側面と素材の加工面とのなす角度が、半径方向位置によって変化する場合には、半径方向の加工区域毎に、切削工具に取り付ける切り刃を当該区域に適切なものに交換していた。また、従来では、各半径方向位置において、切り刃の送り側面が素材の加工面に対し80度以上、100度以下とならないため、素材に作用する切削力が大きくなってしまう。
これに対し、第2発明における第2の工具向き調節方法では、第1側面または第2側面の切削中に、送り側面と素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下となるように、切削工具の向きを制御するので、半径方向の加工領域毎に、切り刃を交換することなく、1つの切り刃で全加工領域を切削できる。
しかも、第2本発明における第2の工具向き調節方法では、第1側面または第2側面の切削中に、送り側面と素材の加工面とのなす角度を80度以上、100度以下に維持できるので、素材に作用する切削力を小さく抑えることができる。従って、前記(B)または前記(C)において、素材への切り刃の切り込みを深くでき、これにより、中間加工をしなくても、第1側面または第2側面を1回で切削できる。
図1Aは、本発明の第1実施形態による切削方法で製作する薄肉部材3の横断面図であり、図1Bは、図1AのB−B線断面図である。
この例では、薄肉部材3は、ジェットエンジン、ガスタービン、過給機などの回転機械に設けられ、回転機械の中心軸C1を中心として回転駆動される部材である。例えば、薄肉部材3は、回転機械の回転シャフト自体であってもよいし、回転シャフトに取り付けて、固定されるものであってもよい。
図1Aおよび図1Bに示すように、薄肉部材3は、その中心軸C1と平行な方向の所定範囲にわたって内周面3aと外周面3bを有する。薄肉部材3の「薄肉」とは、内周面3aから外周面3bまでの厚みが薄いことをいい、当該厚みが、中心軸C1から外周面3bまでの距離の2倍(直径)の0.5%より小さいことをいう。
ステップS2は、素材固定工程であり、このステップにおいて、ステップS1で準備した素材5を取付具7を介して回転テーブル9に固定する(図3を参照)。
具体的には、図3のように、回転テーブル9を回転させることで、薄肉部材3の中心軸C1を中心に素材5を回転させるとともに、薄肉部材3の半径方向(中心軸C1と垂直な方向)における切削工具による切削位置を、内周面3aの位置に一致させる。この状態で、素材5の一端の側(図3の右側)から他端に向かう中心軸C1と平行な方向に、切削工具を短い距離だけ送る。
これにより、この距離の範囲にわたって、内周面3aが仕上げられる。なお、本発明の切削方法において、中心軸とは、切削において素材5の回転中心となる軸であり、半径方向とは、切削において素材5の回転中心を中心とした半径の方向である。また、前記所定範囲以内の所望の距離とは、この例では、前記所定範囲の軸方向長さの5〜10分の1程度の短い距離を意味する。
具体的には、回転テーブル9を回転させることで、薄肉部材3の中心軸C1を中心に素材5を回転させるとともに、薄肉部材3の半径方向における切削工具による切削位置を、外周面3bの位置に一致させる。この状態で、薄肉部材3の一端の側(図3の右側)から他端に向かう中心軸C1と平行な方向に、切削工具を短い距離だけ送る。これにより、この距離の範囲にわたって、外周面3bが仕上げられる。また、前記所定範囲以内の所望の距離とは、この例では、前記所定範囲の軸方向長さの5〜10分の1程度の短い距離を意味する。
ステップS5において、上述した所定範囲にわたって内周面3aと外周面3bの全体が完成していない場合には、ステップS3に戻り、ステップS3とステップS4を再び行う。このように、中間加工(中仕上げ加工)されていない素材5に対しステップS3とステップS4を交互に繰り返すことで、徐々に内周面3aと外周面3bを仕上げていく。なお、ステップS3とステップS4のうち、ステップS3から開始してもよいし、ステップS4から開始してもよい。
すなわち、素材5の一端(図で右端)からの切削深さが、ステップS3を終了した時点では内周面3a側の方が深くなり、ステップS4を終了した時点では外周面3b側の方が深くなるようにする。これにより、内周面3aの側または外周面3bの側を切削する時に、切削工具送り方向のより長い範囲にわたって、切削する側と反対側の取り代5aで切削力を支持することができる。すなわち、内周面3aから外周面3bまでの肉厚が薄くても、取り代5aで切削力を支持することができる。なお、第1実施形態において、送り方向とは、素材5の回転方向と直交し、かつ、中心軸と平行な方向の成分を有する方向であって、素材5の加工面(例えば内周面3a)に沿った切削工具移動方向である。
これら送り側面17と素材側面(すなわち、逃げ面)19とのなす角度は鋭角である。なお、送り側面17、素材側面19は、例えば、図3、図6Aまたは図7Aにおいて紙面と垂直な方向(中心軸C1と直交する方向)に延びている。
また、図3、図6Aまたは図7Aにおいて、符号12は、切り刃11aのすくい面を示し、符号14は、送り側面17におけるすくい面12と接する辺と、素材側面19におけるすくい面12と接する辺とが交差する箇所にあるコーナを示す。このコーナ14は、素材5の切削時に、素材の加工面(すなわち、内周面または外周面)に当てられている。
このような切り刃11aを用いる場合、以下で述べる第1または第2の工具向き調節方法で第1実施形態の切削方法を実行するのがよい。
第1の工具向き調節方法は、好ましくは、内周面3aの法線が、中心軸方向の位置(軸方向位置)によらず一定(ゼロまたは他の値)である法線一定領域において、内周面3aを切削する時に実行される。同様に、第1の工具向き調節方法は、好ましくは、外周面3bの法線が、軸方向位置によらず一定である法線一定領域において、外周面3bを切削する時に実行される。第1の工具向き調節方法は、以下のとおりである。
図6Aに示すように、送り側面17(すなわち、平面17)の向き(法線)n1を、切削工具11の送り方向fに近い向きであって、この送り方向fから少しだけ(例えば、0.5〜5度)加工面の側へ傾いた向きとする。これにより、図6Aの「切屑の進む方向g」に、切屑が、切削部分から飛び出すので、内周面3aから外周面3bまでの薄肉の壁に当たらないようにすることができる。なお、切屑の進む方向gは、ほぼ、送り側面17と垂直でかつ送り側面17と逆の向きであり、上述した送り側面17の傾きを大きくし過ぎると、円滑な切削が行えなくなるため、上述のように面を少しだけ(例えば、0.5〜5度)傾けるのがよい。
一方、図6Bのように、送り側面17の向き(法線)を、切削工具の送り方向fから加工面と反対側へ傾いた向きとした場合には、切屑が前記薄肉の壁に当たることで、断面がリング状の薄肉部材3を変形させてしまう。
第2の工具向き調節方法は、好ましくは、内周面3aの法線が、軸方向位置によって変化する法線変化領域において、内周面3aを切削する時に実行される。同様に、第2の工具向き調節方法は、好ましくは、外周面3bの法線が、軸方向位置によって変化する法線変化領域において、外周面3bを切削する時に実行される。第2の工具向き調節方法は、以下のとおりである。
同様に、外周面3bの法線変化領域において、送り側面17と素材5の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下、好ましくは、85度以上、95度以下になるように、切削工具11の向きを制御しながら上述したステップS4を行う。より具体的には、次の通りである。
第2の工具向き調節方法により得られる効果を、従来の場合と比較して説明する。従来では、図7Bのように、切り刃11aの送り側面17と素材5の加工面とのなす角度が、軸方向位置によって変化する場合には、中心軸方向の加工区域毎に、切削工具11に取り付ける切りを当該区域に適切なものに交換していた。また、従来では、各軸方向位置において、切り刃11aの送り側面17が素材5の加工面に対し80度以上、100度以下とならないため、素材5に作用する切削力Fが大きくなってしまう。
すなわち、ステップS3を行う時の切削力Fは、外周側に残っている取り代5aにより支持され、ステップS4を行う時の切削力Fは、内周側に残っている取り代5aにより支持される。これにより、ビビリ振動防止用の保持具を使用せずに、ビビリ振動や変形を生じさせずに仕上げ旋削ができる。その結果、周方向に関して一定の肉厚を得ることができ、バランスの良い薄肉部材3を製作できる。
図8Aは、円筒面を中間加工した場合を示す図である。この例で、先に旋削する面(内面)は、中仕上げ旋削を行っても良い。その後仕上げ旋削しても反対の面(外面)の取り代のお陰でビリが発生しない。また、この例で、後に旋削する面(外面)は、中仕上げ旋削を行ってはいけない。取り代が大きければ剛性がありビリを発生しない。
図8Bは、円板面を中間加工した場合を示す図である。この例で、先に旋削する面(左面)は、中仕上げ旋削を行っても良い。その後仕上げ旋削しても反対の面(右面)の取り代のお陰でビリが発生しない。また、この例で、後に旋削する面(右面)は、中仕上げ旋削を行ってはいけない。取り代が大きければ剛性がありビリを発生しない。
図9は、上述した第1実施形態による切削方法の他の例を示す。
この図において、薄肉部材3は、ラビリンスシール部13を有する。また素材5は、鍛造物を粗加工したものである。またこの例では、適切な取付具(図示せず)を介して素材5の支持部分15を回転テーブル(図示せず)に固定して、薄肉部材3の切削を行う。
この実施例において、図に示す内周面3a部分と外周面3b部分に、第1実施形態による切削方法が適用可能であり、内周面3a部分と外周面3b部分に対し、図中の括弧内の数字の順に、上述のステップS3とステップS4を交互に繰り返し行う。すなわち、(1)、(2)、(3)、・・・、(6)、(7)の各部分の順に内周面3aと外周面3bを交互に少しずつ形成していく。
またこの実施例でも、薄肉部材3の半径方向における切削工具による切削位置を、内周面3aの位置に一致させながら、ステップS3を行い、薄肉部材3の半径方向における切削工具による切削位置を、外周面3bの位置に一致させながら、ステップS4を行う。
図9における(2)の部分は、外周面3bの半径方向位置が、中心軸C1方向位置に応じて変化するので、中心軸C1と平行な方向の切削工具送り量に応じて、半径方向に関する切削位置を変化させる。
この実施例1の切削方法における他の点は、上述した第1実施形態と同じである。
図10は、上述した第1実施形態による切削方法の他の例を示す。
この図において、薄肉部材3は、燃焼器のケーシングを構成する部材であり、使用時に回転しない静止部材である。また素材5は、粗加工されているものである。またこの例では、取付具7を介して薄肉部材3を回転テーブル9に固定して、薄肉部材3の切削を行う。
この実施例において、図に示す内周面3a部分と外周面3b部分に対し、図中の括弧内の数字の順に、上述のステップS3とステップS4を交互に繰り返し行う。すなわち、(1)、(2)、(3)、・・・、(10)、(11)の各部分の順に内周面3aと外周面3bを交互に少しずつ形成していく。
なお、(10)の部分の切削は、まず、(10a)の部分を切削してから、上記ステップS3により(10b)の部分を切削してもよい。また、(a)の孔部分の切削は、(11)の部分の切削の後に行ってよい。
実施例2でも、薄肉部材3の半径方向における切削工具による切削位置を、内周面3aの位置に一致させながら、ステップS3を行い、薄肉部材3の半径方向における切削工具による切削位置を、外周面3bの位置に一致させながら、ステップS4を行う。図10における(8)、(9)、(10)の部分は、内周面3aまたは外周面3bの半径方向位置が、中心軸C1方向位置に応じて変化するので、中心軸C1と平行な方向の切削工具送り量に応じて、半径方向に関する前記切削位置を変化させる。
この実施例2の切削方法における他の点は、上述した第1実施形態と同じであってよい。
図11Aは、本発明の第2実施形態による切削方法で製作する薄肉部材3を示す横断面図であり、図11Bは図11AのB−B線断面図である。
この例では、薄肉部材3は、ジェットエンジン、ガスタービン、過給機などの回転機械に設けられ、回転機械の中心軸C1を中心として回転駆動される部材である。例えば、薄肉部材3は、回転機械の回転シャフト自体であってもよいし、回転シャフトに取り付けて、固定されるものであってもよい。
図11Aと図11Bに示すように、薄肉部材3は、内周面3aまたは外周面3bから、その中心軸C1に対して半径方向(すなわち、中心軸C1と直交する方向)の外側または内側に延びるフランジ21を有し、このフランジ21は、半径方向の所定範囲(この例では、外周面3bからフランジ21の外周端)にわたって、中心軸C1と平行な方向の一方側を向く第1側面21aと、中心軸C1と平行な方向の他方側を向く第2側面21bとを有する。なお、この例では、薄肉部材3は、中心軸C1を中心とする内周面3aと外周面3bとを有する。また、この例では、第1側面21aと第2側面21bは、互いに逆向きの中心軸C1と平行な方向を向く。
第2実施形態においては、薄肉部材3の「薄肉」とは、第1側面21aから第2側面21bまでの厚みが薄いことをいい、当該厚みが、中心軸C1から前記半径方向におけるフランジ21の外方端までの距離の2倍(直径)の0.5%より小さいことをいう。
ステップS12は、素材固定工程であり、このステップにおいて、ステップS11で準備した素材5を取付具7を介して回転テーブル9に固定する(図12を参照)。
具体的には図12のように、回転テーブル9を回転させることで、薄肉部材3の中心軸C1を中心に素材5を回転させるとともに、中心軸C1と平行な方向における切削工具による切削位置を、第1側面21aの位置に一致させる。この状態で、フランジ21の外周端の側から中心軸C1に向かう半径方向に、切削工具を短い距離だけ送る。これにより、この距離の範囲にわたって、第1側面21aが仕上げられる。また、前記所定範囲以内の所望の距離とは、この例では、前記所定範囲の軸方向長さの5〜10分の1程度の短い距離を意味する。
具体的には、回転テーブル9を回転させることで、薄肉部材3の中心軸C1を中心に素材5を回転させるとともに、中心軸C1と平行な方向における切削工具による切削位置を、第2側面21bの位置に一致させる。この状態で、フランジ21の外周端の側から中心軸C1に向かう半径方向に、切削工具を短い距離だけ送る。これにより、この距離の範囲にわたって、第2側面21bが仕上げられる。また、前記所定範囲以内の所望の距離とは、この例では、前記所定範囲の軸方向長さの4〜10分の1程度の短い距離を意味する。
ステップS15において、上述した所定範囲にわたって第1側面21aと第2側面21bとが仕上がっていない場合には、ステップS13に戻り、ステップS13とステップS14を再び行う。このように、中間加工(中仕上げ加工)されていない素材5に対しステップS13とステップS14を交互に繰り返すことで、徐々に第1側面21aと第2側面21bを仕上げていく。なお、ステップS13とステップS14のうち、ステップS13から開始してもよいし、ステップS14から開始してもよい。
すなわち、フランジ21の外周端から中心軸C1へ向かう方向の切削深さが、ステップS13を終了した時点では第1側面21aの側の方が深くなり、ステップS14を終了した時点では第2側面21bの側の方が深くなるようにする。これにより、第1側面21aの側または第2側面21bの側を切削する時に、切削工具送り方向のより長い範囲にわたって、切削する側と反対側の取り代5aで切削力Fを支持することができる。すなわち、第1側面21aから第2側面21bまでの肉厚が薄くても、取り代5aで切削力Fを支持することができる。なお、第2実施形態において、送り方向とは、半径方向外側から半径方向内側への方向、または、半径方向内側から半径方向外側への方向であって、素材5の加工面(例えば第1側面21a)に沿った切削工具移動方向である。
なお、送り側面17、素材側面(すなわち、逃げ面)19は、例えば、図12において紙面と垂直な方向(中心軸C1と直交する方向)に延びている。また、この図において、符号12は、切り刃11aのすくい面を示し、符号14は、送り側面17におけるすくい面12と接する辺と、素材側面19におけるすくい面12と接する辺とが交差する箇所にあるコーナを示す。このコーナ14は、素材5の切削時に、素材5の加工面(すなわち、内周面3aまたは外周面3b)に当てられている。
この場合、第2実施形態による上述の切削方法(すなわち、切削方法)は、第1実施形態の場合と同様に、以下のように、第1または第2の工具向き調節方法で行うのがよい。
第1の工具向き調節方法は、好ましくは、第1側面21aの法線が、半径方向位置によらず一定である法線一定テーパ領域において、第1側面21aを切削する時に実行される。同様に、第1の工具向き調節方法は、好ましくは、第2側面21bの法線が、半径方向位置によらず一定である法線一定領域において、第2側面21bを切削する時に実行される。
第1の工具向き調節方法では、第1実施形態の場合と同様に、送り側面17の向き(法線)を、切削工具の送り方向に近い向きであって、この送り方向から少しだけ(例えば、0.5〜5度)加工面の側へ傾いた向きにする。
第2の工具向き調節方法は、好ましくは、第1側面21aの法線が、半径方向位置によって変化する法線変化領域において、第1側面21aを切削する時に実行される。同様に、第2側面21bの法線が、半径方向位置によって変化する法線変化領域において、第2側面21bを切削する時に実行される。
第2の工具向き調節方法では、第1実施形態の場合と同様に、第1側面21aの法線変化領域において、送り側面17と素材5の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下、好ましくは、85度以上、95度以下になるように、切削工具11の向きを制御しながら上述したステップS13を行う。同様に、第2側面21bの法線変化領域において、送り側面17と素材5の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下、好ましくは、85度以上、95度以下になるように、切削工具11の向きを制御しながら上述したステップS14を行う。第2実施形態での第2の工具向き調節方法における他の点は、第1実施形態での第1の工具向き調節方法と同じである。
これにより、第1実施形態の場合と同様に、第1側面21aまたは第2側面21bの法線が、半径方向位置によって変化する場合でも、切削工具11を交換することなく、素材5に作用する切削力Fを小さく抑えて第1側面21aまたは第2側面21bを1回で切削できる。
すなわち、ステップS13を行う時の切削力Fは、第2側面21b側に残っている取り代5aにより支持され、ステップS14を行う時の切削力Fは、第1側面21a側に残っている取り代5aにより支持される。これにより、ビビリ振動防止用の保持具を使用せずに、ビビリ振動や変形を生じさせずに仕上げ旋削ができる。その結果、周方向に関して一定の薄い肉厚を持つフランジ21を得ることができ、高精度な薄肉部材を製作できる。
上述の第1実施形態では、ステップS3、S4を交互に繰り返したが、ステップS3、S4を同時に行ってもよい。即ち、中心軸C1を中心に素材5を回転させている時に、切削工具11を、素材5に対して中心軸C1の一端側から他端側に送ることで内周面3aを切削するステップS3と、別であるが前記と同様の切削工具11を、素材5に対して中心軸C1の一端側から他端側に送ることで外周面3bを切削するステップS4とを同時に行う。これによっても、内周面3aを切削する時の切削力は、外周面3b側に残っている取り代5aで支持され、外周面3bを切削する時の切削力は、内周面3a側に残っている取り代5aで支持される。従って、ビビリ振動防止用の保持具を使用せずに、ビビリ振動を発生させることなく薄肉部材3を切削できる。この場合、他の点は、第1実施形態と同じであってよい。
上述の第2実施形態では、ステップS13、S14を交互に繰り返したが、ステップS13、S14を同時に行ってもよい。即ち、中心軸C1を中心に素材5を回転させている時に、切削工具11を、素材5に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ送ることで第1側面21aを切削するステップS13と、別であるが前記と同様の切削工具11を、素材5に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ送ることで第2側面21bを切削するステップS14とを同時に行う。これによっても、第1側面21aを切削する時の切削力は、第2側面21b側に残っている取り代5aで支持され、第2側面21bを切削する時の切削力は、第1側面21a側に残っている取り代5aで支持される。従って、ビビリ振動防止用の保持具を使用せずに、ビビリ振動を発生させることなく薄肉部材3を切削できる。この場合、他の点は、第2実施形態と同じであってよい。
上述の第1実施形態では、中間加工されていない素材5に対してステップS3、S4を行ったが、中間加工(即ち、中仕上げ旋削)された素材5に対しステップS3、S4を行ってもよい。この場合、例えば、上述のステップS1において、中間加工された素材5を準備する。また、この場合、他の点は、第1実施形態と同じであってよい。
同様に、上述の第2実施形態では、中間加工されていない素材5に対してステップS13、S14を行ったが、中間加工(即ち、中仕上げ旋削)された素材5に対しステップS13、S14を行ってもよい。この場合、例えば、上述のステップS11において、中間加工された素材5を準備する。また、この場合、他の点は、第2実施形態と同じであってよい。
Claims (9)
- 薄肉部材の切削方法であって、
前記薄肉部材は、その中心軸と平行な方向の所定範囲にわたって内周面と外周面を有し、
(A)前記薄肉部材に対して取り代がある素材を準備し、
(B)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、切削工具を、前記素材に対して前記中心軸の一端側から他端側へ前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記内周面を仕上げ旋削し、
(C)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、前記切削工具を、前記素材に対して前記中心軸の一端側から他端側へ前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記外周面を仕上げ旋削し、
(D)前記(B)と(C)を交互に繰り返すことで、前記所定範囲にわたって前記内周面と外周面を仕上げ、
前記(A)の後、前記(B)、(C)の順で、または、前記(C)、(B)の順で、前記(D)を行い、
前記(B)または(C)において、仕上げ旋削によりビビリ振動を生じさせない厚みの前記取り代を有する前記内周面または前記外周面を、中仕上げ加工せずに仕上げ旋削する、ことを特徴とする薄肉部材の切削方法。 - 前記(B)において、前記外周面側における未切削領域内へ前記所望の距離以内の距離だけ中心軸と平行な方向に進入した位置まで、前記切削工具を中心軸の一端側から他端側へ送り、
前記(C)において、前記内周面側における未切削領域内へ前記所望の距離以内の距離だけ中心軸と平行な方向に進入した位置まで、前記切削工具を中心軸の一端側から他端側へ送る、ことを特徴とする請求項1に記載の薄肉部材の切削方法。 - 薄肉部材の切削方法であって、
前記薄肉部材は、中心軸に対する外周面と内周面の少なくともいずれかを有するとともに、この外周面または内周面から半径方向外側または内側に延びるフランジを有し、このフランジは、前記半径方向の所定範囲にわたって、中心軸と平行な方向の一方側を向く第1側面と、中心軸と平行な方向の他方側を向く第2側面と、を有し、
(A)前記フランジに対して取り代がある素材を準備し、
(B)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、切削工具を、前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ、前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記第1側面を仕上げ旋削し、
(C)前記素材を前記中心軸を中心に回転させながら、前記切削工具を、前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ、前記所定範囲以内の所望の距離だけ送ることで、該所望の距離だけ前記第2側面を仕上げ旋削し、
(D)前記(B)と(C)を交互に繰り返すことで、フランジの前記所定範囲にわたって前記第1側面と第2側面とを仕上げ、
前記(A)の後、前記(B)、(C)の順で、または、前記(C)、(B)の順で、前記(D)を行い、
前記(B)または(C)において、仕上げ旋削によりビビリ振動を生じさせない厚みの前記取り代を有する前記第1側面または前記第2側面を、中仕上げ加工せずに仕上げ旋削する、ことを特徴とする薄肉部材の切削方法。 - 薄肉部材の切削方法であって、
前記薄肉部材は、中心軸に対する外周面と内周面の少なくともいずれかを有するとともに、この外周面または内周面から半径方向外側または内側に延びるフランジを有し、このフランジは、前記半径方向の所定範囲にわたって、中心軸と平行な方向の一方側を向く第1側面と、中心軸と平行な方向の他方側を向く第2側面と、を有し、
(A)前記フランジに対して、仕上げ旋削によりビビリ振動を生じさせない厚みの取り代がある素材を準備し、
(B)前記中心軸を中心に前記素材を回転させながら、切削工具を、前記取り代がある前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ送ることで前記第1側面を、中仕上げ加工せずに仕上げ旋削し、
(C)前記素材を前記中心軸を中心に回転させながら、前記切削工具を、前記取り代がある前記素材に対し、半径方向外側から半径方向内側へ、または、半径方向内側から半径方向外側へ送ることで前記第2側面を、中仕上げ加工せずに仕上げ旋削し、
(D)前記(B)と(C)を同時に行うことで、フランジの前記所定範囲にわたって前記第1側面と第2側面とを仕上げる、ことを特徴とする薄肉部材の切削方法。 - 前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面と、素材の加工面の側を向く素材側面とを有し、
前記送り側面の向きを、前記切削工具の送り方向から前記加工面の側へ少し傾いた向きにした状態で、前記(B)および(C)を行う、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄肉部材の切削方法。 - 前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面を有し、
前記内周面または外周面の法線の向きが、軸方向位置によって変化する法線変化領域において、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下になるように、前記切削工具の向きを制御しながら、前記(B)または(C)を行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載の薄肉部材の切削方法。 - 前記切削工具の切り刃は、前記切削工具の送り方向の側を向く送り側面を有し、
前記第1側面または第2側面の法線の向きが、半径方向位置によって変化する法線変化領域において、前記送り側面と前記素材の加工面とのなす角度が80度以上、100度以下になるように、前記切削工具の向きを制御しながら、前記(B)または(C)を行う、ことを特徴とする請求項3または4に記載の薄肉部材の切削方法。 - 旋削する面と反対の面とで取り代の厚さが異なる場合に、取り代の厚さが薄い面を先に旋削する、ことを特徴とする請求項1または3に記載の薄肉部材の切削方法。
- 仕上げ旋削によりビビリ振動を生じさせない前記厚みは、仕上げ旋削のための残り代であって、前記薄肉部材の厚みの50%より大きい、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の薄肉部材の切削方法。
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