JP5375386B2 - 緑色ジルコニア焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、装飾部材、電子機器材料の外装に用いるための着色ジルコニアに関するものであり、特に鮮やかな緑色を呈し、質感(審美性)に優れ、なおかつ高密度のジルコニア焼結体を提供するものである。
ジルコニア焼結体はその高い強度からこれまで主に構造部材や粉砕メディアとして用いられているが、鏡面研磨後の表面光沢の美しさから装飾部材、電子機器材料の外装部品への応用が期待されている。こうした用途に対応するためには、審美性に優れた着色ジルコニア焼結体が要望されている。
これまで緑色の着色ジルコニア焼結体としては種々の添加物を用いたものが提案されているが、必ずしも十分な審美性を有するものは得られていなかった。特にジルコニアはアルミナに比べて着色剤が均一に固溶しにくく、鮮明な色が出難いという問題があった。
これまで緑色の着色ジルコニアとしては以下の様なものが提案されている。
例えば、安定化剤を含むジルコニアに酸化クロムを着色剤として含有するジルコニア焼結体(特許文献1参照)、或いは酸化バナジウムを着色剤として含有するジルコニア焼結体(特許文献2、3参照)が提案されている。クロム着色剤にさらにコバルトやニッケルを添加すると青みがかった緑となることも指摘されている。しかし、これらはいずれも着色剤の成分としてクロム、バナジウムを含むものであり、その様な元素を含まない(或いはそれらの元素含有量の少ない)ものが望まれている。
また、珪素、プラセオジウムとバナジウムの酸化物の混合物を用いた緑色のジルコニア焼結体も提案されている(特許文献4参照)。しかし、得られている焼結体は抗折力が極めて低い焼結体であり、明らかに低密度なものである。
この様に従来の緑色のジルコニア焼結体は、緑系の色を呈してはいるものの、多くはクロム、バナジウムを多量に用いるものであった。またそれらとコバルトやニッケルを組み合わせた場合には青みがかったもの(マンセル表色系における色相HがBGに属するもの)であった。これまで明度、色相及び彩度のバランスに優れ、マンセル表色系における色相HがG又はGYに属する鮮やかな緑色を呈し、なおかつ真珠調の光沢を有する緑色のジルコニア焼結体は得られていなかった。
本発明は、かかる従来の着色ジルコニアの問題を解決するものであり、特に高密度で審美性に優れた緑色の着色ジルコニアを提供するものである。
特開昭61−141688号公報 特開昭62−128967号公報 特開平3−2816号公報 特開昭62−123058号公報
従来の緑色のジルコニア焼結体は青みの強い色調であり、真珠調の光沢を有しなおかつ鮮やかな緑色で高級な質感のあるジルコニア焼結体は得られていなかった。
本発明者等は、緑色に着色したジルコニア焼結体について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤としては安定化剤自身による着色への影響のない酸化イットリウムを2〜5モル%含有し、クロム、バナジウムを用いない(或いはその含有量の低い)着色剤を用い、他の添加物としてはアルミナを0.5重量%未満では、マンセル表色系における色相Hが5GY〜10Gに属する鮮やかな緑色ジルコニア焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下に本発明の焼結体を詳細に説明する。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Vが4〜7、色相Hが5GY〜10G、彩度Cが3〜7であり、なおかつ焼結密度が5.85g/cm以上の緑色ジルコニア焼結体である。
マンセル表色系の色相HはR(赤)、Y(黄色)、G(緑)、B(青)、P(紫)の各基本色の色相とそれらの組み合わせの中間色を各10段階で表示する表色系である。マンセル表色系は、L表色系に比べて色のイメージを掴みやすい表色系であり、主にデザイン分野で用いられており、本発明の焼結体の目的に適した表色系である。
本発明の緑色ジルコニア焼結体では、マンセル表色系における明度Vが4未満では暗い質感となり、V値は4.5以上であることが好ましい。一方、V値が7を越えると白くぼやけた質感となるため、V値は特に6.5以下が好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系の色相Hが5GY〜10Gであり、特に8GY〜5G、さらには8GY〜3Gの範囲が好ましい。5GYよりY(黄色)側(10Y〜5GY)では黄色味が強い質感となり、10Gを超えたBG(青緑)側(10G〜10BG)では青味が強い質感となる。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系の彩度Cが3〜7である。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、表面光沢によって高級感を呈するため高密度であることが不可欠であり、焼結密度は5.85g/cm以上、特に5.90g/cm以上であることが好ましい。焼結密度が5.85g/cm未満では、見る角度によって光りの反射にむらが生じ、真珠調の光沢が得られない。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、L表色系における明度Lが46〜70、aが−15〜−30、bが0〜30であることが好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体におけるL表色系における明度Lは46〜70、特に47〜65であることが好ましい。明度Lが46未満では暗い質感となり、70を越えると白くぼやけた質感となる。
本発明の緑色ジルコニア焼結体のL表色系におけるaは−15〜−30、bが0〜30の範囲が好ましく、さらにaが−19〜−28、bが10〜30の範囲が好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、安定化剤としてYを2〜5モル%、着色剤成分を1〜10重量%、Alを0.5重量%未満からなるものが好ましい。
ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアの他にもセリア等が知られているが、セリアはそれ自身がジルコニアを着色して色調へ影響するため、本発明の緑色ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアを用いることが好ましい。イットリアの含有量は焼結体の強度と色調のバランスの観点から、2〜5モル%、特に2.5〜3.5モル%の範囲が好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体に用いる着色剤の種類は特に限定はないが、特にクロム、バナジウムを用いない(或いはその含有量が少ない)ものを用いることが好ましい。例えば酸化ニッケルと酸化ケイ素の混合(又は複合)酸化物、或いはクロムを含まずなおかつバナジウム含有量を抑えた着色剤としてジルコニアと珪素(ジルコン)とバナジウム又はプラセオジウムの複合酸化物を用いてもよい。着色剤にこれらの複合酸化物を用いることにより、バナジウムの総含有量を低く抑えることができ、これらの酸化物を1〜10重量%、特に5重量%以下用いることが好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体に用いる添加物としては、色調に影響しないアルミナを0.5重量%以下、特に0.05〜0.3重量%添加することが好ましい。緑色ジルコニア焼結体において、アルミナが0.5重量%以上では、焼結体が白っぽい質感となり高級感が損なわれたものとなる。一方、アルミナを含有しない場合、大気中の常圧焼結において本発明の高密度を得ることが困難な場合があり、色調に影響しない範囲で最小限度のアルミナを添加することが好ましい。
本発明で原料として用いるジルコニア粉末は特に限定されるものではないが、加水分解によって得られる焼結性の高い粉末を用いることが好ましい。
本発明の緑色ジルコニア焼結体の製造方法は特に限定されるものではないが、上記の組成粉末を成型(必要に応じてさらにCIP処理)し、大気中、常圧で1350〜1600℃、特に1400〜1500℃で焼結することができる。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は従来の様に特殊なHIP焼結をしなくても高密度で高級感のある焼結体を得ることができる。
本発明の緑色ジルコニア焼結体は青味のない深みのある緑色の色調と明度のバランスに優れた高級な質感を有しており、ジルコニア本来の特性である真珠調の光沢のある緑色ジルコニア焼結体である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(色相、明度、採度の測定)
本発明の焼結体のマンセル表色系における色相、明度、採度、並びにL表色系におけるL*、a*、b*は、色差計(カラーアナライザーTC−1800MK−II、東京電色社製)を用いてD65光源、10度視野角の条件において測定した。
(実施例1)
東ソー株式会社製のジルコニア粉末3YSE(酸化イットリウム3モル%、アルミナ0.25重量%)に、着色剤としてシリカ(3重量%)及び酸化ニッケル(5重量%)を添加し、湿式混合により粉砕、混合後、乾燥した。混合粉末をメカニカルプレス(500kgf/cm)、CIP(2t/cm)により加圧成型し、大気中、1400℃(昇温速度100℃/時)で2時間焼結させた。焼結体は表面を研磨し、マンセル表色系、及びL表色系の測定を行った。
結果を表1に示す。HIP処理等の特別の焼結条件を用いることなく、鮮やかな緑色の光沢のある焼結体が得られた。
(実施例2)
着色剤をZr−Si−V系複合酸化物(日陶産業(株)製 MN−1700)を2重量%及びZr−Si−Pr系複合酸化物(日陶産業(株)製 NP−40)を2重量%用いた以外は実施例1同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例1に比べてより明度が高く、青味のない緑色の光沢のある焼結体が得られた。
(比較例1)
着色剤としてZr−Si−V系複合酸化物(日陶産業(株)製 MN−1700)を10重量%用いた以外は実施例1同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例の焼結体に比べてより明度が低く、青味の強い焼結体が得られた。
(比較例2)
着色剤としてアルミナ(2.5重量%)及び酸化ニッケル(2.5重量%)用いた以外は実施例1同様の処理を行った。結果を表1に示す。
実施例の焼結体に比べて明度は高いが、白っぽく青味の強い焼結体が得られた。
Figure 0005375386
本発明の緑色ジルコニア焼結体は、高密度でなおかつ青味のない緑色を呈する審美性に優れた焼結体であり、装飾部品、電子機器材料の外装に用いることができる。

Claims (4)

  1. マンセル表色系における明度Vが4〜7、色相Hが5GY〜10G、彩度Cが3〜7であり、なおかつ焼結密度が5.85g/cm以上である緑色ジルコニア焼結体。
  2. 表色系における明度Lが46〜70、aが−15〜−30、bが0〜30である請求項1に記載の緑色ジルコニア焼結体。
  3. 安定化剤としてYを2〜5モル%、着色剤としてシリカ及び酸化ニッケルを併せて10重量%以下、Alを0.5重量%未満含んでなる請求項1又は請求項2に記載の緑色ジルコニア焼結体。
  4. 安定化剤としてYを2〜5モル%、着色剤としてZr−Si−Vの複合酸化物及び/又はZr−Si−Prの複合酸化物を併せて10重量%以下、Alを0.5重量%未満含んでなる請求項1又は請求項2に記載の緑色ジルコニア焼結体。
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