JP5398061B2 - 正帯電性アクリル系重合体粒子の製造方法 - Google Patents

正帯電性アクリル系重合体粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、正帯電性重合体粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、シード粒子の存在下、該シード粒子に、(メタ)アクリルエステル系モノマーを吸収させて、シード乳化重合によって得られ、ブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gであることを特徴とする重合体粒子の製造方法に関する。
アクリル系重合体樹脂粒子は、塗料添加剤、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として広く用いられている。このような重合体樹脂粒子は、表面に負帯電性、あるいは正帯電性の電荷をもっていることが多く、例えば表面に正電荷をもつ正帯電性重合体粒子は、電子写真用トナーの正帯電性を付与する添加剤として使用できることが知られている。また、樹脂等のフィルム中に添加して負帯電性の反応点と反応させることで該フィルム中に均一で強固な架橋構造を形成させる架橋剤や、樹脂等のフィルムあるいはセルロース等の繊維の表面に付着させて滑り性やマット性等を付与する表面改質剤、各種金属等によるメッキ用の基材粒子(導電性粒子の基材粒子)としても用いられる。さらには従来から塗料、土木材料のトップコート、シーラー、インクジェット記録材料、電着塗料等幅広い用途分野を有しており、その利用価値は高い。
正帯電性重合体粒子を得る方法として、アミノ基含有ビニルモノマーの塩を用いる方法(特開昭59−150531号、特開2004−10645公報)、アミノ基含有ビニルモノマーのグラフトコポリマーを用いる方法(特開昭63−90508号公報)等が提案されている。
特開昭59−150531号公報 特開2004−10645号公報 特開昭63−90508号公報
しかしながら、これらの正帯電性重合体粒子においても帯電量が充分ではない上、アミノ基含有重合性モノマーの重合体粒子中にアミノ基が多量に含まれているため、水分を吸着しやすくなり、結果として得られる正帯電性の重合体樹脂粒子は吸湿性が増大することとなり、例えば高湿下での帯電量の低下や、分散性、流動性、等の各種物性に影響を及ぼしてしまうという問題があった。そのため、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤など、用途によってはその使用が制限されてしまう問題が生じる。また、乳化重合時にアミノ基含有ビニルモノマーが多量に存在すると、乳化重合時の重合安定性が非常に悪く、目的とする正帯電性重合体粒子が得られなかった。
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シード粒子の存在下、アミノ基含有ビニルモノマーではなく、該シード粒子にエステル部の炭素数が4以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマーを40〜100重量%含むアクリル系重合性モノマーを吸収させて、シード乳化重合を行うことで、高い帯電量を有する正帯電性重合体粒子を得られることを見出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、水性媒体中、シード粒子の存在下、該シード粒子に、アクリル系重合性モノマーを吸収させて、シード乳化重合を行い、アクリル系重合体粒子を製造する工程を含み、
前記シード粒子がビニル系重合体粒子、前記アクリル系重合性モノマーが(メタ)アクリルエステル系モノマーを40〜100重量%、及び前記(メタ)アクリルエステル系モノマーと共重合可能なビニル系重合性モノマー0〜60重量%の配合物であり、
前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の置換基の炭素数が4以上10以下であり、
前記アクリル系重合体粒子のブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gであることを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
本発明の正帯電性重合体粒子は、ブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gと正帯電性に優れているという特徴を有している。そのため、静電荷像現像に使用されるトナー用の外添剤(電子写真用トナー外添剤に使用される)として使用できる他、塗料添加剤、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ、バインダー、レオロジー調節剤、増量剤、塗膜性能改良剤等として好適である。
しかもアクリル系重合性モノマーの重合体粒子中にアミノ基が含まれていないため、水分を吸着することもなく、結果として得られる正帯電性の重合体樹脂粒子は吸湿性が抑制できる。因って、例えば高湿下での帯電量の低下や、分散性、流動性、等の各種物性に影響を及ぼすことが防止することができる。また、乳化重合時の重合安定性がよく、目的とする正帯電性重合体粒子が得られる。
本発明は、シード粒子であるビニル系重合体粒子に、エステル部の炭素数が4以上10以下である(メタ)アクリルエステル系モノマーを40〜100重量%含むアクリル系重合性モノマー吸収させて、シード乳化重合によって得られる、ブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gであることを特徴とする重合体粒子を得る方法である。ここで、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
(シード粒子)
本発明で使用されるシード粒子は、ビニル系モノマーを重合させてなる重合体である。具体的には、スチレン、αーメチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリルエステルモノマー、酢酸ビニルなどの単独重合体、あるいはこれらと共重合可能なモノマーとのブロック、ランダム、グラフト共重合体が挙げられる。なお、前記アクリル系重合性モノマーの吸収性が優れるという点で(メタ)アクリルエステルモノマーを含む重合体が好ましい。
シード粒子の製造方法は特に限定されないが、乳化重合、ソープフリー乳化重合あるいは懸濁重合などの方法を用いることができる。シード粒子の粒径の均一性や製造方法の簡便さを考慮すると、乳化重合およびソープフリー乳化重合法が好ましい。
本発明のシード粒子の重量平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で、10,000以上が好ましく、より好ましくは12,000〜500,000である。このようなシード粒子は、得られる重合体粒子の粒径を均一なものとするために粒径が均一であることが好ましい。
本発明のシード粒子の平均粒子径は小さすぎるとシード粒子へのアクリル系重合性モノマーの吸収が不十分となり、重合安定性が著しく低下することがあり、大きすぎるとアクリル系重合性モノマーの使用量を少なくする必要があり、生産性が低下するため、0.05〜0.4μmが好ましい。
シード粒子の使用量は、少ないと、シード粒子上あるいはシード粒子中以外で重合が進行し、生成する微小な粒子や粗大な粒子が多くなることがあり、得られる重合体の粒径の均一性が低下する恐れがあり、多いと、シード粒子を形成する重合体との相分離に起因する粒子の異形化が起こり、重合体粒子の真球度が低下する恐れがある。シード粒子の使用量は、アクリル系重合性モノマー100重量部に対して1〜50重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましく、5〜15重量部が特に好ましい。
(アクリル系重合性モノマー)
本発明で使用されるアクリル系重合性モノマーは、エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーを40〜100重量%、及び前記(メタ)アクリルエステル系モノマーと共重合可能なビニル系重合性モノマー0〜60重量%の配合物である。なお、本発明で使用されるアクリル系重合性モノマーは、エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーを100重量%の場合も良好であるが、これらの混合物として用いた場合も、帯電量は良好である。
本発明では、エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーを用いる。エステル部の置換基の炭素数3以下の場合、重合時の安定性は良好であるものの帯電量が低下してしまう。また、エステル部の置換基の炭素数が11以上の場合は、重合時の安定性が悪化し、粒子径が大きくなってしまうことがある。より具体的には、本発明で使用されるエステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられる。特に、高い帯電量が得られるという点で(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニルがより好ましい。これら(メタ)アクリルエステル系モノマーは単独で使用してもよく、二種以上を併用しても良い。
上記エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーの使用量は、少ないと重合安定性は良好であるが帯電量が低下してしまうため、アクリル系重合性モノマーに対して40〜100重量%である。70〜100重量%がより好ましい。
本発明の前記エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリルエステルモノマー、酢酸ビニル等が挙げられ,特に(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
本発明で使用される前記エステル部の置換基の炭素数が4以上10以下の(メタ)アクリルエステル系モノマーと共重合可能なビニル系重合性モノマーの使用量は、同様の理由で、アクリル系重合性モノマーに対して0〜60重量%である。0〜30重量%が好ましい。
またアクリル系重合性モノマーに連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物などが挙げられ、アクリル系重合性モノマー配合物100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは0.3〜3重量部である。
アクリル系重合性モノマーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他のモノマーや添加剤が添加されてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
さらに他のモノマーとしては、二官能性重合性ビニル系モノマーが挙げられる。具体的には、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート(アルキレンは炭素数2〜4の範囲が好ましい)等が挙げられる。二官能性重合性ビニル系モノマーの混合割合は、アクリル系重合性モノマー配合物100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましい。
他の添加剤としては、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レべリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
(水性媒体)
乳化重合は、水性媒体中で行われる。水性媒体としては、特に限定されないが、水、水と水溶性有機溶媒(例えば、低級アルコール)との混合物等が挙げられる。この内、廃水処理の問題が少ない水が好ましい。
(シード乳化重合)
上記アクリル系重合性モノマーは、水性媒体中においてシード粒子の存在下、シード乳化重合に付される。
本発明では、上記のようなアクリル系重合性モノマーをシード粒子に吸収させてシード乳化重合するに際して、アクリル系重合性モノマーは、後述するようなカチオン性界面活性剤、および水性媒体と混合・攪拌して乳化し、水性媒体中にアクリル系重合性モノマーが分散した乳化分散液(O / W型エマルジョン)とし、該乳化分散液にシード粒子の水分散液を添加することが好ましい。
上記乳化分散液を調整する際のアクリル系重合性モノマーと水性媒体との使用割合(重量部/重量部)は、1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。1:20よりアクリル系重合性モノマー配合物の割合が少なくなると、生産性が悪くなる場合があるので好ましくない。1:2よりアクリル系重合性モノマー配合物の割合が多くなると、重合中の粒子の安定性が悪くなり重合後の重合体粒子の凝集物が生じてしまう場合があるので好ましくない。より好ましい使用割合(重量部/重量部)は1:15〜1:3である。
アクリル系重合性モノマーをシード粒子に吸収させるための時間は特に限定されないが、10分から3時間が好ましい。
本発明で使用できるカチオン性界面活性剤としては特に限定されず、公知のカチオン性界面活性剤をいずれも使用できる。例えば、アルキルアミン、又はその塩、ポリアルキレンオキサイドを有するアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン、アルキルトリメチルアミン、又はそのアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアミン又はそのアンモニウム塩,アルキルジメチルベンジルアミン、又はそのアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。このなかでアンモニウム塩酸塩、アンモニウム硫酸塩、アンモニウムスルフォン酸塩、アンモニウムパラトルエンスルフォン酸塩、アンモニウム酢酸塩等のアンモニウム塩が好ましい。例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩酸塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩酸塩、セチルメチルアンモニウム塩酸塩、およびジステアリルジメチルアンモニウムクロライドN−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウムパラトルエンスルフォン酸塩などがより好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
上記カチオン性界面活性剤の使用量は、少なすぎるとシード粒子へのアクリル系重合性モノマーの吸収が不十分となり、重合安定性が著しく低下することがある。多すぎると水相での重合が起こり易く微小な粒子が多量に発生し、目的とする重合体粒子の収率が低下することがあるため、アクリル系重合性モノマー配合物100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
本発明で使用できるカチオン性界面活性剤の代わりにカチオン性水溶性高分子を使用しても良い。具体例としては、アミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、カチオン化ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、特にアミノ基変性ポリビニルアルコール、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カチオン性水溶性高分子の使用量は、少なすぎるとシード粒子へのアクリル系重合性モノマーの吸収が不十分となり、重合安定性が著しく低下することがある。多すぎると水相での重合が起こり易く微小な粒子が多量に発生し、目的とする重合体粒子の収率が低下することがあるため、前記カチオン性界面活性剤と同じく、アクリル系重合性モノマー配合物100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
本発明における重合開始剤は、水溶性重合開始剤、油溶性重合開始剤のいずれもが使用できる。重合安定性の点で水溶性重合開始剤が好ましい。
本発明で使用できる水溶性重合開始剤としては、カチオン性水溶性重合開始剤がより好ましく使用できる。本発明で用いられるカチオン性水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩化水素、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫化二水和物、2,2−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩化水素、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩化水素、2,2−アゾビス{2−メチル−N[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物類等があげられる。また、前記過硫酸塩類、および有機過酸化物類にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤なども挙げられる。
油溶性重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化−t−ブチル、ラウリルペルオキサイド、t−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド、t−ブチルパーベンゾエイト、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、ジオクタノイルパーオキサイド等の過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のアゾ系化合物類等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、その種類により相違するが、アクリル系重合性モノマー配合物100重量部に対して、0.1〜5重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0.3〜3重量部である。
重合系の攪拌回転数は、例えば、5リットル容量の反応器を使用した場合、100〜500rpmであることが好ましい。また、重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類により相違するが、30〜100℃であることが好ましく、重合時間は2〜10時間であることが好ましい。
また、重合体粒子の水性媒体からの単離は公知の方法を用いることができ、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法、凍結乾燥法等により行うことができる。さらに乾燥させた重合体粒子は、粉砕機、解砕機等で凝集物を解すことが望ましい。
本発明の重合体粒子は、0.1〜1.0μmの平均粒子径を有する。0.1μm未満の場合、重合体粒子の凝集力が大きくなってしまうことがあり、帯電性が低下するため好ましくない。また1.0μmを越える場合、重合体粒子の比表面積が小さくなり、帯電量が低下するので好ましくない。より好ましい平均粒子径は0.15〜0.8μmである。なお、平均粒子径の測定方法は、実施例の欄に記載する。
更に、本発明の重合体粒子は、ブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gである。+30μC/gより小さいと例えば静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤とした場合に、帯電量の付与が不十分である。+80μC/gより大きいと例えば静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤とした場合に、帯電量が大きすぎることが原因でトナーのクリーニング性が低下してしまうことがある。好ましくは、+35〜+80μC/gである。
本発明の重合体粒子は、高湿度環境下での水分吸着率が抑制された低吸湿性に優れるアクリル系重合体粒子であり、所望の用途に用いることができる。そのような用途として、静電荷像現像に使用されるトナー用の外添剤として使用できるほか、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、フィルム用のアンチブロック剤や、光拡散剤等として適している。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の平均粒子径、重合安定性、水分吸着率及び帯電量の測定方法を下記する。
(水分吸着率)
ここでいう水分吸着率は、重合体粒子を恒温恒湿環境下に所定時間保管し、保管前後の重量変化量から算出した値を意味する。すなわち、重合体粒子をあらかじめ55℃で24時間乾燥させ、この乾燥重合体粒子1gを温度20℃、かつ相対湿度80%の雰囲気下に1時間保管した後、重合体粒子の重量(g)を秤量する。この値をWとし、次式から算出して求めた値を重合体粒子の水分吸着率とした。

水分吸着率(%)=(W−1)×100
(平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法あるいは光子相関法と呼ばれる方法を利用して測定した粒子径を意味する。すなわち、0.1vol%に調整した重合体粒子の水性分散液に25℃においてレーザー光を照射し、重合体粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された重合体樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めた平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用している。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析できる。
(重合安定性)
ここでいう重合安定性は、得られた重合体粒子の水性分散液全量を目開き100μmのステンレス篩に通し、篩上の残存物を50℃で24時間乾燥させた後、残存物の重量を秤量する(Wa)。この値(Wa)より下記式にて凝集物生成率を算出し、得られた値が5%未満である場合は重合安定性が非常に優れている(◎)、5〜10%である場合は重合安定性が優れている(○)、10%を越える場合は重合安定性が悪い(×)と判断した。

凝集物生成率(%)=(Wa/重合性モノマー使用量)×100
(ブローオフ帯電量測定)
ここでいうブローオフ帯電量は、ブローオフ方式による接触帯電法により測定した帯電量を意味する。具体的には、測定する重合体粒子を、後述の合成方法で製造したスチレン−アクリル系重合体粒子に外添処理し(以下、擬似トナーと表現)、この擬似トナーの帯電量を測定した。以下、測定例を説明する。
後述の合成例で製造したスチレン−ブチルメタクリレート共重合体である平均粒子径10μm粒子を15gと測定試料0.45gの混合物をミルミキサー(National 製 品番MX-X57-Y ファイバーミキサー)で5秒間混合処理し、その後1分間静置保管した。再度5秒混合、1分間静置保管を繰り返し、計5回行った。
上記方法で得られた擬似トナー0.5gと標準キャリアN−02(日本画像学会製)9.5gを50ccのポリプロピレン製容器に投入し、密閉した後、200回上下に振ることで混合した。その後容器を開封して、20℃、相対湿度60%の恒温恒湿下において24時間静置させた。次に、サンプル0.2gを秤量し、400メッシュの篩網が入った測定試料室に投入することでブローオフ帯電量を測定した。なお、この種のブローオフ帯電量は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例では京セラケミカル社製から市販されているTB−203を使用した。測定は20℃、相対湿度60%の恒温恒湿下において測定し、ブローには窒素ガスを使用し、ブロー圧10kPa、吸引圧は9kPaとした。
<合成例>
ブローオフ帯電量測定に使用したスチレン−アクリル系重合体粒子の製造について説明する。5L容量のオートクレーブに、水2600重量部、スチレン910重量部、メタクリル酸ブチル390重量部、ピロリン酸マグネシウム26重量部、亜硝酸ナトリウム0.07重量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(東邦化学社製「フォスファノールLO−529」)の10%水溶液0.52重量部、アゾビスイソブチロニトリル10.4重量部、過酸化ベンゾイル3.9重量部を供給し、250rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、60℃で6時間に亘って加熱した。次に80℃まで加熱して更に1時間に亘って攪拌を続けながら重合を行った。その後室温まで冷却し、脱水・乾燥を行うことでスチレン−アクリル系重合体粒子を得た。得られたスチレン−アクリル系重合体粒子の平均粒子径は10μmであった。
(実施例1〜8で使用するシード粒子の合成方法1)
5L容量のオートクレーブに、水3600重量部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの28%水溶液(花王株式会社製 「コータミン86W」)1.429重量部、メタクリル酸メチル400重量部、ノルマルオクチルメルカプタン8重量部を供給し、250rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、70℃に加熱した。次に2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業社製
「V−50」)を2重量部供給し、70℃にて3時間に亘って攪拌後、80℃まで加熱して更に1時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行った。その後、乳化液を室温まで冷却することで重合体粒子の水性分散液を得た。得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.12μmであった。重量平均分子量は、36,900であった。
(実施例9のシード粒子の合成方法2)
メタクリル酸メチル400重量部をメタクリル酸メチル120重量部、メタクリル酸イソブチル280重量部の混合物とした以外は合成方法1と同様の方法で行った。得られた水分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.13μmであった。重量平均分子量は、14,700であった。
(実施例1)
5L容量のオートクレーブに、水2740重量部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの28%水溶液(花王株式会社製「コータミン86W」)0.571重量部、メタクリル酸メチル240重量部、メタクリル酸イソブチル560重量部、ノルマルドデシルメルカプタン8重量部を供給し、10分間7000rpmの攪拌回転数でホモジナイザーにて乳化攪拌した後、合成方法1で製造した重合体粒子の水分散液400重量部供給した後、1時間に亘って室温で攪拌を行った。その後70℃まで加熱し、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業社製「V−50」)を2重量部供給し、3時間に亘って攪拌した後、80℃にて1時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行った。その後、乳化液を室温まで冷却することで重合体粒子の水性分散液を得た。得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.28μmであった。さらに得られた重合体粒子の水性分散液をスプレードライヤーにて給気温度105℃、排気温度55℃で処理し、その後ジェットミルで処理することで重合体粒子の粉末を得た。使用した原料の種類及び使用量を表1に示す。得られた重合体粒子の帯電量は+53.1μC/gであるため、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は1.5%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例2)
メタクリル酸イソブチルの代わりにメタクリル酸ターシャリーブチル(TBMA;エステル部炭素数4)(共栄社化学社製「ライトエステルTB」)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.32μmであった。帯電量は+61.1μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は1.7%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例3)
メタクリル酸イソブチルの代わりにメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA;エステル部炭素数6)(共栄社化学社製;「ライトエステルCH」)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.36μmであった。帯電量は+48.9μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は1.9%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例4)
メタクリル酸イソブチルの代わりにメタクリル酸ベンジル(BZMA;エステル部炭素数7)(共栄社化学社製;「ライトエステルBZ」)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.33μmであった。帯電量は+38.2μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は2.0%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例5)
メタクリル酸メチルの代わりにメタクリル酸シクロヘキシルとした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.34μmであった。帯電量は+54.2μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は2.1%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例6)
メタクリル酸メチル240重量部の代わりに120重量部、メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりに680重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.34μmであった。帯電量は+55.5μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は2.1%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例7)
メタクリル酸メチル240重量部の代わりに400重量部、メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりに400重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.31μmであった。帯電量は+31.3μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は1.2%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例8)
メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりにメタクリル酸イソボルニル(IBA;エステル部炭素数10)(共栄社化学社製;「ライトエステルIB−XA」)560重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.35μmであった。帯電量は+48.4μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は3.4%と非常に重合安定性に優れていた。
(実施例9)
合成方法1で製造したシード粒子の代わりに合成方法2で製造したシード粒子を使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.36μmであった。帯電量は+54.5μC/gであり、正帯電性に優れていた。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は1.9%と非常に重合安定性に優れていた。
(比較例1)
メタクリル酸イソブチルの代わりにメタクリル酸メチルを800重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散剤中の重合体粒子の平均粒子径は0.26μmであったが、帯電量は+27.6μC/gであり、正帯電性に優れるものではなかった。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は0.5%と非常に重合安定性に優れていた。
(比較例2)
メタクリル酸メチル240重量部の代わりに640重量部、メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりに160重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散剤中の重合体粒子の平均粒子径は0.27μmであったが、帯電量は+28.6μC/gであり、正帯電性に優れるものではなかった。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は0.7%と非常に重合安定性に優れていた。
(比較例3)
メタクリル酸イソブチル560重量部の代わりにメタクリル酸ステアリル(STMA;エステル部炭素数18)(共栄社化学社製;ライトエステルST)560重量部とした以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は1.85μmであり、所望のサイズではなかった。また、帯電量は+22.4μC/gであり、正帯電性に優れるものではなかった。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は12.6%と非常に重合安定性が悪かった。
(比較例4)
シード粒子を使用せずに乳化重合を行ったこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散剤中の重合体粒子の平均粒子径は0.32μmであったが、帯電量は+28.3μC/gであり、正帯電性に優れるものではなかった。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は7.4%と重合安定性に優れていた。
(比較例5)
メタクリル酸メチル240重量部の代わりにメタクリル酸メチル160重量部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)(共栄社化学社製;ライトエステルDM)80重量部として以外は実施例1と同様の方法で行った。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.40μmであった。帯電量は+29.1μC/gであり、正帯電性に優れるものではなかった。
得られた重合体粒子の水性分散液の目開き100μmのステンレス篩により評価した凝集物生成率は2.1%と非常に重合安定性が優れていた。
またこの比較例5はアミノ基含有重合性モノマーの重合体粒子中にアミノ基が2.1%と多量に含まれているため、水分を吸着しやすく、正帯電性の重合体樹脂粒子は吸湿性が増大している。
Figure 0005398061

本発明の重合体粒子は、重合体粒子の平均粒子径が0.1〜1μmであり、正帯電性に優れているという特徴を有している。そのため、静電荷像現像に使用されるトナー用の外添剤として使用できる他、塗料や、インキ粘着剤用、接着剤用、人工大理石用等の添加剤、紙処理剤用、化粧品用等の充填材、クロマトグラフィーのカラム充填材、静電荷像現像にしようされるトナー用の添加剤、フィルム用のアンチブロック剤や、光拡散剤等として使用できる。

Claims (4)

  1. 水性媒体中、シード粒子の存在下、該シード粒子に、アクリル系重合性モノマーを吸収させて、シード乳化重合を行い、アクリル系重合体粒子を製造する工程を含み、
    前記シード粒子がビニル系重合体粒子であり、
    前記アクリル系重合性モノマーが(メタ)アクリルエステル系モノマーを40〜100重量%、及び前記(メタ)アクリルエステル系モノマーと共重合可能なビニル系重合性モノマー0〜60重量%の配合物であり、
    前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の炭素数が4以上10以下であり、
    前記アクリル系重合体粒子のブローオフ帯電量が+30〜+80μC/gであることを特徴とするトナー用の外添剤に使用される正帯電性アクリル系重合体粒子の製造方法。
  2. 前記(メタ)アクリルエステル系モノマーのエステル部の置換基がイソブチル、t−ブチル、ベンジル、シクロヘキシル基、イソボルニル基であるいずれか一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載のトナー用の外添剤に使用される正帯電性アクリル系重合体粒子の製造方法。
  3. 平均粒子径が0.1〜1.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー用の外添剤に使用される正帯電性アクリル系重合体粒子の製造方法。
  4. 静電荷像現像に使用されるトナー用の外添剤に使用される請求項1に記載の製造方法で得られたアクリル系重合体粒子。
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