JP5373958B2 - 電子写真現像剤用のキャリア芯材、電子写真現像剤用のキャリア、および電子写真現像剤 - Google Patents
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電子写真現像剤用のキャリア芯材であって、
マグネタイトまたはマンガンフェライトからなり、
BET法により測定された当該キャリア芯材の比表面積をBET比表面積とし、当該キャリア芯材を真球と仮定したときの比表面積を真球相当比表面積としたとき、[BET比表面積]/[真球相当比表面積]の値が、16.2以上、25.8以下であり、
走査電子顕微鏡での反射電子像解析により測定した表面粗さRaの値が、0.050μm以下であり、
見掛密度が、2.40g/cc以上である、ことを特徴とする電子写真現像剤用のキャリア芯材である。
外部磁場1000Oeにおける磁化率であるσ1000の値が、20emu/g以上、75emu/g以下である、ことを特徴とする第1の発明に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材である。
平均粒径が15μm以上80μm以下である、ことを特徴とする第1または第2の発明に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材である。
24時間攪拌後の帯電量の低下率が、初期帯電量の10%以下である、ことを特徴とする第1から第3の発明のいずれかの発明に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材である。
第1から第4の発明のいずれかの発明に記載のキャリア芯材を樹脂で被覆してなる、ことを特徴とする電子写真現像剤用のキャリアである。
第5の発明に記載の電子写真現像剤用のキャリアと、トナーとを含む、ことを特徴とする電子写真現像剤である。
そして、本発明に係るキャリア芯材は、当該極めて微細な凹凸構造により樹脂との密着性を向上させる為、本発明に係るキャリアや電子写真現像剤は高い耐久性を発揮することが出来るのだと考えられる。一方、本発明に係るキャリア芯材は、全体として見れば平坦な構造を有しているため、現像器装置内でのキャリア同士の衝突の際、粒子の割れ、欠けの発生原因となり易い部分が存在せず、高い画像特性を維持出来るのだと考えられる。
さらに、本発明に係るキャリア芯材の見掛密度は、2.40g/cc以上である。つまり、当該キャリア芯材は、粒子内部および表面にほとんど空孔が存在しない。従って、当該観点からも機械的強度が強く、現像器装置内でのキャリア同士の衝突の際、粒子の割れ、欠けが発生し難く、高い画像特性を維持出来るのだと考えられる。
一方、磁化率が75mu/g以下であることにより、マグネットロール上に形成される磁気ブラシが、感光体を傷つける危険性を招くことを回避できる。
関し、本発明に係るキャリア芯材は、上述のように表面に極めて微細な凹凸を多数有するため、芯材と樹脂との密着性を向上させることが可能である。この芯材と樹脂との密着性を向上の為、24時間攪拌後の帯電量の低下率が、初期帯電量の10%以下に抑制できたものと考えられる。
本発明に係るキャリア芯材の前駆体となる粒子を得るには、公知の造粒方法を用いればよいが、特に噴霧乾燥法が好適に用いられる。噴霧乾燥により造粒を行う場合には、水中に原料粉末を混合、分散させスラリーとした後、乾燥風中に噴霧することにより、所望の粒度分布を持った前駆体粒子を得ることができる。
次に、造粒により得られた前駆体粒子を、焼成することで磁性相とする。焼成は、造粒粉を加熱した炉に投入し、所定の時間加熱することで行われる。焼成温度は目的となる磁性相が生成する温度範囲に設定すれば良いが、たとえばマグネタイトやソフトフェライトを製造する場合には1000〜1300℃の温度範囲で焼成することが一般的である。当該焼成炉は電気炉などの一般的な加熱炉を用いれば良い。
本発明に関するキャリア粒子の表面形状を得るためには、上述の焼成工程に続けて、得られた焼成物を強い還元雰囲気、好ましくは酸素分圧10−10atm以下に調整した炉内で600℃〜1000℃の温度範囲にて転動させることで熱処理を行う。
従って、加熱炉としては、得られた焼成物を転動出来る回転炉等を用いる。これによって、後述するキャリア粒子の表面に微細な凹凸発生させる表面処理を実施することが出来る。具体的には、0.5rpm〜10rpm程度の回転が可能で、焼成時の雰囲気を制御できるロータリーキルンが好ましい。
当該強い還元雰囲気の調製は、一酸化炭素や水素などの還元性ガス、またはそれらの還
元性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスを炉内にフローすることにより実施される。または、カーボンなどの還元剤を、表面処理工程実施時に炉内へ投入しても良い。
本発明者らの検討の結果、表面処理工程実施時の炉内温度が600℃以上あれば、本発明の特徴である微細な構造を持つ表面形状が得られ、炉内温度が1000℃以下であれば粒子同士の焼結や炉壁への付着が起こらない。
また、加熱炉を転動させながら熱処理を行うことで、粒子の微細な表面構造を均一に形成させることが可能となり、処理ばらつきを低減出来る。
表面処理工程を終えた粒子を篩により分級することにより、所望の粒度分布を持った本発明に係るキャリア芯材を得ることができる。
本発明に係るキャリア芯材へ樹脂をコートすることにより、帯電性の付与および耐久性の向上を行う。コートの樹脂としては、シリコーン系樹脂などが用いられる。被覆方法に関しては、公知の手法により行えば良い。この結果、本発明に係るキャリアを得ることができる。
さらに、本発明に係るキャリアと、適宜なトナーとを混合することで本発明に係る電子写真現像剤を得ることができる。
以下、本実施例および比較例において行った各特性値の測定方法を示す。
<粒度分布>
キャリア芯材の粒度分布は、マイクロトラック(日機装(株)製、Model:9320−X100)を用いて測定した。尚、本発明においては、体積率50%までの積算粒径であるD50の値を粉末の平均粒径として記載した。
キャリア芯材の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化率の測定を行い、外部磁場1000Oeにおける磁化率σ1000(emu/g)を測定した。
キャリア芯材の見掛密度は、JIS−Z2504:2000により測定した。
キャリア芯材の比表面積は、マウンテック社製Macsorb(model−1201)を用い、200℃で15分間脱気した試料に対して測定をおこなった。吸着ガスとしては窒素を使用した。
粒子の表面凹凸の測定は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM:日立製S−4700)と、それに付属する三次元形状測定装置(日立株式会社製、RD−500w)とを用い、反射電子検出器により観測された反射電子像を解析することにより、算術表面粗さRaの値を算出した。
尚、表面粗さRaの値は、50個のキャリア芯材粒子表面粗さの平均値である。
表面状態を反映する特性値は、粗度パラメータにより構成されたsurfacefactorとした。但し、W60とした。
測定条件は、加速電圧3kV、電流20μA、W.D.12mm、対物絞り2、Con
dLens1:5、測定倍率5000倍とした。
帯電量の測定は、ガラス瓶中にキャリアとトナーとを入れ、これを振とう器により30分間攪拌した。当該攪拌後、400メッシュの篩網上において、吸引圧8.0kPaで1分間吸引することによりトナーを除去し、残ったキャリアの電荷量(Q)を測定し、重量あたりの帯電量
帯電量(μC/g)=Q(μC)/M(g)
を算出した。但し、Mはキャリアの重量である。
キャリアの耐久性は、振とう器による攪拌を24時間実施し対外は、上記帯電量測定と同様の操作を行い、攪拌後のキャリアの帯電量を測定し、初期の帯電量との比較を行うことにより評価した。
Fe2O3(平均粒径:0.6μm)7.2kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm)2.8kgを純水3.0kg中に分散し、湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理を行い、Fe2O3とMn3O4の混合スラリーを得た。尚、純水には分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加した。この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒物を得た。
この乾燥造粒物を電気炉に投入し、1150℃で3時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物を粉砕後に篩を用いて分級し、平均粒径36μmとなるフェライト粉末を得た。
さらに、このフェライト粉末にカーボン粉末を1.0wt.%加え、ロータリーキルンに投入して、窒素ガスフロー雰囲気下で転動させながら800℃で1時間熱処理を行い、実施例1に係るキャリア芯材を得た。
次に、キャリア芯材の樹脂との密着性を評価するため、実施例1に係るキャリア芯材に対して樹脂コートを行い、実施例1に係るキャリアを製造した。
前記キャリア芯材と樹脂溶液とを質量比でキャリア芯材:樹脂溶液=95:5の割合で撹拌機に導入し、樹脂溶液にキャリア芯材を3時間浸漬しながら150〜250℃の範囲で加熱撹拌した。樹脂溶液はシリコーン系樹脂(信越化学製、KR251)をトルエンに溶解させた。これにより、キャリア芯材100質量部に対し樹脂が0.5質量部の割合でコーティングを行った。この樹脂被覆されたキャリア芯材を熱風循環式加熱装置にて250℃で5時間加熱することにより、樹脂被覆層を硬化させて、実施例1に係る磁性キャリアを得た。
さらに、実施例1に係るキャリアの初期の帯電量は28.3μC/g、24時間後の帯電量は26.9μC/g、24時間後での帯電量低下率は4.9%であった。
焼成後のフェライト粉末に対し、900℃で熱処理を行うこと以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2に係るキャリア芯材とキャリアとを得た。
実施例2に係るキャリア芯材の平均粒径は28.4μm、見掛け密度は2.42g/cc、BET比表面積は0.68m2/g、真球相当比表面積0.042m2/g、従って
[BET比表面積]/[真球相当比表面積]は16.2、Raは0.027μm、σ1000は52.7emu/g、であった。
さらに、実施例2に係るキャリアの初期の帯電量は27.6μC/g、24時間後の帯電量は25.9μC/g、従って24時間後での帯電量低下率は6.2%であった。
焼成後のフェライト粉末に対し、熱処理を行わないこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1に係るキャリア芯材とキャリアとを得た。
比較例1に係るキャリア芯材の平均粒径は27.4μm、見掛け密度は2.32g/cc、BET比表面積は0.06m2/g、真球相当比表面積0.044m2/g、従って[BET比表面積]/[真球相当比表面積]は1.36、Raは0.017μm、σ1000は71.3emu/gであった。
さらに、比較例1に係るキャリアの初期の帯電量は27.9μC/g、24時間後の帯電量は22.4μC/g、従って24時間後での帯電量低下率は19.7%であった。
焼成時の温度を950℃で行うこと以外は比較例1と同様の操作を行い、比較例2に係るキャリア芯材とキャリアとを得た。
比較例2に係るキャリア芯材の平均粒径は27.4μm、見掛け密度は2.18g/cc、BET比表面積は0.58m2/g、真球相当比表面積0.044m2/g、従って[BET比表面積]/[真球相当比表面積]は13.2、Raは0.025μm、σ1000は55.0emu/gであった。
さらに、比較例2に係るキャリアの初期の帯電量は27.8μC/g、24時間後の帯電量は14.5μC/g、従って24時間後での帯電量低下率は47.8%であった。
Fe2O3(平均粒径:0.6μm)10.0kgを純水3.0kg中に分散し、湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理を行い、Fe2O3のスラリーを得た。尚、純水には分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加した。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒物を得た。
この乾燥造粒物を、電気炉に投入し1180℃で3時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物を粉砕後に篩を用いて分級し、平均粒径35μmとなるマグネタイト粉末を得た。
さらに、このマグネタイト粉末にカーボン粉末を1.0wt.%加え、ロータリーキルンに投入して、窒素ガスフロー雰囲気下で転動させながら800℃で1時間熱処理を行うことにより、実施例3に係るキャリア芯材とキャリアとを得た。
実施例3に係るキャリア芯材の平均粒径は30.2μm、見掛け密度は2.45g/cc、BET比表面積は0.98m2/g、真球相当比表面積0.038m2/g、従って[BET比表面積]/[真球相当比表面積]は25.8、Raは0.044μm、σ1000は55.2emu/gであった。
さらに、実施例3に係るキャリアの初期の帯電量は29.0μC/g、24時間後の帯電量は27.4μC/g、従って24時間後での帯電量低下率は5.5%であった。
図1に実施例1、図2に実施例2、図3に実施例3、図4に比較例1、そして、図5に比較例2に係るキャリア芯材のSEM写真(倍率1000倍)をそれぞれ示し、図6に実施例1に係るキャリア芯材のFE―SEM写真(倍率5000倍)を示す。
従来の技術に係る一般的なキャリア芯材は、図4に示されるような、いくつかのグレインが集合した粒子形状となっており、グレイン部分は比較的平滑となっている。これに対
し、本発明に関するキャリア芯材は、図1から3、6に見られるように、粒子表面に微細な析出物を有し、表面凹凸が非常に大きい形状となり、後述するように比表面積が大きくなっている。
一方、図5に示す比較例2に係るキャリア芯材は、従来技術に係る製造方法である「焼成温度の低下」によって、本発明に係るキャリア芯材と同等の比表面積を持つキャリア芯材を製造したものである。しかし、比較例2に係るキャリア芯材は、焼結が十分進行しておらず、多孔質形状の粒子となっていることが解る。
尚、本発明者は、図6等から実施例1のRa値を測定した。以降の実施例、比較例でも同様である。
ここで、実施例1、2および比較例1に係るキャリア芯材は、磁性相であるマンガンフェライトを得る焼成工程までは同一であるが、その後の熱処理による表面改質の条件、有無の点で異なっている。熱処理による表面改質処理を実施しなかった比較例1に係るキャリア芯材と比較して、当該処理を行った実施例1、2に係るキャリア芯材は、10〜15倍の比表面積を有しており、SEM像に見られる粒子形状の差を反映したものとなっている。
また、実施例3は、磁性相がマグネタイトであるキャリア芯材の結果である。当該結果より、本発明に係る熱処理を行うことにより、磁性相がマグネタイトであっても、実施例1、2と同様に粒子表面に微細な析出物を発生させ表面凹凸が非常に大きい形状とし、比表面積を大きく出来ることを示している。
表1の結果から明らかなように、実施例1から3に係るキャリア粒子は、24時間攪拌後の帯電量の低下は小さく、形状観察の結果粒子の割れ、欠けもほとんど見られなかった。
この結果から、実施例1から3に係るキャリア粒子は、キャリア芯材が表面に微細な構造を持つため樹脂との密着性が極めて大きく、加えて見掛密度が高く空孔がほとんど存在しないため機械的高度にも優れていることを裏付けていると考えられる。
Claims (6)
- 電子写真現像剤用のキャリア芯材であって、
マグネタイトまたはマンガンフェライトからなり、
BET法により測定された当該キャリア芯材の比表面積をBET比表面積とし、当該キャリア芯材を真球と仮定したときの比表面積を真球相当比表面積としたとき、[BET比表面積]/[真球相当比表面積]の値が、16.2以上、25.8以下であり、
走査電子顕微鏡での反射電子像解析により測定した表面粗さRaの値が、0.050μm以下であり、
見掛密度が、2.40g/cc以上である、ことを特徴とする電子写真現像剤用のキャリア芯材。 - 外部磁場1000Oeにおける磁化率であるσ1000の値が、20emu/g以上、75emu/g以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材。
- 平均粒径が、15μm以上、80μm以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材。
- 24時間攪拌後の帯電量の低下率が、初期帯電量の10%以下である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真現像剤用のキャリア芯材。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の芯材を樹脂で被覆してなる、ことを特徴とする電子写真現像剤用のキャリア。
- 請求項5に記載の電子写真現像剤用のキャリアと、トナーとを含む、ことを特徴とする電子写真現像剤。
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