JP5382606B2 - 半導体用ホウ素ドープ材の製造方法 - Google Patents

半導体用ホウ素ドープ材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体へホウ素をドーピングするためのドープ材の製造方法に関するものである。具体的には、ホウ素を含有したガラス粉末を、スラリー化し、グリーンシート成形した後に焼結してウェハ状とする半導体用ホウ素ドープ材の製造方法に関するものである。
従来、シリコン基材等にホウ素をドーピングするための半導体用ホウ素ドープ材としては、チッ化ホウ素粉末を焼結させてなるものやホウ素を含有するガラス成形体を結晶化させてからウェハ状に切断してなる結晶化ガラスタイプのものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ドーピングの方法としては、酸化雰囲気下において半導体用ホウ素ドープ材の表面を加熱してBを揮発させ、対向して設置されたシリコンウェハなどの基材表面にBを堆積させ、基材内部に拡散させるという方法が採られる。
半導体用ホウ素ドープ材の要求特性として、(1)ドープ材と対向してセットされたシリコンウェハなどの基材へホウ素が十分に拡散するように、加熱により材料表面からホウ素が揮発すること、(2)繰り返しの使用に耐えうること、(3)揮発するホウ素の量が使用毎に安定していること、(4)基材と同じ形状に加工することが容易であることなどがあげられる。
特開2002−93734号公報
チッ化ホウ素粉末焼結体からなる半導体用ホウ素ドープ材は、ホウ素の揮発量が過剰であることから、ホウ素のドーピング設備のクリーニングを頻繁に行う必要があり、またドーピング工程におけるシリコンウェハなどの基材へのダメージが大きいといった問題がある。さらに、半導体用ホウ素ドープ材は、ホウ素の揮発が十分行われるように、通常、使用前に熱処理を行うが、チッ化ホウ素粉末を焼結させてなるドープ材の場合、その熱処理を概ね使用前に毎回行う必要がある。
一方、結晶化ガラスを用いたドープ材の場合、基材へのダメージは比較的少なく、使用前の熱処理も最初に1回行えば、その後はほとんど不要であるという利点がある。しかしながら、前記条件(3)を満たすためには、ガラスを均一に溶融して目的の形状となるように鋳込む必要がある。ところが、特に大口径のウェハを作製するために大型の鋳込み体を製造する際には、泡や鋳込み体の失透等のコントロールが難しくなってくるため均一な結晶化ガラスを得るのは困難である。また、設備等にコストがかかるという問題がある。
したがって、本発明は、材質が均一であり、揮発するホウ素の量が使用毎に安定しており、かつ安価な半導体用ホウ素ドープ材を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を、スラリー化し、グリーンシート成形した後に焼結してウェハ状とすることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。ここで、「ホウ素含有結晶性ガラス粉末」とは、組成としてホウ素を含有するガラス粉末であって、熱処理により結晶を析出する性質を有するものをいう。
すなわち、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む原料粉末をスラリー化する工程、得られたスラリーを成形してグリーンシートを得る工程、およびグリーンシートを焼結する工程を含むものである。
本発明の製造方法は、鋳込み成形されたガラス成形体を結晶化する従来の方法と異なり、グリーンシート成形されたガラス粉末の焼結および結晶化により半導体用ホウ素ドープ材を製造することを特徴としている。ここで、ガラス粉末は、ガラス原料粉末を溶融してガラス化した後、成形、粉砕、分級して得られたものが用いられる。したがって、溶融後に得られる原料ガラスが泡や脈理を含んでいたり、均一性に劣ったものであったとしても、その後、粉砕、分級、焼結の工程を経ることにより、これらの問題が解消され、均一なガラス焼結体を得ることができる。このように、本発明の製造方法によれば、ガラスの製造の際、泡、脈理、均一性の制御を精密に行う必要がなくなり、その結果、溶融コストを抑えることができる。
従来の製造方法により口径の大きいウェハを作製する場合、ガラス成形体の熱容量が大きくなり、冷めにくくなるため不当な失透物が析出しやすくなる。そうすると、その後の結晶化工程において、当該失透物が核となって大きい結晶が析出しやすくなり、均一な結晶が得られにくいという問題があった。したがって、大口径、具体的には直径100mm以上の長尺の半導体用ホウ素ドープ材を作製することが困難であった。しかしながら、本発明の製造方法によれば、作製するグリーンシートの大きさに応じて、所望の大きさの半導体用ホウ素ドープ材を容易に製造することが可能となる。また、グリーンシートの厚さを調節したり、複数のグリーンシートを積層させて焼結させることで、所望の厚さを有する半導体用ホウ素ドープ材を容易に得ることが可能になる。
さらに、従来の製造方法では、結晶化ガラス鋳込み体をウェハ状に切断する必要があったが、本発明の製造方法によると、ウェハ状に切断する際の切断ロスがなくなるため、材料効率が上がり、低コストにて半導体用ホウ素ドープ材の製造が可能になる。
第二に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、グリーンシートを積層させて焼結することを特徴とする。
第三に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、ホウ素含有結晶性ガラス粉末の平均粒子径D50が、0.1〜10μmであることを特徴とする。
第四に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、ホウ素含有結晶性ガラス粉末が、ガラス組成としてBを15〜45質量%含有することを特徴とする。
第五に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、ホウ素含有結晶性ガラス粉末が、B−SiO−Al系ガラスまたはB−Al−BaO系ガラスであることを特徴とする。ここで、「B−SiO−Al系ガラス」とは、ガラス組成としてB、SiOおよびAlを必須成分として含有するガラスをいう。また、「B−Al−BaO系ガラス」とは、ガラス組成としてB、AlおよびBaOを必須成分として含有するガラスをいう。
第六に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、原料粉末がアルミナ粉末を1〜60質量%含有することを特徴とする。
原料粉末がアルミナ粉末を含有する場合、得られる半導体用ホウ素ドープ材の機械的強度や耐熱性をさらに向上させることが可能となる。特に、大口径の半導体用ホウ素ドープ材とした場合であっても、使用時に反りが発生しにくく、耐熱性に優れているという利点がある。
第七に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、グリーンシートの厚さが30〜1500μmであることを特徴とする。
第八に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、スラリーの粘度が1〜50Pa・sであることを特徴とする。
第九に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、異なる成分を含有する2種以上のグリーンシートを積層させることを特徴とする。
異なる成分を含有する2種以上のグリーンシートを積層させることにより、例えば、ホウ素揮発能を維持しながら機械的強度または耐熱性の優れた半導体用ホウ素ドープ材を作製することが可能となる。
第十に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、アルミナ粉末からなるグリーンシートを積層させることを特徴とする。
このような構成とすることにより、特に、大口径の半導体用ホウ素ドープ材とした場合であっても、使用時に反りが発生しにくく、耐熱性に優れているという利点がある。
第十一に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材は、前記いずれかの製造方法により製造されてなることを特徴とする。
第十二に、本発明は、複数の無機粉末焼結体層からなる積層体構造を有する半導体用ホウ素ドープ材であって、無機粉末焼結体層の一部または全部が、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む無機粉末の焼結体からなることを特徴とする半導体用ホウ素ドープ材に関する。
第十三に、本発明の半導体用ホウ素ドープ材は、厚さ0.5〜10mm、直径50〜300mmであることを特徴とする。
本発明の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法は、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む原料粉末をスラリー化する工程、得られたスラリーを成形してグリーンシートを得る工程、およびグリーンシートを焼結する工程を含むことを特徴とする。
本発明において、原料粉末としては、ホウ素含有結晶性ガラス粉末が主成分として用いられる。結晶性ガラスを用いることにより、結晶化ガラス焼結体からなる半導体用ホウ素ドープ材を得ることができ、加熱によるホウ素揮発時に十分な耐熱性を維持することができる。半導体用ホウ素ドープ材をウェハ状に切断して使用する場合においても、熱による軟化、変形を防止することができる。
ホウ素含有結晶性ガラス粉末におけるBの含有量は、15〜45質量%であることが好ましく、18〜40質量%であることがより好ましい。Bの含有量が15質量%未満であると、基材へのホウ素の揮発量が不十分となる、また揮発温度が高くなるなどの傾向がある。一方、Bの含有量が45質量%を超えると、加熱によるホウ素揮発時の半導体用ホウ素ドープ材の強度に劣り、熱処理時に反りやすくなる傾向がある。
ホウ素含有結晶性ガラス粉末の具体例としては、特に限定されないが、例えばB−SiO−Al系ガラス、B−Al−BaO系ガラスなどが挙げられる。これらのガラスを用いれば、耐熱性が高く、かつホウ素の揮発量が多い半導体用ホウ素ドープ材を得られやすい。
ホウ素含有結晶性ガラス粉末の平均粒子径D50は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜8μmであることがより好ましく、1〜5μmであることがさらに好ましい。平均粒子径D50が0.1μmより小さいと、粉砕が難しくなり、製造コストが大きくなるとともに、成形が困難となる傾向がある。一方、平均粒子径D50が10μmより大きいと、グリーンシートの緻密性が低下し、焼結が不十分となる傾向がある。
なお、本発明において、平均粒子径D50はレーザー回折散乱法を用いた測定装置で測定したものをいう。
本発明において、半導体用ホウ素ドープ材の機械的強度および耐熱性を向上させるために、原料粉末にアルミナ粉末を含有してもよい。アルミナ粉末の含有量は、原料粉末において1〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。アルミナ粉末の添加量が1質量%未満であると、所望の効果が得られにくい。一方、アルミナ粉末の添加量が60質量%を超えると、焼結が不十分になる傾向がある。
なお、アルミナ粉末以外の金属酸化物粉末や、シリカ粉末、ガラス粉末などを適宜添加しても構わない。その場合の添加量は、原料粉末中に合量で30質量%以下であることが好ましい。これらの添加量が30質量%を超えると、焼結が不十分になる傾向がある。
ホウ素含有結晶性ガラス粉末は、Bを含む原料粉末を調合してバッチとし、例えば1600℃前後の温度で約1時間溶融してガラス化した後、成形、粉砕、分級することによって得ることができる。
ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む原料粉末に対して、結合剤、可塑剤、溶剤等を添加および混錬することにより、スラリーとすることができる。
結合剤としては、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂は、乾燥後の膜強度を高め、また柔軟性を付与する成分であり、その含有量は、5〜30質量%程度が一般的である。熱可塑性樹脂としては、ポリブチルメタアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチルメタアクリレートなどのアクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチルセルロース等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
可塑剤は、乾燥速度をコントロールするとともに、乾燥膜に柔軟性を与える成分であり、その含有量は0〜10質量%程度が一般的である。可塑剤としては、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジカプリルフタレート、ジブチルフタレート等が使用可能であり、これらを単独あるいは混合して使用することができる。
溶剤は材料をペースト化するための材料であり、その含有量は10〜50質量%程度が一般的である。溶剤としては、例えばターピネオール、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノイソブチレート等を単独または混合して使用することができる。
得られたスラリーを、例えばドクターブレード法によって、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の機械的、熱的安定性に優れたフィルムの上にシート成形し、シート成形後、乾燥させることによって溶媒や溶剤等を除去し、グリーンシートとすることができる。
グリーンシート中に占める原料粉末の割合は、60〜95質量%程度が一般的である。
グリーンシートの厚さは、30〜1500μmであることが好ましく、50〜1000μmであることがより好ましく、100〜500μmであることがより好ましく、150〜300μmであることが最も好ましい。グリーンシートの厚さが30μmより薄くなると、支持フィルムからの剥離や、複数のグリーンシートを積層させる場合に破れやすくなる傾向がある。一方、グリーンシートの厚さが1500μmより厚くなると、シート化の際にクラックが入りやすくなる。
ドクターブレードする際のスラリーの粘度は1〜50Pa・sであることが好ましく、2〜30Pa・sであることがより好ましく、3〜20Pa・sであることがさらに好ましい。スラリー粘度が1Pa・sより低くなると、シート成形時にクレータの発生や膜厚のバラツキが大きくなりやすい。一方、スラリー粘度が50Pa・sより高い場合にはスラリーの流動性が悪くなり、シート上にムラやスジが入ったりして均一な膜が得られにくく、また配管や容器へのスラリーの付着量が多くなり、材料ロスが大きくなる傾向がある。スラリーの粘度は、結合剤、可塑剤、溶剤の添加量を適宜選択することにより調整することができる。
本発明においては、得られたグリーンシートを積層および熱圧着することで任意の厚さのウェハを作製することが可能となる。積層させる枚数は、グリーンシートの厚さに応じて、例えば2〜100枚、好ましくは5〜50枚の範囲で適宜選択すればよい。
なお、単一の組成を含有するグリーンシートを複数積層させてもよいが、異なる成分を含有する2種以上のグリーンシートを積層させてもよい。例えば、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を主成分とするグリーンシートと、フィラーを含有するグリーンシートまたはアルミナ粉末からなるグリーンシートを積層させることにより、ホウ素揮発能を維持しながら機械的強度および耐熱性の優れた半導体用ホウ素ドープ材を作製することが可能となる。
得られたグリーンシートは、必要に応じて所望の形状に打ち抜きされる。グリーンシートを積層させる場合は、所望の形状に打ち抜き後に積層させてもよいし、積層させた後に打ち抜きを行ってもよい。
その後、グリーンシートを焼結することにより半導体用ホウ素ドープ材を得ることができる。焼結温度としては、1000〜1300℃であることが好ましく、1100〜1200℃であることがより好ましい。焼結時間は焼結温度に応じて、例えば0.5〜10時間、さらには1〜8時間の範囲で適宜調整される。
焼結工程において、ホウ素含有結晶性ガラス粉末が結晶化される。そのため、得られる半導体用ホウ素ドープ材は、使用時において耐熱性が維持され、ウェハの軟化、変形を制御することが可能となる。
本発明の半導体用ホウ素ドープ材は、複数の無機粉末焼結体層からなる積層体構造を有し、無機粉末焼結体層の一部または全部が、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む無機粉末の焼結体からなることを特徴とする。各無機粉末焼結体層は、半導体用ホウ素ドープ材の製造工程における各グリーンシートの焼結体に由来するものである。
本発明の半導体用ホウ素ドープ材の構造としては、単一の組成を含有するホウ素含有結晶性ガラス粉末の焼結体層を複数積層してなる構造、異なる組成を含有する2種以上のホウ素含有結晶性ガラス粉末の焼結体層を複数積層してなる構造が挙げられる。その他にも、ホウ素含有結晶性ガラス粉末の焼結体層とフィラーを含有するホウ素含有結晶性ガラス粉末の焼結体層を積層してなる構造、ホウ素含有結晶性ガラス粉末の焼結体層とアルミナ粉末の焼結体層を積層してなる構造などが挙げられ、当該構造とすれば、ホウ素揮発能を維持しながら機械的強度および耐熱性の優れた半導体用ホウ素ドープ材とすることが可能となる。
本発明の半導体用ホウ素ドープ材の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。半導体用ホウ素ドープ材の厚さが0.5mm未満であると、機械的強度および耐熱性に劣る傾向にあり、10mmを超えると、取り扱いが困難となる傾向がある。
半導体用ホウ素ドープ材の形状は特に限定されないが、例えば、円盤状、矩形状のものがあげられる。半導体用ホウ素ドープ材の大きさは、用途に応じて適宜選択され、例えば、その形状が円盤状の場合、直径が50〜300mmであることが好ましく、100〜200mmであることがより好ましい。また、矩形状の場合、一辺の長さが50〜300mmであることが好ましい。前述したように、本発明の製造方法によると、大口径の半導体用ホウ素ドープ材を容易に製造することが可能となる。具体的には、直径100mm以上の半導体用ホウ素ドープ材を作製するのに好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜5)
各試料は以下のようにして調製した。まずガラス原料を調合してバッチとし、白金坩堝に入れて1600℃で1時間溶融してガラス化した。続いて、この溶融ガラスを水冷ローラーによってフィルム状に成形した後、ボールミルにて粗砕し、さらにアルコールを加えて湿式粉砕を行って平均粒子径D50が3μmのホウ素含有結晶性ガラス粉末(ホウ素含有量25質量%のB−SiO−Al系ガラス)を得た。
次に、得られたホウ素含有結晶性ガラス粉末に結合剤、可塑剤および溶剤を添加して表1に示す粘度を有するスラリーを調製した。
次に、ブレードを有するスラリーダムにスラリーを注入し、一定方向に移動させたキャリアフィルム上に成膜することにより、ブレードとキャリアフィルムの隙間にほぼ対応する厚さのグリーンシートを連続的に形成した。
その後、熱風または赤外線でグリーンシート中の有機溶剤を蒸発、乾燥させた。次いで、キャリアフィルムからグリーンシートを剥離し、積層させ、熱圧着した。次いで、所定寸法に切断後、900℃〜1300℃で焼結して結晶化させ、表1に記載の厚さを有する焼結体(半導体用ホウ素ドープ材)を得た。
なお、実施例4では、ホウ素含有結晶性ガラス粉末のみからなるグリーンシートと、ホウ素含有結晶性ガラス粉末80質量%およびアルミナ粉末20質量%を含有する原料粉末からなるグリーンシートを、交互に積層することにより半導体用ホウ素ドープ材を作製した。
また、実施例5では、ホウ素含有結晶性ガラス粉末のみからなるグリーンシートと、アルミナ粉末からなるグリーンシートを、交互に積層することにより半導体用ホウ素ドープ材を作製した。
得られた半導体用ホウ素ドープ材の耐熱性について、次のように評価を行った。各半導体用ホウ素ドープ材を40mm×20mmの矩形状に加工し、スパン30mmの支持台にのせて中央に15gの加重をかけ、加熱した。試料全体を1200℃、さらに1300℃まで昇温した。その際、1300℃で変形しなかったものを「◎」、1200℃で変形しなかったが1300℃で変形したものを「○」、1200℃で変形したものを「×」として評価を行った。
また、目視でグリーンシートの外観を観察し、クラックおよびスジの有無を確認した。クラックおよびスジについて、確認できなかったものを「○」、確認されたものを「×」として評価を行った。
表1から明らかなように、実施例の半導体用ホウ素ドープ材は耐熱性に優れたものであった。特に、ホウ素含有結晶性ガラス粉末からなるグリーンシートと原料粉末にアルミナ粉末を含有するグリーンシートを交互に積層させた実施例4、および、ホウ素含有結晶性ガラス粉末からなるグリーンシートとアルミナ粉末からなるグリーンシートを積層させた実施例5では耐熱性が特に良好であった。また、各実施例において、グリーンシートにクラックやスジが確認されなかった。
(実施例6〜8)
実施例1〜5と同様の製造方法にて、厚さ200μmのグリーンシートを得た。なお、スラリー粘度は10Pa・sとした。
得られたグリーンシートを積層し、熱圧着した。次いで、口径150mmのウェハー状に切断後、900〜1300℃で焼結して結晶化させ、表2に記載の厚さを有する焼結体を得た。
なお、実施例6では、ホウ素含有結晶性ガラス粉末80質量%およびアルミナ粉末20質量%を含有する原料粉末からなるグリーンシートを積層することにより半導体用ホウ素ドープ材を作製した。
また、実施例7および8では、ホウ素含有結晶性ガラス粉末のみからなるグリーンシートと、アルミナ粉末からなるグリーンシートを、交互に積層することにより半導体用ホウ素ドープ材を作製した。
得られた半導体用ホウ素ドープ材について、次のようにして耐熱性試験を行った。
半導体用ホウ素ドープ材を石英ボート上に載置し、熱処理炉にて昇温し、1150℃で10時間の保持、その後室温まで降温した。この加熱プロファイルを10回繰り返した後、半導体用ホウ素ドープ材の反りを確認した。半導体用ホウ素ドープ材の反りは、定盤の上に半導体用ホウ素ドープ材を静置し、半導体用ホウ素ドープ材外周部と定盤の隙間に隙間ゲージを差込んで測定した。半導体用ホウ素ドープ材の反りが1mm未満のものを「○」、1mm以上のものを「×」として反り評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1)
まずガラス原料を調合してバッチとし、白金坩堝に入れて1600℃で1時間溶融してガラス化した。続いて、この溶融ガラスを成形体の中で鋳込み、アニールすることにより円柱状の鋳込み体(ホウ素含有量25質量%のB−SiO−Al系ガラス)を得た。得られた鋳込み体に対して熱処理を行い、ガラスを結晶化させ、表2に記載の口径および厚みに切断し、半導体用ホウ素ドープ材を得た。
得られた半導体用ホウ素ドープ材について、実施例6〜8と同様にして耐熱性試験を行った。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例6〜8では、耐熱性が良好な大口径の半導体用ホウ素ドープ材が得られていることがわかる。特に、実施例7および8では、厚みが2mm以下と薄いにもかかわらず、良好な耐熱性を有していた。一方、比較例1の半導体用ホウ素ドープ材は、3mmの厚みでも耐熱性に劣るものであった。

Claims (13)

  1. ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む原料粉末をスラリー化する工程、得られたスラリーを成形してグリーンシートを得る工程、およびグリーンシートを焼結する工程を含む半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  2. グリーンシートを積層させて焼結することを特徴とする請求項1に記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  3. ホウ素含有結晶性ガラス粉末の平均粒子径D50が、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  4. ホウ素含有結晶性ガラス粉末が、ガラス組成としてBを15〜45質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  5. ホウ素含有結晶性ガラス粉末が、B−SiO−Al系ガラスまたはB−Al−BaO系ガラスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  6. 原料粉末がアルミナ粉末を1〜60質量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  7. グリーンシートの厚さが30〜1500μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  8. スラリーの粘度が1〜50Pa・sであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  9. 異なる成分を含有する2種以上のグリーンシートを積層させることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  10. さらに、アルミナ粉末からなるグリーンシートを積層させることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の半導体用ホウ素ドープ材の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかの製造方法により製造されてなる半導体用ホウ素ドープ材。
  12. 複数の無機粉末焼結体層からなる積層体構造を有する半導体用ホウ素ドープ材であって、無機粉末焼結体層の一部または全部が、ホウ素含有結晶性ガラス粉末を含む無機粉末の焼結体からなることを特徴とする半導体用ホウ素ドープ材。
  13. 厚さ0.5〜10mm、直径50〜300mmであることを特徴とする請求項11または12に記載の半導体用ホウ素ドープ材。
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