JP5396763B2 - ノルボルネン系樹脂フィルム - Google Patents
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Description
上記ノルボルネン系樹脂は、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を開環(共)重合して得られる(共)重合体であることが好ましい。
上記水酸化物は、水酸化カリウムであってもよく、ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部の量で樹脂組成物に含有されることが好ましい。
さらに、本発明のノルボルネン系樹脂フィルムは、カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の含有率が、0.05〜4重量%であることが好ましい。
<ノルボルネン系樹脂>
「ノルボルネン系樹脂」は、ノルボルネン系化合物を少なくとも1種含む単量体または単量体組成物(これらを併せて、以下「単量体組成物」ともいう。)を(共)重合し、必要に応じて、さらに水素添加して得られた樹脂である。
R6は、置換あるいは非置換の直鎖状、分岐状または環状の、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜15のアルキル基;もしくは、置換または非置換のアリール基を表す。
R1とR2と、またはR3とR4とは、相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2と、R3とR4と、またはR2とR3とは、相互に結合して単環または多環の炭素環もしくは複素環を形成していてもよく、R1とR4と、またはR2とR3とは、相互に結合して二重結合を形成していてもよく、もしくは、R1とR4と、およびR2とR3とは、相互に結合して三重結合を形成していてもよい。
(単量体組成物)
単量体組成物に含まれるノルボルネン系化合物は、例えば、上記式(1)で表される。
上記式(1)で表されるノルボルネン系化合物としては、例えば、以下の化合物が例示できるが、これらの化合物に限定されるものではない。
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2’−メトキシ)エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(2’−エトキシ)エトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−iso−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(1’−メチル)−プロポキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−iso−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−tert−ブトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−n−ヘキシルオキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニルカルボニルオキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−フェノキシエチルカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニルカルボニルオキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(DMN)、
8−メチル−8−(2’−メトキシ)エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−(2’−エトキシ)エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−iso−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−(1’−メチル)−プロポキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−iso−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−tert−ブトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−n−ヘキシルオキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−フェノキシエチルカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ノルボルネン系化合物の種類および使用量は、求められる特性に応じて適宜選択される。
−R5−COOR6 …(3)
上記式(3)中、R5は、単結合;置換または非置換のメチレン基;もしくは、炭素原子数2〜8の直鎖状または分岐状の、エーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキレン基を表す。R6は、置換あるいは非置換の直鎖状、分岐状または環状の、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜15のアルキル基;もしくは、置換または非置換のアリール基を表す。
上記式(1)において、上記式(3)で表される基が結合した炭素原子に炭素原子数1〜3のアルキル基、特にメチル基が結合しているノルボルネン系化合物は、耐熱性と吸水(湿)性とのバランスの点で好ましい。
「共重合可能な単量体」としては、上記式(3)で表される基を有さず、上記ノルボルネン系化合物と共重合可能な単量体であれば特に限定されないが、例えば、
シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロドデセン等の環状オレフィン;
1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、シクロドデカトリエン等の非共役環状ポリエン;
エチレン等のα−オレフィン;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)、
5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−(4−ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジブロモ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ヒドロキシエチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−メチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−エチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シクロヘキシル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−フェニル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−(4−ビフェニル)−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
8−メチル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
8−フェニル−トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
7−フルオロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ブロモ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8−ジクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7,8,9−トリクロロ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−クロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ジクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−トリクロロメチル−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−ヒドロキシ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−シアノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
7−アミノ−トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]ペンタデカ−3−エン、
ヘキサシクロ[8.4.0.12,5.17,14.19,12.08,13]ヘプタデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−(4−ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジメチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−フルオロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−クロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ブロモ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,9−ジクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8,8,9,9−テトラクロロ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−8−ヒドロキシエチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−シアノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−アミノ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等の上記式(1)で表されるノルボルネン系化合物以外のノルボルネン系化合物
などが挙げられる。
(重合方法)
ノルボルネン系樹脂の重合方法については、ノルボルネン系化合物を含む単量体組成物の重合が可能である限り、特に制限されるものではないが、例えば、特開2008−76552号公報に記載の開環(共)重合または付加(共)重合と同様の重合方法によって重合することができ、さらに該公報に記載の水素添加反応と同様にしてノルボルネン系樹脂を水素添加することができる。
ノルボルネン系樹脂は、紫外線吸収剤が添加されてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することにより、ノルボルネン系樹脂を劣化させる原因となる活性ラジカル種の発生を抑制し、劣化により生じる着色や透明性の低下を防ぐとともに、偏光膜への紫外線の透過を阻害し、偏光膜の劣化を防ぐ役割を有する。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール誘導体が特に好ましく用いられる。
(その他の添加剤)
ノルボルネン系樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲において、さらに酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。
ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常120℃以上、好ましくは130℃以上である。Tgが上記範囲内であると、長期使用においても高い信頼性を有するノルボルネン系樹脂フィルムが得られる。
<樹脂組成物>
本発明に用いられる「樹脂組成物」とは、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られるノルボルネン系樹脂の溶液と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の水酸化物とを含有するものである。
水酸化物は、上記ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜8重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部の量で樹脂組成物に含有される。水酸化物の含有量(重量部)が、上記数値範囲内であると反応時の粘度上昇が小さく、均一な反応が可能なため好適である。
本発明の「ノルボルネン系樹脂溶液」とは、上記樹脂組成物を、好ましくは30〜180℃、より好ましくは50〜120℃、特に好ましくは90〜120℃の温度に加熱してなるものである。加熱する温度が30℃未満であると、反応に要する時間が長くなる場合があり、一方、180℃を越えると、急激な反応により、反応容器内の圧力が急速に上昇する場合がある。
本発明のノルボルネン系樹脂溶液の製造方法は、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合してノルボルネン系樹脂を得る(共)重合工程、該ノルボルネン系樹脂と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の水酸化物とを混合して樹脂組成物を得る混合工程、および該樹脂組成物を加熱してノルボルネン系樹脂溶液を得る加熱工程からなることを特徴とする。
(共)重合工程とは、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合してノルボルネン系樹脂を得る工程である。
〔混合工程〕
混合工程とは、上記(共)重合工程で得られたノルボルネン系樹脂と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の水酸化物とを混合して樹脂組成物を得る工程である。
攪拌羽根を装着したガラス製セパラブルフラスコに、上記(共)重合工程で得られたノルボルネン系樹脂の100重量部を仕込み、そこにトルエン300重量部を添加して室温で5時間攪拌して、該ノルボルネン系樹脂をトルエンに溶解させる。
〔加熱工程〕
加熱工程とは、上記混合工程で得られた樹脂組成物を加熱してノルボルネン系樹脂溶液を得る工程である。
加熱する時間は、1〜24時間、好ましくは5〜24時間、特に好ましくは10〜24時間が望ましい。加熱する温度および時間が上記範囲内であると、得られるノルボルネン系樹脂フィルムに残る溶媒量が少なくフィルムの機械的強度が損なわれないため好適である。
ノルボルネン系樹脂溶液の用途としては、キャストフィルム、コーティング膜などが挙げられる。これらのうち、キャストフィルムは、高い透明性を保持しつつ、さらに耐溶剤性および耐熱変形性に優れることから好適である。
本発明のノルボルネン系樹脂フィルムは、本発明のノルボルネン系樹脂溶液を用いて形成されることを特徴とする。
ノルボルネン系樹脂フィルムは、上記樹脂組成物を、キャスティング(キャスト成形)することによって好適に形成することができる。
ノルボルネン系樹脂フィルムの「アルカリ変性率」は、該フィルムをFT−IRにより測定し、得られたIRスペクトルの1810cm-1〜1610cm-1に観測されるエステル基カルボニルの吸収ピーク(ピークA)の面積、および1610cm-1〜1520cm-1に観測されるカルボキシレート基カルボニルの逆対称伸縮振動の吸収ピーク(ピークB)の面積から下記式に従い算出したものであって、好ましくは0.01〜0.5、より好ましくは0.01〜0.3であることが望ましい。
アルカリ変性率が上記範囲内であると、アルカリ変性されたノルボルネン系樹脂フィルムの高耐溶剤性と高耐熱変形温度との両立の観点から好適である。
合成例および実施例で得られたノルボルネン系樹脂、ノルボルネン系樹脂溶液およびノルボルネン系樹脂フィルムの各種物性の測定は、下記(1)〜(11)に記載の方法に従った。
核磁気共鳴分光計(NMR)としてBruker製AVANCE500を用い、測定溶媒としてd−クロロホルムを用い、1H−NMRを測定した。5.1〜5.8ppmのビニレン基、3.7ppmのメトキシ基、0.6〜2.8ppmの脂肪族プロトンの積分値より、単量体の組成を算出後、ノルボルネン系樹脂の水素添加率(%)を算出した。
セイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200を用いて、昇温速度を毎分20℃、窒素気流下で測定を行った。ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度〔Tg〕(℃)は、微分示差走査熱量の最大ピーク温度(A点)および最大ピーク温度より−20℃の温度(B点)を示差走査熱量曲線上にプロットし、B点を起点とするベースライン上の接線とA点を起点とする接線との交点として求めた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSKgel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/min、サンプル濃度:0.7〜0.8重量%、注入量:70μL、測定温度:40℃とし、検出器:RI(40℃)、標準物質:東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、ノルボルネン系樹脂の数平均分子量〔Mn〕、重量平均分子量〔Mw〕および分子量分布〔Mw/Mn〕を測定した。
ウベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中(試料濃度:0.5g/dL)、30℃でノルボルネン系樹脂の対数粘度(dL/g)を測定した。
東機産業(株)製回転型粘度計(TVE−33H型)にローター(3°×R24型)をセットし25℃で保持した。該ローターにノルボルネン系樹脂溶液1mLをシリンジで注入し、測定レンジHでトルク出力が20%〜80%の範囲内となる回転数で該樹脂溶液の粘度(Pa・s)を測定した。
JASCO製FT−IR(FT/IR−4100型)で、ノルボルネン系樹脂フィルムの赤外線吸収スペクトル測定を行い、1810cm-1〜1610cm-1に観測されるエステル基カルボニルの吸収ピーク(ピークA)の面積、1610cm-1〜1520cm-1に観測されるカルボキシレート基カルボニルの逆対称伸縮振動の吸収ピーク(ピークB)の面積を算出した。次に、下記式よりノルボルネン系樹脂フィルムのアルカリ変性率(%)を求めた。
(7)カリウム含有率
まず、蛍光強度とカリウム量との検量線を作成した。
Gardner社製ヘイズ−光線透過率測定機(Haze−Gard Plus型)を使用して、ノルボルネン系樹脂フィルムの全光線透過率(%)およびヘイズ(%)を測定した。
厚さ100μmのノルボルネン系樹脂フィルムを10mm×30mmにカットし、該フィルムをトルエンまたは塩化メチレンに室温で20分間浸漬した。浸漬後、該フィルムがその形状を維持し溶剤よりそのまま引き上げることができるものを「○」、溶解していないもののフィルム形状を維持しておらず、溶剤より引き上げることができないものを「△」、溶剤に完全にフィルムが溶解しているものを「×」とした。
熱機械装置(TMA;Thermal Mechanical Analysis)/SS6100(セイコーインスツルメント社製)を用いて、幅4mm、長さ20mm、厚さ50〜200μmに調製したノルボルネン系樹脂フィルムを、25℃から350℃まで10℃/minで昇温しながら、印加荷重を10gとして、長辺方向に引張り試験を行った。該フィルムの延び率を記録し、該フィルムの軟化により延び率が急激に増大し始める温度を接線法にて求め、その温度をフィルム変形温度(℃)とした。
JIS−K7127に準じ、インストロン製引張試験機(5564型)を用い、15mm/minの試験速度で引張試験を実施し、該フィルムの引張降伏強さ(MPa)、引張降伏伸び(%)、引張破壊強さ(MPa)および引張破壊伸び(%)を求めた。なお、ノルボルネン系樹脂フィルムからなる試験片は、(株)ダンベル製サンプルカッターで、2号1/2サイズに裁断し使用した。
下記式(4)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)100部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)300部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6モル/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025モル/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
[合成例2]
DNM71部と、下記式(5)で表されるジシクロペンタジエン(DCP)15部と、下記式(6)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)1部と、1−へキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン(開環重合反応用溶媒)200部とを、窒素置換した反応容器に仕込み、100℃に加熱した。
[合成例3]
単量体としてDNM225部とNB25部とを用い、1−ヘキセンの添加量を27部としたこと以外は、合成例1と同様にして水素添加重合体(以下「樹脂C」ともいう。)を得た。
攪拌羽根を装着したガラス製セパラブルフラスコに、樹脂Aの100部を仕込み、そこにトルエン300部を添加して室温で5時間攪拌して、樹脂Aをトルエンに溶解させた。次に、KOHの1.2部をn−ブタノールの17部に溶解させたものを攪拌しながら添加し90℃に昇温した。さらに5時間攪拌した後、室温まで冷却し、アルカリ変性された樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートを、樹脂溶液中の樹脂100部に対し0.5部となるように添加し、その樹脂溶液をADVANTEC製の孔径5μmのメンブレンフィルターを用い濾過した。得られた樹脂溶液(上記(5)に係る物性値を表2に示す。)を、乾燥後の厚みが100μmとなるようアプリケーターを用いて25℃でキャストし、室温で12時間静置し溶剤を蒸発させ、続いて真空下80℃にて2時間、さらに150℃にて12時間保持し、ノルボルネン系樹脂フィルムAを得た。
[実施例2]
実施例1において、樹脂Aの100部をトルエンの400部に溶解させ、さらにKOHの3部をn−ブタノールの17部に溶解させたものを添加する以外は実施例1と同様にしてノルボルネン系樹脂フィルムBを得た。
[実施例3]
実施例2において、樹脂Aの代わりに樹脂Bを使用した以外は実施例2と同様にしてノルボルネン系樹脂フィルムCを得た。
[実施例4]
実施例2において、樹脂Aの代わりに樹脂Cを使用した以外は実施例2と同様にしてノルボルネン系樹脂フィルムDを得た。
[比較例1]
攪拌羽根を装着したガラス製セパラブルフラスコに、樹脂Aの100部を仕込み、そこにトルエン300部を添加して室温で5時間攪拌して、樹脂Aをトルエンに溶解させ(アルカリ変性させない)樹脂溶液を得た。この樹脂溶液に、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートを、樹脂溶液中の樹脂100部に対し0.5部となるように添加し、その樹脂溶液をADVANTEC製の孔径5μmのメンブレンフィルターを用い濾過した。得られた樹脂溶液を、乾燥後の厚みが100μmとなるようアプリケーターを用いて25℃でキャストし、室温で12時間静置し溶剤を蒸発させ、続いて真空下80℃にて2時間、さらに150℃にて12時間保持し、ノルボルネン系樹脂フィルムEを得た。
[比較例2]
比較例1において、樹脂Aの代わりに樹脂Bを用いた以外は同様の方法により、ノルボルネン系樹脂フィルムFを得た。
[比較例3]
比較例1において、樹脂Aの代わりに樹脂Cを用いた以外は同様の方法により、ノルボルネン系樹脂フィルムGを得た。
Claims (7)
- 下記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られるノルボルネン系樹脂の溶液と、
水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種の水酸化物と
を含有する樹脂組成物を加熱してなるノルボルネン系樹脂溶液を用いて形成されることを特徴とするノルボルネン系樹脂フィルム。
R5は、単結合;置換または非置換のメチレン基;もしくは、炭素原子数2〜8の直鎖状または分岐状の、エーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキレン基を表す。
R6は、置換あるいは非置換の直鎖状、分岐状または環状の、エーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜15のアルキル基;もしくは、置換または非置換のアリール基を表す。
R 1 とR2と、またはR3とR4とは、相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、
R1とR2と、R3とR4と、またはR2とR3とは、相互に結合して単環または多環の炭素環もしくは複素環を形成していてもよく、
R1とR4と、またはR2とR3とは、相互に結合して二重結合を形成していてもよく、もしくは、R1とR4と、およびR2とR3とは、相互に結合して三重結合を形成していてもよい。
xは、0または1〜3の整数を表し、yは、0または1を表す。) - 上記ノルボルネン系樹脂が、上記式(1)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を開環(共)重合して得られる(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
- 上記樹脂組成物の加熱温度が、30〜180℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
- 上記水酸化物が、水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
- 上記水酸化物が、ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部の量で樹脂組成物に含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
- FT−IRにより測定して得られるIRスペクトルの1810cm-1〜1610cm-1に観測されるエステル基カルボニルの吸収ピーク(ピークA)の面積、および1610cm-1〜1520cm-1に観測されるカルボキシレート基カルボニルの逆対称伸縮振動の吸収ピーク(ピークB)の面積から下記式に従い算出したアルカリ変性率が、0.01〜0.5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
(アルカリ変性率)=(ピークBの面積)/(ピークAの面積) - カリウム、ナトリウム、カルシウムおよびマグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の元素の含有率が、0.05〜4重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂フィルム。
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