JP5408009B2 - 太陽電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大量のシリコン基板に対し、同時にかつ一様にシリコン酸化膜を形成する太陽電池の製造方法に関する。
半導体装置の製造において、シリコン酸化膜の果たしている役割は大きく、シリコン酸化膜は、個々の能動素子や受動素子等の素子間を電気的に分離する素子間分離領域のフィールド酸化膜や、MOSトランジスタのゲート酸化膜等として広く利用されている。したがって、シリコン酸化膜を形成する技術は重要な技術となっている。
シリコン酸化膜を形成する技術としては、シリコン基板表面を直接酸化する熱酸化法がある。従来の一般的なシリコン酸化膜の形成方法では、横型又は縦型炉を使用しており、熱処理を受けるシリコン基板は、SiC又は石英材質等のボートにより、1つのボート支持溝に対してシリコン基板を1枚搭載する構造になっており、一度の熱酸化で大量のシリコン基板を同時に処理することは容易ではなかった。
この対策として、従来のシリコン基板の大量シリコン基板熱酸化方法及びその装置が、例えば特開昭57−97622号公報及び特開昭53−25351号公報(特許文献1,2)に開示されている。これは、シリコン基板を垂直に立てた状態で、横方向に複数枚重ね合わせてシリコンボート上に載置し、この重ね合わされたシリコン基板の両側に押え板を押圧して支持し、このシリコンボート上で押圧支持されたシリコン基板を熱処理炉内で加熱処理する構成である。
しかし、一般に鏡面仕上げされたシリコン基板では、複数枚のシリコン基板を積層して熱酸化を施すと、シリコン基板同士が接着してしまい、熱酸化後シリコン基板の剥離が困難となり、現在生産に適用されていない。
ところで、太陽電池、特に結晶系太陽電池の製造工程におけるシリコン酸化膜の役割は多岐に亘り、反射防止膜としてのみならず、受光面や非受光面のパッシベーション膜、さらには拡散等のマスクとして利用されている。
単結晶や多結晶シリコン基板を用いた高効率太陽電池の断面の概観を図1に示す。太陽電池1の基板101の受光面には、基板の導電型と反対の導電型の薄い拡散層102を設け、その上に反射防止膜103としてシリコン酸化膜(SiO2膜)が形成される。また、受光面側には、光励起したキャリアを集電するための電極105が数mm間隔で設けられている。非受光面にはシリコン酸化膜によるパッシベーション膜104が形成され、集電用の電極106として銀やアルミニウム等の金属が部分的に又は全面に製膜される。このような構造を持つ太陽電池の生産性を向上させるためには、同一の熱酸化工程で大量の基板を処理する必要があり、より効率よくシリコン酸化膜を形成する方法が求められていた。
特開昭57−97622号公報 特開昭53−25351号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、単一の熱処理工程で、大量のシリコン基板を同時に熱酸化することができ、かつシリコン基板表面に均一にシリコン酸化膜を形成できる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、二枚以上の複数枚のシリコン基板を炉内で熱処理してこの基板表面にシリコン酸化膜を形成するに際し、上記基板として好ましくは表面に微細な凹凸構造を有する基板を用い、これら基板間に空隙を設けずに密着させて、上記炉の長さ方向に直立状態で重ね合わせて、又は上記炉の高さ方向に積層して熱処理することで、基板同士が張り付くことなく、一度に大量のシリコン基板を処理でき、基板表面に一様にシリコン酸化膜を形成することができることを見出し、本発明をなすに至った。なお、本発明において、基板の表面とは、その上にシリコン酸化膜が形成されるべき面をいい、基板の受光面及び非受光面のいずれか一方であっても両方であってもよい。
従って、本発明は、下記のシリコン酸化膜の形成方法及び太陽電池の製造方法を提供する。
請求項1:
半導体基板の両面に基板表面の反射率を低減させるための微細な凹凸構造であるテクスチャ構造を形成する工程と、上記半導体基板にPN接合を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法であって、上記テクスチャ構造及びPN接合を形成した半導体基板を積層し、この積層した状態のまま半導体基板をその積層方向が炉内で垂直方向又は水平方向となるように配置し酸化性雰囲気下で熱処理して該半導体基板の表面にシリコン酸化膜からなる反射防止膜又はパッシベーション膜を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
請求項2:
半導体基板の両面に基板表面の反射率を低減させるための微細な凹凸構造であるテクスチャ構造を形成する工程と、上記半導体基板にPN接合を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法であって、上記テクスチャ構造を形成した半導体基板をPN接合を形成する前に積層し、この積層した状態のまま半導体基板をその積層方向が炉内で垂直方向又は水平方向となるように配置し酸化性雰囲気下で熱処理して該半導体基板の両面にシリコン酸化膜を形成し、次いで半導体基板の受光面側のシリコン酸化膜を除去して非受光面側にシリコン酸化膜を残しておき、該シリコン酸化膜を上記半導体基板にPN接合を形成する工程として気相拡散法によって上記半導体基板の受光面に拡散層を形成する際に非受光面に拡散層が形成されないようにする拡散マスクとすることを特徴とする太陽電池の製造方法。
請求項3:
上記受光面側の拡散層上に反射防止膜を形成した後、該反射防止膜及び上記非受光面側のシリコン酸化膜上に電極を形成し、この非受光面側のシリコン酸化膜をパッシベーション膜とすることを特徴とする請求項2記載の太陽電池の製造方法。
請求項
テクスチャ構造を形成した半導体基板表面の凹凸の高低差が、1〜50μmである請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
請求項5:
上記シリコン酸化膜を形成する際の炉内雰囲気が、酸素、水蒸気及びこれらの混合ガスと、水素及び酸素の混合ガスと、これらの混合ガスに塩素原子を含むガスを添加した混合ガスとから選ばれる雰囲気である請求項1乃至4のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
請求項6:
熱処理温度が700〜1,100℃である請求項1乃至5のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
請求項7:
基板を熱処理ボートに載置して熱処理する請求項1乃至6のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
請求項8:
炉内に垂直方向又は水平方向に配置した積層状態の半導体基板群の終端部分に支持ホルダを配置する請求項1乃至7のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
請求項
シリコン酸化膜の厚さが5〜250nmである請求項1乃至8のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
本発明の太陽電池の製造方法を用いることで、熱酸化炉への充填枚数は飛躍的に増加するため、生産性が著しく向上する。本発明によれば、テクスチャ構造が必須となる結晶系の太陽電池の製造に極めて有効であり、また、太陽電池性能の低下も生じないため、効率のよい太陽電池の製造方法を提供できる。
一般的な太陽電池の構造の一例を示す概略断面図である。 基板表面のテクスチャ構造の一例を示す拡大斜視図である。 本発明のシリコン酸化膜の形成方法の一例を説明する概略図である。 本発明のシリコン酸化膜の形成方法の他の例を説明する概略図である。 本発明の太陽電池の製造工程の一例を示す説明図である。(A)は基板表面をエッチングした状態、(B)はエミッタ層を形成した状態、(C)は反射防止膜及びパッシベーション膜を形成した状態、(D)は電極を形成した状態をそれぞれ示す。 本発明の太陽電池の製造工程の他の例を示す説明図である。(A)は基板表面にテクスチャを形成した状態、(B)はエミッタ層を形成した状態、(C)はシリコン酸化膜を形成した状態、(D)は反射防止膜を形成した状態、(E)は電極を形成した状態をそれぞれ示す。 本発明の太陽電池の製造工程の別の例を示す説明図である。(A)は基板表面にテクスチャを形成した状態、(B)はシリコン酸化膜を形成した状態、(C)は受光面のみシリコン酸化膜を除去した状態、(D)はエミッタ層を形成した状態、(E)は反射防止膜を形成した状態、(F)は電極を形成した状態をそれぞれ示す。
以下、本発明に係るシリコン酸化膜の形成方法及び太陽電池の製造方法の一実施形態についてそれぞれ図面を参照しながら説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
本発明のシリコン酸化膜の形成方法は、複数枚のシリコン基板を炉内で熱処理し、これら基板表面にシリコン酸化膜を形成する方法であって、上記基板をこれら基板間に空隙を設けずに密着させ、上記炉の長さ方向に直立状態で重ね合わせて又は上記炉の高さ方向に積層して熱処理することを特徴とする。
本発明のシリコン酸化膜の形成方法に用いられる基板としては特に制限されず、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板等どのようなものであっても用いることができるが、表面にエッチング等により微細な凹凸構造を形成したものが好ましく、特に、後述するような、太陽電池の製造に用いられる、表面にテクスチャが形成された、P型又はN型のシリコン基板が好ましい。
特に、太陽電池製造のために使われるシリコン基板は、通常、受光面での可視光域の反射率を低減させるために、表面にテクスチャと呼ばれる微細な凹凸形状を有する。図2にシリコン基板表面に形成されたテクスチャ構造を示す。これはSi(100)面上の選択エッチングによる(111)面ピラミッド構造である。一般的に、太陽電池製造に用いられる基板表面におけるテクスチャの高低差dは、1〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmであり、更に好ましくは1〜5μmである。1μm未満だと十分な反射率低減効果が得られない場合があり、50μmを超えると受光面及び非受光面に形成された電極に歪みが生じ、太陽電池特性低下の原因となる場合がある。なお、本発明において、基板表面の凹凸の高低差は走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。このテクスチャ等の表面の微細な凹凸構造の形成方法は、後述する通りである。
ここで、これまで一般的に鏡面仕上げされたシリコン基板では、複数枚のシリコン基板を積層して熱酸化を施すと、基板同士が張り付いてしまい、熱酸化後、基板の剥離ができなくなるため、シリコン基板はSiC又は石英材質等のボートにより、一つのボート支持溝に対してシリコン基板1枚を搭載する手法が用いられていた。そのため、充填率に限度があり、一度の熱酸化で大量の基板にシリコン酸化膜を形成することは容易ではなかった。これに対し、本発明においては、特に、表面にテクスチャ構造等の微細な凹凸構造を有する基板を用いることで、複数枚をスタック配置して熱酸化を施しても、基板同士が張り付くことなく、一度に大量のシリコン基板に対して一様の酸化膜を形成することができる。
本発明のシリコン酸化膜の形成方法は、具体的には、例えば図3に示されるように、テクスチャ処理され、表面に微細な凹凸構造を有するシリコン基板301を2枚以上、好ましくは100〜5,000枚、特に1,300〜3,400枚、熱処理炉の長さ方向に沿って直立状態で重ね合わせて整列し、熱処理ボート302に戴置し、このボートを所定雰囲気の炉303内に挿入することで全ての基板表面に一様に酸化膜を形成できる。このとき、基板間には空隙を設けずに密着させて重ね合わせる。熱処理ボート302は、SiC又は石英材質等の高温強度に優れた材質からなり、下部に車輪304を有した平板状ボートで、シリコン基板と接する面は上記基板と同様な凹凸構造を有するものが好ましい。これは凹凸構造を有するボートの方が、気体が基板間に進入しやすく、酸化膜の形成を妨げないためである。支持ホルダ305は、シリコン基板の倒れ込み及び横ずれを防止し、破損を防ぐ役割を果たす。この支持ホルダ305は、ボートと同様の材質からなり、上記同様の理由によりシリコン基板と接する面は上記基板と同様な凹凸構造を有するものが好ましい。熱処理ボート302は、ボート及びホルダと同じ材質からなる、炉内に通じたレール306を用いて、所定雰囲気の炉303内に挿入される。この方法で熱酸化を行うと、従来の方法に比べて6倍以上ものシリコン基板を一度に処理することが可能である。
本発明においては、図3のようにシリコン基板を炉の長さ方向に直立状態で重ね合わせて配置する方法だけではなく、図4のように、炉の高さ方向に積層して配置しても大量のシリコン基板に酸化膜を形成することができる。図4はスタックした2枚以上、好ましくは50〜1,000枚、特に50〜100枚の多数枚のシリコン基板401の積層物を一群として、この最上部に表面に上記基板と同様な凹凸構造を有する、高温強度に優れた材質からなる支持ホルダ405を積載し、これらを熱処理ボート402に移載し、1又は2〜6の複数の積層物を一度に炉403内で熱酸化する方法である。なお、404は車輪、406はボート用レールである。
本発明の方法により形成されるシリコン酸化膜の膜厚については、膜形成の目的やその膜の果たす機能により一概にはいえないが、例えば、太陽電池製造工程においては、5〜250nm程度、特に10〜150nm程度のシリコン酸化膜が、制御性よく一様に形成できることが好ましい。従って、本発明のシリコン酸化膜の形成方法における熱酸化処理温度(炉内温度)は、700〜1,100℃が好ましく、より好ましくは850〜1,050℃である。700℃未満では反応にかかる熱エネルギー量が少なく、十分な酸化膜が形成されなくなる場合がある。1,100℃を超えると、熱反応効果が顕著となり、酸化膜厚のコントロールが難しくなる場合があり、また、高温になると重金属の拡散速度が増加してしまうため、ライフタイムが低下し、太陽電池特性の低下を引き起こす場合がある。処理時間は10〜360分間、特に10〜300分間、とりわけ30〜100分間が好ましい。
酸化に用いるガス種は、O2(酸素ガス)、H2O(水蒸気)、O2−H2O(酸素と水蒸気の混合ガス)、H2−O2(水素と酸素の混合ガス)等の雰囲気、又はこれら雰囲気にHCl(塩化水素ガス)、Cl2(塩素ガス)等のハロゲン原子(塩素原子)を含むガスを添加したガスが好ましく、これらの雰囲気の炉内で熱酸化を行うことで、基板表面に酸化膜を形成することが可能である。設備的にはO2を使用するのが簡便であり(ドライ酸化)、H2−O2を使用すれば(パイロジェニック酸化)、酸化膜の成長速度が大きくなり、工程時間の短縮には好ましい。H2−O2ガスを用いる際のH2ガスとO2ガスの混合割合は、容量比が1:0.5〜1:2が好ましい。
次に、図5〜7を参照して、本発明のシリコン酸化膜の形成方法を用いた太陽電池の製造方法(I)〜(III)について説明する。
(I)反射防止膜としてシリコン酸化膜を有する太陽電池の製造方法
図5に示すように、高純度シリコンにホウ素、ガリウムのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}P型シリコン基板501の表面のスライスダメージを、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ又はふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングする(図5(A))。高濃度アルカリ処理等のエッチングによって基板表面に高低差1〜50μm、特に1〜10μm、とりわけ1〜5μmの凹凸構造を形成することができる。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。基板の導電型は、リン、砒素などのV族元素をドープしたN型でもよいが、本発明では、以下、P型基板の場合について述べる。
引き続き、基板表面にテクスチャ形成を行う。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に、10〜30分程度浸漬することで容易に作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。これにより、基板表面に高低差1〜50μm、特に1〜10μm、とりわけ1〜5μmの凹凸構造が形成される。
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等又はこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
この基板上に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法などによりエミッタ層502を形成する(図5(B))。一般的なシリコン太陽電池は、PN接合を受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、拡散前に非受光面にシリコン酸化膜(SiO2膜)等を拡散マスクとして形成して、非受光面にPN接合ができないような工夫を施してもよい。拡散後、表面にできたガラスをふっ酸などで除去する。
次に、本発明のシリコン酸化膜の形成方法(熱酸化)により、受光面の反射防止膜503の形成を行う(図5(C))。また、非受光面にも熱酸化膜(シリコン酸化膜)504を用いることで、受光面及び非受光面のパッシベーション効果が高まり、変換効率向上に貢献する。熱酸化は、本発明の方法により、基板同士を重ねた状態で処理を行う。950〜1,100℃、特に1,000〜1,050℃で5〜120分間程度、特に90〜120分間、ドライ酸化(O2)や、ウェット酸化(O2−H2O)、パイロジェニック酸化(H2−O2)の他、HClやCl2等のガスを導入するなどいずれの方法でもよい。この方法により、受光面に90〜150nm、特に100〜120nmのシリコン酸化膜を形成する。この範囲から外れると反射率が高くなってしまい、短絡電流が低下してしまう等の不具合が生じる場合がある。
続いて、受光面及び非受光面の電極を蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法で形成する。スクリーン印刷法の場合は、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合した銀ペーストをスクリーン印刷した後、5〜30分間、700〜850℃の温度で焼成して電極505、506を形成する(図5(D))。焼成によりシリコン酸化膜(SiO2膜)503,504に銀粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンを導通させる。受光面電極及非受光面電極の焼成は一度に行うことも可能であるが、別々に行ってもよい。
電極形成に蒸着法やスパッタリング法を用いる場合は、酸化膜に、電極を形成するための開口部を設けておく必要がある。開口部の形成には、レーザーによる熱的なエネルギーを与える方法や、ダイサー等により物理的に形成する方法、エッチングペーストを用いて化学的に形成する方法などがある。非受光面に限り、開口部形成後アルミニウムを全面に製膜すると、非受光面のパッシベーション効果が劇的に改善され、太陽電池の変換効率向上に寄与する。
上記のスクリーン印刷法による電極形成及び開口後の蒸着法による電極形成は、受光面と非受光面に組み合わせて使用することも当然可能である。また、上記の方法においては、受光面及び非受光面のいずれにも酸化膜が形成されるが、ふっ酸などで、受光面の酸化膜のみを除去し、SiNx膜を製膜して反射率を低下させたり、非受光面の酸化膜のみを除去してアルミニウムを全面に製膜したりしてもよい。
(II)パッシベーション膜(表面安定化又は保護膜)としてシリコン酸化膜を有する太陽電池の製造方法
上記方法は、シリコン酸化膜を反射防止膜とするものであるが、シリコン酸化膜は屈折率が1.5程度と低いために、有効な反射防止効果が得られない場合がある。このため、受光面の酸化膜を薄くしてパッシベーション効果のみ発現させ、別の材料で反射防止膜を形成する方法がある。以下に、図6を用いて一例を示す。
(I)と同様の方法でシリコン基板601の表面にテクスチャを形成し(図6(A))、拡散層(エミッタ層)602を形成した(図6(B))後、この拡散層602上及び非受光面側に薄いシリコン酸化膜603,604を形成する(図6(C))。酸化膜厚は5〜50nm、特に10〜20nmが好ましい。50nmを超えると反射率が高くなってしまい、短絡電流が低下してしまう等の不具合が生じる場合がある。また、5nmより薄いと、パッシベーション効果が発現せず、開放電圧の低下を招く場合がある。
シリコン酸化膜形成には、本発明の方法により、複数の基板を重ねた状態で熱酸化を行う。700〜1,000℃、特に850〜950℃で5〜60分間程度、特に10〜30分間、ドライ酸化や、ウェット酸化、パイロジェニック酸化の他、HClやCl2等のガスを導入するなどいずれの方法でもよい。
薄いシリコン酸化膜603,604の形成後に、CVDなどの方法でSiNx膜等の反射防止膜607,608を受光面及び非受光面に形成する(図6(D))。CVD法によるSiNx形成には、反応ガスとして、モノシラン(SiH4)及びアンモニア(NH3)を混合して用いることが多いが、NH3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
次に、受光面及び非受光面の電極605,606を蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法で形成する(図6(E))。スクリーン印刷法の場合は、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合した銀ペーストをスクリーン印刷した後、印刷後、5〜30分間、700〜850℃の温度で焼成して電極とシリコンを導通させ、電極が形成される。受光面電極及び非受光面電極の焼成は一度に行うことも可能であるが、別々に行ってもよい。
なお、上記の方法においては、非受光面のシリコン酸化膜604上にSiNx膜を製膜しないで、アルミニウムを全面に製膜してもよい。
(III)拡散マスクとしてシリコン酸化膜を有する太陽電池の製造方法
(I)及び(II)のように、シリコン酸化膜は、反射防止膜やパッシベーション膜として利用されるだけでなく、拡散のマスクとしても用いることができる。以下、図7を用いて一例を示す。
(I)と同様の方法で基板701の表面にテクスチャを形成した(図7(A))後、この基板の受光面及び非受光面に厚いシリコン酸化膜709,704を形成する(図7(B))。この酸化膜は、後で受光面側は除去して非受光面側は残し、気相拡散法において非受光面側に不純物を拡散させないためのマスクとして用いるものである。酸化膜厚は50〜250nm、特に100〜150nmが好ましい。50nm未満だと、拡散マスクとしての機能を果たせず、非受光面側にPN接合が形成されてしまい、太陽電池特性が低下する場合がある。厚い分には問題ないが、250nmを超す酸化膜は、シリコンの酸化反応が拡散律速になってくるため、形成が困難な場合がある。熱酸化は、本発明の方法により、複数の基板を重ねた状態で処理を行う。950〜1,100℃、特に1,000〜1,050℃で5〜360分間程度、特に120〜300分間、ドライ酸化や、ウェット酸化、パイロジェニック酸化の他、HClやCl2等のガスを導入するなどいずれの方法でもよい。
次に、ふっ酸などを用いて受光面側の酸化膜709のみを除去する(図7(C))。この基板受光面上に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法などによりエミッタ層702を形成する(図7(D))。非受光面に酸化膜704が存在するため、非受光面側にはリンが拡散されない。拡散後、表面にできたガラスをふっ酸などで除去する。
次いで、熱酸化やCVD法で受光面の反射防止膜(SiO2膜、SiNx膜等)703を形成し(図7(E))、受光面及び非受光面の電極705,706を蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法で形成して太陽電池が作製される(図7(F))。形成方法は前述の通りである。
非受光面のマスク酸化膜704は、最終的には非受光面のパッシベーション膜として機能し、太陽電池の特性向上に寄与する。
以下、実験例及び実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[実験例1]
厚さ250μm、大きさ155×155mmの、鏡面仕上げが施されたシリコン基板、アルカリエッチング後のシリコン基板及びテクスチャ形成後のシリコン基板の3種類の基板各100枚を用意した。スライスによるダメージ層の除去は、濃度5〜60質量%の熱濃水酸化カリウムを用いて行い、その後水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液(水酸化カリウム濃度1〜10質量%)中に60〜100℃で10〜30分間浸漬することによりテクチャを形成した。ダメージエッチング後及びテクスチャ形成後の表面の凹凸の高低差は3μm程度であった。これらの基板を用いて図3に示す方法で100枚(301)を熱処理ボート302上に支持ホルダ305を用いてスタック配置し、横型熱処理炉303内に投入して酸素雰囲気中で1,050℃、6時間熱酸化を行った。
その結果、鏡面仕上げが施された基板は、基板同士が接着してしまうものもあり、剥離が困難な状態となったものもあったのに対し、表面に凹凸構造を有するダメージエッチング後の基板及びテクスチャ形成後の基板は、基板同士は接着せず、更にはどの基板表面もシリコン酸化膜特有の橙色に変化し、いずれの基板も面内一様の色を呈し、スタック状態でも一様な酸化膜が形成されていた。
以上のように、基板表面が研磨処理されていない凹凸構造を有する基板の場合、複数枚をスタック配置して熱酸化を施しても、基板同士が張り合うことなく一度に大量のシリコン基板に対して一様の酸化膜を形成できることが可能である。
[実施例1]
厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}P型アズカットシリコン基板100枚に対し、実験例1と同様に、熱濃水酸化カリウム水溶液によりスライスによるダメージ層を除去後、水酸化カリウム/2−プロパノール水溶液中に浸漬してテクスチャ形成を行い、引き続き、塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。表面の凹凸の高低差は3μmであった。
次に、オキシ塩化リン雰囲気下、870℃で非受光面同士を重ねた状態で熱処理し、エミッタ層を形成した。拡散後、ふっ酸にてガラスを除去し、洗浄、乾燥させた。
以上の処理の後、図4に示すように、50枚の基板どうしを重ねた状態401で、最上部に支持ホルダ405を積載したものを2組熱処理用ボート402に載置し、このボートを横型熱処理炉403に投入し、熱酸化を行った。温度1,050℃で60分間ドライ酸素雰囲気中(酸素ガスのみ)で酸化を行った。
処理後の基板どうしの接着は全く確認されず、外観はいずれも青色を呈し、いずれの基板も面内の色ムラは全く確認されなかった。酸化膜厚は色から110nm程度と判断された。
次に、得られた試料から10枚をランダムに選び、受光面の電極層として銀ペーストをスクリーン印刷後、乾燥した。その後、780℃の空気雰囲気下で焼成した。次いで、ダイサーを用いて非受光面の酸化膜に開口部を形成し、蒸着法によりアルミニウム電極を非受光面全面に形成し、太陽電池を作製した。
作製された太陽電池を用いた25℃、100mW/cm2、スペクトルAM1.5グローバルの擬似太陽光照射時の電気特性測定結果(10枚の平均値)を表1に示す。
Figure 0005408009
以上の結果から、本発明による酸化方法を用いれば、高効率の太陽電池が作製できることがわかった。
1 太陽電池
101 基板
102 拡散層
103 反射防止膜(シリコン酸化膜)
104 パッシベーション膜
105 受光面電極
106 非受光面電極
301,401 基板
302,402 熱処理ボート
303,403 熱処理炉
304,404 車輪
305,405 支持ホルダ
306,406 ボート用レール
501,601,701 基板
502,602,702 エミッタ層(拡散層)
503,703 反射防止膜(シリコン酸化膜)
504,603,604 パッシベーション膜(シリコン酸化膜)
505,605,705 受光面電極
506,606,706 非受光面電極
607,608 反射防止膜(SiNx膜)
704,709 拡散マスク(シリコン酸化膜)
d 表面凹凸の高低差

Claims (9)

  1. 半導体基板の両面に基板表面の反射率を低減させるための微細な凹凸構造であるテクスチャ構造を形成する工程と、上記半導体基板にPN接合を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法であって、上記テクスチャ構造及びPN接合を形成した半導体基板を積層し、この積層した状態のまま半導体基板をその積層方向が炉内で垂直方向又は水平方向となるように配置し酸化性雰囲気下で熱処理して該半導体基板の表面にシリコン酸化膜からなる反射防止膜又はパッシベーション膜を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
  2. 半導体基板の両面に基板表面の反射率を低減させるための微細な凹凸構造であるテクスチャ構造を形成する工程と、上記半導体基板にPN接合を形成する工程とを有する太陽電池の製造方法であって、上記テクスチャ構造を形成した半導体基板をPN接合を形成する前に積層し、この積層した状態のまま半導体基板をその積層方向が炉内で垂直方向又は水平方向となるように配置し酸化性雰囲気下で熱処理して該半導体基板の両面にシリコン酸化膜を形成し、次いで半導体基板の受光面側のシリコン酸化膜を除去して非受光面側にシリコン酸化膜を残しておき、該シリコン酸化膜を上記半導体基板にPN接合を形成する工程として気相拡散法によって上記半導体基板の受光面に拡散層を形成する際に非受光面に拡散層が形成されないようにする拡散マスクとすることを特徴とする太陽電池の製造方法。
  3. 上記受光面側の拡散層上に反射防止膜を形成した後、該反射防止膜及び上記非受光面側のシリコン酸化膜上に電極を形成し、この非受光面側のシリコン酸化膜をパッシベーション膜とすることを特徴とする請求項2記載の太陽電池の製造方法。
  4. テクスチャ構造を形成した半導体基板表面の凹凸の高低差が、1〜50μmである請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
  5. 上記シリコン酸化膜を形成する際の炉内雰囲気が、酸素、水蒸気及びこれらの混合ガスと、水素及び酸素の混合ガスと、これらの混合ガスに塩素原子を含むガスを添加した混合ガスとから選ばれる雰囲気である請求項1乃至4のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
  6. 熱処理温度が700〜1,100℃である請求項1乃至5のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
  7. 基板を熱処理ボートに載置して熱処理する請求項1乃至6のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
  8. 炉内に垂直方向又は水平方向に配置した積層状態の半導体基板群の終端部分に支持ホルダを配置する請求項1乃至7のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法
  9. シリコン酸化膜の厚さが5〜250nmである請求項1乃至8のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
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