JP5378721B2 - 開閉部材制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、開閉部材制御装置に係り、特に、車両のウィンドウ及びスライドドアその他開閉部材の開閉の制御に適した開閉部材制御装置に関する。
従来から、車両に設けられたウィンドウガラス、ドア、スライドルーフなどの開閉部材をモータ等の駆動力により移動させる開閉部材制御装置が知られている。ところで、この種の開閉部材制御装置においては、開閉部材の移動に伴い開閉部材が何らかの異物を挟み込んでしまう虞がある。そこで、異物の挟み込みを防止するために、開閉部材における異物の挟み込みを検出し、挟み込みを検出した場合には、開閉部材を停止させるか、あるいは反転動作させるようにした開閉部材制御装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1に示されている技術では、ウィンドウの閉動作中において、このウィンドウを駆動するモータの回転速度の減速度合いが閾値を超えたときに異物の挟み込みと判定している。そして、回転速度が不安定になるモータ起動時に間違った判定が行われることを防止するため、モータの起動後は所定時間が経過するまでは挟み込みの判定にマスクをかけている。
しかし、モータ回転速度は、温度変化によるモータ内のグリスの粘性の変化や、バッテリ電圧の変動若しくは経年変化により低下する。また、ウィンドウへの動力伝達要素としてワイヤを使用したワイヤ式ウィンドウ開閉制御装置においては、ウィンドウの閉動作後及び開動作後に閉動作を行った場合のそれぞれにおいて、ワイヤのたるみが生じる部位が変化することによって回転速度が不安定になるモータの回転範囲が変動する。
このようなモータ回転数の変動による挟み込みの誤判定を防止するために、モータの起動後のマスク時間は長めに設定されているが、これにより、挟み込み判定のタイミングが遅延し、挟み込み力が大きくなる虞があった。
このような問題に鑑み、特許文献2に示されているワイヤを介してウィンドウを開閉動作する開閉部材制御装置においては、ウィンドウの動作パターンに応じて異なるワイヤのたるみ状態を考慮したマスク値を設定すると共に、挟み込み判定のマスク値としてモータの回転角度を採用することで、モータの回転速度を変化させる多様な要素に対応した挟み込み判定を可能としている。
特開昭63−165682号公報 特開平08−158738号公報
ところで、モータの駆動力を、ワイヤなどの伝達部材を介してウィンドウに伝達するタイプの開閉部材制御装置においては、ワイヤの寸法が経年変化より変化することが知られているが、特許文献2の技術では、マスク値の算出において経年変化によるワイヤの寸法変化までは考慮されていない。そのため、ワイヤの経年変化によるマスク値の変動を補正することができず、長期間に渡る使用によりマスク値が適正な範囲から逸脱する虞があった。
また、ワイヤの寸法変化による適正なマスク値の変動を解消するため、ばねに連結された可動ローラなどを用いて常時一定のテンションをワイヤに負荷するオートテンショナー機構を装着して自動的にワイヤのたるみを矯正する方法も考えられる。しかしこの場合、オートテンショナー機構の装着による部品点数の増加とコストの上昇が避けられない。
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、低コストで、経年変化によるワイヤの伸びを補正する制御が可能な開閉部材制御装置を提供することである。
前記課題は、請求項1に係る開閉部材制御装置によれば、モータにより伝達部材を介して開閉部材を開閉駆動する駆動手段と、前記駆動手段の駆動状況を検出する駆動状況検出手段と、前記駆動手段に電源を供給する電源供給手段と、前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、前記駆動状況検出手段により検出された前記モータの回転変化度合いを挟み込み判定のための閾値と比較して前記開閉部材の閉動作中における異物の挟み込みを検出する挟み込み判定手段と、を備える開閉部材制御装置において、挟み込みの検出を解除するマスク値を前記開閉部材の動作パターンに応じて選択するマスク値設定手段と、前記開閉部材の開閉動作における前記モータの作動量に基づいて算出された補正値に応じて前記マスク値を補正するマスク値補正手段と、を有し、前記補正値は、前記開閉部材が開状態の可動端部位置から閉状態の可動端部位置まで動作する間の前記モータの作動量と該モータの作動量の初期値とを比較して算出されることにより解決される。
このように、開閉部材制御装置が、挟み込みの検出を解除するマスク値を開閉部材の動作パターンに応じて選択するマスク値設定手段と、開閉部材の所定の動作における前記モータの作動量に応じて算出された補正値に基づいてマスク値を補正するマスク値補正手段とを、有することで、伝達部材の寸法変化、特に経年変化による伸びに応じてマスク値を補正することができ、挟み込みの誤判定を長期間に渡って防止することができる。また、開閉部材の所定の動作におけるモータの作動量に応じて補正値が算出される構成であるため特別な装置を取り付ける必要がなく部品点数の増加やコストの上昇を抑えることができる。さらに、開閉部材の動作に応じて自動的にマスク値が補正されるため、補正のための特別な操作を必要とせず、通常の使用において適宜マスク値の補正が行われる使い勝手の良い開閉部材制御装置が得られる。
更に、開閉部材が下限位置から上限位置まで移動する間のモータ作動量を、予め設定された基準値と比較して補正値を算出することで、開閉部材の可動範囲全体でのモータ作動量で比較することができるため、算出される補正値の誤差を少なくすることができる。また、モータ作動量の測定範囲を、開閉部材の下限位置から上限位置までとすることで、前回の開閉部材の動作パターンは常に開動作となるためにモータ作動量の測定範囲での伝達部材の変化状態が一定となり、算出される補正値に誤差が生じる要因が少ない。
すなわち、正確にマスク値が補正されるため、高精度な挟み込み判定ができる開閉部材制御装置が得られる。
更に、測定されたモータ作動量と比較される基準値を、その開閉部材制御装置で経年変化が生じる以前、つまり初期に測定されたモータ作動量とすることで、経年変化による差異を補正値として算出することができる。このため、伝達部材の寸法変化、特に経年変化による伸びに応じてマスク値を補正することができ、挟み込みの誤判定を長期間に渡って防止することができる開閉部材制御装置が得られる。
具体的には、請求項2のように、前記マスク値設定手段においては、前記開閉部材の前回の動作方向に応じて、所定の値に固定されたマスク値、又は、前記マスク値補正手段において補正されたマスク値のいずれかから選択されると好適である。
このように、マスク値は、開閉部材の前回の動作方向に応じて、所定の値に固定されたマスク値、又は、マスク値補正手段において補正されたマスク値のいずれかから選択されることで、開閉部材の動作パターンに応じて適切なマスク値を設定することができる開閉部材制御装置が得られる。
また、請求項3のように、前記マスク値補正手段による前記マスク値の補正は、前記開閉部材の開閉駆動毎に行われると好適である。
上記構成によって、開閉部材の開閉駆動毎にマスク値の補正が自動的に行われるため、マスク値は常時適正な値に保たれる。また、マスク値の補正のための特別な操作を必要としないことから使い勝手の良い開閉部材制御装置が得られる。
請求項1によれば、補正のための特別な操作を必要とせず、通常の使用において適宜マスク値の補正が行われることから使い勝手く、伝達部材の経年変化による伸びに応じてマスク値を補正することができ、長期間に渡って高精度な挟み込みの判定を行うことができる開閉部材制御装置が得られる。
請求項2に係る開閉部材制御装置によれば、開閉部材の動作パターンに応じて適切なマスク値を設定することができる開閉部材制御装置が得られる。
請求項3に係る開閉部材制御装置によれば、マスク値の補正が、開閉部材の動作の度に自動的に行われる使い勝手の良い開閉部材制御装置が得られる
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは勿論である。
以下の実施形態の説明において、伝達部材はワイヤ25に、開閉部材はウィンドウ16に、駆動状況検出手段はパルスセンサ3に、電源供給手段はバッテリ10に、補正値は変化量ΔDに、それぞれ相当する。
図1乃至7は本発明に係る一実施形態を示し、図1はシステム構成図、図2は自動車のドアの側面図、図3は動作パターンの違いによるワイヤのたるみ状態の説明図、図4はモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図(初期状態)、図5はモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図(経年変化状態)、図6は全体フローチャート、図7はマスク値を更新するフローチャートである。
本実施形態に係る開閉部材制御装置1は、例えば、自動車等の車両に好適に搭載されるものであり、図1に示すように駆動手段2と制御手段7とを有して構成されている。
駆動手段2は、パルスセンサ3を備えるモータMを有している。モータMは、開閉部材を開閉動作させるための駆動源となるものであり、例えば、ブラシ付き直流モータやブラシレスモータ等により構成されている。
パルスセンサ3は、モータMの回転速度および回転方向を検出するためのものであり、モータMの一定の回転角度毎にパルス信号を出力することができるように構成されている。例えば、ホール素子、ロータリーエンコーダ、レゾルバ等により構成されている。パルスセンサ3から出力されたパルス信号は、後述するコントローラ8に入力される。
制御手段7は、コントローラ8と、駆動回路5や温度センサ6などからなる周辺回路4とを有して構成されている。コントローラ8には、電源供給手段としてのバッテリ10と操作手段としてのスイッチ11が接続されており、また、予めインストールされたプログラムに従い開閉制御を行うマイクロコンピュータ9が備えられている。
マイクロコンピュータ9は、開閉制御を行う演算部と、前回の作動方向や後述する初期マスク値Aなどを記憶する記憶部と、を有して構成されており、パルスセンサ3やスイッチ11、若しくは、温度センサ6、バッテリ10などから入力された信号に基づいて所定の処理を行い、駆動回路5を介してモータMを制御するものである。
駆動回路5は、モータMを駆動する電源供給回路を有して構成されており、マイクロコンピュータ9による制御のもとに駆動回路5を介して電源供給回路を操作し、モータMを正転若しくは逆転させる。スイッチ11は、閉操作スイッチと開操作スイッチとからなりそれぞれの操作に応じた信号をコントローラ8に出力する。
次に、本実施形態に係る開閉部材制御装置1が適用される車両の一例として、図2に示した自動車のドアに取り付けられたウィンドウ16の開閉部材制御装置1について説明する。
ウィンドウ16の開閉部材制御装置1は、ドア15の窓枠に開閉可能に装着されたウィンドウ16と、ドア15側に取り付けられたモータMの出力軸に連結されたプーリ22と2つのローラ23,24と、リング状に形成されたワイヤ25と、を有して構成されている。
ワイヤ25は、高い引っ張り強度を有する鋼製の線材をより合わせて構成されているが、ワイヤ25は鋼製に限らず樹脂製のものを採用してもよく、ベルト状であってもよい。
モータMは、ウィンドウ16を開閉動作させるための駆動源となるものであり、制御手段7によって駆動制御可能に構成されている。
ウィンドウ16は、その下端側にワイヤ25を係止できる固定部材16aが形成されている。
プーリ22と、上下方向に配設された2つのローラ23,24は、いずれもワイヤ25が巻装される回転部材であり、モータMの出力軸に連結されたプーリ22の回転に従って、プーリ22とローラ23,24の間に巻装されたワイヤ25が従動する。プーリ22にはワイヤ25が少なくとも一巻、巻回されて装着されており、ワイヤ25とプーリ22との滑りを防いでいる。
また、上下方向に配設された2つのローラ23,24の間の位置でワイヤ25が固定部材16aに係止されることで、ワイヤ25の動作に連動してウィンドウ16が開閉方向に動作する。
すなわち、モータMの駆動に連動してウィンドウ16が開閉動作可能に構成されている。
なお、本実施形態では、本発明に係る開閉部材の一例として車両に設けられたウィンドウ16を用いて説明するが、その他にも、本発明に係る開閉部材は、車両に設けられた可動フロア、ヒンジ式のドア、スライド式のドア、跳ね上げ式ドア、可動ステップ、サンルーフ、トランクリッド、スライド及び高さ調節式車両用シートの座面、リクライニング式車両用シートのシートバック、チルト&テレスコピックステアリング、展開格納式ドアミラー、可動式エアスポイラー、コンバーチブル車用の展開格納式ルーフ等にも適用できる。
本実施形態に係る開閉部材制御装置1では、ウィンドウ16とドア15との間に異物が挟み込まれた場合に、閉動作中のウィンドウ16を一時的に開動作させて異物の挟み込みを防止する挟み込み防止機構が備えられている。挟み込みの判定は、モータMの回転速度、若しくは回転変化度合いを挟み込み判定のための閾値と比較することで行っている。そのため、起動直後にモータ回転速度が不安定になる範囲に対してマスク処理を行うことで挟み込みの誤判定を防いでいる。
ここで、起動直後にモータ回転速度が不安定になる原因について考察する。
モータ回転速度が不安定になる原因としては、(ア)モータMの回転子のゴムダンパのねじれ、(イ)歯車間のバックラッシュなどの噛み合わせの遊び、(ウ)ウィンドウ16の動作パターンの違いによるワイヤ25のたるみ状態の変化、(エ)温度変化によるグリスの物性変化、(オ)経年変化によるワイヤ25の寸法変化、などが知られている。
(ア)モータMの回転子に取り付けられたゴムダンパのねじれは、モータMの起動時に回転方向の負荷に応じてゴムダンパにねじれが生じることが原因である。(イ)歯車間のバックラッシュなどの噛み合わせの遊びは、モータMの出力をプーリ22に伝達する歯車間に生じるバックラッシュなどの噛み合わせの遊びである。これらは、一定の回転角度範囲でモータ回転速度を不安定にする。
(ウ)ウィンドウ16の動作パターンの違いによるワイヤ25のたるみ状態の変化は、前回のウィオンドウ16の動作方向によってたるみが生じるワイヤ25の位置が変化することが原因である。図3に基づいて説明する。
図3(a)はウィンドウ16の開動作時のワイヤ25の状態、図3(b)は閉動作時のワイヤの状態を示している。図3(a)に示すように、ウィンドウ16の開動作においては、ローラ23,24の間に位置する固定部材16aを下方に移動させるため、ワイヤ25の下方に引っ張り応力が負荷される。このため、ワイヤ25のたるみはプーリ22とローラ23の間に生じる。
ワイヤ25のたるみが、図3(a)の状態にあるとき、図3(b)に示すようにウィンドウ16の閉動作を行うと、プーリ22とローラ23の間に生じたワイヤ25のたるみを解消した後に固定部材16aが上方に移動されることになる。一方、ウィンドウ16の閉動作の後に閉動作を行う動作パターンにおいては、2回目の閉動作時にはプーリ22とローラ23の間にはワイヤ25のたるみはないため、直ちに固定部材16aを上方に移動することができる。
すなわち、ウィンドウ16の開動作の後に閉動作を行う動作パターンの場合には、ウィンドウ16の閉動作の後に閉動作を行う動作パターンよりも、モータ回転速度が不安定になる範囲が増えることになる。
(エ)温度変化によるグリスの物性変化は、モータMや歯車などに塗られたグリスの粘性値が温度によって変化することが原因である。グリスの粘性値は温度に大きく依存するため、グリスの粘性の変化を原因とするモータ回転速度が不安定になる範囲も温度から算出できる。(オ)経年変化によるワイヤ25の寸法変化は、長期間の使用によりワイヤ25が伸びることが原因であり、巻装されたワイヤ25のたるみ量が増えることで、モータ回転速度が不安定になる範囲が変化する。このワイヤ25の寸法変化は、ワイヤ25の使用条件によって大きく変動するため時間の関数として算出することは困難である。
上述した(ア)〜(オ)に示したモータ回転速度が不安定になる原因を考慮してマスク処理を行う範囲(マスク値)が設定される。
次に、マスク値の設定方法について説明する。
適正なマスク値は、ウィンドウ16の動作パターンの違いによって変化する。そのため、ウィンドウ16の動作パターンが異なる場合の起動直後のモータの不安定な動作範囲を考慮して、ウィンドウ16の動作パターンに応じたマスク値が設定される。
図4(a)は、ウィンドウ16を閉動作(ウィンドウ16はUP)の後に閉動作(ウィンドウ16はUP)を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
起動直後のモータ回転速度が一時的に大きな値を示す不安定な動作範囲が認められる。これは、モータMの回転子に使用されているゴムダンパのねじれや、歯車のバックラッシュなどの噛み合わせの遊びによってモータMへの負荷が不安定になることが原因である。
本実施形態では、このモータ回転速度が不安定になる領域で挟み込み判定を解除するマスクを設定している。具体的には、モータ回転速度が不安定になるパルス信号数(モータ回転角度)を繰り返し測定して、そのうちの最大パルス信号数を選択し、これに数パルスを加算した値をマスク値Aとして設定する。
同様に、図4(b)は、ウィンドウ16を開動作(ウィンドウ16はDOWN)の後に閉動作(ウィンドウ16はUP)を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
図4(a)と比べて、起動直後にモータ回転速度が一時的に大きな値を示す不安定な動作範囲が広くなっている。開動作の後に閉動作を行ったことから、生じたワイヤ25のたるみによってモータMに負荷が掛からない領域が増加したことが原因である。
このモータ回転速度が不安定になるパルス信号数(モータ回転角度)を繰り返し測定して、そのうちの最大パルス信号数を選択し、これに数パルスを加算した値を初期マスク値B0として設定する。
なお、上述のマスク値A及び初期マスク値B0を設定する際に、温度変化によって生じる不安定な動作領域の変動についても補正される。上述のように、温度変化によって生じる不安定な動作領域の変動は、モータMや歯車に塗られたグリスの粘性が変化することが原因である。そのため、温度センサの測定値に基づいて算出された補正値を、測定したモータ回転速度が不安定になるパルス信号数から増減している。
上述の方法により、ウィンドウ16の動作パターンに応じて、マスク値Aとマスク値B0が設定された。しかし、ワイヤ25は、高い引っ張り強度を有する鋼製の線材から構成されているが、長期間の使用によりある程度寸法が変化するため適切なマスク値が変動する。つまり、ワイヤ25の伸びに応じてマスク値B0の補正が行われる。
以下に、ワイヤ25の経年変化による伸びに応じたマスク値B0の補正方法を説明する。
図5(a),(b)は、経年変化により伸びたワイヤ25を使用して測定したモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
図5(a)は、閉動作の後に閉動作を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
前回の動作が閉動作であるためローラ23側にはワイヤ25のたるみが生じておらず、経年変化していない初期のワイヤ25を用いた場合と同様の曲線を示している(図4(a)参照)。このため、挟み込み判定のためのマスクとして、初期のワイヤ25を使用して測定したマスク値Aをそのまま用いることができる。
図5(b)は、開動作の後に閉動作を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
図5(a)と比べて、起動直後にモータ回転速度が一時的に大きな値を示す不安定な動作領域が広くなっていると共に、図4(b)との比較においても、不安定な動作領域が広くなっている。経年変化によりワイヤ25が伸びたため、ローラ23側に生じたワイヤ25のたるみ量が増加したことが原因である。このワイヤ25が伸びた状態での適正なマスク値をマスク値Bとする。
モータ回転速度の不安定な動作領域が増加した領域を変化量ΔDとする。
マスク値Bの算出方法について説明する。
上述したマスク値A及びマスク値B0は、いずれも固定値であるが、更新マスク値Bは、経年変化により徐々に変動する値であるため適宜更新する必要がある。しかも、開閉部材制御装置1が自動車に取り付けられた後に変化するため、マスク値Bを直接測定することは困難である。そこで、本実施形態において、マスク値Bは、マスク値B0に変化量ΔDを加えることで算出される。
変化量ΔDは、ウィンドウ16を全開状態から全閉状態まで動作させる際にモータMから出力されるパルス信号数を、初期状態と経年変化状態のそれぞれについて測定して比較することで算出される。
すなわち、初期状態におけるウィンドウ16の全開状態から全閉状態までにカウントされたパルス信号数を初期回転角度D0(初期値)としてマイクロコンピュータ9のメモリーに保存しておき、一方、経年変化後の全開状態から全閉状態までにカウントされたパルス信号数を測定して回転角度D1とすると、変化量ΔDは、回転角度D1と初期回転角度D0との差として算出される。
なお、変化量ΔDは、ウィンドウ16を全開状態から全閉状態まで動作させる際のパルス信号数から算出されているが、ウィンドウ16の全閉状態から全開状態までのパルス信号数から算出してもよい。
以下に、本実施形態の処理の流れについて説明する。
まず、マスク値設定手段として、図6に示したフローチャートに従って、ウィンドウ16の閉操作時の処理の流れを説明する。
閉スイッチが操作されて閉操作信号が入力されると(ステップS1)、前回の動作が閉動作であるか否かが判定される(ステップS2)。前回の動作が閉動作(ステップS2:Yes)であれば、マスクとしてマスク値Aを設定する(ステップS3)。一方、前回の動作が開動作(ステップS2:No)であれば、マスクとしてマスク値Bを設定する(ステップS4)。マスクの設定後にウィンドウ16の閉動作を行う(ステップS5)。
すなわち、前回のウィンドウ16の動作が閉動作であれば、ウィンドウ16の閉動作開始後、モータMがマスク値Aとして設定されたパルス信号数に応じた回転角度を回転するまでは挟み込み判定が行われない。一方、前回のウィンドウ16の動作が開動作であれば、ウィンドウ16の閉動作開始後、モータMがマスク値Bとして設定されたパルス信号数に応じた回転角度を回転するまでは判定が行われない。こうして、起動直後にモータMの回転速度が不安定になる範囲で過不足なく挟み込み判定を解除する適正なマスクを設定して誤判定を防止している。具体的には、設定されたマスク値が、モータMの起動に伴う回転角に相当するパルス信号の数の係数終了まで挟み込み判定が解除された状態が継続する。
ウィンドウ16の閉動作においては、挟み込み判定がマスクされる領域以外では挟み込み判定が行われる。閉動作中にウィンドウ16が異物を挟み込むと、モータMの回転変化度合いが変化する。つまり、回転速度が低下するため、モータMから出力されるパルス信号の間隔が変化する。このパルス信号の間隔の変動をマイクロコンピュータが検知して、挟み込み判定のための所定の閾値と比較して挟み込みと判定すると、モータMを所定回転数逆転させる挟み込み解除作動を行う。
次に、マスク値補正手段として、図7に示したフローチャートに従って、マスク値Bを算出する処理の流れを説明する。
上端位置(全閉状態)のウィンドウ16が開操作されると、ウィンドウ16が下端位置(全開状態)まで移動されたか否かの判定が行われる(ステップS10)。ウィンドウ16が下端位置まで移動された場合(ステップS10:Yes)には、測定された回転角度D1とマイクロコンピュータ9の記憶部に保存されている初期回転角度D0との差から変化量ΔDを算出する(ステップS11)。そして、算出された変化量ΔDをマスク値B0に加算して得られた値をマスク値Bとする(ステップS12)。
一方、ウィンドウ16が下端位置まで移動されなかった場合(ステップS10:No)にはマスク値Bは更新されない(ステップS13)。
なお、本実施形態においては、基準値としての初期回転角度D0を、経年変化前の初期状態でのモータMの作動量としているが、ワイヤ25の交換後など整備時の回転角度を初期回転角度D0とできることはもちろんである。
なお、図7に示したフローチャートにおいては、ウィンドウ16の上端位置から下端位置までのモータMの回転数(パルス信号数)を回転角度D1とする構成とされているが、下端位置から上端位置までのモータMの回転数を回転角度D1として、変化量ΔDを算出するように構成してもよい。
また、ウィンドウ16の下端位置でのモータ回転数のみから、回転角度D1を算出する構成としてもよい。この場合、基準値として予め保存しておいた上端位置のモータ回転数から下端位置のモータ回転数を減算することで回転角度D1を算出することができるため、マスク値Bの補正を高い頻度で行うことができる。また、ウィンドウ16が開状態の下端位置に達したときのワイヤ25の状態は一定であるため、精度よく変化量ΔDを算出することができる。
このように、本実施形態における開閉部材制御装置1においては、マスク値Bを補正することで、経年変化によるワイヤ25の寸法変化に応じたマスクを設定することができ、挟み込みの誤判定を長期間にわたって防止することができる。また、本実施形態における開閉部材制御装置1によれば、オートテンショナー機構を取り付ける必要がないため部品点数の増加、及び、コストの上昇を抑えることができる。
さらに、ウィンドウ16の動作に応じて自動的にマスク値Bが更新されることから、更新のための特別な操作を必要とせず、通常の使用条件において適宜マスク値Bの更新をすることができる。
本発明の一実施形態に係るシステム構成図である。 本発明の一実施形態に係る自動車のドアの側面図である。 本発明の一実施形態に係る動作パターンの違いによるワイヤのたるみ状態 の説明図である。 本発明の一実施形態に係るモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の 関係図(初期状態)である。 本発明の一実施形態に係るモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の 関係図(経年変化状態)である。 本発明の一実施形態に係る全体フローチャートである。 本発明の一実施形態に係るマスク値を更新するフローチャートである。
符号の説明
M モータ、1 開閉部材制御装置、2 駆動手段、3 パルスセンサ、4 周辺回路、5 駆動回路、6 温度センサ、7 制御手段、8 コントローラ、9 マイクロコンピュータ、10 バッテリ、11 スイッチ、15 ドア、16 ウィンドウ、16a 固定部材、21 出力軸、22 プーリ、23,24 ローラ、25 ワイヤ

Claims (3)

  1. モータにより伝達部材を介して開閉部材を開閉駆動する駆動手段と、
    前記駆動手段の駆動状況を検出する駆動状況検出手段と、
    前記駆動手段に電源を供給する電源供給手段と、
    前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
    前記駆動状況検出手段により検出された前記モータの回転変化度合いを挟み込み判定のための閾値と比較して前記開閉部材の閉動作中における異物の挟み込みを検出する挟み込み判定手段と、を備える開閉部材制御装置において、
    挟み込みの検出を解除するマスク値を前記開閉部材の動作パターンに応じて選択するマスク値設定手段と、
    前記開閉部材の開閉動作における前記モータの作動量に基づいて算出された補正値に応じて前記マスク値を補正するマスク値補正手段と、を有し、
    前記補正値は、前記開閉部材が開状態の可動端部位置から閉状態の可動端部位置まで動作する間の前記モータの作動量と該モータの作動量の初期値とを比較して算出されることを特徴とする開閉部材制御装置。
  2. 前記マスク値設定手段においては、前記開閉部材の前回の動作方向に応じて、所定の値に固定されたマスク値、又は、前記マスク値補正手段において補正されたマスク値のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1に記載の開閉部材制御装置。
  3. 前記マスク値補正手段による前記マスク値の補正は、前記開閉部材の開閉駆動毎に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉部材制御装置。
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