建築現場等で用いられる枠組足場には、例えば、建枠に筋違(すじかい)や手摺枠を取り付けてなる「建枠式足場」と、支柱部材やブレース材(斜材ともいう。)や手摺部材等の足場構成部材を緊結して組み立ててなる「緊結式足場」がある。
「建枠式足場」は、通常、横桟と縦柱から構成されるH形状や鳥居形状の建枠を複数個組み立てることによって形成される。すなわち、建枠の複数個を、所定の間隔で建物等の構造物とは直角に立設し、隣接する建枠の縦柱の間に筋違や手摺枠を取り付け固定して複数個の建枠を自立させた後、隣接する建枠の横桟の間に床付き布枠(布板ともいう。)を1枚又は2枚以上架け渡すことで、1単位の足場を形成する。次に、既に立設した建枠の上に、別途用意された建枠を立設し、同様にして筋違や手摺枠を隣接する建枠の間に取り付け固定した後、新たに立設した建枠の横桟の上に床付き布枠を1枚又は2枚以上架け渡すことによって一つ上の段の足場を形成する。これを順次繰り返すことによって、全体の枠組み足場を形成する。
この建枠として、鳥居形状の建枠(以下、「鳥居枠」という。)を用いて枠組足場を形成する一例を、図1に示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
まず3個の鳥居枠4を建物14とは直角に等間隔に並べ、隣接する鳥居枠4との間に、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、1段目の鳥居枠4を自立させることによって、1段目の足場を形成する。その後、1段目の隣接する鳥居枠4の上部の横桟3の間に2段目の足場板となる床付き布枠11を架け渡した後、既に立設した1段目の鳥居枠4の縦柱2の上に、別途用意した鳥居枠4の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、2段目の鳥居枠4を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして、建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、2段目の鳥居枠4を自立させることによって、2段目の足場を形成する。その後、2段目の隣接する鳥居枠4の上部の横桟3の間に3段目の足場板となる床付き布枠11を架け渡した後、既に立設した2段目の鳥居枠4の縦柱2の上に、別途用意した鳥居枠4の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、3段目の鳥居枠4を立設する。その後、2段目と同様にして、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして、建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、3段目の鳥居枠4を自立させることによって、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。
なお、ここでは筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、筋違の一部を手摺枠に置き換えて各段の枠組を自立させてもよい。
また、建枠を用いる他の例として、H形状の建枠(以下、「H枠」という。)を用いて枠組足場を形成する1例を、図2に示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
3個のH枠1を建物14とは直角に等間隔に並べ、隣接するH枠の間に、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具6bに取り付けて、1段目のH枠1を自立させる。さらに、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具7bに取り付け、そして建物側の筋違(斜材)13をロック金具7aに取り付けて固定する。その後、1段目の隣接するH枠1の横桟3の間に床付き布枠11を架け渡して、1段目の足場を形成する。次に、既に立設した1段目のH枠1の縦柱2の上に、別途用意したH枠1の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、2段目のH枠1を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具6bと7bに取り付け、そして、建物側に筋違13をロック金具7aに取り付けて固定し、その後、2段目のH枠1の横桟3に床付き布枠11を架け渡して、2段目の足場を形成する。3段目の足場も、2段目の足場と同じ手順で組み立てる。すなわち、建物とは反対側に手摺枠10を取り付け、そして、建物側に筋違13を取り付けて固定し、その後、3段目のH枠1の横桟3に床付き布枠11を架け渡して、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。
なお、ここでは手摺枠と筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、手摺枠を用いることなく筋違だけでも枠組を自立させることができる。
このように枠組足場においては、隣接する建枠の縦柱の間には筋違(すじかい)又は手摺枠が設けられている。
一方、「緊結式足場」は、「コマ」と呼ばれる取付部材が複数個設けられた支柱部材に、手摺部材、ブレース材、腕木部材等の足場構成部材をコマを介して取り付け、そして、コマにおいて楔等によってこれらの足場構成部材を緊結した後、床付き布枠を1枚又は2枚以上架け渡すことによって、組み立てられる。
図3に、緊結式足場の構造の一例を示す。(a)は緊結式足場の正面図、(b)は(a)において円で示されたコマの周辺の拡大図、そして、(c)は緊結式足場の右側面図である。
緊結式足場は、支柱50が建物側とその反対側に各3本が立設されている。各々の支柱50は、複数のコマ51を有する支柱部材52を縦に継ぎ足すことによって形成されている。建物側の隣接する支柱50の間には、コマ51を介してブレース材53が取り付けられ、また、建物とは反対側の隣接する支柱50の間には、コマ51を介して作業用手摺54が取り付けられ、コマ51において楔等で緊結される。さらに、建物側の支柱50と建物とは反対側の支柱50の間には、コマ51を介して腕木材55が取り付けられ、コマ51において楔等で緊結され、そして、隣接する腕木材55の間に、床付き布枠11を架け渡すことで、1段目の足場が形成される。なお、ブレース材53は建物とは反対側の支柱50の間に取り付ける場合もある。
2段目の足場は、1段目の足場と同様にして形成される。必要に応じて、1段目の足場の支柱50の上端に別途用意した支柱50を縦方向に継ぎ足した上で、ブレース材53、手摺部材15、腕木部材21をコマ51を介して取り付け緊結した後、床付き布枠11を架け渡すことによって、形成される。これを順次繰り返すことによって、複数段の緊結式足場が形成される。
しかしながら、図1に例示した鳥居枠からなる枠組足場においては、筋違13と床付き布枠11との間には大きな空間が形成されている。そのため、その空間から建築材料または工具等の物体が落下するおそれがある。また、図2に例示したH枠からなる枠組足場においては、建物14と反対側の縦柱2の間は手摺枠10が設けられているが、建物14側には手摺枠10が設けられていない。そのため、図2の枠組足場においても建物14側では、筋違13と床付き布枠11との間には大きな空間が形成されており、その空間から建築材料または工具等の物体が落下するおそれがある。また、必ずしも手摺枠10が設置されるとは限らず、図1と同様に、筋違13で代用される場合がある。この場合には、図1と同様に、筋違13と床付き布枠11との間には大きな空間が形成され、物体が落下するおそれがある。また、図3に示した緊結式足場においても、作業用手摺54と床付き布枠11との間には大きな空間が形成されており、その空間から建築材料または工具等の物体が落下するおそれがある。
そこで、このような問題を解決するために、枠組足場に幅木を設置する場合がある。図4は、横桟3の間の道路側に幅木が設置された枠組足場の一例である。この枠組足場においては、隣接する横桟3上に板状の幅木16が取り付けられている。なお、枠組足場の建物側にも幅木16が取り付けられてもよい。このように幅木16を設置することにより、床付き布枠11上で物体17が転がった場合でも、床付き布枠11上からその物体17が落下することを防止することができる。
ところで、図4においては幅木16を簡略化して図示しているが、実際には、幅木16を枠組足場に安定して固定するための金具等が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
図5は、従来の幅木の一例を示す正面図(図4において床付き布枠11と反対側から見た図)である。また、図6は、図5の幅木16の左端部の拡大図であり、図7は、図5の幅木16の拡大左側面図である。なお、図5には、幅木16の他に、横桟3および床付き布枠11が示されている。
図5に示すように、この幅木16は、板状の主材16aおよびその主材16aの両端部に設けられる端部金具18からなる。図5〜図7に示すように、主材16aの上端部および下端部には、それぞれ鉤状の屈曲部16bが形成されている。端部金具18は、主材16aの両面にそれぞれ固定される固定プレート19を有する。固定プレート19は、ボルト20によって主材16aに固定されている。各固定プレート19の下端の外側には、略円弧状の湾曲部19aが形成されている。また、各固定プレート19の下端には、落下錠21が取り付けられている。図5に示すように、端部金具18の下端の外側の湾曲部19aを横桟3の上面側に係止させることにより、隣接する2つの横桟3の間に幅木16を容易に取り付けることができる。また、湾曲部19aを横桟3の上面側に係止させた状態で落下錠21を下方にずらすことにより、幅木16を横桟3に容易に固定(ロック)することができる。
しかしながら、上記の端部金具18を有する幅木16においても、以下のような問題がある。
図8および図9は、端部金具18によって横桟3に固定された幅木16を取り外す際の様子を示す図である。なお、図8において(a)は、端部金具18のロック解除前の状態を示し、(b)は、ロック解除後の状態を示している。
図8(a),(b)に示すように、横桟3に固定された幅木16を取り外す際には、まず作業者は、自分の指22によって落下錠21を上方にずらすことにより落下錠21のロックを解除する。そして、落下錠21のロックを解除した状態で幅木16を上方に持ち上げることにより、横桟3から幅木16を取り外すことができる。
ここで、上述したように、固定プレート19は主材16aの両面にそれぞれ固定されており、各固定プレート19にはそれぞれ落下錠21が取り付けられている。そのため、図9に示すように、幅木16の外側(床付き布枠11とは反対側)の落下錠21のロックを解除する際には、作業者は、一方の腕を幅木16の外側に伸ばして作業しなければならない。この際、作業者は、幅木16の外側の落下錠21の位置等を正確に把握するために幅木16の外側に身を乗り出す必要があり、バランス等を崩した場合には床付き布枠11上から転落するおそれがある。
また、図9に示すように、落下錠21は床付き布枠11よりも下側に位置するので、落下錠21のロックを解除するためには、作業者は、足元よりも下側に手を伸ばす必要がある。そのため、作業者はしゃがんで作業をする必要があり、作業効率が低下する。さらに、落下錠21は複数個設ける必要があるので、枠組足場のコストが増加する。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、作業者の安全性および作業効率の向上ならびに枠組足場のコスト低減を可能にする幅木およびその幅木を備えた枠組足場を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために種々の検討を重ねた。その結果、次の(a)〜(g)に示す知見を得た。
(a)作業者の安全性を確保するためには、作業者が幅木の外側に身を乗り出すことなく幅木を横桟または腕木材(以下、横桟等と記す。)に固定およびその解除を行うことができればよい。そのためには、落下錠等を用いることなく幅木を横桟等に固定およびその解除を行うことができる構成にすればよい。
(b)落下錠等を用いることなく幅木を横桟等に固定およびその解除を行うためには、幅木の主材の両端に端部金具を直接取り付け、端部金具の少なくとも一方は、その上端部と下端部の2個所で上記主材の端部に取り付け、そのうちの1個所は端部金具を上記主材の端部に対して回動可能であるとともに、他の1個所は端部金具を上記主材の端部から取り外し可能な構成にすればよい。この場合、作業者は、立ったまま主材の端部に直接取り付けられた一方の端部金具を回動させるだけで幅木を横桟に固定およびその解除を行うことができる。したがって、作業者が幅木の外側に身を乗り出す必要も、しゃがんで作業を行う必要も無いので、安全性が向上するとともに作業効率も向上する。また、落下錠等の複雑なロック機構を設ける必要が無いので、コストを低減することができる。
端部金具は、連結金具を介して主材に取り付けることもできる。この場合には、連結金具の少なくとも一方は、その上端部と下端部の2個所で上記主材の端部に取り付け、そのうちの1個所は連結金具を上記主材の端部に対して回動可能であるとともに、他の1個所は連結金具を上記主材の端部から取り外し可能な構成にすればよい。それにより、上記の場合と同様に、作業者は、立ったまま主材の端部に直接取り付けられた一方の連結金具(端部金具)を回動させるだけで幅木を横桟に固定およびその解除を行うことができる。
(c)端部金具(または連結金具)の少なくとも一方を主材の端部に対して回動可能にするためには、ボルト・ナットまたはピン等からなる回動保持部材によって上記一方の端部金具(または連結金具)を主材の端部に取り付ければよい。
(d)端部金具(または連結金具)の少なくとも一方は、操作部を操作することによって主材の端部から取り外し可能な構成にすることが好ましい。この場合、作業者は、操作部を操作することにより、端部金具(または連結金具)を容易に固定または回動可能な状態にすることができるので、幅木の設置および取り外しを容易に行うことができる。
(e)幅木を横桟又は腕木材に確実に固定するためには、端部金具はいずれも枠組足場を構成する横桟又は腕木材に係止可能な形状を有することが好ましい。
(f)枠組足場において作業者の足場となる領域を広くするためには、幅木の主材の下部に枠組足場を構成する床付き布枠に向けて突出する突出材を取り付けるか、幅木の主材の下部に床付き布枠に向けて突出する突出部を形成することが好ましい。また、運搬時および収納時に幅木をコンパクトにするためには、上記突出材は主材に回動可能に取り付けられることが好ましい。
(g)幅木の端部金具の下端部はいずれも、床付き布枠の端部金具を収容可能な略U字形状であることが好ましい。この場合、横桟に固定されている床付き布枠の掴み金具の両側を覆うように端部金具を横桟に固定することができる。したがって、床付き布枠の掴み金具と幅木の端部金具とを横桟の同じ位置に固定することができるので、幅木を床付き布枠に近接して設置することができる。この場合、幅木と床付き布枠との間に隙間が形成されることを防止することができるので、床付き布枠上から物体が落下することを確実に防止することができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)〜(11)の幅木および(12)の枠組足場にある。以下、総称して、本発明という。
(1)長尺状の主材と、その主材の両端部に取り付けられた端部金具からなる幅木であって、上記端部金具の少なくとも一方は、その上端部と下端部の2個所で上記主材の端部に取り付けられており、かつ、その上端部は取り外し可能であるとともに、その上端部を取り外したときに上記端部金具はその下端部で回動可能であることを特徴とする幅木。
(2)端部金具の少なくとも一方は回動保持部材によって主材の端部に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とする上記(1)に記載の幅木。
(3)端部金具の少なくとも一方は操作部を操作することによって主材の端部から取り外し可能であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の幅木。
(4)長尺状の主材と、その主材の両端部に連結金具を介して取り付けられた端部金具からなる幅木であって、上記連結金具の少なくとも一方は、その上端部と下端部の2個所で上記主材の端部に取り付けられており、かつ、その上端部は取り外し可能であるとともに、その上端部を取り外したときに上記連結金具はその下端部で回動可能であることを特徴とする幅木。
(5)連結金具の少なくとも一方は回動保持部材によって主材の端部に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とする上記(4)に記載の幅木。
(6)連結金具の少なくとも一方は操作部を操作することによって主材の端部から取り外し可能であることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の幅木。
(7)端部金具はいずれも枠組足場を構成する横桟又は腕木材に係止可能な形状を有することを特徴とする上記(1)から(6)までのいずれかに記載の幅木。
(8)枠組足場を構成する床付き布枠に向けて突出する突出材が主材の下部に取り付けられていることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれかに記載の幅木。
(9)突出材は主材に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とする上記(8)に記載の幅木。
(10)枠組足場を構成する床付き布枠に向けて突出する突出部が主材の下部に形成されていることを特徴とする上記(1)から(7)までのいずれかに記載の幅木。
(11)端部金具の下端部はいずれも、床付き布枠の掴み金具を収容可能な略U字形状であることを特徴とする上記(1)から(10)までのいずれかに記載の幅木。
(12)上記(1)から(11)までのいずれかに記載の幅木を備えてなる枠組足場。
本発明によれば、作業者の安全性および作業効率の向上ならびに枠組足場のコスト低減を可能にする。
以下、本発明の実施の形態に係る幅木および枠組足場について説明する。
1.第1の例
図10は、本発明の第1の例に係る幅木が設置された枠組足場を示す斜視図である。なお、図10に示した枠組足場は、幅木30を除いて図1および図4に示した枠組足場と同一の構成を有する。また、図10は、枠組足場の道路側に幅木30が設置される例を示しているが、建物側にも幅木30が設置されてもよい。図11は、図10に示した幅木の正面図(図10において床付き布枠11と反対側から見た図)である。
図10および図11に示すように、本例に係る幅木30は、長尺状の主材31、主材31の一端部に設けられる端部金具32および主材31の他端部に設けられる端部金具33からなる。
図12は、図11の主材31を示す正面図であり、図13は、図11の端部金具32,33を示す正面図である。図13(a)は幅木30の左側の端部金具32を示し、図13(b)は幅木30の右側の端部金具33を示す。図14は、図11の幅木30の両端部を示す拡大正面図である。図14(a)は、幅木30の左側の端部を示し、図14(b)は、幅木30の右側の端部を示す。なお、図14には、図10の枠組足場の横桟3および床付き布枠11が示されている。図15は、図11の幅木30の両端部を示す拡大平面図である。図15(a)は、幅木30の左側の端部を示し、図15(b)は、幅木30の右側の端部を示す。
図12に示すように、主材31の上端部および下端部には、図7の屈曲部16bと同様の形状の屈曲部31aが形成されている。図12および図15に示すように、主材31の正面側および背面側の四隅には、それぞれ貫通孔31bが形成されている。主材31の上側の屈曲部31aの一端側(左側)の内面には、板バネ31cが取り付けられている。図15に示すように、板バネ31cの一端は固定ピン31dによって屈曲部31aの内面に固定されており、他端は自由端となっている。図12および図15に示すように、板バネ31cの他端部には操作ボタン31eが取り付けられている。操作ボタン31eは、主材31の正面側の貫通孔31b内を進退可能に設けられている。なお、本例においては、操作ボタン31eが特許請求の範囲の操作部に相当する。
図11および図13〜図15に示すように、左側の端部金具32は、連結金具32aおよび係止金具32bからなり、右側の端部金具33は、連結金具33aおよび係止金具33bからなる。連結金具32aおよび係止金具32bならびに連結金具33aおよび係止金具33bは、たとえば、溶接により接合されている。図15に示すように、連結金具32a,33aおよび係止金具32b,33bは、平面視において略U字状の形状を有する。連結金具32aは、主材31の一端(左側の端部)に連結され、連結金具33aは、主材31の他端(右側の端部)が連結される。
図13(a)に示すように、連結金具32aの上端部および下端部には、貫通孔32cが形成されており、図13(b)に示すように、連結金具33aの上端部および下端部には、貫通孔33cが形成されている。
図11、図13および図14に示すように、係止金具32bの下部には、下方に向かって突出する突出部32dが形成されている。突出部32dは、略円弧状に湾曲する湾曲部32eを有する。同様に、係止金具33bの下部にも、湾曲部33eを有する突出部33dが形成されている。なお、図11、図13および図14では、端部金具32,33の正面側が示されているが、端部金具32,33の背面側にも正面側と同様に突出部32d,33dが形成されている。
図14および図15に示すように、連結金具32aの下端は、ボルト34およびナット35によって主材31の一端部の下部に回動可能に取り付けられている。そして、連結金具32aの上端は、操作ボタン31eによって主材31の一端部の上部に固定されている。具体的には、貫通孔31b(図15参照)および貫通孔32c内に操作ボタン31eが挿通されることにより、連結金具32aの上端は主材31の上部に固定されている。
図16は、端部金具32が主材31に回動自在に取り付けられた一例を示す正面図である。図16に示すように、連結金具32aの下端は、ボルト34およびナット35によって回動自在に保持されている。なお、本例においては、ボルト34およびナット35が特許請求の範囲の回動保持部材に相当する。
図17は、連結金具32aの上端を主材31の上部から取り外して、端部金具32を回動可能な状態にする際の様子を示す平面図である。図17に示すように、本例に係る幅木においては、操作ボタン31eを屈曲部31aの内面側に押し込むことにより連結金具32aの上端が主材31の上部から取り外される。それにより、図16に示すように、ボルト34を回転中心として端部金具32を回動させることができる。
なお、連結金具32aの下端を主材31の一端部の下部に回動自在に取り付けるためのナット35としては、例えば、回り止めが設けられたロックナット(ナイロンナット)等を用いることができる。また、ボルト34およびナット35の代わりにリベット等を端部金具32の回動保持部材として用いてもよい。
一方、図14(b)に示すように、端部金具33の連結金具33aは、上下端とも主材31の他端部(右側端部)にボルト34およびナット35によって取り付けられているので回動しない。連結金具33aの上下端を主材31に取り付けるためのナット35としては、例えば、回り止めが設けられたロックナット(ナイロンナット)等を用いることができる。ボルト34およびナット35に加えてスプリングワッシャー等を用いてもよい。また、ボルト34およびナット35の代わりにリベット等によって連結金具33aを主材31に取り付けてもよい。
なお、幅木30を枠組足場に設置した場合に、湾曲部32e,33e(図14)の水平方向に対する傾斜角度α(図14参照)は30〜60度であることが好ましく、略45度であることがさらに好ましい。
次に、幅木30の設置方法および取り外し方法について説明する。図18〜図21は、幅木30を枠組足場に設置する際の様子を示す図であり、図22は、図10に矢印Aで示す部分の拡大平面図である。また、図23および図24は、幅木30を枠組足場から取り外す際の様子を示す図である。なお、図18〜図21、図23および図24においては、枠組足場のうち横桟3および床付き布枠11のみを簡略化して図示している。また、図22においては、端部金具32,33のうち係止金具32b,33bのみを図示している。
まず、幅木30を設置する場合について説明する。図18に示すように、枠組足場の2つの横桟3の間に幅木30を設置する際には、作業者は、端部金具33の突出部33dの湾曲部33eを一方の横桟3に係止させる。次に、図19および図20に示すように、端部金具32の上端を主材31の上部から取り外して、端部金具32を回動(傾斜)させて、湾曲部32eを他方の横桟3に近接させる。次に、図21に示すように、湾曲部32eを横桟3に係止させた状態で突出部32dの湾曲部32eが横桟3の上面側および下方側の両方を覆うように端部金具32を回動させる。これにより、端部金具32,33の上下方向の移動が横桟3によって規制される。最後に、操作ボタン31eによって端部金具32の上端を主材31の上部に取り付ける。これにより、隣接する横桟3の間に幅木30が固定され、設置作業が完了する。
ここで、図10に示すように、床付き布枠11は掴み金具24によって横桟3に取り付けられている。また、図15で説明したように、端部金具32,33の係止金具32b,33bは、平面視において略U字状の形状を有する。幅木30を設置する際には、図22に示すように、略U字状の係止金具32b,33b内に掴み金具24を収容することができる。この場合、幅木30を床付き布枠11に近接して設置または幅木30を床付き布枠11上に設置することができるので、幅木30と床付き布枠11との間に隙間が形成されることを防止することができる。それにより、床付き布枠11上から物体が落下することを確実に防止することができる。
次に、幅木30を取り外す場合について説明する。図23に示すように、幅木30を取り外す際には、作業者は、まず、端部金具32の上端を主材31の上部から取り外し、突出部32dの湾曲部32eが横桟3の下面側を覆わない位置まで端部金具32を回動させる。これにより、端部金具32の上方への移動が可能になるので、幅木30の端部金具32側を上方に持ち上げることができる。次に、図24に示すように、幅木30の端部金具32側を持ち上げた状態で、幅木30の端部金具33側を引き抜く。これにより、幅木30の取り外し作業が完了する。
以上のように、本発明に係る幅木30においては、作業者は、端部金具32を主材31に対して回動させることにより、幅木30の設置およびその取り外しを行うことができる。したがって、作業者は、幅木30の設置および取り外し作業を立ったままの状態でかつ幅木30の外側に身を乗り出すことなく行うことができる。また、操作ボタン31e(図16および図17参照)を操作することにより、端部金具32の上端を主材31に取り付けることおよび取り外すことができるので、作業者は容易に幅木30の設置および取り外しを行うことができる。これらの結果、作業者の安全性および作業効率が向上する。また、本発明に係る幅木30においては、複数個の落下錠等を設ける必要がないので、コストを低減することができる。
2.第2の例
図25は、本発明の第2の例に係る幅木が設置された枠組足場を示す斜視図であり、図26は、図25のA−A線拡大断面図である。本発明の第2の例に係る幅木が上述の第1の例に係る幅木と異なるのは以下の点である。
図25および図26に示すように、第2の例に係る幅木36は、床付き布枠11側に向かって突出する板状の突出材37を有する。図26に示すように、突出材37の一端部は主材31の下端に溶接またはボルト・ナット等により固定され、他端部は床付き布枠11上に載置されている。
この幅木36を用いる場合、作業者は、床付き布枠11だけでなく突出材37も足場として利用することができる。すなわち、この幅木36を用いることにより作業者の足場を拡大することができる。それにより、作業者の作業効率を向上させることができる。
3.変形例
上記の例では、操作ボタン31e(図16および図17参照)が幅木30の正面側(床付き布枠11と反対側)に設けられているが、操作ボタン31eが幅木30の背面側に設けられてもよい。
また、上記の例では、端部金具32のみが主材31に対して回動可能な構成になっているが、端部金具32と同様に端部金具33も主材31に対して回動可能な構成にしてもよい。
また、上記の例では、屈曲部31a(図14および図15参照)が幅木30の正面側(床付き布枠11と反対側)に形成されているが、屈曲部31aが幅木30の背面側(床付き布枠11側)側に形成されていてもよい。
また、上記の例では、主材31の一端部の上部に操作ボタン31e(図14および図15参照)が設けられているが、主材31の一端部の下部に操作ボタン31eが設けられてもよい。すなわち、端部金具32の上端が主材31の一端部の上部にボルト34およびナット35によって回動可能に取り付けられ、端部金具32の下端が操作ボタン31eによって主材31の一端部の下部に取り付けられてもよい。端部金具32の上端が主材31の一端部の上部に回動可能に取り付けられる場合には、端部金具32の下端側が主材31側に回動できる構成にすることが好ましい。この場合、端部金具32の下端側を主材31側に回動させることにより、横桟3(図14参照)から突出部32d(図14参照)を容易に離間させることができる。それにより、幅木30を容易に取り外すことができる。
また、上記の例では、端部金具33(図11参照)はボルト34(図11参照)およびナット35(図11参照)によって主材31(図11参照)に取り付けられているが、溶接等の他の方法によって端部金具33が主材31に取り付けられてもよい。
また、上記の例では、端部金具32,33それぞれ1つの突出部32d,33d(図13)を有しているが、端部金具32,33の形状は上記の例に限定されない。
図27は、端部金具32,33の他の例を示す正面図である。なお、図27(a)は端部金具32を示し、図27(b)は端部金具33を示す。
図27に示す端部金具32,33が図13に示す端部金具32,33と異なるのは以下の点である。すなわち、この端部金具32,33は、係止金具32b,33bの下端において側方に突出しかつ略円弧状に湾曲する突出部32f,33fを有している。この端部金具32,33を用いる場合、突出部32f,33fが横桟3(図10参照)の上面側に係止されるので、幅木30の安定性を十分に向上させることができる。
また、上記の例では、端部金具32において連結金具32aおよび係止金具32bが別個の部材として構成されていたが、端部金具32の構成は上記の例に限定されない。図28は、端部金具32のさらに他の例を示す図である。なお、図28において、(a)は端部金具32の平面図であり、(b)は正面図である。図28に示す端部金具32においては、連結金具32aおよび係止金具32bが一体形成されている。このように連結金具32aおよび係止金具32bを一体形成することにより、端部金具32の強度を向上させることができる。なお、端部金具33においても連結金具33aおよび係止金具33bを一体形成してもよい。
また、連結金具32aの形状は上記の例に限定されず、図29に示すように、連結金具32aが上部と下部に分割された構成でもよい。同様に、連結金具33aも上部と下部に分割された構成でもよい。
また、係止金具32bの形状は上記の例に限定されず、突出部32dが形成されていればよく、例えば、図30に示すように、係止金具32bの上下方向の長さが連結金具32aよりも短くてもよい。同様に、係止金具33bの上下方向の長さが連結金具33aよりも短くてもよい。また、係止金具32bの上下方向の長さを短くする場合、図31に示すように、係止金具32bの上端に隙間隠し材38を取り付けてもよい。同様に、係止金具33bにも隙間隠し材を取り付けてもよい。
また、上記の例では、連結金具32a(図14参照)の上端は、板バネ31c(図15参照)および操作ボタン31e(図15参照)によって主材31(図14参照)の上部に取り付けられているが、連結金具32aの上端を主材31に取り付けるための構成は上記の例に限定されない。図32および図33は、連結金具32aの上端を主材31の上部に取り付けるための構成の他の例を示す平面図である。図32に示す例では、結部32aの上端は、略L字状のピン39によって主材31の上部に取り付けられている。この場合、作業者は、ピン39を抜くことにより、連結金具32aの上端を主材31の上部から容易に取り外すことができる。なお、本例では、ピン39が特許請求の範囲の操作部に相当する。
また、図33に示す例では、連結金具32aの上端は、ボルト40およびナット41によって主材31の上部に取り付けられている。この場合、作業者は、ボルト40およびナット41を取り外すことにより、連結金具32aの上端を主材31の上部から容易に取り外すことができる。なお、本例では、ボルト40およびナット41が特許請求の範囲の操作部に相当する。
また、連結金具32a,33aが設けられていなくてもよい。この場合、係止金具32b,33bに貫通孔32c,33c(図13参照)を形成し、係止金具32b,33bを幅木30に直接取り付ければよい。
また、上記第2の例においては、主材31の下部に突出材37(図26参照)を設けた場合について説明したが、突出材37の形状は上記の例に限定されない。図34〜図36は、突出材37の他の例を示す側面図である。図34に示す例では、略三角形状に折れ曲がった板状の突出材37が主材31の下部に固定されている。図35に示す例では、略L字状の突出材37が主材31の下部に固定されている。また、図36に示す例では、突出材37は、保持部材42を介して主材31の下部に回動可能に取り付けられている。この場合、幅木30を運搬または倉庫等に収納する際に、突出材37を主材31側に回動させることにより、幅木30をコンパクトにまとめることができる。それにより、幅木30の運搬効率および収納効率を向上させることができる。
また、突出材37を設ける代わりに、図37〜図40(主材31の側面図)に示すように、主材31の下部に突出部43を形成してもよい。
また、上記においては、鳥居枠を有する枠組足場に幅木30,36を用いた場合について説明したが、H枠を有する枠組足場に幅木30,36を用いてもよい。
また、上記においては、建枠式足場に幅木30,36を設置する場合について説明したが、緊結式足場に幅木30,36を設置してもよい。なお、緊結式足場に設置される場合には、幅木30,36は端部金具を介して腕木材に固定される。