JP5373582B2 - セルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
[2] 前記一般式(1)において、前記Xがフェニル基を有する置換基であることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[3] 前記一般式(1)において、前記Xがハメットのσp値およびσm値がσp≧0 かつ σm≧0の関係を満たす置換基を表すことを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[4] 前記一般式(1)において、前記R1およびR2のいずれか一方が水素原子であり、もう一方が炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
[6] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムまたは[5]に記載の位相差フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする偏光板。
[7] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム、[5]に記載の位相差フィルムまたは[6]に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。
[8] 下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム用湿度依存性改良剤。
i)σm<0 かつ σp≧0、
ii)σp<0 かつ σm≧0、または
iii)σp≧0 かつ σm≧0のうちいずれかの関係を満たす置換基を表す。)
本発明のセルロースアシレートフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、セルロースアシレートと、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
i)σm<0 かつ σp≧0、
ii)σp<0 かつ σm≧0、または
iii)σp≧0 かつ σm≧0のうちいずれかの関係を満たす置換基を表す。)
以下、本発明のフィルムについて説明する。
(一般式(1)で表される化合物の構造)
本発明のフィルムは、前記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
ここで、セルロースアシレートフィルムの使用環境の湿度の変化に対するRe、Rthの変動は、セルロースアシレートの置換基に存在するカルボニル基に水分子が配位することにより、セルロースアシレートの複屈折性が変化することで生じていると推測される。本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、水素結合性基を適当な位置に有するため、添加剤として用いるとセルロースアシレートのカルボニル基または水酸基に効果的に相互作用し、セルロースアシレートフィルムの使用環境の湿度の変化に対するRe、Rthの変動を抑制することができる。すなわち、前記一般式(1)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルムの湿度依存性改良剤として好ましく用いることができる。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物の構造の詳細について、説明する。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアルキル基である場合、炭素数1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアルケニル基である場合、炭素数1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアルキニル基である場合、炭素数2〜15であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である場合、環状、直鎖または分岐のいずれであってもよいが、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にヘテロアリール基である場合、炭素数5〜18であることが好ましく、5〜12であることがより好ましい。
前記R1およびR2がそれぞれ独立にアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
i)σm<0 かつ σp≧0、
ii)σp<0 かつ σm≧0、または
iii)σp≧0 かつ σm≧0のうちいずれかの関係を満たす置換基を表す。)
前記Xは、ハメットのσp値およびσm値が式ii)または式iii)の関係を満たす置換基を表すことが好ましく、ハメットのσp値およびσm値が式ii)または式iii)を満たし、かつ、ともに1以下である置換基を表すことがより好ましい。
なお、本明細書中でいうハメットの置換基定数σp、σmは、Chemical Review、91巻、165〜195ページ(1991年)に記載の値をいう。
炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12の芳香環を含む置換基であることがより好ましく、フェニル基を有する置換基であることがより好ましい。
前記Xがフェニル基を有する置換基である場合、前記Xはフェニル基がそのままバルビツール酸の環骨格に連結している置換基であっても、連結基を介してフェニル基を有する置換基であってもよい。
また、前記Xはさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキニル基、炭素数5〜20のヘテロアリール基または炭素数6〜20のアリール基などが好ましい。
特に、前記Xがアルキル基である場合は、さらにハロゲン原子を置換基として有することが好ましく、塩素原子を置換基として有することがより好ましい。
また特に、前記Xがフェニル基を有する置換基である場合は、アルキル基を置換基として有することが好ましい。その中でも、該フェニル基がアルキル基を有していることがさらに好ましく、該フェニル基のいずれの位置がアルキル基で置換されていてもよいが、メタ位またはパラ位が置換されていることが好ましく、パラ位が置換されていることがより好ましい。
前記Xが連結基を介してフェニル基を有する置換基である場合、該連結基としては、炭素数1〜10のアルキレンオキシ基、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレンオキシ基がより好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。ただし、本発明で用いることができる前記一般式(1)で表される化合物は、これらに限定されるものではない。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物の分子量は150〜1500であることが好ましく、200〜1000であることがより好ましい。前記範囲の分子量を有する化合物を使用することにより、フィルム製造工程における添加剤の揮散を抑制でき、かつセルロースアシレートとの相溶性を確保しやすくなり好ましい。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物の製造方法の詳細を、原料、置換基の導入方法、溶媒、製造工程などを含め、以下説明する。
本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物は、対応するウレア誘導体とマロン酸エステル誘導体とをナトリウムエトキシド存在下で縮合させる方法等により合成される。
前記一般式(1)で表される化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%であることが好ましい。1質量%以上であれば、湿度依存性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、セルロースアシレートフィルムを製膜した場合にブリードアウトや染み出しも発生しにくい。前記一般式(1)で表される化合物のさらに好ましい添加量は、セルロースアシレートに対して2〜18質量%であり、特に好ましくは3〜15質量%である。
また、前記一般式(1)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルム中に1種添加しても、複数種添加してもよいが、合計添加量が前記添加量の範囲であることが好ましい。
次に本発明で使用するセルロースアシレートについて詳しく説明する。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度(アシル化度)は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。本発明において、セルロース体の置換度はセルロース体を重水素置換されたジメチルスルフォキシド等の溶剤に溶解して13C−NMRスペクトルを測定し、アシル基中のカルボニル炭素のピーク強度比から求めることにより算出することができる。セルロースアシレートの残存水酸基をセルロースアシレート自身が有するアシル基とは異なる他のアシル基に置換したのち、13C−NMR測定により求めることができる。測定方法の詳細については、手塚他(Carbohydrate.Res., 273(1995)83-91)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートのアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基が特に好ましく、アセチル基であることがより好ましい。
本発明においては、置換基および/または置換度の異なる2種のセルロースアシレートを併用、混合して用いてもよいし、後述の共流延法などにより、異なるセルロースアシレートからなる複数層からなるフィルムを形成してもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと前記一般式(1)で表される化合物を含む溶液を製膜して製造することができ、例えばソルベントキャスト法により製造することができる。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
前記エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。また、前記エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、前記有機溶媒として用いることができる。前記有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上述の好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
前記炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
前記炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
また、2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
また、2種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
では、通常の溶解方法ではセルロースアシレートを溶解させることが困難な有機溶媒中にも、セルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアシレートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能であり、支持体の進行方向に間隔をおいて設けられた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよい。これらは、例えば、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報に記載の方法を用いることができる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによっても、フィルム化することもできる。これは、例えば、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および、特開平6−134933号の各公報に記載の方法を用いることができる。さらに特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高・低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押し出すセルロースアシレートフィルムの流延方法を用いることもできる。
また、2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成形したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行うことにより、フィルムを作製することもできる。例えば、特公昭44−20235号公報に記載の方法を挙げることができる。
流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を2種以上用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明におけるセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
従来の単層液では、必要なフィルムの厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押し出すことが必要である。その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良となったりして問題となることが多かった。この問題の解決方法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押し出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
本発明では、セルロースアシレート溶液に前記一般式(1)で表される化合物をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時セルロースアシレートと混合してもよい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、延伸処理を行うことが好ましい。延伸処理によりセルロースアシレートフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。セルロースアシレートフィルムの延伸方向は幅方向、長手方向のいずれでも好ましい。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。
また、流延後にドープ溶剤が残存した状態で延伸を行う場合、乾膜よりも低い温度で延伸が可能となり、この場合、100℃〜170℃が好ましい。
延伸速度は1%/分〜300%/分が好ましく、10%/分〜300%/分がさらに好ましく、30%/分〜300%/分が最も好ましい。
フィルムの幅方向に延伸する延伸工程と、フィルムの搬送方向(長手方向)に収縮させる収縮工程を含むことを特徴とする製造方法においてはパンタグラフ式あるいはリニアモーター式のテンターによって保持し、フィルムの幅方向に延伸しながら搬送方向にはクリップの間隔を徐々に狭めることでフィルムを収縮させることが出来る。
特に、フィルムの幅方向に10%以上延伸する延伸工程と、フィルムの幅方向にフィルムを把持しながらフィルムの搬送方向を5%以上収縮させる収縮工程とを含むことが好ましい。
なお、本発明でいう収縮率とは、収縮方向における収縮前のフィルムの長さに対する収縮後のフィルムの収縮した長さの割合を意味する。
収縮率としては5〜40%が好ましく、10〜30%が特に好ましい。
(レターデーション)
次に本発明のセルロースアシレートフィルムの特性について詳しく説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学特性の好ましい範囲は、用途に応じて変動する。
VAモード用としては589nmで測定したReは30〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜100nmのものがさらに好ましい。Rthは70〜400nmのものが好ましく、100〜300nmのものがより好ましく、100〜250nmのものがさらに好ましい。
TNモード用としては589nmで測定したReは0〜100nmのものが好ましく、20〜90nmのものがより好ましく、50〜80nmのものがさらに好ましい。Rthは20〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜120nmのものがさらに好ましい。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基に、以下の式(21)および式(22)よりRthを算出することもできる。
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。式(21)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの厚さを表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)がさらに算出される。
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの厚みは30μm〜100μmが好ましく、30μm〜80μmがさらに好ましく、30μm〜60μmが最も好ましい。
(鹸化処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムはアルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。鹸化の方法については、特開2007−86748号公報の〔0211〕と〔0212〕に記載され、偏光板の偏光子の作り方、偏光板の光学特性等については同公報の〔0213〕〜〔0255〕に記載されており、これらの記載を基に本発明のフィルムを保護フィルムに用いた偏光板を作製することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム、または光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースアシレートフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して光学補償フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
本発明の偏光板は、本発明のセルロースアシレートフィルムまたは本発明の位相差フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする。
偏光板は、一般に、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護膜処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護膜で構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
本発明の液晶表示装置において、偏光板の透過軸と本発明のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が、実質的に平行であることが好ましい。ここで、実質的に平行であるとは、本発明のセルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とは、そのずれが5°以内であることをいい、1°以内、好ましくは0.5°以内であることが好ましい。ずれが1°以内であると、偏光板クロスニコル下での偏光度性能が低下して光抜けが生じにくくなるため好ましい。
本発明における偏光板は、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板としても好ましく使用される。機能化のための反射防止フィルム、輝度向上フィルム、他の機能性光学フィルム、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア層については、特開2007−86748号公報の〔0257〕〜〔0276〕に記載され、これらの記載を基に機能化した偏光板を作成することができる。
本発明における偏光板は反射防止フィルムと組み合わせて使用することができる。反射防止フィルムは、フッ素系ポリマー等の低屈折率素材を単層付与しただけの反射率1.5%程度のフィルム、または薄膜の多層干渉を利用した反射率1%以下のフィルムのいずれも使用できる。本発明では、透明支持体上に低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を積層した構成が好ましく使用される。また、日東技報,vol.38,No.1,May,2000,26頁〜28頁や特開2002−301783号公報などに記載された反射防止フィルムも好ましく使用できる。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
前記含シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物が好ましいが、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ(株)製)や両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報)等を使用することもできる。シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化させてもよい(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報、特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)。
低屈折率層には、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有させることも好ましく行うことができる。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
このような超微粒子は、粒子表面を表面処理剤で処理したり(シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造としたり(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤を併用する(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858B1明細書、特開2002−2776069号公報等)等の態様で使用することができる。
前記高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
前記中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
本発明における偏光板は、輝度向上フィルムと組み合わせて使用することができる。輝度向上フィルムは、円偏光もしくは直線偏光の分離機能を有しており、偏光板とバックライトとの間に配置され、一方の円偏光もしくは直線偏光をバックライト側に後方反射もしくは後方散乱する。バックライト部からの再反射光は、部分的に偏光状態を変化させ、輝度向上フィルムおよび偏光板に再入射する際、部分的に透過するため、この過程を繰り返すことにより光利用率が向上し、正面輝度が1.4倍程度に向上する。輝度向上フィルムとしては異方性反射方式および異方性散乱方式が知られており、いずれも本発明における偏光板と組み合わせることができる。
本発明における偏光板は、さらに、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けた機能性光学フィルムと組み合わせて使用することも好ましい。また、これらの機能層は、前述の反射防止フィルムにおける反射防止層、あるいは光学異方性層等と同一層内で相互に複合して使用することも好ましい。これらの機能層は、偏光子側および偏光子と反対面(より空気側の面)のどちらか片面、または両面に設けて使用できる。
本発明における偏光板は耐擦傷性等の力学的強度を付与するため、ハードコート層を透明支持体の表面に設けた機能性光学フィルムと組み合わせることが好ましく行われる。ハードコート層を、前述の反射防止フィルムに適用して用いる場合は、特に、透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
前記ハードコート層は、光および/または熱による硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、または、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものを好ましく使用することができる。
ハードコート層の膜厚は、0.2μm〜100μmであることが好ましい。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、本発明における偏光板を液晶表示装置に適用した際の、上下左右方向の視野角特性(色相と輝度分布)改良するために使用される。本発明では、前方散乱層は屈折率の異なる微粒子をバインダー分散した構成が好ましく、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子との相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等の構成を使用することができる。また、本発明における偏光板をヘイズの視野角特性を制御するため、住友化学(株)の技術レポート「光機能性フィルム」31頁〜39頁に記載された「ルミスティ」と組み合わせて使用することも好ましく行うことができる。
アンチグレア(防眩)層は、反射光を散乱させ映り込みを防止するために使用される。アンチグレア機能は、液晶表示装置の最表面(表示側)に凹凸を形成することにより得られる。アンチグレア機能を有する光学フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
フィルム表面に凹凸を形成する方法は、例えば、微粒子を添加して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成する方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、フィルム表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等を好ましく使用することができる。
次に本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、本発明のセルロースアシレートフィルム、本発明の位相差フィルムまたは本発明の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする。
本発明の液晶表示装置の液晶セルはVAモードであることが好ましい。
例えば、VA方式では液晶分子が電界印加により、一つの画素内で異なる複数の領域に傾斜することで視角特性が平均化される。一画素内で配向を分割するには、電極にスリットを設けたり、突起を設け、電界方向を変えたり電界密度に偏りを持たせる。全方向で均等な視野角を得るにはこの分割数を多くすればよいが、4分割、あるいは8分割以上することでほぼ均等な視野角が得られる。特に8分割時は偏光板吸収軸を任意の角度に設定できるので好ましい。
〔セルロースアシレートフィルムの製膜〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液1を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液1の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.43、重合度340のセルロースアセテート
100.0質量部
前記化合物1 4.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1において添加剤の種類および量を下記表1に記載したとおりに変更した以外は同様にして、実施例2〜21および比較例1〜11のセルロースアシレートフィルムを製造した。また、前記化合物1〜5の一般式(1)における置換基Xのハメット値について、σp値とσm値をそれぞれ下記表1にあわせて記載した。このようなバルビツール酸誘導体のハメット値は、一般式(1)と異なるバルビツール酸誘導体の場合、バルビツール酸骨格の環の−CH2−の部分の水素原子に置換している置換基のハメット値に相当する。
以上のようにして製造した各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルムについて、幅方向3点(中央、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、3cm角の大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値から求めた。
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長589nmにおける位相差を測定することから、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。得られた結果をそれぞれ下記表1に記載した。
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃・相対湿度10%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe(10%)、Rth(10%))、および25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe(80%)、Rth(80%))から、Reの湿度依存性ΔReと、Rthの湿度依存性ΔRthとを算出した。得られた結果をそれぞれ下記表1に記載した。
Claims (7)
- 前記一般式(1)において、前記Xがフェニル基を有する置換基であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記一般式(1)において、前記Xがハメットのσp値およびσm値がσp≧0 かつ σm≧0の関係を満たす置換基を表すことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムまたは請求項4に記載の位相差フィルムを少なくとも1枚含むことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項4に記載の位相差フィルムまたは請求項5に記載の偏光板を少なくとも1枚含むことを特徴とする液晶表示装置。
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