JP5403501B2 - 強誘電体膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、強誘電体膜や圧電膜を製造する方法と、成膜に適した成膜装置に関する。
直流放電によって高密度のプラズマを発生しつつも、陰極近傍を不活性ガスの高い圧力で保護し、プラズマ中のイオン衝突による陰極損傷を防止した圧力勾配型のプラズマガンをアシスト源に利用した成膜装置が、例えば特許文献1および特許文献2に記載されている。この装置では、圧力勾配を作るため、ならびに、陰極と陽極との電位勾配を緩やかにするために第一および第二の中間電極を配置している。これら、陰極、第一中間電極(G1)、第二中間電極(G2)、および陽極からなるプラズマガンにArガスを導入することによってアーク放電由来の高密度プラズマを形成する。
アーク放電を利用したプラズマ源はホローカソード方式等数多く提案されてきたが、熱陰極の損傷が激しく短寿命という問題があった。そこで陰極と陽極の間に中間電極を入れることにより、陰極領域を10Pa前後、陽極領域を0.1Pa前後に保つ圧力勾配を生じさせた圧力勾配型放電のプラズマ源が提案されている。圧力勾配型放電のプラズマ源は、陰極領域でのイオンの平均自由工程が極めて短いので、陽極領域からのイオン逆流衝突による陰極の損傷を避けることができる。これにより、陰極を物理的損傷(イオン逆流衝突と陰極材料の熱的寿命)から保護することができ、長時間安定に成膜アシスト源として使うことができる。また、陽極側に化学的活性化気体(O、N等)を導入して混合プラズマを作る場合にも、陰極領域の不活性気体の圧力が陽極領域より10倍程度高いので、陽極側の化学的活性気体による陰極の化学的損傷を避けることができる。
このプラズマ源を利用して、多くの金属、誘電体の蒸発または蒸発原料の活性化がなされ、すぐれた薄膜を形成することが報告されている。特に陽極を成膜室の外側に配置して、プラズマ中の電子が形成する空間電荷によって電子を反射させることにより、成膜室内にプラズマのみを発生させて電子流を流さない反射型プラズマ源は、多くの酸化物や窒化物の成膜アシスト源として優れた効果を示すことが報告されている。ペロブスカイト型酸化物であるPZT(Pb(ZrTi1−x)O)等に代表される強誘電体や圧電体の薄膜については、特許文献1や特許文献2等により比較的低い成膜温度で結晶性の良い優れた薄膜が得られることが報告されている。
また、特許文献3には、プラズマ源のキャリアガスとしてHeガスを用いることにより、Arガスを用いた場合と比較して酸素ガスのプラズマを効率よく生じさせることができると記載されている。
特開2001−234331号公報 特開2002−177765号公報 特開平2−265150号公報
特許文献1および2は、キャリアガスとしてArガスを用い、Arガスのアーク放電プラズマに酸素ガスを導入して混合プラズマを発生させ、ペロブスカイト型酸化物の薄膜形成のアシスト源として用いている。しかしながら、Arと酸素は、電離電圧がそれぞれ15.8V、12.2Vと比較的値が近いために、プラズマガンの放電電流を増大させてもそのエネルギーは、Arと酸素に分割されて供給され、酸素プラズマから励起される酸素ラジカル濃度がそれほど増加しない。そのためにアシスト源としては、酸素ラジカルの活性化力に限界があり、成膜速度が5オングストローム/s程度に律速されていた。例えば、強誘電体や圧電体で多く見られるペロブスカイト型の酸化物、たとえばPZTのような薄膜を形成する場合、活性な酸素ラジカルの量が多くないと結晶性が悪かったり、パイロクロア相等の異相が混入したりして、良好な膜質が得られない。このため、圧電定数の最も高い組成範囲のPZT薄膜を形成するのは容易ではなかった。
また、Arガスは放電電圧が60V台とあまり高くないため、プラズマが成膜室内で減衰しやすく、大型の成膜装置においては成膜エリア全体を1つのプラズマガンではカバーできないという問題も生じていた。電子加速型のプラズマガン配置によって到達距離を伸ばすことは可能だが、プラズマの電子温度の上昇を招き、膜ダメージが増大するという副作用が生じる。
一方、特許文献3に提案されているようにAr(15.8V)よりも電離電圧の高いHe(24.6V)を放電ガスとして用いると、酸素(O)ガスの電離電圧12.2Vの約2倍となるため、酸素ガスにHeガスの約2倍のエネルギーを供給でき、高密度の酸素プラズマが得られやすい。また、Heガスの電離能率は最大1イオン対/cm程度であるが、Oガスでは最大10イオン対/cm程度であり、Oガスの1/10の電離能率しかない。このため、HeガスとOガスが同程度の圧力ならば、Heガスの電離作用はOガスの約1/10となるので、混合プラズマ中におけるOプラズマ密度をキャリアガスであるHeプラズマ密度よりも著しく高くすることができると期待できる。しかしながら、電離電圧の高いHeガスは、安定して放電を維持するのが難しく、実際の成膜に適用することが困難であった。
本発明の目的は、圧電効果の大きな組成範囲の強誘電体膜を備えた素子を効率よく製造することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば以下のような強誘電体膜の製造方法が提供される。すなわち、圧力勾配型プラズマガンを用いてHeガスと酸素ガスの混合プラズマを発生させ、この混合プラズマ中の酸素ラジカルにより成膜材料を酸化させる強誘電体膜の製造方法である。放電ガスとしてHeを用いることにより高濃度の酸素ラジカルを発生させることができるため、圧電効果の大きな組成範囲の強誘電体膜を成膜することが可能になる。
上記強誘電体膜として鉛含有のペロブスカイト型酸化物を製造することができる。組成はPb(ZrTi1−x)Oである場合、x>0.4が達成できる。放電ガスとしてHeを用いることにより、酸素ラジカル量が増加するため、従来成膜が容易ではなかったx>0.4の組成の膜を高効率で成膜できるからである。
上記成膜に用いる圧力勾配型プラズマガンとして、陰極と、第1、第2及び第3の中間電極と、陽極とを備えた反射型のプラズマガンを用いることが好ましい。第1、第2および第3の中間電極の電位を陰極の電位よりも順次高くなるように設定し、かつ、第3の中間電極の電位を、成膜対象である基板が配置される真空容器の電位よりも低く設定することにより、Heガスを放電ガスとして用いた場合でも安定した放電を維持することができる。
圧力勾配型プラズマガンの放電電圧は100V以上150V以下、放電電流は50A以上100A以下、成膜速度1nm/s以上2nm/s以下、混合プラズマが生じている空間の圧力が0.1Pa以上0.2Pa以下に設定できる。
また、本発明の第2の態様によれば以下のような圧電膜を用いた素子の製造方法が提供される。すなわち、圧力勾配型プラズマガンを用いてHeガスと酸素ガスの混合プラズマを発生させ、この混合プラズマ中の酸素ラジカルにより成膜材料を酸化させ圧電膜を成膜する方法である。放電ガスとしてHeを用いることにより高濃度の酸素ラジカルを発生させることができるため、圧電効果の大きな組成範囲の圧電膜を成膜することが可能になる。
上記圧電膜として、鉛含有のペロブスカイト型酸化物が形成でき、組成がPb(ZrTi1−x)Oで、x>0.4である膜を効率よく製造することができる。
また、本発明の第3の態様によれば以下のような成膜装置が提供される。すなわち、基板と成膜材料が配置される真空容器と、真空容器に接続された圧力勾配型プラズマガンとを有する成膜装置である。圧力勾配型プラズマガンは、陰極と、第1、第2及び第3の中間電極と、陽極とを備えた反射型のプラズマガンであり、第1、第2および第3の中間電極の電位は、陰極電位よりも順次高く、かつ、第3の中間電極の電位は真空容器の電位よりも低くなるように電気回路が構成されている。このように電位が設定された第3中間電極を備えたプラズマガンを用いることにより、放電ガスとしてHeガスを用いた場合でも安定放電を維持できる。よって、Heガスと酸素ガスとの混合プラズマを安定して発生させることができ、Arガス等を用いた場合よりも高濃度の酸素ラジカルを発生させることができる。
本発明では、放電ガスとしてHeガスを用いることにより、Arガスを用いた場合と比較して、電離電圧の作用と電離能率の作用の相乗効果により、Arガスを用いた場合よりも著しく高密度の酸素プラズマを期待することができる。これにより、従来成膜するのが容易ではなかった組成範囲の強誘電体膜や圧電膜を効率よく成膜することができる。
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態のアーク放電イオンプレーティング装置について図1を用いて説明する。
アーク放電イオンプレーティング装置は、電子流を反射させる反射型でかつ圧力勾配型のプラズマガン10を備えている。
真空容器11内には、成膜すべき基板14を支持する基板ホルダー13が配置されている。基板ホルダー13内には基板14を加熱するためのヒーターが内蔵されている。真空容器11内の基板14に対向する位置には、蒸発源12が配置される。図1には図示していないが、真空容器11内には、蒸発源12に電子ビームを照射する電子ビームガンが備えられている。また、基板14と蒸発源12との間の空間に反応ガスを供給するための反応ガス導入管15が配置されている。
真空容器11の側面にはプラズマガン10が備えられている。プラズマガン10は、図2に示すように筒状のプラズマガン容器103に、陰極1、第1中間電極2、第2中間電極3、第3中間電極7、陽極4、フランジ6をプラズマ引き出し軸101に沿って順に配置した構造である。陰極1、第1中間電極2、第2中間電極3、第3中間電極7、陽極4は不図示のガイシによって相互に絶縁されている。陽極4の外周側には、プラズマをガイドするための空芯コイル5が配置されている。
陰極1は、アーク放電に適した公知の陰極構造のものを用いる。陰極1には放電ガスの導入口102が備えられている。第1、第2及び第3中間電極2,3および7は、いずれも中央に所定の径の貫通孔を有しており、この貫通孔によってプラズマガン容器103の圧力を真空容器11よりも陽圧に維持し、圧力勾配を形成する。第1、第2および第3中間電極2,3および7には、生じたプラズマを収束させて貫通孔を通過させるための磁場を発生する永久磁石または電磁石が必要に応じて内蔵されている。フランジ6は、プラズマガン10を真空容器11に連結する。
プラズマ発生のための電気配線は、図1に示されるように、陰極1と陽極4との間に直流電源を設け、第1、第2および第3の中間電極2、3、7は適切な抵抗値の抵抗を介して陽極4を接続した構成である。陰極1から適切な流量の放電ガスを流して、直流電源により陰極1と陽極4間に電圧を印加することにより、陰極1と陽極4間及び真空容器11内に直流アーク放電プラズマを発生させることができる。
従来のプラズマガンでは中間電極は二つであるが、本実施形態のプラズマガン10では3つの中間電極を備えている。第3中間電極7は第2中間電極3と陽極4との間に設置され、第3中間電極7の電位(G3)が、図3に示したように第2中間電極3の電位(G2)と陽極4の電位の中間電位であって、真空容器11の電位よりも低くになるように設定されている。具体的には、ここでは真空容器11は接地電位にしているので、第3中間電極7の電位は、第2中間電極3の電位(G2)と接地電位との間の電位に設定する。第3中間電極7の電位(G3)の設定は、接地電位との間に適切な抵抗値のホーロー抵抗を入れることにより行う。
プラズマガン10は、陽極4を真空容器11の手前に配置した反射型の構成であるため、プラズマガン10から真空容器11内に導かれた直流アーク放電プラズマ中の電子は空間電荷によって反射されて陽極4に戻る。よって、真空容器11内にはプラズマ105のみが発生し、電子電流が空間を流れないため、プラズマ105が、ガイド用の空芯コイル5が形成する磁場が影響を受けない。これにより、非常に均質なプラズマ105を真空容器11内に発生させることができる。
図1の装置を用いて成膜を行う手順を、ペロブスカイト型酸化物で強誘電体および圧電体の特性を示すチタン酸ジルコン酸鉛(PZT: Pb(ZrTi1−x)O)薄膜の形成を実施する場合を例に説明する。
蒸発源12の材料として、Pb,Zr,Tiの各金属を用い、電子ビーム加熱により各々独立に蒸発させる。各金属の蒸発量は、水晶振動式膜厚センサ等によってモニタし、電子ビーム加熱源の出力をフィードバック制御することにより、所定の蒸発量で一定に制御する。これにより膜組成を例えばx=0.52(Pb(ZrTi1−x)O)に調製した。基板14は、例えば(100)面Siウエハ上にSiO/Ti/Ptの順に各構成材料を堆積したものを用いる。
圧力勾配型アーク放電プラズマガン10に所定流量(例えば100sccm)のHeガスを放電ガスとして導入し、直流バイアス電圧を印加することにより、アーク放電を発生させる。放電電圧は、所定値(例えば120V、放電電流70A)に制御する。このアーク放電で生成したHeプラズマ(プラズマ密度1012cm−3以上)を、プラズマ制御用の空芯コイル5によって生じさせた磁場(例えば300ガウス程度)によって真空容器11内に導く。
この状態で、ガス導入管15よりOガスを反応ガスとして250sccm導入することにより、真空容器11内にHeと酸素の混合プラズマが形成される。このとき酸素プラズマの密度は高密度であり、これにより高濃度の酸素ラジカルが生成される。
基板ホルダー13に内蔵されたヒーターにより、所定温度(例えば550℃程度)に加熱した基板14に向け、蒸発源12から原料金属を電子ビーム加熱蒸発させる。各原料金属蒸気は、混合プラズマを通過することにより酸素ラジカルとを反応し、酸化されながら基板上に堆積する。これにより、PZT膜が堆積される。成膜時の真空容器11の圧力は所定圧力(例えば0.1Pa)に設定する。
このとき、Pb蒸発量がZrとTiの蒸発量の合計に対して2〜5倍の範囲になるように、かつZrとTiの蒸発量がほぼ同等になるように、蒸発源12の出力を制御することにより、ペロブスカイト型結晶構造単相のPZT膜を形成することができる。
上述してきたように本実施形態では放電ガスとしてHeガスを用いる。Heガスは、電離電圧が24.6Vであり、酸素(O)ガスの電離電圧12.2Vの約2倍となり、酸素ガスにHeガスの約2倍のエネルギーを供給できる。このため、放電ガスとしてAr(15.8V)を用いた場合よりも高密度の酸素プラズマが得られる。
また、Heガスの電離能率は最大1イオン対/cm程度、Oガスでは最大10イオン対/cm程度であり、HeガスはOガスの1/10の電離能率しかない。このため、HeガスとOガスが同程度の圧力ならば、Heガスの電離作用はOガスの約1/10となるので、混合プラズマ中におけるOプラズマ密度をHeプラズマ密度よりも著しく高くすることが容易である。これに対し、放電ガスとしてArガスを用いた場合は、Arガスの電離能率が最大12イオン対/cm程度であるので、Oガスの電離能率(最大10イオン対/cm程度)と同等以上であり、混合プラズマ中におけるOプラズマ密度はArプラズマ密度の同等以下にしかできない。
すなわち、放電ガスとしてHeガスを用いることにより、Arガスを用いた場合と比較して、電離電圧の作用と、電離能率の作用の相乗効果により、Arガスを用いた場合よりも著しく高密度の酸素プラズマを期待することができる。
このように、本実施形態では、放電ガスとしてHeを用いることにより、Arを用いた場合と比較して著しく高密度の酸素プラズマが得られるため、ペロブスカイト酸化物薄膜のように高濃度の酸素ラジカル濃度が必要な膜を形成することが可能である。
また、Heガスの電離電圧(24.6V)が、Arガス(15.8 V)よりも高いことは、アーク放電の放電電圧も高くなることを意味する。この結果、発生するプラズマのエネルギーが高くなり、真空容器11内においてプラズマガン10からより遠い位置までプラズマが到達できるようになる。また、HeはArと比較して原子量が小さく慣性力が小さいので、成膜室全体に均質にプラズマが拡がることができる。その結果、生産性に優れた大型の成膜装置においても成膜エリア全体を1つのプラズマガン10でカバーすることが容易になる。
このとき、電離電圧の高いHeガスは安定して放電を維持するのが難しいが、本実施形態では第3中間電極7を配置し、その電位を図3のように設定したことにより、安定放電が可能である。
本実施形態では放電ガスとしてHeガスを用いることにより、真空容器11内の酸素ラジカル量をArガス放電の時の例えば5倍以上に増大させることができ、高品位の酸化物薄膜を高速に形成することが可能である。実際、同じ酸素導入量で、プラズマ発光スペクトル(OES)測定によって、Heガス放電とArガス放電の酸素ラジカル量を測定したところ、図4に示すようにHeガス放電ではArガス放電の約5倍の酸素ラジカル濃度が得られることがわかった。
この酸素ラジカル濃度の増大により、原料金属(蒸発源12)の蒸発速度を増大させてもペロブスカイト単相膜が得られるようになり、ペロブスカイト酸化物薄膜としての成膜速度を2倍以上増大することができる。これにより、PZT等のペロブスカイト型酸化物圧電体の成膜を行うことができる。
また、発明者らの実験によると、Arガスを放電ガスとした場合には、図5のようにxの組成値を約0.43以上にすることは困難であったが、Heガスを放電ガスとすることにより、酸素ラジカル量を増加させることができるため、PZT(Pb(Ti1−xZr)O)の組成において、xの組成値を0.42より大きくすることができる。よって、比誘電率および圧電定数(d31)が極大値を取る0.52前後のPZTを得ることができる。
また、Heガスは放電電圧が高いのでプラズマが遠くまで届く一方、電離能率は酸素の約1/10と小さいので、酸素との混合プラズマでは成膜エリア付近のプラズマは酸素プラズマがほとんどを占めており、Heイオンが膜への衝突することにより生じるダメージは少ない。実際、ラングミュアプローブ測定によってプラズマの電子温度を評価すると2〜3eVと低く、膜へのダメージが少ないエネルギーレベルになっていた。よって、Heと酸素の混合プラズマを用いることにより、膜に損傷を及ぼす高エネルギー荷電粒子を抑制しつつ薄膜成長に効果的な酸素ラジカル量を増大させることができるため、従来の2倍以上(例えば1 nm/s以上)の成膜速度で、圧電体薄膜を成長させることが可能である。
本発明によるHe放電プラズマを安定に発生・維持できる第三中間電極を導入した圧力勾配型プラズマガン10を反射型の配置でアシスト源として利用するイオンプレーティング装置は、PZT等のペロブスカイト型圧電体および強誘電体酸化物の膜形成に極めて有効であり、高速、大面積で緻密で結晶性が良く、しかも電気特性に優れた圧電体・強誘電体薄膜を形成することができる。特に、大量の酸素ラジカルを必要とするペロブスカイト型酸化物、例えばPZT、の薄膜を高速にしかも大面積で成膜することが可能である。
本発明の効果をまとめて例示すると以下のようになる。(1)電離電圧の高いガスでも長時間に渡り安定して放電を維持できる。(2)電離電圧の高いガスを放電維持できると陰極と陽極間の放電電圧が高くなるため、チャンバー内により高密度のプラズマを発生させることができる。(3)電離電圧の高いガスを放電維持できると陰極と陽極間の放電電圧が高くなるため、チャンバー内のプラズマ発生装置よりも遠い位置においても、より高密度のプラズマを発生させることができる。(4)He、H等の軽元素を放電ガスに使えるため、成膜において、形成中の膜へのイオン衝突によるダメージを少なくすることができる。(5)Heを放電ガスとして用いることにより、混合プラズマ中の酸素ラジカル量を増大させることができる。その結果、ペロブスカイト酸化物圧電体の成膜速度を従来の2倍以上にできる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態としてPZT膜を圧電膜として用いた2次元光スキャナについて説明する。図6は第2実施形態に係る2次元光スキャナ(光偏向器)の構成を示す平面図である。空隙(空洞部)611’を持つシリコン製の支持基板(支持体)611の内側に、可動部分として枠状に形成した内部可動枠63と、内部可動枠63の内側に空隙63’を空けて形成された方形状のミラー部61が備えられている。ミラー部61は反射膜62を有する。ミラー部61は、一対の第1のトーションバー64a、64bを介して内部可動枠63に弾性的に支持されている。第1のトーションバー64a、64bを挟む形で直角に屈曲したバー65a〜65dが配置され、バー65a〜65bには第1の振動板66a〜66dが配置されている。
また、内部可動枠3は、第1のトーションバー64a、64bと直交する方向に軸方向を有する第2のトーションバー612a、612bを介して、支持基板11に弾性的に支持されている。第2のトーションバー612a、612bを挟む形で屈曲したバー613a〜613dが配置され、バー613a〜613dには、第2の振動板614a〜614dが配置されている。第1の振動板66a〜66dおよび第2の振動614a〜614dは、いずれも圧電膜を上下から電極膜によって挟んだ構成である。圧電膜は、PZT膜を用いることができる。
上下の電極膜から圧電膜に電圧を印加することにより、第1の振動板66a〜66d、第2の振動板614a〜614dは基板611の厚み方向に変位し、これに伴ってミラー部1は、トーションバー64a、64b、612a、612bを軸として回転変位し、2次元方向に光を偏向することができる。
図6の2次元スキャナーを製造する方法を簡単に説明する。基板611には第1の振動板66a〜66d、第2の振動板614a〜614dを構成するPZT膜と電極膜とをアーク放電プラズマを利用した反応性イオンプレーティング法により成膜する。成膜方法としては、第1の実施形態の方法を用いる。その後、フォトリソグラフィとエッチングの手法により、PZT膜と電極膜とを図6の形状に加工する。最後に、エッチングにより空隙63’、611’を形成する。
本実施形態ではPZT膜として比誘電率の大きな組成の単相膜を効率よく製造することができるため、小さな電圧で大きな偏向角を実現可能な2次元光スキャナを得ることができる。
なお、圧電膜を備えた素子は2次元光スキャナに限定されるものではなく、他の素子に適用することももちろん可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。
上述の図1の反射型圧力勾配型アーク放電イオンプレーティング装置を用いて、ペロブスカイト型酸化物で強誘電体および圧電体の特性を示すチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(ZrTi1−x)O)薄膜の形成を実施した。
蒸発源12の材料として、Pb,Zr,Tiの各金属を用い、電子ビーム加熱により各々独立に蒸発させた。各金属の蒸発量は水晶振動式膜厚センサによってモニタし、電子ビーム加熱源の出力をフィードバック制御することにより、所定の蒸発量で一定に制御した。膜組成をx=0.52、すなわちPb(Zr0.52Ti0.48)Oに調製した。
基板14は(100)面Siウエハ上にSiO/Ti/Ptの順に各構成材料を堆積したものを用いた。そして、圧力勾配型アーク放電プラズマガン10に100sccmのHeガスをキャリアガスとして導入し、直流バイアス電圧を印加することにより、アーク放電を発生させた。放電電圧は120V、放電電流は70Aで制御した。このアーク放電で生成した高密度プラズマ(プラズマ密度>1012cm−3)をプラズマ制御用の磁場発生源6によって生じた300ガウス程度の磁場によって真空容器11内に導いた。この状態で、ガス導入管15よりOガスを反応ガスとして250sccm導入することにより、真空容器11内に高密度の酸素プラズマ及び酸素ラジカルを生成した。
上記のHeとOの混合プラズマの存在下で、基板ホルダー13内蔵のヒーターにより550℃程度に加熱した基板14上に原料金属を電子ビーム加熱蒸発させることにより、各原料金属蒸気と混合プラズマ中の酸素ラジカルとを反応させながら基板14上に堆積させることにより、PZTの薄膜作製を行った。成膜時の圧力は0.1Paだった。このとき、水晶振動子式膜厚モニタにて、Pb蒸発量がZrとTiの蒸発量の合計に対して2〜5倍の範囲になるように、かつZrとTiの蒸発量がほぼ同等になるように蒸発源12の出力を制御することにより、ペロブスカイト型結晶構造単相のPZT膜が形成された。膜厚は4μmの厚膜であった。成膜速度は1nm/s(3.6μm/h)以上であった。
得られた圧電体薄膜を観察したところ、緻密で発達した柱状晶構造が得られていた。得られたPZT膜のX線回折結果を図7に示す。図7から明らかなようにすべてペロブスカイト相のピークであり、パイロクロア等の不純物相によるピークが観測されていないことが確認できた。
つぎに、電気特性を調べるために、本実施例のPZT膜にPt電極を積層し、キャパシタセルを形成した。このキャパシタセルに対して、強誘電体特性の測定を行ったところ、図8に示すように非常に良く飽和したP‐E(分極‐電界)ヒステリシス曲線が観測された。
また、圧電特性についても別の素子を作製して評価したところ、d33が−114pm/V、d31が239pm/Vとバルク焼結体PZTで報告されている値と同等以上の圧電定数を有していることがわかった。
このように、本発明によれば、結晶性および圧電特性に非常に優れたPZTの厚膜を非常に高速に成膜できることが確認できた。これは圧電膜を用いた圧電素子、特に、圧電アクチュエータとしてMEMS素子に応用する場合、産業応用上非常に有利な特徴であると言える。
第1実施形態のアーク放電イオンプレーティング装置の全体構成を示すブロック図。 図1の装置のプラズマガン10の構成を示すブロック図。 図1の装置のプラズマガンの電位勾配を示すグラフ。 図1の装置で放電ガスとしてHeガスを用いた場合のプラズマ中の酸素ラジカル量と、Arガスを用いた場合の酸素ラジカル量をOESにより測定した結果を示すグラフ。 図1の装置でArガスまたはHeガスを放電ガスとした場合に形成できるPZT(Pb(Ti1−xZr)O)のx組成値を示すグラフ。 第2の実施形態の2次元光スキャナの構成を示す上面図。 実施例で得られたPZT膜のX線回折パターンを示すグラフ。 実施例で得られたPZT膜の分極‐電界特性を示すグラフ。
符号の説明
1…陰極、2…第1中間電極、3…第2中間電極、4…陽極、5…空芯コイル、6…フランジ、7…第3中間電極、11…真空容器、12…蒸発源、13…基板ホルダー、14…基板、15…反応ガス導入管、101…プラズマ引き出し軸、102…放電ガス導入口、103…プラズマガン容器、104…ホーロー抵抗。

Claims (2)

  1. 圧力勾配型プラズマガンを用いてHeガスと酸素ガスの混合プラズマを発生させ、該混合プラズマ中の酸素ラジカルにより成膜材料を酸化させる強誘電体膜の製造方法であって、
    前記圧力勾配型プラズマガンとして、陰極と、第1、第2及び第3の中間電極と、陽極とを備えた反射型のプラズマガンを用い、前記第1、第2および第3の中間電極の電位を前記陰極の電位よりも順次高くなるように設定し、かつ、前記第3の中間電極の電位を、成膜対象である基板が配置される真空容器の電位よりも低く設定して、前記混合プラズマを発生させ、
    前記圧力勾配型プラズマガンの放電電圧は100V以上150V以下、放電電流は50A以上100A以下、前記混合プラズマが生じている空間の圧力は0.1Pa以上0.2Pa以下であり、
    前記混合プラズマが生じている空間に、Pb蒸発量がZrとTiの蒸発量の合計に対して2〜5倍の範囲で、かつ、ZrとTiの蒸発量が同量となるように原料金属を蒸発させ、
    前記強誘電体膜として、柱状晶構造の、鉛含有ペロブスカイト型酸化物であるPb(ZrTi1−x)O(ただし、x>0.4)を1nm/s以上の成膜速度で形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の強誘電体膜の製造方法において、前記強誘電体膜は、Ptが堆積された前記基板のPtの上に形成することを特徴とする強誘電体膜の製造方法。
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