本実施例では、被検眼が撮影可能な瞳孔径に達しているかどうかを客観的に判定し、瞳孔径に応じてSP(小瞳孔)モードを選択するなど、瞳孔径に応じた撮影制御を行なえるようにした眼科撮影装置(以下では被検眼撮影システムとして言及する。また、その撮影光学系を含む主として眼底カメラの主要部を被検眼撮影装置として言及する)を例示する。本実施例では、小瞳孔径の被検眼を無散瞳で観察したときに、フォーカス指標(FD:合焦指標)のスプリットの片方が消えかかるという現象を利用して、被検眼の瞳孔径の状態を判定する。本実施例によれば、被検眼の瞳孔径の状態を眼底観察モード、すなわち撮影直前に判定することができ、通常モードと小瞳孔モードの自動切換をより客観的、かつ確実に行なえるようになる。
図1には、本発明の被検眼撮影装置1とこれに接続される外部記録装置2から成る被検眼撮影システムが構成される。
被検眼撮影装置1には、被検眼眼底を照明するための照明光学系が設けられている。すなわち、観察用光源であるランプ11が設けられており、このランプから発せられた光は、赤外フィルター12、コンデンサーレンズ13、撮影用光源であるストロボ14を経て、リングスリット16を照明する。このリングスリット16は所定の外径と内径を有し、被検眼Eの瞳Epと略共役位置に円環状照明光束を形成する。
リングスリット16からの光束は、対物レンズ21からの反射をとるための黒点18aを有する黒点板18を通過して、赤外ハーフミラー45を通過し、リレーレンズ19を経て中心に穴の開いた穴あき全反射ミラー20で反射される。全反射ミラー20で反射された光束は対物レンズ21により被検眼Eの瞳Epで結像された後、眼底Erに入射し眼底を赤外光でほぼ均一に照明する。
また、眼底にフォーカスドット(合焦指標)を投射し、焦点合わせをするための合焦指標投影系が設けられており、このフォーカス指標光学系の投射光は赤外ハーフミラー45で反射され、被検眼方向に導かれる。本実施例では、上記照明光学系とこの合焦指標投影系の光軸は、赤外ハーフミラー45の反射/透過面において一致している。
本実施例のフォーカス指標光学系は、撮影光学系のフォーカスレンズ23と機械的に連動して移動する光学系44、分割プリズム42、分割スリット73、および赤外LED43から構成される。
図2に本実施例のフォーカス指標光学系の構成をより詳細に示す。分割スリット73は、図示のように矩形の2つのスリットを有し、その前方にはこの2つのスリットをそれぞれ通過する光の光路を異ならせるための分割プリズム42が配置される。
分割プリズム42の前方には、光学系44が配置されており、この光学系はレンズ441、442…(素子数は任意)と、分割リングスリット72から構成される。光学系44、すなわち分割リングスリット72とレンズ441、442…は、撮影光学系のフォーカスレンズ23と機械的に連動して移動される。
分割リングスリット72のスリット配置は、分割プリズム42の分割態様に対応しており、この例では、分割プリズム42が図の上下に屈折方向の異なる領域に分割された構成であり、これに合わせて分割リングスリット72には上半分と下半分にそれぞれ1つずつスリットを配置している。この2つのスリットは、分割リングスリット72の周縁の1/4円周の長さを有し、分割リングスリット72の中心を狭んで対向しており、分割リングスリット72はこの2つのスリットの部分のみを介して赤外LED43〜分割スリット73からの投射光を通過させる。
この分割リングスリット72は、本実施例では、後述の瞳孔径の評価を行なうために、被検眼Eの瞳孔中でフォーカス指標の光束を通過させる範囲を限定し、後述の瞳孔径の評価において、被検眼Eが小瞳孔となっている場合にフォーカス指標の1つの光量が減少したり消えたりしやすくなるように設けたものである。
なお、本実施例では、分割スリット73、分割リングスリット72のそれぞれ2つのスリットは、指標投影のための合焦指標投影系の光学系44(レンズ441、442)の光軸に対して対称な位置に配置されるものとし、また、本実施例では合焦指標投影系と照明光学系の光軸が一致していることから、分割スリット73、分割リングスリット72のそれぞれ2つのスリットは、照明光学系の光軸に対しても対称な位置に配置されていることになる。
図2において符号71および74は、それぞれ分割スリット73により形成されるフォーカス指標(ないし)の眼底共役像、および分割リングスリット72の瞳面像の位置を示している。本実施例では分割リングスリット72を配置していることから、符号74に示すようにフォーカス指標の投射光は、分割リングスリット72の2つのスリットに対応し瞳孔の中心を狭んで対向するそれぞれ1/4円周の周縁部分のみを通過するように制限され、被検眼(E)の眼底(Er)に投射される。本実施例では、分割リングスリット72の2つのスリットが構成する円周の外周は、光学系の倍率などを考慮し、瞳面像74として投影した時に、撮影に必要と考えられる瞳孔径とほぼ同じ大きさに決定される。
これにより、眼底Erにフォーカス指標71が投影され、眼底Erに2つのフォーカスドットが形成される。分割スリット73の2つのスリットを通過する光の入射方向は、分割プリズム42によって互いに異なる方向とされており、撮影光学系が被検眼の眼底Erに焦点の合ったアライメント状態でのみ2つのフォーカスドットが眼底像上で整列するようになる。検者はこの様子を後述の赤外用撮像装置29、モニタ51を介して観察しながら撮影光学系の合焦調節を行なうことができる。もちろん、フォーカスドット(FD)の投影は、被検眼の角膜および水晶体を介して行なわれるから、フォーカシングは被検眼の視度に合せて適切に行なわれる。
眼底Erからの反射光は、再び瞳Epの中心部を通過して対物レンズ21を介して受光され、穴あき全反射ミラー20の穴を介して、撮影光学系の光路に配置された撮影絞り24、フォーカスレンズ22、23、結像レンズ25を通過してリターンミラー26に入射する。リターンミラー26で反射された眼底からの光束は、結像レンズ27により赤外フィルター28を前面に配置した赤外光に感度を有する赤外用撮像装置(CCDカメラ)29に集光され、それにより眼底像が赤外用撮像装置29で撮像される。赤外用撮像装置29で撮影された眼底像は切り換え回路50を介して液晶などで構成されるモニタ51に表示され、検者が観察できるようになっている。
また、リターンミラー26の背後には、結像レンズ32、可視光に感度を有する可視用撮像装置33が配置される。この可視用撮像装置33は、撮影スイッチ55が操作されたときには、制御回路54により作動される切り換え回路50を介してVRAM、フラッシュメモリなどで構成される画像1次記録手段ないし記録装置52に接続され、また、同期検出回路53により可視用撮像装置33の映像信号から垂直同期信号が抽出される。画像1次記録手段52はモニタ51に接続されており、画像1次記録手段52に記録された画像をモニタ51に再生表示させることができる。また、制御回路54は撮影スイッチ55が操作されたときリターンミラー26を跳ね上げ、光路から離脱させるとともに、ストロボ発光制御回路56を作動してストロボ14を発光させる。
制御回路54は、CPUおよびROM、RAMなどを用いて構成され、後述の撮影制御を行なう。特に、制御回路54は、画像1次記録手段52に記録される赤外用撮像装置29(あるいはさらに可視用撮像装置33)の撮影した眼底画像を解析する画像処理ハードウェアないしソフトウェアを含み、後述のように眼底画像から分割スリット73により投影される2つのフォーカス指標の領域を検出し、それぞれのフォーカス指標の光量を測定し、さらにその結果に応じて撮影制御を切り換える。
被検眼撮影装置1は、ハードディスク、MO、DVD、プリンタなどの画像2次記録手段ないし記録装置60と制御回路61を有する外部記録装置2と接続することができる。両装置1と2が接続された場合には、被検眼撮影装置1のコネクタ1a、1bと外部記録装置2のコネクタ2a、2bがそれぞれ接続され、画像1次記録手段52と画像2次記録手段60が接続され、また制御回路54と制御回路61が接続される。また、オプションとして画像2次記録手段60をモニタ51に接続することができ、これは被検眼撮影装置1のコネクタ1cと外部記録装置2のコネクタ2cを介して行なわれる。
上記構成を要約すれば、以上に示した眼科撮影装置は、被検眼眼底を照明するための照明光学系(11〜18)と、被検眼眼底を撮影するための撮影光学系(21〜27、32)と、被検眼眼底像を指標像と共に観察可能な観察系(29、50、51)と、被検眼の視度に合わせて撮影光学系を合焦させる合焦機構による合焦状態を確認するために被検眼眼底に合焦指標(73)を投影する合焦指標投影系(42、43、44…)を有するものである。
次に、上記のように構成された眼科撮影装置ないし眼科撮影システムの動作の概要を説明する。本実施例の観察系を介して得られる被検眼Eの瞳孔径によって眼底上に投影される状態が変化する合焦指標の画像を用いて被検眼の瞳孔径の状態を検出する。
被検眼Eの観察時には、ランプ11が点灯され、赤外フィルター12で赤外光の波長域が抽出された光束は、コンデンサーレンズ13、リングスリット16、黒点板18、赤外ハーフミラー45、リレーレンズ19を経て穴あき全反射ミラー20で反射され、被検眼Eの瞳Epを通過した後、眼底Erに入射し眼底を赤外光で照明する。また、眼底Erからの反射光は、瞳Epの中心部を通過して対物レンズ21を介して受光され、穴あき全反射ミラー20の穴を通過し、撮影絞り24、レンズ22、23、25を経て、リターンミラー26で反射され、結像レンズ27により赤外用撮像装置29に集光され、眼底像が赤外用撮像装置29で撮像される。今切り換え回路50は赤外用撮像装置29の方に切り換っているので、眼底像はモニタ51で再生され検者により観察される。
この観察時には、図2に示したフォーカス指標光学系の赤外LED43も同時に点灯され、分割スリット73のフォーカス指標が照明され、赤外光のフォーカス指標像が赤外ハーフミラー45で反射され、照明光と合成されて眼底Erにフォーカスドットとして投影される。フォーカスレンズ23を調節すると、それと連動してフォーカス指標光学系の光学系44が調節され、2つのフォーカスドットの眼底像が整列した時に眼底像も撮影光学系に対して合焦するので、検者は赤外用撮像装置29で撮影され、モニタ51に表示されたフォーカスドットを観察しながらフォーカスレンズ23を調節して合焦状態にすることにより眼底に焦点を合わせることができる。
この眼底観察および焦点調節は、赤外光を被検眼に照射して行なわれるので、被検眼を無散瞳状態で観察でき、被検者の負担を軽減させることができる。
さらに本実施例においては、この眼底観察および焦点調節期間で、制御回路54が赤外用撮像装置29で撮影した画像データから分割スリット73の2つのスリットに対応するフォーカス指標の投影画像を評価することにより、撮影モードの選択を含む制御を行なう。この眼底観察および焦点調節期間における制御については、後でさらに詳細に説明する。
このようにして、焦点合わせが終了すると、撮影スイッチ(シャッター)55が操作される。このとき、制御回路54の制御によって、撮影スイッチ操作後の所定のタイミングでリターンミラー26が跳ね上がって光路から離脱され、また切り換え回路50により撮像装置が赤外用撮像装置29から可視用撮像装置33に切り換えられ、可視用撮像装置33からの映像信号が画像1次記録手段52に入力されるとともに、同期検出回路53に入力されるので、同期検出回路53から垂直同期信号が出力される。
制御回路54は所定の垂直同期信号ストロボ発光信号をストロボ発光制御回路56に送り、それによりストロボ14が発光し、眼底が可視光で照射され、その像が可視用撮像装置33で撮像される。このとき、制御回路54はストロボ発光信号の後の第1フィールド(奇数フィールド)の垂直同期信号に同期して画像1次記録信号を画像1次記録手段52に出力する。この画像1次記録信号は、第1フィールドと第2フィールド(偶数フィールド)の長さ、すなわち1フレームの分の期間を有しているので、画像1次記録手段52には、1フレーム分の眼底像が記録される。
なお、画像1次記録手段52はVRAM、フラッシュメモリなどから構成されており、眼底像が前記1次記録手段52に記録されると、自動的に先に記録されていた情報が消去され、新たな情報で上書きされるようになっている。
このように、画像1次記録手段52に画像記録後、所定の時間経過すると、制御回路54は本体から外部記録装置2に録画指令信号を出力し、それにより制御回路61から画像2次記録信号が画像2次記録手段60に出力され、画像1次記録手段52に記録されていた1フレーム分の眼底画像が画像2次記録手段60に記録されるようになる。この画像2次記録手段60は、ハードディスク、MO、DVD、プリンタなどで構成されており、記録後電源を遮断しても、その記録を保持することができる。この画像2次記録手段60に記録された画像信号は、コネクタ1c、2cを介して接続される本体のモニタ51に再生表示させることもできる。
また、画像1次記録手段52に記録された眼底像はモニタ51に再生表示させることができ、この再生表示中、ないし画像1次記録手段52から画像2次記録手段60に画像信号が出力されている間は、ストロボ発光信号の出力が禁止されるか、あるいはストロボが発光しても、画像1次記録手段52による画像記録(書き込み)が禁止され、画像1次記録信号が発生されることがない。これにより誤ってストロボが発光してあるいは誤操作により記録された貴重な画像が消失してしまうのを防止することができる。
次に、本実施例における撮影直前のフォーカシングおよび眼底観察時の動作および制御について説明する。
本実施例では、上記の無散瞳眼底観察および焦点調節期間において、制御回路54が赤外用撮像装置29で撮影した画像データから分割スリット73の2つのスリットに対応するフォーカス指標(フォーカスドット)の投影画像を評価することにより、撮影モードの選択を含む制御を行なう。
図3は、無散瞳眼底観察および焦点調節期間において、赤外用撮像装置29から出力される(あるいはさらに画像1次記録手段52に格納される)上述のフォーカス指標光学系により投影された画像データ中の2つのフォーカス指標(フォーカスドット)の部分を示している。
図3において符号301、302は2つのフォーカス指標の検知エリアを示している。このフォーカス指標検知エリア301、302は、制御回路54の画像処理ハードウェアあるいはソフトウェアにより、各々の中央部に矩形でそれぞれ示したフォーカス指標の投影サイズよりもわずかに大きな面積に設定される。
制御回路54は画像処理ハードウェアあるいはソフトウェアを用いて赤外用撮像装置29から出力される画像データをスキャンし、2つのフォーカス指標が含まれていると判定できるフォーカス指標検知エリア301、302の位置を特定し、この領域の画像信号の波高(たとえば輝度)をそれぞれのエリア301、302ごとに測定する。フォーカス指標検知エリア301、302の位置は、たとえば、そのエリア(ウィンドウ)中で、2つのフォーカス指標に対応する画像パターン(たとえば輝度分布の2次元的なパターン)を検出できるか、などの処理を行なうことによって特定することができる。
フォーカス指標検知エリア301、302の画像信号の評価は、図4および図5のように所定の閾値Thを設定し、制御回路54がフォーカス指標検知エリア301、302の画像信号301a、302aの波高値と比較することにより行なう。
たとえば、図4のようにフォーカス指標検知エリア301、302の画像信号301a、302aの波高がいずれも閾値Thよりも高い場合には、被検眼Eの瞳孔径が充分大きいと判定できる。
これに対して、瞳孔径が小さい場合には、虹彩でのケラレなどによってフォーカス指標検知エリア301、302の画像信号301a、302aの波高は、図5のように一方が低下し、閾値Thよりも小さくなる(あるいは消失する:波高0となる)現象が生じる。そして、本実施例によれば、2つのうち一方のフォーカス指標の眼底における投影光量が低下したり、消失したりする現象は、フォーカス指標光学系に分割リングスリット72を設けていることからより敏感に生じるため、被検眼Eの小瞳孔状態を感度よく確実に検出することができる。
なお、閾値Thとしては、あらかじめ実験を行なって、光学系の特性などに応じてSP(小瞳孔)モードが必要となるような瞳孔径に応じた限界値を求め、その値を用いることができる。例えば、下記の図6に示す制御では、2つのフォーカス指標の眼底における投影光量がいずれも閾値Thよりも大きい場合に、被検眼の瞳孔径が第1の径よりも大きく、いずれか一方が閾値Thよりも低下した場合には被検眼の瞳孔径がその第1の径よりも小さくなったと判定している(この場合、撮影条件の自動設定動作として、たとえばSPモードへの移行を行なう)。また、2つのフォーカス指標の眼底における投影光量がいずれも閾値Th以下に小さくなった場合に、被検眼の瞳孔径が前記第1の径より小さい第2の径よりも小さくなった、と判定している(この場合、撮影条件の自動設定動作として、たとえば静止画撮影を禁止する)。
本実施例では、たとえば図6に示すような制御を行なうことによって、より確実に撮影モードを選択したり、あるいは撮影処理を許可/禁止したりすることができる。
図6は、無散瞳眼底観察および焦点調節期間において、本実施例の制御回路54が実行する制御手順の一例を示している。図示の手順は、制御回路54の制御プログラムとして制御回路54のROMや、あるいは不図示のHDDなどの外部記憶装置に格納しておくことができる。
図6のステップS10において、制御回路54は赤外用撮像装置29から出力される画像データを取り込み、スキャンし、上述のフォーカス指標検知エリア301、302の位置をそれぞれ特定する。
そして、ステップS11およびステップS14において、フォーカス指標検知エリア301、302の画像信号の波高(たとえば輝度)の状態を判定する。ステップS11では、フォーカス指標検知エリア301、302の画像信号の波高がいずれもH(たとえば上記の閾値Thよりも大きい:以下同様)か否かを判定する。ステップS11が肯定された場合には散瞳状態良好と判定(ステップS12)し、次工程(撮影処理)に進む(ステップS13)。
ステップS11が否定された場合には、ステップS14においてフォーカス指標検知エリア301、302の画像信号の波高のいずれかがH(すなわち一方がL:たとえば上記の閾値Thよりも小さい)か否かを判定する。ステップS14が肯定された場合には、ステップS15において、被検眼Eが小瞳孔状態で散瞳不十分と判定し(ステップS15)、ステップS16においてSP(小瞳孔)モードへの切り換えを行ない、ステップS13に進む。
このSP(小瞳孔)モードでは、上述のような小瞳孔に適した機器の制御を行なう。たとえば、小瞳孔時に眼底を照射する光を円環状にしているリングスリットの内径を小さくし、照明光を多く入射させる、また、照明野の周辺部がフレアないしゴーストの影響を受けるのを回避するため、リングスリット内径を小さくするのに連動して照明野絞りを絞って照明野の周辺部でのフレアやゴーストの発生を防止する、また、リングスリット内径を小さくする、照明野絞りを絞るのに連動して、さらに撮影光学系中に被検眼の眼底と略共役位置に配置される開口絞りを小径に絞る、あるいは画像処理によって、モニタに表示する観察画像の周囲の領域に信頼性の低いものであることを示す表示を重畳する、などといった動作を行なう。なお、SP(小瞳孔)モードへの切り換えは自動的に行なってもよいが、モニタ51の表示、あるいは音声出力などにより単に検者に対する警告(「散瞳が充分ではありません。SP(小瞳孔)モードに切り換えて下さい」などの表示)のみ行ない、SP(小瞳孔)モードへの切り換えは検者に手動によって行なわせるようにしてもよい。
ステップS14が否定された場合、フォーカス指標検知エリア301、302の画像信号の波高がいずれもL(たとえば上記の閾値Thよりも小さい)の場合には、ステップS17でフォーカス指標の一部(あるいは全部)が消失している、と判定し、ステップS18でそれ以降の静止画撮影を禁止するフラグを立てる。このとき、検者に対して、モニタ51の表示、あるいは音声出力などにより「散瞳が充分ではないので撮影できません」などの警告を行なってもよい。
なお、図6では、ステップS11およびステップS14がいずれも否定された場合に瞳孔径が撮影に適していない、と判定しているが、たとえば、ステップS14とステップS15の間にH(たとえば上記の閾値Thよりも大)ではない側のフォーカス指標検知エリア301または302の画像信号の波高が0であるか否かを判定するステップを挿入し、もしこの判定が肯定された場合にはステップS17に分岐するような制御を行なってもよい。
以上のようにして、本実施例によれば、2つのフォーカス指標の画像信号の状態(光量や波高の状態)に応じて、被検眼が撮影可能な瞳孔径に達しているかどうかを客観的に判定することができる。そして、瞳孔径に応じてSP(小瞳孔)モードを選択するなど、瞳孔径に応じた撮影制御を行なうことができる。本実施例では、小瞳孔径の被検眼を無散瞳で観察したときに、フォーカス指標の片方の光量が低下する、あるいは消失する、といった現象を利用し、フォーカス指標の両方が所定の明るさであれば、散瞳状態は充分、と判定し、また、フォーカス指標の一方が所定の明るさになっていなければ小瞳孔状態、と判定してSP(小瞳孔)モードへの自動切り換え(あるいはSP(小瞳孔)モードへの切り換えを促す警告)を行なうことができ、それ以外の場合は散瞳状態が撮影に不十分であるものとして撮影を禁止する、という制御を行なうことができる。
また、本実施例によればフォーカス指標光学系に被検眼の前眼部を通過するフォーカス指標の投影光束の通過範囲を制限する遮光手段として分割リングスリット72を設けているため、フォーカス指標の1つの光量が低下したり、消失したりする現象がより敏感に生じるため、被検眼Eの小瞳孔状態を感度よく確実に検出することができる。
以上のようにして、本実施例によれば、被検眼の瞳孔径の状態を眼底観察モード、すなわち撮影直前に判定することができ、通常モードと小瞳孔モードの自動切換をより客観的、かつ確実に行なえるようになる。
特に、本実施例では、前眼部を観察し瞳孔径を判定するために独立した光学系を備える必要がなく、このために以下のような利点が得られる。前眼部を観察するのに独立した前眼部レンズを設ける方式では、作動距離により前眼部観察倍率が大きく変わるため、精度よく作動距離を合せないと瞳孔径の判定を誤る恐れがあるが、本実施例ではこのような作動距離に影響されることなく瞳孔径を正確に判定することができる。また、本実施例では前眼部観察のための独立した光学系を備える必要がないため、眼底のパノラマ撮影を行なう場合にも有利である。たとえば、パノラマ撮影において周辺撮影を行なおうとすると、撮影光学系に対しては瞳孔が傾いた状態になり、眼底撮影装置側から見ると、瞳孔がみかけ上、楕円になる。このときような撮影姿勢となった場合でも本実施例によれば、2つのフォーカス指標の光量を判定するだけで瞳孔径を正確に検知することができる。また、従来の前眼部観察のための独立した光学系を用いる方式では、該光学系で見る瞳孔のあき具合と、実際の眼底観察での瞳孔のあき具合が異なるが、本実施例によればそのような問題がなく、撮影直前の瞳孔径が十分か否かを簡単に判別することができる、という優れた効果がある。
以上では、分割スリット73、および分割リングスリット72のそれぞれ2つのスリットの位置は、合焦指標投影系、したがって、照明光学系の光軸に対して対称な位置に配置されるものとしたが、このような構成でも、被検眼Eが小瞳孔状態の場合、瞳孔でケラれることによって眼底に投影される2つのフォーカス指標の光量が減少したり消えたりする現象は、大幅に被検眼に対するアライメントが狂わない限り、まず、どちらか1つのフォーカス指標について発生する。そして、本発明の特徴は、従来、単に不具合としてのみ認識されていたこの現象を積極的に検出することにより、観察/撮影制御を変更する点にある。また、この現象を敏感に検出できるよう、分割リングスリット72を配置している。以下では、分割リングスリット72、あるいはさらに分割スリット73を照明光学系の光軸に対して非対称な構成とすることによって、被検眼の小瞳孔状態をより敏感に検出可能な構成につき説明する。
上記実施例では、分割スリット73、および分割リングスリット72のそれぞれ2つのスリットの位置は、ランプ11、ストロボ14などを光源として含む眼底照明用の照明光学系の光軸に対して対称な位置に配置されるものとした。
特に、分割リングスリット72を配置し、被検眼Eの瞳孔中でフォーカス指標の光束を通過させる範囲を限定することにより、フォーカス指標の1つの光量が減少したり消えたりしやすくなるように構成しているが、さらに、図7に示す分割リングスリット72aのように、その2つのスリット72bの位置をランプ11、ストロボ14などを光源として含む眼底照明用の照明光学系の光軸に対して非対称な位置に配置するようにしてもよい。この図7の例では、分割リングスリット72aの2つのスリット72bは、図の下方にずらしてある。また、これは必須ではないが、分割スリット73aの2つのスリット73bも、これに合わせて図の下方にずらしてある。その他の構成は、上記実施例と同一であるものとし、ここではその詳細な説明は省略する。
以上のような構成によれば、瞳面Epの位置における分割リングスリット72aの瞳面像は撮影/観察光学系の光軸より図の上方に移動する。また、分割スリット73aの2つのスリット73bも上記の通り図の下方にずらすものとすれば、同様にフォーカス指標の像も観察視野の上方に移動する。
図8および図9は、図7のような指標投影光学系を用いた場合の指標投影の様子を示しており、図8は被検眼Eの散瞳が充分(たとえば瞳孔径6.0mm程度)な場合、図9は被検眼Eが小瞳孔(たとえば瞳孔径4.0mm以下)となっている場合の様子をそれぞれ示している。図8、図9において、符号Epwは被検眼Eの瞳孔(瞳面)を、符号Eriは被検眼Eの眼底の観察視野を示している。また、図8において符号301a、301bは、分割リングスリット72aの上側のスリット72b、および分割スリット73aの上側のスリット73bの位置を、また、符号302a、302bは、分割リングスリット72aの下側のスリット72b、および分割スリット73aの下側のスリット73bの位置をそれぞれ示している。
図8では、被検眼Eの散瞳が充分(たとえば瞳孔径6.0mm程度)であり、分割スリット73aのスリット73bの指標は瞳孔(Epw)にケラれることなく投影され、眼底観察視野Eriに投影される2つの指標の明るさはほぼ同じになる。
ところが、図9のように被検眼Eが小瞳孔(たとえば瞳孔径4.0mm以下)である場合には、瞳孔中心と分割リングスリット72aおよびそのスリット72bの瞳面像が偏心しているため、図示のように分割リングスリット72aおよびそのスリット72bの瞳面像によって制限される指標の投影光が瞳孔によってケラれ、2つのうち一方の指標像の光量が減少(あるいは消失)する(301b、302b)。この例では、上側の指標像の光量が減少(あるいは消失)するが、この現象は、図7に示した構造によって、瞳孔中心と分割リングスリット72aおよびそのスリット72bの瞳面像が偏心してしているために、実施例1に示した構造よりも、より敏感に生じることになる。
以上のようにして、分割リングスリット72aのように、その2つのスリット72bの位置をランプ11、ストロボ14などを光源として含む眼底照明用の照明光学系の光軸に対して非対称な位置に配置する、すなわち、フォーカス指標の投影光束の通過範囲を制限する遮光手段を照明光学系の光軸に対して非対称に配置する構成によって、2つのうち一方のフォーカス指標の眼底における投影光量が低下したり、消失したりする現象がさらに敏感に生じるため、被検眼Eの小瞳孔状態を感度よく確実に検出することができる。
また、分割スリット73aの2つのスリット73bの位置を照明光学系の光軸に対して非対称に配置する構成によれば、眼底観察視野Eriに投影される2つのフォーカス指標の位置を眼底観察視野Eriの中心から偏心させることができるため、検者のフォーカス合せの操作がより容易になる効果も期待できる。
なお、上記実施例1で説明済みの作用および効果は、重複して説明しないが同様に期待できることはいうまでもない。
また、以上の2つの実施例では、合焦指標投影系と照明光学系の光軸が一致している構成を前提として説明した。しかしながら、分割リングスリット72aのスリット72bや、分割スリット73aの2つのスリット73bの位置を眼底照明用の照明光学系の光軸に対して非対称な位置に配置するためには、これらのスリットを全て図2に示したような指標投影のための合焦指標投影系の光学系44(レンズ441、442)の光軸に対して対称な位置に配置した上、この指標投影のための合焦指標投影系の光軸と、ランプ11、ストロボ14などを光源として含む眼底照明用の照明光学系の光軸が例えば赤外ハーフミラー45の反射/透過面において一致しないようにずらして配置するような構成でもほぼ上記同様の効果を得ることができる。