JP5382104B2 - パネル評価方法 - Google Patents
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Description
上記張り剛性を高めるためには、パネルの部品形状を最適化することが有効な手段である。特にパネルの曲率は張り剛性に対して大きな影響を与える。
これに対し、特許文献1には、パネル上の任意の位置の最大曲率と最小曲率の和を一定とすることで、パネル上の張り剛性が一定となるように設計をすることが記載されている。
また特許文献2では、ルーフパネル中央の車体左右方向の曲率半径と車体前後方向の曲率半径との積、ヤング率、及び板厚から張り剛性を算出する方法が記載されている。
一方、特許文献2については、該特許文献2に記載されている式から、車体前後方向の曲率半径と車体左右方向の曲率半径との積が等しければ張り剛性は等しいことが読み取れる。しかし特許文献1の場合と同様に、車体前後方向の曲率半径と車体左右方向の曲率半径の積が等しいという条件では荷重−変位曲線の経路は様々に異なるため、車体前後方向の曲率半径と車体左右方向の曲率半径の積が等しくても、張り剛性が等しいとは必ずしも言えない。
本発明は、上記のような点に着目したもので、簡便に且つより精度良くパネル部品の張り剛性を評価することを目的としている。
パネル部品に設定した評価位置における、パネル部品の最大曲率半径である第1曲率半径と、その最大曲率半径の曲率方向に直交する方向の曲率半径である第2曲率半径とを求め、その求めた第1曲率半径と第2曲率半径との比である曲率比を求めると共に、上記評価位置におけるパネル部品の板厚を求め、上記求めた曲率比と板厚を用いて、上記評価位置における荷重−変位特性を求めることを特徴とする。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載のパネル評価方法によって複数の評価位置を評価することで、補強位置を決定することを特徴とする。
(評価対象)
本実施形態では、全体として一方の面側に凸形状となっているパネル部品として、自動車用パネル部品であるルーフパネル(以下単にパネルと呼ぶ)を評価対象とする。評価対象は、ドアパネルでも良いし、自動車パネル部品以外のパネル部品でも良い。全体として一方の面側に凸形状となっているパネル部品であれば、つまり一部に凹の曲率が存在していても、全体の輪郭形状としては凸の曲率で形成されていれば適用可能である。なお、凸側から荷重負荷を行う場合とする。
また、以下の方法で評価するパネルには、レインフォースメントやリブなどの補強部材が設けられていない状態とする。若しくは、補強部材が設けられていても補強部材による影響が低い位置を評価位置とする。
図1は、本実施形態の張り剛性評価方法を使用したパネル設計方法の手順を説明する概略フローチャート図である。
まず、ステップS10にて、評価するパネルの形状を初期設定して、パネルのモデルを決定する。パネル形状として具体的に、パネルの曲率半径、板厚を設定する。ここで、パネルの曲率半径はパネル上で一律である必要はなく、分布を持っていてもよい。
次に、ステップS30にて、ステップS20で設定した複数の評価位置についてそれぞれ、以下の曲率半径、板厚の値を求める。
各評価位置において、最小曲率の向きを求め、更にその最小曲率の曲率半径である最大曲率半径を求めて、その曲率半径を第1曲率半径として設定する。更に、上記最小曲率の向きに直交する方向での曲率半径を求め、その求めた曲率半径を第2曲率半径として設定する。また、各評価位置における板厚を求める。
測定する際は、3点ゲージを用いる、3次元形状測定器を用いる、等の手段により曲率半径を測定することができる。板厚は、マイクロメータや超音波板厚計等の手段により求めることができる。
曲率比 =(第2曲率半径/第1曲率半径)
次に、ステップS50にて、各評価位置毎に、ステップS40にて求めた曲率比、ステップS30にて求めた板厚を、下記式に代入して、各評価位置での荷重−変位曲線をそれぞれ求める。
P =P1×Pr(d)×(2.9438×t3+0.1875) ・・・(1)
但し、
なお、張り剛性の低い位置が、目標とする最低張り剛性よりも低い場合には、その張り剛性の低い位置が目標とする最低張り剛性以上となる曲率比を、上記式から逆算して求め、上記初期設定を更新して、上記ステップS10〜S60の処理を繰り返しても良い。
ここで、上記処理は、一連のソフトとしてコンピュータに組み込んでおいても良い。
上記処理のように、評価位置の曲率半径から簡易かつ所定の精度をもって張り剛性の評価を行うことが出来る。この結果、パネルに対する補強が必要な位置を決定することも出来る。
なお、上記式における、各定数は、一度、実際にパネル上の測定点の曲率半径を測定し、測定点に変位を与え荷重を測定する作業を複数点に行う実験、もしくは前記実験と同様の手法を用いた解析により求めておけば良い。
次に、上記式の妥当性について補足説明する。
発明者らは、張り剛性に与える形状の効果を調査するため、有限要素解析にて調査、検討を行った。
方法としては、図3に示すような、投影面積が500mm×500mmのパネルであり、x方向及びy方向にそれぞれ一律な曲率半径を持った上側に凸のパネルのモデルを作製した。図3では、横方向にx軸を縦方向にy軸を設定した。そして、上記モデルの中央を点負荷で垂直下方に変位させることで荷重−変位曲線を得て、x方向,y方向それぞれの曲率半径と荷重−変位関係とを整理した。
またこのとき、材料特性は、弾性率(ヤング率):210GPa、YP(降伏強度):285MPa、TS(引張強度):345MPa、 uEL(一様伸び):20.1%とした。
なお、モデルの四辺の拘束は、500mm×500mmのサイズの場合、変位が2mmまでの解析であれば中央部の荷重−変位関係に殆ど影響を及ぼさないことを確認した。
曲率半径:500mm,1000mm,1500mm,2000mm,5000mm,10000mm,15000mm,20000mmの8通り。
まず、発明者らは、ある変位を与えた際に生じる荷重について整理を行った。すなわち、各設定したx方向曲率半径(Rx)毎に、y方向曲率半径(Ry)を変更して、そのRyと1mm変位時の荷重の関係を求めたところ、図4に示す関係を得た。なお、図4の横軸は、後の整理のため、曲率を1000倍したρy(=1000/Ry)としている。
さらに、発明者らは、図4に示される曲線について、Rx,Ryを使用して、以下の式によって表現できるという知見を得た。
ρx =1000/Rx
ρy =1000/Ry
f1(ρx)=aa・ρx 2 +ab・ρx +ac
f2(ρx)=ab・ρx 2 +bb・ρx +bc
f3(ρx)=ac・ρx 2 +bc・ρx +cc
P1 =f1(ρx)・ρy 2+f2(ρx)・ρy+f3(ρx)
ここでaa〜ccは、表1に示される定数である。
P1は、負荷する荷重を示す。また、表2は、有限要素解析で求めた値である。
以上のように、Rx、Ryを用いて1mm変位時の荷重を回帰することができた。
様々な試行と解析の結果から、荷重−変位曲線の形状は、RxとRyの比率に対し相関が強いという知見を得た。更に、荷重−変位曲線は、曲率比及び変位を変数とした4次関数以上の次数の式で近似することで、より精度の良い近似が可能であるという知見を得た。
以上をまとめると、曲率の付いたパネルの荷重(P)−変位(d)曲線は、直交する二つのRをRx、Ryとすると、下記式で表現することができる。
P =P1×Pr(d) ・・・(2)
ただし、
aa〜nbを表1および表3に示す。
また、(Rx/Ry)≦1とする。
なお、表1および表3に記載の係数は、板厚0.65mmの鋼板の場合での値である。すなわち、目的のパネルの材質に応じて、予め上記定数aa〜nbの値を求めておけば良い。
ここで、一般に材料力学的な見地から、張り剛性は板厚の3乗にほぼ比例する事が知られている。
そこで、図6のドアのモデルに対して、アウターパネルの板厚を変化させ、張り剛性の解析を行った。
ここで、板厚0.65mmのときに予め設定した量だけ変位させるのに必要な荷重をP(0.65)、同じ位置を板厚t(mm)とした場合の、予め設定した量だけ変位させるのに必要な荷重をP(t)とすると、P(t)はP(0.65)を用いて以下の式で表すことが出来る。
・・・(3)
式(3)中のP(0.65)は式(2)中のPと同一である。このため、最終的に曲率半径、板厚を用いて荷重(P)−変位(d)曲線を特定する式は、下記式となる。
P=P(0.65)×(2.9438×t3+0.1875)
=P1×Pr(d)×(2.9438×t3+0.1875)
・・・(4)
となる。
この(4)式は、曲率比と変位を変数とした4次式の関数となっている。
本実施例は、評価するパネルとして自動車用のドアパネルの場合である。
(評価方法)
図8は、評価試験を説明する断面模式図である。
張り剛性試験は、試験装置に対し対象とするドアパネルを水平に固定し、図8に示すように、ドアパネルのアウターパネル側からインナーパネル側に向かう方向に高さ16mm、φ45mmのゴム圧子を用いて荷重を負荷し、ドア裏側から接触式変位計を測定位置に当て変位を測定することで、各測定位置における荷重−変位曲線を得た。このとき、試験装置へのドアパネルの設置はアウターパネル測定位置に対して圧子が垂直に当たるように行い、アウターパネルのほぼ四隅にあたる点を万力で固定して行った。
比較対象とした評価位置は、インパクトビームによる補強がほとんど影響しないであろう「A」、「B」の2点とした(図9参照)。
Aの位置の曲率半径はそれぞれRx=3000mm、Ry=5000mmであり、Bの位置の曲率半径はRx=3500mm、Ry=50000mmである。アウターパネルの板厚は0.7mmである。Rxが第2曲率半径、Ryが第1曲率半径である。
図10に、上記評価試験による測定結果、上記実施形態によって求めたグラフを示す。
図10に示す結果から分かるように、本発明技術を適用することで、曲率、板厚のみにより、精度良く、荷重−変位曲線が表現出来ていることが分かる。
図10から分かるように、最大曲率半径、及びそれと直交する方向の曲率半径をもって計算を行ったほうが、より精度良く実験結果を予測していることが分かる。
また図10中に特許文献2に記載の式に上記曲率半径、板厚を代入して得た曲線を比較例2として併記する。比較例2では、荷重−変位曲線の初めの傾きは再現できているが、変位が大きくなるに従って実験結果との乖離が大きくなり、張り剛性を精度よく予測できているとは言えない。
H 評価位置
Rx、Ry 曲率半径
Claims (3)
- 全体として一方の面側に凸形状となっているパネル部品の張り剛性を評価するパネル評価方法であって、
パネル部品に設定した評価位置における、パネル部品の最大曲率半径である第1曲率半径と、その最大曲率半径の曲率方向に直交する方向の曲率半径である第2曲率半径とを求め、その求めた第1曲率半径と第2曲率半径との比である曲率比を求めると共に、上記評価位置におけるパネル部品の板厚を求め、
上記求めた曲率比と板厚を用いて、上記評価位置における荷重−変位特性を求めることを特徴とするパネル評価方法。 - 上記曲率比と板厚を用いて求める荷重−変位特性は、曲率比および変位を変数とした4次関数で表される式によって求めることを特徴とする請求項1に記載したパネル評価方法。
- 請求項1又は請求項2に記載のパネル評価方法によって複数の評価位置を評価することで、補強位置を決定することを特徴とするパネル評価方法。
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