JP5382978B2 - ヒドロホルミル化と水素化によりオレフィンからアルコールを製造する方法 - Google Patents

ヒドロホルミル化と水素化によりオレフィンからアルコールを製造する方法 Download PDF

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Description

本発明は、オレフィン又はオレフィン混合物をコバルト触媒の存在下にヒドロホルミル化し、触媒を分離し、引き続き水素化させることによってアルコールを製造する方法に関する。
高級アルコール、特に7〜25個の炭素原子を有するアルコールは、それより1炭素原子だけ少ないオレフィンを接触ヒドロホルミル化(オキソ反応とも言う)させ、引き続き形成されたアルデヒドを水素化させることによって製造できることが知られている。これらのアルコールは溶剤として又は洗剤もしくは可塑剤のための前駆物質として用いることができる。
オレフィンのヒドロホルミル化法は文献で多数知られている。EP0562451号及びEP0646563号には、1−ブテンと2−ブテンとを含有する混合物のヒドロホルミル化を記載しており、その際、第一工程で1−ブテンを不均一系反応で、従って多相系で、場合により相転移試薬又は可溶化剤を添加して反応させ、そして第二工程では均一に溶解された触媒が使用される。EP0562451号によれば、両方の工程においてロジウム触媒を使用しているが、一方、EP0646563号によれば第一工程でロジウム触媒を使用し、かつ第二工程でコバルト触媒を使用している。EP0562451号によれば、第一工程で反応しなかったオレフィン、主に2−ブテンは第二工程において均一相中で、かつ触媒としてのロジウムの存在下にヒドロホルミル化される。EP0646563号では、この方法は、第一工程で反応しなかったオレフィンが気体状で一酸化炭素、水素及び水素化で生じたブタンと一緒に反応器から出される、すなわちオレフィンの中間分離が行われるという趣旨で述べられている。分離されたガスは、場合により圧縮後に第二のヒドロホルミル化工程に送られる。
GB1387657号では二工程のヒドロホルミル化を記載しており、そこでは第一工程の反応生成物を気体状で排出させ、そしてアルデヒドもしくはアルコールの凝縮後に、未反応のオレフィンを含有する第一工程の排ガスを一方の部分を第一工程に返送し、もう一方の部分を第二の反応器に導いている。
二段階のヒドロホルミル化の更なる変法はDE3232557号に記載されている。第一工程で、オレフィンはコバルト触媒を用いて転化率50〜90%でヒドロホルミル化され、コバルト触媒を反応混合物から分離し、そして形成されたアルデヒドを未反応のオレフィンと一緒に第二のヒドロホルミル化工程に導入している。そこで使用される配位子修飾されたコバルト触媒はオレフィンのヒドロホルミル化に働くだけでなく、同時にアルデヒドをアルコールに水素化することにも働く。
DE10034360号では、炭素原子6〜24個を有するオレフィンをコバルト触媒又はロジウム触媒によりアルコール及び/又はアルデヒドへと多段階でヒドロホルミル化する方法が記載されており、その際、オレフィンを、
a)ヒドロホルミル化段階で、転化率20〜98%までヒドロホルミル化し、
b)こうして得られた液状反応排出物から触媒を除去し、
c)こうして得られた液状ヒドロホルミル化混合物を、オレフィンとパラフィンを含有する低沸点留分並びにアルデヒド及び/又はアルコールを含有する底部留分に分け、低沸点留分中に含まれるオレフィンを、工程段階a、b及びcを含んだ更なる方法工程で反応させ、そして
全ての方法工程の工程段階c)の底部留分を合している。
好ましくは前記方法は、ヒドロホルミル化段階a)の液状反応排出物が均一な液相であるように行われる。コバルト触媒又はロジウム触媒は好ましくは、これらがヒドロホルミル化段階a)の液状反応排出物中に均一に溶解されているように使用される。
DE19842368号A1では、炭素原子5〜24個を有する異性体オレフィンの混合物から、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下に高められた温度及び圧力で高級オキソアルコールを製造する方法を記載しており、そこでは、第一のヒドロホルミル化工程の反応混合物が選択的に水素化され、その水素化混合物を蒸留において粗製アルコールと主にオレフィンからなる低沸点物に分け、前記低沸点物を第二のヒドロホルミル化工程に送り、第二のヒドロホルミル化工程の反応混合物を再び選択的に水素化させ、その水素化混合物を蒸留において粗製アルコールと低沸点物に分け、粗製アルコールを蒸留によって後処理することで純粋なアルコールを得て、そして少なくとも一部の低沸点物を取り出して飽和炭化水素を排出している。
コバルト触媒の存在下でのヒドロホルミル化により得られる有機相中に残留するコバルト触媒の残量は一般にコバルト5ppm未満(金属として計算した)である。この少量のコバルト残量はほとんどが、作業時間が長くなると、水素化にも蒸留による後処理にも悪影響を及ぼすことがある。
使用される水素化触媒は作業時間に従い、有機相中のコバルト残分によって失活されることが確認された。特により長期の作業では、触媒表面にコバルトの堆積が観察された。
触媒失活の他に、コバルトの堆積によって水素化反応器中の流体力学並びに物質輸送及び/又は熱輸送が妨害される。
EP1057803号では、オレフィン又はオレフィン混合物からアルコールを二段階で製造する方法を開示している。そこでは、第一の反応工程で、出発オレフィンはコバルト触媒の存在下で50〜90%までヒドロホルミル化される。触媒の分離後に、反応排出物から未反応のオレフィンを蒸留により分離し、そして分離されたオレフィンを第二のヒドロホルミル化反応器において反応させる。両方の工程からのヒドロホルミル化生成物を水素添加して相応のアルコールを得ることができる。両方の反応工程では、ヒドロホルミル化反応器の外部で製造されたCo(CO)又はHCo(CO)が触媒として使用される。ヒドロホルミル化の反応混合物から、更なる作業前に塩基による抽出によってコバルト触媒を除去する。
文献から最もよく知られたコバルト触媒によるヒドロホルミル化法においては、コバルト触媒(HCo(CO)又はCo(CO))はヒドロホルミル化段階により酸化分解される。これは、一般にヒドロホルミル化排出物と空気との水相の存在下での反応によって引き起こされ、こうして生じたコバルト(II)塩は水相中で抽出される。水相の分離は、例えば相分離容器での傾瀉によるか又はそれに適した別の装置において行われる。有機相は、水相の分離後に接触水素化に供給される。
DE10227995.0号では、ヒドロホルミル化混合物中のコバルト化合物の濃度(金属コバルトとして計算した)を水による抽出によって0.5質量ppm未満に減らしている。これによって、十分な水素化性能の点で水素化触媒の寿命を約2〜3年に至らしめることができる。しかしながら更に、抽出されたヒドロホルミル化混合物の水素化において、第一の触媒層は堆積した金属コバルトと、場合により別の物質によって粘着するという欠点が残っている。これに制約されて、反応器中では圧力差の形成が高まり、そして水素化されるべき液体の流動は後続の触媒層で不均一となるので、水素化性能が低下する。ある時間間隔で水素化を停止させて、第一の触媒層をほぐすか又は新たな触媒と交換せねばならない。
EP0646563号 EP0562451号 GB1387657号 DE3232557号 DE10034360号 DE19842368号A1 EP1057803号 DE10227995.0号
製造停止と費用の制約となる作業中断を避けるために、本発明の課題は、かかる中断を殆ど行う必要がないように方法を改善することであった。
ここで、水素化されるべき混合物を、水素化反応器に入る前に、コバルト化合物が保留した吸着床に流通させると、水素化反応器の第一の触媒層における堆積による圧力差の増大を減らすことができることが判明した。
本発明の対象は、炭素原子7〜25個を有する脂肪族アルコールを、少なくとも一回、これらの工程段階
a)炭素原子6〜24個を有するオレフィンをコバルト触媒によりヒドロホルミル化すること、
b)ヒドロホルミル化混合物をコバルト(II)塩の酸性水溶液の存在下に酸素含有ガスで処理すること、
c)段階b)により得られた混合物をコバルト塩を含有する水相と脂肪族アルデヒドを含有する有機相とに分離すること、及び
d)アルデヒドを含有する有機相を水素化すること
を実施することで製造する方法において、アルデヒドを含有する有機相を、水素化d)の前にコバルト化合物の分離のために少なくとも部分的に段階e)において吸着剤で処理することを特徴とする方法である。
同様に、本発明の対象は、本発明による方法を実施した場合に工程段階e)の実施後に中間生成物として得られる炭素原子7〜25個を有するアルデヒドを有する有機相である。
本発明による方法は、吸着器を使用することによって、有機相中に存在するコバルト触媒の割合を完全にもしくはほぼ完全に除去することができるという利点を有する。前記のように、水素化反応器において触媒残分の堆積により圧力差の形成が高まることと、触媒層において不均一な流動が引き起こされることを防止することができる。従って本発明による方法によって、触媒の補充のための調達コストを所要範囲に制限することができる。更に、頻繁に触媒を設置することについての労務費用が削減される。更に、本発明による吸着器の使用によって、作業中断による製造停止は回避される。水素化触媒としてもはや適していない消耗された水素化触媒も吸着剤として適しているので、消耗された水素化触媒を吸着材料として使用することによって作業費用を更に削減できる。
本発明による方法を以下に例示するが、本発明はこれらの実施態様の例に制限されるものではない。以下に、範囲、一般式又は化合物種を示すときに、これらは詳細に挙げられている化合物の相応の範囲又は群のみが明示されるだけではなく、幾つかの値(範囲)又は化合物を省いて得られる化合物の全ての部分範囲及び部分群も明示していることが望ましい。
炭素原子7〜25個を有する脂肪族アルコールを、少なくとも一回、これらの工程段階
a)炭素原子6〜24個を有するオレフィンをコバルト触媒によりヒドロホルミル化すること、
b)ヒドロホルミル化混合物をコバルト(II)塩の酸性水溶液の存在下に酸素含有ガスで処理すること、
c)段階b)により得られた混合物をコバルト塩を含有する水相と脂肪族アルデヒドを含有する有機相とに分離すること、及び
d)アルデヒドを含有する有機相を水素化すること
を実施することで製造する本発明による方法は、アルデヒドを含有する有機相を、水素化d)の前に、コバルト化合物の分離のために少なくとも部分的に段階e)において吸着剤で処理するという点で優れている。
本発明による方法では、アルデヒドと、場合により水とを含有する有機相からコバルト化合物を分離できる全ての吸着剤を使用できるが、但し、該吸着剤は吸着条件下に有用生成物(アルデヒド、アルコール及びそのギ酸エステル)の反応を(ほぼ)触媒せず、副生成物を生じさせない。
吸着剤は、有利には固体の、アルデヒド相中に、かつ有利には水中にも不溶性の物質である。使用される吸着剤は、例えばコバルト及び、場合により別の金属を結合できる官能基を有する有機樹脂であってよい。前記の結合は、イオン交換、キレート化、別の反応又はそれ以外の配位によって行われうる。
本発明による方法で吸着剤として使用できる物質のもう一つの群は、有利には多孔質であり、従って大きな表面積を有する無機固体である。かかる無機固体は、例えば活性炭又は二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素又はアルミノケイ酸塩であり、種々の変態であってよい。
吸着剤としては、有利には酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、アルミノケイ酸塩又は活性炭又は前記の物質少なくとも1種を含有する材料が使用される。酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩及び酸化ケイ素は、全ての公知の変態で存在してよい。
吸着剤として消耗された又は新しい(水素化)触媒、特に有利には消耗された水素化触媒を使用する場合に好ましいことがある。前記のように、活性不足のため、例えば段階d)における水素化のためにもはや適していない触媒を、アルデヒドを含有する相からコバルト成分を除去するために使用でき、そうして触媒のより長期の寿命が達成される。吸着剤としては、有利には酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、アルミノケイ酸塩又は活性炭を担体材料として有する水素化触媒が使用される。
特に有利には、吸着材料として表面積が大きな材料が使用される。有利な吸着材料は、BET表面積80〜300m/g、有利には120〜280m/g、特に有利には180〜250m/g(BET法によりDIN66131に従って窒素吸着によって測定した)を有する。殊に有利には、吸着材料として、BET表面積80〜300m/g、有利には120〜280m/g、特に有利には180〜250m/gを有する酸化アルミニウムが使用される。
吸着剤は、有利には、低い流動抵抗をもたらす形状、例えば細粒、ペレット又は成形体、例えばタブレット、円筒体、棒状押出物又は環状体の形状で使用される。
液状の有機相からコバルト化合物を吸着するために、本発明では1種以上の吸着剤を使用してよい。例えば吸着剤は種々の形状又は寸法で使用できる。また種々の材料(種々の化学組成又は種々の変態)からなる吸着剤を使用することも可能である。
少なくとも2種の異なる吸着剤を使用する場合に、これらは混合されて又は積層されて吸着器中に存在してよい。複数の吸着器を使用する場合には、個々の吸着器は同一もしくは異なる吸着剤又はそれらの混合物を含有してよい。
更に、吸着剤は不活性材料、例えばガラス球を有してよい。このガラス球によって、吸着剤を希釈することができる。これは、吸着剤の粒子の粘着の危険性を減らし、局所的な過熱(“ホットスポット”)の形成を回避し、そして場合により吸着容器中の圧力差を減らすことができるという利点を有する。場合により、吸着剤は、0.01〜2質量%の塩基性物質、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又は亜鉛の化合物を保持してよい。
段階e)(吸着)は、断続的又は連続的に、例えば撹拌槽又は流通反応器中で実施してよい。本発明による方法では、吸着は、有利には連続的に流通反応器(流管)中で粒状の吸着剤上で行われる。
段階e)は、有利には5〜250℃、有利には10〜100℃、特に有利には15〜75℃、特に好ましくは20〜50℃の範囲の温度で実施される。本発明による方法で段階e)が実施される圧力は、有利には0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜5MPa、特に有利には0.2〜0.5MPaである。
吸着器、従って段階e)を実施できる装置としては、通常の工業用密閉容器であって、該容器の対向位に供給口と排出口を有する容器であってよい。本発明による方法では、吸着器として、特に管形反応器が使用される。これらは、循環様式で又は有利には、直路で稼働されうる。縦型管形反応器は下方から上方へ又はその逆の流通である。本発明による方法では、上方から下方への流動が好ましい。
吸着器中の空塔速度は、有利には10m/h〜300m/hの範囲、有利には50m/h〜150m/hの範囲、特に有利には75〜120m/hの範囲である。吸着剤の比負荷量(LHSV)(有機相の容量のリットル/吸着剤のリットル/時間)は、使用される吸着剤と供給物中のコバルト濃度に依存する。例えば、コバルト濃度50〜150質量ppbで、かつ吸着剤としてγ−酸化アルミニウムの場合に、LHSVは、好ましくは40h−1〜80h−1である。
本発明による段階e)による吸着は、水素を添加しないか又は添加することで実施することができる。特に、段階e)は、段階d)による水素化が実施される反応器の内部又は外部で実施できる。吸着を水素の存在下に実施するのであれば、吸着器は、有利には水素化反応器中に組み込まれる。このことは、例えば水素化反応器が、水素化触媒を備えた帯域と、吸着剤が設けられている帯域の2つの帯域を有し、その際、吸着剤を有する帯域が反応器への供給口と水素化触媒を有する帯域との間に配置されていることによって達成できる。この場合の利点は、1つの装置を削ることができるということである。しかしながら、吸着剤の交換において水素化を中断せねばならないという欠点を有する。従って、吸着は水素化反応器の外部で行うことが適切である。
コバルト化合物の吸着は、1つ又は複数の吸着器中で実施できる。1つだけの吸着器を水素化反応器外部で使用する場合に、吸着剤の交換の際に、水素化を停止することと、より多量のコバルトを水素化触媒に供給することが選択される。両者とも不利である。従って、本発明による段階e)の方法では、有利には少なくとも2つの吸着器を使用して実施される。それというのも、吸着剤の交換又はそれらの再生に基づき、吸着器を運転中止する場合にも、水素化は、コバルト化合物で触媒を付加的に負荷せずには維持することができないからである。
本発明による方法で段階e)の実施のために1つより多くの吸着器が存在するのであれば、これらは互いに様々に連結されてよく、すなわち直列で、並列で又は2つより多くの吸着器が存在する場合には両者の様式を組み合わせて連結されていてよい。全ての吸着器が直列に連結されている場合に、吸着器を運転中止する場合に段階e)を中断する必要がないように、各吸着器は迂回導管を備えていなければならない。
有利には、段階e)は、少なくとも2つの並列に連結された吸着器単位が存在する装置中で実施される。これらの単位は同時に又は有利には交互に稼働されうる。この場合に、各吸着器単位は1つ又は複数の吸着器からなってよい。また2つより多くの吸着器単位が並列で連結されていてもよい。並列に連結された動作様式では、ちょうど稼働していない吸着器単位において吸着剤を交換又は再生することができる。
工程段階e)を実施する際に、コバルト化合物の取り込みについて限界容量に達したら、吸着器は遅くともその際に運転中止せねばならない。運転中止する他の理由は、吸着器の供給口と排出口との間の圧力差の増大であることがある。
吸着器を運転中止した後に、吸着器中のその吸着剤を再生させるか又は新たな吸着剤に交換することができる。本発明による方法では、吸着剤を交換することが好ましい。コバルト化合物で覆われた交換された吸着剤を後処理しても又は廃棄してもよい。
本発明による方法によって段階d)の水素化触媒の寿命を延長できる。それというのもコバルト化合物も、別の金属化合物、特に鉄及びニッケルの化合物も、段階e)の水素化装入物から除去できるからである。更に、第一の触媒層間の圧力差の形成を減らすことができる。それによって、水素化を改訂期間(5年)にわたり中断させずに実施することが可能である。
本発明による方法では、微量のコバルト化合物の分離を段階e)で吸着によって実施する。段階e)で処理されるべき有機相中のコバルト含量に応じて、コバルト化合物の分離は、単に吸着によって行われるか又は選択的に抽出(段階g))と吸着(段階e))を組み合わせて行われるこの場合に抽出は第一工程である。段階e)に供給される混合物から、先行する段階g)において水による1回又は複数回の抽出によって一部のコバルトを除去する二段階の分離は本発明の有利な実施態様である。本発明による方法では、各個別の抽出段階に1つの吸着段階を割り当てる必要はないが、水素化反応器に供給される全有機物流を少なくとも1つの吸着段階(段階e))に流通させることが重要である。
段階g)の実施は先行技術から引き出すことができる。脱触媒されたヒドロホルミル化混合物中のコバルト残分を抽出によって減少させることは、例えば特許出願DE10227995号に記載されている。そこに記載される抽出は、段階g)の可能な一実施態様として本願の開示の構成要素であることが望ましい。
DE10227995号では、有機相を水で抽出することによって、有利には連続的に向流において慣用の工業用抽出器中でコバルト化合物の濃度(金属コバルトとして計算した)を好ましくは0.5質量ppm未満にまで減らしている。コバルト濃度が非常に低い有機物流を、有利には段階e)に供給する。
本発明による段階e)を、場合により事前の段階g)による処理と共に使用することによって、段階d)の水素化に供給されるべき有機相中のコバルト含分を、有利には30質量ppb(30*10−9)未満まで、好ましくは20質量ppb未満まで、特に有利には10質量ppb未満まで減らすことができる。本発明による方法の中間生成物として、工程段階e)の実施後に、少なくとも1種の炭素原子7〜25個を有するアルデヒドを含有する有機相が得られる。このアルデヒドを含有する有機相はまさに指摘したコバルトの割合を有する。
吸着段階e)の他に、本発明による方法は前記のように段階a)〜d)を有する。これらの段階は、先行技術に又は以下に記載のように実施できる。
本発明による方法のための出発材料としては、炭素原子6〜24個、有利には炭素原子8〜16個、好ましくは炭素原子8〜12個を有するオレフィン又はその混合物又はかかるオレフィンを有する混合物を使用できる。該混合物は末端C−C二重結合及び/又は内部C−C二重結合を有するオレフィンを有してよい。混合物は、炭素原子数(C数)が同一、類似(±2)又は明らかに異なる(>±2)オレフィンを有するか、又はこれらからなってよい。純粋形でも、異性体混合物でも、又は別のC数の更なるオレフィンとの混合物でも出発材料として使用できるオレフィンとして、例えば1−ヘキセン、2−ヘキセンもしくは3−ヘキセン、1−ヘプテン、内部二重結合を有する直鎖状ヘプテン(2−ヘプテン、3−ヘプテンなど)、直鎖状ヘプテンの混合物、2−メチル−1−ヘキセンもしくは3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、内部二重結合を有する直鎖状オクテン、直鎖状オクテンの混合物、2−メチルヘプテンもしくは3−メチルヘプテン、1−ノネン、内部二重結合を有する直鎖状ノネン、直鎖状ノネンの混合物、2−メチルオクテン、3−メチルオクテンもしくは4−メチルオクテン、1−デセン、2−デセン、3−デセン、4−デセンもしくは5−デセン、2−エチル−1−オクテン、1−ドデセン、内部二重結合を有する直鎖状ドデセン、直鎖状ドデセンの混合物、1−テトラデセン、内部二重結合を有する直鎖状テトラデセン、直鎖状テトラデセンの混合物、1−ヘキセデセン、内部二重結合を有する直鎖状ヘキセデセン、直鎖状ヘキセデセンの混合物が挙げられる。好適な出発材料は、更にとりわけ、プロペンの二量化において生ずる異性体ヘキセン(ジプロペン)の混合物、ブテネンの二量化において生ずる異性体オクテン(ジブテン)の混合物、プロペンの三量化において生ずる異性体ノネン(トリプロペン)の混合物、プロペンの四量化又はブテネンの三量化において生ずる異性体ドデセン(テトラプロペンもしくはトリブテン)の混合物、ブテネンの四量化において生ずるヘキサデセン混合物(テトラブテン)並びに種々のC数(有利には2〜4)を有するオレフィンのコオリゴマー化の後に、場合により同一又は類似(±2)のC数を有する留分に蒸留分離して製造されるオレフィン混合物である。更に、フィッシャー・トロプシュ合成によって製造されたオレフィン又はオレフィン混合物を使用してよい。更にオレフィンメタセシス又は別の工業法によって製造されたオレフィンを使用してよい。有利な出発材料は、異性体オクテン、異性体ノネン、異性体ドデセン又は異性体ヘキサドデセン、すなわち低級オレフィンのオリゴマー、例えばn−ブテネン、イソブテン又はプロペンの混合物である。同様に非常に適した別の出発材料は、Cオレフィンからなるオリゴマー、例えば異性体デセンの混合物である。
ブテネンをオリゴマー化して、主にCオレフィンを含有する混合物を得るために、原則的に、3種の変法が存在する。酸性触媒でのオリゴマー化は長い間知られており、その際、工業的には、例えばゼオライト又は担体上のリン酸が使用される。この場合に、分枝鎖状オレフィン、主にジメチルヘキセンの異性体混合物が得られる(WO92/13818号)。同様に世界中で実施されている方法は、DIMERSOL法として知られる、可溶性Ni錯体によるオリゴマー化である(J. Shulze, M. Homann, “C4-Hydrocarbons and Derivates”、Springer出版、ベルリン、ハイデルベルク 1989、第69頁、及びB. CORNILS, W. A. HERRMANN, “Applied Homogeneous Catalysis with Organicmetallic Compounds”;第1巻及び第2巻、VCH、ヴァインハイム、ニューヨーク 1996年を参照)。第三の変法は、ニッケル固定床触媒でのオリゴマー化である;この方法の1つはOCTOL法(Hydrocarbon Process., Int. Ed. (1986) 65 (2. Sect.1) Seiten 31 - 33)であり、この場合に有利にはEP0395857号に記載されるようなニッケル触媒が使用される。特に可塑剤の製造に適したCアルコール混合物の本発明による製造のために、有利には直鎖状ブテネンからOCTOL法により得られたCオレフィン混合物が使用される。
a)ヒドロホルミル化反応
段階a)によるオレフィンのヒドロホルミル化は、本発明による方法ではコバルト触媒、有利には未修飾の触媒、例えばHCo(CO)及び/又はCo(CO)と水の存在下に行われる。事前に形成された触媒又は反応器中で本来の触媒が生ずる触媒前駆体、例えばコバルト化合物のいずれかをヒドロホルミル化反応で使用してよい。
完成した活性触媒(例えばHCo(CO)及び/又はCo(CO))を使用する場合には、水、オレフィン、合成ガス及び活性触媒を、ヒドロホルミル化が実施される反応器に供給する。この場合に水は既に、反応器以前にオレフィン中に、例えばスタティックミキサーを使用して分散されていてもよい。しかしながら、全ての成分をまず反応器中で混合することも可能である。
ヒドロホルミル化反応器中の水の量は、広い範囲で変動しうる。水とオレフィンの量比の調整及び反応パラメータ、例えば温度の調整によって、液状のヒドロホルミル化排出物中に水が均一に溶解されているか又は付加的に分散されていることがある。
本発明による方法では、有利には段階a)において触媒(HCo(CO)及び/又はCo(CO)はまずヒドロホルミル化反応器中で作成される。このようなヒドロホルミル化法の実施はDE19654340号に記載されている。前記の方法を実施する場合に、出発物質、例えばコバルト塩溶液、有機相及び合成ガスは同時に、有利には混合ノズルを用いて順流で下方から反応器中に導入される。
コバルト化合物として、有利には水溶性のギ酸塩、酢酸塩又はカルボン酸の塩などのコバルト塩が使用される。特に、金属として計算してコバルト含量0.5〜3質量%、有利には0.8〜1.8質量%を有する水溶液として使用される酢酸コバルトが選択された。触媒の製造に更に有利な出発溶液は、分離段階c)で生ずるコバルト塩水溶液である。
ヒドロホルミル化反応器に望まれる水量はコバルト塩溶液と一緒に導入してよく、その濃度は広範に変動してよい。しかしながら、コバルト塩溶液の他に付加的な水を供給することも可能である。
コバルト触媒による方法では出発物質を反応器に計量供給することが特に重要であるとすべきである。計量供給装置は、良好な相混合とできる限り高い相交換面積の生成を保証することが望ましい。更に、ヒドロホルミル化反応器の反応器空間は、反応物流と生成物流の流動方向に対して垂直に配置された1〜10個、有利には2〜4個の多孔板を取り付けることによって区分することが好ましいことがある。反応器をカスケードにすることによって、簡単な気泡塔に対して逆混合が回避され、そして流動挙動は管形反応器のそれにほぼ一致する。このプロセス技術的措置により、ヒドロホルミル化の収率も選択性をも改善することができることとなる。
ヒドロホルミル化段階a)の実施の更なる有利な実施態様は、例えばDE19939491号又はDE10135906号から引き出すことができる。こうして、DE19939491号によれば、反応器の下方部から液状の混合相(コバルト塩水溶液/有機相)の部分流を取り出し、そしてより高い反応器位置で再び供給している。DE10135906号によれば、ヒドロホルミル化反応器において水相の状態は一定に保持されている。水性の底部相におけるコバルト化合物の濃度(金属のコバルトとして計算した)は、有利には0.4〜1.7質量%である。
有利には、工程段階a)は温度100〜250℃、有利には140〜210℃で実施される。工程段階a)が実施される圧力(合成ガス圧力)は、有利には10〜40MPa、好ましくは20〜30MPaである。合成ガス中の一酸化炭素と水素との容量比は、有利には2:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.5である。合成ガスは、有利には過剰に、例えば化学量論量の3倍まで使用される。
本発明による方法では、1回又は複数回の工程段階a)が存在してよい。本発明による方法で複数回のヒドロホルミル化段階a)が存在するのであれば、これらの工程段階では同一又は異なる条件が設定されてよい。多工程の変法では、ヒドロホルミル化は、反応性の高いオレフィンを反応させる第一の方法工程で、有利には温度140〜195℃、好ましくは160〜185℃で実施される。複数の方法工程の第一工程では、有利にはオレフィン転化率20〜95%、好ましくは50〜80%を指針とする。
液状のヒドロホルミル化排出物において、コバルト化合物の濃度(金属のコバルトとして計算した)は、有利には0.01〜0.5質量%、好ましくは0.02〜0.08質量%(有機相と水相との合計に対して)である。
水を添加する様々な可能性によって、ヒドロホルミル化反応器の供給物中の含水量は規定が困難である。従って、以下に反応器からの排出物に関して説明するが、その際、反応器排出物中の含水量は実質的に反応の間の液相の含水量と同義である。液状のヒドロホルミル化排出物中の水濃度は、0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%であってよい。個々のヒドロホルミル化工程のヒドロホルミル化排出物の含水量は、同一又は異なってよい。水は液状のヒドロホルミル化排出物中に均一に溶解されていることが好ましい。
段階a)のヒドロホルミル化が実施される反応器は、複数の工程段階a)が存在する場合には、全ての工程段階で同一又は異なってよい。使用可能な反応器型のための例は、気泡塔反応器、ループ型反応器、噴射ノズル反応器、撹拌反応器及び管形反応器であり、これらは部分的にカスケード構造であるか及び/又は内部構造体を備えていてもよい。
b)触媒分離
例えば段階a)から得られたヒドロホルミル化混合物の段階b)による処理(脱コバルト)のために、生成物排出物をヒドロホルミル化反応器を出た後に、有利には1〜3MPaに減圧し、そしてコバルト(II)塩の酸性水溶液(“プロセス水”)の存在下に酸素含有ガス、特に空気又は酸素と反応させ、そしてこうして酸化的にコバルト−カルボニル錯体を除去する。段階b)は、有利には温度90〜160℃、好ましくは110〜150℃で反応される。ヒドロホルミル化に活性なコバルトカルボニル錯体は分解され、こうしてコバルト(II)塩が形成される。脱コバルト法はよく知られており、文献において、例えばJ. FALBE著“New Syntheses with Carbon Monoxide”, Springer Verlag (1980), Berlin, Heidelberg, New York, Seite 158 ffに詳細に記載されている。使用されるコバルト(II)塩の酸性水溶液は、有利にはpH値1.5〜4.5を有している。
段階b)による処理は、有利には、充填体、例えばラシヒリングで充填された、できる限り高い相交換面積を生ずる圧力容器中で実施される。
c)b)からの混合物の分離
段階b)により得られる、コバルト低減された有機の脂肪族アルデヒドを含有する相とコバルト豊富な水相とからなる混合物を、段階c)において、有利には段階b)の圧力容器に後接続された分離容器中で水相と有機相とに分離する。逆抽出され有機相から回収された酢酸コバルト/ギ酸コバルトの形のコバルトを含有する水相“プロセス水”を、全て又は低い割合の排出後に段階a)に返送してよい。有利には、水相を直接的にそれぞれの方法工程のヒドロホルミル化反応器に返送し、そしてコバルト触媒錯体のその場での製造のための出発物質として使用することができる。
場合により、プロセス水を段階a)に返送する前に一部の過剰なギ酸を除去してよい。これは、例えば蒸留によって行ってよい。別の可能性としては、一部のギ酸を、例えばDE10009207号に記載のように触媒的に分解することもある。更に、脱コバルトの際に生ずるコバルト塩溶液から、予備カルボニル化によって本来のヒドロホルミル化触媒(Co(CO)及び/又はHCo(CO))を製造し、これを段階a)で使用することも可能である。
d)水素化
段階d)によるアルデヒド含有相の水素化は、気相又は液相中で実施できる。有利には段階d)による水素化は液相水素化として実施される。有利には液相水素化は全圧0.5〜10MPa、好ましくは1.5〜5MPaで実施される。気相中での水素化は、より低い圧力でも実施できるが、相応して大きな気体容量を伴う。複数の水素化反応器を使用する場合には、それらの全圧は同一又は異なってよく、その際、個々の反応器中の圧力は前記の圧力範囲内にあるべきである。
段階d)による水素化が実施される温度は、液相又は気相において、有利には120〜220℃、特に有利には140〜180℃である。本発明による方法において段階d)として使用できる水素化のための例は、例えば特許出願DE19842369号及びDE19842370号に記載されている。
本発明による方法では、水素化は場合により水の存在下に実施できる。必要とされる水は反応器供給物中に含まれていてよい。しかしながら、水を好適な位置で水素化装置中に供給することも可能である。段階d)を気相水素化として実施する場合には、水を水蒸気の形で供給することが適切である。段階d)として本発明による方法で使用できる有利な水素化法は、例えばDE10062448号に記載されるような、水を添加しながらの液相水素化である。水素化は、有利には含水量0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、特に有利には1〜2.5質量%で実施される。含水量は水素化排出物中で測定される。
触媒としては、前記の公知法で使用される触媒を使用できる。有利には、段階b)による水素化のために、例えば銅触媒、ニッケル触媒、銅/ニッケル触媒、銅/クロム触媒、銅/クロム/ニッケル触媒、亜鉛/クロム触媒、ニッケル/モリブデン触媒が使用される。これらの触媒は担体不含であるか、又は水素化に活性な物質もしくはそれらの前駆体を担体、例えば酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム又は二酸化ケイ素上に施与されていてよい。
段階d)で使用される有利な触媒は、担体材料、有利には酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素上に、それぞれ、0.3〜15質量%の銅及びニッケルを含有し、かつ賦活剤として0.05〜3.5質量%のクロム、有利には0.01〜1.6質量%、好ましくは0.02〜1.2質量%のアルカリ成分、例えばナトリウム又はカリウムを含有する。量の指示は、まだ還元されていない触媒に対するものである。アルカリ成分は随意である。
触媒は、有利には、低い流動抵抗をもたらす形状、例えば細粒、ペレット又は成形体、例えばタブレット、円筒体、棒状押出物又は環状体の形状で使用される。これらを、その使用前に、例えば水素流中での加熱によって活性化させることが適切である。
f)蒸留による分離
本発明による方法において段階c)とd)との間に段階f)を設け、そこで段階c)で得られた有機相を、例えば蒸留において低沸点留分とアルデヒドを含有する底部留分とに分離する場合に好ましいことがある。段階c)により得られる有機相は、未反応のオレフィン、アルデヒド、アルコール、ギ酸エステル及び高沸点物並びに微量のコバルト化合物を有してよい。段階f)において、前記の相を、低沸点物を含有する、特に未反応のオレフィンを含有する留分と、特に有用生成物(アルデヒド、アルコール及びギ酸エステル)を含有する底部留分とに分離する。低沸点物とヒドロホルミル化生成物との分離は、例えば蒸留又は水蒸気蒸留によって実施できる。
低沸点留分(頂部留分)は、段階a)で反応しなかったオレフィンを含有し、そしてオレフィンの水素化によって生じたパラフィン、溶解された水及び、場合により少量の有用生成物を有することがある。有利には、低沸点留分はヒドロホルミル化段階に返送される。異なる反応工程で複数のヒドロホルミル化段階a)が存在する場合に、低沸点留分を後続の反応工程のヒドロホルミル化段階に送るか、又は直前の反応工程のヒドロホルミル化に返送してよい。
随意の段階f)は段階e)の前又は後に実施してよい。有利には、段階f)は段階e)の前に実施されるので、段階c)からの有機相は蒸留段階f)で低沸点留分とアルデヒドを含有する底部留分に分離され、そしてアルデヒドを含有する底部留分は段階e)に供給される。前記のように、吸着器に送られる材料の量は減少する。
本発明による方法は1つ又は複数の工程を含んでよく、これらの工程はそれぞれ1つ又は複数の段階a)、b)、c)、d)、e)及び場合によりf)を有し、その際、本発明による方法では全ての工程の全体では各段階a)〜e)は少なくとも1回は適用されもしくは経過する。これらの工程は、特に段階d)、e)及び/又はf)が方法全体で1回だけ存在する一方で、段階a)〜c)は複数の工程において、従って複数回存在するように配置される。
本発明による方法を一工程で実施する場合に、段階c)で分離された有機相を全体又は部分的に工程段階e)かf)のいずれかに送ることができる。有機相を部分的にのみ再送して、他に蓄積する脂肪族化合物のための排出口を設けることが好ましい。
本発明による方法を2工程、3工程、4工程又は4工程より多い工程で実施する場合に好ましいことがある。本発明による方法は、各方法工程と工程段階に関して連続的又は断続的に実施できる。有利には、全ての工程段階は連続的に実施される。
以下に、複数の工程で実施する本発明による方法の幾つかの実施態様を記載するが、本発明はこれらの実施態様に制限されるものではない。
実施態様1
この実施態様では、少なくとも2つの反応工程が実施され、その際、段階f)で分離された低沸点留分を後続の反応工程の段階a)に導入し、そして全ての反応工程の段階f)で分離されたアルデヒドを含有する底部留分を共通の段階d)において水素化させる。従って、この変法では、段階a)、b)、c)及びf)は連続的に実施され、そしてアルデヒド留分の水素化の段階d)だけは全ての反応工程について共通に行われる。
本発明による方法の実施態様1の一変法をブロック図として図1に示す。段階a)は、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水)並びにコバルト化合物又はコバルト触媒と水の水溶液4が供給される第一のヒドロホルミル化反応器1中で実施される。こうして得られたヒドロホルミル化混合物5を段階b)に減圧供給し、そして減圧供給されたヒドロホルミル化混合物を容器7においてコバルト(II)塩の酸性水溶液と空気とで処理する。容器7中で得られた混合物から段階c)において第一の触媒分離8においてコバルト化合物4を除去する。減圧ガス6(消耗されていない合成ガス)を触媒分離8前に取り出す。コバルト化合物を含有する水相を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第一のヒドロホルミル化反応器1に返送する。触媒とは、ここでは触媒の前駆物質、例えばコバルト(II)塩溶液を指す。触媒が除去された有機相9は、そこから蒸留塔10に至り、そこで分離段階f)を実施し、そして有機相を、主に未反応のオレフィンからなる低沸点留分11と粗製アルデヒド12とに分離する。低沸点物11、合成ガス14及びコバルト化合物又は既に形成されたコバルト触媒と水の水溶液16を第二のヒドロホルミル化反応器13に導入する(第二工程の段階a))。第二のヒドロホルミル化反応器13からのヒドロホルミル化混合物15を再び減圧供給し、そして減圧供給されたヒドロホルミル化混合物15から第二の脱コバルト18(第二工程の段階b))の後に第二の触媒分離19において触媒16を除去し(第二工程の段階c))、それを再び、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第二のヒドロホルミル化反応器13に返送する。減圧ガス17(消耗されていない合成ガス)を触媒分離19前に取り出す。脱触媒されたヒドロホルミル化混合物20を蒸留塔12(第二工程の段階f))中で、主に飽和炭化水素からなる低沸点留分22と粗製アルデヒド23とに分離する。場合により低沸点留分22の一部を反応器13に返送してよい(導管は図1に示さず)。蒸留塔10及び21(段階f))からの底部留分(粗製アルデヒド)を合し、そして吸着器28(段階e))を介して水素化単位24に供給し、そこで粗製アルデヒドを工程段階d)で水素により水素化させて、アルコール25を得て、これを場合により示されていない蒸留において後処理することで、純粋なアルコールを得ることができる。
この本発明の実施態様では、各方法工程は、1つのヒドロホルミル化段階a)、1つの脱コバルト段階b)、1つの触媒分離段階c)及び1つの分離段階f)を有するが、但し、c)で分離された触媒は直接的に又は後処理後に、それぞれの方法工程のヒドロホルミル化段階a)に返送される。随意に、この変法はまた、第二の方法工程が分離段階f)を有さず、そしてヒドロホルミル化混合物20を導管29を介して直接的に吸着器28に供給して、工程段階e)が実施される。
少量のコバルト化合物の有機相もしくはアルデヒド含有留分からの本発明による分離はこの変法の1つ又は複数の位置で可能である。こうして、段階e)を、吸着器28が設けられている位置で実施できるだけでなく、段階e)は付加的に又は吸着器28の位置で両方の段階c)の後で、8もしくは19における水相を分離した後に随意の吸着器26及び27で又は蒸留塔10及び21においてアルデヒドを含有する底部留分を低沸点留分から分離した後に随意の吸着器30及び31でも実施できる。有利には、段階e)による少量のコバルト化合物の分離を一回だけ、直接的に水素化工程前に、すなわち吸着器28中で実施する。
実施態様2
この本発明による方法の実施態様では、2つの反応工程が実施され、その際、第一の反応工程の段階f)で分離された低沸点物を第二の反応工程の段階a)に導入し、かつ両方の工程の段階c)の有機排出物を第一の反応工程の段階f)に導入する。ここでは、各反応工程は、1つのヒドロホルミル化段階a)、1つの脱コバルト段階b)及び1つの触媒分離段階c)を有し、その際、分離された触媒相はそれぞれのヒドロホルミル化段階に返送される。分離された有機相を、両方の反応工程に共通の分離段階f)において低沸点留分とアルデヒドを含有する下位留分に分離する。こうして得られた低沸点物留分を第二の反応工程のヒドロホルミル化段階a)に導入し、分離された底部留分を吸着段階e)に導入し、引き続き水素化段階d)に導入する。
この本発明による方法の実施態様の変法のブロック図を図2に示す。第一の方法工程のヒドロホルミル化反応器1に、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水素)並びにコバルト化合物又はコバルト触媒の水溶液を水と一緒に供給する。
第一工程の段階a)で得られたヒドロホルミル化混合物5を減圧供給し、そして減圧供給されたヒドロホルミル化混合物から、コバルト(II)塩の酸性水溶液と空気を用いて実施された段階b)による処理(脱コバルト)7の後に、段階c)による第一の触媒分離8においてコバルト化合物4を除去する。減圧ガス6(消耗されていない合成ガス)を触媒分離8前に取り出す。コバルト塩を含有する水相を、場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第一のヒドロホルミル化反応器1に返送する。段階c)による分離で得られた脱コバルトされた有機相9を蒸留塔10(段階f))に導入する。そこで、前記有機相を第二のヒドロホルミル化反応器13からの脱コバルトされたヒドロホルミル化混合物20と一緒にし、未反応のオレフィン及び不活性パラフィンを含有する留分11と粗製アルデヒド12とに分離する。低沸点留分11を、部分流33を排出した後に、飽和炭化水素(パラフィン)とその他の非オレフィン性化合物とを分離するために、合成ガス14並びにコバルト化合物の水溶液又はコバルト触媒と水とからなる混合物16と一緒に、第二のヒドロホルミル化反応器13に供給して、第二工程の段階a)を実施する。こうして得られたヒドロホルミル化混合物15を減圧供給し、そして減圧供給されたヒドロホルミル化混合物から、段階b)による脱コバルト18の後に段階c)による第二の触媒分離19において触媒16を除去し、これを場合により少量の部分流を排出し、新たな触媒で補充した後に、第二のヒドロホルミル化反応器13に返送する。減圧ガス17(消耗されていない合成ガス)を触媒分離19前に取り出す。脱コバルトされた第二のヒドロホルミル化混合物20を、前述のように第一工程のヒドロホルミル化混合物9と一緒に分離工程10に供給する。段階f)の蒸留塔で底部留分として生ずる粗製アルデヒド12から、段階e)による吸着器28において、残りのコバルトを除去し、そして引き続き水素化単位24において水素を用いて水素化して、粗製アルコール25を得る。このアルコールを、示されていないが蒸留において後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
吸着器28において段階e)を実施する代わりに又はそれに加えて、段階e)は、第一工程と第二工程の分離段階c)からの有機相9及び32を一緒にした後に、段階f)の蒸留塔10に供給する前に吸着器26において実施することもできる。
飽和炭化水素の排出は、部分流33を介さなくても、脱コバルトされたヒドロホルミル化生成物20の部分流を後処理することによって実施できる(示さず)。このことは、工業的には、例えばこの部分流を蒸留により低沸点物とアルデヒドとに分離して、前者を排出し、そして後者を脱コバルトされたヒドロホルミル化混合物20又は粗製アルデヒド12に返送することによって実現できる。
この本発明による方法の実施態様は、それぞれの方法工程について、1つのヒドロホルミル化段階a)、1つの脱コバルト段階b)並びに1つの触媒分離段階c)を有し、その際、合された液状のヒドロホルミル化混合物は共通の蒸留段階f)において低沸点留分と底部留分とに分離される。段階c)で分離された触媒は、直接的に又は後処理後にそれぞれの方法工程のヒドロホルミル化段階a)に返送できる。
実施態様3
この本発明による方法の実施態様では、2つの反応工程を通過し、その際、第一の反応工程の段階f)で分離された低沸点物を第二の反応工程の段階a)に導入し、かつ両方の工程について段階b)、c)及びd)は一緒に実施される。
この本発明による方法の実施態様の変法をブロック図として図3に示す。第一のヒドロホルミル化反応器1に、オレフィン混合物3、合成ガス2(一酸化炭素及び水素)並びにコバルト化合物の水溶液又はコバルト触媒の混合物及び部分流4を供給する。第一の反応工程の段階a)でこうして得られたヒドロホルミル化混合物5を、第二のヒドロホルミル化反応器13(第二の方法工程の段階a))からのヒドロホルミル化混合物15と一緒に、合されたヒドロホルミル化排出物として減圧供給し、そして脱コバルト7(段階b))の後に有機相から、段階c)による触媒分離8において触媒を除去する。消耗されていない合成ガス6を触媒分離8前に取り出す。形成されたアルデヒド、アルコール及び未反応のオレフィンを含有する混合物9が得られる。触媒を、場合により部分量を排出し、新たな触媒で補充した後に、両方の部分流4と34に分配する。部分流4を、第一の方法工程のヒドロホルミル化反応器1に返送し、そして部分流34を、第二の方法工程のヒドロホルミル化反応器13に返送する。脱コバルトされたヒドロホルミル化排出物9を、工程段階a)の蒸留塔10において、低沸点留分11と粗製アルデヒド(底部留分)12に分離する。未反応のオレフィンを含有する低沸点留分11を、場合により部分量33を排出した後に、飽和炭化水素又はその他の非オレフィン性化合物の分離のために、合成ガス14及びコバルト化合物の水溶液又はコバルト触媒と水34とからなる混合物と一緒に、第二のヒドロホルミル化反応器13(第二の方法工程の段階a))に導入する。粗製アルデヒド12から、吸着器28中で段階e)においてコバルトを十分に除去し、そして引き続き、水素化単位24において水素を用いて水素化して、粗製アルコール25を得る。これを、示されていないが蒸留において再び後処理して、純粋なアルコールを得ることができる。
吸着器28において段階e)を実施する代わりに又はそれに加えて、段階e)は、有機相9を段階f)の蒸留塔10に供給する前に吸着器21において実施してもよい。
また、この本発明による方法の実施態様では、飽和炭化水素の排出を、ヒドロホルミル化混合物15の部分流の別個の後処理を介して、例えば低沸点物の蒸留による分離によって実施することが可能である。
この本発明による方法の第三の実施態様は、全てのヒドロホルミル化段階a)の合された反応排出物は、1つだけの脱コバルトb)及び1つだけの触媒分離段階c)及び1つだけのオレフィン分離段階f)を通過することを特徴とする。工程段階c)で分離された触媒を、直接的に又は後処理の後に分け、そして個々の方法工程のヒドロホルミル化段階a)に返送する。
次の実施例は本発明を詳説するが、明細書及び特許請求の範囲から生じる本発明の適用領域を制限するものではない。
実施例1
吸着器(内径50mmを有する管)中に、直径1.2mm及び長さ2〜10mmを有する円筒状押出物として存在する2lの水素化触媒H14154(供給会社Degussa AG、デュッセルドルフ)(1400g)を充填した。吸着器層の長さは従って102cmであった。縦型吸着器に、イソノナナール装置(Isononanal-Anlage)からの、コバルト化合物含量(コバルトとして示す)75質量ppb(75*10−9g/g)を有するヒドロホルミル化混合物を空塔速度61m/h(これは空管における約110l/hの体積速度に相当する)で圧通させた。吸着器を温度70℃及び3.1MPa(絶対圧)で稼働させた。吸着器を上方から下方へ流通させた。
283mのヒドロホルミル化混合物を吸着剤に流通させた後に、吸着器を開き、全吸着剤を交互混合させずに8箇所の塔区分で取り出した。各塔区分に、吸着塔内部の位置と平均床位置、つまり流入側面からの距離を割り当てることができた。8つの試料それぞれを乾燥させ、均質化させ、引き続きこれらの試料において分光測定(AAS)でコバルト濃度を測定し、次いでそれぞれの塔区分におけるコバルトの絶対量及び平均比負荷量(使用される吸着剤のグラムに対するコバルトのグラム)を計算した。以下の表にこれらの値をまとめた。
第1表:実施例1の評価の結果
Figure 0005382978
試験の間に、ヒドロホルミル化混合物と一緒に、全体で17.025gのコバルトを含有するコバルト化合物を吸着器に導入した。そのうち15.322gが吸着された。これは、90%の保留率に相当する。抽残液中のコバルト含量はわずか7.5質量ppbであった。従って、この試験は、工業的条件下での吸着によっても微量範囲でコバルト含量を少ない出費で明らかに低減できるということを示している。良好な似通った結果は、活性が不足している故に水素化触媒としてもはや適さない水素化触媒を使用した場合にも得られる。
実施例2
実施例1と同じ装置を使用した。該装置をChemviron社製の2lの活性炭で充填した。吸着のために、同じ出発材料を同じ空間速度と同じ温度で吸着管中に流通させた。647m(519t)のヒドロホルミル化混合物を通過させた後に、全吸着剤に対するコバルト量を測定した。この量は3.3gであった。
実施例3
実施例3は実施例2と同様に実施した。吸着剤として、二酸化ケイ素(Kalichemie社製のKC−Siliperl AF 125)を使用した。1060m(850t)のヒドロホルミル化混合物を通過させた後に、1.6gのコバルトが吸着された。
これらの3つの実施例は、コバルト化合物を微量範囲(ppb濃度範囲)で含有するヒドロホルミル化混合物において吸着によりコバルト含量を低下させることができることが示される。このために特に良好に適した吸着剤は、Al担体を有する水素化触媒H14154である。
図1は実施態様1の一変法のブロック図を示す 図2は実施態様2の一変法のブロック図を示す 図3は実施態様3の一変法のブロック図を示す
符号の説明
1 ヒドロホルミル化反応器、 2 合成ガス、 3 オレフィン混合物、 4 コバルト化合物の水溶液、 5 ヒドロホルミル化混合物、 6 減圧ガス、 7 容器、 8 触媒分離、 9 有機相、 10 蒸留塔、 11 低沸点留分、 12 粗製アルデヒド、 13 ヒドロホルミル化反応器、 14 合成ガス、 15 ヒドロホルミル化混合物、 16 コバルト化合物の水溶液、 17 減圧ガス、 18 脱コバルト、 19 触媒分離、 20 ヒドロホルミル化混合物、 21 蒸留塔、 22 低沸点留分、 23 粗製アルデヒド、 24 水素化単位、 25 アルコール、 26 吸着器、 27 吸着器、 28 吸着器、 29 導管、 30 吸着器、 31 吸着器、 32 有機相、 33 部分流、 34 部分流

Claims (14)

  1. 炭素原子7〜25個を有する脂肪族アルコールを、少なくとも一回、これらの工程段階
    a)炭素原子6〜24個を有するオレフィンをコバルト触媒によりヒドロホルミル化すること、
    b)ヒドロホルミル化混合物をコバルト(II)塩の酸性水溶液の存在下に酸素含有ガスで処理すること、
    c)段階b)により得られた混合物をコバルト塩を含有する水相と脂肪族アルデヒドを含有する有機相とに分離すること、及び
    d)アルデヒドを含有する有機相を水素化すること
    を実施することで製造する方法において、アルデヒドを含有する有機相を、水素化d)の前にコバルト化合物の分離のために、少なくとも部分的に段階e)において吸着剤で処理し、有機相が30質量ppb未満のコバルトの割合を有することを特徴とする方法。
  2. 吸着剤として、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、アルミノケイ酸塩又は活性炭又は前記の物質少なくとも1種を含有する材料を使用する、請求項1記載の方法。
  3. 吸着剤として、工程d)で使用した、又は、工程d)で使用する(水素化)触媒を使用する、請求項1又は2記載の方法。
  4. 酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、アルミノケイ酸塩又は活性炭を担体材料として含有する水素化触媒を使用する、請求項3記載の方法。
  5. 段階e)を温度5〜250℃で実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 段階e)を圧力0.1〜20MPaで実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
  7. 段階e)を、水素を添加せずに又は水素を添加して実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 段階e)を、段階d)による水素化が実施される反応器の内部又は外部で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  9. 段階e)を1つ又は複数の吸着器において実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  10. 段階e)を2つの並列に互いに連結された吸着器単位において実施し、その際、各吸着器単位が1つ又は複数の吸着器からなってよい、請求項9記載の方法。
  11. 段階e)を、少なくとも2つの並列に連結された吸着器単位が存在し、かつ両方の吸着器単位が交互に稼働される装置において実施する、請求項9記載の方法。
  12. ちょうど稼働していない吸着器単位において、吸着剤を交換又は再生させる、請求項11記載の方法。
  13. 段階e)に供給される混合物から、先行する段階g)において一部のコバルトを1回又は複数回の水による抽出によって除去する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. c)からの有機相を蒸留段階f)において低沸点留分とアルデヒドを含有する底部留分とに分離し、そしてアルデヒドを含有する底部留分を段階e)に供給する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
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