JP5377558B2 - ハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ハニカム乾燥体を切断する方法及び装置に関する。
環境への影響を考慮して、排気ガス中の微粒子や有害物質を除去すべく、近時の自動車の排気系には、フィルタや触媒が設けられている。そして、フィルタエレメントや触媒担体として、ハニカム構造体が用いられている。特に、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(パティキュレートマター(PM)の除去に関する規制は、全世界的に強化される方向にあり、そのPMを除去するためのフィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF))としても、ハニカム構造体が用いられている。
ハニカム構造体は、一般に、外形が、円柱体又は角柱体を呈し、セラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有する(ハニカム構造を有する)セラミック製品である。このハニカム構造体は、セラミック材料を混練した坏土を、ハニカム構造を有するように押出成形し、更に外周壁を形成して、ハニカム成形体を得て、そのハニカム成形体を乾燥させ、得られたハニカム乾燥体を焼成して、得ることが出来る。そして、焼成前には、外形の仕上げとして、ハニカム乾燥体が、砥石等によって所望の寸法に切断される。
尚、ハニカム乾燥体の切断に関する先行文献は見られないようであるが、切断や砥石等に関する先行文献として、例えば、特許文献1〜3を挙げることが出来る。
特許第2608672号公報 特開2005−049270号公報 特開2003−053723号公報
従来、ハニカム乾燥体の切断に、例えばホイール砥石を使用する場合、切断によってハニカム乾燥体(の製品部)に欠けが発生することがある。この欠けは、ホイール砥石の使用回数が多くなり、ホイール砥石の砥粒が、磨耗、摩滅、脱落して、加工抵抗が大きくなると、起こり易い。又、切断速度を速くすると、同様に、加工抵抗が大きくなり、上記欠けが起こり易い。更には、ハニカム乾燥体が大きいほど、欠けは起こり易い。
欠けが発生したハニカム乾燥体は、製品(ハニカム構造体)として出荷することが出来ないから、歩留まり向上のためには、欠けの発生率を低減する必要がある。一方で、コスト低減のために、ホイール砥石の寿命を延ばすことが重要である。又、生産効率向上のために、切断速度の高速化にも応える必要がある。更には、近時のフィルタや触媒が大型化していることから、大型のハニカム乾燥体であっても安定して切断出来ることが求められる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、ホイール砥石等の切断手段を長期にわたり使用し続けても、切断速度を速くしても、切断対象が大径のハニカム乾燥体であっても、ハニカム乾燥体に欠けが発生し難い、ハニカム乾燥体の切断方法及び装置を提供することである。研究が重ねられた結果、切断によって製品となるハニカム乾燥体に欠けが発生する原因は、切断によって切り離される切除部が、切断される際に動いて、製品部(製品となるハニカム乾燥体)の一部を剥がし取ることにある、との知見を得るに至り、切除部の動きを防止する以下の手段によって、上記課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
即ち、先ず、本発明によれば、外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と切除部とに分離をする方法であって、切断にかかる背分力Ptと、切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、(切断後に)切除部となる部分にかけながら、ハニカム乾燥体の切断をするハニカム乾燥体の切断方法が提供される。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法においては、Pt+Pw≦Pmを満たすことが好ましい。即ち、Pt+Pw<Pm、又は、Pt+Pw=Pmを、満たすことが好ましい。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法においては、上記力Pmが、上記切断の終了時に、ハニカム乾燥体が製品部と切除部とに分離される部分である切断部の近傍にかけられることが好ましい。力Pmは、切除部となる部分にかけられる力であるから、力Pmは、切除部となる部分であって、上記切断部の近傍にかけられることが好ましい、ということである。そして、力Pmは、切断にかかる背分力Ptと切除部の重量Pwとに対抗する力であるから、切断の終了時にハニカム乾燥体が製品部と切除部とに分離される部分である切断部の近傍に力Pmがかけられるということは、切断の終了時にハニカム乾燥体が最後に完全に切り離される部分に限りなく近い場所に力Pmが作用する、ということを意味し、その態様が好ましい、ということである。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法においては、上記ハニカム乾燥体の外形が、円柱体であることが好ましい。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法は、切断を、ハニカム乾燥体の2箇所で同時に行うことが出来る。この場合、外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と、2つの切除部と、に分離をすることになる。製品部は、のちに、焼成されてハニカム構造体となり、最終的に、既述のDPF等となる部分である。
次に、本発明によれば、外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と切除部とに分離をする装置であって、回転して周縁によってハニカム乾燥体の切断をする、円盤状の切断手段と、ハニカム乾燥体を、(切断後に)製品部となる部分で支える支持手段と、柱体のハニカム乾燥体の軸方向が円盤状の切断手段の面方向に直交した状態で、円盤状の切断手段がハニカム乾燥体の切断部を通過するように、切断手段又は支持手段を搬送する搬送手段と、切断のときに、切断にかかる背分力Ptと、切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、切除部となる部分にかける力付与手段と、を有するハニカム乾燥体切断装置が提供される。
切断は、円盤状の切断手段がハニカム乾燥体の切断部を通過するときに行われる。切断部は、ハニカム乾燥体が切断をされる部分であり、製品部と切除部に分離される部分である。切断部は、1箇所でもよく、2箇所でもよく、3箇所以上であってもよい。切断部が2箇所の場合、外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と、2つの切除部と、に分離をすることになる。円盤状の切断手段としては、ホイール砥石、ブレード、チップソー、(円形にした)バンドソーを採用することが出来る。特に好ましい切断手段はホイール砥石である。
上記の力付与手段として、ばね等の弾性体を採用することが出来るが、本発明に係るハニカム乾燥体切断装置においては、ばね力付与手段における力Pmの発生源が、エアシリンダであることが好ましい。
上記の通り、搬送手段は、切断手段を搬送するものであってもよい。力付与手段は、切断のときに力Pmを(切断後に)切除部となる部分にかけるものであるから、円盤状の切断手段がハニカム乾燥体の切断部を通過するときに(切断のときに)、ハニカム乾燥体の近傍に位置していなければならないが、力付与手段を配設する場所は限定されず、力付与手段は切断手段の近傍で固定されていてもよい。但し、本発明に係るハニカム乾燥体切断装置においては、搬送手段が、支持手段を搬送するものであり、力付与手段が、支持手段に固定されていることが好ましい。
重量Pwは、質量とは異なり、力(単位は[N]又は[gf])なのであって、本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置において、Pt+Pw≦Pmは、力のバランスを表している。切断にかかる背分力Ptは、例えば、ハニカム乾燥体の外形が円柱体である場合には、ハニカム乾燥体の軸方向に垂直な面(円形)の円周接線方向の主分力Pcに直交する力である。この背分力は、切断抵抗に等しい。そして、背分力Ptは、一般的に主分力Pcに係数k(k=1.5〜3)をかけた値に等しい関係にあるとされる。そのため、本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置においては、Pt+Pw≦Pmを、(Pc×k)+Pw≦Pmと置換することが可能である。尚、切断にかかる背分力Ptと、切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、切除部となる部分にかけながら、ハニカム乾燥体の切断を行うのであり、好ましくはPt+Pw≦Pmの条件が成立するのであれば、ハニカム乾燥体の外形が、楕円柱体(軸方向に垂直な面が楕円形)、異形柱体(軸方向に垂直な面が異形)の場合でも、適用可能である。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法は、切断にかかる背分力Ptと、切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、(切断後に)切除部となる部分にかけながら、ハニカム乾燥体の切断をするので、切断のときに、切り離される切除部が動かない、又は、切除部が背分力と反対向きに動くことになる。従って、切除部によって製品部の一部が剥がし取られることもなく、欠けの発生が防止される。
円盤状の切断手段である砥石を長期にわたり使用し続けると、砥石の砥粒が、磨耗、摩滅、脱落により、加工抵抗が大きくなって、欠けの発生が起こり易くなるが、本発明によれば、切除部の動きが防止され、又は、(製品部ではなく)切除部に欠けを発生させることが出来るので、上記のような事情で加工抵抗が大きくなる場合においても、このような問題を回避出来る。よって、砥石の寿命が延びる。
又、切断速度を速くすると、(砥粒が劣化していなくても)加工抵抗が大きくなり、材料強度を上回る欠けの発生が起こり易くなるが、本発明によれば、切除部の動きが防止され、又は、(製品部ではなく)切除部に欠けを発生させることが出来るので、切断速度を速くしても、このような問題を回避出来る。よって、ハニカム乾燥体切断工程における効率が向上し、ひいてはハニカム構造体生産工程の効率が向上する。
更に、切断対象が大径のハニカム乾燥体であると、切除部も大きく重くなり、砥石の接触面積が大きくなり、それが故に、小径の場合より(砥粒が劣化していなくても)加工抵抗が大きくなってしまい、欠けの発生が起こり易くなるが、本発明によれば、大きく重くなった切除部の重量を考慮しつつ、その切除部の動きが防止され、又は、切除部に欠けを発生させることが出来るので、切断対象が大径のハニカム乾燥体であっても、このような問題を回避出来る。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法は、その好ましい態様において、Pt+Pw≦Pmを満たせば、即ち、Pt+Pw<Pm、又は、Pt+Pw=Pmを、満たせば、上記の効果を得易い。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法は、その好ましい態様において、力Pmが、切断の終了時に、ハニカム乾燥体が製品部と切除部とに分離される部分である切断部の近傍にかけられる。即ち、力Pmが、切断終了時に製品が完全に切り離される点に限りなく近い場所に作用するので、上記の効果を確実に得ることが出来る。
本発明に係るハニカム乾燥体切断装置は、本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法を、実施する具体的手段であり、上記の効果を現に得るところにその効果を奏する。
本発明に係るハニカム乾燥体切断装置は、その好ましい態様において、力付与手段における力Pmの発生源がエアシリンダであるので、力Pmの調節が行い易い。従って、力のバランスを、Pt+Pw<Pmとするか、Pt+Pw=Pmとするか、状況に応じて、容易に選択することが出来る。又、切断対象であるハニカム乾燥体の仕様の変更に伴って切除部の重量Pwが変わることに、容易に対応可能である。
本発明に係るハニカム乾燥体切断装置は、その好ましい態様において、搬送手段が、支持手段を搬送するものであり、力付与手段が、支持手段に固定されているので、切断のときに、切断対象であるハニカム乾燥体と、力付与手段と、の位置関係は、常に一定である。従って、切断にかかる背分力Ptと切除部の重量Pwとに対抗する力Pmの方向が変わらないので、力付与手段ひいては装置を、簡素な構成にすることが出来る。
仮に、搬送手段が支持手段を搬送するものであって、力付与手段が、切断手段の近傍で固定されていると、支持手段に支えられて搬送されるハニカム乾燥体を切断手段が通過する際に、切断手段の近傍で固定された力付与手段は移動しないから、切断対象であるハニカム乾燥体と、力付与手段と、の位置関係が、切断中に変化することになる。そうすると、力のうち方向が変わるから、力Pmを一定にするために、切断中に、力の大きさを調節する工夫(制御)か、又は、力付与手段が切断手段の近傍で固定されていてもハニカム乾燥体と力付与手段との位置関係が切断中に変化しないような工夫(機構)が、必要になる。そうなると、何れにしても、装置が複雑化する。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置が切断対象とする、ハニカム乾燥体を模式的に表す斜視図である。 本発明に係るハニカム乾燥体切断装置の一の実施形態を模式的に示す平面図(上面図)である。 図2Aに示されるハニカム乾燥体切断装置の正面図である。 切断されて製品部と切除部とに分離をしたハニカム乾燥体の一例を示す平面図である。 切断のときに切除部となる部分にかける力Pmを説明するための模式図である。 切断のときに生じる背分力Ptと主分力Pcを説明するための模式図である。 ハニカム乾燥体が切断されている様子を模式的に示す拡大平面図であり、切断にかかる背分力Pt及び切除部の重量Pw、並びにそれらに対抗する力Pmを説明するための図である。 本発明に係るハニカム乾燥体切断装置を構成する切断手段の一例を示す図であり、ホイール砥石を示す正面図である。 図5と対比させて、力Pmがかけられずにハニカム乾燥体が切断されている様子を模式的に示す拡大平面図であり、従来のハニカム乾燥体切断装置がかかえる問題を表した図である。 本発明に係るハニカム乾燥体切断装置の他の実施形態を模式的に示す図であり、切断中を表す正面図である。 実施例で用いられる背分力(切断抵抗)測定装置の構成を模式的に示す正面図である。 図9に示される背分力(切断抵抗)測定装置を構成する切削動力計の出力結果を示すグラフである。 実施例の結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
先ず、本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置が切断対象とする、ハニカム乾燥体について、図1を参照して、説明する。
例示されるハニカム乾燥体10は、外形が、2つの端面と周面とを有する円柱体を呈するセラミック製品である(図1を参照)。その内部には、多数の細孔を有する多孔質体である隔壁11によって区画された、ガスの流路となる複数のセル12が形成されている。ハニカム乾燥体10では、軸方向に垂直なセル12の断面形状(端面に現れる形状に等しい(図1を参照))は、六角形になっている。本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置が切断対象とするハニカム乾燥体では、セル12の断面形状は、四角形や、八角形と四角形とが混在するものであってもよい。
ハニカム乾燥体10の成形原料の主たるもの(骨材粒子)は、例えば、アルミナ、カオリン、タルク等のコージェライト化原料や、炭化珪素等のセラミック材料である。これらのセラミック材料を混練した坏土を、ハニカム構造を有するように押出成形し、更に外周壁を形成して、ハニカム成形体を得て、そのハニカム成形体を乾燥させれば、ハニカム乾燥体10を得ることが出来る。そして、このハニカム乾燥体10を焼成すれば、フィルタエレメントや触媒担体として適用可能な、ハニカム構造体を得ることが出来る。この焼成の前に、外形の仕上げとして、ハニカム乾燥体を所望の寸法に切断する必要があり、本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置は、その切断のために用いられる。
次に、本発明に係るハニカム乾燥体切断装置の一の実施形態について、上記ハニカム乾燥体10を切断する場合を例にして、図2A〜図6を参照しながら、説明する。図2A及び図2Bに示されるハニカム乾燥体切断装置20は、外形が円柱体のハニカム乾燥体10を、軸方向に垂直に、切断をして、製品部10aと、2つの切除部10bと、に分離をする装置である(図1及び図3を参照)。
ハニカム乾燥体切断装置20は、円盤状のホイール砥石5(切断手段)を有する。ホイール砥石5は、回転して周縁によってハニカム乾燥体10の切断をするものであり、取付孔38が形成された薄い円板状の台金35の外周に、砥粒層36を備えるものである(図6を参照)。この砥粒層36は、多数の砥粒を電着させるか、若しくは、メタルボンド、レジンボンド等を代表とするボンド材によって多数の砥粒を保持させて、なるものである。
又、ハニカム乾燥体切断装置20は、収容器21(支持手段)と、(図示しない)LMガイド(搬送手段)と、力付与機24(力付与手段)と、を有する。収容器21は、ハニカム乾燥体10を収容し、切断部101を避けて、(切断後に)製品部10aとなる部分で支えるものである。収容器21は、例えば、ハニカム乾燥体10と接する部分に(図示しない)パッドを配設した鋼材で構成することが出来る。LMガイドは、その収容器21を搬送する直動機器である。
力付与機24は、切断のときに、切断にかかる背分力Ptと(図4Bを参照)、切除部10bの重量Pwと(図5を参照)、に対抗する力Pmを(図4A、図5を参照)、(切断後に)切除部10bとなる部分にかける機器である(図5を参照)。力付与機24は、収容器21に固定されたエアシリンダ23及び押当バー22で、構成することが出来る(図2Bを参照)。エアシリンダ23は、力Pmの発生源である。押当バー22は、その力Pmを、現に(ハニカム乾燥体10における切断後の)切除部10bにかける治具である。エアシリンダ23の代わりに、ばねを用いてもよく、図4A及び図5では、エアシリンダ23の代わりの渦巻きばねが表されている。
ハニカム乾燥体切断装置20では、ホイール砥石5は、回転可能に取り付けられるが、その位置は動かない(搬送されない)。搬送されるのは収容器21とそれに支持されたハニカム乾燥体10である。ハニカム乾燥体切断装置20において、ハニカム乾燥体10の軸方向がホイール砥石5の面方向に直交した状態で(図2Aを参照)、ホイール砥石5を回転させながら、ホイール砥石5がハニカム乾燥体10の切断部101を通過するように(図2A、図2B及び図5における矢印の方向に)、LMガイドで収容器21を搬送させれば、ハニカム乾燥体10が切断部101で切断され、欠けの発生がないまま、製品部10aと2つの切除部10bに分離する。
力付与機24が存在せず、切断にかかる背分力Ptと切除部10bの重量Pwとに対抗する力Pmが切除部10bとなる部分にかけられていないと、切断の際、加工抵抗>未切断部の素地強度となったときに、切除部10bとなる部分が背分力の方向へ動いて、製品部10aとなる部分に欠け102が発生してしまうが(図7を参照)、力付与機24を有するハニカム乾燥体切断装置20によれば、このような問題は生じない。
次に、本発明に係るハニカム乾燥体切断装置の他の実施形態について、図8を参照して説明する。図8に示されるハニカム乾燥体切断装置80では、収容器121が、(例えば)6つのハニカム乾燥体10を、収容し支えるものになっている。このような態様によれば、ホイール砥石5を回転させながら、ホイール砥石5がハニカム乾燥体10の切断部を通過するように、(図示しない)LMガイドで収容器121を搬送させれば、6つのハニカム乾燥体10を、連続して切断することが出来る。この場合、力付与機24は、6つのハニカム乾燥体10毎に、6つ必要である。これら以外は、ハニカム乾燥体切断装置80は、既述のハニカム乾燥体切断装置20に準じた構成を採る(説明は省略する)。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
参考例1)コージェライト化原料、有機バインダ、及び水を、混合し、更に混練して坏土を得て、その坏土を押出成形機で押出成形した後、外周壁を形成して、ハニカム成形体を得た。そして、そのハニカム成形体を、乾燥機で乾燥させて、外径が円柱体のハニカム乾燥体を得た。これを切断すべきハニカム乾燥体10とした。このハニカム乾燥体10の軸長は400mm、軸に垂直な断面の直径は152mmであり、セルの断面形状は四角形、セル密度は46.5セル/cm、隔壁の厚さは300μmである。
そして、予め、切断にかかる背分力Pt(切断抵抗)を求めたところ、300[gf]であった。又、1つの切除部10bの重量Pwは160[gf]であった。背分力Ptと切除部の重量Pwとの和は460[gf]である。これに対し、既述のハニカム乾燥体切断装置20(図2A及び図2B)を用い、レギュレータでエアシリンダの圧力を調整し、その圧力から、シリンダー径、シリンダーロッド系に基づいて、力に換算し、支点と作用点の距離を掛けて、モーメントを計算することによって、力Pmが260[gf]になるように設定して、ハニカム乾燥体10を、製品部10aと、2つの切除部10bと、に分離をするように切断した。その際、ハニカム乾燥体切断装置20について、ハニカム乾燥体10の切断部がホイール砥石5を通過するときに、製品部10aが完全に切り離される点を図面上で求めておき、その場所に可能な限り近い点に、力Pmが作用するように、力付与機24を配設した。ホイール砥石5として、通常の(本発明を適用しない)状態で使用すると欠けが発生するものを用い、その回転数は1500〜3000rpmとした。又、収容器21(ハニカム乾燥体)の搬送速度(送り速度)は、通常条件のおよそ1.5倍とした。
同じ仕様の5体のハニカム乾燥体10に対して、同じ条件で切断を行ったところ、3体において、製品部10aの縁(外周部近傍)に欠けが発生した(フチ欠けあり)ことを確認したが、2体においては、欠けは発生していなかった(フチ欠けなし)。結果を、図11に示す。
(実施例)力Pmを520[gf]としたこと以外は、参考例1と同様にして、ハニカム乾燥体10を切断した。同じ仕様の3体のハニカム乾燥体10に対して、同じ条件で切断を行ったところ、3体全てにおいて、欠けは発生していなかった(フチ欠けなし)。
結果を、図11に示す。
(実施例)力Pmを1070[gf]としたこと以外は、参考例1と同様にして、ハニカム乾燥体10を切断した。同じ仕様の3体のハニカム乾燥体10に対して、同じ条件で切断を行ったところ、3体全てにおいて、欠けは発生していなかった(フチ欠けなし)。結果を、図11に示す。
(比較例1)力Pmを0[gf]とした(力Pmをかけなかった)こと以外は、参考例1と同様にして、ハニカム乾燥体10を切断したところ、製品部10aの縁(外周部近傍)に欠けが発生していた(フチ欠けあり)。結果を、図11に示す。
[背分力Ptの算出]図9に示される切削動力(切断抵抗)測定装置を用いた。この切削動力測定装置は、実施例で用いたものと同じホイール砥石5とハニカム乾燥体10を使用して、切削動力計90(キスラー社製、型番9257B)によって、切断のときの切削動力を求める装置である。具体的には、図10に示されるように、切断の過程における、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向それぞれの負荷が、電圧値[V]として切削動力計90から出力されるので、切断の過程を5等分して(図10に示される丸数字1〜5の区間:横軸)、最後の過程(図10における5番目の過程(一番右側))における負荷(電圧値)のY方向とX方向の合力を時間平均したものを、切除部が切り離される瞬間に掛かり得る最大負荷と規定し、この最大負荷を背分力Ptとした。尚、図10における横軸(時間軸)に示されるサンプル数は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれについて178、サンプリング周期は10msec.である。
[切除部の重量Pwの算出]予め、実施例と同じ切断部で切断し、得られた1つの切除部10bを、重量計(アズワン社製、型番IB−5000)で測定した。
本発明に係るハニカム乾燥体の切断方法及びハニカム乾燥体切断装置は、フィルタエレメントや触媒担体として多用されるハニカム構造体の製造過程において、ハニカム乾燥体を切断する手段として、好適に利用される。
5:ホイール砥石
10:ハニカム乾燥体
10a:製品部
10b:切除部
11:隔壁
12:セル
20,80:ハニカム乾燥体切断装置
21:収容器
22:押当バー
23:エアシリンダ
24:力付与機
35:台金
36:砥粒層
38:取付孔
90:切削動力計
101:切断部
121:収容器

Claims (6)

  1. 外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と切除部とに分離をする方法であって、
    前記切断にかかる背分力Ptと、前記切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、Pt+Pw<Pmを満たすように、前記切除部となる部分にかけながら、ハニカム乾燥体の切断をするハニカム乾燥体の切断方法。
  2. 前記力Pmが、前記切断の終了時に、前記ハニカム乾燥体が製品部と切除部とに分離される部分である切断部の近傍にかけられる請求項1に記載のハニカム乾燥体の切断方法。
  3. 前記ハニカム乾燥体の外形が、円柱体である請求項1又は2に記載のハニカム乾燥体の切断方法。
  4. 外形が柱体のハニカム乾燥体を軸方向に垂直に切断をして、製品部と切除部とに分離をする装置であって、
    回転して周縁によってハニカム乾燥体の切断をする、円盤状の切断手段と、
    前記ハニカム乾燥体を、前記製品部となる部分で支える支持手段と、
    前記柱体のハニカム乾燥体の軸方向が前記円盤状の切断手段の面方向に直交した状態で、前記円盤状の切断手段がハニカム乾燥体の切断部を通過するように、前記切断手段又は前記支持手段を搬送する搬送手段と、
    前記切断のときに、前記切断にかかる背分力Ptと、前記切除部の重量Pwと、に対抗する力Pmを、Pt+Pw<Pmを満たすように、前記切除部となる部分にかける力付与手段と、
    を有するハニカム乾燥体切断装置。
  5. 前記力付与手段における力Pmの発生源が、エアシリンダである請求項4に記載のハニカム乾燥体切断装置。
  6. 前記搬送手段が、前記支持手段を搬送するものであり、前記力付与手段が、前記支持手段に固定されている請求項4又は5に記載のハニカム乾燥体切断装置。
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