JP2005056875A - 太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を用いた太陽電池を作製する際に、裏面構造の形成過程において裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法を提供する
【解決手段】少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜6が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみに開口部7が設けられ、前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10が形成されていることを特徴とする太陽電池。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜6が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみに開口部7が設けられ、前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10が形成されていることを特徴とする太陽電池。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池およびその製造方法に関し、特にシリコンの融液に成長基板を接触させることにより得られるシート状シリコン基板を有する、光電変換効率が改善された低コストな太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池は、単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかし、単結晶シリコンウェハは、シリコンのインゴットを長時間かけて作製することなどから非常に高価なウェハであり、それから作製される太陽電池も非常に高価であった。
【0003】
一方、近年では、多結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の低コスト化が進み、その生産量の増加は著しい。しかし、さらなる太陽電池の普及を考えた場合、一層の低コスト化が必要である。
【0004】
現在、急速に普及が進んでいる太陽電池に用いられているウェハは、主に多結晶シリコンである。かかる多結晶シリコンは、坩堝内で溶融したシリコンを坩堝底から徐々に冷却を行なうことでシリコンを固化させ、坩堝底面から成長した長い結晶粒を主体とするインゴット(塊状)を得るというキャスト法を用いて製造されている(たとえば、特許文献1参照。)。さらに、このインゴットを薄板状にスライスすることで太陽電池用に使用可能なウェハが完成する。しかし、この方法では、スライスによるシリコンの損失が大きいことおよび、スライス工程に費やす時間およびコストが問題となっていた。
【0005】
そこで、最近ではさらなる低コスト化およびシリコン原料節約を目的として、上記のキャスト法に替わって、スライス工程を経ずに、融液シリコンから直接シート状の多結晶シリコンの板を得る方法が種々提案されている。
【0006】
上記溶融シリコンから直接シート状シリコン基板を得る最も有望な方法として、シリコンの融点以下に保持された点状あるいは線状あるいは面上の凸部のうち少なくともいずれか一方を有する基板(成長基板)を、シリコンの融液に接触させ、前記凸部を結晶成長の起点として、シリコンの結晶を前記成長基板の表面上に成長させることで、シート状シリコン基板を得る方法が提案されている(特許文献2参照。)。かかる方法は、生産性の高さや、基板板厚制御の容易さなどから、融液シリコンから直接シート状シリコン基板を得る方法の中でも優れた方法である。
【0007】
また従来、光電変換効率の向上を目的として、半導体太陽電池の裏面のオーム性電極部において、光励起キャリア(電子または正孔)の再結合損失を防ぎキャリアの収集効率を改善した太陽電池が知られている。この太陽電池は、p型シリコン半導体基板の裏面側に酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等を形成し裏面パッシベーションを行なうことにより、このp型半導体基板の内部を拡散する少数キャリア(電子)が多数キャリア(正孔)と再結合して消滅する割合を低減して、キャリアの回収効率の改善、開放電圧の上昇を図るものである。
【0008】
この従来の太陽電池について、図3および図4を参照しながら説明する。ここで、図3および図4は従来の太陽電池の構造を概略的に示した断面図である。両図に示すように、この太陽電池は、入射した太陽光の反射を低減するために微細な凹凸状に加工されたp型半導体基板12の光入射面(表面)側に、リンを不純物(ドナー)とするn型半導体層3、パッシベーション膜6として酸化シリコン膜、および反射防止膜8として窒化シリコン膜を堆積して形成されている。また銀からなる受光面電極9が、反射防止膜8およびパッシベーション膜6を貫通し、n型半導体層3に接続して形成されている。なおp型半導体基板12とn型半導体層3との界面にはPN接合が形成されている。
【0009】
一方、先のPN接合が形成された光入射面の反対(裏面)側には、以下に述べる裏面構造が形成されている。すなわち、図3においては、裏面上に開口部を設けてパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜に堆積するようにしてp型半導体基板12と同じ導電型で、より高濃度のホウ素が添加された水素化微結晶シリコン半導体層(p+型微結晶層13)が形成されている。また、このp+型微結晶層13は先の開口部を通じてp型半導体基板12に接続されている。さらに、このp+型微結晶層13に堆積するようにして、アルミニウムや銀などの金属からなる裏面電極10が形成されている。
【0010】
また、図4においては、裏面上にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成し、開口部を設けた上でアルミニウムペーストを裏面に印刷し熱処理を行なうことで、開口部においてアルミニウムを拡散・アロイ化し、p+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成されている。
【0011】
以下、このように形成された従来の太陽電池の各層における働きについて、光電変換効率の改善に関与する裏面構造を中心に説明する。図3または図4を参照して、まず、p型半導体基板12およびn型半導体層3に太陽光が入射すると、これらp型半導体基板12およびn型半導体層3のそれぞれは、太陽光に励起されて電子・正孔対を生成する。この電子・正孔対はp型半導体基板12とn型半導体層3との接合領域における界面電界の作用を受けて、電子がn型半導体層3側に、正孔がp型半導体基板12側に収集され、この結果、p型半導体基板12とn型半導体層3との間に光起電力が生じる。
【0012】
このとき、パッシベーション膜6である酸化シリコン膜はp型半導体基板12の裏面表層部におけるシリコン原子の未結合手(再結合中心)を不活性化するとともに、酸化シリコン膜の禁制帯幅がp型半導体基板12の禁制帯幅よりも広いことに起因して、パッシベーション膜6である酸化シリコン膜とp型半導体基板12との間に電位障壁を形成する。この結果、少数キャリアが裏面表層部の再結合中心に捕獲されることがなくなり、しかも、電位障壁により裏面表層部から少数キャリアが酸化シリコン膜内に流れ出ることがないので、この裏面表層部での再結合損失が抑制される(これを、裏面パッシベーション効果という)。
【0013】
また、図3または図4を参照して、p型半導体基板よりも高濃度にホウ素が添加されたp+型微結晶層13、またはアルミニウムのアロイ化によるp+型層11は、その禁制帯中のフェルミ準位が、p型半導体基板12の禁制帯中のフェルミ準位よりも価電子帯上端に近いことに起因して、p+型微結晶層13またはp+型層11とp型半導体基板12との間に内部電界を形成する。この結果、裏面電極側に流れ出そうとする少数キャリア(電子)はこの内部電界によりp型半導体基板の内部に押し戻され、p+型層またはp型半導体基板の内部における再結合損失が抑制される(これを、裏面電界効果という)。
【0014】
このように、従来の太陽電池の裏面側には、太陽光に励起されて生成されたキャリアが再結合して消滅する割合を低減して、光電変換効率向上させるために、裏面パッシベーション効果および裏面電界効果を生じる裏面構造が形成されている。
【0015】
ここで従来の太陽電池の裏面構造を形成する方法を簡単に説明する。まず、p型半導体基板の裏面に熱酸化法、化学気相成長法(プラズマCVD法)、または酸化シリコン含有塗布液を塗布し焼成する方法などを用いて酸化シリコン膜を形成する。その後、何らかの方法で酸化シリコン膜に開口部を設けるわけであるが、最近ではフォトリソグラフィー法にかわり、プラズマエッチング法(たとえば、非特許文献1参照。)、レーザーアブレーション法(たとえば、非特許文献2参照。)、またはメカニカルアブレーション法(たとえば、非特許文献3)などが検討されつつある。続いて、プラズマCVD法によりp+型微結晶層を堆積し裏面電極層を形成した後に裏面電極を形成するか、アルミニウムペーストの印刷・熱処理によりアロイ化し、p+型層を形成すると同時に裏面電極層を形成する。
【0016】
シリコン融液から直接シート状シリコン基板を得るのに優れた方法である上記特許文献2に示した方法、すなわち、点状あるいは線状の凸部のうち少なくともいずれか一方を有する成長基板をシリコンの融液に接触させシート状シリコン基板を製造する方法においては、シリコン結晶は前記凸部を結晶成長の起点として成長し、凸部から成長した各結晶がつながることで板状のシリコン基板を得ている。このように、シリコン結晶が平面状ではなく凸部を中心に放射状に成長するために、得られるシリコン基板は少なくとも融液と接していた面に成長基板の凸部に対応した位置に凸部を持つ。シート状シリコン基板の融液と接していた面における凹部と凸部の高さ差(凹凸差)は、成長基板の温度、凸部の形状・間隔および高さ、結晶成長の時間、融液の温度等に依存するが、通常100μmとかなり大きなものとなる(以下、かかる面側を凹凸面側と称する)。
【0017】
このような大きな凹凸面を持つシート状シリコン基板を太陽電池に応用する場合、凹凸面側を太陽電池の受光面あるいは裏面として用いることになるが、太陽電池の受光面側は非常に細いグリッド線で電極形成されており、凹凸面側を受光面側として用いて印刷法によって受光面電極を形成するとグリッド線の断線が多発する。したがってシート状シリコン基板の凹凸面側は全面で電極を形成することができる裏面として用いる方が適当である。
【0018】
しかし、印刷法を用いて凹凸面側にアルミニウムからなる裏面電極を印刷すると、凸部頂点付近や凹部底付近にアルミニウムが印刷できずに印刷かすれが生じてしまう。極度に印圧を高くし、ゆっくりと印刷することによって印刷かすれを抑制することが可能であるが、印刷に時間がかかるという問題がある。また、印刷されるアルミペーストが厚くなるためその後の焼成過程においてアルミニウムのはがれが発生するという問題がある。さらに、印刷法としてスクリーン印刷法を用いる場合、印圧を高くすることにより凸部が印刷スクリーンに大きな損傷を与えてしまうという問題もある。
【0019】
このため大きな凹凸を持つシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製する場合、受光面電極形成および裏面電極形成の過程において低コストな電極形成法である印刷法を適用することが困難であった。
【0020】
また、裏面をパッシベーション膜として酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜で覆い、フォトリソグラフィー法、プラズマエッチング法、レーザーアブレーション法またはメカニカルアブレーション法を用いて一部に開口部を設け、開口部においてp+型層およびオーム性電極を形成する方法を用いて作製された太陽電池は、裏面パッシベーション効果により、この方法を用いずに作製された太陽電池に比べて光電変換効率が高い。しかし、この方法はフォトリソグラフィー法、プラズマエッチング法、レーザーアブレーション法またはメカニカルアブレーション法という高価なプロセスを要するため低コスト化という点で問題があった。また、凹凸面の凹凸の大きなシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製する場合、これらいずれの方法においても凹凸差を緩和することがないので、低コストな裏面電極形成法である印刷法が適用できないという問題があった。
【0021】
【特許文献1】
特開平11−021120号公報
【0022】
【特許文献2】
特開2001―223172号公報
【0023】
【非特許文献1】
S. Schaefer、他3名,“PLASMA ETCHED PERC AND BURIED BASE CONTACT SOLAR CELLS”,Proc. 16th European PVSEC,1−5,May 2000,Glasgow UK,p.1443−1446
【0024】
【非特許文献2】
R. Preu、他5名,“LASER ABLATION A NEW LOW−COST APPROACH FOR PASSIVATED REAR CONTACT FORMATION IN CRYSTALLINE SILICON SOLAR CELL TECHNOLOGY”,Proc. 16th European PVSEC,1−5,May 2000,Glasgow UK,p.1181−1184
【0025】
【非特許文献3】
I. Moon、他2名,“NEW METHOD FOR CONTACT PATTERNING OF HIGH−EFFICIENCY SOLAR CELL USING A MECHANICAL SCRIBER”,Jpn. J. Appl. Phys.,Vol.41,(2002),p.2900−2901
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を用いた太陽電池を作製する際に、裏面構造の形成過程において裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法を提供することを目的とする。また、同時に、低コストな裏面電極形成法である印刷法を適用できる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明にかかる太陽電池は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜の凸部のみに開口部が設けられ、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極が形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明にかかる太陽電池において、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより得られた、少なくとも一方の面の表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を有することができる。
【0029】
また、本発明にかかる太陽電池において、シート状シリコン基板の凹凸面における凸部の間隔を0.1mm以上3mm以下とすることができる。
【0030】
また、本発明にかかる太陽電池において、裏面電極は印刷法により形成できる。
【0031】
本発明にかかる太陽電池の製造方法は、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、前記凹凸面にパッシベーション膜を形成する工程、研削により前記パッシベーション膜の凸部に開口部を設ける工程、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することを特徴とする。また、パッシベーション膜の凸部に開口部を設ける工程において、研削に替えて、パッシベーション膜の凹凸面にレジストを塗布し、ワイピングにより凸部のレジストのみを拭きとり、エッチングすることにより行なうことができる。
【0032】
本発明にかかる太陽電池の製造方法において、印刷法により、開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる一の太陽電池は、図1を参照して、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜6が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみに開口部7が設けられ、前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10が形成されている。かかる構成により、表面に大きな凹凸を有するシート状シリコン基板2を用いても、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部を設けることにより、裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明にかかる太陽電池の一の製造方法は、図1を参照して、図1(a)に示すようにシリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を形成する工程、図1(d)に示すように前記凹凸面にパッシベーション膜6を形成する工程、図1(e)に示すように研削により前記パッシベーション膜の凹凸面の凸部6b,6cに開口部7を設ける工程、図1(g)に示すように前記開口部およびパッシベーション膜6に裏面電極10を形成する工程を有する。
【0035】
また、本発明にかかる太陽電池の別の製造方法は、本発明にかかる図1および図11を参照して、図1(a)に示すようにシリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、図1(d)に示すように前記凹凸面にパッシベーション膜6を形成する工程、図11に示すように前記パッシベーション膜6の凹凸面にレジスト15を塗布しワイピング14により凸部のレジスト15のみを拭きとる工程、図1(e)に示すように、エッチングにより前記パッシベーション膜の前記凸部に開口部7を設ける工程、図1(g)に示すように前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10を形成する工程を有する。
【0036】
太陽電池の上記の製造方法により、表面に大きな凹凸を有するシート状シリコン基板2を用いても、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けることにより、裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池を提供できる。また、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けることにより、凹凸面の凹凸差を緩和し、低コストな裏面電極形成法である印刷法を適用できる太陽電池の製造方法を提供できる。
【0037】
(シート状シリコン基板)
本発明にかかる太陽電池に用いられるシート状シリコン基板は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有するものであり、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板上で前記シリコンの結晶を成長させることにより得られる。まず、かかるシート状シリコン基板の製造装置および製造方法について説明する。
【0038】
(シート状シリコン基板の製造装置)
本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造装置を、図5を参照して説明する。本発明においては、シート状シリコン基板の製造装置は、シリコン融液に成長基板を接触させることが可能な装置であればたり、図5に示す製造装置に限定されない。
【0039】
図5に示すシート状シリコン基板の製造装置は、坩堝昇降台56の上に断熱材55および坩堝台54を介して坩堝51が載せられており、坩堝51の中のシリコン融液52は坩堝51の周囲に配設された加熱用ヒーター53によって融点以上に保持されている。また軸57に固定された成長基板1の表面がシリコン融液52に浸漬するように設計されている。
【0040】
図5に示すように、シリコン融液温度以下の成長基板1が、図中左側から坩堝51中にあるシリコン融液52に進入、浸漬され、図中右側から脱出することにより成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が得られる。このとき、シリコン融液は、加熱用ヒーター53で融点以上に保持されている。安定してシート状シリコン基板2を得るためには、融液温度の調節と、チャンバ内の雰囲気温度と、成長基板1の温度を厳密に制御できるような装置構成にする必要がある。
【0041】
成長基板1には、温度制御が容易に制御できる構造を設けることが好ましい。成長基板の材質は、特に限定されないが、熱伝導性の良い材料や耐熱性に優れた材料であることが好ましい。たとえば、高純度黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化硼素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化アルミ、金属などを使用することが可能であるが、目的に応じて最適な材質を選択すればよい。高純度黒鉛は、比較的安価であり、加工性に富む材質であるためより好ましい。成長基板の材質は、工業的に安価であること、得られるシート状シリコン基板の品質などの種々の特性を考慮し、適宜選択することが可能である。さらに、成長基板に金属を用いる場合、常に冷却し続けるなど、成長基板の融点以下の温度で使用し、得られたシート状シリコン基板の特性にさほど影響を与えなければ、特に問題はない。
【0042】
成長基板1の温度制御を容易にするには、成長基板1に冷却機構および加熱機構(図示せず)が備えられていることが好ましい。シリコン融液52中へ進入した成長基板1は、その成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長する。その後、成長基板は融液から脱出するが、シリコン融液から熱を受け、成長基板の温度が上昇する傾向にある。したがって、一度シリコン融液から脱出した成長基板は、一度冷却機構を用いて冷却し、次にシリコン融液に浸漬される前までに、加熱機構を用いて成長基板の温度制御を行なう方がよい。加熱機構は、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式、ランプ加熱方式等種々の方式を採用することができる。このように、成長基板1に冷却機構と加熱機構を備えることにより、シート状シリコン基板2の安定性は、著しく上昇する。
【0043】
成長基板の温度制御とともに重要なのは、シリコン融液の温度管理である。特に、融液の温度を融点近傍で設定していると、成長基板が融液に接することでシリコンの湯面が凝固を起こす可能性があるため、融液の温度は、融点以上であることが好ましい。これは複数の熱電対もしくは、放射温度計などを用いて厳密に制御することができる。融液温度を厳密に制御するには、熱電対を融液中に浸漬させるのが直接的で好ましいが、熱電対の保護管などからの不純物が融液に混入する恐れがあるために、汚染を防止する構造にする必要がある。制御方法は、坩堝などに熱電対を挿入するなどして、間接的に制御するか、放射温度計によりシリコン融液の温度を測定できるような構造にすることが好ましい。
【0044】
シリコン融液52の入った坩堝51の下には坩堝台54が、坩堝台54の下には断熱材55が配置されている。かかる断熱材55は、融液温度を均一に保持するためと、坩堝底からの抜熱を最小限に抑制するために用いられている。また、この断熱材55には、坩堝昇降軸56が接続されており、昇降機構が設けられている。これは、成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長するため、常に成長基板1が、シリコン融液の湯面から同じ深さで浸漬できるように上下動させるためである。
【0045】
次に、本発明に用いられるシート状シリコン基板の別の製造装置を、図6を参照して説明する。図6に示す製造装置は、坩堝601上に熱遮蔽板612の開口部613を有し、その開口部613を移動することが可能な支持体608と成長基板1が固定脚607に接続され、その固定脚607は、冷却器609に接続されている。また、この冷却器609は、角度が変更できる関節部610を有するアーム611に接続されている。ただし、この図において、アームや関節部を移動させる手段、真空排気ができるようなチャンバなどの装置は示していない。本装置においては、坩堝601上には、熱遮蔽板612が開口されており、成長基板1は任意の軌道を描けるような構成になっている。その成長基板1の表面上でシリコン結晶が成長し、シート状シリコン基板2が形成されるのである。このとき、成長基板1の温度、シリコン融液602の温度などを制御することにより、形成されるシート状シリコン基板2の厚みを制御することが可能になる。この装置においては、アーム611が関節部610を有することにより、成長基板1が移動する構成であるが、アーム611ごと移動する構成であっても構わない。このように、アームごと移動させるような機構を設けることで、成長基板1をシリコン融液の湯面から同じ深さで浸漬させることが可能となる。
【0046】
(シート状シリコン基板の製造方法)
次に、図5に示すシート状シリコン基板の製造装置を用いて、本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造方法について説明する。かかるシート状シリコン基板の製造方法は、シリコン融液に成長基板を接触させる方法で結晶成長させるものであれば足り、以下の製造方法に限定されない。また、成長基板の材質、坩堝材質等も、本発明の目的に反しない限り特に限定されるものではない。
【0047】
まず、得られるシート状シリコン基板の比抵抗が所望の濃度になるようにホウ素(B)の濃度を調整したシリコン塊を、高純度黒鉛製の坩堝51に一杯になるまで充填する。その坩堝51を、図5に示すような装置内に設置する。次に、チャンバ内の真空引きを行ない、チャンバ内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバ内にアルゴンガスを導入し、常に10×10−3m3/minでチャンバ上部よりアルゴンガスを流したままにする。このように常にガスを流し続けるのは、清浄なシリコン湯面を得るためである。
【0048】
次に、シリコン溶融用のヒーター53の温度を1500℃に設定し、坩堝51内のシリコン塊を完全に溶融させてシリコン融液52とする。このとき、シリコン原料は溶融することで液面が低くなることから、シリコン融液52の湯面が、常に坩堝51上面から1cm下の位置になるように、新たにシリコン粉末を投入する。シリコン溶融の用のヒーターは、一度に1500℃に上げるのではなく、約1300℃位まで10〜50℃/minの昇温速度で加熱し、その後、所定温度まで上げるのが好ましい。これは、急激に温度を上げると、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損に繋がるためである。
【0049】
その後、シリコン融液温度を1410℃に設定し、30分間そのまま保持し、融液温度の安定化を図り、坩堝昇降機構56を用いて、坩堝51を所定の位置に移動させる。このときのシリコン融液温度は、シリコンの融点以上、1500℃以下が好ましい。1500℃を越えると、得られるシート状シリコン基板の成長速度が遅くなり、生産性が悪くなる。
【0050】
次に、成長基板上でシート状シリコン基板を成長させるが、たとえば図7に示すような成長基板1を、図5中の矢印の方向に、左側から右側へ移動させる。このとき、成長基板1の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、成長基板の成長面がシリコン融液に接することで、成長基板1の表面でシート状シリコン基板2が成長する。シリコン融液への進入時の成長基板の表面温度は1100℃以下が好ましい。成長基板1の温度が1100℃を越えると、シート状シリコン基板2の成長速度が遅くなるだけでなく、成長基板とシリコンが固着したり、生産性が悪くなるおそれが生じる。このように、成長基板の表面温度によって、得られるシート状シリコン基板のばらつきが生じやすくなるため、冷却機構と加熱機構の両方を備えている方が好ましい。
【0051】
次に、図6に示すシート状シリコン基板製造装置を用いて、本発明によるシート状シリコン基板の別の製造方法について説明する。
【0052】
図6を参照して、得られるシート状シリコン基板の比抵抗が1Ω・cmになるようにホウ素(B)の濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製の坩堝(図示せず)に保護された石英坩堝601内に充填する。その後、本体チャンバ内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行ない、その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行なう。次に、坩堝601を坩堝加熱用ヒーター603に周波数4kHz、電力80kWのインバータをかけて、4℃/minの昇温レートにて500℃まで昇温する。本体チャンバ内の圧力を6Pa、坩堝温度を500℃に維持した状態で90分間保持することにより、カーボン製坩堝(図示せず)に含まれている水分を除去する。また、一度に昇温しないのは、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損を防止するのが目的である。
【0053】
上記ベーキングの後、一旦インバータの出力を停止し、坩堝601の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。本体チャンバ内が800hPaに達した時点で、再び坩堝601を昇温速度10℃/minで加熱し、坩堝601の温度が1550℃になるまで昇温する。坩堝の温度を1550℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液602とする。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン融液の湯面の高さが坩堝上端より15mm下になるように、シリコン塊もしくはシリコン粉末を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1430℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間その状態を保持する。
【0054】
次に、シート状シリコン基板2を成長基板1上で成長させるが、成長基板の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、成長基板の成長面がシリコン融液に接することで、成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長する。図6に示すように、成長基板1とシート状シリコン基板2はチャンバ内で剥離してもいいし、チャンバ外へ搬出しても構わない。特に、生産速度を上げるのであれば、チャンバ内で、成長基板1から剥離し、シート状シリコン基板2だけをチャンバ外へ搬出するのが好ましい。このようにすることで、成長基板1をチャンバ外へ搬出することがなくなるだけでなく、アルゴンガスの消費量も大幅に低減することが可能となり、より安価なシート状シリコン基板を提供することが可能となる。
【0055】
(シート状シリコン基板製造用成長基板)
ここで、本発明で用いられるシート状シリコン基板となるシリコン結晶を成長させるための成長基板について説明する。図7または図8を参照して、本発明で用いられる成長基板1の表面は凹凸構造を有しており、その凸部の形状が、点状または線状で形成されている。すなわち、図7に示す成長基板1は、線状の凸部1aを有し、図8に示す成長基板は、点状の凸部1cを有する。
【0056】
次に、図9または図10を参照して、点状の凸部1cを持つ成長基板1の表面上でのシート状シリコン基板の形成過程を説明する。成長基板1のシリコン融液と接する表面には、点状の凸部1cが設けられているため、融液と最初に接する場所である点状の凸部1cに優先的に結晶核が発生する。次に、成長基板温度がシリコンの融点よりも低いため、発生した結晶核から結晶成長が始まる。点状の凸部1cから成長した曲面形状の結晶は、隣り合った点状の凸部1cから成長した結晶が成長するにつれてつながり、凹凸を有するシート状シリコン基板2が形成されることになる。
【0057】
しかし、図9または図10に示すように、得られるシート状シリコン基板2の凹凸形状は成長基板1の凹凸形状と一致するような形状になるとは限らないが、成長基板1の凹凸形状が反映される。すなわち、シート状シリコン基板2が成長基板1の点状の凸部1cと接する点の反対側面(シート状シリコン基板における融液との接触面)の点に、シート状シリコン基板2の凸部2bが形成される。
【0058】
得られるシート状シリコン基板2の形状のうち特に成長基板1と接していた面の形状は、シリコン融液の表面張力、成長基板の温度、シリコン融液に成長基板を浸漬させてシリコン結晶を成長させる時間、成長基板の凹凸構造の形状などの諸因子によって決まる。シリコン融液の温度が低く、成長基板温度が低く、かつ結晶成長時間が短い場合は、図9に示すように、成長基板の凸部に結晶核が形成された後のシリコン結晶の成長方向はシリコン融液側への方向になる。これは、成長基板1の点状の凸部1cにおける先端部分から結晶成長が始まり、融液が凹凸構造の凹部までほとんど進入しないうちに固化し、シート状シリコン基板2が成長するためである。
【0059】
逆に、シリコン融液の温度が高く、成長基板の温度が高く、または結晶成長時間が長い場合には、図10に示すように、成長基板1の点状の凸部1cに結晶核が形成された後のシリコン結晶の成長方向は成長基板の溝構造の面に沿った方向になる。これは、成長基板1の点状の凸部1cにおける先端部分から成長が始まるが、シリコン融液と成長基板の温度が高いために、融液が凹凸構造の凹部方向にある程度進入して固化し、シート状シリコン基板2が成長するためである。
【0060】
したがって、成長基板温度および融液温度を適宜調整することにより、シート状シリコン基板2における成長基板1との接触面を平滑にすることが可能である。一方、上記のとおり、点状の凸部1cより放射状に結晶成長が進むため、シート状シリコン基板における融液との接触面は凹凸形状を持ち、点状の凸部1cとの接点の反対側の点に凸部2bが形成されるため、成長基板1の点状の凸部1cの間隔にほぼ一致して、シート状シリコン基板2の凹凸面における凸部2bの間隔が形成される。なお、図7に示す成長基板1を用いてシート状シリコン基板を形成する場合においても同様である。
【0061】
次に、成長基板上に設けられている凹凸構造について詳細に説明する。図8を参照して、点状の凸部1cを有する成長基板1における、凹凸構造の隣り合った点状の凸部1cの間隔は特に限定されない。しかし、点状の凸部1cの間隔を一定のピッチで設けると、得られるシート状シリコン基板2の均一性が高くなるため、より好ましい。また同様の理由により、図7を参照して、線状の凸部1aに関しても凸部の間隔は特に限定されないが、一定のピッチで凸部の間隔を設けるのがより好ましい。
【0062】
得られたシート状シリコン基板2から太陽電池を作製する場合、点状の凸部1cのピッチは0.1mm以上である方が好ましい。また、同様に線状の凸部1aのピッチは0.1mm以上である方が好ましい。0.1mmよりも細かいピッチで、点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、形成されるシート状シリコン基板2の結晶粒が細かくなり、太陽電池の特性がよくならない。さらに、シート状シリコン基板2の凹凸面(裏面)側にパッシベーション膜6を形成し、研削またはエッチングにより凸部6bでオーム性電極を形成することから、0.1mmよりも細かいピッチで、点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、電極間距離が近くなり裏面パッシベーションの効果が薄れるためあまり好ましくない。
【0063】
また、点状の凸部1cのピッチまたは線状の凸部1aのピッチは3mm以下である方が好ましい。3mmより荒いピッチで点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、得られるシート状シリコン基板2の凹凸が大きくなり、裏面側に形成されたパッシベーション膜の凸部を研削しても電極の印刷が困難になるだけでなく、オーム性電極間距離が離れすぎるためにキャリアが拡散して電極部にたどり着くことが困難になり太陽電池の特性がよくならないため、あまり好ましくない。
【0064】
したがって、成長基板1の凸部の間隔を0.1mm以上、3mm以下とすることにより、太陽電池に好適な、凹凸面の凸部の間隔が0.1mm以上、3mm以下であるシート状シリコン基板を形成することができる。
【0065】
成長基板の凹部の溝の深さは、0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。凹部の溝の深さが0.05mmよりも浅い場合、溝の凹部でも結晶が成長することにより、形成されたシート状シリコン基板2を成長基板から剥離するのが困難になる場合があるからである。しかしながら、溝の深さは、融液材料の表面張力によっても、効果が異なるため、成長基板の表面構造と融液材料によって適宜選択する必要がある。図7および図8では、溝の深さはすべて同じ深さで示しているが、同じ深さにする必要はなく、複数の深さの溝を有するものでもよい。すなわち、凹凸成長基板の溝の深さによっても、成長基板が冷却されている場合においては、成長基板表面の温度分布が若干異なるためである。そのため、温度制御をする上では成長基板の表面形状と溝の深さを適宜選択する必要がある。
【0066】
凹凸構造をもった成長基板の材質は、熱伝導性、耐熱性に優れた材料である方が好ましい。たとえば、高純度黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、金属などを使用することが可能である。高純度黒鉛は、比較的安価であり、加工性に富む材質であるため凹凸構造を作製するのが容易であるためより好ましい。成長基板の材質は、工業的に安価であること、得られるシート状シリコン基板の成長基板品質などの特性を考慮し適宜選択することが可能である。さらに、成長基板に金属を用いる場合、常に冷却し続けるなど、成長基板の融点以下の温度で使用し、得られたシート状シリコン基板の特性にさほど影響を与えなければ特に問題はない。
【0067】
(太陽電池の製造方法)
以下、本発明にかかる太陽電池の製造方法における実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、ここで説明する製造方法は一例である。本発明の特質は、大きな凹凸を持つシリコン基板にパッシベーション膜を形成し、研削やエッチングにより凸部パッシベーション膜に開口部を設けることで裏面パッシベーション効果と印刷適合化を図ることにあり、太陽電池製造方法としてはここで説明する方法に限定されるものではない。
【0068】
(太陽電池の製造方法における実施形態1)
本発明にかかる太陽電池の一の製造方法について、図1を参照しながら説明する。まず、図1(a)に示すp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図1(b)に示すように、シート状シリコン基板2の受光面(表面)側に反射防止のための微小な凹凸(シート状シリコン基板2の凹凸面上の凹部2aおよび凸部2b、2cと区別するためテクスチュア4と呼ぶ)をつけるために、シート状シリコン基板2を水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なう。次に、図1(c)に示すように、n+型層5を形成する。n+型層の形成は、凹凸面側に拡散防止膜としてTG(Titanate Glass)を塗布し、受光面(表面)側にはケイ酸エチル、カルボン酸、エタノールおよび五酸化リンを主成分とするPSG(Phospho−Silicate Glass)を塗布し、その後熱拡散炉にて加熱することにより行なう。PSGからシート状シリコン基板2中にリンが拡散されることで、受光面(表面)側にn+型層5が形成される。その後フッ酸で洗浄し、TGおよびPSGを除去する。なお、n+型層の形成法としてはこれに限定されるものではなく、たとえば、オキシ塩化リン(POCl3)を用いたリンの気相拡散法を用いてもよい。
【0069】
その後、図1(d)に示すように、熱酸化法により凹凸面(裏面)側および受光面(表面)側にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜を形成する熱酸化の条件は、酸素雰囲気下800℃で4時間としており、このときの膜厚は約100nmである。この熱酸化条件は一例であり、この条件に限定されることなく一般的な熱酸化法の条件により酸化シリコン膜の形成が可能である。しかし、酸化シリコン膜の厚さが不充分であると、後に印刷するアルミニウムが酸化シリコン膜を突き抜けてp型のシート状シリコン基板2中に拡散してしまうため、50nm以上の製膜が可能な条件を選ばなくてはならない。また、裏面のパッシベーション膜6としては酸化シリコン膜だけに限定されるものではなくプラズマCVD法で製膜された窒化シリコン膜を用いてもよいが、アルミニウムペーストとの親和性という点で酸化シリコン膜のほうが望ましい。
【0070】
次に、図1(e)に示すように、図1(d)におけるパッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けると同時に凹凸を緩和する。パッシベーション膜6の凸部6b,6cの開口法については後述する。
【0071】
次に、図1(f)に示すように、受光面(表面)側に反射防止膜8として窒化シリコン膜をプラズマCVD法により200nm堆積させる。反射防止膜の材料は窒化シリコンに制限されるものではなく、プラズマCVD法で形成した酸化シリコン膜、常温CVD法で形成した酸化チタン膜、真空蒸着法で形成した酸化アルミニウム膜などを用いることができる。次に、図1(g)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストを印刷法により印刷し、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成する。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、反射防止膜8とパッシベーション膜6をファイアスルーすることで受光面電極9を形成する。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させる。
【0072】
(太陽電池の製造方法における実施形態2)
本発明にかかる太陽電池の別の製造方法について、図2を参照しながら説明する。まず、図2(a)に示すp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図2(b)に示すように、シート状シリコン基板2の受光面(表面)側に反射防止のためのテクスチュア4をつけるために、シート状シリコン基板2を水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なう。次に、図2(c)に示すように、n+型層5、反射防止膜8およびパッシベーション膜6を形成する。すまわち、凹凸面側に熱処理後酸化シリコン膜となる成分を含んだ酸化シリコン被膜形成用塗布液を回転塗布法により100nm塗布し常温にて乾燥させる。また、受光面(表面)側にn+型層5を形成するために不純物リンを含んだPTG塗布液などの酸化物塗布液を回転塗布法により70nm塗布する。その後、熱拡散炉にて酸化性雰囲気下で870℃で加熱する。このことにより、受光面(表面)側にはn+型層5が形成されると同時に反射防止膜8となる酸化膜が形成され、また凹凸面側にはパッシベーション膜6となる酸化シリコン膜が形成される。ここで、凹凸面側のパッシベーション膜6の存在により、凹凸面側にはリンが拡散しない。
【0073】
なお、凹凸面側の酸化シリコン膜は、100nmに限定されるものではないが、後に印刷するアルミニウムが酸化シリコン膜を突き抜けてp型のシート状シリコン基板2中に拡散するのを防ぐため、膜厚が少なくとも50nm以上となるように回転塗布の条件を設定しなければならない。またここで用いる受光面(表面)側の酸化物塗布液はPTGに限定されるものではなく、他にもたとえば、リンを含むPSGなどを用いることができる。ただしPSG液で形成される酸化シリコン膜の屈折率が1.45であるに対し、PTG液で形成される二酸化チタン膜の屈折率が1.9であることから空気/反射防止膜/セルの構造を考えた場合、光学的な反射防止の意味からはPTG膜のほうが優れている。
【0074】
次に、図2(d)に示すように、図2(c)におけるパッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けると同時に凹凸を緩和する。パッシベーション膜の凸部の開口法については後述する。
【0075】
次に、図2(e)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストを印刷法により印刷し、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成する。また、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、反射防止膜8をファイアスルーすることで受光面電極9を形成する。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させる。
【0076】
(パッシベーション膜の凸部の開口方法)
凹凸面側にパッシベーション膜が形成されたシート状シリコン基板のパッシベーション膜6の凸部を除去する方法として、凸部6b,6cのみを研削する方法(研削法)またはエッチングする方法(エッチング方法)がある。上記、研削法、エッチング法について、以下に詳細に説明する。
【0077】
(研削法)
凸部6b,6cを研削する方法について、図1(d)および図1(e)を参照しながら説明する。シート状シリコン基板2の凹凸面側に酸化シリコン膜や窒化シリコン膜等で形成したパッシベーション膜6を、1000番の研磨布を取り付けた卓上研削盤を用いて回転速度40rpmにて研削する。ただしこの条件は一例であり、研磨布の荒さや回転速度は適宜選択できる。研磨布を荒くしたり、回転速度をあげることにより高速に研削処理を行なうことができる。しかし研磨布が荒すぎたり回転速度が速すぎたりするとシート状シリコン基板を破損したり、研削量を制御できない恐れがある。さらにシート状シリコン基板内部までダメージ層がおよび、エッチングによっても除去できなくなる恐れがある。かかる観点から、そのため500番以下の荒さを持つ研磨布を用いることが好ましく、100rpm以下の回転速度とすることが好ましい。この研削により、パッシベーション膜6の凸部6b,6cだけに開口部7が設けられることになる。
【0078】
凹凸面を研削する装置としては、他にレシプロ平面研削盤やラップ盤などを用いることができ、砥粒としてはダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素(cBN)などを用いることができる。これらは通常半導体基板等の鏡面研磨に用いられる装置であり、高精度の研削が可能でありシート状シリコン基板に与えるダメージが少なくなるため、卓上研削盤よりも好ましい。また研削方法は、上記の装置を用いた方法に限定されるものではなく、対象とする工作物の表面を平面状に研削あるいは研磨でき、パッシベーション膜6の凸部6b,6cの頂上付近を研削あるいは研磨した時に、パッシベーション膜6の凹部6aに損傷を与えない加工精度をもつ装置を用いた方法であればよい。
【0079】
次に、凸部6b,6cの研削後、研削によって生じたダメージ層を除去するため、水酸化ナトリウムにてシート状シリコン基板の凸部を10μmエッチングする。用いるエッチング剤は、シリコンをエッチングすることができ、かつ、パッシベーション膜がエッチング防止膜として働くようなものであればよく、水酸化ナトリウムに限定されるものではない。
【0080】
(エッチング法)
図11を参照して、研削を用いないでパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみをエッチングする方法について説明する。シート状シリコン基板2の凹凸面側に酸化シリコンや窒化シリコン等で形成されたパッシベーション膜6に耐酸性のレジスト15を塗布する。その後、凹凸面側をワイパー14でワイピングすることにより、凸部6b,6cの頂点付近のレジストのみをふき取る。レジストを乾燥させた後、今度は反対側(受光面側)の面にレジストを塗布し乾燥させる。その後、フッ酸と硝酸の混合液(混酸)に浸すことにより、レジストによって保護されていない凸部6b,6cのみを20μmエッチングして、パッシベーション膜の凸部6b,6cのみに開口部を設ける。その後、レジスト剥離液に浸して耐酸性レジストを剥離する。レジストは耐酸性レジストに限定されるものではなく、使用するエッチング剤に対して耐性があり、かつ、容易にワイピングすることができるものであればよい。また凸部6b,6cのエッチング量は適宜選択できる。
【0081】
エッチングだけでパッシベーション膜に開口部を設けるこの方法は、凸部を研削する方法に比べ、比較的容易に行なうことができる。また基板にストレスを与えないのでダメージが少なく、基板割れを防ぐことができるのでより好ましい方法である。このエッチング法は、凹凸面側にパッシベーション膜が形成されていない場合でも、凹凸差を緩和する方法として有効である。すなわち酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜等によるパッシベーション膜形成を行なわずに凸部のエッチング法を用いることにより、裏面パッシベーション処理による光電変換効率の向上はないが、凹凸が緩和されることにより電極の印刷が容易にすることができる。
【0082】
【実施例】
以下、点状の凸部を持つ成長基板によって結晶成長させたシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製した場合を実施例および比較例として具体的に説明する。なお、本発明において用いられるシート状シリコン基板は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面があるものを対象としており、シリコン融液に成長基板を接触させ、前記成長基板の表面状にシリコン結晶を成長させることによって好適に得られる。かかるシート状シリコン基板としては、規則的あるいはほぼ規則的な凹凸を持ち、かつ、凹凸差が50μm以上200μm以下であり、凸部の間隔が0.1mm以上3mm以下であるものが好ましく用いられる。
【0083】
(実施例1)
太陽電池の製造方法における実施形態1に基づいて、実施例1の太陽電池を作製した。以下、その詳細について説明する。
【0084】
得られるシート状シリコン基板の比抵抗が2Ω・cmになるように、ホウ素(B)濃度を調整したシリコン原料5kgを、高純度カーボン製坩堝に保護された石英坩堝内に充填し、真空ポンプおよびヒーターを備えたチャンバ内に固定した。次に、真空ポンプによりチャンバ内の真空引きを行ない、2.66×10−3Pa以下まで減圧した。その後、チャンバ内にアルゴンガスを導入し、常圧まで戻し、その後は、2×10−3m3/minでアルゴンガスを常時チャンバ上部から流したままにした。このとき、シリコン溶融用ヒーターを10℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温した。シリコン原料が完全に溶融したことを確認したのち、シリコン融液を1415℃に保持し、安定化を図った。
【0085】
次に、温度制御された成長基板をシリコン融液へ浸漬させる。ここで、成長基板は高純度の黒鉛を、図8に示すような点状に凹凸加工したものを用いた。点状の凸部1cは、ピッチが1.5mm、凹凸差が0.3mmになるように加工した。成長基板の温度は500℃に制御し、移動速度は、500cm/minで行なった。
【0086】
このようにして成長基板1上で得られたシート状シリコン基板は、成長基板から容易に剥離することができ、成長基板と接していた面には大きな凹凸がなくほぼ平坦な面が得られていることを目視で確認した。作製されたシート状シリコン基板は、シリコン融液に面していた表面に凸部を持っていた。接触式の段差計を用いて測定したところ、凸部の間隔は成長基板の点状の凸部1cの間隔と等しく1.5mmであり、凹部から見た凸部の高さは約100μmであった。また、成長基板と接していた面側は、凹凸差が15μm以下でありほぼ平滑な表面(平滑面)が得られていた。
【0087】
このようにしてシート状シリコン基板を50枚作製し、2cm×2cmの大きさにNd−YAGレーザーにて切断した。その重量から板厚を換算したところ、50枚のシート状シリコン基板の平均板厚は255μmであった。
【0088】
次に、図1を参照して、図1(a)に示すように、上記で得られたp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図1(b)に示すように、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行ない、テクスチュア4を形成した(テクスチュア加工工程)。
【0089】
その後、図1(c)に示すように、n+型層5を形成する。まず凹凸面(裏面)側にスピンコーターを用いて拡散防止膜としてTGを塗布した。受光面(表面)側にはケイ酸エチル、カルボン酸、エタノールおよび五酸化リンを主成分とするPSG塗布液をスピンコーターにより塗布した。その後、熱拡散炉にて約850℃で加熱した。PSGからシリコン中にリンが拡散されることで、受光面(表面)側にn+型層5が形成される。その後、フッ酸で洗浄し、TGおよびPSGを除去した(n+型半導体層形成工程)。
【0090】
その後、図1(d)に示すように、熱酸化法により凹凸面側および受光面(表面)側にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を同時に形成した。酸化シリコン膜を形成する熱酸化の条件は酸素雰囲気下800℃で4時間としており、このときの膜厚は約100nmであった(熱酸化処理工程)。
【0091】
次に、図1(e)に示すように、図1(d)におけるパッシベーション膜の凸部6b,6cを研削した。研削は、凹凸面側を卓上研削盤を用いて凸部を10μm研削した。このとき研磨布は1000番のものを用いており、回転速度は40rpmで行なった。次に、研削による凸部のダメージ層を取り除くため水酸化ナトリウム水溶液にて約10μmエッチングを行なった(凸部研削処理工程)。
【0092】
次に、図1(f)に示すように、受光面(表面)側に反射防止膜8としての窒化シリコン膜をプラズマCVD法により200nm堆積させた。窒化シリコンの堆積条件として、反応ガスの種類をシランガス(SiH4)とアンモニア(NH3)、窒素ガス(N2)の混合ガスとし、反応ガス流量比をSiH4:NH3:N2=3:4:10、反応ガス圧力を20Pa、基板温度を150℃、RFパワーを100W(13.56MHz)とした(反射防止膜形成工程)。
【0093】
次に、図1(g)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、受光面電極9を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0094】
このようにして作製した太陽電池は、AM(Air Mass;通過空気量)1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流29.29(mA/cm2)、開放電圧580(mV)、フィルファクター0.740、効率12.57(%)であった。
【0095】
(比較例1)
実施例1で作製した太陽電池のアルミニウム印刷の容易さ、および凹凸面(裏面)側に形成したパッシベーション膜の効果(裏面パッシベーション効果)を調べるための比較実験を行なった。
【0096】
この比較例1で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は260μmであった。熱酸化処理までは、実施例1と同様に行なった。
【0097】
その後、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、混酸にて10μmエッチングを行なった。耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で受光面(表面)側に反射防止膜を堆積させた。
【0098】
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。このときはできるだけ印刷かすれが発生しないようにスクリーン印刷の印圧は0.21MPaとし、印刷速度は10mm/secとした。印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で10μm、凹部で110μmであった。凸部の頂点付近では印刷ができずに印刷かすれが発生した箇所があった。また20枚印刷を行なった段階で印刷スクリーンに損傷が生じ、スクリーンの交換を行なった。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面にp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成したが、15枚の基板で印刷のはがれが発生していることを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。
【0099】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.31(mA/cm2)、開放電圧577(mV)、フィルファクター0.737、効率12.05(%)であった。
【0100】
(比較例2)
実施例1で作製した太陽電池の凹凸面(裏面)側に形成したパッシベーション膜の効果を調べるために比較実験を行なった。この比較例2で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なお、この基板の重量から換算した板厚の平均は255μmであった。凸部研削処理までは、実施例1と同様の太陽電池作製過程を用いた。
【0101】
次に、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、フッ酸にて洗浄を行なった。耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で反射防止膜を堆積した。
【0102】
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面でp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.38(mA/cm2)、開放電圧578(mV)、フィルファクター0.745、効率12.22(%)であった。
【0103】
(実施例2)
凹凸面(裏面)側のパッシベーション膜の凸部をエッチング法によって開口する以外は実施例1と同様にして太陽電池の作製を行なった。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は260μmであった。熱酸化処理までは、実施例1と同様に行なった。
【0104】
次に、図11を参照して、凹凸面側に生成した酸化シリコン膜によるパッシベーション膜6に耐酸性のレジスト15(太陽インキ製造株式会社製M−85K)を塗布した。その後、凹凸面側をワイパー14でワイピングすることにより、凸部6b,6c頂点付近のレジストのみをふき取った。レジストを乾燥させた後、今度は反対側(受光面側)の面にレジストを塗布し乾燥させた。その後、混酸に浸すことで、レジストによって保護されていないパッシベーション膜の凸部6b,6cのみを20μmエッチングすることにより、パッシベーション膜6に開口部を設けた(凸部エッチング処理工程)。
【0105】
耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で反射防止膜を堆積した。
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。本実施例でのアルミニウム印刷においては、印圧を0.16MPaとし、印刷速度を20mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0106】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流29.10(mA/cm2)、開放電圧583(mV)、フィルファクター0.742、効率12.59(%)であった。
【0107】
(実施例3)
太陽電池の製造方法における実施形態2に基づいて、実施例3の太陽電池を作製した。以下、その詳細について説明する。
【0108】
まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は250μmであった。
【0109】
図2を参照して、図2(a)に示すように、上記で得られたp型のシート状シリコン基板2の洗浄後、図2(b)に示すように、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行ない、テクスチュア4を形成した。このシート状シリコン基板の洗浄後、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なった(テクスチュア加工工程)。
【0110】
その後、凹凸面(裏面)側に、熱処理後酸化シリコン膜となる成分を含んだ酸化シリコン被膜形成用塗布液を、回転塗布法により100nm塗布し常温にて乾燥させた。その後、受光面(表面)側にn+型層を形成するために、不純物リンを含んだ酸化物塗布液を回転塗布法により塗布した。ここでは不純物リンを含んだ酸化物塗布液としてPTGを用いており、厚さは70nmとした。続いて、熱拡散炉にて酸化性雰囲気下で870℃で加熱した。このことにより、図2(c)に示すように、受光面(表面)側にはn+型層5が形成されると同時に反射防止膜8となる酸化膜が形成され、また凹凸面側にはパッシベーション膜6となる酸化シリコン膜が形成される。ここで、凹凸面側のパッシベーション膜6の存在によって凹凸面側にはリンが拡散しない(n+型半導体層、反射防止膜およびパッシベーション膜の同時形成工程)。
【0111】
次に、図2(d)に示すように、図2(c)におけるパッシベーション膜の凸部6b,6cを研削した。卓上研削盤を用いてパッシベーション膜6の凸部を10μm研削した。このとき研磨布は1000番のものを用いており、回転速度は40rpmで行なった。次に、研削による凸部のダメージ層を取り除くため水酸化ナトリウム水溶液にて約10μmエッチングを行なった(凸部研削処理工程)。
【0112】
次に、図2(e)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、受光面電極9を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0113】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.61(mA/cm2)、開放電圧570(mV)、フィルファクター0.703、効率11.47(%)であった。
【0114】
(比較例3)
実施例3で作製した太陽電池の凹凸面側に形成したパッシベーション膜の効果を調べるために比較実験を行なった。この比較例3で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。
【0115】
まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は255μmであった。凸部研削処理までは、実施例3と同様に行なった。
【0116】
次に、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、フッ酸にて洗浄を行なった。
【0117】
耐酸性レジストを剥離後、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面でp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。次に、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。
【0118】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は太陽電池50枚の平均で、短絡電流27.98(mA/cm2)、開放電圧560(mV)、フィルファクター0.707、効率11.08(%)であった。
【0119】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0120】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、少なくとも一方の面が凹凸面であるシート状シリコン基板(特に、凹凸面の凹凸差の大きなシート状シリコン基板)を用いて、凹凸面側を裏面側として太陽電池を作製する場合、従来はフォトリソグラフィー法あるいはプラズマエッチング法あるいはレーザーアブレーション法といった高価なプロセスを用いても困難だった凹凸面側のパッシベーション膜の処理を、凹凸面側の凸部の研削またはエッチングという簡単かつ低コストな方法によって実現できる。また、研削またはエッチングによってシート状シリコン基板の凹凸差が緩和され、低コストな裏面電極形成法である印刷法の適用が可能となる。このため光電変換効率の高い太陽電池を低コストで作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)は、本発明にかかる太陽電池の一の製造方法における各工程を示す図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明にかかる太陽電池の別の製造方法における各工程を示す図である。
【図3】従来の一の太陽電池を示す図である。
【図4】従来の別の太陽電池を示す図である。
【図5】本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造装置を示す概略図である。
【図6】本発明に用いられるシート状シリコン基板の別の製造装置を示す概略図である。
【図7】線状の凸部を有する成長基板の概略斜視図である。
【図8】点状の凸部を有する成長基板の概略斜視図である。
【図9】点状の凸部を有する成長基板上でシート状シリコン基板が成長する一の形態を示す模式図である。
【図10】点状の凸部を有する成長基板上でシート状シリコン基板が成長する別の形態を示す模式図である。
【図11】エッチング法によりパッシベーション膜の凸部に開口部を設ける方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 成長基板、1a 線状の凸部、1b 線状の凹部、1c 点状の凸部、2シート状シリコン基板、2a 凹部、2b,2c 凸部、3 n型半導体層、4 テクスチュア、5 n+型層、6 パッシベーション膜、6a 凹部、6b,6c 凸部、7 開口部、8 反射防止膜、9 受光面電極、10 裏面電極、11 p+型層、12 p型半導体基板、13 p+型微結晶層、14 ワイパー、15 レジスト、51,601 坩堝、52,602 シリコン融液、53,603 加熱用ヒータ、54,604 坩堝台、55,605 断熱材、56,606 坩堝昇降用台、57,607 軸、608 支持体、609 冷却体、610 関節部、611 アーム、612 熱遮蔽板、613 開口部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池およびその製造方法に関し、特にシリコンの融液に成長基板を接触させることにより得られるシート状シリコン基板を有する、光電変換効率が改善された低コストな太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、太陽電池は、単結晶シリコンウェハを用いて製造されてきた。しかし、単結晶シリコンウェハは、シリコンのインゴットを長時間かけて作製することなどから非常に高価なウェハであり、それから作製される太陽電池も非常に高価であった。
【0003】
一方、近年では、多結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の低コスト化が進み、その生産量の増加は著しい。しかし、さらなる太陽電池の普及を考えた場合、一層の低コスト化が必要である。
【0004】
現在、急速に普及が進んでいる太陽電池に用いられているウェハは、主に多結晶シリコンである。かかる多結晶シリコンは、坩堝内で溶融したシリコンを坩堝底から徐々に冷却を行なうことでシリコンを固化させ、坩堝底面から成長した長い結晶粒を主体とするインゴット(塊状)を得るというキャスト法を用いて製造されている(たとえば、特許文献1参照。)。さらに、このインゴットを薄板状にスライスすることで太陽電池用に使用可能なウェハが完成する。しかし、この方法では、スライスによるシリコンの損失が大きいことおよび、スライス工程に費やす時間およびコストが問題となっていた。
【0005】
そこで、最近ではさらなる低コスト化およびシリコン原料節約を目的として、上記のキャスト法に替わって、スライス工程を経ずに、融液シリコンから直接シート状の多結晶シリコンの板を得る方法が種々提案されている。
【0006】
上記溶融シリコンから直接シート状シリコン基板を得る最も有望な方法として、シリコンの融点以下に保持された点状あるいは線状あるいは面上の凸部のうち少なくともいずれか一方を有する基板(成長基板)を、シリコンの融液に接触させ、前記凸部を結晶成長の起点として、シリコンの結晶を前記成長基板の表面上に成長させることで、シート状シリコン基板を得る方法が提案されている(特許文献2参照。)。かかる方法は、生産性の高さや、基板板厚制御の容易さなどから、融液シリコンから直接シート状シリコン基板を得る方法の中でも優れた方法である。
【0007】
また従来、光電変換効率の向上を目的として、半導体太陽電池の裏面のオーム性電極部において、光励起キャリア(電子または正孔)の再結合損失を防ぎキャリアの収集効率を改善した太陽電池が知られている。この太陽電池は、p型シリコン半導体基板の裏面側に酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜等を形成し裏面パッシベーションを行なうことにより、このp型半導体基板の内部を拡散する少数キャリア(電子)が多数キャリア(正孔)と再結合して消滅する割合を低減して、キャリアの回収効率の改善、開放電圧の上昇を図るものである。
【0008】
この従来の太陽電池について、図3および図4を参照しながら説明する。ここで、図3および図4は従来の太陽電池の構造を概略的に示した断面図である。両図に示すように、この太陽電池は、入射した太陽光の反射を低減するために微細な凹凸状に加工されたp型半導体基板12の光入射面(表面)側に、リンを不純物(ドナー)とするn型半導体層3、パッシベーション膜6として酸化シリコン膜、および反射防止膜8として窒化シリコン膜を堆積して形成されている。また銀からなる受光面電極9が、反射防止膜8およびパッシベーション膜6を貫通し、n型半導体層3に接続して形成されている。なおp型半導体基板12とn型半導体層3との界面にはPN接合が形成されている。
【0009】
一方、先のPN接合が形成された光入射面の反対(裏面)側には、以下に述べる裏面構造が形成されている。すなわち、図3においては、裏面上に開口部を設けてパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜に堆積するようにしてp型半導体基板12と同じ導電型で、より高濃度のホウ素が添加された水素化微結晶シリコン半導体層(p+型微結晶層13)が形成されている。また、このp+型微結晶層13は先の開口部を通じてp型半導体基板12に接続されている。さらに、このp+型微結晶層13に堆積するようにして、アルミニウムや銀などの金属からなる裏面電極10が形成されている。
【0010】
また、図4においては、裏面上にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成し、開口部を設けた上でアルミニウムペーストを裏面に印刷し熱処理を行なうことで、開口部においてアルミニウムを拡散・アロイ化し、p+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成されている。
【0011】
以下、このように形成された従来の太陽電池の各層における働きについて、光電変換効率の改善に関与する裏面構造を中心に説明する。図3または図4を参照して、まず、p型半導体基板12およびn型半導体層3に太陽光が入射すると、これらp型半導体基板12およびn型半導体層3のそれぞれは、太陽光に励起されて電子・正孔対を生成する。この電子・正孔対はp型半導体基板12とn型半導体層3との接合領域における界面電界の作用を受けて、電子がn型半導体層3側に、正孔がp型半導体基板12側に収集され、この結果、p型半導体基板12とn型半導体層3との間に光起電力が生じる。
【0012】
このとき、パッシベーション膜6である酸化シリコン膜はp型半導体基板12の裏面表層部におけるシリコン原子の未結合手(再結合中心)を不活性化するとともに、酸化シリコン膜の禁制帯幅がp型半導体基板12の禁制帯幅よりも広いことに起因して、パッシベーション膜6である酸化シリコン膜とp型半導体基板12との間に電位障壁を形成する。この結果、少数キャリアが裏面表層部の再結合中心に捕獲されることがなくなり、しかも、電位障壁により裏面表層部から少数キャリアが酸化シリコン膜内に流れ出ることがないので、この裏面表層部での再結合損失が抑制される(これを、裏面パッシベーション効果という)。
【0013】
また、図3または図4を参照して、p型半導体基板よりも高濃度にホウ素が添加されたp+型微結晶層13、またはアルミニウムのアロイ化によるp+型層11は、その禁制帯中のフェルミ準位が、p型半導体基板12の禁制帯中のフェルミ準位よりも価電子帯上端に近いことに起因して、p+型微結晶層13またはp+型層11とp型半導体基板12との間に内部電界を形成する。この結果、裏面電極側に流れ出そうとする少数キャリア(電子)はこの内部電界によりp型半導体基板の内部に押し戻され、p+型層またはp型半導体基板の内部における再結合損失が抑制される(これを、裏面電界効果という)。
【0014】
このように、従来の太陽電池の裏面側には、太陽光に励起されて生成されたキャリアが再結合して消滅する割合を低減して、光電変換効率向上させるために、裏面パッシベーション効果および裏面電界効果を生じる裏面構造が形成されている。
【0015】
ここで従来の太陽電池の裏面構造を形成する方法を簡単に説明する。まず、p型半導体基板の裏面に熱酸化法、化学気相成長法(プラズマCVD法)、または酸化シリコン含有塗布液を塗布し焼成する方法などを用いて酸化シリコン膜を形成する。その後、何らかの方法で酸化シリコン膜に開口部を設けるわけであるが、最近ではフォトリソグラフィー法にかわり、プラズマエッチング法(たとえば、非特許文献1参照。)、レーザーアブレーション法(たとえば、非特許文献2参照。)、またはメカニカルアブレーション法(たとえば、非特許文献3)などが検討されつつある。続いて、プラズマCVD法によりp+型微結晶層を堆積し裏面電極層を形成した後に裏面電極を形成するか、アルミニウムペーストの印刷・熱処理によりアロイ化し、p+型層を形成すると同時に裏面電極層を形成する。
【0016】
シリコン融液から直接シート状シリコン基板を得るのに優れた方法である上記特許文献2に示した方法、すなわち、点状あるいは線状の凸部のうち少なくともいずれか一方を有する成長基板をシリコンの融液に接触させシート状シリコン基板を製造する方法においては、シリコン結晶は前記凸部を結晶成長の起点として成長し、凸部から成長した各結晶がつながることで板状のシリコン基板を得ている。このように、シリコン結晶が平面状ではなく凸部を中心に放射状に成長するために、得られるシリコン基板は少なくとも融液と接していた面に成長基板の凸部に対応した位置に凸部を持つ。シート状シリコン基板の融液と接していた面における凹部と凸部の高さ差(凹凸差)は、成長基板の温度、凸部の形状・間隔および高さ、結晶成長の時間、融液の温度等に依存するが、通常100μmとかなり大きなものとなる(以下、かかる面側を凹凸面側と称する)。
【0017】
このような大きな凹凸面を持つシート状シリコン基板を太陽電池に応用する場合、凹凸面側を太陽電池の受光面あるいは裏面として用いることになるが、太陽電池の受光面側は非常に細いグリッド線で電極形成されており、凹凸面側を受光面側として用いて印刷法によって受光面電極を形成するとグリッド線の断線が多発する。したがってシート状シリコン基板の凹凸面側は全面で電極を形成することができる裏面として用いる方が適当である。
【0018】
しかし、印刷法を用いて凹凸面側にアルミニウムからなる裏面電極を印刷すると、凸部頂点付近や凹部底付近にアルミニウムが印刷できずに印刷かすれが生じてしまう。極度に印圧を高くし、ゆっくりと印刷することによって印刷かすれを抑制することが可能であるが、印刷に時間がかかるという問題がある。また、印刷されるアルミペーストが厚くなるためその後の焼成過程においてアルミニウムのはがれが発生するという問題がある。さらに、印刷法としてスクリーン印刷法を用いる場合、印圧を高くすることにより凸部が印刷スクリーンに大きな損傷を与えてしまうという問題もある。
【0019】
このため大きな凹凸を持つシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製する場合、受光面電極形成および裏面電極形成の過程において低コストな電極形成法である印刷法を適用することが困難であった。
【0020】
また、裏面をパッシベーション膜として酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜で覆い、フォトリソグラフィー法、プラズマエッチング法、レーザーアブレーション法またはメカニカルアブレーション法を用いて一部に開口部を設け、開口部においてp+型層およびオーム性電極を形成する方法を用いて作製された太陽電池は、裏面パッシベーション効果により、この方法を用いずに作製された太陽電池に比べて光電変換効率が高い。しかし、この方法はフォトリソグラフィー法、プラズマエッチング法、レーザーアブレーション法またはメカニカルアブレーション法という高価なプロセスを要するため低コスト化という点で問題があった。また、凹凸面の凹凸の大きなシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製する場合、これらいずれの方法においても凹凸差を緩和することがないので、低コストな裏面電極形成法である印刷法が適用できないという問題があった。
【0021】
【特許文献1】
特開平11−021120号公報
【0022】
【特許文献2】
特開2001―223172号公報
【0023】
【非特許文献1】
S. Schaefer、他3名,“PLASMA ETCHED PERC AND BURIED BASE CONTACT SOLAR CELLS”,Proc. 16th European PVSEC,1−5,May 2000,Glasgow UK,p.1443−1446
【0024】
【非特許文献2】
R. Preu、他5名,“LASER ABLATION A NEW LOW−COST APPROACH FOR PASSIVATED REAR CONTACT FORMATION IN CRYSTALLINE SILICON SOLAR CELL TECHNOLOGY”,Proc. 16th European PVSEC,1−5,May 2000,Glasgow UK,p.1181−1184
【0025】
【非特許文献3】
I. Moon、他2名,“NEW METHOD FOR CONTACT PATTERNING OF HIGH−EFFICIENCY SOLAR CELL USING A MECHANICAL SCRIBER”,Jpn. J. Appl. Phys.,Vol.41,(2002),p.2900−2901
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を用いた太陽電池を作製する際に、裏面構造の形成過程において裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法を提供することを目的とする。また、同時に、低コストな裏面電極形成法である印刷法を適用できる太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明にかかる太陽電池は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜の凸部のみに開口部が設けられ、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極が形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明にかかる太陽電池において、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより得られた、少なくとも一方の面の表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を有することができる。
【0029】
また、本発明にかかる太陽電池において、シート状シリコン基板の凹凸面における凸部の間隔を0.1mm以上3mm以下とすることができる。
【0030】
また、本発明にかかる太陽電池において、裏面電極は印刷法により形成できる。
【0031】
本発明にかかる太陽電池の製造方法は、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、前記凹凸面にパッシベーション膜を形成する工程、研削により前記パッシベーション膜の凸部に開口部を設ける工程、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することを特徴とする。また、パッシベーション膜の凸部に開口部を設ける工程において、研削に替えて、パッシベーション膜の凹凸面にレジストを塗布し、ワイピングにより凸部のレジストのみを拭きとり、エッチングすることにより行なうことができる。
【0032】
本発明にかかる太陽電池の製造方法において、印刷法により、開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる一の太陽電池は、図1を参照して、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜6が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみに開口部7が設けられ、前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10が形成されている。かかる構成により、表面に大きな凹凸を有するシート状シリコン基板2を用いても、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部を設けることにより、裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明にかかる太陽電池の一の製造方法は、図1を参照して、図1(a)に示すようにシリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板2を形成する工程、図1(d)に示すように前記凹凸面にパッシベーション膜6を形成する工程、図1(e)に示すように研削により前記パッシベーション膜の凹凸面の凸部6b,6cに開口部7を設ける工程、図1(g)に示すように前記開口部およびパッシベーション膜6に裏面電極10を形成する工程を有する。
【0035】
また、本発明にかかる太陽電池の別の製造方法は、本発明にかかる図1および図11を参照して、図1(a)に示すようにシリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、図1(d)に示すように前記凹凸面にパッシベーション膜6を形成する工程、図11に示すように前記パッシベーション膜6の凹凸面にレジスト15を塗布しワイピング14により凸部のレジスト15のみを拭きとる工程、図1(e)に示すように、エッチングにより前記パッシベーション膜の前記凸部に開口部7を設ける工程、図1(g)に示すように前記開口部7およびパッシベーション膜6に裏面電極10を形成する工程を有する。
【0036】
太陽電池の上記の製造方法により、表面に大きな凹凸を有するシート状シリコン基板2を用いても、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けることにより、裏面パッシベーション効果と裏面電界効果を損なうことがなく、低コストで光電変換効率の高い太陽電池を提供できる。また、パッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けることにより、凹凸面の凹凸差を緩和し、低コストな裏面電極形成法である印刷法を適用できる太陽電池の製造方法を提供できる。
【0037】
(シート状シリコン基板)
本発明にかかる太陽電池に用いられるシート状シリコン基板は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有するものであり、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板上で前記シリコンの結晶を成長させることにより得られる。まず、かかるシート状シリコン基板の製造装置および製造方法について説明する。
【0038】
(シート状シリコン基板の製造装置)
本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造装置を、図5を参照して説明する。本発明においては、シート状シリコン基板の製造装置は、シリコン融液に成長基板を接触させることが可能な装置であればたり、図5に示す製造装置に限定されない。
【0039】
図5に示すシート状シリコン基板の製造装置は、坩堝昇降台56の上に断熱材55および坩堝台54を介して坩堝51が載せられており、坩堝51の中のシリコン融液52は坩堝51の周囲に配設された加熱用ヒーター53によって融点以上に保持されている。また軸57に固定された成長基板1の表面がシリコン融液52に浸漬するように設計されている。
【0040】
図5に示すように、シリコン融液温度以下の成長基板1が、図中左側から坩堝51中にあるシリコン融液52に進入、浸漬され、図中右側から脱出することにより成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が得られる。このとき、シリコン融液は、加熱用ヒーター53で融点以上に保持されている。安定してシート状シリコン基板2を得るためには、融液温度の調節と、チャンバ内の雰囲気温度と、成長基板1の温度を厳密に制御できるような装置構成にする必要がある。
【0041】
成長基板1には、温度制御が容易に制御できる構造を設けることが好ましい。成長基板の材質は、特に限定されないが、熱伝導性の良い材料や耐熱性に優れた材料であることが好ましい。たとえば、高純度黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化硼素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化アルミ、金属などを使用することが可能であるが、目的に応じて最適な材質を選択すればよい。高純度黒鉛は、比較的安価であり、加工性に富む材質であるためより好ましい。成長基板の材質は、工業的に安価であること、得られるシート状シリコン基板の品質などの種々の特性を考慮し、適宜選択することが可能である。さらに、成長基板に金属を用いる場合、常に冷却し続けるなど、成長基板の融点以下の温度で使用し、得られたシート状シリコン基板の特性にさほど影響を与えなければ、特に問題はない。
【0042】
成長基板1の温度制御を容易にするには、成長基板1に冷却機構および加熱機構(図示せず)が備えられていることが好ましい。シリコン融液52中へ進入した成長基板1は、その成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長する。その後、成長基板は融液から脱出するが、シリコン融液から熱を受け、成長基板の温度が上昇する傾向にある。したがって、一度シリコン融液から脱出した成長基板は、一度冷却機構を用いて冷却し、次にシリコン融液に浸漬される前までに、加熱機構を用いて成長基板の温度制御を行なう方がよい。加熱機構は、高周波誘導加熱方式、抵抗加熱方式、ランプ加熱方式等種々の方式を採用することができる。このように、成長基板1に冷却機構と加熱機構を備えることにより、シート状シリコン基板2の安定性は、著しく上昇する。
【0043】
成長基板の温度制御とともに重要なのは、シリコン融液の温度管理である。特に、融液の温度を融点近傍で設定していると、成長基板が融液に接することでシリコンの湯面が凝固を起こす可能性があるため、融液の温度は、融点以上であることが好ましい。これは複数の熱電対もしくは、放射温度計などを用いて厳密に制御することができる。融液温度を厳密に制御するには、熱電対を融液中に浸漬させるのが直接的で好ましいが、熱電対の保護管などからの不純物が融液に混入する恐れがあるために、汚染を防止する構造にする必要がある。制御方法は、坩堝などに熱電対を挿入するなどして、間接的に制御するか、放射温度計によりシリコン融液の温度を測定できるような構造にすることが好ましい。
【0044】
シリコン融液52の入った坩堝51の下には坩堝台54が、坩堝台54の下には断熱材55が配置されている。かかる断熱材55は、融液温度を均一に保持するためと、坩堝底からの抜熱を最小限に抑制するために用いられている。また、この断熱材55には、坩堝昇降軸56が接続されており、昇降機構が設けられている。これは、成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長するため、常に成長基板1が、シリコン融液の湯面から同じ深さで浸漬できるように上下動させるためである。
【0045】
次に、本発明に用いられるシート状シリコン基板の別の製造装置を、図6を参照して説明する。図6に示す製造装置は、坩堝601上に熱遮蔽板612の開口部613を有し、その開口部613を移動することが可能な支持体608と成長基板1が固定脚607に接続され、その固定脚607は、冷却器609に接続されている。また、この冷却器609は、角度が変更できる関節部610を有するアーム611に接続されている。ただし、この図において、アームや関節部を移動させる手段、真空排気ができるようなチャンバなどの装置は示していない。本装置においては、坩堝601上には、熱遮蔽板612が開口されており、成長基板1は任意の軌道を描けるような構成になっている。その成長基板1の表面上でシリコン結晶が成長し、シート状シリコン基板2が形成されるのである。このとき、成長基板1の温度、シリコン融液602の温度などを制御することにより、形成されるシート状シリコン基板2の厚みを制御することが可能になる。この装置においては、アーム611が関節部610を有することにより、成長基板1が移動する構成であるが、アーム611ごと移動する構成であっても構わない。このように、アームごと移動させるような機構を設けることで、成長基板1をシリコン融液の湯面から同じ深さで浸漬させることが可能となる。
【0046】
(シート状シリコン基板の製造方法)
次に、図5に示すシート状シリコン基板の製造装置を用いて、本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造方法について説明する。かかるシート状シリコン基板の製造方法は、シリコン融液に成長基板を接触させる方法で結晶成長させるものであれば足り、以下の製造方法に限定されない。また、成長基板の材質、坩堝材質等も、本発明の目的に反しない限り特に限定されるものではない。
【0047】
まず、得られるシート状シリコン基板の比抵抗が所望の濃度になるようにホウ素(B)の濃度を調整したシリコン塊を、高純度黒鉛製の坩堝51に一杯になるまで充填する。その坩堝51を、図5に示すような装置内に設置する。次に、チャンバ内の真空引きを行ない、チャンバ内を所定の圧力まで減圧する。その後、チャンバ内にアルゴンガスを導入し、常に10×10−3m3/minでチャンバ上部よりアルゴンガスを流したままにする。このように常にガスを流し続けるのは、清浄なシリコン湯面を得るためである。
【0048】
次に、シリコン溶融用のヒーター53の温度を1500℃に設定し、坩堝51内のシリコン塊を完全に溶融させてシリコン融液52とする。このとき、シリコン原料は溶融することで液面が低くなることから、シリコン融液52の湯面が、常に坩堝51上面から1cm下の位置になるように、新たにシリコン粉末を投入する。シリコン溶融の用のヒーターは、一度に1500℃に上げるのではなく、約1300℃位まで10〜50℃/minの昇温速度で加熱し、その後、所定温度まで上げるのが好ましい。これは、急激に温度を上げると、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損に繋がるためである。
【0049】
その後、シリコン融液温度を1410℃に設定し、30分間そのまま保持し、融液温度の安定化を図り、坩堝昇降機構56を用いて、坩堝51を所定の位置に移動させる。このときのシリコン融液温度は、シリコンの融点以上、1500℃以下が好ましい。1500℃を越えると、得られるシート状シリコン基板の成長速度が遅くなり、生産性が悪くなる。
【0050】
次に、成長基板上でシート状シリコン基板を成長させるが、たとえば図7に示すような成長基板1を、図5中の矢印の方向に、左側から右側へ移動させる。このとき、成長基板1の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、成長基板の成長面がシリコン融液に接することで、成長基板1の表面でシート状シリコン基板2が成長する。シリコン融液への進入時の成長基板の表面温度は1100℃以下が好ましい。成長基板1の温度が1100℃を越えると、シート状シリコン基板2の成長速度が遅くなるだけでなく、成長基板とシリコンが固着したり、生産性が悪くなるおそれが生じる。このように、成長基板の表面温度によって、得られるシート状シリコン基板のばらつきが生じやすくなるため、冷却機構と加熱機構の両方を備えている方が好ましい。
【0051】
次に、図6に示すシート状シリコン基板製造装置を用いて、本発明によるシート状シリコン基板の別の製造方法について説明する。
【0052】
図6を参照して、得られるシート状シリコン基板の比抵抗が1Ω・cmになるようにホウ素(B)の濃度を調節したシリコン原料を、高純度カーボン製の坩堝(図示せず)に保護された石英坩堝601内に充填する。その後、本体チャンバ内の圧力を300Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行ない、その後、6Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行なう。次に、坩堝601を坩堝加熱用ヒーター603に周波数4kHz、電力80kWのインバータをかけて、4℃/minの昇温レートにて500℃まで昇温する。本体チャンバ内の圧力を6Pa、坩堝温度を500℃に維持した状態で90分間保持することにより、カーボン製坩堝(図示せず)に含まれている水分を除去する。また、一度に昇温しないのは、坩堝の角部などに熱応力が集中的にかかり、坩堝の破損を防止するのが目的である。
【0053】
上記ベーキングの後、一旦インバータの出力を停止し、坩堝601の加熱を停止する。この状態で、本体チャンバの圧力を800hPaになるまでアルゴンガスを充填する。本体チャンバ内が800hPaに達した時点で、再び坩堝601を昇温速度10℃/minで加熱し、坩堝601の温度が1550℃になるまで昇温する。坩堝の温度を1550℃で安定させることにより、坩堝内のシリコン塊はやがて全て溶融して、シリコン融液602とする。シリコン塊が完全に溶解したのを確認し、シリコン融液の湯面の高さが坩堝上端より15mm下になるように、シリコン塊もしくはシリコン粉末を追加投入する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、坩堝の設定温度を1430℃まで落として、シリコン融液の温度安定化のため30分間その状態を保持する。
【0054】
次に、シート状シリコン基板2を成長基板1上で成長させるが、成長基板の成長面が、シリコン融液に接触するように移動させる。このように、成長基板の成長面がシリコン融液に接することで、成長基板1の表面上でシート状シリコン基板2が成長する。図6に示すように、成長基板1とシート状シリコン基板2はチャンバ内で剥離してもいいし、チャンバ外へ搬出しても構わない。特に、生産速度を上げるのであれば、チャンバ内で、成長基板1から剥離し、シート状シリコン基板2だけをチャンバ外へ搬出するのが好ましい。このようにすることで、成長基板1をチャンバ外へ搬出することがなくなるだけでなく、アルゴンガスの消費量も大幅に低減することが可能となり、より安価なシート状シリコン基板を提供することが可能となる。
【0055】
(シート状シリコン基板製造用成長基板)
ここで、本発明で用いられるシート状シリコン基板となるシリコン結晶を成長させるための成長基板について説明する。図7または図8を参照して、本発明で用いられる成長基板1の表面は凹凸構造を有しており、その凸部の形状が、点状または線状で形成されている。すなわち、図7に示す成長基板1は、線状の凸部1aを有し、図8に示す成長基板は、点状の凸部1cを有する。
【0056】
次に、図9または図10を参照して、点状の凸部1cを持つ成長基板1の表面上でのシート状シリコン基板の形成過程を説明する。成長基板1のシリコン融液と接する表面には、点状の凸部1cが設けられているため、融液と最初に接する場所である点状の凸部1cに優先的に結晶核が発生する。次に、成長基板温度がシリコンの融点よりも低いため、発生した結晶核から結晶成長が始まる。点状の凸部1cから成長した曲面形状の結晶は、隣り合った点状の凸部1cから成長した結晶が成長するにつれてつながり、凹凸を有するシート状シリコン基板2が形成されることになる。
【0057】
しかし、図9または図10に示すように、得られるシート状シリコン基板2の凹凸形状は成長基板1の凹凸形状と一致するような形状になるとは限らないが、成長基板1の凹凸形状が反映される。すなわち、シート状シリコン基板2が成長基板1の点状の凸部1cと接する点の反対側面(シート状シリコン基板における融液との接触面)の点に、シート状シリコン基板2の凸部2bが形成される。
【0058】
得られるシート状シリコン基板2の形状のうち特に成長基板1と接していた面の形状は、シリコン融液の表面張力、成長基板の温度、シリコン融液に成長基板を浸漬させてシリコン結晶を成長させる時間、成長基板の凹凸構造の形状などの諸因子によって決まる。シリコン融液の温度が低く、成長基板温度が低く、かつ結晶成長時間が短い場合は、図9に示すように、成長基板の凸部に結晶核が形成された後のシリコン結晶の成長方向はシリコン融液側への方向になる。これは、成長基板1の点状の凸部1cにおける先端部分から結晶成長が始まり、融液が凹凸構造の凹部までほとんど進入しないうちに固化し、シート状シリコン基板2が成長するためである。
【0059】
逆に、シリコン融液の温度が高く、成長基板の温度が高く、または結晶成長時間が長い場合には、図10に示すように、成長基板1の点状の凸部1cに結晶核が形成された後のシリコン結晶の成長方向は成長基板の溝構造の面に沿った方向になる。これは、成長基板1の点状の凸部1cにおける先端部分から成長が始まるが、シリコン融液と成長基板の温度が高いために、融液が凹凸構造の凹部方向にある程度進入して固化し、シート状シリコン基板2が成長するためである。
【0060】
したがって、成長基板温度および融液温度を適宜調整することにより、シート状シリコン基板2における成長基板1との接触面を平滑にすることが可能である。一方、上記のとおり、点状の凸部1cより放射状に結晶成長が進むため、シート状シリコン基板における融液との接触面は凹凸形状を持ち、点状の凸部1cとの接点の反対側の点に凸部2bが形成されるため、成長基板1の点状の凸部1cの間隔にほぼ一致して、シート状シリコン基板2の凹凸面における凸部2bの間隔が形成される。なお、図7に示す成長基板1を用いてシート状シリコン基板を形成する場合においても同様である。
【0061】
次に、成長基板上に設けられている凹凸構造について詳細に説明する。図8を参照して、点状の凸部1cを有する成長基板1における、凹凸構造の隣り合った点状の凸部1cの間隔は特に限定されない。しかし、点状の凸部1cの間隔を一定のピッチで設けると、得られるシート状シリコン基板2の均一性が高くなるため、より好ましい。また同様の理由により、図7を参照して、線状の凸部1aに関しても凸部の間隔は特に限定されないが、一定のピッチで凸部の間隔を設けるのがより好ましい。
【0062】
得られたシート状シリコン基板2から太陽電池を作製する場合、点状の凸部1cのピッチは0.1mm以上である方が好ましい。また、同様に線状の凸部1aのピッチは0.1mm以上である方が好ましい。0.1mmよりも細かいピッチで、点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、形成されるシート状シリコン基板2の結晶粒が細かくなり、太陽電池の特性がよくならない。さらに、シート状シリコン基板2の凹凸面(裏面)側にパッシベーション膜6を形成し、研削またはエッチングにより凸部6bでオーム性電極を形成することから、0.1mmよりも細かいピッチで、点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、電極間距離が近くなり裏面パッシベーションの効果が薄れるためあまり好ましくない。
【0063】
また、点状の凸部1cのピッチまたは線状の凸部1aのピッチは3mm以下である方が好ましい。3mmより荒いピッチで点状の凸部1cあるいは線状の凸部1aを設けると、得られるシート状シリコン基板2の凹凸が大きくなり、裏面側に形成されたパッシベーション膜の凸部を研削しても電極の印刷が困難になるだけでなく、オーム性電極間距離が離れすぎるためにキャリアが拡散して電極部にたどり着くことが困難になり太陽電池の特性がよくならないため、あまり好ましくない。
【0064】
したがって、成長基板1の凸部の間隔を0.1mm以上、3mm以下とすることにより、太陽電池に好適な、凹凸面の凸部の間隔が0.1mm以上、3mm以下であるシート状シリコン基板を形成することができる。
【0065】
成長基板の凹部の溝の深さは、0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。凹部の溝の深さが0.05mmよりも浅い場合、溝の凹部でも結晶が成長することにより、形成されたシート状シリコン基板2を成長基板から剥離するのが困難になる場合があるからである。しかしながら、溝の深さは、融液材料の表面張力によっても、効果が異なるため、成長基板の表面構造と融液材料によって適宜選択する必要がある。図7および図8では、溝の深さはすべて同じ深さで示しているが、同じ深さにする必要はなく、複数の深さの溝を有するものでもよい。すなわち、凹凸成長基板の溝の深さによっても、成長基板が冷却されている場合においては、成長基板表面の温度分布が若干異なるためである。そのため、温度制御をする上では成長基板の表面形状と溝の深さを適宜選択する必要がある。
【0066】
凹凸構造をもった成長基板の材質は、熱伝導性、耐熱性に優れた材料である方が好ましい。たとえば、高純度黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、金属などを使用することが可能である。高純度黒鉛は、比較的安価であり、加工性に富む材質であるため凹凸構造を作製するのが容易であるためより好ましい。成長基板の材質は、工業的に安価であること、得られるシート状シリコン基板の成長基板品質などの特性を考慮し適宜選択することが可能である。さらに、成長基板に金属を用いる場合、常に冷却し続けるなど、成長基板の融点以下の温度で使用し、得られたシート状シリコン基板の特性にさほど影響を与えなければ特に問題はない。
【0067】
(太陽電池の製造方法)
以下、本発明にかかる太陽電池の製造方法における実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、ここで説明する製造方法は一例である。本発明の特質は、大きな凹凸を持つシリコン基板にパッシベーション膜を形成し、研削やエッチングにより凸部パッシベーション膜に開口部を設けることで裏面パッシベーション効果と印刷適合化を図ることにあり、太陽電池製造方法としてはここで説明する方法に限定されるものではない。
【0068】
(太陽電池の製造方法における実施形態1)
本発明にかかる太陽電池の一の製造方法について、図1を参照しながら説明する。まず、図1(a)に示すp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図1(b)に示すように、シート状シリコン基板2の受光面(表面)側に反射防止のための微小な凹凸(シート状シリコン基板2の凹凸面上の凹部2aおよび凸部2b、2cと区別するためテクスチュア4と呼ぶ)をつけるために、シート状シリコン基板2を水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なう。次に、図1(c)に示すように、n+型層5を形成する。n+型層の形成は、凹凸面側に拡散防止膜としてTG(Titanate Glass)を塗布し、受光面(表面)側にはケイ酸エチル、カルボン酸、エタノールおよび五酸化リンを主成分とするPSG(Phospho−Silicate Glass)を塗布し、その後熱拡散炉にて加熱することにより行なう。PSGからシート状シリコン基板2中にリンが拡散されることで、受光面(表面)側にn+型層5が形成される。その後フッ酸で洗浄し、TGおよびPSGを除去する。なお、n+型層の形成法としてはこれに限定されるものではなく、たとえば、オキシ塩化リン(POCl3)を用いたリンの気相拡散法を用いてもよい。
【0069】
その後、図1(d)に示すように、熱酸化法により凹凸面(裏面)側および受光面(表面)側にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜を形成する熱酸化の条件は、酸素雰囲気下800℃で4時間としており、このときの膜厚は約100nmである。この熱酸化条件は一例であり、この条件に限定されることなく一般的な熱酸化法の条件により酸化シリコン膜の形成が可能である。しかし、酸化シリコン膜の厚さが不充分であると、後に印刷するアルミニウムが酸化シリコン膜を突き抜けてp型のシート状シリコン基板2中に拡散してしまうため、50nm以上の製膜が可能な条件を選ばなくてはならない。また、裏面のパッシベーション膜6としては酸化シリコン膜だけに限定されるものではなくプラズマCVD法で製膜された窒化シリコン膜を用いてもよいが、アルミニウムペーストとの親和性という点で酸化シリコン膜のほうが望ましい。
【0070】
次に、図1(e)に示すように、図1(d)におけるパッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けると同時に凹凸を緩和する。パッシベーション膜6の凸部6b,6cの開口法については後述する。
【0071】
次に、図1(f)に示すように、受光面(表面)側に反射防止膜8として窒化シリコン膜をプラズマCVD法により200nm堆積させる。反射防止膜の材料は窒化シリコンに制限されるものではなく、プラズマCVD法で形成した酸化シリコン膜、常温CVD法で形成した酸化チタン膜、真空蒸着法で形成した酸化アルミニウム膜などを用いることができる。次に、図1(g)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストを印刷法により印刷し、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成する。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、反射防止膜8とパッシベーション膜6をファイアスルーすることで受光面電極9を形成する。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させる。
【0072】
(太陽電池の製造方法における実施形態2)
本発明にかかる太陽電池の別の製造方法について、図2を参照しながら説明する。まず、図2(a)に示すp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図2(b)に示すように、シート状シリコン基板2の受光面(表面)側に反射防止のためのテクスチュア4をつけるために、シート状シリコン基板2を水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なう。次に、図2(c)に示すように、n+型層5、反射防止膜8およびパッシベーション膜6を形成する。すまわち、凹凸面側に熱処理後酸化シリコン膜となる成分を含んだ酸化シリコン被膜形成用塗布液を回転塗布法により100nm塗布し常温にて乾燥させる。また、受光面(表面)側にn+型層5を形成するために不純物リンを含んだPTG塗布液などの酸化物塗布液を回転塗布法により70nm塗布する。その後、熱拡散炉にて酸化性雰囲気下で870℃で加熱する。このことにより、受光面(表面)側にはn+型層5が形成されると同時に反射防止膜8となる酸化膜が形成され、また凹凸面側にはパッシベーション膜6となる酸化シリコン膜が形成される。ここで、凹凸面側のパッシベーション膜6の存在により、凹凸面側にはリンが拡散しない。
【0073】
なお、凹凸面側の酸化シリコン膜は、100nmに限定されるものではないが、後に印刷するアルミニウムが酸化シリコン膜を突き抜けてp型のシート状シリコン基板2中に拡散するのを防ぐため、膜厚が少なくとも50nm以上となるように回転塗布の条件を設定しなければならない。またここで用いる受光面(表面)側の酸化物塗布液はPTGに限定されるものではなく、他にもたとえば、リンを含むPSGなどを用いることができる。ただしPSG液で形成される酸化シリコン膜の屈折率が1.45であるに対し、PTG液で形成される二酸化チタン膜の屈折率が1.9であることから空気/反射防止膜/セルの構造を考えた場合、光学的な反射防止の意味からはPTG膜のほうが優れている。
【0074】
次に、図2(d)に示すように、図2(c)におけるパッシベーション膜6の凸部6b,6cに開口部7を設けると同時に凹凸を緩和する。パッシベーション膜の凸部の開口法については後述する。
【0075】
次に、図2(e)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストを印刷法により印刷し、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成する。また、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、反射防止膜8をファイアスルーすることで受光面電極9を形成する。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させる。
【0076】
(パッシベーション膜の凸部の開口方法)
凹凸面側にパッシベーション膜が形成されたシート状シリコン基板のパッシベーション膜6の凸部を除去する方法として、凸部6b,6cのみを研削する方法(研削法)またはエッチングする方法(エッチング方法)がある。上記、研削法、エッチング法について、以下に詳細に説明する。
【0077】
(研削法)
凸部6b,6cを研削する方法について、図1(d)および図1(e)を参照しながら説明する。シート状シリコン基板2の凹凸面側に酸化シリコン膜や窒化シリコン膜等で形成したパッシベーション膜6を、1000番の研磨布を取り付けた卓上研削盤を用いて回転速度40rpmにて研削する。ただしこの条件は一例であり、研磨布の荒さや回転速度は適宜選択できる。研磨布を荒くしたり、回転速度をあげることにより高速に研削処理を行なうことができる。しかし研磨布が荒すぎたり回転速度が速すぎたりするとシート状シリコン基板を破損したり、研削量を制御できない恐れがある。さらにシート状シリコン基板内部までダメージ層がおよび、エッチングによっても除去できなくなる恐れがある。かかる観点から、そのため500番以下の荒さを持つ研磨布を用いることが好ましく、100rpm以下の回転速度とすることが好ましい。この研削により、パッシベーション膜6の凸部6b,6cだけに開口部7が設けられることになる。
【0078】
凹凸面を研削する装置としては、他にレシプロ平面研削盤やラップ盤などを用いることができ、砥粒としてはダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素(cBN)などを用いることができる。これらは通常半導体基板等の鏡面研磨に用いられる装置であり、高精度の研削が可能でありシート状シリコン基板に与えるダメージが少なくなるため、卓上研削盤よりも好ましい。また研削方法は、上記の装置を用いた方法に限定されるものではなく、対象とする工作物の表面を平面状に研削あるいは研磨でき、パッシベーション膜6の凸部6b,6cの頂上付近を研削あるいは研磨した時に、パッシベーション膜6の凹部6aに損傷を与えない加工精度をもつ装置を用いた方法であればよい。
【0079】
次に、凸部6b,6cの研削後、研削によって生じたダメージ層を除去するため、水酸化ナトリウムにてシート状シリコン基板の凸部を10μmエッチングする。用いるエッチング剤は、シリコンをエッチングすることができ、かつ、パッシベーション膜がエッチング防止膜として働くようなものであればよく、水酸化ナトリウムに限定されるものではない。
【0080】
(エッチング法)
図11を参照して、研削を用いないでパッシベーション膜6の凸部6b,6cのみをエッチングする方法について説明する。シート状シリコン基板2の凹凸面側に酸化シリコンや窒化シリコン等で形成されたパッシベーション膜6に耐酸性のレジスト15を塗布する。その後、凹凸面側をワイパー14でワイピングすることにより、凸部6b,6cの頂点付近のレジストのみをふき取る。レジストを乾燥させた後、今度は反対側(受光面側)の面にレジストを塗布し乾燥させる。その後、フッ酸と硝酸の混合液(混酸)に浸すことにより、レジストによって保護されていない凸部6b,6cのみを20μmエッチングして、パッシベーション膜の凸部6b,6cのみに開口部を設ける。その後、レジスト剥離液に浸して耐酸性レジストを剥離する。レジストは耐酸性レジストに限定されるものではなく、使用するエッチング剤に対して耐性があり、かつ、容易にワイピングすることができるものであればよい。また凸部6b,6cのエッチング量は適宜選択できる。
【0081】
エッチングだけでパッシベーション膜に開口部を設けるこの方法は、凸部を研削する方法に比べ、比較的容易に行なうことができる。また基板にストレスを与えないのでダメージが少なく、基板割れを防ぐことができるのでより好ましい方法である。このエッチング法は、凹凸面側にパッシベーション膜が形成されていない場合でも、凹凸差を緩和する方法として有効である。すなわち酸化シリコン膜あるいは窒化シリコン膜等によるパッシベーション膜形成を行なわずに凸部のエッチング法を用いることにより、裏面パッシベーション処理による光電変換効率の向上はないが、凹凸が緩和されることにより電極の印刷が容易にすることができる。
【0082】
【実施例】
以下、点状の凸部を持つ成長基板によって結晶成長させたシート状シリコン基板を用いて太陽電池を作製した場合を実施例および比較例として具体的に説明する。なお、本発明において用いられるシート状シリコン基板は、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面があるものを対象としており、シリコン融液に成長基板を接触させ、前記成長基板の表面状にシリコン結晶を成長させることによって好適に得られる。かかるシート状シリコン基板としては、規則的あるいはほぼ規則的な凹凸を持ち、かつ、凹凸差が50μm以上200μm以下であり、凸部の間隔が0.1mm以上3mm以下であるものが好ましく用いられる。
【0083】
(実施例1)
太陽電池の製造方法における実施形態1に基づいて、実施例1の太陽電池を作製した。以下、その詳細について説明する。
【0084】
得られるシート状シリコン基板の比抵抗が2Ω・cmになるように、ホウ素(B)濃度を調整したシリコン原料5kgを、高純度カーボン製坩堝に保護された石英坩堝内に充填し、真空ポンプおよびヒーターを備えたチャンバ内に固定した。次に、真空ポンプによりチャンバ内の真空引きを行ない、2.66×10−3Pa以下まで減圧した。その後、チャンバ内にアルゴンガスを導入し、常圧まで戻し、その後は、2×10−3m3/minでアルゴンガスを常時チャンバ上部から流したままにした。このとき、シリコン溶融用ヒーターを10℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温した。シリコン原料が完全に溶融したことを確認したのち、シリコン融液を1415℃に保持し、安定化を図った。
【0085】
次に、温度制御された成長基板をシリコン融液へ浸漬させる。ここで、成長基板は高純度の黒鉛を、図8に示すような点状に凹凸加工したものを用いた。点状の凸部1cは、ピッチが1.5mm、凹凸差が0.3mmになるように加工した。成長基板の温度は500℃に制御し、移動速度は、500cm/minで行なった。
【0086】
このようにして成長基板1上で得られたシート状シリコン基板は、成長基板から容易に剥離することができ、成長基板と接していた面には大きな凹凸がなくほぼ平坦な面が得られていることを目視で確認した。作製されたシート状シリコン基板は、シリコン融液に面していた表面に凸部を持っていた。接触式の段差計を用いて測定したところ、凸部の間隔は成長基板の点状の凸部1cの間隔と等しく1.5mmであり、凹部から見た凸部の高さは約100μmであった。また、成長基板と接していた面側は、凹凸差が15μm以下でありほぼ平滑な表面(平滑面)が得られていた。
【0087】
このようにしてシート状シリコン基板を50枚作製し、2cm×2cmの大きさにNd−YAGレーザーにて切断した。その重量から板厚を換算したところ、50枚のシート状シリコン基板の平均板厚は255μmであった。
【0088】
次に、図1を参照して、図1(a)に示すように、上記で得られたp型のシート状シリコン基板2を洗浄した後、図1(b)に示すように、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行ない、テクスチュア4を形成した(テクスチュア加工工程)。
【0089】
その後、図1(c)に示すように、n+型層5を形成する。まず凹凸面(裏面)側にスピンコーターを用いて拡散防止膜としてTGを塗布した。受光面(表面)側にはケイ酸エチル、カルボン酸、エタノールおよび五酸化リンを主成分とするPSG塗布液をスピンコーターにより塗布した。その後、熱拡散炉にて約850℃で加熱した。PSGからシリコン中にリンが拡散されることで、受光面(表面)側にn+型層5が形成される。その後、フッ酸で洗浄し、TGおよびPSGを除去した(n+型半導体層形成工程)。
【0090】
その後、図1(d)に示すように、熱酸化法により凹凸面側および受光面(表面)側にパッシベーション膜6として酸化シリコン膜を同時に形成した。酸化シリコン膜を形成する熱酸化の条件は酸素雰囲気下800℃で4時間としており、このときの膜厚は約100nmであった(熱酸化処理工程)。
【0091】
次に、図1(e)に示すように、図1(d)におけるパッシベーション膜の凸部6b,6cを研削した。研削は、凹凸面側を卓上研削盤を用いて凸部を10μm研削した。このとき研磨布は1000番のものを用いており、回転速度は40rpmで行なった。次に、研削による凸部のダメージ層を取り除くため水酸化ナトリウム水溶液にて約10μmエッチングを行なった(凸部研削処理工程)。
【0092】
次に、図1(f)に示すように、受光面(表面)側に反射防止膜8としての窒化シリコン膜をプラズマCVD法により200nm堆積させた。窒化シリコンの堆積条件として、反応ガスの種類をシランガス(SiH4)とアンモニア(NH3)、窒素ガス(N2)の混合ガスとし、反応ガス流量比をSiH4:NH3:N2=3:4:10、反応ガス圧力を20Pa、基板温度を150℃、RFパワーを100W(13.56MHz)とした(反射防止膜形成工程)。
【0093】
次に、図1(g)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、焼成を行ない、受光面電極9を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0094】
このようにして作製した太陽電池は、AM(Air Mass;通過空気量)1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流29.29(mA/cm2)、開放電圧580(mV)、フィルファクター0.740、効率12.57(%)であった。
【0095】
(比較例1)
実施例1で作製した太陽電池のアルミニウム印刷の容易さ、および凹凸面(裏面)側に形成したパッシベーション膜の効果(裏面パッシベーション効果)を調べるための比較実験を行なった。
【0096】
この比較例1で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は260μmであった。熱酸化処理までは、実施例1と同様に行なった。
【0097】
その後、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、混酸にて10μmエッチングを行なった。耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で受光面(表面)側に反射防止膜を堆積させた。
【0098】
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。このときはできるだけ印刷かすれが発生しないようにスクリーン印刷の印圧は0.21MPaとし、印刷速度は10mm/secとした。印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で10μm、凹部で110μmであった。凸部の頂点付近では印刷ができずに印刷かすれが発生した箇所があった。また20枚印刷を行なった段階で印刷スクリーンに損傷が生じ、スクリーンの交換を行なった。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面にp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成したが、15枚の基板で印刷のはがれが発生していることを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。
【0099】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.31(mA/cm2)、開放電圧577(mV)、フィルファクター0.737、効率12.05(%)であった。
【0100】
(比較例2)
実施例1で作製した太陽電池の凹凸面(裏面)側に形成したパッシベーション膜の効果を調べるために比較実験を行なった。この比較例2で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なお、この基板の重量から換算した板厚の平均は255μmであった。凸部研削処理までは、実施例1と同様の太陽電池作製過程を用いた。
【0101】
次に、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、フッ酸にて洗浄を行なった。耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で反射防止膜を堆積した。
【0102】
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面でp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.38(mA/cm2)、開放電圧578(mV)、フィルファクター0.745、効率12.22(%)であった。
【0103】
(実施例2)
凹凸面(裏面)側のパッシベーション膜の凸部をエッチング法によって開口する以外は実施例1と同様にして太陽電池の作製を行なった。まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は260μmであった。熱酸化処理までは、実施例1と同様に行なった。
【0104】
次に、図11を参照して、凹凸面側に生成した酸化シリコン膜によるパッシベーション膜6に耐酸性のレジスト15(太陽インキ製造株式会社製M−85K)を塗布した。その後、凹凸面側をワイパー14でワイピングすることにより、凸部6b,6c頂点付近のレジストのみをふき取った。レジストを乾燥させた後、今度は反対側(受光面側)の面にレジストを塗布し乾燥させた。その後、混酸に浸すことで、レジストによって保護されていないパッシベーション膜の凸部6b,6cのみを20μmエッチングすることにより、パッシベーション膜6に開口部を設けた(凸部エッチング処理工程)。
【0105】
耐酸性レジストを剥離後、実施例1と同じ条件で反射防止膜を堆積した。
次に、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。本実施例でのアルミニウム印刷においては、印圧を0.16MPaとし、印刷速度を20mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷した。次いで焼成し受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0106】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流29.10(mA/cm2)、開放電圧583(mV)、フィルファクター0.742、効率12.59(%)であった。
【0107】
(実施例3)
太陽電池の製造方法における実施形態2に基づいて、実施例3の太陽電池を作製した。以下、その詳細について説明する。
【0108】
まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は250μmであった。
【0109】
図2を参照して、図2(a)に示すように、上記で得られたp型のシート状シリコン基板2の洗浄後、図2(b)に示すように、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行ない、テクスチュア4を形成した。このシート状シリコン基板の洗浄後、反射防止のため水酸化ナトリウム水溶液およびアルコールの混合液で異方性エッチングを行なった(テクスチュア加工工程)。
【0110】
その後、凹凸面(裏面)側に、熱処理後酸化シリコン膜となる成分を含んだ酸化シリコン被膜形成用塗布液を、回転塗布法により100nm塗布し常温にて乾燥させた。その後、受光面(表面)側にn+型層を形成するために、不純物リンを含んだ酸化物塗布液を回転塗布法により塗布した。ここでは不純物リンを含んだ酸化物塗布液としてPTGを用いており、厚さは70nmとした。続いて、熱拡散炉にて酸化性雰囲気下で870℃で加熱した。このことにより、図2(c)に示すように、受光面(表面)側にはn+型層5が形成されると同時に反射防止膜8となる酸化膜が形成され、また凹凸面側にはパッシベーション膜6となる酸化シリコン膜が形成される。ここで、凹凸面側のパッシベーション膜6の存在によって凹凸面側にはリンが拡散しない(n+型半導体層、反射防止膜およびパッシベーション膜の同時形成工程)。
【0111】
次に、図2(d)に示すように、図2(c)におけるパッシベーション膜の凸部6b,6cを研削した。卓上研削盤を用いてパッシベーション膜6の凸部を10μm研削した。このとき研磨布は1000番のものを用いており、回転速度は40rpmで行なった。次に、研削による凸部のダメージ層を取り除くため水酸化ナトリウム水溶液にて約10μmエッチングを行なった(凸部研削処理工程)。
【0112】
次に、図2(e)に示すように、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後焼成を行ない、凹凸面側開口部においてp+型層11を形成すると同時に裏面電極10を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。その後、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、受光面電極9を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた(電極形成工程)。
【0113】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は、太陽電池50枚の平均で、短絡電流28.61(mA/cm2)、開放電圧570(mV)、フィルファクター0.703、効率11.47(%)であった。
【0114】
(比較例3)
実施例3で作製した太陽電池の凹凸面側に形成したパッシベーション膜の効果を調べるために比較実験を行なった。この比較例3で作製した太陽電池の詳細は以下のとおりである。
【0115】
まず、実施例1と同じ条件で、シート状シリコン基板を50枚作成した。なおこの基板の重量から換算した板厚の平均は255μmであった。凸部研削処理までは、実施例3と同様に行なった。
【0116】
次に、凹凸面側の酸化シリコンによるパッシベーション膜を取り除くために、受光面となる受光面(表面)側を耐酸性レジスト(太陽インキ製造株式会社製M−85K)で覆い、フッ酸にて洗浄を行なった。
【0117】
耐酸性レジストを剥離後、凹凸面側にアルミニウムペーストをスクリーン印刷法により印刷した。スクリーン印刷の印圧は0.15MPaとし、印刷速度は30mm/secとした。このとき印刷されたアルミニウムの厚さは凸部で20μm、凹部で100μmであった。すべての基板を印刷した段階でも印刷スクリーンに損傷がないことを確認した。その後、焼成を行ない、凹凸面側全面でp+型層を形成すると同時に裏面電極を形成した。なお、焼成後も印刷のはがれがないことを目視で確認した。次に、受光面(表面)側にAgペーストをグリッド状に印刷し、受光面電極を形成した。最後に、はんだディップを行ない、太陽電池を完成させた。
【0118】
このようにして作製した太陽電池は、AM1.5、100mW/cm2の照射下にてセル特性の測定を行なった。測定結果は太陽電池50枚の平均で、短絡電流27.98(mA/cm2)、開放電圧560(mV)、フィルファクター0.707、効率11.08(%)であった。
【0119】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0120】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、少なくとも一方の面が凹凸面であるシート状シリコン基板(特に、凹凸面の凹凸差の大きなシート状シリコン基板)を用いて、凹凸面側を裏面側として太陽電池を作製する場合、従来はフォトリソグラフィー法あるいはプラズマエッチング法あるいはレーザーアブレーション法といった高価なプロセスを用いても困難だった凹凸面側のパッシベーション膜の処理を、凹凸面側の凸部の研削またはエッチングという簡単かつ低コストな方法によって実現できる。また、研削またはエッチングによってシート状シリコン基板の凹凸差が緩和され、低コストな裏面電極形成法である印刷法の適用が可能となる。このため光電変換効率の高い太陽電池を低コストで作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)は、本発明にかかる太陽電池の一の製造方法における各工程を示す図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明にかかる太陽電池の別の製造方法における各工程を示す図である。
【図3】従来の一の太陽電池を示す図である。
【図4】従来の別の太陽電池を示す図である。
【図5】本発明に用いられるシート状シリコン基板の一の製造装置を示す概略図である。
【図6】本発明に用いられるシート状シリコン基板の別の製造装置を示す概略図である。
【図7】線状の凸部を有する成長基板の概略斜視図である。
【図8】点状の凸部を有する成長基板の概略斜視図である。
【図9】点状の凸部を有する成長基板上でシート状シリコン基板が成長する一の形態を示す模式図である。
【図10】点状の凸部を有する成長基板上でシート状シリコン基板が成長する別の形態を示す模式図である。
【図11】エッチング法によりパッシベーション膜の凸部に開口部を設ける方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 成長基板、1a 線状の凸部、1b 線状の凹部、1c 点状の凸部、2シート状シリコン基板、2a 凹部、2b,2c 凸部、3 n型半導体層、4 テクスチュア、5 n+型層、6 パッシベーション膜、6a 凹部、6b,6c 凸部、7 開口部、8 反射防止膜、9 受光面電極、10 裏面電極、11 p+型層、12 p型半導体基板、13 p+型微結晶層、14 ワイパー、15 レジスト、51,601 坩堝、52,602 シリコン融液、53,603 加熱用ヒータ、54,604 坩堝台、55,605 断熱材、56,606 坩堝昇降用台、57,607 軸、608 支持体、609 冷却体、610 関節部、611 アーム、612 熱遮蔽板、613 開口部。
Claims (7)
- 少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を有し、前記凹凸面にパッシベーション膜が形成され、前記凹凸面に形成されたパッシベーション膜の凸部のみに開口部が設けられ、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極が形成されていることを特徴とする太陽電池。
- 少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板は、シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
- シート状シリコン基板の凹凸面における凸部の間隔が0.1mm以上、3mm以下である請求項1または請求項2に記載の太陽電池。
- 裏面電極が印刷法により形成されている請求項1または請求項2に記載の太陽電池。
- シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、前記凹凸面にパッシベーション膜を形成する工程、研削により前記パッシベーション膜の凸部に開口部を設ける工程、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することを特徴とする太陽電池の製造方法。
- シリコンの融液に成長基板を接触させて前記成長基板表面上で前記シリコンの結晶を成長させることにより、少なくとも一方の面が表面に凹凸を有する凹凸面であるシート状シリコン基板を形成する工程、前記凹凸面にパッシベーション膜を形成する工程、前記パッシベーション膜の凹凸面にレジストを塗布しワイピングにより凸部のレジストのみを拭きとる工程、エッチングにより前記パッシベーション膜の前記凸部に開口部を設ける工程、前記開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有することを特徴とする太陽電池の製造方法。
- 印刷法により、開口部およびパッシベーション膜に裏面電極を形成する工程を有する請求項5または請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
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