JP5378721B2 - 開閉部材制御装置 - Google Patents
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Description
このようなモータ回転数の変動による挟み込みの誤判定を防止するために、モータの起動後のマスク時間は長めに設定されているが、これにより、挟み込み判定のタイミングが遅延し、挟み込み力が大きくなる虞があった。
更に、開閉部材が下限位置から上限位置まで移動する間のモータ作動量を、予め設定された基準値と比較して補正値を算出することで、開閉部材の可動範囲全体でのモータ作動量で比較することができるため、算出される補正値の誤差を少なくすることができる。また、モータ作動量の測定範囲を、開閉部材の下限位置から上限位置までとすることで、前回の開閉部材の動作パターンは常に開動作となるためにモータ作動量の測定範囲での伝達部材の変化状態が一定となり、算出される補正値に誤差が生じる要因が少ない。
すなわち、正確にマスク値が補正されるため、高精度な挟み込み判定ができる開閉部材制御装置が得られる。
更に、測定されたモータ作動量と比較される基準値を、その開閉部材制御装置で経年変化が生じる以前、つまり初期に測定されたモータ作動量とすることで、経年変化による差異を補正値として算出することができる。このため、伝達部材の寸法変化、特に経年変化による伸びに応じてマスク値を補正することができ、挟み込みの誤判定を長期間に渡って防止することができる開閉部材制御装置が得られる。
このように、マスク値は、開閉部材の前回の動作方向に応じて、所定の値に固定されたマスク値、又は、マスク値補正手段において補正されたマスク値のいずれかから選択されることで、開閉部材の動作パターンに応じて適切なマスク値を設定することができる開閉部材制御装置が得られる。
上記構成によって、開閉部材の開閉駆動毎にマスク値の補正が自動的に行われるため、マスク値は常時適正な値に保たれる。また、マスク値の補正のための特別な操作を必要としないことから使い勝手の良い開閉部材制御装置が得られる。
請求項2に係る開閉部材制御装置によれば、開閉部材の動作パターンに応じて適切なマスク値を設定することができる開閉部材制御装置が得られる。
請求項3に係る開閉部材制御装置によれば、マスク値の補正が、開閉部材の動作の度に自動的に行われる使い勝手の良い開閉部材制御装置が得られる。
以下の実施形態の説明において、伝達部材はワイヤ25に、開閉部材はウィンドウ16に、駆動状況検出手段はパルスセンサ3に、電源供給手段はバッテリ10に、補正値は変化量ΔDに、それぞれ相当する。
駆動手段2は、パルスセンサ3を備えるモータMを有している。モータMは、開閉部材を開閉動作させるための駆動源となるものであり、例えば、ブラシ付き直流モータやブラシレスモータ等により構成されている。
パルスセンサ3は、モータMの回転速度および回転方向を検出するためのものであり、モータMの一定の回転角度毎にパルス信号を出力することができるように構成されている。例えば、ホール素子、ロータリーエンコーダ、レゾルバ等により構成されている。パルスセンサ3から出力されたパルス信号は、後述するコントローラ8に入力される。
マイクロコンピュータ9は、開閉制御を行う演算部と、前回の作動方向や後述する初期マスク値Aなどを記憶する記憶部と、を有して構成されており、パルスセンサ3やスイッチ11、若しくは、温度センサ6、バッテリ10などから入力された信号に基づいて所定の処理を行い、駆動回路5を介してモータMを制御するものである。
ウィンドウ16の開閉部材制御装置1は、ドア15の窓枠に開閉可能に装着されたウィンドウ16と、ドア15側に取り付けられたモータMの出力軸に連結されたプーリ22と2つのローラ23,24と、リング状に形成されたワイヤ25と、を有して構成されている。
モータMは、ウィンドウ16を開閉動作させるための駆動源となるものであり、制御手段7によって駆動制御可能に構成されている。
ウィンドウ16は、その下端側にワイヤ25を係止できる固定部材16aが形成されている。
また、上下方向に配設された2つのローラ23,24の間の位置でワイヤ25が固定部材16aに係止されることで、ワイヤ25の動作に連動してウィンドウ16が開閉方向に動作する。
すなわち、モータMの駆動に連動してウィンドウ16が開閉動作可能に構成されている。
モータ回転速度が不安定になる原因としては、(ア)モータMの回転子のゴムダンパのねじれ、(イ)歯車間のバックラッシュなどの噛み合わせの遊び、(ウ)ウィンドウ16の動作パターンの違いによるワイヤ25のたるみ状態の変化、(エ)温度変化によるグリスの物性変化、(オ)経年変化によるワイヤ25の寸法変化、などが知られている。
図3(a)はウィンドウ16の開動作時のワイヤ25の状態、図3(b)は閉動作時のワイヤの状態を示している。図3(a)に示すように、ウィンドウ16の開動作においては、ローラ23,24の間に位置する固定部材16aを下方に移動させるため、ワイヤ25の下方に引っ張り応力が負荷される。このため、ワイヤ25のたるみはプーリ22とローラ23の間に生じる。
すなわち、ウィンドウ16の開動作の後に閉動作を行う動作パターンの場合には、ウィンドウ16の閉動作の後に閉動作を行う動作パターンよりも、モータ回転速度が不安定になる範囲が増えることになる。
上述した(ア)〜(オ)に示したモータ回転速度が不安定になる原因を考慮してマスク処理を行う範囲(マスク値)が設定される。
適正なマスク値は、ウィンドウ16の動作パターンの違いによって変化する。そのため、ウィンドウ16の動作パターンが異なる場合の起動直後のモータの不安定な動作範囲を考慮して、ウィンドウ16の動作パターンに応じたマスク値が設定される。
図4(a)は、ウィンドウ16を閉動作(ウィンドウ16はUP)の後に閉動作(ウィンドウ16はUP)を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
本実施形態では、このモータ回転速度が不安定になる領域で挟み込み判定を解除するマスクを設定している。具体的には、モータ回転速度が不安定になるパルス信号数(モータ回転角度)を繰り返し測定して、そのうちの最大パルス信号数を選択し、これに数パルスを加算した値をマスク値Aとして設定する。
図4(a)と比べて、起動直後にモータ回転速度が一時的に大きな値を示す不安定な動作範囲が広くなっている。開動作の後に閉動作を行ったことから、生じたワイヤ25のたるみによってモータMに負荷が掛からない領域が増加したことが原因である。
このモータ回転速度が不安定になるパルス信号数(モータ回転角度)を繰り返し測定して、そのうちの最大パルス信号数を選択し、これに数パルスを加算した値を初期マスク値B0として設定する。
以下に、ワイヤ25の経年変化による伸びに応じたマスク値B0の補正方法を説明する。
図5(a)は、閉動作の後に閉動作を行う動作パターンでのモータ起動直後のモータ回転角度と回転速度の関係図である。
前回の動作が閉動作であるためローラ23側にはワイヤ25のたるみが生じておらず、経年変化していない初期のワイヤ25を用いた場合と同様の曲線を示している(図4(a)参照)。このため、挟み込み判定のためのマスクとして、初期のワイヤ25を使用して測定したマスク値Aをそのまま用いることができる。
図5(a)と比べて、起動直後にモータ回転速度が一時的に大きな値を示す不安定な動作領域が広くなっていると共に、図4(b)との比較においても、不安定な動作領域が広くなっている。経年変化によりワイヤ25が伸びたため、ローラ23側に生じたワイヤ25のたるみ量が増加したことが原因である。このワイヤ25が伸びた状態での適正なマスク値をマスク値Bとする。
モータ回転速度の不安定な動作領域が増加した領域を変化量ΔDとする。
上述したマスク値A及びマスク値B0は、いずれも固定値であるが、更新マスク値Bは、経年変化により徐々に変動する値であるため適宜更新する必要がある。しかも、開閉部材制御装置1が自動車に取り付けられた後に変化するため、マスク値Bを直接測定することは困難である。そこで、本実施形態において、マスク値Bは、マスク値B0に変化量ΔDを加えることで算出される。
変化量ΔDは、ウィンドウ16を全開状態から全閉状態まで動作させる際にモータMから出力されるパルス信号数を、初期状態と経年変化状態のそれぞれについて測定して比較することで算出される。
なお、変化量ΔDは、ウィンドウ16を全開状態から全閉状態まで動作させる際のパルス信号数から算出されているが、ウィンドウ16の全閉状態から全開状態までのパルス信号数から算出してもよい。
まず、マスク値設定手段として、図6に示したフローチャートに従って、ウィンドウ16の閉操作時の処理の流れを説明する。
閉スイッチが操作されて閉操作信号が入力されると(ステップS1)、前回の動作が閉動作であるか否かが判定される(ステップS2)。前回の動作が閉動作(ステップS2:Yes)であれば、マスクとしてマスク値Aを設定する(ステップS3)。一方、前回の動作が開動作(ステップS2:No)であれば、マスクとしてマスク値Bを設定する(ステップS4)。マスクの設定後にウィンドウ16の閉動作を行う(ステップS5)。
上端位置(全閉状態)のウィンドウ16が開操作されると、ウィンドウ16が下端位置(全開状態)まで移動されたか否かの判定が行われる(ステップS10)。ウィンドウ16が下端位置まで移動された場合(ステップS10:Yes)には、測定された回転角度D1とマイクロコンピュータ9の記憶部に保存されている初期回転角度D0との差から変化量ΔDを算出する(ステップS11)。そして、算出された変化量ΔDをマスク値B0に加算して得られた値をマスク値Bとする(ステップS12)。
なお、本実施形態においては、基準値としての初期回転角度D0を、経年変化前の初期状態でのモータMの作動量としているが、ワイヤ25の交換後など整備時の回転角度を初期回転角度D0とできることはもちろんである。
また、ウィンドウ16の下端位置でのモータ回転数のみから、回転角度D1を算出する構成としてもよい。この場合、基準値として予め保存しておいた上端位置のモータ回転数から下端位置のモータ回転数を減算することで回転角度D1を算出することができるため、マスク値Bの補正を高い頻度で行うことができる。また、ウィンドウ16が開状態の下端位置に達したときのワイヤ25の状態は一定であるため、精度よく変化量ΔDを算出することができる。
さらに、ウィンドウ16の動作に応じて自動的にマスク値Bが更新されることから、更新のための特別な操作を必要とせず、通常の使用条件において適宜マスク値Bの更新をすることができる。
Claims (3)
- モータにより伝達部材を介して開閉部材を開閉駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の駆動状況を検出する駆動状況検出手段と、
前記駆動手段に電源を供給する電源供給手段と、
前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記駆動状況検出手段により検出された前記モータの回転変化度合いを挟み込み判定のための閾値と比較して前記開閉部材の閉動作中における異物の挟み込みを検出する挟み込み判定手段と、を備える開閉部材制御装置において、
挟み込みの検出を解除するマスク値を前記開閉部材の動作パターンに応じて選択するマスク値設定手段と、
前記開閉部材の開閉動作における前記モータの作動量に基づいて算出された補正値に応じて前記マスク値を補正するマスク値補正手段と、を有し、
前記補正値は、前記開閉部材が開状態の可動端部位置から閉状態の可動端部位置まで動作する間の前記モータの作動量と該モータの作動量の初期値とを比較して算出されることを特徴とする開閉部材制御装置。 - 前記マスク値設定手段においては、前記開閉部材の前回の動作方向に応じて、所定の値に固定されたマスク値、又は、前記マスク値補正手段において補正されたマスク値のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1に記載の開閉部材制御装置。
- 前記マスク値補正手段による前記マスク値の補正は、前記開閉部材の開閉駆動毎に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉部材制御装置。
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