JP5365596B2 - ロボット及びその製造方法 - Google Patents
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また、上記課題を解決するため、本発明の他の観点によれば、第1アームに連結された第1アクチュエータを収容する第1収容部を有し、前記第1収容部は、樹脂Aの硬化物により形成された基礎フレームと、前記樹脂Aの硬化物よりも高い融解温度を有する樹脂Bの硬化物により形成された第1フレームとを接合して構成された関節フレームを備えたロボットアームを有するロボットの製造方法であって、前記樹脂Bにより前記第1フレームを形成する工程と、前記第1フレームを金型に設置し、前記樹脂Bの硬化物の融解温度よりも低い温度により、前記金型に前記樹脂Aを射出成形することにより前記基礎フレームを形成する工程と、を有することを特徴とするロボットの製造方法が提供される。
(1−1.ロボットアームの構成)
まず、図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るロボットアームについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットアームについて説明するための説明図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係るロボットアームの関節フレームについて説明するための説明図である。
以下、これらの構成について詳細に説明する。なお、本実施形態におけるロボットアーム1は、1軸以上のロボットアームを有するロボットの一例を示すものであって、当該ロボットアームと類似構造を有し、複数の自由度を持つ多関節型のロボットに適用されてもよいことはいうまでもない。
また、第1フレーム102と第1アクチュエータ20をボルトで締結した際、クリープの発生により、締め付けトルクが低下することを防止する必要がある。そこで、第1フレーム102を形成する樹脂Bには、樹脂Aよりもさらにガラス転移温度が高い、または弾性率の高い硬化物となる樹脂が用いられる。
また、第2フレーム103の内周面は、第2アクチュエータ40の外殻43の外周面が内接し、略合致して装着されるように高い精度(寸法公差:0.05mm以下)が要求される。そこで、上記のリング形状のように比較的単純な形状を単独で成形し、さらに樹脂を充填する際、成形器内部の温度、及び成形器内部にかかる圧力分布を均一にすることにより、樹脂の熱収縮時の不均一化を抑え、高精度の加工を行なうことができる。
第2フレーム103を形成する樹脂は、基礎フレーム101を形成する樹脂Aよりもさらにガラス転移温度が高い、または弾性率の高い硬化物となる第1フレーム102と同様の樹脂Bが用いられる。
なお、プリプレグ104を介せず、樹脂Aで形成される基礎フレーム101と樹脂Bで形成される第1フレーム102、及び樹脂Aで形成される基礎フレーム101と樹脂Bで形成される第2フレーム103を、それぞれの樹脂の化学的結合による接着力を利用して直接接合してもよいことはいうまでもない。この場合、例えばそれぞれの接合面に互いに嵌合する凹凸面を形成することにより、さらに強固に接合することができる。
次に、本発明における関節フレーム100の製造方法について説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係るロボットアームの関節フレームの製造方法について説明するための説明図である。
本実施形態における関節フレームの製造方法についての一例を下記(1)〜(3)に示す。なお、本実施形態で用いた金型は、理解を容易にするため各要素を模式的に示しており、本構造により特に制約を受けるものではない。
第1フレーム102及び第2フレーム103は、高精度の寸法が求められる。特に、第2フレーム103は、円筒形の第2アクチュエータ40の外周面が、第2フレーム103に内接して装着されるように、第2フレーム103の内径寸法は、特に高精度に成形されることが要求される。このため、別の成形器を用い、各々の成形器(図示せず)に樹脂Bを充填・硬化させて作製する。なお、高い加工精度を確保するため、成形時には射出温度及び金型温度を一定に保つことが重要であり、成形器の大幅な温度変化を生じさせないためには、1ロットを連続して成形することが好ましい。
次に、上述により作製された第1フレーム102及び第2フレーム103を予熱する。予熱温度は、樹脂の種類にもよるが、概ね100℃程度で余熱すればよい。その後、ポリイミドあるいはポリオレフィン系樹脂を主材とする高耐熱性のプリプレグ104を、第1フレーム102及び第2フレーム103の基礎フレーム101と接合される面に設置する。そして、第1フレーム102及び第2フレーム103を金型200内の下型201の所定位置に配置し、上型202及びスライド型203を設置する。
また、プリプレグ104の接着力を高めるために、予め該接合される面をサンドペーパ等を用いて荒らしてもよい。プリプレグ104は、後段の射出成形時に金型200の温度を上げることにより硬化して接着材の役割を果たす。
上述の金型200を射出成形機(図示せず)に設置して、所定の樹脂加熱温度、金型温度、成形圧の条件に設定し、樹脂Aを注入ゲート204から注入する。樹脂Aの注入を終え、所定の温度で所定時間放置して樹脂が固まった後、上型202及びスライド型203を取り外すことにより、基礎フレーム101、第1フレーム102及び第2フレーム103が一体化した関節フレーム100の成形体を取り出すことができる。
例えば、樹脂Aに、ガラス短繊維30%含有−ポリブチレンテレフタレートを用いた場合、樹脂加熱温度:260℃、金型温度:80℃、及び成形圧:175.5MPa(90%)の条件において射出成形を行い、一定の保圧後、60秒放置した後に金型の取り外しを行うと、関節フレーム100が完成する。
(1)樹脂の種類について
基礎フレーム101を形成した樹脂A、及び第1フレーム102、第2フレーム103を形成した樹脂Bについて説明する。使用した樹脂は下記の通りであり、表1に樹脂の構成とその特性値を示す。
(イ)ポリプロピレン(PP)
(ロ)ガラス短繊維30%含有ポリブチレンテレフタレート(GF30%PBT)
(ハ)ガラス短繊維30%含有ポリフェニレンサルファイド(GF 30%PPS)
(ニ)ガラス短繊維30%含有芳香族ナイロン(GF 30%PA)
(ホ)ガラス繊維&鉱物粒子50%含有ポリフェニレンサルファイド
〔(GF+MD)50%PPS〕
(ヘ)ガラス短繊維30%含有(GF30%PEEK)
(ト)ガラス短繊維30%含有液晶ポリマー(GF30%LCP)
GF:ガラス繊維,MD:鉱物粒子
上記製造方法により関節フレーム100を作製し、その寸法を測定することにより加工精度についての評価を行なった。本評価に試供した基礎フレーム101〔樹脂A〕と、第1フレーム102・第2フレーム103〔樹脂B〕の組み合わせを表2に示す。なお、樹脂A及び樹脂Bの構成、及びその組み合わせは一例であり、これらに限定されない。
また、基礎フレーム101と第2フレーム103との接合部分における熱膨張差は80ppm以下であり、第1アクチュエータ20及び第2アクチュエータ40駆動時の発熱による変形、及び接合面の接合強度の低下が生じる可能性は無視できる程度に小さいことが分かった。
同様の製造方法により関節フレーム100を作製し、第1フレーム102及び第1アクチュエータ20をボルト50により所定のトルクで締結した。その後、80℃の雰囲気下に一定時間放置する工程を経て、各ボルト50の締結トルクを測定することによりクリープ発生の評価を行なった。本評価に試供した基礎フレーム101〔樹脂A〕と、第1フレーム102・第2フレーム103〔樹脂B〕の組み合わせを表3に示す。なお、樹脂A及び樹脂Bの構成、及びその組み合わせは一例であり、これらに限定されない。
いずれの例についても、ロボットアームの動作に支障を与える程の締結トルクの大幅な低下は認められなかった。また、実際にロボットアームに組み込んで動作試験を行った際にも、第1アクチュエータ20は強固に固定されており、締結トルクの大幅な低下は認められなかった。
例えば、第1フレーム102と第1アクチュエータ20とをボルト50により、初期トルク1.74N・mで締結し、60℃で50日間保持したところ、残留トルクは1〜1.2N・mとなり、初期締結トルクの60〜70%を維持することができた。その後、ロボットアームの先端部を固定壁に接触させ、ロボットを動作させて、ぶつけ位置再現精度試験を行った。第1アクチュエータのモータ定格トルクの200%に達するまで電流値を徐々に増加させ、ダイヤルゲージを用いて位置のズレ幅を検証した。その結果、5回(サンプル:n=5)の試験において最大のズレ幅は0.15mmであった。要求される仕様は0.2mm以下であることから、仕様をクリアするとともに、締結トルクの大幅な低下の要因となるクリープは発生しないことを確認した。
また基礎フレーム101と第1フレーム102との接合部分における熱膨張差は10ppm以下であり、第1アクチュエータ20及び第2アクチュエータ40駆動時の発熱による変形、及び接合面の接合強度の低下は生じにくいことが分かった。このように、例3または例5の樹脂Bに供した芳香族ナイロンまたはポリエーテルエーテルケトンは、ガラス転移温度が高く、温度上昇による影響を受けにくいため、クリープの発生を防止する効果が高いことが分かった。また例4及び例6の樹脂Bは、ガラス繊維や鉱物粒子が多く含有されているために弾性率が高く、クリープの発生を防止する効果が高いことが分かった。
以上説明したように、本実施形態に係るロボットアーム1は、ロボットアームを構成する関節フレーム100を樹脂で高精度に形成することができるようになり、金属製のロボットアームに比べて大幅な軽量化が可能になる。
また、樹脂Bは、樹脂Aの硬化物に対し、ガラス転移温度が高い、または曲げ弾性率が高い硬化物となる樹脂を選定することにより、ボルト締結時のクリープの発生を低減し、ボルトの緩みを防止する効果を得ることができる。
さらに、樹脂Bは、樹脂Aの硬化物に対し、引張破断強度が大きい硬化物となる樹脂を選定することにより高強度の関節フレーム100を成形することができ、硬度が大きい硬化物となる樹脂を選定することにより、精度の高い加工を行なうことができるようになる。
また、ポリイミドあるいはポリオレフィン系の高耐熱性樹脂を主材とするプリプレグ104を、第1フレーム102及び第2フレーム103の基礎フレーム101と接合される面に使用することにより、より強固に接合することが可能である。
10 第1アーム
20 第1アクチュエータ
21 本体
22 出力軸
23 外殻
30 第2アーム
40 第2アクチュエータ
41 本体
42 出力軸
43 外殻
50 ボルト
60 ボルト
100 関節フレーム
101 基礎フレーム
102 第1フレーム
103 第2フレーム
104 プリプレグ
105 第1収容部
106 第2収容部
200 金型
201 下型
202 上型
203 スライド型
204 注入ゲート
Claims (8)
- ロボットアームを有するロボットであって、
前記ロボットアームは、第1アームに連結された第1アクチュエータと、前記第1アクチュエータを収容する第1収容部を有する関節フレームとを備え、
前記第1収容部は、樹脂Aの硬化物により形成された基礎フレームと、前記樹脂Aの硬化物よりも高い融解温度を有する樹脂Bの硬化物により形成された第1フレームとを接合して構成され、
前記第1アクチュエータは、前記第1フレームに固定されたことを特徴とするロボット。 - 前記ロボットアームは、前記第1アクチュエータの回転軸に対して垂直の回転軸を有し、第2アームに連結された第2アクチュエータをさらに備え、
前記関節フレームは、前記第2アクチュエータを収容する第2収容部をさらに有し、
前記第2収容部は、前記基礎フレームと、前記樹脂Bの硬化物により形成された第2フレームを接合して構成されるとともに、
前記第2アクチュエータは、前記第2フレームに固定されたことを特徴とする請求項1記載のロボット。 - 前記樹脂Bの硬化物のガラス転移温度は、前記樹脂Aの硬化物のガラス転移温度よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
- 前記樹脂Bの硬化物の曲げ弾性率は、前記樹脂Aの硬化物の曲げ弾性率よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
- 前記樹脂Bの硬化物の引張破断強度は、前記樹脂Aの硬化物の引張破断強度よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
- 前記樹脂Bの硬化物の硬度は、前記樹脂Aの硬化物の硬度よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
- 前記基礎フレームと前記第1フレーム、または前記基礎フレームと前記第2フレームは、プリプレグを介して接合されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のロボット。
- 第1アームに連結された第1アクチュエータを収容する第1収容部を有し、前記第1収容部は、樹脂Aの硬化物により形成された基礎フレームと、前記樹脂Aの硬化物よりも高い融解温度を有する樹脂Bの硬化物により形成された第1フレームとを接合して構成された関節フレームを備えたロボットアームを有するロボットの製造方法であって、
前記樹脂Bにより前記第1フレームを形成する工程と、
前記第1フレームを金型に設置し、前記樹脂Bの硬化物の融解温度よりも低い温度により、前記金型に前記樹脂Aを射出成形することにより前記基礎フレームを形成する工程と、を有することを特徴とするロボットの製造方法。
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