次に、発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお、本明細書中の説明において、配置関係の説明の便宜のため、バルコニーの配置される部位における家屋側を「後」とし、張り出し先端側を「前」とする。また、水平面内において前後方向と直交する方向を「間口方向」、「幅方向」、或いは、「左右方向」とする。また、間口方向の端部を「側端部」、或いは、「左右端部」とする。また、間口方向の中央に近い側、或いは、前後方向の中央に近い側を「内側」とし、間口方向の中央に遠い側、或いは、前後方向の中央に遠い側を「外側」とする。また、バルコニーの間口方向の端部に近い側を「妻」、或いは、「妻側」とする。また、「バルコニー」とは、建物側から張り出すようにして配置される床を有するものを広く含む概念であり、一般的に類似する用語として用いられる、「ベランダ」「テラス」なども含むものである。
図1(a)(b)に示すごとく、バルコニー1においては、板状のデッキ材2・2(床材)が敷設されることで、床面3が形設される。また、床面3は家屋側から張り出すように設けられており、張り出し先端側において、前桁4が横方向に配置されるとともに、この前桁4の両端部から家屋側に向かう妻側の部位において、妻桁5・6が前後方向に配置される。このように構成されるバルコニー1は、戸建住宅のほか、集合住宅や施設建物などにも設置され得るものである。
また、図1(a)に示すごとく、前桁4、妻桁5・6には、それぞれ柵7・7・・・が立設され、これらの柵7・7・・・の上端を結ぶように笠木8が設けられる。なお、柵7・7・・・を設けるほか、透光性のあるパネルやパンチングパネルなどの板材を設ける形態とすることもできる。
また、図1(b)に示すごとく、デッキ材2・2は、間口方向に長い長尺の板材であって、各デッキ材2・2を前後方向に並べて配置することによって、一連の床面3が構成されるようになっている。また、デッキ材2・2は、金属製の架台10を構成する支持体11・12、根太13・13の上に配置されるようになっている。
また、図1(b)に示すごとく、妻桁6の下方には、前側から後側に向かって低くなる勾配を付けて設けられる妻側横樋18が配置されている。この妻側横樋18の前端部は、詳しくは後述するが、前桁4の内部と連通されており、前桁4の内部に流れ込んだ雨水などが、妻側横樋18を通過し、妻側横樋18の後端部に接続される縦樋17へと導かれるようになっている。
次に図2などを用いて架台10の構成について説明する。
まず、図2及び図3に示すごとく、支持体11・12は、その後端側が建物の躯体側に対し固定されることで、支持体11・12の先端側が前方に張り出すようにして配置される。二つの支持体11・12は、間口方向に間隔を開けて配置され、二つの支持体11・12の後端部には、長尺の横架材14が掛け渡される。また、二つの支持体11・12の前端部には、横架材14と平行となるように長尺の前桁4が掛け渡される。
また、図2及び図3に示すごとく、二つの支持体11・12の両外側において、前後方向に妻桁5・6が配置され、この妻桁5・6が前桁4と横架材14の間に掛け渡される。このようにして、前桁4、妻桁5・6、横架材14の四辺にて取り囲まれる枠体(図3)が構成される。さらに、二つの支持体11・12の間においては、前後方向に根太13・13が配置され、この根太13・13が前桁4と横架材14の間に掛け渡される。また、前桁4と妻桁5・6の端部は、コーナブロック15・16を介して接続される。
以上のようにして、図2及び図3に示すごとく、前桁4、支持体11・12、妻桁5・6、根太13・13、横架材14、によって、バルコニーの架台10が構成される。そして、この構成においては、前桁4、妻桁5・6、根太13・13、横架材14によって構成される枠組みが、支持体11・12によって支えられる構成となっており、支持体11・12がバルコニーの全体荷重を支える強度部材として機能するように構成されるようになっている。
そして、このように、支持体11・12のみが強度部材として機能することで、他の前桁4や妻桁5・6などについては、支持体11・12と比較して高い曲げ剛性が必要なくなることから、前桁4や妻桁5・6などについて軽量化を図ることが可能となる。なお、本明細書にいう「金属製の架台10」とは、少なくともバルコニーの床面を支えるための支持体11・12について、木材を用いずに金属を用いているものをいうものである。
また、図4に示すごとく、支持体11は、建物の躯体側に固定されるブラケット11Aと、このブラケット11Aに対して固定されるカバー材11Bの二つの部材を有する構成としている。ブラケット11Aは、建物躯体に固定される固定板部11aと、この固定板部11aから前方に突出する断面視略コ字状の長尺のアーム部11bを有する構成としている。また、カバー材11Bは、断面視略ロ字状の長尺の中空部材で構成され、その内部にアーム部11bを挿入させるとともに、ボルトなどの固定部材11cによってブラケット11Aに対して固定されるようになっている。なお、ブラケット11Aが固定される建物躯体の具体例としては、建物を構成する梁、桁、胴差し、柱、などが考えられる。
また、図4に示すごとく、ブラケット11Aは、鋼材などの高い曲げ剛性を発揮し得る部材にて構成される。これにより、バルコニー全体の荷重を支える強度部材として機能することができるようにしている。一方で、カバー材11Bは、アルミ押出成形品などによって構成される。これにより、バルコニー全体の重量の軽量化が図られるようにしている。また、カバー材11Bの側面には、固定用長孔11dが形設されており、この固定用長孔11dの幅を利用して、ブラケット11Aに対するカバー材11Bの固定位置や角度が調整できるようになっている。そして、この調整によって、支持体11全体としての建物躯体からの張り出し寸法(突出寸法)の設定や、後述する勾配(図5に示す勾配K1)の設定ができるようになっている。
また、図4に示すごとく、ブラケット11Aがカバー材11Bの内部に挿入されることで、ブラケット11Aとカバー材11Bが一体化され、ブラケット11Aがカバー材11Bによって覆い隠される構成となり、図1(b)に示すごとく、下側からバルコニー1を見上げた場合においては、梁11について、ブラケット11Aが外観に現れずに、カバー材11Bにて外観意匠が構成されることになり、シンプルな外観意匠を実現することができる。
また、図4に示すごとく、ブラケット11Aの上面11eには、スペーサー11f・11gが取り付けられ得る構成となっている。これにより、ブラケット11Aにカバー材11Bが取り付けられた状態では、ブラケット11Aとカバー材11Bの間にスペーサー11f・11gが挟装されることで、このスペーサー11f・11gの厚みの分だけ、カバー材11Bの上面11hの位置が高く設定される構成としている。
また、図5に示すごとく、支持体11において、スペーサー11f・11gは、それぞれブラケット11Aの上面11eの後端部、前端部に配置され得るとともに、後側に配置されるスペーサー11fの厚みを、前側に配置されるスペーサー11gよりも厚く設定することにより、ブラケット11Aに固定されたカバー材11Bの上面11hにおいて、後端側から前端側に向かって低くなる勾配K1が形成されるようになっている。
また、図5に示すごとく、この勾配K1は、スペーサー11f・11gの厚みによって適宜設定できるものとなっている。また、スペーサー11f・11gの素材は、ゴムや樹脂などとするほか、金属などであってもよく、特に限定されるものではない。また、スペーサー11f・11gの固定方法は、ボルトなどの固定具を用いる他、接着剤などを用いる形態としてもよい。また、各スペーサー11f・11gは一枚で構成するほか、複数枚を積層して構成するものであってもよい。また、スペーサー11f・11gは、ブラケット11Aの上面11eに載置固定する形態とするほか、例えば、ブラケット11Aの側面から立ち上がってカバー材11Bの内側天面を保持する構成とするなど、カバー材11Bの高さを調整するための構成として、多くの構成が採用し得る。さらに、このスペーサー11f・11gの設置箇所については、ブラケット11A側に設けるほか、カバー材11B側に設ける、即ち、カバー材11Bの中空部の内側天井面に挟着するなどの構成も考えられる。
また、図5に示すごとく、支持体12においても、支持体11と同様の構成とするものであるが、ブラケット12Aの後側にのみスペーサー12fが配置されることとしている。これにより、ブラケット12Aに固定されたカバー材12Bの上面12hにおいて、後端側から前端側に向かって低くなる勾配K2が形成されるようになっている。
さらに、図5に示す構成において、支持体12側のスペーサー12fの厚みは、支持体11側のスペーサー11fの厚みと同一とされている。また、二つの支持体11・12のブラケット11A・12Aは、同一の高さ位置において、建物躯体に固定されるものとしている。
以上の構成により、図6に示すごとく、支持体11の後端位置P1、前端位置P2、支持体12の後端位置P3、前端位置P4の高さ関係が、後端位置P1・P3(P1とP3は同じ高さ)、前端位置P2、前端位置P4の順に低くなるように設定される。そして、このような高さ関係を実現する支持体11・12にデッキ材2・2を敷設することで、床面3において、その一側妻部の後端隅部D1から、その対角位置となる床面3の他側妻部の前端隅部D4に向かって低くなる床勾配U1が形成される。
そして、図6に示すごとく、以上の床勾配U1によって、床面3の表面上の雨水などは、前端隅部D4に向かって流れることになって、雨水などが一箇所に集まり得る構成を実現できる。このようにして、床面3の水はけを良好に確保することが可能となる。さらに、後端隅部D1・D3を水平に設定することも可能となるため、バルコニーの床面3と連続する室内側床面9との間において、段差をなくす、若しくは、段差を小さくする、或いは、間口方向において均一な段差とすることが可能となる。
なお、図6に示すごとく、この床勾配U1が形成されると同時に、床面3の一側妻部(支持体11に近い側の妻部)において後端隅部D1から前端隅部D2に向かって低くなる妻桁側勾配U2、床面3の他側妻部(支持体12に近い側の妻部)において後端隅部D3から前端隅部D4に向かって低くなる妻桁側勾配U3、床面3の前端部(前桁4の近傍)において前端隅部D2から前端隅部D4に向かって低くなる前桁側勾配U4が形成される。
また、図5において、スペーサー11f・11g・12fの配置や、厚みを変えることによれば、勾配K1・K2が変更されることになり、これ応じて、図6に示される床勾配U1も変更されることになる。例えば、図5においてブラケット12A側にスペーサー11f・11gを配置し、ブラケット11A側にスペーサー12fを配置することによれば、図6において、他側妻部の後端隅部D3から、その対角位置となる床面3の一側妻部の前端隅部D2に向かって低くなる勾配を形設することが可能となる。
次に、図7(a)(b)などを用いて前桁4の構成について説明する。
前桁4は、バルコニーの張り出し先端側において間口方向に設けられる長尺の部材であり、図7(a)の断面図に示されるように、外側面において見付面を構成する見付面部41と、見付面部41の上部において後方に延設される上面部42と、上面部42の後端部から下方へ延設される垂壁部43と、見付面部41の下部において後方へ延設される下面部44と、下面部44の後端部から上方へ延設される縦面部45と、を有して構成される。
また、図7(a)に示すごとく、前桁4の見付面部41において、その上下中途部には上側固定片部41aが後方に延設されている。また、前桁4の縦面部45において、その上端部には下側固定片部45aが後方に延設されている。そして、上側固定片部41a及び下側固定片部45aが、それぞれ、支持体12(カバー材12B)の先端部の上面12t・下面12uに対し固定具41b・45bにて固定されることで、前桁4が支持体12に対して支持固定されるようになっている。
また、図7(a)に示すごとく、前桁4が支持体12の先端部の前側に取り付けられることで、前桁4の外側面を構成する見付面部41の外観によって、バルコニーの桁部分の意匠が構成されるようになっている。
また、図7(a)に示すごとく、支持体12(カバー材12B)の先端の下部には、支持上面部12mと縦面部12nを有する支持部材12Cが設けられており、支持上面部12mに対し前桁4の下面部44が当接し、縦面部12nに対し前桁4の縦面部45が当接し得る構成となっている。
これにより、図8(a)に示すごとく、前桁4が支持部材12Cに下から支えられ得る構成となっている。また、支持体12に対する前桁4の固定時においては、前桁4を支持部材12Cに仮置きすることが可能となり、固定具41b・45bの締結作業が容易に行うことが可能となっている。また、支持部材12Cの縦面部12nに前桁4の縦面部45を押し付けることで、支持部材12Cに対する前桁4の位置決めを行うことが可能となり、施工精度のばらつきが抑えられるとともに、施工作業を容易に行うことが可能となる。
また、図7(b)に示すごとく、前桁4の上側固定片部41a及び下側固定片部45aは、根太13の上面13t・下面13uに対し固定具41c・45cにて固定されるようになっている。これにより、前桁4が根太13に対しても支持固定されるようになっている。
また、図7(a)に示すごとく、前桁4において、見付面部41と、下面部44と、縦面部45の三つの面により、上方が開口される溝形状を構成する前桁横樋46が形成される。この前桁横樋46の上方には、デッキ材2の前端部2aが配置され、床面3(デッキ材2)を伝う雨水などが、前端部2aから前桁横樋46内へと流れ込むようになっている。ここで、上述したように、床面3は床勾配U1(図6参照)を有するように構成されるため、床面3を構成する表面2aの表面の雨水などは、矢印Lの方向へ流れ、随時前桁横樋46へと案内されるようになっている。
また、図7(a)に示すごとく、本実施形態においては、前桁4の前桁横樋46は、前記見付面部41と、前記見付面部41から後方に延設される下面部44と、前記下面部44の後部から上方に延設される縦面部45と、から上方が開放される溝形状に構成されるものであり、これら見付面部41、下面部44、縦面部45は、押出成形、若しくは、板金加工によって連続的に形成されることとするものである。
即ち、図7(a)に示すごとく、前桁横樋46は、前桁4に別部材を取り付けて構成されるものではなく、押出成形(アルミや樹脂の押出成型など)や板金加工(折り曲げ加工など)によって、一体的に形設されるものである。これによれば、部品点数の削減が図られるとともに、前桁4の組立て手間も削減することが可能となる。
なお、本実施形態とは別の形態として、この前桁横樋46を構成する部位を、前桁4と別部材にて設けることが考えられ、例えば、下面部44と縦面部45を有する略L字状の長尺部材が見付面部41の裏面に付設されることで構成するものが考えられる。
また、図7(a)は、支持体12に対する前桁4の固定部位について示すものであるが、支持体11に対しても同様に前桁4が固定されるようになっている。そして、図6に示すごとく、上述したように、支持体12の前端位置P4が支持体11の前端位置P2よりも低い位置に配置されるため、支持体11・12に架設される前桁4については、支持体11から支持体12に向かって低くなる前桁側勾配U4を有するように配置されることになる。
そして、図6に示すごとく、前桁4が前桁側勾配U4を有して配置されることで、この前桁4に形成される前桁横樋46についても、前桁側勾配U4を有することとなる。これにより、前桁横樋46に流れ込む水を、支持体11側から支持体12側へと向かう方向(矢印Mで示す方向)へと流すことが可能となる。
また、図8に示すごとく、前桁4の下面部44には、上下方向に貫通する排水口44aが形設されており、この排水口44aの位置において、下面部44の下面に筒状のジョイント部材47が固定される。このジョイント部材47は、排水口44a側が開口され、後部側には妻側横樋18が接続される接続部47aを有している。
以上の構成により、図8に示すごとく、勾配を有する前桁横樋46によって矢印Mの方向に流れる水が、排水口44aからジョイント部材47へと流れ込み、妻側横樋18へと案内されるようになっている。そして、妻側横樋18は前側から後側に向かって低くなる勾配を有して設けられており、この妻側横樋18を通して図示せぬ縦樋へと水が排水されるようになっている。
以上のように、本実施形態では、図7(a)(b)及び図8に示すごとく、前桁4においては、その前桁4を構成する見付面部41と、下面部44と、縦面部45によって前桁横樋46が形設される。これにより、別の樋部材を用いて前桁横樋46に対応するものを形設する必要が無く、部品点数の削減が図られる。
また、図7(a)(b)に示すごとく、前桁横樋46は、見付面部41の裏側(後側)に形設されることで、前桁横樋46が見付面部41によって隠されることになり、前方からは前桁横樋46を見え難くすることができる。また、別の樋部材の上下寸法が見付面部41に加わらないため、前桁4全体としての上下寸法を小さく構成することができ、バルコニー全体として、床部分(前桁4)が薄い外観意匠を実現することが可能となって、すっきりとして軽快な印象を与えるデザインを実現することが可能となる。
なお、図7(a)(b)に示す下面部44の上下位置は、見付面部41の最下位置と同一、若しくは、それよりも上とすることで、前桁横樋46を見付面部41の上下寸法内に収めることが可能となる。
また、図8に示される排水口44aは、前桁4において、妻桁6と接続される側の端部に設けられる他、妻桁6と反対側にある妻桁5(図6参照)に近い側の端部にも配置される。これにより、詳しくは後述するが、図10(b)のように、前桁側勾配U5が形成される場合において、妻桁5にジョイント部材47、妻側横樋18を設ける形態が可能となっている。つまりは、前桁4の両端部において排水口44a(図8)が設けられる構成とするものである。また、使用しない側の排水口44aは、図示せぬ蓋などで閉じられるようになっている。
次に、図9などを用いて妻桁6の構成について説明する。
妻桁6は、底面部63aと、底面部63aの両側からそれぞれ立ち上がる縦面部63b・63cを有する妻桁本体63と、見付面部64aを有するカバー材64にて主に構成される。妻桁本体63は、前後方向に長い長尺の部材であって、この外側側面を覆うようにカバー材64が妻桁本体63に対して固定される。このような構成により、カバー材64の見付面部64aの外観によって、バルコニーの妻側の意匠が構成されるようになっている。
また、図9に示すごとく、妻桁本体63において、底面部63aと縦面部63b・63cの三つの面により、上方が開口される溝形状を構成する妻桁横樋65が形成される。この妻桁横樋65の上方には、デッキ材2の側端部2cが配置され、床面3(デッキ材2)を伝う雨水などが、側端部2cから妻桁横樋65内へと流れ込むようになっている。ここで、上述したように、床面3は床勾配U1(図6参照)を有するように構成されるため、床面3を構成する表面2aの表面の雨水などは、矢印Nの方向へ流れ、随時妻桁横樋65へと案内されるようになっている。
また、図9に示すごとく、妻桁本体63の内側の縦面部63bは、底面部63aよりも下方に延設されており、その端部から横方向に下側固定片部63dが延設されている。この下側固定片部63dは、前桁4の下側固定片部45aに対し、固定具65aにて固定されるようになっている。また、縦面部63bの上端部には、横方向に上側固定片部63eが延設されている。この上側固定片部63eの上面に対し、デッキ材2の幅方向に形設された溝部2dの底面が、スペーサー66を介して固定具65bにて固定されるようになっている。また、妻桁本体63の縦面部63cの上端部には、横方向にカバー固定片部63fが延設されている。このカバー固定片部63fの上面に対し、上側カバー材67の外側端部が固定具65cによって固定される。上側カバー材67は、デッキ材2の表面2aの端部に被せ得るカバー面67aを有しており、このカバー面67aによって、妻桁横樋65の上方の開放が塞がれるようになっている。
また、図9に示すごとく、妻桁本体63の底面部63aには、上下方向に貫通する排水口63gが形設されている。この排水口63gは、前桁4の前桁横樋46の上方に配置される。これにより、妻桁本体63の前桁横樋46と前桁4の前桁横樋46が連通することとになり、妻桁本体63の妻桁横樋65に流れ込んだ水は、排水口63gから前桁4の前桁横樋46へと流れ込むようになっている。そして、このように前桁横樋46に流れ込んだ水は、上述したように、前桁4の前桁横樋46に形設される排水口44aからジョイント部材47内へと流れ込み、妻側横樋18へと排出される。
なお、図9の妻桁6の構成は、図2に示すごとく、他方の妻側に配置される妻桁5においても同様に適用されるものである。即ち、妻桁5・6は、同一の構成とするものであり、互いに水平面において180度回転させた関係で設けられるものである。
そして、図10(a)(b)に示すごとく、以上のようにして構成される妻桁5・6が、前桁4の両側端部に接続される状態で設けられる。図10(a)の構成では、支持体12側が支持体11側よりも低くなる前桁側勾配U4が前桁4に形設されるため、前桁4においては、カバー材12の側の妻桁6の端部に、ジョイント部材47を設けるとともに、妻桁6の下方に妻側横樋18を設ける構成とする。この妻側横樋18の後部には、縦樋17が接続される。
一方、図10(b)に示すように、支持体11側が支持体12側よりも低くなる前桁側勾配U5が形設されるように、図5のスペーサー11f・11g・12fの配置を設定することによれば、前桁4に前桁側勾配U5をつけることができ、この場合、前桁4においては、支持体11の側の妻桁5の端部に、ジョイント部材47を設けるとともに、妻桁5の下方に妻側横樋18を設ける構成とする。この妻側横樋18の後部には、縦樋17が接続される。
以上のように、図10(a)(b)に示すごとく、妻桁5・6のいずれか一方に妻側横樋18を設けることで、バルコニーの床面3の排水を行うことが可能となる。また、妻桁5・6のいずれに妻側横樋18を設ける構成とするかは、例えば、縦樋17の配置の都合に応じて決めることができる。
即ち、例えば、建物外壁において、妻桁6の側にのみ縦樋17が取り付けられ得る状況である場合には、図10(a)の構成とすることで対応が可能であり、その逆の場合には、妻桁5の側にのみ縦樋17を取り付けることで対応が可能となるのである。さらに、妻桁5・6のいずれの側にも縦樋17が設置され得る場合には、図10(a)(b)のいずれか一方の形態を任意で選択することができる。若しくは、床面3に前桁側勾配U4・U5のいずれかの勾配をつけつつ、妻桁5・6の両方に妻側横樋18、縦樋17を設けることとしてもよい。
以上のように、図10(a)(b)に示すごとく、支持体11・12の設定(スペーサーの設定)によって床面3、及び、前桁4の前桁側勾配U4・U5を設定するとともに、前桁側勾配U4・U5の低い側の妻桁5・6に妻側横樋18が設けられ得る構成とすることで、例えば、建物外壁における縦樋17の配置の都合などに応じて、二つの妻桁5・6のうちから、妻側横樋18を設けるものを自由に選択することが可能となる。
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図6に示すごとく、一側妻部の後端隅部D1から、その対角位置となる床面3の他側妻部の前端隅部D4に向かって低くなる床勾配U1が形成される床面3を有するバルコニーとするものである。
これにより、図6に示すごとく、床勾配U1によって、床面3の表面上の雨水などは、前端隅部D4に向かって流れることになって、雨水などが一箇所に集まり得る構成を実現できる。このようにして、床面3の水はけを良好に確保することが可能となる。さらに、後端隅部D1・D3を水平に設定することも可能となるため、バルコニーの床面3と連続する室内側床面9との間において、段差をなくす、若しくは、段差を小さくする、或いは、間口方向において均一な段差とすることが可能となる。
また、図6に示すごとく、前記床面3の他側妻部の前端隅部D4に、排水口44aが配置される構成とするものである。
これにより、図6に示すごとく、床面3の間口方向において排水口44aを一箇所とすることが可能となり、例えば、図1(b)に示すごとく、一方の妻桁6の側にだけ、妻側横樋18を設けることで、雨水などを排水可能な構成が実現できる。
また、図4乃至図6に示すごとく、前記床面3は、間口方向に間隔を開けて配置され、建物躯体から張り出して設けられる、少なくとも二つの支持体11・12にて支持されるものであり、前記支持体11・12は、それぞれ、建物躯体に固定されるブラケット11A・12Aと、前記ブラケット11A・12Aに固定されるカバー材11B・12Bを有し、前記各ブラケット11A・12Aと、前記各カバー材11B・12Bの間に、スペーサー11f・11g・12fを挟装し、前記各カバー材11B・12Bの各上面11h・12hの勾配K1・K2が設定されることで、前記床面3の床勾配U1が設定され得る構成とするものである。
これにより、図5及び図6に示すごとく、スペーサー11f・11g・12fにて勾配K1・K2を設定することにより、床面3の床勾配U1を自由に設定することが可能となる。
また、図4に示すごとく、前記支持体11・12は、それぞれ、建物躯体に固定されるブラケット11A・12Aと、前記ブラケット11A・12Aに固定されるカバー材11B・12Bを有し、前記ブラケット11Aが前記カバー材11Bの内部に挿入されることで、前記ブラケット11Aが前記カバー材11Bによって覆い隠される構成とするものである。
これにより、図1(b)に示すごとく、下側からバルコニー1を見上げた場合においては、支持体11について、ブラケット11Aが外観に現れずに、カバー材11Bにて外観意匠が構成されることになり、シンプルな外観意匠を実現することができる。
また、図6に示すごとく、前記各支持体11・12の前端部には前桁4が掛け渡され、前記前桁4の長手方向には前桁横樋46が設けられ、前記前桁横樋46には、前記床勾配U1に応じて、前記一方の支持体11から前記他方の支持体12へ向かって低くなる前桁側勾配U4が形設されるとともに、前記前桁側勾配U4における低い側の端部に、前記排水口44aが形設される、こととするものである。
これにより、図6に示すごとく、前桁側勾配U4によって前桁横樋46内の雨水などを流すことが可能となって、前記排水口44aから雨水などを排出することが可能となる。
また、図7(a)(b)に示すごとく、前記前桁4の前桁横樋46は、前記前桁4の見付面部41の裏側に形設され、上方が開口される溝形状を有するものであり、前記前桁4の前桁横樋46の上方に、前記床面3を構成するデッキ材2の前端部2aが配置される、こととするものである。
これにより、図7(a)(b)に示すごとく、前記床勾配U1(図6参照)によって雨水などを床面3の前端部2aから前桁横樋46内へと流れ込ませることが可能となる。
また、図10(a)(b)に示すごとく、前記前桁4の前桁横樋46の両端部に、ぞれぞれ、前記排水口44aが設けられる構成とするものである。
これにより、図10(a)(b)に示すごとく、前記床勾配U1の設定に伴って設定される前桁側勾配U4・U5に応じて、いずれか一方の排水口44aを利用することで、前桁横樋46内の雨水などを排水口44aから排出することができる。
また、図9及び図10(a)(b)に示すごとく、前記前桁4の間口方向の両端部には、妻桁5・6の前端部が接続され、前記妻桁5・6には、それぞれ妻桁横樋65が設けられ、前記妻桁5・6に設けられる妻桁横樋65と、前記前桁4に設けられる前桁横樋46が連通される、こととするものである。
これにより、図9に示すごとく、妻桁6の妻桁横樋65に流れ込んだ水は、前桁4の前桁横樋46へと流れ込み、前記排水口44aから雨水などを排出することが可能となる。
また、図9に示すごとく、前記妻桁6の妻桁横樋65は、上方が開口される溝形状を有するものであり、前記妻桁6の妻桁横樋65の上方に、前記床面3を構成するデッキ材2の側端部2cが配置される、こととするものである。
これにより、図9に示すごとく、前記床勾配U1(図6参照)によって雨水などを床面3の側端部2cから妻桁横樋65内へと流れ込ませることが可能となる。
また、図2及び図3に示すごとく、前記支持体11・12の後端部には、前記前桁4と平行に横架材14が掛け渡され、前記前桁4の両端部と、前記横架材14の両端部には、それぞれ、前記妻桁5・6が掛け渡されることとし、前記支持体11・12がバルコニーの全体荷重を支える強度部材として機能するように構成されることとしている。
これにより、図2及び図3に示すごとく、支持体11・12以外の他の部材である前桁4、妻桁5・6、横架材14については、支持体11・12と比較して高い曲げ剛性が必要なくなることから、前桁4、妻桁5・6、横架材14について肉厚を薄くするなどの軽量化を図ることが可能となり、バルコニー全体の重量の軽量化を図ることが可能となる。
また、図6、及び、図7(a)(b)に示すごとく、見付面部41の裏側に前桁横樋46を有するバルコニーの前桁4であって、前記前桁4は、その一端側が低くなる前桁側勾配U4が付けられる状態で設けられることで、前記前桁横樋46にも前記前桁側勾配U4が付けられる構成としている。
これにより、図7(a)(b)に示すごとく、前桁横樋46が見付面部41によって隠されることになり、前方からは前桁横樋46を見え難くすることができるとともに、前桁側勾配U4によって前桁横樋46の水を一方の端部側(妻桁側)へと流すことができ、前桁4に流れ込んだ雨水などの排水が行われ易い構成とすることができる。
また、図7(a)(b)に示すごとく、前記前桁横樋46は、前記見付面部41の上下寸法内に収められる、こととするものである。
これにより、前記前桁横樋46の上下寸法が見付面部41に加わらないため、前桁4全体としての上下寸法を小さく構成することができ、バルコニー全体として、床部分(前桁4)が薄い外観意匠を実現することが可能となる。
また、図6に示すごとく、前記前桁4は、前端の上下位置が異なるように設定される支持体11・12の前端部に掛け渡されることで、前記前桁側勾配U4が付けられる構成とする。
これにより、図6に示すごとく、支持体11・12に前桁4を固定するだけで、前桁4に前桁側勾配U4を付けることが可能となる。
また、前桁4の前桁横樋46は、前記見付面部41と、前記見付面部41から後方に延設される下面部44と、前記下面部44の後部から上方に延設される縦面部45と、から上方が開放される溝形状に構成されるものであり、これら見付面部41、下面部44、縦面部45は、押出成形、若しくは、板金加工によって連続的に形成されることとするものである。
これにより、部品点数の削減が図られるとともに、前桁4の組立て手間も削減することが可能となる。
また、図8、及び、図10(a)(b)に示すごとく、前記前桁4の前桁横樋46の両端部には、排水口44aがそれぞれ設けられ、前記前桁側勾配U4・U5における低い側の端部の排水口44aが使用され得る構成としている。
これにより、図10(a)(b)に示すごとく、前記前桁側勾配U4・U5の設定に応じて、適宜、使用する排水口44aを選定することが可能となる。
また、図2及び図3に示すごとく、前記前桁4を備えるバルコニーの架台10であって、建物躯体から張り出すように設けられる支持体11・12と、前記支持体11・12の前端部に掛け渡される前桁4と、前記支持体11・12の後端部に掛け渡される横架材14と、前記前桁4の両端部と前記横架材14の両端部においてそれぞれ前後方向に掛け渡される妻桁5・6と、を有し、前記支持体11・12がバルコニーの全体荷重を支える強度部材として機能する、こととするものである。
これにより、図2及び図3に示すごとく、前桁4については、支持体11・12と比較して高い曲げ剛性が必要なくなることから、前桁4について肉厚を薄くするなどの軽量化を図ることが可能となり、バルコニー全体の重量の軽量化を図ることが可能となる。