JP5521209B2 - 青色ジルコニア焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、装飾部材、電子機器材料の外装に用いるための着色ジルコニアに関するものであり、特に鮮やかな明青色(水色)又は重厚感のある濃青色を呈し、質感(審美性)に優れ、なおかつ高密度の着色ジルコニアを提供するものである。
ジルコニア焼結体はその高い強度からこれまで主に構造部材や粉砕メディアとして用いられているが、鏡面研磨後の表面光沢の美しさから装飾部材、電子機器材料の外装部品への応用が期待されている。こうした用途に対応するためには、審美性に優れた着色ジルコニア焼結体が要望されている。
これまで青色の着色ジルコニアとしては種々の添加物を用いたものが提案されているが、必ずしも十分な審美性を有するものは得られていなかった。特にジルコニアはアルミナに比べて着色剤が均一に固溶しにくく、鮮明な色が出難いという問題があった。
これまで青色の着色ジルコニアとしては以下の様なものが提案されている。
例えば、アルミナとニッケルのスピネルを着色剤として用いた淡青色のジルコニア焼結体が提案されている(特許文献1)。しかし、その様な焼結体の色調は淡いものであり、質感が十分なものでなく、なおかつ焼結密度の低いものであった。
青色のジルコニア焼結体についてはコバルト系の顔料を用いたものも多く提案されている(特許文献2〜4参照)。しかし、還元雰囲気で色調を調整したものでは色調が焼結雰囲気に影響を受けて一定とならなかった。また着色剤の成分としてクロムを含むものは用途が限定され、アルミナを多量に含むものでは色調が白くぼやけた色調であった。
この様に、従来の青色のジルコニア焼結体は、青系の色を呈してはいるものの、その明度、色相及び彩度のバランスが必ずしも十分ではなく、真珠調の光沢を有するジルコニア焼結体の高級な質感に欠けるものであった。
本発明は、従来の着色ジルコニアの問題を解決するものであり、特に高密度で審美性に優れた青色の着色ジルコニアを提供するものである。
WO2007/108416号公報 特開平1−157462号公報 特開平2−154574号公報 特開平2−38363号公報 特開2006−98499号公報
従来の青色のジルコニア焼結体では、明度と色相のバランスが十分でなく、真珠調の光沢を有し高級な質感のあるジルコニアの特性を十分に生かした焼結体が得られていなかった。
本発明者等は、青色に着色したジルコニア焼結体について鋭意検討を重ねた結果、安定化剤としては安定化剤自身による着色への影響のない酸化イットリウムを2〜5モル%含有し、着色剤としてAl−Co−Zn、Zr−Si−Ni−Co又はAl−Si−Niの複合酸化物を2重量%以下、他の添加物としてはアルミナを0.5重量%未満含有する焼結体では、従来にはない明度と質感の高い高密度の青色のジルコニア焼結体が得られることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
以下に本発明の焼結体を詳細に説明する。
最初に、本発明における明青色(水色)の青色ジルコニア焼結体について説明する。
本発明の明青色の青色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Vが4〜6、色相Hが4B〜9B、彩度Cが3〜5であり、なおかつ焼結密度が6.02g/cm以上のジルコニア焼結体である。
マンセル表色系の色相HはR(赤)、Y(黄色)、G(緑)、B(青)、P(紫)の各基本色の色相とそれらの組み合わせの中間色を各10段階で表示する表色系である。マンセル表色系はL表色系に比べて色のイメージを掴みやすい表色系であり、主にデザイン分野で用いられており、本発明の焼結体の目的に適した表色系である。
本発明の明青色(水色)の青色ジルコニア焼結体におけるマンセル表色系における明度Vが4未満では暗く濁った質感となる。一方、V値が6を越えても白くぼやけた質感となる。明度Vは特に4.5〜5.5の範囲が好ましい。
本発明の明青色(水色)の青色ジルコニア焼結体におけるマンセル表色系の色相Hは4B〜9Bである。9Bを超えるとグレー味の濁った色調となり、4B未満では緑味の色調となる。
本発明の明青色(水色)の青色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系の彩度Cが3〜5であり、特に3.5〜5であることが好ましい。
本発明の明青色の青色ジルコニア焼結体は、表面光沢によって高級感を呈するため高密度であることが不可欠であり、焼結密度は6.02g/cm以上、特に6.03g/cm以上であることが好ましい。焼結密度が6.02g/cm未満では、見る角度によって光の反射にむらが生じ、高級感に欠けたものとなる。
本発明の明青色の青色ジルコニア焼結体は、L表色系における明度Lが50〜60、aが−8以上(好ましくは0〜―8)又は−15以下(好ましくは−15〜―20)、bが−10〜―15であることが好ましい。
本発明の明青色の青色ジルコニア焼結体は、L表色系における明度Lが50〜60である。明度Lが60を越えると白くぼやけた質感となり、50未満では暗く濁った質感となる。
本発明の明青色の青色ジルコニア焼結体は、L表色系におけるaが0〜―8又は−15〜−20の範囲が好ましく、特にaが−3〜―7、又は−15〜―18の範囲が特に好ましい。
ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアの他にもセリア等が知られているが、セリアはそれ自身がジルコニアを着色して色調へ影響するため、本発明の青色ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアを用いることが好ましい。イットリアの含有量は焼結体の強度と色調のバランスの観点から、2〜5モル%、特に2.5〜3.5モル%の範囲が好ましい。
本発明の青色ジルコニア焼結体の着色剤は特に限定はないが、例えばAl―Si―Niの複合酸化物、又はZr―Si(ジルコン)とNi及びCoの複合酸化物を0.3〜3重量%用いることが好ましく、特にこれらの複合酸化物を総量で0.5〜2重量%の範囲用いることが好ましい。複合酸化物が0.3重量%未満では着色が不十分で白けた色調となり、3重量%を超えると明度が低下し、また焼結密度も低下し易い。
本発明の青色ジルコニア焼結体に用いる添加物としては、色調に影響しないアルミナを0.5重量%以下、特に0.05〜0.3重量%添加することが好ましい。青系の着色ジルコニア焼結体において、アルミナが0.5重量%以上では、焼結体が白っぽい質感となり高級感が損なわれたものとなる。一方、アルミナを含有しない場合、大気中の常圧焼結において本発明の高密度を得ることが困難な場合があり、色調に影響しない範囲で最小限度のアルミナを添加することが好ましい。
次に本発明の重厚感のある濃青色の青色ジルコニア焼結体について説明する。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Vが2〜5、色相Hが3PB〜10PB、彩度Cが1〜15であり、なおかつ焼結密度が6.02g/cm以上の着色ジルコニア焼結体である。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系における明度Vが2未満では暗く濁った質感となり、V値は2以上、特に2.5以上であることが好ましい。一方、V値が5を越えると白くぼやけた質感となるため、V値は5以下、特に4.5以下が好ましい。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体は、マンセル表色系の色相Hが3PB〜10PBであり、特に4PB〜8PBの範囲が好ましい。10PBを超えると紫がかった色調となり質感に劣り、3PB未満では着色が薄すぎて白けた質感となる。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体のマンセル表色系の彩度Cは2〜15である。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体は、表面光沢によって高級感を呈するものであるため高密度であることが不可欠であり、焼結密度は6.02g/cm以上、特に6.05g/cm以上であることが好ましい。焼結密度が6.02g/cm未満では、見る角度によって光の反射にむらが生じ、真珠調の光沢にむらができ、高級感に欠けたものとなる。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体は、L表色系における明度Lが30〜55、aが0〜20、bが−5〜―55であることが好ましい。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体のL表色系における明度Lが30未満では、暗い質感となり、濃青色において55を越えるとやはり白くぼやけた質感となる。
本発明の焼結体は濃青色であるため、L表色系におけるaは0〜20、bが−5〜―55の範囲が好ましく、さらにaが2〜19、bが−9〜―53の範囲が好ましい。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体の安定化剤としてはイットリアの他にもセリア等が知られているが、セリアはそれ自身がジルコニアを着色して色調へ影響するため、イットリアを用いることが好ましい。イットリアの含有量は焼結体の強度と色調のバランスの観点から、2〜5モル%、特に2.5〜3.5モル%の範囲が好ましい。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体に用いる着色剤は特に限定はないが、例えばAl−Co−Zn、Zr−Si−Ni−Co又はAl−Si−Niの複合酸化物を総計で0.3〜3重量%以下、特に1〜2重量%の範囲が好ましい。これらの複合酸化物の添加量が0.3重量%未満では着色が不十分で白けた色調となり、3重量%を超えると明度が低下し、また焼結密度が低下し易い。
本発明の濃青色の青色ジルコニア焼結体に用いる添加物としては、色調に影響しないアルミナを0.5重量%以下、特に0.05〜0.3重量%添加することが好ましい。青色の着色ジルコニア焼結体において、アルミナが0.5重量%以上では、焼結体が白っぽい質感となり高級感が損なわれたものとなる。一方、アルミナを含有しない場合、大気中の常圧焼結において本発明の高密度を得ることが困難な場合があり、色調に影響しない範囲で最小限度のアルミナを添加することが好ましい。
本発明の焼結体の原料に用いるジルコニア粉末は特に限定されるものではないが、加水分解によって得られる焼結性の高い粉末を用いることが好ましい。
本発明の青色ジルコニア焼結体の製造方法は特に限定されるものではないが、上記の組成を成型(必要に応じてさらにCIP処理)し、大気中、常圧で1350〜1600℃、特に1400〜1500℃で焼結することができる。
本発明の青色ジルコニア焼結体は従来の様に特殊なHIP焼結をしなくても高密度で高級感のある焼結体を得ることができる。
本発明の青色ジルコニア焼結体は清涼感のある青色(水色)又は重厚感のある濃青色において明度と色調のバランスに特に優れたものであり、高級な質感を有し、ジルコニア本来の真珠調の光沢を有する着色ジルコニア焼結体である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(色相、明度、採度の測定)
本発明の焼結体のマンセル表色系における色相、明度、採度、並びにL表色系におけるL*、a*、b*は、色差計(カラーアナライザーTC−1800MK−II、東京電色社製)を用いてD65光源、10度視野角の条件において測定した。
(実施例1)
東ソー株式会社製のジルコニア粉末3YSE(酸化イットリウム3モル%、アルミナ0.25重量%)に、Al/SiO/NiO(重量比1:1:1の混合物の熱処理品)の複合酸化物を1重量%添加し、湿式混合により粉砕、混合後、乾燥した。混合粉末をメカニカルプレス(500kgf/cm)、CIP(2t/cm)により加圧成型し、大気中、1400℃(昇温速度100℃/時)で2時間焼結させた。焼結体は表面を研磨し、マンセル表色系、及びL表色系の測定を行った。
結果を表1に示す。HIP処理等の特別の焼結条件を用いることなく、清涼感のある鮮やかな明青色を呈する光沢のある焼結体が得られた。
(実施例2)
複合酸化物をZr―Si―Ni―Coの複合酸化物(日陶産業(株)製 NH−150)1重量%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
Al/SiO/NiO(重量比1:1:1の混合物の熱処理品)の複合酸化物を10重量%用いた以外は実施例1と同様の条件で焼結体を得た。
焼結体は青色を呈していたが、焼結密度が低いものであった。
Figure 0005521209
(実施例3)
複合酸化物をAl―Zn―Coの複合酸化物(日陶産業(株)製 NM−923)とし、添加量を2重量%とした以外は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
得られた焼結体は重厚感のある鮮やかな濃青色の焼結体であった。
(実施例4)
複合酸化物の添加料を0.4重量%とした以外は実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例3の複合酸化物を0.2重量%、さらにAl−Mn−Si系複合酸化物(日陶産業(株)製 M−460)を0.2重量%、Zr−Si−Pr系複合酸化物を(日陶産業(株)製 NP−40)0.4重量%添加した以外は実施例3と同じ処理を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
アルミナを20重量%含むジルコニア粉末(東ソー株式会社製 TZ3Y20A)を用いた以外は実施例3と同様の処理を行った。結果を表2に示す。
得られた焼結体は、焼結密度が低いものであった。
Figure 0005521209
本発明の青色ジルコニア焼結体は、高密度でなおかつ色相と明度のバランスに優れる高級な質感を有する審美性に優れた焼結体であり、装飾部品、電子機器材料の外装に用いることができる。

Claims (5)

  1. マンセル表色系における明度Vが4〜6、色相Hが4B〜9B、彩度Cが3〜5であり、なおかつ焼結密度が6.02g/cm以上である明青色ジルコニア焼結体。
  2. 表色系における明度Lが50〜60、aが0〜―8、bが−10〜―15である請求項1に記載の青色ジルコニア焼結体。
  3. 表色系における明度Lが50〜60、aが−15〜―20、bが−10〜―15である請求項1に記載の青色ジルコニア焼結体。
  4. 安定化剤としてYを2〜5モル%、Al、Si及びNi複合酸化物を0.5〜3重量%、Alを0.5重量%未満含んでなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の青色ジルコニア焼結体。
  5. 安定化剤としてYを2〜5モル%、Zr、Si、Ni及びCoの複合酸化物を0.3〜3重量%、Alを0.5重量%未満含んでなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の青色ジルコニア焼結体。
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