JP5407614B2

JP5407614B2 - 黄色ジルコニア焼結体

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Publication number: JP5407614B2
Application number: JP2009165589A
Authority: JP
Inventors: 仁士永山; 正行工藤; 誠井上
Original assignee: Tosoh Corp
Current assignee: Tosoh Corp
Priority date: 2009-07-14
Filing date: 2009-07-14
Publication date: 2014-02-05
Anticipated expiration: 2029-07-14
Also published as: JP2011020873A

Description

本発明は、装飾部材、電子機器材料の外装に用いるための着色ジルコニアに関するものであり、特に鮮やかな黄色を呈し、質感（審美性）に優れ、なおかつ高密度のジルコニア焼結体を提供するものである。

ジルコニア焼結体はその高い強度からこれまで主に構造部材や粉砕メディアとして用いられているが、鏡面研磨後の表面光沢の美しさから装飾部材、電子機器材料の外装部品への応用が期待されている。こうした広がる用途に対応するためには、審美性に優れた着色ジルコニア焼結体が要望されている。

これまで黄色の着色ジルコニアとしては種々の添加物を用いたものが提案されているが、必ずしも十分な審美性を有するものは得られていなかった。特にジルコニアはアルミナに比べて着色剤が均一に固溶しにくく、鮮明な色が出難いという問題があった。

例えば、バナジウムジルコニウムや酸化プラセオジウムを着色剤として用いたジルコニア焼結体が提案されている（例えば特許文献１）。しかし、それらは着色剤の添加量が多いため、肌色味の強い（さらには茶色味の強い）焼結体であった。他にもウランを着色剤として用いた黄色のジルコニア焼結体が提案されている（例えば特許文献２）。しかし、ウランは一般の用途に用いられる元素ではない。酸化ニッケル、酸化セリウム又は酸化銅を用いたものが提案されている（例えば特許文献３〜５）。しかし、これらはアルミナを多量に含む白っぽいものであり、肌色味から茶色味の強い色調で、柑橘系の黄色とは言えなかった。

この様に従来の黄色のジルコニア焼結体は、黄系の色を呈してはいるものの、鮮やかな黄色ではなく、明度、色相及び彩度のバランスに優れた黄色を呈し、なおかつ真珠調の光沢を有するジルコニア焼結体は得られていなかった。

本発明は、かかる従来の着色ジルコニアの問題を解決するものであり、特に高密度で審美性に優れた黄色の着色ジルコニアを提供するものである。

特開平３−２８１６１号公報特開平６−１９１９３９号公報特開平１−１５７４６２号公報特開平１−２３４３６４号公報特開平１−２３４３６５号公報

従来の黄色のジルコニア焼結体は肌色味（茶色味）の強い色調であり、真珠調の光沢を有する鮮やかな黄色で高級な質感のあるジルコニア焼結体は得られていなかった。

本発明者等は、黄色に着色したジルコニア焼結体について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤としては安定化剤自身による着色への影響のない酸化イットリウムを２〜５モル％含有し、バナジウム、プラセオジウムを含む複合酸化物を１重量％以下、或いは酸化ホロミウムを３重量％、さらに他の添加物としてアルミナを０．５重量％未満において、マンセル表色系における７Ｙ〜１ＧＹに相当する鮮やかな黄色のジルコニア焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。

以下に本発明の焼結体を詳細に説明する。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Ｖが５〜９、色相Ｈが７Ｙ〜１ＧＹ、彩度Ｃが１〜４であり、なおかつ焼結密度が６．０５ｇ／ｃｍ^３以上の黄色ジルコニア焼結体である。

マンセル表色系の色相ＨはＲ（赤）、Ｙ（黄色）、Ｇ（緑）、Ｂ（青）、Ｐ（紫）の各基本色の色相とそれらの組み合わせの中間色を各１０段階で表示する表色系である。マンセル表色系はＬ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系に比べて色のイメージを掴みやすい表色系であり、主にデザイン分野で用いられており、本発明の焼結体の目的に適した表色系である。

本発明の黄色ジルコニア焼結体におけるマンセル表色系の明度Ｖが７未満では暗く濁った質感となる。Ｖ値は７．５以上であることが好ましい。一方、Ｖ値が９を越えると白くぼやけた質感となるため、Ｖ値は特に８.５以下が好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体では、マンセル表色系の色相Ｈは７Ｙ〜１ＧＹであり、特に１０Ｙ〜１ＧＹの範囲が好ましい。７ＹよりＹ（黄色）側（１０ＹＲ〜６Ｙ）では肌色味が強い色調となり、１ＧＹを超えたＧＹ側（１ＧＹ〜１０ＧＹ）では緑味が強い色調となる。

本発明の黄色ジルコニア焼結体では、マンセル表色系の彩度Ｃは１〜４である。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は、表面光沢によって高級感を呈するために高密度であることが不可欠であり、焼結密度は６．０５ｇ／ｃｍ^３以上、特に６．０６ｇ／ｃｍ^３以上であることが好ましい。焼結密度が６．０５ｇ／ｃｍ^３未満では、見る角度によって光りの反射にむらが生じ、真珠の様な光沢が得られない。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は、Ｌ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系における明度Ｌが７０〜９０、ａ^＊が５〜−１０、ｂ^＊が５〜３０であることが好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体のＬ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系における明度Ｌは７０〜９０、特に７５〜８５であることが好ましい。明度Ｌが７０未満では暗い質感となり、９０を越えると白っぽくぼやけた質感となる。

本発明の黄色ジルコニア焼結体のＬ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系におけるａ^＊は５〜−１０、ｂ^＊が５〜３０の範囲が好ましく、さらにａ^＊が０〜−１０、ｂ^＊が１０〜３０の範囲が好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は、安定化剤としてＹ_２Ｏ_３を２〜５モル％、着色剤成分を０．０１〜３重量％、Ａｌ_２Ｏ_３を０．５重量％未満からなるものが好ましい。

ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアの他にもセリア等が知られているが、セリアはそれ自身がジルコニアを着色して色調へ影響するため、本発明の黄色ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアを用いることが好ましい。イットリアの含有量は焼結体の強度と色調のバランスの観点から、２〜５モル％、特に２．５〜３．５モル％の範囲が好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体に用いる着色剤は特に限定はないが、例えばバナジウムを含む複合酸化物では０．０１〜１重量％、特に０．５重量％以下、プラセオジウムを含む複合酸化物では０．０１〜１重量％、特に０．５重量％以下、酸化ホロミウムでは０．０１〜３重量％、特に０．５〜２重量％用いることが好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体に用いる添加物としては、色調に影響しないアルミナを０．５重量％以下、特に０．０５〜０．３重量％添加することが好ましい。黄色ジルコニア焼結体において、アルミナが０．５重量％以上では、焼結体が白っぽい質感となる。一方、アルミナを含有しない場合、大気中の常圧焼結において本発明の高密度を得ることが困難な場合があり、色調に影響しない範囲で最小限度のアルミナを添加することが好ましい。

本発明の原料として用いるジルコニア粉末は特に限定されるものではないが、加水分解によって得られる焼結性の高い粉末を用いることが好ましい。

本発明の黄色ジルコニア焼結体の製造方法は特に限定されるものではないが、上記の組成の粉末を成型（必要に応じてさらにＣＩＰ処理）し、大気中、常圧で１３５０〜１６００℃、特に１４００〜１５００℃で焼結することができる。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は従来の様に特殊なＨＩＰ焼結をしなくても高密度で高級感のある焼結体を得ることができる。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は肌色味（茶色味）のない鮮やかな黄色の色調と明度のバランスに優れたものであり、高級な質感を有しジルコニア本来の真珠調の光沢を有する着色ジルコニア焼結体である。

以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

（色相、明度、採度の測定）
本発明の焼結体のマンセル表色系における色相、明度、採度、並びにＬ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系におけるＬ*、ａ*、ｂ*は、色差計（カラーアナライザーＴＣ−１８００ＭＫ−ＩＩ、東京電色社製）を用いてＤ６５光源、１０度視野角の条件において測定した。

（実施例１）
東ソー株式会社製のジルコニア粉末３ＹＳＥ（酸化イットリウム３モル％、アルミナ０．２５重量％）に、着色剤としてＺｒ−Ｓｉ−Ｖの複合酸化物（日陶産業（株）製ＮＭ−１７００）を０．４重量％添加し、湿式混合により粉砕、混合後、乾燥した。混合粉末をメカニカルプレス（５００ｋｇｆ／ｃｍ^２）、ＣＩＰ（２ｔ／ｃｍ^２）により加圧成型し、大気中、１４００℃（昇温速度１００℃／時）で２時間焼結させた。焼結体は表面を研磨し、マンセル表色系、及びＬ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系の測定を行った。

結果を表１に示す。ＨＩＰ処理等の特別の焼結条件を用いることなく、鮮やかな黄色の焼結体が得られた。

（実施例２）
着色剤としてＺｒ−Ｓｉ−Ｐｒの複合酸化物（日陶産業（株）製ＮＰ−４０）を０．０５重量％用いた以外は実施例１と同様の処理を行った。結果を表１に示す。

実施例１に比べてより明度は高いが、同様に鮮やかな黄色の焼結体が得られた。

（実施例３）
着色剤としてＺｒ−Ｓｉ−Ｐｒの複合酸化物（日陶産業（株）製ＮＰ−４０）を０．４重量％用いた以外は実施例１と同様の処理を行った。結果を表１に示す。

（実施例４）
着色剤として酸化ホロミウム（２重量％）を用いた以外は実施例１と同様の処理を行った。結果を表１に示す。

（比較例１）
着色剤として酸化鉄（０．１重量％）、酸化チタン（０．５重量％）を用いた以外は実施例１と同様の処理を行った。結果を表１に示す。

実施例の焼結体に比べて肌色（茶色）味の強い焼結体が得られた。

（比較例２）
着色剤としてＺｒ−Ｓｉ−Ｖの複合酸化物（日陶産業（株）製ＮＭ−１７００）を０．４重量％、Ｚｒ−Ｓｉ−Ｐｒの複合酸化物（日陶産業（株）製ＮＰ−４０）を１．５重量％、さらにＡｌ−Ｍｎ−Ｓｉの複合酸化物（日陶産業（株）製Ｍ−４０）を０．２重量％用いた以外は実施例１と同様の処理を行った。結果を表１に示す。

本発明の黄色ジルコニア焼結体は、高密度でなおかつ肌色味（茶色味）のない鮮やかな黄色を呈する審美性に優れた焼結体であり、装飾部品、電子機器材料の外装に用いることができる。

Claims

安定化剤としてＹ _２Ｏ _３を２〜５モル％、着色剤としてＺｒ−Ｓｉ−Ｖの複合酸化物を０．０１〜１重量％又はＺｒ−Ｓｉ−Ｐｒの複合酸化物を０．０１〜１重量％、Ａｌ _２Ｏ _３を０．５重量％未満含んでなり、マンセル表色系における明度Ｖが７〜９、色相Ｈが７Ｙ〜１ＧＹ、彩度Ｃが１〜４であり、なおかつ焼結密度が６．０５ｇ／ｃｍ^３以上である黄色ジルコニア焼結体。
Ｌ^＊ａ^＊ｂ^＊表色系における明度Ｌが７０〜９０、ａ^＊が５〜−１０、ｂ^＊が５〜３０である請求項１に記載の黄色ジルコニア焼結体。