JP6006893B2 - 燃料電池用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される改質器、熱交換器などの燃料電池高温部材に好適なフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。特に、改質ガス環境を含む酸化環境下においてCrの蒸発を抑止したステンレス鋼表面の反応性が要求される固体酸化物型燃料電池(SOFC)の高温部材に好適である。
最近、石油を代表とする化石燃料の枯渇化、CO2排出による地球温暖化現象等の問題から、従来の発電システムに替わる新しいシステムの普及が加速している。その1つとして、分散電源,自動車の動力源としても実用的価値が高い「燃料電池」が注目されている。燃料電池にはいくつかの種類があるが、その中でも固体高分子型燃料電池(PEFC)や固体酸化物型燃料電池(SOFC)はエネルギー効率が高く、将来の普及拡大が有望視されている。
燃料電池は、水の電気分解と逆の反応過程を経て電力を発生する装置であり、水素を必要とする。水素は、都市ガス(LNG)、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を触媒の存在下で改質反応させることにより製造される。中でも都市ガスを原燃料とする燃料電池は、都市ガス配管が整備された地区において水素を製造できる利点がある。
燃料改質器は、水素の改質反応に必要な熱量を確保するため、通常、200〜900℃までの高温で運転される。更に、このような高温運転下において、多量の水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素等を含む酸化性の雰囲気に曝され、水素の需要に応じて起動・停止による加熱・冷却サイクルが繰り返される。これまで、このような過酷な環境下において十分な耐久性を有する実用材料として、SUS310S(25Cr−20Ni)に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼が使用されてきた。将来、燃料電池システムの普及拡大に向けて、コスト低減は必要不可欠であり、使用材料の最適化による合金コストの低減は重要な課題である。
更に、SOFCシステムでは、高Cr含有ステンレス鋼を適用した場合、SOFC動作温度においてCrの蒸発によるセラミックス電極の被毒を防止する課題がある。Crの蒸発による被毒は、ステンレス表面に形成したCr23(s)が下記(1)式と(2)式に示す反応に基づいて、蒸気圧の高いCrO3(g)となり、気相拡散によりセラミックス電極へCr23(s)として付着するものである。(2)式に示す反応の通り、セラミックス電極へCr23(s)が付着すると、本来、セラミックス電極中を移動するe-が消費されるために燃料電池の内部抵抗は上昇し、発電効率の低下を招く。
1/2Cr23(s)+3/4O2(g)=CrO3(g) ・・・(1)
CrO3(g)+3e-=1/2Cr23(s)+3/2O2- ・・・(2)
(s):固体、(g):ガス、e-:電子
上述した背景から、良好な耐酸化性を有しCrの蒸発を抑制するには、Al含有フェライト系ステンレス鋼の適用が推奨される。特許文献1には、Cr:8〜35%、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Mn:1.5%以下、Si:0.8〜2.5%及び/又はAl:0.6〜6.0%であり、更にNb:0.05〜0.80%、Ti:0.03〜0.50%、Mo:0.1〜4%、Cu:0.1〜4%の1種又は2種以上を含み、Si及びAlの合計量が1.5%以上に調整された組成を有する石油系燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらステンレス鋼は、50体積%H2O+20体積%CO2の雰囲気中、900℃への加熱・冷却時の酸化増量が小さいことを特徴としている。
特許文献2には、Cr:8〜25%、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.1〜2.5%、Mn:1.5%以下、Al:0.1〜4%を含み、更にNb:0.05〜0.80%、Ti:0.03〜0.5%、Mo:0.1〜4%、Cu:0.1〜4%の1種又は2種以上を含むアルコール系燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらステンレス鋼は、50体積%H2O+20体積%CO2の雰囲気中、600℃への加熱・冷却500回繰り返し後の酸化増量が2.0mg/cm2以下であることを特徴としている。
特許文献3には、Cr:11〜22%、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:1.5%以下、Al:1〜6%を含み、Cr+5Si+6Al≧30を満足する発電システム用として好適なフェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらステンレス鋼は、700℃及び800℃の50体積%H2O雰囲気中(残り空気)で良好な耐酸化性を有し、Cr含有量を5質量%以下とするAl系酸化物層を形成させ、Al系酸化物層の深層側にAl欠乏層を備えることによりCrの蒸発を防止することを特徴としている。
特許文献4には、Cr:11〜21%、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:3%以下、Mn:1.0%以下、Al:6%以下、Cu:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%、Nb:0.1%以下、Ti:0.005〜0.5%、Sn:0.001〜0.1%、O:0.002%以下、H:0.00005%以下、Pb:0.01%以下を含む燃料電池の高温改質装置に好適なフェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらステンレス鋼は、1200℃、10体積%H2O雰囲気中(残り空気)で耐酸化性が良好であることを特徴としている。
特許文献5には、Cr:13〜20%、C:0.02%未満、N:0.02%以下、Si:0.15超〜0.7%、Mn:0.3%以下、Al:1.5〜6%、Ti:0.03〜0.5%、Nb:0.6%以下を含み、固溶Ti量と固溶Nb量を調整することにより
耐酸化性とクリープ破断寿命に良好な燃料電池用Al含有フェライト系ステンレス鋼が開示されている。これらステンレス鋼は、1050℃、大気中の加速酸化試験により良好な耐酸化性が得られることを示している。
特許文献1及び2のフェライト系ステンレス鋼は、50体積%H2O+20体積%CO2環境下での耐酸化性改善を指向し、前者はSi+Al>1.8%の複合添加によるCr系酸化皮膜、後者はSi+Al複合添加によるAl系酸化皮膜とCr系酸化皮膜の強化を技術思想としている。Cr系酸化皮膜を形成する場合、前記(1)(2)式を用いて述べたCrの蒸発は避け難い。
特許文献3のフェライト系ステンレス鋼は、50体積%H2O雰囲気中(残り空気)での耐酸化性改善を指向し、Si+Alの複合添加によりCr含有量を5質量%以下とするAl系酸化物層を形成させ、Al系酸化物層の深層側にAl欠乏層を備えることによりCrの蒸発を防止する技術思想に基づいている。Al系酸化物層を形成する予備酸化条件は800〜1100℃、露点20℃に調整した空気と二酸化炭素を混合させた雰囲気中、10分以下で実施することが開示されている。
特許文献4のフェライト系ステンレス鋼は、B無添加、Sn添加を必須とした18Cr−1.9〜3.3Alに限定されている。特許文献5のフェライト系ステンレス鋼は、固溶Ti量を低減して1050℃の加速酸化条件下で生成するTi系酸化物を抑制しAl系酸化皮膜の耐酸化性を向上させつつ、Nb添加による固溶Nb量を確保してクリープ破断強度を上昇させる技術思想に基づく。ここでは、Ti系酸化物の形成を抑制することが特徴である。
特許第3886785号公報 特許第3910419号公報 特許第5401039号公報 特開2012−12674号公報 特開2010−222638号公報
前記した都市ガスを原燃料とした燃料電池の改質ガスは、水蒸気/二酸化炭素/一酸化炭素に加えて、多量の水素を含むことが特徴であり、このような改質ガス環境下の酸化特性については不明である。更に、将来の普及拡大が期待されるSOFCシステムの場合、Crの蒸発によるセラミックス電極の被毒を防止する課題がある。特許文献1及び2のフェライト系ステンレス鋼は、Crの蒸発は避け難くSOFCシステムへの適用性には課題がある。特許文献3〜5のフェライト系ステンレス鋼は、Al系酸化物の形成による耐酸化性を指向しているものの、改質ガス環境の特徴である多量の水素と水蒸気を含む環境下における酸化皮膜の保護性に対する有効性については何ら言及されていない。更に、特許文献3に開示されたCrの蒸発防止には、のAl系酸化物層の形成を前提とし、予備酸化処理が必須である。加えて、特許文献4及び5には、Crの蒸発防止に対する有効性について何ら言及されておらず、前者はSnの微量元素の調整が必要あり、後者はTi系酸化物を抑止する必要がある。
以上に述べた通り、改質ガス環境下の耐久性として重要な耐酸化性及びSOFCシステムへの適用性が高いCrの蒸発抑止を予備酸化に頼ることなく実現したフェライト系ステンレス鋼については未だ出現していないのが現状である。
本発明は、上述した課題を解消すべく案出されたものであり、過度なAl及びSi添加や微量元素の調整あるいは予備酸化に頼ることなく改質ガス環境下の高い耐酸化性とCrの蒸発抑止を兼備した燃料電池用フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供するものである。
(1)質量%にて、Cr:11〜25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:1%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼材であって、水素ガスを50体積%以上含み残部が窒素ガスと1%未満の窒素・水素以外のガス成分からなる雰囲気中にて800〜1000℃に10分以内で加熱した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼材の表面は、0.1μm未満の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域でOを除くカチオンイオン分率においてAl濃度の最大値が30質量%以上含むことを特徴とする燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
(2)質量%にて、Cr:11〜25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:1%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼材であって、大気中で850℃に加熱し100h継続した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼材の表面は、0.1μm未満の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域でOを除くカチオンイオン分率においてAl濃度の最大値が30質量%以上含むことを特徴とする燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
(3)前記鋼材の表面はさらに、Oを除くカチオンイオン分率においてTi濃度の最大値が3質量%以上となることを特徴とする(1)又は(2)に記載の燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
(4)さらに質量%にて、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、Sn:1%以下、Sb:1%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ga:0.1%以下、Mg:0.01%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかひとつに記載する燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
以下、上記(1)〜(4)の鋼に係わる発明をそれぞれ本発明という。また、(1)〜(4)の発明を合わせて、本発明ということがある。
表2の本発明例No.7について、光輝焼鈍材の表面組成をGDS分析した結果であり、OとCを除くカチオンイオン分率に換算して深さ方向の各元素プロファイルを示した図である。 表2の本発明例No.9について、予備酸化後の表面組成をGDS分析した結果であり、OとCを除くカチオンイオン分率に換算して深さ方向の各元素プロファイルを示した図である。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、改質ガス環境を想定した多量の水蒸気と水素を含む雰囲気下でAl含有フェライト系ステンレス鋼の表面組成とCr蒸発の関係について鋭意実験と検討を重ね、本発明を完成させた。以下に本発明で得られた知見について説明する。
(a)多量の水蒸気と水素が共存する改質ガス環境下では、大気や水素を含まない水蒸気酸化環境と比較して、Al含有フェライト系ステンレス鋼において、Crの酸化が進行し易くCrの蒸発が助長される傾向にある。これらCrの酸化促進メカニズムは未だ不明な点も多いが、水素ガスがAl系酸化皮膜中の欠陥形成を誘発して、水蒸気の存在する酸化環境下においてCrの外方拡散が進行したことによると推察される。
(b)上述した改質ガス環境下におけるCrの酸化は、Al含有フェライト系ステンレス鋼に形成した表面皮膜に大きく影響される。通常、酸洗や研磨後には、Fe−Crの不働態皮膜が表面に形成される。Crの蒸発は、Fe−Crを主体とする不働態皮膜が表面に形成されている場合に促進しやすい。ここで、酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面へAl、更にはTiを予め濃縮させることにより、当該環境下におけるCrの酸化を抑制し、Crの蒸発を顕著に抑止できる新規な知見が得られた。
(c)前記した酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面にTiやAl濃度を高めてCrの蒸発を抑止するには、TiやAlの添加量を過度に高めるのではなく、Mg、Ga、Sn、Sbの微量添加が有効であることを知見した。これら元素はいずれも表面活性元素であり、表面近傍に濃化してCrの酸化を抑制するとともに、Crよりも酸化物の生成自由エネルギーが小さく酸化しやすいTiやAlの選択酸化を促進し、Crの蒸発を抑制する効果を発現する。
(d)前記した酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面へのAl、更にはTiを効率的に濃縮させるには、冷間加工後に水素ガスを含む低露点雰囲気中で光輝焼鈍を行うことが有効である。その場合においても、前記したMg、Ga、Sn、Sbのいずれか一種以上を微量添加することがTiやAlを濃縮した酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面の形成に有効である。
(e)また、水素ガスを含む光輝焼鈍に依らず、大気中など酸素を含む雰囲気中において適正な予備酸化を実施することで、前記した酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面にTiやAlを濃縮させて、Crの蒸発を抑止できることも分った。
上述したように、Al、更にはTiを濃縮させた酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面を形成することにより、改質ガス環境下におけるCrの蒸発を抑止する全く新規な知見が得られた。更に、TiやAlを濃縮させた酸化皮膜の形成ならびに当該環境下のCr蒸発抑止に対して、Mg、Ga、Sn、Sbの微量添加と光輝焼鈍が有効である。前記(1)〜(4)の本発明は、上述した検討結果に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(I)成分の限定理由を以下に説明する。
Crは、耐食性に加えて、本発明の目標とする表面酸化皮膜の保護性を確保する上でも基本となる構成元素である。本発明においては、11%未満では目標とする耐酸化性が十分に確保されない。耐酸化性が十分でない場合、酸化皮膜の成長により本発明の目標とするCr蒸発の抑制効果が得られない。従って、下限は11%とする。しかし、過度なCrの添加は高温雰囲気に曝された際、脆化相であるσ相の生成を助長することに加え、合金コストの上昇と本発明の目標とするCr蒸発を助長する場合がある。上限は、基本特性や製造性と本発明の目標とするCr蒸発抑止の視点から25%とする。基本特性及び耐酸化性とコストの点から、好ましい範囲は13〜22%である。より好ましい範囲は、16〜20%である。
Cは、フェライト相に固溶あるいはCr炭化物を形成して本発明の目標とする耐酸化性を阻害し、Cr蒸発の抑制効果が得られない。このため、C量は少ないほど良く、上限を0.03%とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.001%とすることが好ましい。耐酸化性と製造性の点から、好ましい範囲は0.002〜0.02%である。
Siは、本発明の目標とする耐酸化性を確保する上で重要な元素である。Siは、Al系酸化皮膜中へ僅かに固溶するとともに、酸化皮膜直下/鋼界面にも濃化し、改質ガス環境下の耐酸化性を向上させる。これら効果を得るために下限は0.1%とすることが好ましい。一方、過度な添加は、鋼の靭性や加工性の低下ならびに本発明の目標とするAl系酸化皮膜の形成を阻害する場合もあるため、上限は2%とする。耐酸化性と基本特性の点から、1%以下が好ましい。Siの効果を積極的に活用する場合は0.3〜1%の範囲とすることが好ましい。
Mnは、改質ガス環境下でSiとともに酸化皮膜中に固溶して保護性を高める。これら効果を得るために下限は0.1%とすることが好ましい。一方、過度な添加は、鋼の耐食性や本発明の目標とするTiやAl系酸化皮膜の形成を阻害するため、上限は2%以下とする。耐酸化性と基本特性の点から、1%以下が好ましい。Mnの効果を積極的に活用する場合は0.2〜1%の範囲とすることが好ましい。Mnは含有しなくても良い。
Alは、脱酸元素に加えて、本発明の目標とするAl系酸化皮膜を形成してCr蒸発を抑止するために必須の添加元素である。本発明においては、0.5%未満では目標とするCr蒸発の抑止効果が得られない。従って、下限は0.5%とする。しかし、過度なAlの添加は、鋼の靭性や溶接性の低下を招き生産性を阻害するため、合金コストの上昇とともに経済性にも課題がある。上限は、基本特性と経済性の視点から4.0%とする。本発明のCr蒸発抑止及び基本特性と経済性の点から、好適な範囲は1.0〜3.5%である。製造上より好ましい範囲は、1.5〜2.5%とする。
Pは、製造性や溶接性を阻害する元素であり、その含有量は少ないほど良いため、上限は0.05%とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.003%とすることが好ましい。製造性と溶接性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.04%、より好ましくは0.01〜0.03%である。
Sは、鋼中に含まれる不可避的不純物元素であり、本発明の目標とするAl系皮膜の保護性を低下させる。特に、Mn系介在物や固溶Sの存在は、高温・長時間使用におけるAl系酸化皮膜の破壊起点としても作用し、Cr蒸発の抑制効果が得られなくなる。従って、S量は低いほど良いため、上限は0.01%とする。但し、過度の低減は原料や精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.0001%とすると好ましい。製造性と耐酸化性の点から、好ましい範囲は0.0001〜0.002%、より好ましくは0.0002〜0.001%である。
Nは、Cと同様に本発明の目標とする耐酸化性を阻害する。このため、N量は少ないほど良く、上限を0.03%とする。但し、過度な低減は精錬コストの上昇に繋がるため、下限は0.002%とすることが好ましい。耐酸化性と製造性の点から、好ましい範囲は0.005〜0.02%である。
Tiは、C,Nを固定する安定化元素の作用による鋼の高純度化を通じて耐酸化性を向上させることに加えて、Al系酸化皮膜の外層側へTi系酸化物を形成して本発明の目標とするCrの蒸発を抑止する有効な元素である。これら効果を得るために下限は0.01%とすることが好ましい。一方、過度な添加は合金コストの上昇や再結晶温度上昇に伴う製造性の低下や耐酸化性の低下によりCr蒸発の抑制効果が得られなくなるため、上限は1%とする。合金コストや製造性ならびに耐酸化性の点から、好ましい範囲は0.05〜0.5%である。更に、Tiの効果を積極的に活用する好適な範囲は0.1〜0.4%である。Tiは含有しなくても良い。
上記の基本組成に加えて、本発明の目標とする酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面を形成してCrの蒸発を抑止するには、Mg、Ga、Sn、Sbのいずれか1種以上を微量添加することが好ましい。これら元素は、前記した通り、表面近傍に濃化してCrの酸化抑制とTiやAlの選択酸化を促進する作用がある。これら効果を得るために、MgとGaの下限は0.0005%、SnとSbの下限は0.005%とすることが好ましい。一方、過度な添加は、鋼の精錬コスト上昇や靭性低下により製造性を阻害するため、上限は、Mg:0.01%、Ga:0.1%、Sn:1%、Sb:1%とする。本発明の目標とするCr蒸発の抑止と基本特性の点から、Mg:0.001〜0.005%、Ga:0.001〜0.01%、Sn:0.01〜0.5%、Sb:0.01〜0.5%の範囲とすることが好ましい。
また、本発明のステンレス鋼は、更に必要に応じて、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下,Y:0.1%以下,Hf:0.1%以下,REM:0.1%以下の1種または2種以上を含有しているものであってもよい。
Ni、Cu、Mo、W、Co、Nb、Vは、当該部材の高温強度と耐食性を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加する。但し、過度な添加は合金コストの上昇や製造性を阻害することに繋がるため、Ni、Cu、Wの上限は1%とする。Moは熱膨張係数の低下による高温変形の抑制にも有効な元素であることから、上限は2%とする。Co、Nb、Vの上限は0.5%とする。いずれの元素もより好ましい含有量の下限は0.1%とする。
B、Caは、熱間加工性や2次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。但し、過度な添加は製造性を阻害することに繋がるため、上限は0.005%とする。好ましい下限は0.0001%とする。
Zr、La、Y、Hf、REMは、熱間加工性や鋼の清浄度を向上ならびに耐酸化性改善に対しても、従来から有効な元素であり、必要に応じて添加しても良い。但し、本発明の技術思想と合金コストの低減から、これら元素の添加効果に頼るものではい。添加する場合、Zrの上限は0.5%、La、Y、Hf、REMの上限はそれぞれ0.1%とする。Zrのより好ましい下限は0.01%、La、Y、Hf、REMの好ましい下限は0.001%とする。ここで、REMは原子番号57〜71に帰属する元素であり、例えば、Ce、Pr、Nd等である。
以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。一般的な不純物元素である前述のP、Sを始め、Zn、Bi、Pb、Se、H、Ta等は可能な限り低減することが好ましい。一方、これらの元素は、本発明の課題を解決する限度において、その含有割合が制御され、必要に応じて、Zn≦300ppm、Bi≦100ppm、Pb≦100ppm、Se≦100ppm、H≦100ppm、Ta≦500ppmの1種以上を含有してもよい。
(II)鋼表面の限定理由について以下に説明する。
本発明の燃料電池用フェライト系ステンレス鋼は、上述した鋼成分を有し、その表面に0.1μm未満の、Alが濃縮し、好ましくはさらにTiが濃縮した酸化皮膜を形成するものとする。酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域の厚さは0.2μm未満とし、光輝焼鈍や大気中の予備酸化の効率を考慮して0.1μm未満とすることが好ましく、より好ましくは0.05μm未満とする。酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域の厚さの下限は、特に規定するものではないが、好ましくは改質ガス環境下での耐酸化性とCrの蒸発抑止に効果を発揮する0.005μm以上とする。より好ましい膜厚は0.01μm以上とする。
上記酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面の組成は、改質ガス環境下の耐酸化性とCrの蒸発抑止に効果を発揮するために、Oを除くカチオンイオン分率において、Al濃度の最大値が30質量%以上とする。ここで、酸化皮膜直下の鋼表面とは、表面皮膜厚さと同じ厚さの深さまでと定義する。すなわち、酸化皮膜の直下から酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域と定義する。さらにTi濃度の最大値を3質量%以上とすると好ましい。Tiは、Al系酸化皮膜の外層側に酸化物を形成し、Crの蒸発抑止に効果を発現する。これら効果は、酸化皮膜中のTi濃度の最大値を3質量%以上に高めることで発現し、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。Ti濃度の上限は、特に規定するものでないが、光輝焼鈍や予備酸化の効率を考慮して60質量%、より好ましくは50質量%とする。Alは、上記Tiとの複合又は単独でもAl系酸化皮膜を形成して改質ガス環境下のCr蒸発抑止に効果を発揮する。これら効果は、酸化皮膜中及び皮膜直下の鋼表面にAl濃度の最大値で30質量%以上に高めることで効果を発現し、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。Al濃度の上限は特に規定するものでないが、光輝焼鈍や予備酸化の効率を考慮して90質量%、より好ましくは80質量%とする。本発明の目標とするCr蒸発抑止には、TiとAlを複合して酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面に濃縮させることが好ましく、好ましい範囲はTi濃度の最大値が10〜50質量%、Al濃度の最大値50〜80%質量%である。
酸化表面皮膜中及び酸化皮膜直下のTi、Alの存在については、グロー放電質量分析法(GDS分析法)により、OやCなどの軽元素と鋼の構成元素であるFe,Crとともに検出し、表面からの各元素プロファイルを測定することができる。表面からの各元素プロファイル測定結果から、酸化皮膜厚さは、Oの検出強度が表面から深さ方向で半分となる位置(半値幅)により求めることができる。TiやAlの最大濃度は、元素プロファイルの測定結果から、OやCなどの軽元素を除去し、カチオンイオン分率へ換算した各元素プロファイルを作成した上で、酸化皮膜の厚さの2倍の深さまでの領域範囲内でTi、Al濃度が最大値を示す位置の値を採用することによって求めることができる。
(III)製造方法について以下に説明する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、主として,熱間圧延鋼帯を焼鈍あるいは焼鈍を省略してデスケ−リングの後冷間圧延し,続いて仕上げ焼鈍とデスケ−リングした冷延焼鈍板を対象としている。場合によっては、冷間圧延を施さない熱延焼鈍板でも構わない。さらに、ガス配管用としては、鋼板から製造した溶接菅も含まれる。配管は、溶接菅に限定するものでなく,熱間加工により製造した継ぎ目無し菅でもよい。上述した鋼の仕上げ焼鈍は、700〜1100℃とするのが好ましい。700℃未満では鋼の軟質化と再結晶が不十分となり、所定の材料特性が得られないこともある。他方、1100℃超では粗大粒となり、鋼の靭性・延性を阻害することもある。
(IV)酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面形成に好適な光輝焼鈍および予備酸化について説明する。
本発明の対象とする改質ガス環境下とは、前記した通り、多量の水蒸気、水素、二酸化炭素、一酸化炭素等を含む酸化性の雰囲気で200〜900℃までの高温に曝される環境を意味する。本環境下のCr蒸発は、前記した通り、他の酸化性の雰囲気よりも過酷であり、その抑止は大気や水蒸気を含む他の酸化性雰囲気においても同様な効果を発現する。本発明の目標とするAlやTiを濃縮させた酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面形成には、冷間加工後に水素ガスを含む低露点雰囲気中で光輝焼鈍を行うことが有効である。光輝焼鈍の雰囲気ガスは、Crの酸化を抑制してTiやAlを選択的に酸化させるために、水素ガスを50体積%以上含み残部は実質的に窒素ガスなどの不活性ガスとする。残部が実質的に窒素ガスとは、残部に含まれる窒素・水素以外のガス成分が1%未満であることを意味する。雰囲気ガスの露点は、−40℃以下が好ましく、水素ガスは75体積%以上が好ましく、より好ましくは90体積%以上とする。残部の不活性ガスは、工業的には安価な窒素ガスが好ましいが、ArガスやHeガスでも良い。また、本発明の目標とする表面(酸化)皮膜の形成を促進または支障ない範囲で雰囲気ガス中に酸素などのガスが5体積%未満の範囲で混入しても構わない。光輝焼鈍の温度は、鋼の再結晶温度以上で雰囲気ガスの露点を下げるために有効な800℃以上とし、より好ましくは900℃以上とする。他方、1100℃超では粗大粒となり、前記した通り、鋼の靭性・延性など材質上好ましくない。鋼材の加熱温度は、900〜1050℃の範囲とすることが好ましい。上記温度に滞留する加熱時間は、光輝焼鈍を工業的な連続焼鈍ラインで実施することを想定して10分以内とすることが好ましい。より好ましくは5分以内とする。これら光輝焼鈍をバッチ炉で実施する場合においては、加熱温度の下限や加熱時間の上限は特に規定するものでなく、例えば、700℃、24時間としても構わない。ここで、本発明の目標とする表面(酸化)皮膜の形成とCrの蒸発抑止を達成できる本発明のフェライト系ステンレス鋼において、当該光輝焼鈍条件に限定されるものでないことは言うまでもない。
本発明の目標とする酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面は、上述した光輝焼鈍を実施しなくとも予備酸化において形成することもできる。前記(III)の製造方法に記載した方法で製造した鋼材において、燃料電池用途として使用する前に予備酸化を行い、システムの運転初期において、TiやAlを濃縮させた酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面を形成しておくことが有効である。また、前記光輝焼鈍材を予備酸化しても良い。
予備酸化を行う場合は、酸素を含む酸化性雰囲気中であることが好ましく、簡便的に大気中で実施することができる。予備酸化の条件は、例えば、大気中、700〜1100℃、システムの運転初期を考慮して10〜1000hとすることが好ましい。例えば、より好ましい予備酸化条件として、大気中、800〜900℃、50〜100hの範囲で実施すると、本発明の目標とする0.1μm未満の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域でTiやAlを濃縮させた表面を形成することができる。ここで、本発明のフェライト系ステンレス鋼において、本発明の目標とする酸化皮膜及び酸化皮膜直下の鋼表面の形成とCrの蒸発抑止を達成できれば、当該予備酸化条件に限定されるものでないことは言うまでもない。
本発明の成分組成を有するステンレス鋼板を用い、上記説明した光輝焼鈍又は予備酸化を行うことにより、酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域を0.2μm未満とすることができる。
以下に、本発明の実施例について述べる。
表1に成分を示す各種フェライト系ステンレス鋼を溶製し、熱間圧延、焼鈍酸洗、冷間圧延後、光輝焼鈍あるいは仕上げ焼鈍・酸洗により板厚0.6〜1.2mmの冷延鋼板を製造した。表1及び下記表2で本発明範囲から外れる数値はアンダーラインを付与している。
Figure 0006006893
光輝焼鈍は、水素ガスを50〜100体積%含み残部が窒素ガス及び1体積%未満のその他ガスとする雰囲気中で600〜1050℃、雰囲気ガス露点は−45〜−55℃の範囲で実施した。加熱時間は1〜3分、一部はバッチ炉で600分とした。これら試験片については、必要に応じて大気中、850℃、100hの予備酸化を行い酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域の組成のCr蒸発抑制効果を検証した。作製した鋼板の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域は、GDS分析法により、検出元素について表面からの各元素プロファイルを測定し、膜厚と組成を求めることができる。前記した通り、皮膜厚さはOの半値幅とし、TiとAlの最大濃度はカチオンイオン分率に換算した値である。
各フェライト系ステンレス鋼板から30mm角の試験片を切り出し、アルミナシート上に置き、改質ガス環境下を想定したCr蒸発の評価に供した。改質ガス環境下は、燃料電池改質機において鋼材が曝される雰囲気を想定し、26体積%H2O+7体積%CO2+7%体積%CO−60%H2の雰囲気とし、650℃に加熱し1000h継続した後で室温まで冷却した。その後、アルミナシートに付着したCr酸化物を目視で確認し、次いで、100mlの溶媒に抽出してICP発光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)によりCr量を定量した。Cr蒸発の評価は、目視にてCr酸化物がアルミナシートに付着しICP分析のCr濃度が0.01mg/100mlを超える場合を「×」とした。一方、目視ではCr酸化物の付着は確認されず、ICP分析のCr濃度が0.01mg/100ml以下の場合を「○」、ICP分析のCr濃度が検出下限の0.001mg/100ml以下の場合を「◎」とした。本発明の目標とするCr蒸発の抑止は「○」と「◎」に該当する場合とする。
Figure 0006006893
得られた結果を表2に示す。No.1〜3、5〜14は、本発明で規定する成分と酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域の表面組成を満たし、本発明の目標とする改質ガス環境下を想定したCr蒸発の抑止を達成したものである。No.1、7、8、9、11〜14は、好適なAl量とTi量の範囲にあり、光輝焼鈍または予備酸化やそれら両者において、酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面にTi及びAl濃度が本発明の好ましい範囲まで高められたものであり、顕著なCr蒸発の抑止効果を発現し、評価は「◎」となった。No.10は、好適なTi量を満たさないが、Ga,Mg,Snの微量元素の効果により、Cr蒸発の抑止効果が発揮され「◎」となった。No.2〜6は、光輝焼鈍または予備酸化により酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面にAl濃度が本発明の目標ないし好ましい範囲まで高められたものであり、本発明の目標とするCr蒸発の抑止効果が得られ、評価は「○」となった。
鋼No.4は、本発明で規定する成分を満たすものの、光輝焼鈍や予備酸化のいずれも実施していないものである。これは、本発明で規定する酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面組成を満足せず、本発明の目標とするCr蒸発の抑止効果が得られなかった。
鋼No.15〜21は、本発明で規定する鋼成分から外れるものであり、光輝焼鈍や予備酸化を実施しても表面組成を満足しない、又は本発明の目標とする表面組成を形成してもCr蒸発の評価が「×」となった。なお、No.15は低CrによるFe系皮膜形成、No.16は高MnによるMn系皮膜形成、No.17は高Sによる皮膜の保護性欠如により膜厚が0.1μm以上となった。
本発明例No.7について、GDS分析により測定した光輝焼鈍材の表面から深さ方向のカチオンイオンのプロファイルを図1に示す。これより、本発明で規定する成分を有し、光輝焼鈍を行うことにより、TiとAlが酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面へ濃縮することが分かる。本発明例No.9について、GDS分析により測定した予備酸化後の表面から深さ方向のカチオンイオンのプロファイルを図2に示す。これより、本発明で規定する成分を有し、予備酸化を行うことによって、TiとAlの酸化皮膜中及び酸化皮膜直下の鋼表面への濃縮が促進していることも分かる。
本発明によれば、過度なAl及びSi添加や微量元素の調整あるいは予備酸化に頼ることなく改質ガス環境下の高い耐酸化性とCrの蒸発抑止を兼備した燃料電池用フェライト系ステンレス鋼を提供することができる。本発明のフェライト系ステンレス鋼は、特殊な製造方法によらず、工業的に生産することが可能である。

Claims (4)

  1. 質量%にて、Cr:11〜25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:1%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼材であって、水素ガスを50体積%以上含み残部が窒素ガスと1%未満の窒素・水素以外のガス成分からなる雰囲気中にて800〜1000℃に10分以内で加熱した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼材の表面は、0.1μm未満の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域でOを除くカチオンイオン分率においてAl濃度の最大値が30質量%以上含むことを特徴とする燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
  2. 質量%にて、Cr:11〜25%、C:0.03%以下、Si:2%以下、Mn:2%以下、Al:0.5〜4.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、N:0.03%以下、Ti:1%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼材であって、大気中で850℃に加熱し100h継続した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼材の表面は、0.1μm未満の酸化皮膜厚さの2倍の深さまでの領域でOを除くカチオンイオン分率においてAl濃度の最大値が30質量%以上含むことを特徴とする燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 前記材の表面はさらに、Oを除くカチオンイオン分率においてTi濃度の最大値が3質量%以上となることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
  4. さらに質量%にて、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Mo:2%以下、Sn:1%以下、Sb:1%以下、W:1%以下、Co:0.5%以下、Nb:0.5%以下、V:0.5%以下、Zr:0.5%以下、Ga:0.1%以下、Mg:0.01%以下、B:0.005%以下、Ca:0.005%以下、La:0.1%以下、Y:0.1%以下、Hf:0.1%以下、REM:0.1%以下の1種または2種以上含有していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載する燃料電池の燃料改質器であって、炭化水素系燃料を水素に改質する燃料改質器用のフェライト系ステンレス鋼。
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