JP5401039B2 - フェライト系ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼及びその製造方法に関するものである。
近年、石油に代表される化石燃料の枯渇化、CO2排出による地球温暖化等の問題から、従来の発電システムに代替する新たなシステムの実用化が求められている。この新たな発電システム、分散電源又は自動車などの動力源として、高温で用いられる様々な省エネルギーシステムが実用化されつつある。
また、従来、ガスバーナーの燃焼筒、エンジン等の自動車の燃焼部位、並びにこれらの排ガス雰囲気に高温で曝される部位など、600℃以上の高温で酸素と水蒸気とを含む雰囲気に曝される機器及び部位などは広範囲に亘っている。
一般に、ガスバーナー、エンジンなどの燃焼では、燃料を酸素で燃焼させた際に多量の水蒸気が発生する。これらの燃焼機器の排ガス流路に採用される部材は、燃焼により生成したガス、すなわち600℃以上の酸素及び水蒸気が混在したガスが接触する。通常、このような部材には、フェライト系又はオーステナイト系のステンレス鋼又は高合金鋼が用いられる。
例えば特許文献1には、局部的な異常酸化の改善を意図した特定の組成を有するFe−Cr−Al系耐熱合金が開示されている。この文献によると、C:0.03%以下、Si:1.0%以下、Cr:12〜25%、Al:2〜6%、Ti:0.1〜0.5%、希土類元素及びアルカリ土類元素の1種または2種以上を0.001〜0.1%含有し、残分がFeと製造上の不可避的不純物よりなるFe−Cr−Al系耐熱合金が耐異常酸化性に優れるとされている。
特開昭51−14119号公報
これまで、上述のような機器等の耐久性の観点から、適正なステンレス鋼を選定、作製することにさして困難性はなかった。しかしながら、上記燃焼により生成したガスを詳細に調べてみると、その水蒸気中にごく僅かながら6価のCr(クロム)が存在することが明らかになった。その原因は、ステンレス鋼中に合金成分として含まれるCrの一部が過度に酸化され、その化合物となって蒸発することにある。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、特に高温水蒸気に曝される環境下において、Cr及び/又はその化合物の蒸発を十分に防止可能なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の条件を満足した特定の組成を有するフェライト系ステンレス鋼が、Cr及び/又はその化合物の蒸発防止に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼の最表層及び/又はその深層側の層が特定の組成となるようにステンレス鋼に処理を施すことで、Cr及び/又はその化合物の蒸発が更に抑制されることをも見出した。
すなわち、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、Cr:12.07〜20.11質量%、C:0.03質量%以下(0質量%を含む)、N:0.03質量%以下(0質量%を含む)、Mn:1.5質量%以下(0質量%を含む)、S:0.008質量%以下(0質量%を含む)、Si:2質量%以下(0質量%を含む)、Al:1.55〜5.02質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成(ただし、Cr:18.2質量%、C:0.005質量%、N:0.004質量%、Mn:0.04質量%、S:0.003質量%、Si:0.09質量%、Al:3.1質量%、P:0.029質量%を含有するもの、並びに、Cr:19.9質量%、C:0.003質量%、N:0.003質量%、Mn:0.10質量%、S:0.002質量%、Si:0.06質量%、Al:5.0質量%、P:0.025質量%を含有するものを除く。)を有するフェライト系ステンレス鋼であって、下記式(1)で表される条件を満足し、最表層として酸化物層を備え、酸化物層中のCr含有割合が5質量%以下(0質量%を含む)であり、上記酸化物層の深層側にAl欠乏層を備え、上記フェライト系ステンレス鋼の深さ方向におけるAl含有割合の分布において、上記Al欠乏層でのAl含有割合の最小値が、上記フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上である
Cr+1.5×WSi+6×WAl≧30 (1)
ここで、式(1)中、WCr、WSi、WAlはそれぞれ、フェライト系ステンレス鋼の総質量に対するCr、Si、Alの含有割合(単位:質量%)を示す。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、Ti:0.005〜0.50質量%を更に含有してもよく、Nb:0.001〜0.70質量%、V:0.001〜0.50質量%、Sn:0.001〜1.0質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有してもよい。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、Y:0.0005〜0.1質量%、希土類元素:0.0005〜0.1質量%、Ca:0.0005〜0.01質量%、Zr:0.03〜0.5質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有してもよく、Mo:0.1〜4.0質量%、Cu:0.1〜2.0質量%、W:0.1〜4.0質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有してもよい。
ここで「酸化物層」の規定について図1を参照して説明する。図1は、ステンレス鋼の深さ方向における断面を部分的に示す模式端面図である。フェライト系ステンレス鋼は、最表層に酸化物層10を備えると共に、その深層側に母材20を有している。まず、ステンレス鋼の表層から深層への方向、すなわち深さ方向における断面が露出するようにステンレス鋼を切断する。切断したステンレス鋼は必要に応じて断面が露出した状態で樹脂に埋め込み、次いで、EPMAなどの公知の表面元素分析装置を用いて、露出した断面の線分析(例えば、図1のa−d間)を行う。その結果、表面部をa、表面部aから法線方向にある任意の部分をa’、a−a’間の中心部をcとしたときに、中心部cにおける酸素の含有割合が、任意の部分a’における酸素の含有割合の2倍となるように最深部bを定める。そして、表面部aから最深部bまでの層を酸化物層20と規定する。この場合、最深部bは酸化物層20と母材20との界面に存在する。
また、「酸化物層中のCr含有割合」の規定について図2を参照して説明する。図2は図1に示すものと同様のステンレス鋼の模式端面図である。図2に示すように、表面部a−最深部b間に等間隔に並んだ5点の分析点についてCr含有割合の分析を行い、それら5点の分析点でのCr含有割合の相加平均を導出する。そして、これと同様の分析を、酸化物層の別の2箇所で行い、計3箇所でのCr含有割合の相加平均を導出して、上記「酸化物層中のCr含有割合」と規定する。
また、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記酸化物層の深層側にAl欠乏層を備え、フェライト系ステンレス鋼の深さ方向におけるAl含有割合の分布において、上記Al欠乏層でのAl含有割合の最小値が、前記フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上であると好ましい。ここで本発明に係る「Al欠乏層」とは、ステンレス鋼の深さ方向における断面について上述と同様に線分析を行った結果、フェライト系ステンレス鋼全体における平均のAl含有割合の98%以下のAlを含有する層を意味する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記酸化物層の深層側にAl欠乏層を備えていないものであると好ましい。
これらのフェライト系ステンレス鋼は、10〜25体積%の酸素と、2体積%以下(0体積%を含む)の水蒸気と、5体積%以下(0体積%を含む)の二酸化炭素とを含有し、残部が不活性ガス及び不可避的不純物からなる雰囲気中、上述のような組成を有するフェライト系ステンレス鋼を、700〜1200℃の雰囲気温度で下記式(2)で表される条件を満足する時間t以上加熱する工程を有するフェライト系ステンレス鋼の製造方法によっても製造することができる。
15.92×t×exp(−5594/T)≧0.005 (2)
ここで、式(2)中、tは時間(単位:時間)、Tは雰囲気の絶対温度(単位:K、以下同様。)を示す。
本発明のフェライト系ステンレス鋼によれば、特に高温水蒸気に曝される環境下において、Cr及び/又はその化合物の蒸発を十分に防止することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
まず、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼(以下、場合によって単に「ステンレス鋼」、「鋼」ともいう。)について説明する。本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、Cr(クロム):11〜22質量%、C(炭素):0.03質量%以下(0質量%を含む)、N(窒素):0.03質量%以下(0質量%を含む)、Mn(マンガン):1.5質量%以下(0質量%を含む)、S(硫黄):0.008質量%以下(0質量%を含む)、Si(ケイ素):2質量%以下(0質量%を含む)、Al(アルミニウム):1.0〜6.0質量%を含有し、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼であって、下記式(1)で表される条件を満足する。
Cr+1.5×WSi+6×WAl≧30 (1)
ここで、式(1)中、WCr、WSi、WAlはそれぞれ、フェライト系ステンレス鋼の総質量に対するCr、Si、Alの含有割合(単位:質量%)を示す。
Crを11質量%以上含有するステンレス鋼は、使用中に生成する酸化皮膜の成長が遅く、高温での材料劣化が少ない金属材料である。しかしながら、600℃以上の燃焼排ガス雰囲気のような酸素及び水蒸気に曝される環境では、ステンレス鋼表面に生成するCr酸化物が、雰囲気中の酸素及び水蒸気と反応する。この反応は、例えば下記反応式(3)で示される反応であり、これにより、ステンレス鋼中のCrが6価となって水蒸気と共に蒸発する。
Cr23(固体)+2H2O+1.5O2 → 2CrO2(OH)2(気体) (3)
このような反応を抑制するには、Cr系の酸化物をステンレス鋼の最表層に可能な限り形成しないようにすることが効果的である。これにより、周囲の雰囲気とCrやその酸化物との直接接触を防止することができる。本発明者らは、ステンレス鋼の最表層においてCr系の酸化物の形成を抑制するには、その最表層におけるCrの含有割合を5質量%以下とすることが肝要であることを知見した。そして、そのような組成を有する最表層を形成するには、ステンレス鋼を構成するCr、Si及びAlの含有割合が下記式(1)で表される条件を満足する必要があることを見出した。
Cr+1.5×WSi+6×WAl≧30 (1)
ここで、式(1)中、WCr、WSi、WAlはそれぞれ、上記フェライト系ステンレス鋼の総質量に対するCr、Si、Alの含有割合(単位:質量%)を示す。
これにより、Cr系よりも高い酸素親和力を有しかつ緻密な非Cr系の酸化物が、優先的にステンレス鋼の最表層に形成される。Si及びAlはいずれも、酸素との親和力がCrよりも高く、ステンレス鋼表面に緻密な保護性の酸化皮膜を容易に形成するため、鋼の耐酸化性を高める元素として知られている。しかしながら、酸素及び水蒸気が共存した高温の雰囲気下でCr及び/又はその化合物の蒸発を防ぐには、従来のSi及びAlの含有割合は十分に高いとはいえない。例えば、燃焼排ガス中で良好な耐酸化性を示すステンレス鋼として、12%Cr−1%Al−1.5%Si鋼が市販されている。ところが、かかる鋼種は酸素及び水蒸気が存在する高温雰囲気下では良好な耐酸化性を示すにも関わらず、Cr及び/又はその化合物の蒸発を十分に抑制できないことを本発明者らは確認した(本明細書の実施例参照)。このステンレス鋼の酸化スケールを分析したところ、最表層にはCr23を主体とした酸化物が形成されており、そのCr含有割合は5質量%を大きく超えていることが明らかになった。また、最表層のCr23を主体とする層の内側には、SiO2及びAl23を主体とする酸化物の層が形成されていることが、併せて明らかになった。
本発明者らが上述の状況にかんがみて更に詳細に検討を行った結果、フェライト系ステンレス鋼が特定の組成をベースとしつつ、更に上記式(1)で表される条件を満足する組成を有すれば、Cr及び/又はその化合物の蒸発が飛躍的に抑制できることが明らかになった。この際、ステンレス鋼の最表層において、Cr含有割合は低く抑えられ、例えば5質量%以下(0質量%を含む)にまで低減できる一方、Alは濃化されており、実質的にAl23単層又はAl23が主成分である酸化スケール(酸化物層)が形成され得ることが判明した。
このようにしてフェライト系ステンレス鋼の組成を制御することにより、そのステンレス鋼の使用段階において、Cr及び/又はその化合物の蒸発抑制に優れた酸化物層が最表層として形成される。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、酸化物層の深層側にAl欠乏層を備え、フェライト系ステンレス鋼の表層から深層への方向、すなわち深さ方向におけるAl含有割合の分布において、Al欠乏層でのAl含有割合の最小値が、上記フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上であると好ましい。あるいは、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、酸化物層の深層側にAl欠乏層を備えていないものであると好ましい。
フェライト系ステンレス鋼において、最表層の酸化物層の深層側にあるAlの含有割合は、従来、その部分から酸化物層にAlが供給されるため、鋼全体におけるAl含有割合よりも低くなる。特に酸化物層のすぐ深層側におけるAlの含有割合は、酸化物層における高いAlの含有割合と相殺するように低くなる。これは、その部分のAlが酸化物層に顕著に供給されるためと考えられる。しかしながら、その部分でのAlの含有割合が低すぎると、例えば、酸化物層が磨耗等によって局所的に剥離した場合、その酸化物層に上記部分からAlを供給するにはその量が不足する傾向にある。その結果、酸化物層におけるAl酸化物(Al23)の再形成が遅れてしまう。そこで、酸化物のすぐ深層側におけるAl含有割合の最小値がステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上となるように、あるいは、そのAl含有割合が鋼全体におけるものよりも少なくならないように制御することで、酸化物層が剥離してもAl酸化物の再形成が円滑に行われる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、耐食性、耐酸化性を確保するためにCrをを含有する。このステンレス鋼は、特に800℃前後での耐水蒸気酸化性を確保するために、Crを11質量%以上含有する。Crの含有割合を高めることにより、Al及びSiの含有割合を低減することができる。一方、本実施形態のステンレス鋼は、その加工性、低温靱性及び475℃における耐脆化性を十分に確保するために、Crを22質量%以下含有する。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、Cr及び/又はその化合物の蒸発を防止するためにAlを含有する。Alはステンレス鋼の最表層にコランダム型の単一酸化物層を形成する。Alの含有割合は、Cr及び/又はその化合物の蒸発を十分に防止するために1.0質量%以上である。また、ステンレス鋼の優れた加工性及び低温靱性を確保するために、Alの含有割合は6.0質量%以下である。Crの含有割合が比較的低い場合、Alの含有割合を高くすることが好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、高温強度、特にクリープ特性を改善するために、任意成分としてC及びNを含有してもよい。ただし、ステンレス鋼の加工性及び低温靱性を優れたものとする観点、Ti、Al、Nbとの反応による炭窒化物の生成を抑制する観点、並びに、高温強度の改善に有効な固溶Ti及び固溶Nb、耐酸化性の改善に有効な固溶Alの減少を防止する観点から、C及びNの含有割合は、それぞれ0.03質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、耐スケール剥離性を向上させるためにMnを任意成分として含有してもよい。ただし、ステンレス鋼の過剰な硬質化を防止すると共に、加工性及び低温靱性の低下を抑制する観点から、Mnの含有割合は1.5質量%以下であると好ましく、0.7質量%以下であるとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、任意成分としてSを含有してもよい。ただし、熱間加工性及び耐溶接高温割れ性の低下並びに異常酸化を抑制する観点から、Sの含有割合は0.008質量%以下であると好ましく、0.005質量%以下であるとより好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、Al系の酸化物を安定化させ、耐水蒸気酸化性を高めるために任意成分としてSiを含有してもよい。ただし、ステンレス鋼の加工性、特に延性の低下を防止する観点、低温靱性の低下を抑制する観点、鋼表面での疵の生成を防止する観点、及び生産性の低下を抑制する観点から、Siの含有割合は2質量%以下であると好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、高温強度を析出強化により改善すると共に、Alを含有するステンレス鋼における溶接性及び靱性を高めるために、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)及びV(バナジウム)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を任意成分として含有してもよい。このステンレス鋼は、上記各々の元素の添加効果を偏りなく発揮させる観点から、それら3種の元素を全て含有することがより好ましい。Nb、Ti及びVの含有割合は、その添加効果をより有効に発揮する観点から、それぞれ、0.001〜0.70質量%、0.005〜0.50質量%及び0.001〜0.5質量%であると好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、耐酸性を改善するために、任意成分としてSn(スズ)を含有してもよい。水蒸気及び酸素を含む燃焼環境では、燃焼時に燃料などに含まれるS及び燃焼により発生する水分が、燃焼機器の運転停止時に凝縮水としてステンレス鋼に結露したり、あるいは、運転中であっても、ステンレス鋼の局所的に低温の部分に結露したりすることがある。この凝縮水はSの影響により酸性であるため、ステンレス鋼におけるその結露部分が酸腐食してしまう。Snはこの酸腐食を防止する特性(これを「耐酸露点腐食性」という)を有するので、この観点からも好適な元素である。さらにSnは、ステンレス鋼の快削性を向上させる。ただし、ステンレス鋼の熱間加工性の低下を抑制する観点から、Snの含有割合は1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.2質量%である。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、酸化物層に固溶し、その皮膜強度を向上させるために、Y(イットリウム)、希土類元素(以下、「REM」と表記する。)、Ca(カルシウム)及びZr(ジルコニウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素を任意成分として含有してもよい。なお、本明細書において、Yは希土類元素に含まれないものとする。皮膜強度の向上効果を顕著にする観点から、Y、REM、Ca及びZrの含有割合は、それぞれ、0.0005質量%以上、0.0005質量%以上、0.0005質量%以上、及び0.03質量%以上であると好ましい。一方、ステンレス鋼の過度な硬質化を防止すると共に、製造時におけるステンレス鋼表面の疵の生成を抑制し製造コストを低減する観点から、Y、REM、Ca及びZrの含有割合は、それぞれ、0.1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、及び0.5質量%以下であると好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、高温強度を固溶強化により改善するために、Mo(モリブデン)、Cu(銅)及びW(タングステン)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を任意成分として含有してもよい。上記各元素の添加効果をより有効に発揮する観点から、Mo、Cu及びWの含有割合は、それぞれ0.1質量%以上であることが好ましい。一方、ステンレス鋼の過度な硬質化を防止する観点から、Mo及びWの含有割合は、それぞれ4.0質量%以下であると好ましい。また、熱間加工性の低下を防止する観点から、Cuの含有割合は2.0質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、P(リン)、O(酸素)、Ni(ニッケル)などの不可避的不純物の含有割合を可能な限り低くすることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。例えば、通常は、Pの含有割合を0.04質量%以下、Oの含有割合を0.02質量%以下、Niの含有割合を0.6質量%以下にすることが好ましい。ただし、ステンレス鋼の加工性や溶接性を更に高いレベルで要する場合、これらの不可避的不純物の含有割合を更に低くすると好ましい。
なお、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、上述の各元素以外に、耐熱性の改善に有効なTa(タンタル)、熱間加工性の改善に有効なB(ホウ素)、Mg(マグネシウム)、Co(コバルト)を含有してもよい。ただし、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御される。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、従来知られている製造方法により製造することができる。あるいは、従来知られている製造方法の最終段階、又は得られたフェライト系ステンレス鋼の加工段階において、予備的な酸化処理により上述の酸化物層を形成してもよい。予備的な酸化処理として、例えば、基本的にはAl又はSiの酸化物層を迅速に形成するために、酸素の含有割合を高くし、かつ、水蒸気の含有割合を極力低くした雰囲気中で焼鈍する処理が挙げられる。水蒸気の含有割合を極力低くすることにより、酸素との共存によるCr及び/又はその化合物の蒸発を抑制することができる。
また、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の製造方法が、従来知られている製造方法により上述の組成を有するフェライト系ステンレス鋼を得る工程と、10〜25体積%の酸素と、2体積%以下(0体積%を含む)の水蒸気と、5体積%以下(0体積%を含む)の二酸化炭素とを含有し、残部が不活性ガス及び不可避的不純物からなる雰囲気中、上記フェライト系ステンレス鋼を、700〜1200℃の雰囲気温度で下記式(2a)、好適には下記式(2)、より好適には下記式(2b)で表される条件を満足する時間t以上加熱する工程とを有することが好ましい。これにより、酸化物層の深層側に形成されたAl欠乏層での上記Al含有割合の最小値を、フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上とすることが容易に可能となる。
15.92×t×exp(−5594/T)≧0.004 (2a)
15.92×t×exp(−5594/T)≧0.005 (2)
15.92×t×exp(−5594/T)≧0.007 (2b)
ここで、式(2a)、(2)及び(2b)中、tは時間(単位:時間)、Tは絶対温度(単位:K)を示す。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、耐クロム蒸発性が求められる用途、例えば600℃以上の高温で1%以上の酸素と5%以上の水蒸気とに曝される環境での用途に好適に用いられる。そのような用途としては、例えば、各種エネルギー供給システム、燃焼システム、コ−ジェネレーションシステム用途が挙げられる。より具体的には、熱をエネルギーに利用するシステムである固体酸化物型燃料電池、燃料電池の高温改質装置、マイクロガスエンジン、マイクロガスタービン、排ガス発電、各種高温燃焼機器及び自動車などの排ガス流路部位が挙げられる。燃焼排ガスが発生する場合、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼を採用することにより、Cr及び/又はその化合物の排出が抑制されるため、その鋼は、環境対応型のフェライト系ステンレス鋼ともいえる。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、板状体のフェライト系ステンレス鋼板に用いられてもよい。このステンレス鋼板は、プレス成形加工や打ち抜き加工等により各種部品の形状に成形したものであってもよい。
さらに、上述のフェライト系ステンレス鋼板を加工して、フェライト系ステンレス鋼からなる部材を得てもよい。そのような部材としては、上述の用途に用いられる各種機器が備える部材が挙げられる。より具体的には、例えば、固体酸化物形燃料電池の改質器、燃料又は空気導入管、高温熱交換器、筐体、各種バーナーの燃焼筒、自動車のエンジン排ガスと高温で接触する部位(エキゾーストマニホールド、フレキシブルチューブ、熱交換器、集熱機器、集電機器など)が挙げられる。これらの部材は、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼を採用する以外は、従来知られている方法により製造される。上記部材は、その全部が本実施形態のフェライト系ステンレス鋼からなるものであってもよく、あるいは、その一部のみが本実施形態のフェライト系ステンレス鋼からなるものであってもよい。
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<フェライト系ステンレス鋼試験片の作製>
表1に示す組成を有する3種類のステンレス鋼(鋼No.A、B、C)を30kg真空溶解炉で溶製してインゴットに鋳造した。得られたインゴットを粗圧延した後、熱延、焼鈍酸洗、冷延、仕上げ焼鈍の各工程を経て形成されたものに、JISG4305で規定される#400の研磨仕上げを施して、板厚1.0mmの冷延焼鈍材であるフェライト系ステンレス鋼板を得た。得られた鋼板を、厚さ1.0mm、25mm×35mmの矩形に切削加工し、フェライト系ステンレス鋼試験片とした。なお、表1中、「α」は上記式(1)の左辺から算出した数値を示し、各成分元素の含有割合が検出限界以下の場合(表中、「…未満」と表記した場合、又は「−−−」と表記した場合。以下同様。)は「0質量%」として算出した。
Figure 0005401039
<高温水蒸気酸化試験>
まず、1種類当たり2枚の上記試験片の質量を測定した。次いで、水蒸気と空気との混合ガス(水蒸気濃度:50体積%)が300mL/分の流量で流通する容器内に、上述の試験片を静置し、800℃の温度で100時間保持した。上記容器、その容器に混合ガスを供給する流路、その容器から混合ガスを排出する流路としては、石英、パイレックス(登録商標)及び/又はテフロン(登録商標)製のものを用いた。また、容器内を流通した混合ガスを排出する前に、その混合ガスを冷却して凝縮水を採取した。定量下限0.01mg/LのICP発光分光分析装置を用いて、採取した凝縮水中の6価Cr濃度を測定した。試験終了後、容器から試験片を取り出し、再び質量を測定した。測定した試験片の質量に基づいて、試験片の単位面積当たりの増量を算出した。この増量は試験片の酸化によるものである。結果を表2に示す。
Figure 0005401039
SUS430に相当する鋼Cを用いた試験片は、酸化による増量が最も大きく、凝縮水中の6価Cr濃度も最も高くなった。また、12%Cr−1%Al−1.5%Si鋼である鋼Aを用いた試験片は、酸化による増量が最も小さくなった一方で、凝縮水中の6価Cr濃度が比較的高い値となった。一方、本発明のフェライト系ステンレス鋼である鋼Bを用いた試験片では、酸化による増量が鋼Aを用いたものと同等(むしろより大きな値)であるにも関わらず、凝縮水中の6価Crは検出されなかった。これらの結果から、ステンレス鋼の酸化による増量とCr及び/又はその化合物の蒸発との間には良好な相関性が認められないこと、及び、ステンレス鋼の酸化を抑制しただけでは、必ずしもCr及び/又はその化合物の蒸発を防止できないことが明らかになった。
(実施例2)
<フェライト系ステンレス鋼試験片の作製>
表3に示す組成を有する18種類のフェライト系ステンレス鋼(鋼No.1〜18)の試験片を実施例1と同様にして作製した。
Figure 0005401039
<高温水蒸気酸化試験>
得られた各試験片について、実施例1と同様にして高温水蒸気酸化試験を行った。試験後、実施例1と同様にして、採取した凝縮水中の6価Cr濃度を測定した。6価Crが検出されたものを「×」、検出限界以下で検出されなかったものを「○」と評価した。また、試験後の試験片について、WDS(日本電子株式会社製、商品名「JXA−8900RL」)を用いて、上記[0014]にて説明した方法でCrの定量分析を行った。なお、定量を行う際の元素は、Crの他、Fe、Al、Si、Mn、O、必要に応じ、Mo、Cu、W、Zr、Ni、Nb、Ti、Vとした。Crの含有割合が5質量%以下のものを「○」、5質量%を超えるものを「×」と評価した。なお、分析条件は、加速電圧15kV、プローブ電流2×10-8Aに設定した。実施例1における鋼Bも含めた結果を表4に示す。
Figure 0005401039
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼の試験片(鋼No.1、2、4、5、6、8、9、10、11、13、14、15、B)について、凝縮水から6価Crが検出されなかった。また、試験片最表層に含有されるCrは5質量%以下であった。一方、それ以外の試験片(鋼No.3、7、12、16、17、18)について、凝縮水から6価Crが検出され、試験片最表層に含有されるCrは5質量%を超えていた。
(実施例3)
<フェライト系ステンレス鋼試験片の作製>
鋼No.A、B、2、6、9、11の試験片を用い、最表層への予備的な酸化の効果を確認した。まず、上述と同様にして各試験片を作製した。次いで、露点を20℃に調整した空気(水蒸気濃度2.3%)と、純度99.9%の二酸化炭素とを95:5の体積割合で混合した混合ガスが流通する容器内に上述の試験片を静置した。そして、800℃又は1100℃の温度でその状態を1分間、5分間又は10分間保持して予備的な酸化処理を行って、酸化処理後の試験片を得た。
<WDS分析、GDS分析>
次に、酸化処理後の試験片について、上述のWDSを用い上記と同様の分析条件でCrの定量分析を行った。WDS分析の結果、Crの含有割合が5質量%以下のものを「○」、5質量%を超えるものを「×」と評価した。結果を表5に示す。なお、表5中、「W」は上記式(2)の左辺から算出した数値を示す。
Figure 0005401039
また、試験片の深さ方向の元素分布について、GDS(理学電気工業株式会社製、商品名「System3860」)を用いて分析を行った。分析条件として、ビーム径を4mm、ランプ高圧電源出力を25W(スパッタリング速度:約2μm/分)又は40W(スパッタリング速度:約4μm/分)に設定した。分析対象の元素は、Al、Cr、Fe及びOとした。
図3はGDS分析の結果の一例を示すチャートである。このチャートの縦軸は各元素に起因する発光強度(intensity)を示し、この強度が高いほど元素が多く含有されていることを示す。また、横軸はスパッタリング時間(Time)(単位:秒)を示し、この時間が長いほどより深層側領域での元素分布を示す。(a)は鋼No.Bの試験片を800℃で1分間予備的に酸化処理した後にGDS分析を行った結果を示し、(b)は鋼No.Bの試験片を800℃で10分間予備的に酸化処理した後にGDS分析を行った結果を示す。
図3の(a)に示したチャートから、当該試験片の最表層の領域、すなわちスパッタリング時間が0〜3秒の領域に酸化物層が形成され、その酸化物層においてAlが濃化していることが確認された。また、酸化物層のすぐ深層側においてAl含有割合が低くなっている領域があり、更に深層側に向かうにつれてAl含有割合が高くなり、スパッタリング時間が25秒を過ぎた領域は安定したAl含有割合を示していることが確認された。この結果から、スパッタリング時間が25秒を過ぎた領域では、Al含有割合は鋼全体におけるAl含有割合と同等であることが明らかである。よって、当該試験片において、スパッタリング時間が4〜25秒の領域がAl欠乏層であると認められる。
このAl欠乏層において最小となる発光強度をq、安定した発光強度(図3(a)ではスパッタリング時間が30秒での発光強度)をrとするとq/rが0.73であった。すなわち、Al欠乏層でのAl含有割合の最小値が、フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の73%であった。
一方、図3の(b)に示したチャートから、最表層の領域、すなわち分析時間が0〜5秒の領域に酸化物層が形成され、その酸化物層においてAlが濃化していることが確認された。また、酸化物層のすぐ深層側においても、更に深層側の領域と比較してAl含有割合が低くなっている領域が認められないことが確認された。この結果から、当該試験片はAl欠乏層を形成していないと認められた。
上記GDS分析の結果、Al欠乏層でのAl含有割合の最小値がフェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上である場合、あるいはAl欠乏層の存在が認められなかった場合を「○」、Al欠乏層でのAl含有割合の最小値がフェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%未満である場合を「×」と評価した。結果を表5に示す。
<酸化物層除去後の高温水蒸気酸化試験>
スケール剥離やエロージョン又はその他の何らかの理由により、フェライト系ステンレス鋼の酸化物層が除去された場合の影響を調べた。まず、上記酸化処理後の各試験片を50℃の3質量%HF−15質量%HNO3水溶液中に浸漬する酸洗処理を、目視で酸化層の残量が30〜50%程度になった時点まで行った。次いで、酸洗処理後の試験片をアセトン溶液中で十分に超音波洗浄した。超音波洗浄後の試験片について、800℃の温度で100時間保持することに代えて、700℃の温度で100時間保持した以外は実施例1と同様にして、高温水蒸気酸化試験を行った。試験後、実施例1と同様にして、採取した凝縮水中の6価Cr濃度を測定した。6価Crが検出されたものを「×」、検出限界以下で検出されなかったものを「○」と評価した。結果を表5に示す。
表5に示す結果から明らかなように、上記式(1)で表される条件を満足することに加えて、更に最表層でのCr含有割合が5質量%以下であり、Al欠乏層でのAl含有割合の最小値がフェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上又はAl欠乏層の存在が認められない試験片であれば、凝縮水中の6価Crの量をより確実に低減することができる。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、耐クロム蒸発性が求められる部材、例えば600℃以上の高温で酸素及び水蒸気を含む雰囲気に曝される部材の材料として好適に用いられる。そのような部材としては、例えば、固体酸化物型燃料電池、燃料電池の燃料改質装置や高温ガス−ガス熱交換器、ガスバーナーの燃焼筒、自動車の燃焼部位、及びこれらの排ガス雰囲気に高温で曝される部位が備える部材が挙げられる。本発明のフェライト系ステンレス鋼をこれらの部材の材料に採用することで、有害成分であるCrの蒸発を極力低減したクリーンな排ガスが排出されるため、環境汚染の低減に繋がることが期待される。
ステンレス鋼の深さ方向における断面を部分的に示す模式端面図である。 図1に示すものと同様の模式端面図である。 フェライト系ステンレス鋼のGDS分析の結果を示すチャートである。
符号の説明
10…酸化物層、20…母材。

Claims (6)

  1. Cr:12.07〜20.11質量%、C:0.03質量%以下(0質量%を含む)、N:0.03質量%以下(0質量%を含む)、Mn:1.5質量%以下(0質量%を含む)、S:0.008質量%以下(0質量%を含む)、Si:2質量%以下(0質量%を含む)、Al:1.55〜5.02質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成(ただし、Cr:18.2質量%、C:0.005質量%、N:0.004質量%、Mn:0.04質量%、S:0.003質量%、Si:0.09質量%、Al:3.1質量%、P:0.029質量%を含有するもの、並びに、Cr:19.9質量%、C:0.003質量%、N:0.003質量%、Mn:0.10質量%、S:0.002質量%、Si:0.06質量%、Al:5.0質量%、P:0.025質量%を含有するものを除く。)を有するフェライト系ステンレス鋼であって、
    下記式(1)で表される条件を満足し、
    最表層として酸化物層を備え、前記酸化物層中のCr含有割合が5質量%以下(0質量%を含む)であ
    前記酸化物層の深層側にAl欠乏層を備え、前記フェライト系ステンレス鋼の深さ方向におけるAl含有割合の分布において、前記Al欠乏層でのAl含有割合の最小値が、前記フェライト系ステンレス鋼全体におけるAl含有割合の90%以上である、フェライト系ステンレス鋼。
    Cr+1.5×WSi+6×WAl≧30 (1)
    (式(1)中、WCr、WSi、WAlはそれぞれ、前記フェライト系ステンレス鋼の総質量に対するCr、Si、Alの含有割合(単位:質量%)を示す。)
  2. Ti:0.005〜0.50質量%を更に含有する、請求項1記載のフェライト系ステ
    ンレス鋼。
  3. Nb:0.001〜0.70質量%、V:0.001〜0.50質量%、Sn:0.001〜1.0質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有する、請求項2記載のフェライト系ステンレス鋼。
  4. Y:0.0005〜0.1質量%、希土類元素:0.0005〜0.1質量%、Ca:0.0005〜0.01質量%、Zr:0.03〜0.5質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有する、請求項2又は3に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  5. Mo:0.1〜4.0質量%、Cu:0.1〜2.0質量%、W:0.1〜4.0質量%からなる群より選ばれる1種以上の元素を更に含有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、
    10〜25体積%の酸素と、2体積%以下(0体積%を含む)の水蒸気と、5体積%以下(0体積%を含む)の二酸化炭素とを含有し、残部が不活性ガス及び不可避的不純物からなる雰囲気中、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼を、700〜1200℃の雰囲気温度で下記式(2)で表される条件を満足する時間t以上加熱する工程を有する、フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
    15.92×t×exp(−5594/T)≧0.005 (2)
    (式(2)中、tは時間(単位:時間)、Tは前記雰囲気の絶対温度(単位:K)を示す。)
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