JP5953182B2 - アルカリ可溶性樹脂及びそれを用いた粘度調整剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来の技術によって作製されたアルカリ可溶性樹脂は、乳化重合により生成したポリマー粒子がアルカリ添加によって溶解又は膨潤した際に界面活性剤が遊離し、例えば塗料用途においては、発泡により塗膜にした場合の外観低下や、レベリング性等への悪影響が問題となっていた。更に、遊離した界面活性剤により、吸湿特性が低下するおそれがあった。
カルボキシル基含有重合性単量体、非イオン性重合性単量体及び強酸基含有重合性単量体を含有する重合性単量体を乳化重合し、ポリマーのアルカリ可溶性樹脂を得る、アルカリ可溶性ポリマーアルカリ可溶性樹脂の製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
炭素−炭素二重結合の重合性官能基を有するカルボン酸単量体と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体とからなる反応系を、無機アルカリ溶液でpH9.0〜13.0に調整し、開始剤を用いて乳化重合し、反応終期に、得られた水性樹脂エマルションのpHを有機アミン化合物で7.0〜9.5に調整する、アクリル酸エステルエマルションの無乳化剤重合方法が開示されている(特許文献2参照)。
重合性不飽和酸、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜3のアルコールのエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数4〜22のアルコールのエステルからなる単量体混合物を、水溶性重合開始剤及び連鎖移動剤を用いて水系でソープフリー乳化重合にて重合して水性分散体を得た後、アルカリ剤にて中和して得られる中和水性分散体からなる糊剤の製造方法が開示されている(特許文献3参照)。
また、特許文献2においては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量が2〜9質量%と少量であるため、アルカリを添加しても充分に溶解せず、所定粘度を確保するために工夫の余地がある。特許文献3においても、生成したアルカリ可溶性樹脂の粘度は不十分であり、改善の余地がある。このように、得られた樹脂自身の粘度が低いと、配合系を高粘度に調整する場合は当該樹脂の添加量を増やす必要があり、他の成分の配合量の限定やコスト面での問題が生じたりするため、粘度調整能が充分とは言えない。
このように、従来のアルカリ可溶性樹脂においては、泡切れ性、吸湿特性及び粘度調整能を充分にするための工夫の余地があった。
なお、樹脂としては吸湿性が低い(水を吸いにくい)方が好ましいので、本明細書において、吸湿特性が向上するとは吸湿性が低くなることを意味し、吸湿特性に優れるとは吸湿性が低いことを意味する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
なお、本明細書においては、「アルカリ可溶性樹脂」の代わりに、上記各状態を示す用語で記載している場合もあるが、これらも全てアルカリ可溶性樹脂に含まれる。
上記界面活性能を有する化合物としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、アルキルアリルポリエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、スルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類、ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルピリジニルクロライド、アルキルアンモニクムクロライド等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、ラウリルべタイン、ステアリルべタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
上記高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体又は他の単量体との共重合体等が挙げられる。
上記反応性界面活性剤としては、例えば、ラテムルPD(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)、エレミノールRS(三洋化成社製)等が挙げられる。
0.5質量%以下の範囲でこれら界面活性能を有する化合物を用いる場合は、1種でも、2種以上でも用いることができる。
なお、後述するソープフリー乳化重合において、反応系中で重合開始剤と単量体とから生成するオリゴマーラジカルは、上記界面活性能を有する化合物には含まれない。
上記アンモニウム塩を形成する化合物としては、アンモニア等が挙げられる。
有機アミン塩を形成する化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、これらの金属塩で中和する為には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム等の水溶液を用いることができる。
上記塩類のうち、好ましくは、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムである。
中和量としては、重合に使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体に対して、40モル%以下が好ましい。より好ましくは20モル%以下であり、更に好ましくは10モル%以下である。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル等が挙げられる。好ましくは、例えば、一般式(1);
CH2=CR−C(=O)−OR’ (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R’は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。)
で表される化合物である。
これらの中でも、後述するソープフリー乳化重合時の安定性等の面からは、疎水性の高いものが好ましく、すなわち、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基である。上記一般式(1)におけるR’がアルキル基であると、得られるアルカリ可溶性樹脂の増粘効果が得られやすいため好ましい。R’として特に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは、炭素数1〜2のアルキル基である。炭素数が1〜4のアルキル基であると、エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体との共重合物の水への溶解がし易くなる。
これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が、特に一般式(1)で表されるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体である場合、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、エステル構造部分、すなわち一般式(1)において−C(=O)−OR’で表される構造部分、を有する単量体であり、疎水性単量体であるが極性基を含有している。このため、ソープフリー乳化重合時には、乳化滴の核になり易い一方で、高分子化後にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩等を用いて中和する際には、水中に均一に溶解しやすくなると考えられる。そのため、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体を5〜90質量%使用することが好ましい。
その他の重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;酢酸ビニル、フタル酸ジアリル等の多官能アリル系単量体;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能アクリレート;末端がハロゲン化していてもよい炭素数5〜30のアルキル基等の疎水基を有する、ポリアルキレンオキサイド基を有する(メタ)アクリルエステルやビニル化合物等が挙げられる。
その他の重合可能な単量体としては、これらの中でも、スチレン系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、多官能アリル系単量体、多官能アクリレートであることが好ましい。乳化重合時の溶液安定性の面からは、スチレン系単量体、多官能アリル系単量体、多官能アクリレート、ビニル化合物の、疎水性の単量体が好ましい。
これらのその他の重合可能な単量体としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記粘度は、水溶性高分子の状態のアルカリ可溶性樹脂の粘度を示すものである。
なお、粘度測定の際のpH調整には、必要に応じて、後述するアルカリ可溶性樹脂の中和に用いるアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩等を添加してpH調整すればよい。
単量体成分の重合方法としては、特に限定されず、例えば、ソープフリー乳化重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合等の方法を挙げることができる。これらの重合方法の中でも、ソープフリー乳化重合法が好ましい。
なお、ソープフリー乳化重合における界面活性能を有する化合物の好ましい使用量は、上述したとおりである。
ここで、シードとなる粒子とは、後述のように、重合反応に供した単量体を吸収し、反応溶液中で単量体を含む液滴となり、この液滴中で重合反応が進行するような粒子を意味する。なお、以下においては、「シードとなる粒子」を「シード粒子」ともいう。
このように、シード粒子を利用してソープフリー乳化重合を行うこともできる。この場合、ソープフリー乳化重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の重合により得た樹脂粒子分散体を、反応溶液に予め加えておき、この反応溶液に重合に用いる単量体を添加する。この際、先に添加した樹脂粒子(シード粒子)が、重合反応に供した単量体を吸収し、反応溶液中で単量体を含む液滴となる。この液滴中で重合反応が進行し、樹脂粒子が成長する。このように、単量体とともに液滴を生成するための界面活性剤を添加しなくても水溶液中で単量体が反応することが殆どないので、より低分子量物ができにくく、泡切れ性及び粘度調整能の点から好ましい。
上記シード粒子としては、公知の樹脂粒子分散体中の樹脂粒子を用いることができる。また、シード粒子が単量体を吸収して重合し、樹脂粒子が成長するため、シード粒子としては、作製しようとするアルカリ可溶性樹脂と類似組成を有するものが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等を挙げることができる。これら重合開始剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記重合開始剤の使用量としては、高粘度化の点から、重合反応に供する単量体成分の総量100質量部に対して、0.05〜2質量部であることが好ましい。より好ましくは0.1〜1質量部である。
上記親水性溶媒としては、例えばアルコール類、テトラヒドロフラン、アセトン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
上記添加剤としては、例えば有機塩、無機塩、pH緩衝剤等が挙げられる。
ソープフリー乳化重合における重合時間についても、特に限定されないが、生産性を考慮すると、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1.5〜9時間である。
なお、本明細書においては、樹脂粒子分散体を形成する重合体のことを、樹脂粒子ともいう。
上記樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定することができる。
また、本発明のアルカリ可溶性樹脂としては、水溶液中で重合後に、更にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種で中和して得られたものであることが、より好ましい。つまり、上記のような方法で得られた樹脂粒子を、上記アンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種で中和して得られた水溶性高分子も、本発明のアルカリ可溶性樹脂の好適な実施形態の1つである。
得られた水溶性高分子は、水に溶解した際、均一な水溶液となり、透明溶液となる。
なお、本発明のアルカリ可溶性樹脂としては、上記樹脂粒子が一部中和されたものも含むが、均一な水溶液となるまで中和して水溶性高分子とする方がより好ましい。また、中和度が低い(例えば理論カルボン酸量の50%未満)場合に、上記樹脂粒子が一部中和されたものとなる。
有機アミン塩で中和する為には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等の水溶液を用いることができ、好ましくは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンである。
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。これらの金属塩で中和する為には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム等の水溶液を用いることができ、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムである。
中和後のpHは、6以上が好ましく、より好ましくは6.2以上である。また、pHは、9以下が好ましい。
上記pHは、ガラス電極式水素イオン度計F−21(製品名、堀場製作所社製)を用いて、25℃での値として測定することができる。
このように、アルカリ可溶性樹脂が、ソープフリー乳化重合によって水溶液中で重合した樹脂粒子を、更にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩で中和することにより得られるものであることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、重合に使用した単量体は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体であるが、得られた重合体を中和したものは、その構造単位としては、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)単量体由来の構造単位を有する。
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)単量体とは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及び/又はエチレン性不飽和カルボン酸塩単量体を意味する。
上記構造単位(a)は、エチレン性不飽和カルボン酸(塩)単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。
エチレン性不飽和カルボン酸塩単量体としては、上記エチレン性不飽和カルボン酸単量体のアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩等が挙げられる。
上記アンモニウム塩を形成する化合物としては、アンモニア等が挙げられる。有機アミン塩を形成する化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、これらの金属塩で中和する為には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム等の水溶液を用いることができる。上記塩類のうち、好ましくは、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムである。
上記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位(以下、「構造単位(b)」とも言う)とは、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の詳細は、前述したとおりである。
上記その他の重合可能な単量体由来の構造単位(以下、「構造単位(c)」とも言う)とは、その他の重合可能な単量体の炭素−炭素二重結合が単結合になった構造を表すものである。その他の重合可能な単量体の詳細は、前述したとおりである。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC法)等により測定することができる。
具体的には、上記アルカリ可溶性樹脂は、水溶液中で重合後に、更にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種でpH7に調整した後の、不揮発分2質量%水溶液での全光線透過率が90%以上であることが好ましい。
当該全光線透過率は、より好ましくは90〜100%、更に好ましくは95〜100%である。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)等を用いて、測定することができる。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(製品名「NDH5000」、日本電色工業社製)等を用いて、測定することができる。
上記アルカリ可溶性樹脂の起泡性は、1〜1.7であることが好ましく、1〜1.5であることがより好ましい。また、破泡性は、0.8〜1であることが好ましく、0.9〜1であることがより好ましい。
本発明の粘度調整剤は、上述したアルカリ可溶性樹脂を含有してなるものであり、pH7で不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とするものである。
また、上記粘度調整剤の粘度は、JIS K 7117−1で測定することができる。
本発明の粘度調整剤は、上記アルカリ可溶性樹脂を含む限り、他の成分を含んでもよい。
上記他の成分としては、例えば、分散剤、艶消し剤、レベリング剤、消泡剤、抑泡剤、帯電防止剤等が挙げられる。
なお、本発明のアルカリ可溶性樹脂の含有量(固形分)は、粘度調整能の点から、配合対象物の全配合量に対して、0.001〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3質量%である。
<不揮発分測定>
樹脂粒子分散体をアルミ皿に約1g秤量し、150℃の熱風乾燥機中で20分間乾燥し、乾燥前後の質量から下記式により求めた。
不揮発分(%)=(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)×100
また、樹脂粒子分散体の代わりに水溶性高分子の水溶液を用いた以外は上記と同様にして、その不揮発分を求めた。
樹脂粒子分散体の粘度は、樹脂粒子分散体を不揮発分2%に調整後、TVB−10(東機産業社製)を用い、JIS K 7117−1に準拠して25℃で測定した。
また、水溶性高分子水溶液の粘度は、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子水溶液を、TVB−10(東機産業社製)を用い、JIS K 7117−1に準拠して25℃で測定した。
日本電色社製のヘイズメーター(型番;NDH5000)を用いて、奥行10mmの石英セル中に、pH7、不揮発分2質量%の水溶性高分子水溶液を入れ、全光線透過率を測定した。
120ccのPPカップに所定量の水溶性高分子を入れ、不揮発分0.5%になるようにイオン交換水で希釈後、ディスパーで2000rpm、3分間撹拌して強制的にホイップ状に泡立たせた。その後、この溶液を50ccサンプル瓶に液高さ6cmまで投入し、遠心分離機で2200rpm、10秒間回転させた後の、上部の泡部分を除いた透明な液部分の高さをaとした。その後、更に気泡がなくなるまで遠心分離を行い、すべての気泡がなくなったときの液高さをbとした。起泡性と破泡性は次式により算出した。
起泡性=6(cm)/b(cm)
破泡性=a(cm)/b(cm)
起泡性については、1.50未満を◎、1.50以上1.60未満を○、1.60以上1.70未満を△、1.70以上を×として評価した。破泡性については、0.95以上を◎、0.90以上0.95未満を○、0.80以上0.90未満を△、0.80未満を×として評価した。
水溶性高分子をアルミ皿に約10g秤量し、100℃の熱風乾燥機で2時間乾燥させた後、粉砕機で微粉化させた。その後、減圧乾燥器により80℃で一晩乾燥させた後、ドライ条件下でアルミ皿に粉体を約1g秤量し、初期質量とした。その後、23℃、65%RH条件下で4時間放置した後、秤量し、下記式により吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=((4時間後の質量)−(初期質量))/(初期質量)
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四ツロセパラブルフラスコに、イオン交換水871.75質量部を投入した。内温90℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、過硫酸カリウム0.55部を、イオン交換水10.45質量部に混合した開始剤水溶液を投入し、次いでメタクリル酸154質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の混合溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、内温を85℃に保ち、1時間攪拌を続けた。次いで、冷却して反応を完了し、不揮発分19.5%、不揮発分(樹脂粒子)2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体aを得た。次に、250ccのポリプロピレン(PP)カップに所定量の樹脂粒子分散体aを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子A水溶液を得た。この水溶性高分子Aは、粘度1800mPa・s、全光線透過率99%、起泡性○、破泡性○、吸湿率13.9%であった。
重合性単量体として、メタクリル酸154質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の代わりに、メタクリル酸110質量部とアクリル酸エチル65.3質量部、アクリル酸メチル44質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部を用いた以外は、参考例1と同様の手法で重合し、不揮発分19.5%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体bを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体bを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子B水溶液を得た。この水溶性高分子Bは、粘度2300mPa・s、全光線透過率99%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率13.6%であった。
重合性単量体として、メタクリル酸154質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の代わりに、メタクリル酸88質量部とアクリル酸エチル87.3質量部、アクリル酸メチル44質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部を用いた以外は、参考例1と同様の手法で重合し、不揮発分19.6%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体cを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体cを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子C水溶液を得た。この水溶性高分子Cは、粘度2700mPa・s、全光線透過率98%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率13.3%であった。
重合性単量体として、メタクリル酸154質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部の代わりに、メタクリル酸66質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、アクリル酸メチル88質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部を用いた以外は、参考例1と同様の手法で重合し、不揮発分19.6%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体dを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体dを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子D水溶液を得た。この水溶性高分子Dは、粘度2600mPa・s、全光線透過率96%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率12.4%であった。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水115質量部、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩1.5質量部をイオン交換水92質量部に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、メタクリル酸50質量部、アクリル酸エチル30質量部、アクリル酸メチル20質量部の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。別途、過硫酸アンモニウム0.23質量部をイオン交換水23質量部に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。反応容器内の温度を72℃に保ち、プレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水8質量部で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、不揮発分30%のアルカリ可溶性樹脂粒子S−1を作製した。次いで、別途攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四ツロセパラブルフラスコに、シード粒子としてS−1を21.5質量部と、イオン交換水879.75質量部を投入した。それ以降は参考例2と同様の手法で重合し、不揮発分19.5%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体eを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体eを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子E水溶液を得た。この水溶性高分子Eは、粘度2400mPa・s、全光線透過率99%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率13.7%であった。
実施例5において、シード粒子としてS−1を21.5質量部、重合性単量体として、メタクリル酸110質量部、アクリル酸エチル65.3質量部、アクリル酸メチル44質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部用いた代わりに、S−1を21.5質量部、メタクリル酸88質量部、アクリル酸エチル131.3質量部、1,6−ヘキサンジアクリレート0.66質量部を用いた以外は、実施例5と同様の手法で重合し、不揮発分19.6%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体fを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体fを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子F水溶液を得た。この水溶性高分子Fは、粘度2900mPa・s、全光線透過率97%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率13.0%であった。
シード粒子としてS−1の代わりに、参考例2で得られた樹脂粒子分散体bを固形分が同じになるように添加した以外は、実施例5と同様の手法で重合し、不揮発分19.5%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体gを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体gを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子G水溶液を得た。この水溶性高分子Gは、粘度2500mPa・s、全光線透過率99%、起泡性◎、破泡性◎、吸湿率13.6%であった。
攪拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四つ口セパラブルフレスコに、イオン交換水115質量部、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩1.5質量部を投入した。内温68℃で攪拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸塩1.5質量部をイオン交換水92質量部に溶解した。ここに、重合体の単量体成分として、メタクリル酸50質量部、アクリル酸エチル50質量部、t−ドデシルメルカプタン0.3質量部の混合物を投入し、プレエマルションを作製した。別途、過硫酸アンモニウム0.23質量部をイオン交換水23質量部に溶解し、重合開始剤水溶液を作製した。反応容器内の温度を72℃に保ち、プレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水8質量部で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、更に1時間攪拌を続けた後、冷却して反応を完了し、不揮発分30%、不揮発分2%での粘度10mPa・s以下の樹脂粒子分散体hを得た。次に、250ccのPPカップに所定量の樹脂粒子分散体hを入れ、イオン交換水で希釈後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、pH7、不揮発分2%の水溶性高分子H水溶液を得た。この水溶性高分子Hは、粘度80mPa・s、全光線透過率99%、起泡性×、破泡性×、吸湿率16.8%であった。
エマルション(アクリセットEX−35、日本触媒社製)100質量部を、ホモディスパーで回転速度1500rpmにて分散させながら、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(CS−12、JNC社製)とブチルセロソルブとを等質量混合した混合溶液8質量部を添加し、更に希釈水を添加し、不揮発成分の含有率が30%になるように調整して30分間撹拌し、ベース配合物とした。
得られたベース配合物100質量部あたり8.8質量部の割合で、当該配合物に艶消し剤(エポスターMA1010、日本触媒社製)を添加し、参考例1で得られた樹脂粒子分散体aを1質量部添加した後、この混合物をホモディスパーで回転速度1500rpmにて30分間分散させることにより、トップコート用艶消し塗料を作製した。
得られた艶消し塗料を、室温中で一日静置して塗料の安定性を評価したところ、沈降は確認されなかった。
上記応用例1のベース配合物と同じものを用いて、ベース配合物100質量部あたり8.8質量部の割合で、当該配合物に艶消し剤(エポスターMA1010、日本触媒社製)を添加し、この混合物をホモディスパーで回転速度1500rpmにて30分間分散させることにより、トップコート用艶消し塗料を作製した。
得られた艶消し塗料を、室温中で一日静置して塗料の安定性を評価したところ、艶消し剤の沈降が確認された。
上記実施例において、上記アルカリ可溶性樹脂及びそれを含む粘度調整剤を用いることによって、上述した優れた吸湿特性及び泡切れ性を有するという効果が発現する作用機序はすべて同様であるものと考えられる。
したがって、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (5)
- 単量体成分を水溶液中で重合することによりアルカリ可溶性樹脂を製造する方法であって、
該製造方法は、界面活性能を有する化合物の含有量が全単量体成分100質量%に対して0.5質量%以下、かつ、連鎖移動剤の含有量が全単量体成分100質量%に対して0.0001質量%未満である条件下で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を全単量体成分100質量%に対して10〜95質量%含む単量体成分を、シードとなる粒子に吸収させた後に、水溶液中で重合することによりアルカリ可溶性樹脂を得る工程を含み、
該アルカリ可溶性樹脂は、JIS K 7117−1で測定した、25℃、pH7、不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とするアルカリ可溶性樹脂の製造方法。 - 前記アルカリ可溶性樹脂は、水溶液中で重合後に、更にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種でpH7に調整した後の、奥行10mmの石英セル中の不揮発分2質量%水溶液での全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂の製造方法。
- 前記アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造単位を5〜90質量%有する重合体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ可溶性樹脂の製造方法。
- 前記アルカリ可溶性樹脂を得る工程は、水溶液中で重合後に、更にアンモニウム塩、有機アミン塩及びアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種で中和してアルカリ可溶性樹脂を得る工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂の製造方法。
- アルカリ可溶性樹脂を含有してなる粘度調整剤の製造方法であって、
該製造方法は、界面活性能を有する化合物の含有量が全単量体成分100質量%に対して0.5質量%以下、かつ、連鎖移動剤の含有量が全単量体成分100質量%に対して0.0001質量%未満である条件下で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を全単量体成分100質量%に対して10〜95質量%含む単量体成分を、シードとなる粒子に吸収させた後に、水溶液中で重合することによりアルカリ可溶性樹脂を得る工程を含み、
該粘度調整剤は、pH7で不揮発分2質量%水溶液での粘度が100mPa・s以上であることを特徴とする粘度調整剤の製造方法。
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