JP6246074B2 - 高張力鋼板の引張圧縮試験方法 - Google Patents

高張力鋼板の引張圧縮試験方法 Download PDF

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Description

本発明は、高張力鋼板に対する引張圧縮の試験を行う方法に関する。
従来より、自動車などの車両の主要構造部材(例えば、フレームなど)に用いられる板材は、高強度の鋼材が採用されている。ところが、近年では自動車などの車両の軽量化要請などに伴い、従来と同じ強度を確保した軽量の鋼板が必要となってきた。
このような従来と同じ強度を確保した軽量の鋼板としては、高張力鋼板などが挙げられる。高張力鋼板は、引張強度が500〜1000MPaといった高強度の薄鋼板である。
しかしながら、高強度の高張力鋼板ほど延性が低下するものであり、この高張力鋼板を用いてプレス成形した際には、寸法精度の不良が発生する可能性がある。プレス成形時にdc発生する寸法精度の不良の原因の1つとしては、例えば、スプリングバックが挙げられる。
スプリングバックとは、プレス成形により発生した残留応力を有する被加工材(高張力鋼板)がプレス金型から離脱される際に弾性回復して、その被加工材の形状が変化する特性のことである。このスプリングバックは、プレス成形直後の被加工材の残留応力と、その被加工材固有の物性値であるヤング率に依存する。
スプリングバック対策としては、スプリングバックを予測しておき、その予測結果を基にプレス金型の形状を設計する「金型の見込み」が一般的に行われている。この金型の見込み量を決定するためには、高精度のスプリングバックの予測が重要となる。
スプリングバックを精度よく予測するためには、バウシンガー効果を考慮した材料モデルを用いるとよいことがわかっている。
バウシンガー効果とは、被加工材に付与する負荷が引張から圧縮に変更する場合に、引張変形時に達した応力値より低い応力で再降伏し塑性変形する現象のことである。
このような、負荷方向が反転した時(例えば引張→圧縮)の降伏応力や加工硬化特性であるバウシンガー効果は、スプリングバックの予測する際に考慮する必要がある。
例えば、プレス成形では、「曲げ−曲げ戻し」といったひずみ履歴が発生するため、バウシンガー効果を考慮した材料モデルを用いることがスプリングバックの予測精度の向上に有効である。特に、高張力鋼板の場合、高強度であるためバウシンガー効果も大きくなる。そのため、バウシンガー効果を考慮した材料モデルは必須である。
上記したバウシンガー効果を材料モデルに反映させるべく、バウシンガー効果のパラメータを算出するには、実際に被加工材にバウシンガー効果を起こさせる「引張圧縮試験(反転負荷試験)」を行う必要がある。
引張圧縮試験方法としては、特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1には、試験片の試験部に引張から圧縮へと、圧縮から引張へとの何れかの負荷繰り返し試験を行う引張圧縮試験方法であって、試験片の試験部長さLと試験部幅Wの関係と試験部肩Rを設定し、試験片の側面に抵抗溶接にて接合した伸び計保持金具に伸び計を弾性体で固定し、試験片をその厚さ方向両側から座屈防止治具と座屈防止ベース治具とで挟み、バネで座屈に抵抗する力を発生させた状態下で、前記試験部に前記負荷繰り返し試験を施す引張圧縮試験方法が開示されている。
特開2014−20940号公報
しかしながら、特許文献1の技術などを用いて、鋼板の引張圧縮試験を行う際には、圧縮時に座屈が発生する虞がある。特に、高張力鋼板(ハイテン材)の場合、変形抵抗が大きく圧縮時に座屈が発生する可能性が高い。
高張力鋼板の引張圧縮試験の圧縮試験時に発生する座屈を防止するためには、引張圧縮試験に用いる試験片における試験部位(平行部)の長さを短くすることが有効である。
ところが、試験部位(平行部)の長さを短くした試験片であると、高張力鋼板の引張圧縮試験の引張試験時においては、形状因子に起因する応力集中により試験片が局所変形してしまい、試験片に生じるひずみや応力の正確な測定を行うことが困難である。
また、座屈応力を向上させるために、座屈を防止する冶具などを用いて引張圧縮試験(特に圧縮試験)を行う方法もあるが、新たに冶具を用意しなければならないため、引張圧縮試験装置が複雑な構成となり、引張圧縮試験が煩雑となる虞がある。たとえ、座屈を防止する冶具を用いて、高張力鋼板の引張圧縮試験を行っても、試験片と冶具との摩擦の影響により、引張圧縮試験を正確に行えない虞がある。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、高張力鋼板の引張圧縮試験において、圧縮試験時の座屈を防止すると共に、引張試験時に局所変形を抑制することができ、精確な材料特性を測定可能とする高張力鋼板の引張圧縮試験方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法は、引張圧縮試験の試験部位である平行部と、前記平行部の両端側に設けられ、且つ当該平行部より幅広に形成されているチャック部と、を有する高張力鋼板の試験片を用いて、引張圧縮試験を行う試験方法において、前記平行部の長さLと、当該平行部の幅Wとの比率が、2.4≦L/≦3.4とされていることを特徴とする。
本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法によれば、高張力鋼板の引張圧縮試験において、圧縮試験時の座屈を防止すると共に、引張試験時に局所変形を抑制することができ、精確な材料特性が測定可能となる。
本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法に用いられる試験片の形状を示した図である。 試験部位(平行部)の長さL=14mmの場合における、真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeの関係を示した図である。 試験部位(平行部)の長さL=24mmの場合における、真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeの関係を示した図である。 試験部位(平行部)の長さL=34mmの場合における、真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeの関係を示した図である。 平行部の長さLと座屈応力との関係を示した図である。 本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法に用いられる試験片の使用態様を示した図である。 引張圧縮試験の結果より、真応力と真ひずみの関係を示した図である。 引張圧縮試験の結果より、時間と真ひずみの関係を示した図である。
以下、本実施形態にかかる高張力鋼板の引張圧縮試験方法を図に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。従って、本発明の技術的範囲は、本実施形態に開示内容だけに限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、高張力鋼板は、590MPa級以上(590MPa級、780MPa級、980MPa級など)の高張力鋼板を例に挙げて説明する。しかしながら、
この3種類の高張力鋼板は一つの例であり、例えば1500MPa級などの超高張力鋼板にも本願発明は適用可能である。つまり、本願発明は、590級以上の高張力鋼板であれば、特に限定しない。
また、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法に用いられる試験片1の形状を模式的に示した図であり、右側は正面図であり、左側がその側面図である。
図1に示すように、本発明の引張圧縮試験方法に用いられる試験片1は、製造された高張力鋼板から切り出して作成されるものであって、高張力鋼板の製品規格で設定されている厚みtを有する薄鋼板である。板厚tとしては、例えば0.8mm厚、1.0mm厚、1.2mm厚、1.4mm厚などが挙げられる。つまり、この試験片1は、試験対象となる高張力鋼板の板厚tとされるものであるので、特に限定はしない。
この試験片1は、長手方向に長尺であって、引張圧縮試験の試験部位である平行部2と、平行部2の幅方向の両端部側に設けられ、且つ当該平行部2より幅広に形成されているチャック部3と、を有している。
平行部2(以降、試験部と呼ぶ)は、幅方向の両端部(エッジ)を長手方向に平行とした帯状の部位であり、試験片1の略中途部に設けられている。試験部2は、長手方向の長さLが当該試験部2の幅Wより十分に長いものとされている。
試験部2の長さLと、当該試験部2の幅Wとの比率が、L/W≧2.4とされ、且つL/W<4とされている。すなわち、試験部2の長さLと当該試験部2の幅Wとの比率は、2.4≦L/W<4の範囲内とされている。
一方、チャック部3は、試験片1において引張圧縮試験装置に取り付けられる部位であって、試験部2の長手方向の両端部側に一対設けられている。このチャック部3は、平面視で略矩形状に形成されていて、幅は試験部2の幅Wより広いものとされている。
また、図1に示すように、試験片1の試験部2とチャック部3との間には、試験部2の幅Wからチャック部3の幅へと滑らかに拡張されるように形成された幅広部4(図1中に斜線領域)が設けられている。
幅広部4は、引張圧縮試験中にチャック部3と試験部2とが切り替わる部位に応力がかかることを防ぐための部位であり、この幅広部4が存在することで、試験部2に応力が均一にかかるようになる。
この幅広部4の形状としては、図1に示すように、例えば幅方向の両端部(以降、切り取りR部と呼ぶこともある)が所定の半径Rで切り取られた、平面視でラッパ状の部位である。また、幅広部4の長手方向の長さ(試験部2とチャック部3間の距離)lは、(板厚t×2)mm以上とされている。
なお、この幅広部4は、試験部2の幅Wからチャック部3の幅へと滑らかに拡張されるように形成されていれば、形状は特に問わない。すなわち、幅広部4の両端部が、切り取りR部とされていなくてもよく、例えば平面視でテーパ状であってもよい。
次に、上記した試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の範囲の設定(下限値及び上限値の設定)について、説明する。
始めに、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の下限値を設定する理由としては、引張圧縮試験の引張試験時に生じる可能性がある「試験部領域内の局所変形」を抑制するためである。
試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の下限値を設定するにあたっては、その試験部2の長さLを変化させた、すなわち試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)を変化させた条件(9つの試験片1)において、引張圧縮試験を行ったときの試験片1をシミュレーションモデル(FEM解析)で数値解析し、試験部2の幅中央の標点間距離、1mmにおける真ひずみe1と、試験部2の幅中央の標点間距離、12mmにおける真ひずみe2を算出した。合わせて、真ひずみe1と真ひずみe2との差Δe(=(e1−e2)×100)を算出した。
そして、その求めたΔeを基にe1とn値の関係を比較して、試験部2の変形の均一性
を評価した。
なお、引張圧縮試験の引張試験時における一様変形領域内の局所変形を抑制するためには、真ひずみe1がn値(=一様変形領域における「最大ひずみ」)より大きい値となるようにするとよい。
次に、9つの試験片1を数値解析した結果を、表1及び図2A〜図2Cを基に述べる。
表1に示すように、本実施形態においては、試験片1の条件を9つとした。
具体的には、本実施形態の試験片1として、n値(加工硬化指数)の異なる3種類の鋼材、すなわち「590MPa級の高張力鋼板(n=0.15)」と、「780MPa級の高張力鋼板(n=0.13)」と、「980MPa級の高張力鋼板(n=0.10)」とを採用した。また、これら9つの試験片1の形状としては、試験部2の幅Wを10mmとし、幅広部4の幅方向の両端部の切り取り半径Rを2mmとした。
一方、上記の試験部2の長さLを、等級ごとにL=14mm、L=24mm、L=34mmの3種類とした。
図2Aに示すように、試験部の長さL=14mmの場合(表1中の番号1、番号4、番号7に該当)における真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeとを算出した。
590MPa級の高張力鋼板の試験片(番号1)は、試験部の長さLと幅Wとの比率(L/W)が1.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.129と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.15)を比較すると、n値の方が大きいことがわかる(n値>e1)。すなわち、番号1の試験片は、引張圧縮試験に適していないことが確認できる。
780MPa級の高張力鋼板の試験片(番号4)は、試験部の長さLと幅Wとの比率(L/W)が1.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.118と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.13)を比較すると、n値の方が大きいことがわかる(n値>e1)。すなわち、番号4の試験片は、引張圧縮試験に適していないことが確認できる。
980MPa級の高張力鋼板の試験片(番号7)は、試験部の長さLと幅Wとの比率(L/W)が1.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.098と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.10)を比較すると、n値の方が大きいことがわかる(n値>e1)。すなわち、番号7の試験片は、引張圧縮試験に適していないことが確認できる。
図2Bに示すように、試験部2の長さL=24mmの場合(表1中の番号2、番号5、番号8に該当)における真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeとを算出した。
590MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号2)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が2.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.151と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.15)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号2の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
780MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号5)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が2.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.134と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.13)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号5の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
980MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号8)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が2.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.106と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.10)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号8の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
図2Cに示すように、試験部2の長さL=34mmの場合(表1中の番号3、番号6、番号9に該当)における真ひずみe1と、この真ひずみe1と真ひずみe2との差Δeとを算出した。
590MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号3)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が3.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.166と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.15)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号3の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
780MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号6)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が3.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.147と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.13)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号6の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
980MPa級の高張力鋼板の試験片1(番号9)は、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)が3.4と算出され、Δe=0.1のときの真ひずみe1が0.118と算出された。この算出された真ひずみe1とn値(n=0.10)を比較すると、真ひずみe1の方が大きいことがわかる(n値<e1)。すなわち、番号9の試験片1は、引張圧縮試験に適していることが確認できる。
以上の結果より、本発明の引張圧縮試験方法においては、試験片1の試験部2の長さLと幅Wとの比率をL/W≧2.4とすることによって、引張圧縮試験の引張試験時における一様変形領域内の局所変形を抑制することが可能である。
次に、上記した試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の上限値の設定について、説明する。
始めに、試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の上限値を設定する理由としては、変形抵抗が高い、590MPa級以上の高張力鋼板を、本実施形態の試験片1に用いているため、大きなひずみを付与する圧縮試験時に生じる可能性がある「試験片1の座屈」を防止するためである。
試験部2の長さLと幅Wとの比率(L/W)の上限値を設定するにあたっては、板厚ごと算出された試験片1の「試験部2の長さLと座屈応力」の関係を、オイラー(Euler)の座屈荷重式を基に求める。図3にその計算結果を示す。
図3に示されたグラフの線より左側の領域は、引張圧縮試験を実施する際に試験部2が座屈しないとされる領域である。また、図3に示されたグラフの線より右側の領域は、引張圧縮試験を実施する際に試験部2が座屈するとされる領域である。
なお、本実施形態においては、引張圧縮試験を実施する際に座屈対象となる部位を、試験部2に幅広部4を加えて考慮してもよい(座屈対象=試験部2+幅広部4)。
例えば、板厚tが0.8mmの590MPa級の高張力鋼板を試験片において、試験部の長さLを40mmとすると、t=0.8mmの曲線の右側に位置することとなり、引張圧縮試験を行った際に試験片が座屈することとなることがわかる。したがって、図3より、590MPa級の高張力鋼板を用いた試験片(板厚t=0.8mm)の場合、試験部の長さLは28mm以下にするとよいことがわかる。
また、板厚tが1.0mmの590MPa級の高張力鋼板を試験片において、試験部の長さLを40mmとすると、t=1.0mmの曲線の右側に位置することとなり、引張圧縮試験を行った際に試験片が座屈することとなることがわかる。したがって、図3より、590MPa級の高張力鋼板を用いた試験片(板厚t=1.0mm)の場合、試験部の長さLは33mm以下にするとよいことがわかる。
しかし、近年では、1000MPa級以上の超高強度の高張力鋼板が開発されてきている。この超高張力鋼板の引張圧縮試験を行う場合には、座屈を防止するために試験片の試験部の長さLを上記の33mmより短くする必要がある。
図3を参照すると、例えば、試験片1に1600MPa級の高張力鋼板(板厚t=1.0mm)を用いた場合、試験部2の長さLは20mm以下にするとよいことがわかる。また、試験片1に1600MPa級の高張力鋼板(板厚t=0.8mm)を用いた場合においては、試験部2の長さLを17mm以下とすることが好ましいことがわかる。
一方、試験部2の幅Wに関しては、製造可能とされる幅Wなどの試験片1(高張力鋼板)の加工性や、ひずみゲージの貼り付け箇所の確保の観点から、少なくとも幅Wが5mm以上であることが望ましい。
以上より、本発明の引張圧縮試験方法においては、試験片1の試験部2の長さLと幅Wとの比率をL/W<4とすることによって、圧縮試験時における試験片1の座屈を防止することが可能である。
なお、本実施形態では、試験部2の長さLは20mm以下にするとよいと述べたが、試験片1の試験部2の長さLと幅Wとの比率が4未満を満たし、且つ引張圧縮試験に適用可能であるものであれば、試験部2の長さLは特に限定しない。
例えば、590MPa級の高張力鋼板を用いた試験片1(板厚t=1.0mm)の場合、試験部2の長さLを30mm、幅Wを10mmとしてもよい(L/W=3)。
次に、上記した試験片1の幅広部4の長手方向の長さ(試験部2とチャック部3の距離)lの設定について、説明する。
始めに、幅広部4の長手方向の長さlを設定する理由としては、変形しない領域を備えることで、引張圧縮試験時において試験片1の局所変形を抑制するためである。
幅広部4の長手方向の長さlは、本願発明者らが、試験片を作成する加工機の加工能力や試験片1(高張力鋼板)の加工性などの研究を重ねた結果、(板厚t×2)mm以上と知見した。
詳しくは、本願発明者らが引張圧縮試験時において、試験片1のチャック部3に加わる板厚方向の圧縮応力が、当該試験片1の試験部(平行部)2に影響を及ぼさないことを知見した。この知見により、試験部2において平面応力状態が保てるように、幅広部4の長さlを(t×2)mm以上とした。また、長さlの上限値としては、試験部2の長さLより短いものとすることが望ましいことも知見した。
以上より、本発明の引張圧縮試験方法においては、幅広部4の長手方向の長さlを(板厚t×2)mm以上とすることによって、引張圧縮試験中にチャック部3と試験部2とがつながる部位に応力がかかることを防ぐことが可能である。
以下、本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法の実験例について、図4〜図6を基に述べる。なお、図4の右側は、本実験例における試験片1の正面図であり、左側はその側面図である。
[実験例]
図4に示すような外形形状を有する試験片1を用いて、高張力鋼板の引張圧縮試験を実施した。なお、本実験例においては、引張圧縮試験を実施する際に座屈対象となる部位を、試験部2及び幅広部4とする。
具体的には、本実験例にて使用する試験片1は、板厚tが1.4mmの980MPa級の高張力鋼板から切り出した板材を、5枚積層して作成されたものである(肉厚7mm=5t)。
板材を5枚積層して試験片1を作成するにあたっては、接着剤を用いて板材を密着させており、この密着された際の接着剤の厚さは各0.01mm〜0.02mm程度とされている。なお、この接着剤の厚さは極めて薄いので、引張圧縮試験に及ぼす影響がほとんど無いものとして考える。
一方、本実験例においては、試験部2の幅Wを10mmとした。そして、上記したL/W(試験部2の長さLと幅Wとの比率)≧2.4より、試験部2の長さLを24mmとした(L/Wの最小値)。また、試験片1を作成する加工機の加工能力や試験片1の加工性などにより、一対の幅広部4の長さlをそれぞれ13mmとし、切り取りR部の半径を15mmとした。これらより、引張圧縮試験を実施する際の座屈対象となる部位の長さ(試験部2の長さL+幅広部4の長さl)は、50mmとなる。
また、図3を参照すると、本実験例における試験片1を構成する板材の1枚の座屈応力は600MPa以下であるが、5枚積層して作成することにより、座屈応力が向上するようになる。
図5には、引張圧縮試験を行った結果が示されている。この図を参照すると、本実験例の引張圧縮試験において、本実験例の試験片1に約−900MPa〜約1200MPaの真応力がかかっているが、試験部2の長さLと幅Wを、比率L/W≧2.4より求め、且つ5枚積層して試験片1を作成しているので、座屈応力が向上していることが確認できる。
つまり、図5より、試験部2に座屈及び局所変形を生じさせずに引張圧縮試験を行えていることが確認できる。
また、本実験例の引張圧縮試験において、試験部2に付与される真ひずみを測定するために、試験部2の長手方向端部の一方側面に「伸び計(標点間距離:12.5mm)」を配備し、試験部2の幅方向中央に「ひずみゲージ(標点間距離:1.0mm)」を配備した。このように2つの測定手段(伸び計、ひずみゲージ)を設けておき、両者の測定結果を比較することで、加わる応力の均一性を知ることができる。
図6には、2つの測定手段を用いた引張圧縮試験を行った結果が示されている。この図を参照すると、本実験例の引張圧縮試験において、ひずみゲージが試験部2から剥離するまでの間、伸び計における真ひずみの測定値(実線)と、ひずみゲージにおける真ひずみの測定値(破線)とが略一致しているので、試験部2に応力が均一にかかっていることが確認できる。
つまり、図6より、試験部2に座屈及び局所変形を生じさせずに引張圧縮試験を行えていることが確認できる。
以上の実験結果より、上記のように作成した試験片1を用いることで、試験部2を一様に変形させることができるようになり、該試験部2にひずみを付与することができる。
すなわち、本発明の高張力鋼板の引張圧縮試験方法は、高張力鋼板の引張圧縮試験において、圧縮試験時の座屈を防止すると共に、引張試験時に局所変形を抑制することができ、精確な材料特性が測定可能となる。
ところで、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
1 試験片
2 平行部(試験部)
3 チャック部
4 幅広部

Claims (1)

  1. 引張圧縮試験の試験部位である平行部と、前記平行部の両端側に設けられ、且つ当該平行部より幅広に形成されているチャック部と、を有する高張力鋼板の試験片を用いて、引張圧縮試験を行う試験方法において、
    前記平行部の長さLと、当該平行部の幅Wとの比率が、2.4≦L/≦3.4とされている
    ことを特徴とする高張力鋼板の引張圧縮試験方法。
JP2014114911A 2014-06-03 2014-06-03 高張力鋼板の引張圧縮試験方法 Active JP6246074B2 (ja)

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