JP5407613B2 - オレンジ色ジルコニア焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、装飾部材、電子機器材料の外装に用いるための着色ジルコニアに関するものであり、特に鮮やかなオレンジ色を呈し、質感(審美性)に優れ、なおかつ高密度のジルコニア焼結体を提供するものである。
ジルコニア焼結体はその高い強度からこれまで主に構造部材や粉砕メディアとして用いられているが、鏡面研磨後の表面光沢の美しさから装飾部材、電子機器材料の外装部品への応用が期待されている。こうした広がる用途に対応するためには、審美性に優れた着色ジルコニア焼結体が要望されている。
これまでオレンジ色の着色ジルコニアとしては種々の添加物を用いたものが提案されているが、必ずしも十分な審美性を有するものは得られていなかった。特にジルコニアはアルミナに比べて着色剤が均一に固溶しにくく、鮮明な色が出難いという問題があった。
これまでオレンジ色の着色ジルコニアとしては以下の様なものが提案されている。
例えば着色剤として酸化銅を用い、還元雰囲気で焼結したものが提案されている(例えば特許文献1)。しかし、還元による色調を調整したものでは色調のばらつきがあり、なおかつ明度の低いものとなる場合があった。
他にも着色剤として還元セリア(Ce)を用いた焼結体が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかし、還元による色調を調整したものでは色調のばらつきがあり、さらに還元セリアは安定化剤にならないため焼結体が熱安定性に劣るという問題があった。
この様に従来のオレンジ色のジルコニア焼結体は、オレンジ系の色を呈してはいるものの、肌味をおびたもの(マンセル表色系における色相HがGYに属するもの)であった。従って明度、色相及び彩度のバランスに優れたオレンジ色(マンセル表色系におけるYに属するもの)で、なおかつ真珠調の光沢を有するジルコニア焼結体は得られていなかった。
本発明は、かかる従来の着色ジルコニア焼結体の問題を解決するものであり、特に高密度で審美性に優れたオレンジ色の着色ジルコニアを提供するものである。
特開平11−322418号公報 特開平6−92638号公報
従来のオレンジ色のジルコニア焼結体は肌色味(茶色味)の強い色調であり、真珠調の光沢を有する鮮やかな柑橘系のオレンジ色で高級な質感のあるジルコニア焼結体は得られていなかった。
本発明者等は、オレンジ色に着色したジルコニア焼結体について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤としては安定化剤自身による着色への影響のない酸化イットリウムを2〜5モル%含有し、例えば酸化プラセオジウム、又は酸化エルビウムと酸化テルビウムの着色剤をそれぞれ3重量%以下、他の添加物としてはアルミナを0.5重量%未満において、マンセル表色系における1Y〜2Yに属する鮮やかなオレンジ色のジルコニア焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下に本発明の焼結体を詳細に説明する。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Vが6〜8、色相Hが1Y〜2Y、彩度Cが5〜9であり、なおかつ焼結密度が6.02g/cm以上のオレンジ色ジルコニア焼結体である。
マンセル表色系の色相HはR(赤)、Y(黄色)、G(緑)、B(青)、P(紫)の各基本色の色相とそれらの組み合わせの中間色を各10段階で表示する表色系である。マンセル表色系はL表色系に比べて色のイメージを掴みやすい表色系であり、主にデザイン分野で用いられており、本発明の焼結体の目的に適した表色系である。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体では、マンセル表色系における明度Vが6未満では暗く濁った質感となる。V値は6.5以上であることが好ましい。一方、V値が8を越えると白くぼやけた質感となるため、V値は7.5以下が好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体の呈するオレンジ色は、マンセル表色系の色相Hにおいて1Y〜2Yに属するものである。1YよりYR(黄赤色)側では黄色味が強い質感となり、2Yを超えたGY(黄緑)側(2Y〜5GY)では肌色が強い質感となる。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体のマンセル表色系の彩度Cは、5〜9である。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は、表面光沢によって高級感を呈するために高密度であることが不可欠であり、焼結密度は6.02g/cm以上、特に6.05g/cm以上であることが好ましい。焼結密度が6.02g/cm未満では、見る角度によって光りの反射にむらが生じ、真珠調の光沢が得られない。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は、さらにL表色系における明度Lが70〜80、aが0〜10、bが30〜60であることが好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体におけるL表色系における明度Lは、70〜80、特に70〜75であることが好ましい。明度Lが70未満では暗い質感となり、80を越えると白っぽくぼやけた質感となる。
本発明の焼結体はオレンジ色であるため、L表色系におけるaは0〜10、bが30〜60の範囲が好ましく、さらにaが3〜8、bが35〜60の範囲が好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は、安定化剤としてYを2〜5モル%、着色剤成分を0.5〜3重量%、Alを0.5重量%未満からなるものが好ましい。
ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアの他にもセリア等が知られているが、セリアはそれ自身がジルコニアを着色して色調へ影響するため、本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアを用いることが好ましい。イットリアの含有量は焼結体の強度と色調のバランスの観点から、2〜5モル%、特に2.5〜3.5モル%の範囲が好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体に用いる着色剤は特に限定は無いが、その使用量は3重量%以下が好ましく、例えば酸化プラセオジウムを3重量%以下(特に1重量%以下)、又は酸化エルビウム及び/又は酸化テルビウムを併せて3重量%以下(特に2.5重量%以下)を用いることが好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体に用いる添加物としては、色調に影響しないアルミナを0.5重量%以下、特に0.05〜0.3重量%添加することが好ましい。オレンジ色ジルコニア焼結体において、アルミナが0.5重量%以上では、焼結体が白っぽい質感となり高級感が損なわれたものとなる。一方、アルミナを含有しない場合、大気中の常圧焼結において本発明の高密度を得ることが困難な場合があり、色調に影響しない範囲で最小限度のアルミナを添加することが好ましい。
本発明のジルコニア粉末は特に限定されるものではないが、加水分解によって得られる焼結性の高い粉末を用いることが好ましい。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体の製造方法は特に限定されるものではないが、上記の組成粉末を成型(必要に応じてさらにCIP処理)し、大気中、常圧で1350〜1600℃、特に1400〜1500℃で焼結することができる。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は従来の様に特殊なHIP焼結をしなくても高密度で高級感のある焼結体を得ることができる。
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は肌色味(茶色味)のない柑橘系のオレンジ色の色調と明度のバランスに優れたものであり、高級な質感を有しジルコニア本来の真珠調の光沢を有する着色ジルコニア焼結体である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(色相、明度、採度の測定)
本発明の焼結体のマンセル表色系における色相、明度、採度、並びにL表色系におけるL*、a*、b*は、色差計(カラーアナライザーTC−1800MK−II、東京電色社製)を用いてD65光源、10度視野角の条件において測定した。
(実施例1)
東ソー株式会社製のジルコニア粉末3YSE(酸化イットリウム3モル%、アルミナ0.25重量%)に、着色剤として酸化プラセオジウム(1重量%)を添加し、湿式混合により粉砕、混合後、乾燥した。混合粉末をメカニカルプレス(500kgf/cm)、CIP(2t/cm)により加圧成型し、大気中、1400℃(昇温速度100℃/時)で2時間焼結させた。焼結体は表面を研磨し、マンセル表色系、及びL表色系の測定を行った。
結果を表1に示す。HIP処理等の特別の焼結条件を用いることなく、鮮やかなオレンジ色の光沢のある焼結体が得られた。
(実施例2)
着色剤として酸化エルビウム(2重量%)、酸化テルビウム(0.2重量%)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例1に比べてより明度が高く、同様に肌色味のないオレンジ色の光沢のある焼結体が得られた。
(比較例1)
着色剤として酸化チタン(0.5重量%)及び酸化鉄(0.1重量%)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例の焼結体に比べてより明度が低く、茶色味の強い焼結体が得られた。
(比較例2)
着色剤として酸化ホロニウム(2重量%)用いた以外は実施例1同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例の焼結体に比べて明度は高いが、肌色味の強い焼結体が得られた。
(比較例3)
着色剤として酸化エルビウム(1重量%)及びZr−Si−Fe複合酸化物(日陶産業(株) NM−66)を1重量%用いた以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例の焼結体に比べて明度は高いが、肌色味の強い焼結体が得られた。
Figure 0005407613
本発明のオレンジ色ジルコニア焼結体は、高密度でなおかつ肌色味(茶色味)のないオレンジの色相を呈する審美性に優れた焼結体であり、装飾部品、電子機器材料の外装に用いることができる。

Claims (2)

  1. 安定化剤としてY を2〜5モル%、着色剤として酸化プラセオジウムを3重量%以下若しくは酸化エルビウム及び/又は酸化テルビウムを併せて3重量%以下、Al を0.5重量%未満含んでなり、マンセル表色系における明度Vが6〜8、色相Hが1Y〜2Y、彩度Cが5〜9であり、なおかつ焼結密度が6.02g/cm以上であるオレンジ色ジルコニア焼結体。
  2. 表色系における明度Lが70〜80、aが0〜10、bが30〜60である請求項1に記載のオレンジ色ジルコニア焼結体。
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