以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係る成膜装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る成膜装置の構成を示す概略断面図である。図1には、説明を容易にするためにXYZ直交座標系を示している。Y軸方向は、後述する成膜対象物が搬送される方向である。X軸方向は、成膜対象物と後述するハース機構とが対向する方向である。Z軸方向は、X軸方向とZ軸方向とに直交する方向である。
成膜装置1は、いわゆるイオンプレーティング法に用いられるイオンプレーティング装置である。成膜装置1は、ハース機構2、搬送機構3、輪ハース6、プラズマ源7、圧力調整装置8、及び真空チャンバー10を備えている。成膜装置1は、縦型の成膜装置である。すなわち、成膜装置1では、成膜対象物の板厚方向が水平方向となるように、成膜対象物を直立又は直立させた状態から傾斜した状態で、成膜対象物が真空チャンバー内に配置されて搬送される。成膜装置1は、成膜対象物の板厚方向が略鉛直方向となるように成膜対象物が真空チャンバー内に配置されて搬送される、いわゆる横型の成膜装置であってもよい。
真空チャンバー10は、成膜材料の膜が形成される成膜対象物11を搬送するための搬送室10aと、成膜材料Maを拡散させる成膜室10bと、プラズマ源7から照射されるプラズマビームPを真空チャンバー10に受け入れるプラズマ口10cと、を有している。搬送室10a、成膜室10b、及びプラズマ口10cは互いに連通している。搬送室10aは、所定の搬送方向(図中の矢印A)に(Y軸に)沿って設定されている。真空チャンバー10は、導電性の材料からなり接地電位に接続されている。
搬送機構3は、成膜材料Maと対向した状態で成膜対象物11を保持する成膜対象物保持部材16を搬送方向Aに搬送する。搬送機構3は、搬送室10a内に設置された複数の搬送ローラ15によって構成されている。搬送ローラ15は、搬送方向Aに沿って等間隔に配置され、成膜対象物保持部材16を支持しつつ搬送方向Aに搬送する。成膜対象物11は、例えばガラス基板やプラスチック基板などの板状部材が用いられる。
プラズマ源7は、圧力勾配型であり、その本体部分が成膜室10bの側壁に設けられたプラズマ口10cを介して成膜室10bに接続されている。プラズマ源7は、真空チャンバー10内でプラズマビームPを生成する。プラズマ源7において生成されたプラズマビームPは、プラズマ口10cから成膜室10b内へ出射される。プラズマビームPは、プラズマ口10cに設けられたステアリングコイル(不図示)によって出射方向が制御される。プラズマは、プラズマビームPとして図示された領域だけでなく、成膜室10b内全体に存在している。
圧力調整装置8は、真空チャンバー10に接続され、真空チャンバー10内の圧力を調整する。圧力調整装置8は、たとえば、ターボ分子ポンプやクライオポンプ等の減圧部と、真空チャンバー10内の圧力を測定する圧力測定部と、を有している。
ハース機構2は、成膜材料Maを保持するための機構である。ハース機構2は、真空チャンバー10の成膜室10b内に設けられ、搬送機構3から見てX軸方向の負方向に配置されている。ハース機構2は、プラズマ源7から出射されたプラズマビームPを成膜材料Maに導く主陽極又はプラズマ源7から出射されたプラズマビームPが導かれる主陽極である主ハース17を有している。
主ハース17は、成膜材料Maが充填されたX軸方向の正方向に延びた筒状の充填部17aと、充填部17aから突出したフランジ部17bとを有している。主ハース17は、真空チャンバー10が有する接地電位に対して正電位に保たれているため、プラズマビームPを吸引する。プラズマビームPが入射する主ハース17の充填部17aには、成膜材料Maを充填するための貫通孔17cが形成されている。成膜材料Maの先端部分が、貫通孔17cの一端において成膜室10bに露出している。
輪ハース6は、プラズマビームPを誘導するための電磁石を有する補助陽極である。輪ハース6は、成膜材料Maを保持する主ハース17の充填部17aの周囲に配置されている。輪ハース6は、環状のコイル9と環状の永久磁石部20と環状の容器12とを有し、コイル9及び永久磁石部20は容器12に収容されている。輪ハース6は、コイル9に流れる電流の大きさに応じて、成膜材料Maに入射するプラズマビームPの太さ及び広がり、または、主ハース17に入射するプラズマビームPの太さ及び広がりを制御する。永久磁石部20は、所望の膜厚分布を得ることができるように、磁力の調整を行い易い構造となっている。
成膜材料Maには、透明導電材料(たとえば、ITO又はZnOなど)や、絶縁封止材料(たとえば、SiO2又はSiONなど)が例示される。成膜材料Maが絶縁性物質からなる場合、主ハース17にプラズマビームPが照射されると、プラズマビームPからの電流によって主ハース17が加熱され、成膜材料Maの先端部分が蒸発し、プラズマビームPによりイオン化された成膜材料粒子(蒸発粒子)Mbが成膜室10b内に拡散する。なお、絶縁性物質からなる成膜材料Maが加熱されて高温になると成膜材料Maに電流が流れるようになり、プラズマビームPは成膜材料Maに照射されるようになる。成膜材料Maが導電性物質からなる場合、主ハース17にプラズマビームPが照射されると、プラズマビームPが成膜材料Maに直接入射し、成膜材料Maの先端部分が加熱されて蒸発し、プラズマビームPによりイオン化された成膜材料粒子Mbが成膜室10b内に拡散する。
成膜室10b内に拡散した成膜材料粒子Mbは、成膜室10bのX軸正方向へ移動し、搬送室10a内において成膜対象物11の表面に付着する。成膜材料Maは、所定長さの円柱形状に成形された固体物であり、一度に複数の成膜材料Maがハース機構2に充填される。最先端側の成膜材料Maの先端部分が主ハース17の上端との所定の位置関係を保つように、成膜材料Maの消費に応じて、成膜材料Maがハース機構2のX負方向側から順次押し出される。
成膜装置1は、成膜室10b内に存在するプラズマの電気的特性を測定するプラズマ測定装置30を備えている。プラズマ測定装置30は、ラングミュアプローブ法が用いられている。プラズマ測定装置30は、測定部31と、電源部32と、電流計33と、を備えている。測定部31と、電源部32及び電流計33と、は線路34により接続されている。本実施形態では、プラズマ測定装置30の測定部31は、成膜室10bにおける輪ハース6側に存在するプラズマの電気的特性を測定する位置に配置されている。
電源部32は、測定部31に対して負の電圧から正の電圧まで電圧を掃引しながら印加できるように構成されている。プラズマに接するように測定部31を位置させて、測定部31に電圧を印加すると、電子又はイオンが測定部31に衝突することにより測定部31と電源部32とを接続する線路34に電流(プローブ電流)が流れる。電流計33は、線路34に流れる電流を検出する。電流計33が検出した電流値は、検出データとして、制御部(不図示)に送出される。
続いて、図2及び図3を参照して、測定部31の構成について説明する。図2及び図3は、本実施形態に係るプラズマ測定装置の測定部の構成を示す概略断面図である。
測定部31は、プローブ41、第一カバー42、第二カバー43、及び導入部材44を備えている。本実施形態では、プローブ41、第一カバー42、第二カバー43、及び導入部材44は、同じ中心軸CAに対し、同心状に配置されている。
プローブ41は、金属(たとえば、タングステン又は白金など)からなる棒状の部材であり、いわゆるラングミュアプローブを構成する。プローブ41は、成膜室10b内に存在するプラズマに接し得る位置に配置されている。
第一カバー42は、絶縁性材料(たとえば、アルミナなど)からなる筒状の部材である。第一カバー42は、一端側の部分に、中心軸CA方向に並んで配置されるように形成された複数の開口42aを有している。すなわち、第一カバー42は、図3に示されるように、開口42aの位置において断面C字状とされた筒体である。第一カバー42は、他端側が後述する蓋部材46に固定されている。第一カバー42は、少なくとも複数の開口42aが形成された部分がプラズマと接し得る位置に配置される。
第二カバー43は、絶縁性材料(たとえば、アルミナなど)からなる筒状の部材であり、一端が絶縁性材料(たとえば、アルミナなど)からなる部材で閉塞されている。第二カバー43は、第一カバー42の内側に位置している。第一カバー42と第二カバー43との間隔は、蒸発粒子の平均自由行程などを考慮して、第一カバー42と第二カバー43との間の空間に蒸発粒子が侵入し難い値に設定される。第二カバー43は、一つの開口43aを有している。すなわち、第二カバー43も、図3に示されるように、開口43aの位置において断面C字状とされた筒体である。
第二カバー43の内側には、プローブ41が配置されており、第二カバー43とプローブ41とは一体的に固定されている。すなわち、第二カバー43は、プローブ41と第一カバー42との間に位置することとなる。プローブ41は、開口43aに対応して位置する領域が、開口43aを介して露出している。プローブ41における、開口43aを介して露出する領域が、検出部を構成する。
導入部材44は、筒状の部材であり、一端側に、第二カバー43(プローブ41)が固定されている。導入部材44は、たとえば、ステンレス鋼などの金属からなる。第二カバー43は、導入部材44の一端から挿入された状態で、固定部材45により導入部材44に固定されている。プローブ41は、導入部材44内を他端側まで延びるように配置されており、導入部材44の他端側に配置された電流導入端子(不図示)を通して線路34に接続されている。導入部材44の内側空間は、導入部材44の他端側に配置された気密封止部材(不図示)により、気密状態が維持される。気密封止部材には、Oリングシールなどを用いることができる。
導入部材44は、成膜室10bの側壁に形成された開口10dを塞ぐように配置される蓋部材46に挿通された状態で、蓋部材46に支持される状態で配置されている。蓋部材46は、成膜室10bの側壁に着脱可能に取り付けられている。導入部材44は、中心軸CA方向に移動可能であり且つ中心軸CA周りに回動可能に、蓋部材46に支持されている。すなわち、導入部材44に固定されている第二カバー43及びプローブ41も、中心軸CA方向に移動可能であり且つ中心軸CA周りに回動可能とされる。成膜室10bの側壁と蓋部材46との間、及び、導入部材44と蓋部材46との間には、気密封止部材47が配置されている。これにより、成膜室10bの圧力が維持される。気密封止部材47には、Oリングシールなどを用いることができる。
第一カバー42は、蓋部材46に固定されていることから、成膜室10bの側壁に対しても固定されることとなる。これに対して、第二カバー43及びプローブ41は、上述したように、中心軸CA方向に移動可能であり且つ中心軸CA周りに回動可能とされている。したがって、第一カバー42と、第二カバー43及びプローブ41とは、中心軸CA方向及び中心軸CA周りに相対的に移動可能である。
図3の(a)に示されるように、第二カバー43の開口43aが第一カバー42のいずれかの開口42aと対向するように、第一カバー42と第二カバー43(プローブ41)とを相対的に移動させた状態では、プローブ41が、第一カバー42の開口42aと第二カバー43の開口43aとを通して、プラズマに露出する状態となる。プローブ41がプラズマに露出する状態で、上述したように、プローブ41に電圧を掃引しながら印加し、流れる電流を電流計33で検出する。
図3の(b)に示されるように、第二カバー43の開口43aが第一カバー42のいずれの開口42aとも対向しないように、第一カバー42と第二カバー43(プローブ41)とを相対的に移動させた状態(たとえば、第二カバー43が、中心軸CA周りに180度回動した状態)では、プローブ41が、プラズマから遮られた状態となる。プローブ41が、プラズマから遮られた状態では、測定は行われない。
本実施形態では、第一カバー42と第二カバー43とは、プローブ41を覆うように配置され、プローブ41をプラズマから遮る状態とプローブ41をプラズマに露出させる状態とに切り替え可能なカバー部を構成する。第一カバー42と、第二カバー43及びプローブ41とが、中心軸CA方向に相対的に移動することにより、第一カバー42の複数の開口42aのうち、第二カバー43の開口43aが対向することとなる開口42aが変更される。すなわち、プラズマの電気的特性を測定する箇所が変更される。
以上のように、本実施形態では、第一カバー42と第二カバー43とが、プローブ41をプラズマから遮る状態とプローブ41をプラズマに露出させる状態とに切り替えられる。このため、第一カバー42と第二カバー43とを相対的に移動させ、プラズマの電気的特性を測定する際に、プローブ41をプラズマに露出させ、プラズマの電気的特性を測定しない際に、プローブ41をプラズマに露出させないことが可能となる。したがって、プラズマ測定装置30(測定部31)においては、プローブ41への蒸発粒子の付着を抑制することができる。
本実施形態では、第一カバー42と第二カバー43との相対的な移動により、プローブ41をプラズマから遮る状態と検出部をプラズマに露出させる状態とが切り替えられている。これにより、プローブ41をプラズマから遮る状態と検出部をプラズマに露出させる状態とに切り替え得る構成を、簡易に実現することができる。第一及び第二カバー42,43は、少なくとも開口の位置において断面C字状とされた筒体である。これにより、プローブ41をプラズマから遮る状態と検出部をプラズマに露出させる状態とに切り替え得る構成を、極めて簡素に実現することができる。
第一カバー42は、中心軸CA方向に並んで配置された複数の開口42aを有し、第二カバー43及びプローブ41は、第一カバー42において複数の開口42aが並んで配置された方向に移動可能である。これにより、複数の開口42aそれぞれの位置におけるプラズマの電気的特性を測定することができる。
次に、図4を参照して、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置30の測定部31の構成について説明する。図4は、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置の測定部の構成を示す概略断面図である。
本変形例では、測定部31は、プローブ41、第一カバー42、第二カバー43、及び磁気カップリング機構51を備えている。
第一カバー42は、一つの開口42aを有している。第二カバー43は、中心軸CA方向に並んで配置されるように形成された複数の開口43aを有している。プローブ41は、蓋部材46に固定されている。したがって、本変形例では、プローブ41と第二カバー43とが移動することはない。
成膜室10bの側壁の一部が筒状に構成されており、磁気カップリング機構51は、筒状に構成された側壁の外側に配置された第一磁石部52と、筒状に構成された側壁を挟んで成膜室10b内に配置された第二磁石部53と、を有している。第一磁石部52と第二磁石部53とは、磁気カップリングしている。磁気カップリング機構51は、第一カバー42と第二カバー43とを相対的に移動させる駆動手段を構成する。
第一磁石部52は、モータなどにより構成される駆動機構(不図示)により、中心軸CA方向に移動すると共に中心軸CA周りに回動する。第二磁石部53は、連結部材54を介して第一カバー42と固定されており、第二磁石部53と第一カバー42とは一体的に移動する。したがって、第一磁石部52が中心軸CA方向に移動すると、第二磁石部53と共に第一カバー42も中心軸CA方向に移動する。第一磁石部52が中心軸CA周りに回動すると、第二磁石部53と共に第一カバー42も中心軸CA周りに回動する。
第一カバー42は、上述したように、中心軸CA方向に移動可能であり且つ中心軸CA周りに回動可能とされている。したがって、第一カバー42と、第二カバー43(プローブ41)とは、中心軸CA方向及び中心軸CA周りに相対的に移動可能である。第一カバー42が中心軸CA方向に移動することにより、成膜室10b内での開口42aの位置が変わる。第一カバー42は、筒状に構成された側壁の内側に位置している。第一カバー42と筒状に構成された側壁との間隔は、蒸発粒子の平均自由行程などを考慮して、第一カバー42と筒状に構成された側壁との間の空間に蒸発粒子が侵入し難い値に設定されることが好ましい。
第一カバー42の開口42aが第二カバー43のいずれかの開口43aと対向するように、第一カバー42と第二カバー43とを相対的に移動させた状態では、プローブ41における、いずれかの開口43aを介して露出する領域が、第一カバー42の開口42aを通して、プラズマに露出する状態となる。第一カバー42の開口42aがいずれの開口43aとも対向しないように、第一カバー42と第二カバー43とを相対的に移動させた状態(たとえば、図4に示された状態から、第一カバー42が、中心軸CA周りに180度回動した状態)では、プローブ41における、各開口43aを介して露出する領域が、プラズマから遮られた状態となる。第一カバー42が中心軸CA方向に移動することにより、複数の開口43aのうち、第一カバー42の開口42aが対向することとなる開口43aが変更される。すなわち、プラズマの電気的特性を測定する箇所が変更される。
開口42aから進入したプラズマが隣り合う開口43aに進入した場合、プラズマの電気的特性を正確に測定することが困難となる。したがって、隣り合う開口43aの間隔は、開口42aから進入したプラズマが隣り合う開口43aに進入し得ない距離に設定される。隣り合う開口43aの間隔は、たとえば、プラズマシースの厚みの5倍程度に設定することができる。隣り合う開口43aの間隔を大きく設定すればするほど、開口42aから進入したプラズマが隣り合う開口43aに進入し難くなる。しかしながら、複数の開口43aが並んで配置された方向での測定部31(プラズマ測定装置30)のサイズが大きくなるため、測定部31(プラズマ測定装置30)の成膜装置1への配置を考慮すると、隣り合う開口43aの間隔の値には上限がある。
以上のように、本変形例においても、第一カバー42と第二カバー43とが、プローブ41をプラズマから遮る状態とプローブ41をプラズマに露出させる状態とに切り替えられる。したがって、プラズマ測定装置30(測定部31)においては、プローブ41への蒸発粒子の付着を抑制することができる。
第二カバー43は、中心軸CA方向に並んで配置された複数の開口43aを有し、第一カバー42は、第二カバー43において複数の開口43aが並んで配置された方向に移動可能である。これにより、複数の開口43aそれぞれの位置におけるプラズマの電気的特性を測定することができる。この場合、プラズマの分布状態を検出することが可能となる。また、プローブ41における、開口43aを介して露出する領域を測定毎に変更することが可能となり、プラズマ測定装置30(測定部31)の長寿命化を図ることができる。
測定部31は、第一カバー42と第二カバー43とを相対的に移動させる磁気カップリング機構51を備えている。これにより、外部からの信号を利用して、プローブ41をプラズマから遮る状態とプローブ41をプラズマに露出させる状態とに第一カバー42と第二カバー43とを切り替えることが可能となり、プローブ41への蒸発粒子の付着を確実に抑制することができる。
次に、図5を参照して、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置30の測定部31の構成について説明する。図5は、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置の測定部の構成を示す概略断面図である。
本変形例では、測定部31は、プローブ41、第一カバー42、第二カバー43、導入部材44、及び磁気カップリング機構51を備えている。第一カバー42と第二カバー43とは、それぞれ中心軸CA方向及び中心軸CA周りに移動可能である。第一カバー42は、磁気カップリング機構51により、中心軸CA方向及び中心軸CA周りに移動する。第二カバー43は、導入部材44を中心軸CA方向及び中心軸CA周りに移動させることにより、中心軸CA方向及び中心軸CA周りに移動する。
第二カバー43の開口43aが第一カバー42のいずれかの開口42aと対向するように、第一カバー42と第二カバー43(プローブ41)とを相対的に移動させた状態では、プローブ41が、第一カバー42の開口42aと第二カバー43の開口43aとを通して、プラズマに露出する状態となる。第二カバー43の開口43aが第一カバー42のいずれの開口42aとも対向しないように、第一カバー42と第二カバー43(プローブ41)とを相対的に移動させた状態(たとえば、図5に示された状態から、第二カバー43が、中心軸CA周りに180度回動した状態)では、プローブ41が、プラズマから遮られた状態となる。
第一カバー42と、第二カバー43及びプローブ41とが、中心軸CA方向に相対的に移動することにより、第一カバー42の複数の開口42aのうち、第二カバー43の開口43aが対向することとなる開口42aが変更される。すなわち、プラズマの電気的特性を測定する箇所が変更される。本変形例では、第一カバー42を回動させることによっても、第一カバー42の開口42aの向きが中心軸CA周りで変わり、プラズマの電気的特性を測定する箇所が変更される。
本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様に、プラズマの電気的特性を測定する際に、プローブ41をプラズマに露出させ、プラズマの電気的特性を測定しない際に、プローブ41をプラズマに露出させないことが可能となり、プローブ41への蒸発粒子の付着を抑制することができる。
本変形例では、第一カバー42を回動させることによって、第一カバー42の開口42aの向きが中心軸CA周りで変わる。したがって、中心軸CA周りの全周にわたって、プラズマの電気的特性の測定が可能となる。
次に、図6を参照して、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置30の測定部31の構成について説明する。図6は、本実施形態の変形例に係るプラズマ測定装置の測定部の構成を示す概略断面図である。
本変形例では、測定部31は、複数のプローブ41、第一カバー42、導入部材44、及び支持部材55を備えている。複数のプローブ41は、それぞれがラングミュアプローブを構成する。プローブ41の数は、第一カバー42の開口42aの数と同じに設定されている。プローブ41の数は、第一カバー42の開口42aの数よりも多くてもよい。
複数のプローブ41は、中心軸CA方向に並んで配置された状態で支持部材55に固定されている。支持部材55は、絶縁性材料(たとえば、アルミナなど)からなる筒状の部材であり、一端が絶縁性材料(たとえば、アルミナなど)からなる部材で閉塞されている。支持部材55は、導入部材44の一端から挿入された状態で、固定部材45により導入部材44に固定されている。支持部材55は、第一カバー42の内側に位置している。第一カバー42と支持部材55との間隔は、蒸発粒子の平均自由行程などを考慮して、第一カバー42と支持部材55との間の空間に蒸発粒子が侵入し難い値に設定される。
支持部材55の内側には、各プローブ41から延びる信号線56が通されており、各信号線56は、蓋部材46に配置された電流導入端子(不図示)を通して、外部に導出される。電流導入端子の数は、プローブ41(信号線56)の数と同数であってもよく、一つであってもよい。電流導入端子の数が一つである場合には、電流導入端子と各信号線56との間にスイッチング機構(不図示)を接続し、スイッチング機構により電流導入端子と接続される信号線56を選択してもよい。
第一カバー42の各開口42aが対応するプローブ41と対向するように、第一カバー42と支持部材55(導入部材44)とを相対的に移動させた状態では、各プローブ41が、第一カバー42の開口42aを通して、プラズマにそれぞれ露出する状態となる。第一カバー42の各開口42aが対応するプローブ41と対向しないように、第一カバー42と支持部材55とを相対的に移動させた状態(たとえば、図6に示された状態から、第一カバー42が、中心軸CA周りに180度回動した状態)では、いずれのプローブ41も、プラズマから遮られた状態となる。
以上のように、上述した実施形態及び変形例と同様に、プラズマの電気的特性を測定する際に、各プローブ41をプラズマに露出させ、プラズマの電気的特性を測定しない際に、各プローブ41をプラズマに露出させないことが可能となり、各プローブ41への蒸発粒子の付着を抑制することができる。また、複数の開口42aそれぞれの位置におけるプラズマの電気的特性を測定することができる。
第一カバー42の開口42aの数がプローブ41の数より少ない場合、第一カバー42と支持部材55とを中心軸CA方向に相対的に移動することにより、第一カバー42の開口42aに対向することとなるプローブ41が変更される。この場合には、プローブ41における、開口43aを介して露出する領域を測定毎に変更することが可能となり、プラズマ測定装置30(測定部31)の長寿命化を図ることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
導入部材44の、中心軸CA方向への移動及び中心軸CA周りの回動は、人手によるものでもよく、モータなどの駆動機構によるものでもよい。図4及び図5に示された変形例においては、第一カバー42を移動させる駆動手段として磁気カップリング機構51が用いられているが、これに限られることなく、モータなどのその他の駆動機構を用いてもよい。モータなどの駆動機構は、成膜室10b内の圧力を保持する目的から、成膜室10b内に配置されることが好ましい。
第一及び第二カバー42,43の形状は、断面が円形状を呈する筒体である必要はなく、断面が多角形状を呈する筒体であってもよい。開口42a,43aの形状も、円形又は多角形状であってもよい。開口42a,43aの数も、図示された数に限られない。図6にて示された変形例における、プローブ41の数も、図示された数に限られない。
本実施形態及び変形例では、プラズマ測定装置30の測定部31は、成膜室10bにおける輪ハース6側に存在するプラズマの電気的特性を測定する位置に配置されているがこれに限られない。たとえば、測定部31は、成膜室10bにおける搬送機構3側に存在するプラズマの電気的特性を測定する位置に配置されていてもよい。
本実施形態及び変形例では、プラズマ測定装置30をイオンプレーティング法による成膜装置1に適用しているが、これに限られることなく、プラズマスパッタリング法又はプラズマCDV法などを用いた成膜装置に適用できる。また、プラズマ測定装置30は、成膜装置以外にも適用できる。