建築現場等で用いられる枠組足場は、通常、横桟と縦柱から構成されるH形状や鳥居形状の建枠複数個を筋違(すじかい)や手摺枠を取り付けて組み立てることによって形成される(例えば、特許文献1参照)。すなわち、建枠の複数個を、所定の間隔で建物等の構造物とは直角に立設し、隣接する建枠の縦柱の間に筋違や手摺枠を取り付け固定して複数個の建枠を自立させた後、隣接する建枠の横桟の間に床付き布枠(布板ともいう。)を1枚又は2枚以上架け渡すことで、1単位の足場を形成する。次に、既に立設した建枠の上に、別途用意された建枠を立設し、同様にして筋違や手摺枠を隣接する建枠の間に取り付け固定した後、新たに立設した建枠の横桟の上に床付き布枠を1枚又は2枚以上架け渡すことによって一つ上の段の足場を形成する。これを順次繰り返すことによって、全体の枠組み足場を形成する。
この建枠として、鳥居形状の建枠(以下、「鳥居枠」という。)を用いて枠組足場を形成する一例を、図1に示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
まず3個の鳥居枠4を建物22とは直角に等間隔に並べ、隣接する鳥居枠4との間に、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、1段目の鳥居枠4を自立させることによって、1段目の足場を形成する。その後、1段目の隣接する鳥居枠4の上部の横桟3の間に2段目の足場板となる床付き布枠11を架け渡した後、既に立設した1段目の鳥居枠4の縦柱2の上に、別途用意した鳥居枠4の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、2段目の鳥居枠4を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして、建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、2段目の鳥居枠4を自立させることによって、2段目の足場を形成する。その後、2段目の隣接する鳥居枠4の上部の横桟3の間に3段目の足場板となる床付き布枠11を架け渡した後、既に立設した2段目の鳥居枠4の縦柱2の上に、別途用意した鳥居枠4の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、3段目の鳥居枠4を立設する。その後、2段目と同様にして、建物とは反対側に筋違13をロック金具8bに取り付け、そして、建物側にも筋違13をロック金具8aに取り付けて、3段目の鳥居枠4を自立させることによって、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。
なお、ここでは筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、筋違の一部を手摺枠に置き換えて各段の枠組を自立させてもよい。
また、建枠を用いる他の例として、H形状の建枠(以下、「H枠」という。)を用いて枠組足場を形成する1例を、図2に示す。(a)が正面図、(b)が右側面図である。
3個のH枠1を建物22とは直角に等間隔に並べ、隣接するH枠の間に、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具6bに取り付けて、1段目のH枠1を自立させる。さらに、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具7bに取り付け、そして建物側の筋違(斜材)13をロック金具7aに取り付けて固定する。その後、1段目の隣接するH枠1の横桟3の間に床付き布枠11を架け渡して、1段目の足場を形成する。次に、既に立設した1段目のH枠1の縦柱2の上に、別途用意したH枠1の縦柱2の下部を載置し、固定ピン(図示せず)で固定することによって、2段目のH枠1を立設する。その後、1段目と同様にして、建物とは反対側に手摺枠10をロック金具6bと7bに取り付け、そして、建物側に筋違13をロック金具7aに取り付けて固定し、その後、2段目のH枠1の横桟3に床付き布枠11を架け渡して、2段目の足場を形成する。3段目の足場も、2段目の足場と同じ手順で組み立てる。すなわち、建物とは反対側に手摺枠10を取り付け、そして、建物側に筋違13を取り付けて固定し、その後、3段目のH枠1の横桟3に床付き布枠11を架け渡して、3段目の足場を形成する。このようにして、必要な段数になるまで枠組足場を形成する。
なお、ここでは手摺枠と筋違を用いることによって各段の枠組を自立させる手順を説明したが、手摺枠を用いることなく筋違だけでも枠組を自立させることができる。
このように枠組足場においては、隣接する建枠の縦柱の間には筋違(すじかい)又は手摺枠が設けられている。
しかしながら、建物側の縦柱の間には、通常は筋違13が設けられているだけであって、筋違13と床付き布枠11との間には大きな空間が形成されている。そのため、その空間から作業者が足を滑らしたり、落下したりするおそれがあった。また、上記の空間から建築材料または工具等の物体が落下するおそれもあった。
また、建物とは反対側の縦柱の間も同様な空間が形成されることが多い。図1に例示した鳥居枠からなる枠組足場においては、建物とは反対側の縦柱の間は筋違13が設けられているだけであるから、筋違13と床付き布枠11との間には大きな空間が形成されている。図2に例示したH枠からなる枠組足場においては、建物とは反対側の縦柱の間は手摺枠10が設けられているから、図1の鳥居枠に比べると空間は小さくなっているが、その手摺枠10の枠模様や設置場所によっては、大きな空間が形成されるおそれがある。また、必ずしも手摺枠10が設置されるとは限らず、図1と同様に、筋違13で代用される場合がある。そこで、このような問題を解決するために、枠組足場の建物側およびその反対側の空間を小さくすることによって、その空間から作業者が足を滑らしたり、落下したりすることを防止するための対策を採ることが求められている。
枠組足場の建物側およびその反対側の空間を小さくするための対策として、まず思いつくのは、その空間部分に下桟あるいはさらに中桟等の桟を設けることによって、空間を小さくすることである。この場合、従来から用いられている手摺を下桟あるいはさらに中桟として用いれば、新たな部材を開発する必要がないので、枠組足場のコスト上昇を抑制することができる。図3にその一例を示す。
図3は、鳥居枠からなる枠組足場に下桟を設けた場合の一例を示す斜視図である。なお、図3には枠組足場の一部(2つの鳥居枠4と、その2つの鳥居枠の間に設けられる1つの床付き布枠11)のみが示されているが、実際には、図1で説明したように、枠組足場はより多くの鳥居枠4および床付き布枠11により構成されている。
図3に示す例では、下桟としての手摺30が、隣接する鳥居枠4の建物22側の縦柱2の下部に、床付き布枠11から一定間隔を開けて水平に設置されている。この手摺30は、円筒状のパイプの両端部が押し潰された平板形状を有し、この両端の平板に穿たれた取付孔を、隣接する縦柱2に設けられたロック金具8aに掛けることによって、隣接する縦柱2の間に手摺30を取り付けることができる。同様に、鳥居枠4の建物22とは反対側の縦柱2の下部にも手摺30が下桟として設置されている。このように手摺30を下桟として用いることにより、筋違13と床付き布枠11との間の空間を小さくすることができ、その空間から作業者が足を滑らしたり、落下したりすることを防止することができる。
なお、従来から用いられている筋違や手摺等の足場構成部材は、通常、円筒状のパイプの両端部が押し潰された平板形状を有し、この両端の平板に穿たれた取付孔を、隣接する縦柱に設けられたロック金具に掛けることによって、縦柱に取り付けることができる。
ところで、上記のように下桟を設けることにより作業者の落下を防止することはできるが、工具等の物体が落下することを十分に防止することはできない。具体的には、下桟(手摺30)と床付き布枠11との間の空間から物体が落下する可能性が残る。そこで、そのような物体の落下を防止するために、図4に示すように、枠組足場の建物22とは反対側の全面(図4においては、枠組足場の一部のみが示されている。)にメッシュシート(防網)等の網材23を設けることが考えられる。この網材により、枠組足場の建物22とは反対側(例えば、道路等)に物体が落下することを防止することができる。一方、作業者が建物22に対して作業を行うことを考慮すると、枠組足場の建物22側の全面に網材23を設けることは好ましくない。しかしながら、図4に示すように建物22側に網材23を設けない場合には、枠組足場の建物22側に物体が落下することを十分に防止することができない。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、作業者および物体の落下を防止することができる枠組足場を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような問題点を解決するために、次の(a)〜(d)に示すとおり、検討を重ねた。
(a) 作業者の作業内容を考慮すると、枠組足場の建物側の全面に網材を設けることは好ましくない。そこで、本発明者等は、枠組足場の建物側に幅木を取り付けることにより、物体の落下を防止することを試みた。
(b) 図5は、幅木が設置された枠組足場の一例である。この枠組足場においては、建物22側の横桟3上に幅木24が取り付けられている。なお、枠組足場の建物22とは反対側には全面に図4と同様に網材が設けられている(図示せず)。
図5に示すように幅木24を取り付けることにより、建物22側においても物体の落下を防止することができる。また、幅木24の高さhを十分に確保(例えば、15cm以上)することにより、作業者の落下も防止することができる。しかしながら、幅木24は手摺30に比べてコストが高く、さらに運搬効率が悪いという問題がある。また、下桟としての手摺30(図4参照)の取り付けおよび取り外し作業に比べて、幅木24の取り付けおよび取り外し作業は容易ではない。また、作業者が建物22に乗り移る際には幅木24を一旦取り外す必要があるが、そのときの幅木24の取り外し作業およびその後の取り付け作業に手間がかかるため、作業効率が低下する。
(c) そこで、本発明者らは、幅木を用いることなく物体の落下を防止することを試みた。図6は、幅木を用いることなく建物22側への物体の落下を防止した枠組足場の一例を示す図である。なお、枠組足場の建物22とは反対側の全面には図4と同様に網材が設けられている(図示せず)。
この枠組足場では、鳥居枠4の建物22側の各縦柱2の下部に、横桟3を延長する形でそれぞれブラケット(持ち送り枠)25が固定されている。そして、そのブラケット25間に長尺状の網材26が略水平に設けられている。したがって、この網材26によって物体が建物22側に落下することを防止することができる。また、図4で示した枠組足場と同様に、手摺30が下桟として設けられているので、作業者の落下も防止することができる。しかしながら、この枠組足場では、ブラケット25を設置しなければならないので、枠組足場の形成に手間がかかるという問題が生じる。
(d) そのため、本発明者らは、さらに、ブラケットを用いることなく物体の落下を防止することを試みた。図7は、ブラケットを用いることなく建物22側への物体の落下を防止した枠組足場の一例を示す図である。なお、枠組足場の建物22とは反対側の全面には図4と同様に網材が設けられている(図示せず)。
この枠組足場では、下桟としての手摺30は建物22とは反対側にのみ設けられており、建物22側の隣接する縦柱2の間に、床付き布枠11に対して略垂直になるように網材26が設けられている。この枠組足場においては、紐等によって網材26が縦柱2に直接取り付けられているので、ブラケット25(図6参照)を設置する必要がない。したがって、枠組足場の形成が容易になる。なお、網材26を縦柱2に直接取り付ける場合、図7に示すように網材26の中央部分が垂れ下がる。そのため、物体の落下を確実に防止するためには、網材26の中央部分の高さが十分に確保されるように、網材26の両端を高めの位置に取り付けなければならない。この場合、網材26の取り付け位置を予め十分に考慮しなければならず、作業効率の点で問題が残る。また、この枠組足場では、作業員が枠組足場から建物22に乗り移る際には網材26を縦柱2から一旦取り外さなければならないが、そのとき取り外した網材26が風によって飛ばされて落下するおそれがある。
このような検討結果を踏まえて、本発明者等は、次の(e)〜(i)に示すとおり、簡易な構成で枠組足場からの物体の落下の防止を図るために有用な知見を得た。
(e) 枠組足場の建物側において、筋違と床付き布枠との間の空間から作業者が落下することを防止するためには、その空間に桟を設ければよい。また、その桟と床付き布枠との間から工具等の物体が落下することを防止するためには、桟と床付き布枠との間に落下防止材を設ければよい。
(f) 桟と落下防止材との間から物体が落下することを防止するためには、落下防止材を桟に一体となって取り付けることができるようにすることによって落下防止材の垂れ下がりを防止し、桟と落下防止材との間に大きな隙間が形成されることを防止すればよい。また、この場合、落下防止材が桟に一体となって取り付けられることによって、落下防止材が風等によって飛ばされることを防止することができる。
(g) 落下防止材と床付き布枠との間から物体が落下することを防止するためには、落下防止材を床付き布枠に一体となって取り付けることができるようにすることによって、床付き布枠と落下防止材との間に大きな隙間が形成されることを防止すればよい。なお、桟を落下防止材から取り外した場合には、筋違と床付き布枠との間に十分な空間を形成することができる。したがって、作業者はその空間を利用して建物等に容易に移動することができる。
(h) 落下防止材としては、網材、布材または面材のうちのいずれかを用いることが好ましい。可撓性のある網材または布材を用いた場合には、桟を取り外した後に落下防止材を桟に巻いた状態で床付き布枠の上に載置することができる。
(i) 落下防止材として1枚の大きな網材または布材を複数の桟に取り付けてもよいが、この場合には、隣接する桟の間において網材または布材に余裕代(遊び)を形成することが好ましい。この場合、桟を取り外す際に、その余裕代が拡がることにより網材または布材が十分にたるむので、桟の取り外しが容易になる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、その要旨は下記の(1)および(2)の枠組足場にある。以下、総称して、本発明という。
(1)筋違と床付き布枠を含み、床付き布枠と、前記筋違と前記床付き布枠との間の空間に設けられる桟と、前記桟と前記床付き布枠との間に設けられる落下防止材とを備える枠組足場であって、前記落下防止材は前記桟に取り付けられている網材または布材からなり、かつ、複数の前記桟には共通の1つの落下防止材が取り付けられ、そして、隣接する前記桟の間において落下防止材に余裕代が形成されていることを特徴とする枠組足場。
(2)前記落下防止材は、さらに前記床付き布枠に取り付けられていることを特徴とする上記(1)に記載の枠組足場。
本発明に係る枠組足場は、作業者および物体の落下を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る枠組足場について説明する。
図8は、本発明に係る枠組足場の一例を示す図である。なお、図8には、枠組足場100の一部が示されており、実際には、図1に示した枠組足場と同様に、複数の鳥居枠4および複数の床付き布枠11等によって枠組足場100が構成されている。また、枠組足場100の建物22とは反対側の全面には図4と同様に網材が設けられている(図示せず)。
図8に示す枠組足場100が図4に示した枠組足場と異なる点は、手摺30(図4参照)の代わりに桟40が設けられている点および建物22側の桟40に落下防止材としての網材50が一体となって取り付けられている点である。網材50の下端側は、床付き布枠11に一体となって取り付けられている。なお、網材50は略長方形状であり、網材50の長辺の長さは桟40の長さに略等しい。また、桟40の横桟3からの高さh1は、15cm以上に設定されることが好ましく、例えば、15cm〜50cmに設定される。
図9は、図8の桟40の一例を示す図である。図9において、(a)は正面図であり、(b)は上面図である。
図9に示すように、桟40は、円筒状のパイプ41および薄い平板形状の端部金具42により構成される。端部金具42の板厚は、3.6mm以下とするのが好ましい。端部金具42の一端側には、ロック金具8a,8b(図8参照)を通すための取付孔43が形成されている。端部金具42の他端側には、略凹状の切欠き44が形成されている。パイプ41の一端および他端は、切欠き44に勘合された状態で端部金具42に溶接されている。なお、パイプ41と端部金具42との接合部の構造は特に限定されない。例えば、パイプ41に端部金具42が勘合可能な切欠きを形成する場合には、端部金具42に切欠き44を形成しなくてもよい。なお、本例においては桟40を用いているが、桟40の代わりに従来の手摺30を用いてもよい。
図10は、網材50の桟40への取り付け方法の一例を示す図である。なお、図10には、桟40の一端が示されている。また、図10においては、ロック金具8a(図8参照)は図示していない。
図10に示すように、本例に係る枠組足場100においては、網材50は、複数の紐51(図10には1つの紐51のみ図示した。)によって桟40に取り付けられている。このように紐51によって網材50を桟40に取り付けることにより、網材50の中央部分が垂れ下がることを防止することができる。
なお、網材50の桟40への取り付け方法は上記の例に限定されない。例えば、図11に示すように、紐51の代わりにフック52を用いて網材50を桟40に取り付けてもよい。また、例えば、図12に示すように、パイプ41および端部金具42に取付孔45,46を形成し、その取付孔45,46に紐51(図10)またはフック52(図11)等を通して、網材50を桟40に取り付けてもよい。なお、取付孔45は、パイプ41の軸方向において等間隔で複数形成されることが好ましい。また、例えば、図13に示すように、取付孔45(図12)の代わりに半リング状の取付金具47をパイプ41に設けて、その取付金具47に紐51(図10)またはフック52(図11)等を通して網材50を取り付けてもよい。なお、取付金具47も、取付孔45と同様に等間隔で複数形成されることが好ましい。
図14は、網材50の下端部の床付き布枠11への取り付け方法の一例を示す図である。なお、図14には、床付き布枠11の長手方向に垂直な断面が示されている。
図8および図14に示すように、本例の枠組足場100においては、床付き布枠11は2枚の主材14により構成されている。各主材14は、上面に長尺の床材部14aとその両縁側面に一体化されて形成される長尺の布材部14bからなる。さらに、図14に示すように、床材部14aの両縁側面の下面の内側にはリップ14cが床材部14aと一体化されて設けられている。また、図8および図14に示すように、この床付き布枠11の中央部の下側には、床付き布枠11が幅方向に撓るのを防止するため、桟木15が設けられている。本例においては、この桟木15にフック52の一端側を係止させ、フック52の他端側を網材50の下端側に係止させることにより、網材50の下端側を床付き布枠11に取り付けている。
なお、上記の例では、床付き布枠11が2つの主材14によって構成されているが、床付き布枠11が1つの主材14によって構成されてもよい。また、網材50の床付き布枠11への取り付け方法は上記の例に限定されない。例えば、フック52の代わりに紐51(図10参照)を用いて網材50の下端側を桟木15に取り付けてもよい。また、例えば、図15に示すように、フック52の一端側をリップ14cに係止させることにより、網材50を床付き布枠11に取り付けてもよい。
以上のように、本例に係る枠組足場100では、桟40に網材50が一体となって取り付けられているので、建物22側において、桟40と床付き布枠11との間の空間が網材50によって塞がれている。したがって、建物22から作業者および物体が落下することを防止することができる。また、網材50の下端側が床付き布枠11に取り付けられているので、網材50と床付き布枠11との間から物体が落下することを防止することができる。以上の結果、枠組足場100の建物22側に作業者および物体が落下することを確実に防止することができる。
図16は、作業者が建物22に乗り移るために建物22側の桟40をロック金具8aから取り外した状態の枠組足場100を示す図である。上述したように、本発明に係る枠組足場100においては、網材50が桟40に取り付けられている。したがって、図16に示すように桟40をロック金具8aから取り外すことにより、網材50によって塞がれていた桟40と床付き布枠11との間の空間を開放することができる。このように、本例に係る枠組足場100においては、桟40をロック金具8bから取り外すことにより、作業者が建物22に乗り移るための空間を容易に形成することができる。それにより、作業効率を向上させることができる。また、網材50は桟40および床付き布枠11に取り付けられているので、網材50が風によって飛ばされることを防止することができる。
なお、上記においては、各桟40に、その桟40と同等の長さの網材50を取り付ける場合について説明したが、網材50の形状および大きさは上記の例に限定されない。例えば、図17に示すように、複数本の桟40に長尺状(帯状)の1枚の網材50を取り付けてもよい。なお、本発明に係る枠組足場100においては、互いに隣接する2本の桟40が共通のロック金具8aに固定されるが、その共通のロック金具8aの近傍において、網材50に余裕代50aが形成されている。余裕代50aは、例えば、網材50の一部を折り畳むことによって形成することができる。以下、余裕代50aを形成する理由を説明する。
余裕代50aが形成されていない状態で1つの網材50が複数の桟40にまたがって取り付けられている場合、網材50においてある程度の張力が維持される。その状態で複数本の桟40のうちの一本の桟40を取り外す場合、その桟40に取り付けられている網材50の部分と、他の桟40に取り付けられている網材50の部分とが互いに引っ張り合い、桟40の取り外しが困難になる場合がある。また、その状態で桟40のみをロック金具8aおよび網材50から取り外しても、網材50が十分な張力を保持しているので、桟40が取り外された部分において網材50が十分に垂れ下がらない場合がある。この場合、筋違13と床付き布枠11との間に十分な空間が形成されず、作業者が建物22に乗り移ることが困難になる。これに対して、余裕代50aが形成されている場合、複数本の桟40のうちの一本の桟40を取り外す際に、その取り外される桟40に従って余裕代50aが拡がる。したがって、取り外される桟40に取り付けられている網材50の部分と、他の桟40に取り付けられている網材50の部分とが互いに引っ張り合うことがなく、桟40を容易に取り外すことができる。また、桟40のみが取り外される場合には、余裕代50aが拡がることにより、桟40が取り外された部分において網材50が十分に垂れ下がり、筋違13と床付き布枠11との間に十分な空間が形成される。したがって、作業者は容易に建物22側へ移動することができる。
なお、上記においては、落下防止材として網材50を桟40に取り付けた例について説明したが、網材50の代わりに布材(例えば、合成樹脂製のシート等)を落下防止材として用いてもよく、あるいは鋼製、木製、プラスチック製またはアルミ製等の面材を落下防止材として用いてもよい。
図18は、桟40に面材を取り付けた場合の枠組足場100の一例を示す図である。図18に示すように、本例においては、面材53の上端部が桟40に取り付けられ、面材53の下端は床付き布枠11に接触している。
図19は、面材53の桟40への取り付け方法を説明するための図である。図18および図19に示すように、面材53は、略長方形状の主面部53aおよび主面部53aの上端部において略鉤状に屈曲する鉤状部53bからなる。また、図19に示すように、主面部53aの上部の裏面側(鉤状部53b側)には、バネ等からなる固定部材54が設けられている。このような構成において、桟40のパイプ41を鉤状部53b内に押し込むことにより、面材53が桟40に固定されている。
本例に係る枠組足場100においては、固定部材54により面材53が桟40から外れることが防止されるので、床付き布枠11上から物体が落下することを確実に防止することができる。また、建物22(図18)側から面材53に向かって風が吹いた場合でも、固定部材54が設けられていることにより、面材53の下端部が床付き布枠11上から浮き上がることを防止することができる。なお、工具等の物体が通過不可能な大きさであれば、面材53の全体に複数の貫通孔が形成されていてもよい。この場合、面材53に与えられる風の影響を低減することができる。
なお、固定部材54の代わりにボルト等を用いて面材53を桟40に固定してもよい。また、上記の例では、主面部53aの下端は固定されていないが、主面部53aの下端が固定されていてもよい。図20は、主面部53aの下端を固定した状態の一例を示す図である。本例においては、主面部53aの下端が、フック52を介して床付き布枠11の主材14のリップ14cに固定されている。この場合、床付き布枠11と主面部53aとの間に大きな隙間が生じることを防止することができるので、枠組足場100から物体が落下することを確実に防止することができる。なお、フック52の代わりに紐を用いて面材53の下端部を主材14に固定してもよい。