JP2013129738A - 制振材用エマルションとその製造方法、および塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜を形成できる制振材用エマルションを製造する方法、それより得られた制振材用エマルション及び塗料組成物の提供。
【解決手段】tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して重合体(X)を得る工程(1)と、重合体(X)を含む分散液中で、tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合する工程(2)とを含み、アクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)のガラス転移温度(Tg)と、アクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)のガラス転移温度(Tg)の差が50℃以下である制振材用エマルションの製造方法、およびこれより得られた制振材用エマルションと、該制振材用エマルションを含む塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材の振動を低減させる制振材を形成するのに好適な制振材用エマルションとその製造方法、および塗料組成物に関する。
従来、各種基材で生じる振動や騒音を防止して静寂性を保つために、アスファルトシートや制振鋼板等のシート状の制振材を基材表面に貼り付ける方法が行われていた。
しかし、シート状の制振材は、基材の形状が複雑な場合、基材への貼り付け時の作業性や自動化が困難となったり、廃材が発生したりするなどの問題があった。
そこで、シート状の制振材を基材表面に貼り付ける方法に代わり、基材表面に制振材用エマルションを塗布し、制振性を有する塗膜(制振材)を形成する方法が検討されている。
制振材用エマルションより形成される塗膜は、振動エネルギーを高分子の粘弾性挙動によって熱エネルギーに変換することにより振動を低減できる。
しかし、粘弾性を有する重合体の振動エネルギーから熱エネルギーヘの変換効率は温度依存性が大きい。そのため、制振材が使用される広い温度領域で高い制振性を得るための検討が行われている。
例えば、特許文献1、2には、コア部とシェル部を構成する各重合体のガラス転移温度(Tg)が特定の範囲にあるコアシェル構造のアクリル共重合体粒子を含有する制振材用エマルションが記載されている。
また、多段重合により水性被覆材を製造する方法も提案されている。
例えば、特許文献3には、溶解度パラメーターの異なる単量体混合物を多段重合した、水性被覆剤用のエマルションが記載されている。
特開2005−105133号公報 特開2009−62507号公報 特開2007−284559号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の制振材用エマルションより形成される塗膜(制振材)は、制振性が得られる温度領域が狭く、制振性も不十分であった。
また、特許文献3に記載のエマルションより形成される塗膜は、制振性能を有するものではなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜を形成できる制振材用エマルションを製造する方法と、それより得られた制振材用エマルション、および塗料組成物の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して重合体(X)を得る工程(1)と、前記重合体(X)を含む分散液中で、tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合する工程(2)とを含む制振材用エマルションの製造方法であって、
前記アクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)の、FOXの式より求められるガラス転移温度(Tg)と、前記アクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)の、FOXの式より求められるガラス転移温度(Tg)の差が50℃以下である、制振材用エマルションの製造方法。
[2] 前記アクリル系単量体混合物(X)が、tert−ブチルメタクリレートを5〜60質量%含む、[1]に記載の制振材用エマルションの製造方法。
[3] 前記アクリル系単量体混合物(Y)が、tert−ブチルメタクリレートを1〜35質量%含む、[1]または[2]に記載の制振材用エマルションの製造方法。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の制振材用エマルションの製造方法により得られた、制振材用エマルション。
[5] [4]に記載の制振材用エマルションを含む、塗料組成物。
本発明の制振材用エマルションの製造方法によれば、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜を形成できる制振材用エマルションを製造できる。
また、本発明の制振材用エマルションおよび塗料組成物によれば、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜を形成できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
[制振材用エマルションの製造方法]
本発明の制振材用エマルションの製造方法は、アクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して重合体(X)を得る工程(1)と、前記重合体(X)を含む分散液中でアクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合する工程(2)とを含む。
<アクリル系単量体混合物(X)>
アクリル系単量体混合物(X)(以下、「単量体混合物(X)」という。)は、tert−ブチルメタクリレート(以下、「t−BMA」という。)を含む。単量体混合物(X)がt−BMAを含むことにより、制振材用エマルションから製膜した塗膜(制振材)の損失正接(tanδ)の最大値(tanδmax)が高くなり制振性が向上し、塗膜が実用的に使用される温度領域において優れた制振性が得られる温度領域が広くなる。
単量体混合物(X)中のt−BMAの含有量は、5〜60質量%が好ましい。単量体混合物(X)中のt−BMAの含有量が5質量%以上であれば、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が高くなりやすく、制振性がより向上する。加えて、優れた制振性が得られる温度領域もより広くなる。一方、t−BMAの含有量が60質量%以下であれば、損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が60℃以下となり、塗膜が実用的に使用される温度領域において優れた制振性が得られる温度領域がより広くなる。
単量体混合物(X)中のt−BMAの含有量は、エマルション粘度を低下させる点から10質量%以上がより好ましい。また、製膜させた際に、単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)と、後述するアクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)との相溶性を向上させる点から58質量%以下がより好ましい。
なお、損失正接(tanδ)は、与えられた振動エネルギーを熱エネルギーへ変換する際の効率を示す指標であり、損失正接の最大値(tanδmax)が大きいほど制振性に優れることを意味する。
損失正接(tanδ)は、制振材用エマルションから製膜した塗膜について、固体粘弾性測定装置を用いて動的粘弾性を測定し、貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E’’)を求め、損失弾性率(E’’)を貯蔵弾性率(E’)で除することで算出できる。
単量体混合物(X)中の、t−BMA以外の単量体としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジエル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等の官能基を有する不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸エステル類(ただし、t−BMAを除く)、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、製膜した時の塗膜の強靭性の点からメチルメタクリレートが好ましい。
エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの中でも、詳しくは後述するが、得られる制振材用エマルションを塗料組成物として用いる場合、該塗料組成物に配合される無機粉体等の充填剤の分散性の点からアクリル酸が好ましい。
<工程(1):単量体混合物(X)の乳化重合>
工程(1)は、単量体混合物(X)を乳化重合して重合体(X)を得る工程である。
工程(1)における重合方法としては、界面活性剤の存在下、単量体混合物(X)を重合反応系内に供給し、重合開始剤によって乳化重合する公知の方法が挙げられる。例えば、媒体と、単量体混合物(X)と、界面活性剤と、重合開始剤とを任意の温度で混合・攪拌することで重合体(X)が得られる。
乳化重合の際に用いる媒体としては水性煤体が好ましく、例えば、水、水と混じり合う溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。中でも、得られる制振材用エマルションを含む塗料組成物を塗布する際の取り扱い性や環境への影響を考慮すると、水が好適である。
界面活性剤としては、乳化重合に通常使用されるものを用いればよく、特に限定されないが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、得られる制振材用エマルションの安定性の点で、アニオン系界面活性剤が好ましく、その中でも特に、疎水基−親水基のバランスに優れている点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、市販品を用いることができ、例えば第一工業製薬社製の「ハイテノールNF−08」、日本乳化剤社製の「ニューコール707SF」などが挙げられる。
これら界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、用いる界面活性剤の種類や単量体混合物(X)中の単量体の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、単量体混合物(X)100質量部に対して、0.3〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
重合開始剤としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、水溶性開始剤が好適に使用される。
水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)三塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、 tert−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。
これら重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、単量体混合物(X)100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1質量部である。
乳化重合には、重合促進等の目的で、必要に応じて還元剤を併用することができる。
還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物などが挙げられる。
これら還元剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、単量体混合物(X)100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。
また、乳化重合には、重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、もしくはメルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステルが好ましい。
これら重合連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、単量体混合物(X)100質量部に対して、通常2.0質量部以下であり、好ましくは1.0質量部以下である。
乳化重合は、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤、無機塩などの存在下で行ってもよい。
また、単量体や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
また、重合温度や重合時間などの乳化重合の条件は特に限定されない。例えば、重合温度は0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜95℃である。重合時間は1〜15時間であることが好ましく、より好ましくは5〜10時間である。
<アクリル系単量体混合物(Y)>
アクリル系単量体混合物(Y)(以下、「単量体混合物(Y)」という。)は、t−BMAを含む。単量体混合物(Y)がt−BMAを含むことにより制振材用エマルションから製膜した塗膜(制振材)の損失正接(tanδ)の最大値(tanδmax)が高くなり制振性が向上し、塗膜が実用的に使用される温度領域において優れた制振性が得られる温度領域が広くなる。
単量体混合物(Y)中のt−BMAの含有量は、1〜35質量%が好ましい。単量体混合物(Y)中のt−BMAの含有量が1質量%以上であれば、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が高くなりやすく、制振性がより向上する。一方、t−BMAの含有量が35質量%以下であれば、損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が60℃以下となり、塗膜が実用的に使用される温度領域において優れた制振性が得られる温度領域がより広くなる。
単量体混合物(Y)中のt−BMAの含有量は、エマルション粘度を低下させる点から5質量%以上がより好ましい。また、製膜させた際に、単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)と、前記重合体(X)との相溶性を向上させる点から32質量%以下がより好ましい。
単量体混合物(Y)中の、t−BMA以外の単量体としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジエル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等の官能基を有する不飽和単量体や、(メタ)アクリル酸エステル類(ただし、t−BMAを除く)、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、単量体混合物(X)の説明において先に例示した(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が挙げられる。中でも、製膜した時の塗膜の強靭性の点からメチルメタクリレートが好ましく、得られる制振材用エマルションを塗料組成物として用いる場合、該塗料組成物に配合される無機粉体等の充填剤の分散性の点からアクリル酸が好ましい。
<工程(2):単量体混合物(Y)の乳化重合>
工程(2)は、工程(1)にて得られた重合体(X)を含む分散液中で単量体混合物(Y)を乳化重合する工程である。
工程(2)における乳化重合は、工程(1)において単量体混合物(X)を乳化重合する方法と同様に行えばよい。
本発明においては、単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)のガラス転移温度(Tg)と、単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)のガラス転移温度(Tg)の差が50℃以下であることが必要である。従って、TgとTgの差が50℃以下となるように、単量体混合物(X)、単量体混合物(Y)中の各単量体を組み合わせて、工程(1)、工程(2)に用いる。
TgとTgの差が50℃以下であれば、制振材用エマルションから製膜した塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が高くなり、制振性が向上する。
また、TgとTgの差は、20℃以上であることが好ましい。TgとTgの差が20℃以上であれば、広い温度領域での制振性が得られる。さらに、重合体(X)のTgは、重合体(Y)のTgよりも高い方が好ましい。これにより幅広い温度領域下で、より高い制振性を発現させることが可能となる。
さらに、重合体(X)のガラス転移温度(Tg)は、17〜45℃であることが好ましい。重合体(X)のTgが17℃以上であれば、幅広い温度領域での制振性をより向上させることができる。一方、重合体(X)のTgが45℃以下であれば、製膜させた際に、重合体(X)と重合体(Y)との相溶性が良好となり、高い制振性を発現できるようになる。
重合体(X)のTgは、60℃周辺での制振性を向上させる点から20℃以上がより好ましい。また、制振性が最大となる温度を40℃付近とする点から40℃以下がより好ましい。
また、重合体(Y)のガラス転移温度(Tg)は、−10〜15℃であることが好ましい。重合体(Y)のTgが−10℃以上であれば、製膜させた際に、重合体(Y)と重合体(X)との相溶性が良好となり、高い制振性を発現できるようになる。一方、重合体(Y)のTgが15℃以下であれば、幅広い温度領域での制振性をより向上させることができる。
重合体(Y)のTgは、制振性が最大となる温度を40℃付近とする点から−5℃以上がより好ましい。また、20℃周辺での制振性を向上させる点から10℃以下がより好ましい。
なお、重合体のTgは、下記式(1)に示すFOXの式より求められる値である。
1/(273+Tg)=Σ(W/(273+Tg)) …(1)
式(1)中、「Tg」は重合体のガラス転移温度(℃)である。「W」は単量体混合物に含まれるm種(m>1)の単量体(1)、(2)・・・(m)の質量分率である。
「Tg」は単量体混合物に含まれる各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)である。各単量体のホモポリマーのガラス転移温度(℃)は、「POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION」(Volume1 References page VI−253)に記載された値を使用できる。
また、本発明では、単量体混合物(X)と単量体混合物(Y)との質量比(X/Y)が20/80〜70/30となるように、単量体混合物(X)、単量体混合物(Y)を用いて工程(1)、工程(2)を行うのが好ましい。質量比が上記範囲内であれば、幅広い温度領域での制振性が得られる。
本発明の制振材用エマルションの製造方法は、少なくとも2段の乳化重合工程(工程(1)、工程(2))を行えばよいが、3段以上の乳化重合工程を行ってもよい。
3段以上の乳化重合工程を行う場合には、第1段目の乳化重合工程を単量体混合物(X)を用いて乳化重合を行う工程(工程(1))とし、最終段目の乳化重合工程を単量体混合物(Y)を用いて乳化重合を行う工程(工程(2))とすることが好ましい。なお、他の工程、すなわち第1段目と最終段目との間の乳化重合工程については、上記のような工程順となる限り特に限定されるものではない。
本発明では、工程(2)の後、得られた制振材用エマルションのpHをpH調整剤により調整することが好ましい。
pH調整剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウムなどを用いることができる。これらの中でも、詳しくは後述するが、得られた制振材用エマルションを含む塗料組成物から形成される塗膜の耐水性が向上することから、塗膜の加熱時に揮散しやすい揮発性塩基を有するアンモニア水を用いることが好ましい。
これらpH調整剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の添加量としては特に限定されず、例えば、得られた制振材用エマルションの酸価、すなわちエマルションが有する酸基1当量に対してpH調整剤の塩基が0.6〜1.4当量となるように添加することが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2当量である。
以上説明した本発明の制振材用エマルションの製造方法によれば、特定の単量体混合物(X)を用いて乳化重合した後、得られた重合体(X)を含む分散媒中で特定の単量体混合物(Y)を乳化重合するので、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜(制振材)を形成できる制振材用エマルションを製造できる。
[制振材用エマルション]
本発明の制振材用エマルションは、上述した本発明の制振材用エマルションの製造方法により得られたエマルションである。
制振材用エマルションのpHは特に限定されないが、2〜10であることが好ましく、より好ましくは3〜9である。
制振材用エマルションのpHは、製造過程において、工程(2)の後に上述したpH調整剤を添加することによって調整できる。
また、制振材用エマルションの粘度は、制振材用エマルションを塗料組成物として用いる場合、該塗料組成物に配合される無機粉体等の充填剤の分散性や、他の添加剤の選択に広く自由度を持たせることを考慮すると、10〜30000mPa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜10000mPa・sである。
制振材用エマルションの粘度は、単量体混合物(X)、単量体混合物(Y)中の単量体の種類や配合量によって調整できる。
なお、制振材用エマルションの粘度は、BH型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定した値である。
また、制振材用エマルションの質量平均分子量は、1万〜100万であることが好ましい。質量平均分子量が1万以上であれば、制振性がより向上し、制振材用エマルションを後述する塗料組成物とした状態での安定性がより十分なものとなる。一方、質量平均分子量が100万以下であれば、重合体(X)と重合体(Y)の相溶性がより向上し、制振性が十分に発揮されやすくなる。また、塗料組成物とした状態での低温における造膜性を良好に維持できる。制振材用エマルションの質量平均分子量は、1万〜75万がより好ましく、さらに好ましくは1万〜50万である。
制振材用エマルションの質量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
なお、制振材用エマルションは、その数平均分子量が小さくなるほど、制振材用エマルションを含む塗料組成物において、該塗料組成物に配合される無機粉体等の充填剤と制振材用エマルションとの親和性が向上して分散性が向上する傾向にある。
上述したように、損失正接(tanδ)は、与えられた振動エネルギーを熱エネルギーへ変換する際の効率を示す指標である。よって、塗膜が実用的に使用される温度領域(使用温度領域)において高い制振性を保つためには、制振材用エマルションを含む塗料組成物より形成される塗膜(制振材)の、使用温度領域における損失正接の値が高いことが好ましく、高い値を継続することがより好ましい。
塗膜の損失正接の値を継続して高くするためには、使用温度領域において塗膜の損失正接が最大値となり、かつ、その最大値が高い値であることが好ましい。具体的には、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)は1.6以上が好ましく、より好ましくは1.8以上である。
また、塗膜の損失正接が最大となるときの温度は、塗膜が実用的に使用される温度領域である20〜60℃であることが好ましく、より好ましくは30〜50℃である。損失正接が最大となるときの温度が上記範囲内であれば、制振材用エマルションを含む塗料組成物により形成される塗膜の20〜60℃の範囲での損失係数が向上し、幅広い実用的な温度領域において制振性が十分に発現しやすくなる。
塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)や、損失正接が最大となるときの温度領域が上記範囲内であれば、制振材用エマルションを含む塗料組成物より形成される塗膜が、20℃や60℃の温度近傍において優れた制御性を発揮するものとなる。加えて、20〜60℃の温度範囲においても、塗膜が優れた制御性を発揮するものとなる。
上述した本発明の制振材用エマルションの製造方法であれば、損失正接の最大値(tanδmax)や、損失正接が最大となるときの温度領域が上記範囲内となる塗膜を形成できる制振材用エマルションを容易に製造できる。
従って、本発明の制振材用エマルションは、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜(制振材)を形成できる。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、上述した本発明の制振材用エマルションを含む。
本発明の制振材用エマルションの製造方法により得られた制振材用エマルションは、そのまま塗料組成物として用いることができるが、必要に応じて添加剤と混合して塗料組成物として用いてもよい。
添加剤としては、溶媒、可塑剤、安定剤、増粘剤、湿潤剤、防腐剤、発泡防止剤、充填剤、着色剤、分散剤、防錆顔料、消泡剤、老化防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
これら添加剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
塗料組成物中の溶媒の含有量は、塗料組成物100質量%中の制振材用エマルションの含有量が固形分で後述する範囲内となるように適宜設定すればよい。
増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
塗料組成物中の増粘剤の含有量は、制振材用エマルションの固形分100質量部に対し、固形分で0.01〜2質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1.5質量部である。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、珪藻土、クレー等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤などが挙げられる。
塗料組成物中の充填剤の含有量は、制振材用エマルションの固形分100質量部に対し、50〜700質量部が好ましく、より好ましくは100〜550質量部である。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機または無機の着色剤が挙げられる。
分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤;ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
防錆顔料としては、例えば、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩などが挙げられる。
本発明の塗料組成物は、上述した添加剤以外にも、発泡剤を含むことが好ましい。塗料組成物が発泡剤を含めば、該塗料組成物より得られる塗膜(制振材)において、均一な発泡構造の形成や厚膜化等の効果が発揮され、それに起因して十分な加熱乾燥性や高制振性を発現することとなる。従って、塗料組成物が発泡剤を含む場合は、該塗料組成物を基材上に塗布し、加熱乾燥して塗膜を形成することが好ましい。
このように、本発明の制振材用エマルションおよび発泡剤を含む塗料組成物もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
発泡剤としては特に限定されず、例えば、低沸点炭化水素内包の加熱膨張カプセル、有機発泡剤、無機発泡剤などが好適である。これら発泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加熱膨張カプセルとしては、例えば、松本油脂社製の「マツモトマイクロスフィアー」シリーズ(F−30、F−50);日本エクスパンセル社製の「エクスパンセル」シリーズ(WU642、WU551、WU461、DU551、DU401)等が挙げられる。
有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)等が挙げられる。
無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、シリコンハイドライド等が挙げられる。
塗料組成物中の発泡剤の含有量は、制振材用エマルション100質量部に対し、0.5〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量部である。
さらに、本発明の塗料組成物は、無機顔料を含むことが好ましい。塗料組成物が無機顔料を含めば、加熱乾燥性や高制振性の発現性をより十分に確認できる。
無機顔料としては特に限定されず、例えば、上述した無機の着色剤や無機の防錆顔料等の1種または2種以上を使用できる。
塗料組成物中の無機顔料の含有量は、制振材用エマルション100質量部に対し、50〜700質量部が好ましく、より好ましくは100〜550質量部である。
本発明の塗料組成物は、制振材用エマルションと上述した添加剤をバタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等の混合機を用い、公知の方法で混合することで得られる。
このようにして得られる塗料組成物は、当該塗料組成物の総量100質量%中、固形分濃度が50〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜90質量%である。
特に、塗料組成物中の制振材用エマルションの含有量は、塗料組成物に含まれる固形分100質量%中、固形分で10〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜55質量%である。
本発明の塗料組成物は、例えば、基材に塗布して乾燥することにより制振材となる塗膜を形成できる。
基材としては特に限定されるものではない。
塗料組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いた塗布方法が挙げられる。
塗料組成物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、通常は、乾燥後の塗膜の膜厚が0.5〜8.0mmとなる塗布量が好ましく、より好ましくは、3.0〜6.0mmである。
また、乾燥後の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/mとなるように塗料組成物を塗布することが好ましく、より好ましくは、2.0〜6.0kg/mである。
塗料組成物を基材に塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる条件としては、加熱乾燥でも常温乾燥でもよいが、本発明の塗料組成物は加熱乾燥性に優れることから、効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。
加熱乾燥の温度としては、80〜210℃が好ましく、より好ましくは110〜180℃であり、さらに好ましくは120〜170℃である。
このように、乾燥時の塗膜の膜厚が0.5〜8.0mmとなるように塗布し、乾燥する塗料組成物の塗布方法や、乾燥後の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/mとなるように塗布し、乾燥する塗料組成物の塗工方法もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
さらに、前記塗料組成物の塗布方法によって得られた塗膜(制振材)もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
本発明の塗料組成物より形成される塗膜は、上述したように、損失正接の最大値(tanδmax)が1.6以上であることが好ましく、より好ましくは1.8以上である。
また、塗膜の損失正接が最大となるときの温度が20〜60℃であることが好ましく、より好ましくは30〜50℃である。
塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)や、損失正接が最大となるときの温度領域が上記範囲内であれば、20℃や60℃の温度近傍において優れた制御性を発揮するものとなる。加えて、20〜60℃の温度範囲においても、優れた制御性を発揮するものとなる。
以上説明した本発明の塗料組成物によれば、上述した本発明の制振材用エマルションを含むので、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜(制振材)が得られる。
また、本発明の塗料組成物は、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも基材の塗布面が傾斜していても塗料のずり落ちが発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
各種測定および評価方法は以下の通りである。
[測定・評価]
<制振材用エマルションの固形分の測定>
制振材用エマルション約1.0gを秤量、熱風乾燥機で105℃×2時間乾燥した後、乾燥残量を固形分(不揮発分)として測定し、下記式(2)より制振材用エマルションの固形分を求めた。
固形分(質量%)=(乾燥残量/乾燥前質量)×100 …(2)
<制振材用エマルションの粘度の測定>
BH型回転粘度計(東機産業社製「BHII型」)を用いて、25℃、20rpmの条件下で、制振材用エマルションの粘度を測定した。測定された粘度について、下記の基準により評価した。
◎:粘度が30mPa・s以上10000mPa・s以下。
○:粘度が10mPa・s以上30mPa・s未満、または10000mPa・s超30000mPa・s以下。
×:粘度が10mPa・s未満、または30000mPa・s超。
<動的粘弾性試験>
ポリプロピレン製の基板上に乾燥膜厚が0.2mmとなるように制振材用エマルションを流延し、60℃で120分、ついで130℃で30分間乾燥して基板上に塗膜を形成し、これを試験片とした。
得られた試験片について、歪み制御方式による固体粘弾性測定装置(UBM社製、「Pheo−Station E4000」)を用い、試料寸法が幅4mm×長さ20mm、周波数1Hz、負荷歪み0.1%、昇温速度4℃/分、測定温度−40〜100℃の条件で動的粘弾性の測定を行い、貯蔵弾性率(E’)および損失弾性率(E’’)を求めた。また、損失弾性率(E’’)を貯蔵弾性率(E’)で除することで、塗膜の損失正接(tanδ)を求めた。
損失正接(tanδ)は、与えられた振動エネルギーを熱エネルギーへ変換する際の効率を示す指標であり、以下の評価基準にて制振性を評価した。
測定された塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)について、下記の基準により評価した。なお、損失正接の最大値(tanδmax)が高いほど、使用温度領域において高い制振性を発揮することを意味する。
○:tanδmaxが1.8以上。
△:tanδmaxが1.6以上1.8未満。
×:tanδmaxが1.6未満。
塗膜の損失正接(tanδ)が最大となるときの温度について、下記の基準により評価した。
○:損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が30℃以上50℃以下。
△:損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が20℃以上30℃未満、または50℃超60℃以下。
×:損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が20℃未満、または60℃超。
塗膜の損失正接(tanδ)が1.0となるときの温度を、低温側と高温側でそれぞれ読み取り、その差(すなわち、損失正接が1.0以上となる温度幅)を算出し、下記の基準により評価した。なお、差が大きいほど、広い温度領域で制振性を発揮することを意味する。
○:差が32℃以上。
△:差が30℃以上32℃未満。
×:差が30℃未満。
[実施例1]
温度計、窒素ガス導入管、撹拌機、滴下漏斗、冷却管を備えた2Lの4つロフラスコに純水48質量部を入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。その後、空素ガス気流下で撹拌しながら内温を80℃ まで昇温した。内温が80℃ に達した時点で、7質量部の純水に溶解した過硫酸カリウム0.2質量部を添加した。
引き統き、メチルメタクリレート16.45質量部、tert−ブチルメタクリレート15質量部、2−エチルヘキシルアクリレート11.25質量部、n−ブチルアクリレート3.3質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2質量部、アクリル酸2質量部からなる単量体混合物(X)と、界面活性剤としてポリオキシエテレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(第一工業製薬社製、「ハイテノールNF−08」)1.5質量部と、重合連鎖移動剤としてメルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル(淀化学社製)0.5質量部と、純水15質量部とを均―に溶解した混合液を、33.5質量部/hrの速度で滴下し、引き続き80℃ にて1時間攪拌を継続して、重合体(X)を得た(工程(1))。
ついで、メチルメタクリレート11.55質量部、tert−ブチルメタクリレート7.5質量部、2−エチルヘキシルアクリレート12.9質量部、n−ブチルアクリレート14.05質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2質量部、アクリル酸2質量部からなる単量体混合物(Y)と、界面活性剤としてポリオキシエテレンアルキルエーテル硫酸エステル塩 (第一工業製薬社製、「ハイテノールNF−08」)1.5質量部と、重合連鎖移動剤としてメルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル(淀化学社製)0.25質量部とを均―に溶解した混合液を、33.5質量部/hrの速度で滴下し、引き続き80℃ にて1時間攪拌を継続して、エマルションを得た(工程(2))。
得られたエマルションを室温まで冷却した後、pHを7.7となるよう28質量%アンモニアを添加して中和し、制振材用エマルションを得た。
得られた制振材用エマルションの固形分、粘度を測定し、動的粘弾性試験を行った。結果を表1に示す。
また、単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)のガラス転移温度(Tg)、および単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)のガラス転移温度(Tg)を上記式(1)に示すFOXの式から求めた。結果を表1に示す。
さらに、制振材用エマルションの製造に用いた単量体混合物(X)と単量体混合物(Y)との質量比(X/Y)を表1に示す。
なお、表1中の単量体混合物(X)および単量体混合物(Y)に含まれる各単量体の量は、単量体混合物(X)および単量体混合物(Y)の総量をそれぞれ100質量%としたときの量(質量%)である。
[実施例2〜7、比較例1〜4]
工程(1)で用いた単量体混合物(X)および工程(2)で用いた単量体混合物(Y)の組成を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして制振材用エマルションを製造し、各種測定および評価を行った。結果を表1、2に示す。
Figure 2013129738
Figure 2013129738
表1、2中の記号は以下の通りである。なお、各単量体のガラス転移温度(Tg)はホモポリマーのTgである。
・t−BMA:tert−ブチルメタクリレート(Tg:107℃)。
・MMA:メチルメタクリレート(Tg:105℃)。
・2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Tg:−55℃)。
・n−BA:n−ブチルアクリレート(Tg:−54℃)。
・2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:85℃)。
・AA:アクリル酸(Tg:106℃)。
・n−BMA:n−ブチルメタクリレート(Tg:20℃)。
表1から明らかなように、各実施例で得られた制振材用エマルションは、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が高く、使用温度領域において高い制振性を発揮する塗膜(制振材)を形成できることが示された。
また、塗膜の損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が20〜60℃の範囲内であり、塗膜が実用的に使用される温度領域において高い制振性を発揮する塗膜を形成できることが示された。
さらに、塗膜の損失正接(tanδ)が1.0以上となる温度領域が広く、広い温度領域において優れた制振性を発揮する塗膜を形成できることが示された。
一方、表2から明らかなように、比較例1の場合は、単量体混合物(X)がt−BMAを含まないため、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が低く、制振性が不十分であった。また、塗膜の損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が60℃を超え、塗膜が実用的に使用される温度領域において制振性が不十分であった。
比較例2の場合、単量体混合物(Y)がt−BMAを含まないため、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が低く、制振性が不十分であった。また、塗膜の損失正接(tanδ)が最大となるときの温度が60℃を超え、塗膜が実用的に使用される温度領域において制振性が不十分であった。
比較例3の場合、単量体混合物(X)および単量体混合物(Y)がt−BMAを含まないため、塗膜の損失正接の最大値(tanδmax)が低く、制振性が不十分であった。
比較例4の場合、重合体(X)のTgと重合体(Y)のTgの差が50℃を超えたため、損失係数の最大値(tanδmax)が1未満となり、制振性が不十分であった。


Claims (5)

  1. tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して重合体(X)を得る工程(1)と、前記重合体(X)を含む分散液中で、tert−ブチルメタクリレートを含むアクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合する工程(2)とを含む制振材用エマルションの製造方法であって、
    前記アクリル系単量体混合物(X)を乳化重合して得られる重合体(X)の、FOXの式より求められるガラス転移温度(Tg)と、前記アクリル系単量体混合物(Y)を乳化重合して得られる重合体(Y)の、FOXの式より求められるガラス転移温度(Tg)の差が50℃以下である、制振材用エマルションの製造方法。
  2. 前記アクリル系単量体混合物(X)が、tert−ブチルメタクリレートを5〜60質量%含む、請求項1に記載の制振材用エマルションの製造方法。
  3. 前記アクリル系単量体混合物(Y)が、tert−ブチルメタクリレートを1〜35質量%含む、請求項1または2に記載の制振材用エマルションの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の制振材用エマルションの製造方法により得られた、制振材用エマルション。
  5. 請求項4に記載の制振材用エマルションを含む、塗料組成物。
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