JP5392759B2 - 脂環式ジエポキシ化合物、脂環式ジエポキシ化合物の製造方法、エポキシ樹脂組成物および硬化物 - Google Patents

脂環式ジエポキシ化合物、脂環式ジエポキシ化合物の製造方法、エポキシ樹脂組成物および硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、塗料、インキ、コーティング材、接着剤、粘着剤、封止材、絶縁材料、電子材料、ホログラフィックメモリ、光学材料などに使用可能な、耐熱性、耐水性、透明性、耐候性、引っかき硬度などの性能に優れた硬化物を形成することができる新規な脂環式ジエポキシ化合物、その製造方法、およびそれを含有したエポキシ樹脂組成物とその硬化物に関する。
脂環式エポキシ化合物は、脂環骨格上に反応性基であるエポキシ基を有する化合物であり、硬化剤または硬化触媒と混合して反応させることにより硬化物を形成する。このような脂環式エポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、耐熱性、耐水性、耐候性、透明性、密着性、電気絶縁性、寸法安定性などの特徴を有しており、硬化性樹脂として塗料、接着剤、電子材料、光学材料などの用途で広く使用されている。
脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド2021」)などが市販されている。しかし、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートは、分子内にエステル結合を有しているため加水分解性を有し、高温高湿下での使用や強酸が発生する条件等で用いた場合、耐熱性や耐水性などの性能面で十分な硬化物特性が得られなかった。
そのため、分子内にエステル結合を持たない脂環式エポキシ化合物が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。しかしながら、これらの脂環式エポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物は、硬化時の反応が十分でなく、またその硬化物も耐熱性、耐水性などの性能面で十分な性能を有するものではなかった。
また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(別名:1,2,8,9−ジエポキシリモネン。例えば、ダイセル化学工業(株)製「セロキサイド3000」)などの脂環式エポキシ化合物は、生体に対する変異原性を有しており、変異原性試験の中で最も広く用いられているエームズ試験では陽性になるため、毒性の少ない脂環式エポキシ化合物が望まれている。
特開2005−075907号公報 特開2005−206672号公報 特開2006−188476号公報
本発明の目的は、従来のエポキシ樹脂組成物では発現することのできない、耐熱性、耐水性、透明性、耐候性、引っかき硬度に優れたエポキシ樹脂組成物とその硬化物を提供することにある。また、変異原性の低い(エームズ試験において陰性)脂環式ジエポキシ化合物を提供することにある。
本発明者らは、特定の構造を有する脂環式ジエポキシ化合物を使用することにより、かかる問題点を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物に関する。
〔一般式(I)中、X1〜X4は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示す。〕
また、一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物は、下記式(1)および式(2)で表される脂環式ジエポキシ化合物の少なくとも1種が好ましい。
次に、本発明は、下記一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物を脱水反応して脂環式ジオレフィン化合物を得て、この脂環式ジオレフィン化合物をエポキシ化反応することによって得られる、上記一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物の製造方法に関する。
〔一般式(II)中、X1〜X4は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示す。〕
ここで、一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物は、下記式(3)および式(4)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物の少なくとも1種が好ましい。
次に、本発明は、上記の脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物に関する。
次に、本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
本発明の脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物は、耐熱性、耐水性、透明性、耐候性、引っかき硬度などの点で優れた性能を有する硬化物を得ることができ、各種封止材料をはじめ、電子・電気材料、インキ・塗料、接着材料、土木建築材料など様々な用途に展開が可能である。
また、本発明の脂環式ジエポキシ化合物は、エームズ試験において陰性となるため、変異原性が低く、作業環境に優しい化合物である。
合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物のガスクロマトグラフ(GC)スペクトルのチャートである。 合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物の赤外線吸収(IR)スペクトルのチャートである。 合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物のH−核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルのチャートである。 合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物のガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)におけるガスクロマトグラフ(トータルイオンクロマトグラフ)スペクトルのチャートである。 合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物のガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)における保持時間17.5分〜19.8分を平均したMSスペクトルのチャートである。
[脂環式ジエポキシ化合物]
本発明の脂環式ジエポキシ化合物は、上記一般式(I)で表され、式中のX1〜X4は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示す。この脂環式ジエポキシ化合物は、例えば、分子中にパラメンタン構造を有するジフェノール化合物を水素化し、得られた一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物を脱水反応することにより、下記一般式(III)で表される脂環式ジオレフィン化合物が生成し、この脂環式ジオレフィン化合物をエポキシ化することによって得ることができる。なお、パラメンタン構造を有するジフェノール化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、脂環式ジオレフィン化合物、脂環式ジエポキシ化合物中のパラメンタン構造の水素原子は、アルキル基、水酸基、ハロゲン基、エーテル結合、カルボニル基などで置換されていてもよい。
〔一般式(III)中、X1〜X4は一般式(I)に同じである。〕
上記パラメンタン構造を有するジフェノール化合物は、パラメンタン構造にフェノール類2分子が結合した化合物である。この化合物の製造方法は、公知の方法で行われ、特に限定されるものではないが、例えば、特開平8−198791号公報にその方法が記載されている。すなわち、環状テルペン化合物1分子に対してフェノール類2分子を、酸性触媒の存在下において、反応させることにより製造することができる。
環状テルペン化合物としては、例えば、フェノール類2分子と付加反応して炭素−炭素結合を形成し、パラメンタン構造をとるものであれば問わない。また、脂環の数は、1〜3のものを用いることができる。また、分子内に水酸基やハロゲン基、エーテル結合、カルボニル基などの官能基を有していてもよい。
環状テルペン化合物の具体例としては、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、カンフェン、トリシクレン、p−メンタジエン類、カレン、カルボンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。これらの原料となる、脂環の数が2以上の環状テルペン化合物は、フェノール類2分子と付加反応時に1つ以上の環が開き、パラメンタン構造へ骨格変化する。
環状テルペン化合物に付加するフェノール類は、下記一般式(IV)で表されるフェノール類である。
〔一般式(IV)中、X1、X2は同一または異なり、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示す。なお、X1、X2は、X3、X4であってもよい。〕
一般式(IV)において、X1および/またはX2が炭素数1〜5のアルキル基であるフェノール類としては、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独であっても、2種以上を混合して使用してもよい。フェノール類の使用量は、環状テルペン化合物1モルに対して、例えば、0.5〜20モル、好ましくは2〜12モルである。
酸性触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウムもしくはその錯体、活性白土、陽イオン交換樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独であっても、2種以上を混合して使用してもよい。また、反応溶媒は必ずしも使用しなくともよいが、通常は、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類などを反応溶媒として使用する。
反応の条件としては、例えば、環状テルペン化合物とフェノール類を酸性触媒の存在下、0〜150℃、特に20〜130℃で、0.5〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。
このようにして得られたパラメンタン構造を有するジフェノール化合物は、例えば、一般式(IV)のX1〜4が水素原子のとき、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンと2,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンがあり、少なくとも1種が含まれていればよい。両者を混合物として使用する場合の混合割合は、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタン/2,8−ビス(4−ヒドロキフェニル)−p−メンタン(重量比)=99.9/0.1〜0.1/99.9であり、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜50/50である。1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンの割合が99.9%を超えたり、0.1%未満であったりすると、さらに精製工程が必要となり、コストの面から好ましくない場合がある。これらの割合は、GC分析法により確認することができる。パラメンタン構造を有するジフェノール化合物としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)製「YP−90」が挙げられる。
次に、一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物は、例えば、パラメンタン構造を有するジフェノール化合物を水素化して得ることができるが、その製造方法は公知の方法で行われ、限定されるものではない。例えば、特開平9−268147号公報、特開2005−249997号公報にその方法が記載されている。また、一般式(II)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物の中でも、X1〜X4がすべて水素原子である上記式(3)および式(4)の少なくとも1種が好ましい。また、上記式(3)と式(4)が混合している場合は、例えば、原料のパラメンタン構造を有するジフェノール化合物である1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンと2,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−メンタンの重量比率から推察することができる。
一般式(II)の脂環式ジヒドロキシ化合物を脱水反応する方法としては、特開昭48−29899号公報、特開昭58−172387号公報にあるように、脂環式ジヒドロキシ化合物を脱水触媒等にて分子内脱水することにより達成され、一般式(III)で表される脂環式ジオレフィン化合物が得られる。
脱水触媒としては、濃硫酸、リン酸、塩酸、陽イオン交換樹脂、活性白土、硫酸水素アルカリ金属塩、ヘテロポリ酸部分アルカリ金属塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、単独であっても、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、硫酸水素アルカリ金属塩、ヘテロポリ酸部分アルカリ金属塩などを使用した場合、特開2000−169399号公報、特開2006−193436号公報などに記載されているように、オレフィンの転位などの望まない副反応を抑制して、構造異性体含有量が少ない脂環式ジオレフィン化合物を得られるため好ましい。
反応溶媒は使用しなくても良いが、必要に応じて、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類などを使用してもよい。
脱水反応は、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物と脱水触媒を、溶媒の存在下または非存在下、加熱撹拌することにより実施されるが、その際、生成した水および/または生成した脂環式ジオレフィン化合物を系外に留出させながら反応させるのが好ましい。より好ましくは、生成した水、および生成した脂環式ジオレフィン化合物を系外に留出させながら反応させると、特開2005−97274号公報などに記載されているように、オレフィンの転位などの望まない副反応を抑制して、構造異性体含有量が少ない脂環式ジオレフィン化合物を得られるため好ましい。
反応温度や反応圧力は、脱水触媒や溶媒の種類などによって任意に設定することができるが、生成した水および/または生成した脂環式ジオレフィン化合物を系外に留出させることができる条件が好ましい。具体的には、例えば、脂環式ジヒドロキシ化合物が式(3)および式(4)の場合、生成した脂環式ジオレフィン化合物は、2〜20Torrの減圧下、200〜320℃で留出させることができる。
次に、脂環式ジオレフィン化合物の二重結合をエポキシ化する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。例えば、エポキシ化反応で使用するエポキシ化剤としては、過酸類、ハイドロパーオキサイド類などを挙げることができる。
過酸類としては、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、過イソ酪酸、過トリフルオロ酢酸などがある。このうち、過酢酸は、工業的に安価に入手可能で、かつ安定度も高く、好ましいエポキシ化剤である。過酸類は、水分を実質的に含まないものを使用することが好ましく、具体的には水分含有率が0.8重量%以下、好ましくは0.6重量%以下である。
ハイドロパーオキサイド類としては、過酸化水素、ターシャリブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどがある。
不飽和結合に対するエポキシ化剤の仕込みモル比に厳密な制限はなく、それぞれの場合における最適量は、使用する個々のエポキシ化剤、所望されるエポキシ化度、原料として使用する脂環式オレフィン化合物などの可変要因によって決まる。脂環式オレフィン化合物中の不飽和結合に対するエポキシ化剤の仕込みモル比は、好ましくは1/1〜1/3、より好ましくは1/1.1〜1/2である。エポキシ化の反応は連続もしくはバッチで行うが、連続の場合はピストンフロー型式が好ましい。このとき、重合防止剤は各々単独で仕込んでも良いが、粉末状のものは溶媒に溶解してから仕込むのがよい。さらに、バッチ方式の場合も同様であるが、エポキシ化剤は逐次的に仕込むセミバッチ方式が望ましく、例えば仕込み開始から1〜5時間撹拌すればよい。
エポキシ化の際には必要に応じて触媒を用いることができ、例えば、過酸類の場合、炭酸ソーダ等のアルカリや硫酸などの酸を触媒として用いる。
また、ハイドロパーオキサイド類の場合、タングステン酸と苛性ソ−ダの混合物を過酸化水素と、あるいは有機酸を過酸化水素と、あるいはモリブデンヘキサカルボニルをターシャリブチルハイドロパーオキサイドと併用して触媒効果を得ることができる。
エポキシ化反応は、装置や原料物性に応じて不活性溶媒使用の有無や反応温度を調節して行なう。不活性溶媒としては、原料粘度の低下、エポキシ化剤の希釈による安定化などの目的で使用することができ、過酢酸の場合であれば芳香族化合物、エステル類などを用いることができる。特に好ましい溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、酢酸メチルである。溶媒の使用量は、脂環式ジオレフィン化合物100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは、50〜300重量部である。10重量部より少ないと、酢酸などの酸化剤による副反応が起こりやすく、一方500重量部より多いと、反応を完結させるのに時間がかかったり、容積あたりの得量が減る問題点があったりして、いずれも好ましくない。
反応温度については、用いるエポキシ化剤の反応性によって使用できる反応温度域は定まる。一般的には、0℃以上、100℃以下である。好ましいエポキシ化剤である過酢酸については、0〜70℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。0℃より低いと反応が遅く、一方70℃より高いと過酢酸の分解が起きる。ハイドロパーオキサイドの1例であるターシャリブチルハイドロパーオキサイド/モリブデン二酸化物ジアセチルアセトナート系では、同じ理由で20℃〜150℃が好ましい。
目的の脂環式ジエポキシ化合物(組成物)は、化学工学的手段、例えば貧溶媒で沈殿させる方法、当該脂環式ジエポキシ化合物を熱水中に撹拌の下で投入し溶媒を蒸留除去する方法、直接脱溶媒法などによって反応粗液から取り出すことができるが、濃縮前に反応粗液を水洗または中和水洗を行うのが好ましい。
また、濃縮しない場合も反応粗液を水洗または中和水洗を行うのが好ましい。特に、酸化剤として有機過酸を用いる場合は反応粗液の中和水洗を行うのが好ましい。これは、中和せずに溶媒等の低沸点成分を除去しようとすると極めて重合しやすいためである。
中和に用いるアルカリ水溶液としては、例えば、NaOH、KOH、KCO、NaCO、NaHCO、KHCO、NHなどのようなアルカリ性物質の水溶液を使用することができる。使用する際の濃度は広い範囲で自由に選択することができる。分液性の点からNaOH水溶液、NaCO水溶液、NaHCO水溶液を用いるのが好ましい。
上記の方法で得られた脂環式ジエポキシ化合物を脱溶剤後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することにより、純度の高い脂環式ジエポキシ化合物が得られる。脱溶剤は、通常、バッチ式の単蒸留、WFE、FFEのような薄膜蒸発器により、圧力300〜30torr、好ましくは、200〜50torrで、加熱温度50〜180℃好ましくは、60〜150℃のような条件で行われる。
かくして得られる一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物(好ましくは式(1)や式(2)で表される脂環式ジエポキシ化合物)は、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)により、その構造を確認することができる。すなわち、赤外線吸収スペクトル(IR)では、エポキシ環に起因する1,260cm−1の吸収などにより、H−NMRでは、エポキシ環上の水素に起因する2.8−3.3ppmのシグナルにより、さらにGC−MSでは、例えば、式(1)や式(2)で表される脂環式ジエポキシ化合物の場合、m/z=332[M+]により、本発明の脂環式ジエポキシ化合物の構造を確認することができる(図1〜5参照)。
さらに、一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物の中でも、X1〜X4がすべて水素原子である上記式(1)および式(2)で表される化合物が好ましい。式(1)および式(2)で表される脂環式ジエポキシ化合物は、少なくとも1種が含まれていればよい。両者を混合物として使用する場合の混合割合は、原料であるパラメンタン構造を有するジフェノール化合物の混合の割合によって決まる。すなわち、式(1)の脂環式ジエポキシ化合物と式(2)の脂環式ジエポキシ化合物との混合の割合は、式(1)/式(2)(重量比)=99.9/0.1〜0.1/99.9であり、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜50/50である。
上記方法により得られた一般式(I)で表される脂環式ジエポキシ化合物は、単独重合、共重合または他の化合物と反応させる、さらには他のオリゴマー、ポリマーの存在下で反応させることにより、様々なコーティング剤、インク、接着剤、シーラント、成形品もしくはこれらの構成材料、あるいはそれらの中間体とすることができる。
本発明の脂環式ジエポキシ化合物を用いた最終用途の例として、酸除去剤、家具コーティング、装飾コーティング、自動車下塗り、仕上げ塗り、飲料缶およびその他の缶コーティング、文字情報または画像情報のUV硬化型インク、光ディスク記録層の保護膜、表示材に用いられるカラーフィルター保護膜、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、光学材料同士の接着剤、半導体素子のダイボンディング、有機ELディスプレーのシール材、LED封止剤、太陽電池封止材、タッチパネル、電子ペーパー、マイクロレンズ、MEMS、光導波路、導光板、印刷版または印刷回路版を開発するのに適したフォトレジスト、注型印刷ロール、不飽和ポリエステルおよびスチレンを主体としたガラス、炭素、グラファイトまたは、他の繊維によって強化された成形配合物またはシート形成配合物によって作られた成形品、溶媒、難燃剤、医薬品および医療用品を含む種々の最終用途に有用な他の化合物を製造するための中間体などがある。
本発明の脂環式ジエポキシ化合物は、これを含むエポキシ樹脂組成物を硬化物とすることにより、脂環骨格を持つ化合物を用いた樹脂の特徴である耐熱性、耐水性、透明性、良好な誘電特性を付与することができる。
[エポキシ樹脂組成物]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記本発明の脂環式ジエポキシ化合物を含有する。このようなエポキシ樹脂組成物は、従来のものと比較して、例えば、硬化によりガラス転移温度が高く、耐熱性などの物性に著しく優れる硬化物が得られるという特色を有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の脂環式ジエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含有していても良い。本発明の脂環式ジエポキシ化合物以外のエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンモノオキサイドなどの脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂およびこれらのハロゲン化物などのグリシジル型エポキシ樹脂が挙げられる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物以外の化合物を含有してもよい。例えば、オキセタニル基やビニル基などのカチオン重合性基を有する化合物を含有していても良い。
樹脂組成物中における本発明の脂環式ジエポキシ化合物の配合量は、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%であり、特に50重量%以上であるのが好ましい。配合量が20重量%未満であると、本発明の脂環式ジエポキシ化合物による効果が低く、硬化物に十分な耐熱性、耐湿性などの性能を十分に付与できない場合がある。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤および/または硬化触媒を含んでもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の脂環式ジエポキシ化合物に硬化剤および/または硬化触媒を入れたものや、本発明の脂環式ジエポキシ化合物とこれ以外のエポキシ化合物および/またはエポキシ化合物以外の化合物を含むエポキシ樹脂組成物に、さらに硬化剤および/または硬化触媒を入れたものを含む。
硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂用硬化剤として慣用されているものの中から任意に選択して使用することができ、特に限定されないが、酸無水物が好ましい。酸無水物としては常温で液状のものが好ましく、具体的には、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の含浸性に悪影響を与えない範囲で、常温で固体の酸無水物、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などを使用することができる。常温で固体の酸無水物を使用する場合には、常温で液状の酸無水物に溶解させ、常温で液状の混合物として使用することが好ましい。酸無水物としては、分子中に脂肪族環または芳香族環を1個または2個有するとともに、酸無水物基を1個または2個有する、炭素原子数4〜25個、好ましくは8〜20個程度の酸無水物が好適である。
硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の脂環式ジエポキシ化合物100重量部に対して、例えば50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部である。より詳しくは、硬化剤としての効果を発揮しうる有効量、すなわち、通常、エポキシ化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.3〜1.5の酸無水物当量になるような割合で使用することが好ましい。硬化剤が少なすぎると硬化性が不十分となりやすく、多すぎると硬化物の物性が低下する場合がある。
本発明では、上記硬化剤とともに硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤は、エポキシ化合物が酸無水物により硬化する際、硬化反応を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤は、一般に使用されるものであれば特に制限されないが、ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤、リン酸エステル、ホスフィン類などのリン系硬化促進剤や、三級アミンもしくは四級アンモニウム塩などのアミン系硬化促進剤が挙げられる。
ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)およびその塩を挙げることができるが、特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7のオクチル酸塩、スルホン酸塩などが好ましい。
上記の他の硬化促進剤としては、具体的には、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、三級アミン塩、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、オクチル酸スズなどの金属塩などの公知の化合物を挙げることができる。
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の脂環式ジエポキシ化合物100重量部に対して、0.05〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部である。配合量が0.05重量部未満では硬化促進効果が不十分になりやすく、一方5重量部を超える場合には、硬化物における色相などの物性が悪化する場合がある。
さらに、必要に応じて水酸基を有する化合物を添加することにより、反応を緩やかに進行させることができる。水酸基を有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
一方、硬化触媒としては、例えば、カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤(ラジカル重合性化合物を含む場合)などが挙げられる。カチオン重合開始剤には、熱カチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤が含まれる。光カチオン重合開始剤は、光によりカチオン重合を開始させる物質を放出する開始剤であり、熱カチオン重合開始剤は、加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出する開始剤である。光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、ジアゾニウム塩系、アレン−イオン錯体系などの化合物が使用できる。例えば、スルホニウム塩系の「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、「DAICAT11」(ダイセル化学工業(株)製)、「CD−1011」(サートマート社製)、「SI−60L」、「SI−80L」、「SI−100L」(以上、三新化学工業(株)製)、「CPI−101A」(サンアプロ(株)製)等;ヨードニウム塩系の「DAICAT12」(ダイセル化学工業(株)製)、「CD−1012」(サートマート社製);ジアゾニウム塩系の「SP−150」、「SP−170」((株)ADEKA製)などが挙げられる。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、例えば、アリールジアゾニウム塩(例えば、(株)ADEKA製「PP−33」)、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩(例えば、スリーエム社製「FC−509」、G.E.社製「UVE1014」、(株)ADEKA製「CP−66」、「CP−77」、三新化学工業(株)製「SI−60L」、「SI−80L」、「SI−100L」、「SI−110L」、)、アレン−イオン錯体(例えば、チバガイギー社製「CG−24−61」)などが挙げられる。その他、アルミニウムやチタンなど金属とアセト酢酸エステルまたはジケトン類とのキレート化合物とシラノールまたはフェノール類との系であってもよい。上記キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスアセト酢酸エチルなどがある。シラノールまたはフェノール類としては、トリフェニルシラノールやビスフェノールSなどが挙げられる。
硬化触媒の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の脂環式ジエポキシ化合物100重量部に対して、例えば0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。この範囲で配合することにより、より耐熱性、透明性、耐候性などの良好な硬化物を得ることができる。硬化触媒の量が少なすぎると硬化性が不十分となりやすく、多すぎると硬化物の物性を低下させる場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度や透明性などに悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、着色剤、顔料、低応力化剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤などのこれまでエポキシ樹脂組成物に慣用されている各種の添加剤を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、熱可塑性樹脂、合成ゴム、エラストマー、熱硬化性樹脂、有機あるいは無機のナノ粒子などを含んでいてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記本発明の脂環式エポキシ化合物と必要に応じて上記各成分を、ブレンダーのようなミキサーなどによって撹拌、混合することにより調製される。撹拌、混合の際の温度は、配合する硬化剤や硬化触媒の種類等によっても異なるが、通常、10〜60℃程度に設定されるのが好ましい。調製時の設定温度が10℃未満では、粘度が高すぎて均一な撹拌、混合作業が困難になる場合があり、逆に、調製時の温度が高すぎると、硬化反応が起き、正常なエポキシ樹脂組成物が得られない場合があるので、好ましくない。撹拌、混合する際には、減圧装置を備えた1軸または多軸エクストルーダー、ニーダー、ディソルバーのような汎用の機器を使用し、例えば10分間程度撹拌、混合することにより調製してもよい。
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより得られる。硬化手段は、熱、光等の何れであってもよい。熱カチオン重合開始剤を用いて熱硬化させる際の硬化温度は、例えば30〜240℃、好ましくは35〜200℃である。硬化を2段階で行ってもよい。例えば、熱カチオン重合開始剤を用いて熱硬化させる場合には、30〜100℃(好ましくは30〜80℃)の温度で一次硬化させた後、110〜240℃(好ましくは120〜200℃)の温度で二次硬化させることにより、透明性や耐熱性等の物性の良好な硬化物が得られる。
酸無水物などの硬化剤を用いて硬化させる際の硬化温度は、例えば30〜240℃、好ましくは50〜200℃である。硬化を2段階で行ってもよい。例えば、30〜130℃(好ましくは50〜130℃)の温度で一次硬化させた後、135〜240℃(好ましくは135〜200℃)の温度で二次硬化させることにより、透明性や耐熱性などの物性の良好な硬化物が得られる。
光カチオン重合開始剤を用いて光硬化させる場合、光としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線などを使用できる。例えば、紫外線照射を行うときの光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、LEDなどが用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。
以下、本発明を実施例により説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下、実施例における「%」は、特別な記載がない限り、「質量%」を意味する。
合成例1(水素化反応)
5Lのステンレス製オートクレーブに、ヤスハラケミカル(株)製「YP−90」(1,3−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−p−メンタン/2,8−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−p−メンタン=70:30(重量比)、GC純度:99.4%)を324g、2−プロパノールを2.0L、および粉末状の5%ルテニウム担持アルミナ触媒10gを仕込んだ。次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガスを10kg/cmの圧力をかけながら導入した。そして撹拌しながら加熱し150℃となったところで、水素の圧力を40kg/cmとし、吸収された水素を補うことで圧力を40kg/cmに保ちながら14時間反応させた。その後、室温まで冷却し、得られた懸濁液にエタノール5.0Lを追加し、ブフナーロートで吸引ろ過を行い、触媒を濾別した。得られた反応液を、最終的に150℃、真空度1mmHg以下で蒸留濃縮し、脂環式ジヒドロキシ化合物329g(GC純度:99%、収率98%)を得た。
合成例2(脱水反応)
撹拌機、温度計、留出管を備えた500mL4つ口フラスコに、合成例1で得られた脂環式ヒドロキシ化合物100gと硫酸水素カリウム5.8g(14.4mol%)を仕込んだ。フラスコを200℃に加熱し、脂環式ヒドロキシ化合物を溶融させて撹拌を開始した。留出管から、反応により生成した水を留出させながら2時間反応した。続いて、最高6hPaまで減圧し、240℃で留出管より水と生成した脱水反応生成物を留出させ、56.2gの白濁した留出粗液を得た。これを再度減圧蒸留し、脂環式ジオレフィン化合物38.3g(GC純度:99%、収率43%)を得た。
合成例3(エポキシ化反応)
m−クロロ過安息香酸(30%含水)39.4g(159.8mmol)を酢酸エチル100mLに溶解し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過してm−クロロ過安息香酸の酢酸エチル溶液を調製した。
撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管を備えた300mL四つ口フラスコに、合成例2で得られた脂環式オレフィン化合物20g(66.7mmol)、酢酸エチル50mLを仕込んだ。窒素気流下、撹拌を開始し、脂環式オレフィン化合物を溶解した。反応液を20℃に保ちながら、上記で調製したm−クロロ過安息香酸の酢酸エチル溶液を約3.5時間かけて滴下し、滴下終了後2時間撹拌を続けた。
反応液に5%亜硫酸ナトリウム水溶液50gを滴下し、未反応のm−クロロ過安息香酸を失活させた。有機相を5%水酸化ナトリウム水溶液200gで洗浄した後、イオン交換水200gで2回洗浄した。得られた有機相を減圧下で溶媒留去して濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1〜7/3)にて分離精製して、微黄色の透明な粘稠液体である脂環式ジエポキシ化合物13.0g(GC純度:95%、収率56%)を得た(図1参照)。
得られた脂環式ジエポキシ化合物について、IR、H−NMR、GC−MSの測定により、構造解析を行ったところ(図2〜5参照)、式(1)と式(2)が混合した脂環式ジエポキシ化合物であることが確認された。また、H−NMRの測定によると、積分強度から計算したエポキシ環炭素上の水素原子の積分強度(A)と、その他の炭素上の水素の積分強度(B)の比はB/A=8.3であった。これは、脱水反応工程(合成例2)においてオレフィン転位反応が起こらなかったと仮定した場合のB/Aの理論値32/4=8とほぼ一致しており、構造異性体含有量が少ないことが確認された。
さらに、得られた脂環式ジエポキシ化合物について、エームズ試験を行ったところ陰性であった。
実施例1(感光性組成物の製造)
上記合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物100重量部に、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)製「CPI−101A」)2重量部を配合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
このエポキシ樹脂組成物1gを、直径4cmの円形のアルミカップに移し、コンベア併設型UV照射器(フュージョンUVシステムズ社製「F300SQ Ultraviolet Lamp System」)で300mJ/cmの光量を20回照射した。照射後、100℃、1時間で加熱硬化を行い、試験片(硬化物)を調製した。
得られた硬化物について、耐熱性、吸水率、透明性、耐候性、引っかき硬度の測定を行った。結果を表1に示す。
実施例2
上記合成例3で得られた脂環式ジエポキシ化合物100重量部、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート100重量部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート系カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)製「CPI−101A」)4重量部を配合して、エポキシ樹脂組成物を得た。
以下、実施例1と同様に硬化させて、硬化物の物性を評価した。結果を表1に示す。
比較例1
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(エームズ試験は陽性)100重量部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート系カチオン重合開始剤(サンアプロ株式会社製「CPI−101A」)2重量部を配合して、硬化性組成物を得た。
以下、実施例1と同様に硬化させて、硬化物の物性を評価した。結果を表1に示す。
なお、物性の測定方法および効果の評価方法は以下のとおりである。
(生成物のGC分析)
測定装置:Agilent社製 HP6890N
カラム:HP−5、5%フェニルメチルシロキサン、長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm
注入口温度:300℃
注入口圧力:18.8psi
スプリット比:98.509:1
スプリット流量:305.5ml/分
平均線速度:53cm/秒
検出器:FID
検出器温度:300℃
水素流量:40.0ml/分
空気流量:450.0ml/分
メークアップガス(ヘリウム)流量:45.0ml/分
昇温パターン(カラム):150℃開始、15℃/分で昇温し、300℃で10分保持
サンプル:1.0μl
(IR)
Perkin Elmer社製、Spectrum one
H−NMR)
日本電子(株)社製、JNM−LA400、周波数400MHz(溶媒:CDCl3、内部標準物質:テトラメチルシラン)
(GC−MS)
測定装置:(GC部)Agilent Technologies社製、6890N、(MSD部)Agilent Technologies社製、5973N
カラム:HP−5MS、5%フェニルメチルシロキサン、長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
注入口温度:250℃
注入口圧力:7.8psi
スプリット比:100:1
スプリット流量:79.7ml/分
平均線速度:33cm/秒
ヘリウム流量:0.8ml/分
イオン化モード:EI
昇温パターン(カラム):100℃開始、10℃/分で昇温し、300℃で15分保持
サンプル:1.0μl
(エームズ試験)
Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537およびEscherichia coli WP2uvrAの5菌株を用いて、プレインキュベーション法で実施した。
(硬化物の耐熱性試験)
TAインスツルメント社製「DSC Q100」を用いて、室温から10℃/分の昇温速度で250℃まで加熱して得たDSCカーブから、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
(硬化物の吸水率測定)
JIS K7209に準拠して行い、試験片を23℃の水に浸漬し、試験開始から24時間後の吸水量を測定して、吸水率を算出した。
(硬化物の透明性試験)
JIS K7105に準拠して行い、日本電色工業(株)製「COH−300A」を用いて、3.2mm厚の試験片の全光線透過率(%)を測定した。また、黄色度(YI)は、JIS−K7105の規定によって求めた。
(硬化物の耐候性試験)
JIS K7105に準拠して行い、3.2mm厚の試験片をスガ試験機(株)製「キセノンウエザーメーターX75」にて50時間照射し、YIの試験前と試験後における黄変度(△YI)を日本電色工業(株)製「COH−300A」にて求めた。
(硬化物の引っかき硬度測定)
JIS K5600−5−4に準拠して行い、手かき法にて試験を行った。
表1に示したとおり、本発明の脂環式ジエポキシ化合物を用いた硬化物(実施例1,2)は、比較例1と比較して、ガラス転移温度(Tg)が高く、吸水率が低いことから、耐熱性や吸水性に優れているといえる。
本発明の脂環式ジエポキシ化合物を用いたエポキシ樹脂組成物およびその硬化物は、ガラス転移温度および透明性が高く、吸水性や耐熱性に優れていることから、コーティング剤、インク、塗料、接着剤、シーラント、封止剤、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、絶縁材料、光造形、LED封止剤、太陽電池封止材、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの用途を含む様々な方面で有用である。

Claims (4)

  1. 下記式(1)および式(2)で表される脂環式ジエポキシ化合物の少なくとも1種で表される、脂環式ジエポキシ化合物。
  2. 下記式(3)および式(4)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を脱水反応することにより脂環式ジオレフィン化合物を得て、この脂環式ジオレフィン化合物をエポキシ化反応することによって得られる請求項1に記載の脂環式ジエポキシ化合物の製造方法。
  3. 請求項1に記載の脂環式ジエポキシ化合物を含有するエポキシ樹脂組成物。
  4. 請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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