JP5404727B2 - 差動装置によるシール構造 - Google Patents
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Description
図6の(a)に示すように、差動装置100は、エンジンの回転駆動力がトルクコンバータおよび変速装置を介して入力されるピニオンギヤ101と、このピニオンギヤ101に噛み合う左右のサイドギヤ102と、を備えており、ピニオンギヤ101およびサイドギヤ102は、中空状に形成されたデフケース104内に収納されている。
そのため、左右のドライブシャフト109が取り付けられていない自動変速機単体としての完成時には、ケース107の挿通穴108が封止されていないので、ケース107内に作動油を封入できないようになっている。
さらに、オフライン工場での左右のドライブシャフト109の組み付け後に、ケース107内への作動油の再供給が必要となっていた。
図6の(b)に示すように、特許文献1の差動装置100’では、サイドギヤ102’の軸部103’を軸方向に延長して、軸部103’の外周とケース107の挿通穴108との間にシール110を設けることで、左右のドライブシャフト109を組み付けていない状態において、作動油をケース107内に封入できるようにされている。
デフケース104には、当該デフケース104の内部と外部とを連通させる開口(図示せず)が設けられており、軸部103が短い従来のサイドギヤ102の場合には、デフケース104の開口からサイドギヤ102をデフケース104内に収装していた。
しかし、軸方向に延長されたサイドギヤ102’の場合には、サイドギヤ102’を、デフケース104の開口からデフケース104内に収装できないため、特許文献1の差動装置100’の場合には、デフケース104をドライブシャフト109の軸方向で分割して、ケース部105とカバー部106とし、カバー部106にサイドギヤ102を組み付けた後にケース部105をカバー部106にボルトBで組み付ける構成のデフケース104、すなわち二部品からなるデフケースを採用している。
そのため、デフケース104の大型化によるデフケース104の重量の増加と、サイドギヤ102’の大型化による重量増加とにより、差動装置100’全体の重量が増加してしまう。
デフケース内でドライブシャフトの軸方向からサイドギヤに連結される円筒状のスリーブを、デフケースから突出して挿通穴に及ぶ長さで形成し、挿通穴に、スリーブの外周に圧接するシールを設け、
スリーブとサイドギヤとの連結部において、スリーブからサイドギヤ側に延びるスリーブ側の係合部と、サイドギヤからスリーブ側に延びるサイドギヤ側の係合部とを、ドライブシャフトの径方向で重なる位置関係で設けると共に、
スリーブ側の係合部と、サイドギヤ側の係合部に、それぞれ、サイドギヤ側の係合部側に突出するスリーブ側突部と、スリーブ側の係合部側に突出するサイドギヤ側突部とを設けて、
スリーブとサイドギヤの軸方向における互いに離れる方向への移動を、互いに係合させたスリーブ側突部とサイドギヤ側突部により規制した構成の差動装置によるシール構造とした。
よって、サイドギヤをデフケース内にセットするために、デフケースを二部品から構成して分割可能にする必要がなく、一部品からなるデフケースの開口部からサイドギヤをセットすることができるので、デフケースの大型化を防ぐことができる。
図1は、実施の形態にかかる差動装置1の構成を説明する断面図である。
図2は、図1における領域Aの拡大図である。
デフケース2は、サイドギヤ7の回転中心軸Xに直交する方向(回転中心軸Xから見て径方向外側)に延びるフランジ部21を有しており、このフランジ部21にはファイナルギヤFがボルトBで固定されている。
実施の形態にかかる差動装置1では、エンジンの回転駆動力が、変速装置(図示せず)を介してファイナルギヤFに入力されると、ファイナルギヤFとデフケース2とが、回転中心軸X周りに一体に回転し、この回転が、デフケース2内のピニオンギヤ5およびサイドギヤ7を介して、ドライブシャフト9に伝達されるようになっている。
ピニオンシャフト6の一端6a側は、ピンPでデフケース2に固定されており、ピニオンシャフト6の軸Y周りの自転が、ピンPにより禁止されている。
ピニオンギヤ5は、軸Yの軸方向に間隔を空けて2つ設けられており、回転中心軸Xの軸方向におけるピニオンギヤ5の両側には、サイドギヤ7が位置している。
サイドギヤ7は、回転中心軸Xの軸方向に間隔を空けて2つ設けられており、ピニオンギヤ5とサイドギヤ7とは、互いの歯部52、72を噛合させた状態で組み付けられている。
なお、この図2では、ドライブシャフト9の回転中心軸Xよりも下側の部分の図示を省略して、サイドギヤ7およびスリーブ30の内周面を表している。
貫通穴73は、回転中心軸Xに沿って設けられており、ギヤ部71側の端部には、軸部75側よりも大きい内径の拡径部74が設けられている。拡径部74には、キャップ形状の封止部材20が内嵌して取り付けられている。
なお、この封止部材20は、サイドギヤ7の拡径部74と一体に形成されていても良い。
実施の形態では、デフケース2から突出するスリーブ30と挿通穴3aに設けたシール10により、デフハウジング3の空間S内の潤滑油が挿通穴3aを通ってデフハウジング3の外部に漏出することを防止している。
スリーブ側係合部31とサイドギヤ側係合部76は、回転中心軸Xから見て径方向で互いに重なるように設けられており、スリーブ側係合部31のほうが、サイドギヤ側係合部76よりも径方向内側に位置している。
貫通穴73の内周面においてスプライン73aは、回転中心軸Xの軸方向に沿って形成されると共に、回転中心軸X周りの全周に亘って設けられている。
スプライン73aを、スリーブ30と軸部75との連結部から軸方向にオフセットさせた位置に形成することより、捩り応力に対する強度の低下を防止している。
このOリング34は、スリーブ30および軸部75の内径側に潤滑油が漏出した場合に、かかる潤滑油がデフハウジング3の外部に漏出することを阻止するために設けられている。
図3は、スリーブ30の組付けを説明する図であり、(a)は、スリーブ30を、デフハウジング3の挿通穴3aに挿入する前の状態を示す図であり、(b)は、スリーブ30のスリーブ側係合部31と、軸部75のサイドギヤ側係合部76とが係合し始めた状態を示す図であり、(c)は、スリーブ30のスリーブ側係合部31と、軸部75のサイドギヤ側係合部76とを互いに係合したのちに、シール10を配置した状態を示す図である。
図4は、ドライブシャフト9の組付けを説明する図であり、(a)は、ドライブシャフト9を、デフハウジング3の挿通穴3aに挿入する前の状態を示す図であり、(b)は、ドライブシャフト9とサイドギヤ7とをスプライン嵌合させた状態を示す図である。
この際、スリーブ30のスリーブ側係合部31と、軸部75のサイドギヤ側係合部76とが互いに係合する位置までスリーブ30を挿入して、スリーブ30とサイドギヤ7の軸部75とを互いに連結する。
そして、スリーブ側係合部31の係合突部31aが、サイドギヤ側係合部76の係合突部76aを乗り越えた時点で、係合突部31aがその復元力により径方向外側に変位して、スリーブ30と軸部75とが、互いの係合突部31a、76a同士を係合させた状態で連結される(図3の(c)参照)。
この図3の(c)の状態が、自動変速機単体としての完成状態となるので、完成検査後に、ドライブシャフト9を取り外しても、デフハウジング3内に充填された作動油を除去する必要がない。
これにより、ドライブシャフト9とサイドギヤ7とがスプライン嵌合された状態となる(図4(b)参照)。
そのため、係合突部31aと係合突部76aとの係合を解除させる方向(回転中心軸Xに直交する方向)に係合突部31aと係合突部76aを移動させることができない状態で、スリーブ30とサイドギヤ7(軸部75)とが連結されることになる。
よって、差動装置1を備える自動変速機が車両に搭載された状態において、スリーブ30のデフケース2からの脱落(抜け)が好適に防止される。
さらに、サイドギヤ7とは別体に設けたスリーブ30を採用することで、サイドギヤ7を小型化できるので、サイドギヤ7をデフケース2内にセットするために、デフケース2を二部品から構成して分割可能にする必要がなく、一部品からなるデフケースの開口部からサイドギヤ7をセットすることができるので、デフケースの大型化を防ぐことができる。
そして、一部品からなるデフケースを採用できるので、部品点数を減らすことができ、二部品からなるデフケースの場合に必要であったケースの組付け作業が不要となるので、作製コストの低減に寄与することになる。
さらに、デフケースの締結が不要になるので、フランジを薄くしてデフケースの重量低減が可能となる。これにサイドギヤの小型化による重量低減が寄与するので、自動変速機(差動装置)全体としての重量を低減させることができる。
以上より、ドライブシャフトが取り付けられていない状態にでも、ケースの密閉性を確保できるクローズタイプの差動装置を安価に作成できる。
さらに、接着剤により、スリーブ側係合部31とサイドギヤ側係合部76の接合面が封止されるので、この接合面を通って、デフケース2内の潤滑油が、スリーブ30および軸部75の内径側に漏出し、さらにデフハウジング3の外部に漏出することを好適に防止できる。
スリーブ側係合部31が内径側に位置していると、スリーブ側係合部31が僅かに内径側にずれても、ドライブシャフト9がスリーブ側係合部31に引っ掛かる虞がないので、ドライブシャフト9の軸部75内への挿入が阻害されることがない。
スリーブ30とサイドギヤ7との連結部を、スプライン嵌合部よりも手前側(ドライブシャフト9の基端側)に位置させると、サイドギヤ7(軸部75)におけるスプライン73aを形成する部分の径方向厚みを確保することができるので、サイドギヤ7(軸部75)の捩り応力に対する強度を確保することができる。
なお、スリーブ30とデフケース2(支持軸部22)は、左右のドライブシャフト9が差動回転する場合に相対回転し、差動回転しない場合には、略一体に回転中心軸X周りに回転する。そのため、スリーブ30を樹脂材料から構成しても、スリーブ30の耐摩耗性が問題になることがない。
このようにすることによっても、前記した実施の形態と同様の作用効果が奏されることになる。
このスリーブ40は、その長手方向における一端が、デフケース2の支持軸部22から突出して、デフハウジング3の挿通穴3a内に及ぶと共に、他端に位置するスリーブ側係合部41が、サイドギヤ7のギヤ部71内径側に及ぶ長さL4で形成されている。
これにより、スプライン嵌合部における径方向の厚みを確保して、捩り応力に対する強度が確保されている。
よって、サイドギヤ7をデフケース2内にセットするために、デフケース2を二部品から構成して分割可能にする必要がなく、一部品からなるデフケースの開口部からサイドギヤ7をセットすることができるので、デフケースの大型化を防ぐことができる。
2 デフケース
3 デフハウジング
4 ベアリング
5 ピニオンギヤ
6 ピニオンシャフト
7 サイドギヤ
9 ドライブシャフト
10 シール
20 封止部材
21 フランジ部
22 支持軸部
30 スリーブ
31 スリーブ側係合部
31a 係合突部
32 貫通穴
33 凹溝
34 Oリング
40 スリーブ
41 スリーブ側係合部
42 貫通穴
45 スプライン
70 サイドギヤ
71 ギヤ部
73 貫通穴
73a スプライン
74 拡径部
75 軸部
75a 端面
76 サイドギヤ側係合部
76a 係合突部
B ボルト
F ファイナルギヤ
P ピン
X 回転中心軸
Claims (5)
- 車両における左右のドライブシャフトの挿通穴を有する自動変速機のケース内で、差動装置の一部品で構成されたデフケースが回転可能に支持されており、
前記挿通穴を挿通させた前記左右のドライブシャフトが、前記デフケース内で左右のサイドギヤにそれぞれ嵌合するように構成された自動変速機において、
前記デフケース内で前記ドライブシャフトの軸方向から前記サイドギヤに連結される円筒状のスリーブを、前記デフケースから突出して前記挿通穴に及ぶ長さで形成し、
前記挿通穴に、前記スリーブの外周に圧接するシールを設け、
前記スリーブと前記サイドギヤとの連結部において、前記スリーブから前記サイドギヤ側に延びるスリーブ側の係合部と、前記サイドギヤから前記スリーブ側に延びるサイドギヤ側の係合部とを、前記ドライブシャフトの径方向で重なる位置関係で設けると共に、
前記スリーブ側の係合部と、前記サイドギヤ側の係合部に、それぞれ、前記サイドギヤ側の係合部側に突出するスリーブ側突部と、前記スリーブ側の係合部側に突出するサイドギヤ側突部とを設けて、
前記スリーブと前記サイドギヤの前記軸方向における互いに離れる方向への移動を、互いに係合させた前記スリーブ側突部と前記サイドギヤ側突部により規制したことを特徴とする差動装置によるシール構造。 - 前記スリーブ側の係合部とサイドギヤ側の係合部の接合面に、接着剤を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の差動装置によるシール構造。
- 前記デフケースは、前記サイドギヤを回転可能に支持する筒状の支持部を備えており、
前記支持部を、前記連結部の径方向外側に位置させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の差動装置によるシール構造。 - 前記ドライブシャフトと前記サイドギヤとがスプライン嵌合するように構成され、
前記スリーブは、前記連結部を、前記ドライブシャフトと前記サイドギヤとのスプライン嵌合部よりも、前記ドライブシャフトの前記挿通方向における手前側に位置させる長さで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の差動装置によるシール構造。 - 前記ドライブシャフトと前記スリーブとがスプライン嵌合するように構成され、
前記スリーブは、前記サイドギヤとの連結部を、前記ドライブシャフトとのスプライン嵌合部よりも、前記ドライブシャフトの前記挿通方向における奥側に位置させる長さで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の差動装置によるシール構造。
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