JP2012096306A - 高剛性チャック及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チャックボディの半径方向の側面外周へ炭素繊維強化プラスチックを設け、チャックの把握力及び遠心力によるチャックボディの外方への変形を抑制することでチャックボディを高剛性とする。
【選択図】 図2
Description
ワークを把持するチャックは、本体を構成するチャックボディと、チャックボディに内包されて外部からの駆動力により作動される作動部と、この作動部の作用により可動しワークを把持する爪を備えている。
工作機械がワークを加工する際には、チャックによりワークを把持し、チャックを回転させて加工を行なうが、この時、加工時間の短縮や、加工精度向上のため、チャックの回転数を高回転にすることが求められている。
チャックボディへ遠心力が加わると、チャックボディの半径方向外方へ向けて外力が作用し、チャックボディが微小変形を起こす。
一般にチャックボディは、鉄鋼材料で形成され、鋼材料の高い剛性によって遠心力による変形を抑えていた。
また、回転による遠心力の影響を軽減させるために、特許文献1に示されるような遠心力補償機構を有するチャックが提案されている。
このため、前述のようなチャックの構造において、チャックボディに内包される作動部の駆動がチャックボディの変形により影響を受け、作動部の動きに微妙な変化を与えかねない。
作動部の動作の変化は、ワークを把持する爪の可動にも影響し、ワークの保持自体が安定されず、把持力の低下や加工精度の劣化などの悪影響が発生する。
この時、変形された摺動穴を作動部であるマスタージョウが摺動することで摺動動作がスムーズに行なわれず、ワークの把握力が不十分になったり、動作不良となる原因となる。
前記特許文献1に示された遠心力補償機構を有するチャックであっても前記課題を十分に解消することはできない。
また、工作機械のワークの把持に用いられるチャックボディへ炭素繊維強化プラスチックを設ける高剛性チャックの製造方法であって、炭素繊維強化プラスチックをあらかじめ円筒形状に硬化形成する工程と、硬化形成された炭素繊維強化プラスチックをチャックボディの半径方向の側面外周へ嵌合させてチャックボディへ一体化させる工程を実施することを特徴とする。
また、炭素鋼よりも軽量な炭素繊維強化プラスチックを用いて遠心力を抑制するため、従来の炭素鋼製のチャックよりも軽量且つコンパクトなチャックボディとなすことが可能となる。これにより、チャックの回転によりチャックボディへ作用する慣性モーメントが小さくなるので、回転動力源であるモーターの負荷が低減でき、回転の急激な加減速についても容易に対応でき、加工作業のタクトタイムの短縮を実現できる。
図1には、本発明の実施例におけるチャックの全体斜視図を示している。
図2には、実施例のチャックの縦断面図を示している。
図1及び図2に示すチャックは、チャックの本体を構成する略円筒形状のチャックボディ1と、チャックボディ1に内包されて外部からの駆動力により作動される作動部2と、この作動部の作用により可動しワークを把持する爪3を備えている。
駆動部2には、外部からの動力源に接続する図示しないドローナットが設けられており、このドローナットの外径へプランジャ4が設けられている。このプランジャ4は、駆動力によりチャックの回転軸芯方向の前後方向に移動可能になされている。
プランジャ4の半径方向外方には、プランジャ4と係合し、プランジャ4と一体となって軸芯方向へ移動するブッシュ5が設けられている。このブッシュ5にはマスタージョウ6を摺動可能に係合させる傾斜面7がチャック前方へ向けて形成されている。このため、プランジャ4が軸芯方向へ移動する事により、傾斜面7で係合しているマスタージョウ6がブッシュ5の傾斜面7にガイドされて摺動し、チャック半径方向へ移動される。これによりマスタージョウ5に連結された爪3が半径方向へ移動され、ワークの把持、及び解除が行なわれる。
この炭素繊維強化プラスチック8は、CFRPとも標記される複合材料であり、炭素繊維9をプラスチックの中に入れたもので強度に優れており、鉄鋼材料に比べて同じ強度・剛性であっても、より軽量化できるという特性をもつ材料である。
チャックボディ1の側面外周に設けられた炭素繊維強化プラスチック8は、炭素繊維9の束をチャックボディ1の周方向に巻いた状態で配設させ、硬化した樹脂10が炭素繊維9を含む構造で形成されている。
炭素繊維強化プラスチック8の最外層には、後述する炭素繊維クロス11が設けられている。
炭素繊維強化プラスチック8をチャックボディ1の側面外周へ設ける方法として、2通りの方法がある。
第1の方法は、炭素繊維強化プラスチック8をあらかじめ円筒形状に硬化形成し、この円筒形状の炭素繊維強化プラスチック8をチャックボディ1の半径方向の側面外周へ嵌合させてチャックボディへ機械的に一体化させて設けるものである。
別の第2の方法は、チャックボディ1の半径方向の側面外周へ未硬化の炭素繊維強化プラスチック8であるプリプレグ12を多重に巻き付け、その後、これらを加熱することによりプリプレグ12を熱硬化させて、硬化された炭素繊維強化プラスチック8をチャックボディへ一体化させて設けるものである。
炭素繊維強化プラスチック8とチャックボディ1を嵌合する方法としては、円筒形状に成形した炭素繊維強化プラスチック8をチャックボディ1の外形寸法に合わせて切削加工して、はめ合い寸法を調整して嵌合する。
この場合、成形時に用いる金型と炭素繊維強化プラスチック8の熱膨張差をできるだけ小さくするために、炭素繊維強化プラスチック8の線膨張係数に近似する線膨張係数を有する材質であるインバー材(NAS36)を金型材料として用いることが有効である。インバー材(NAS36)はFe−36%Ni合金であり、低熱膨張材として知られている。
この実施例に用いられる未硬化の炭素繊維強化プラスチック8であるプリプレグ12は、炭素繊維9に未硬化状態の樹脂10を含浸させた中間基材であり、これを成形し、加熱することで樹脂10を硬化させて、炭素繊維強化プラスチック8を得るための部材である。
他のプリプレグ12bの形状例として、糸状に形成された糸状プリプレグ12bがあり、これは、複数本の炭素繊維9を一方向に配置して一本の糸状に形成されたものである。
また、さらに他のプリプレグ12cの形状例として、複数本の炭素繊維9を組紐状に編み込んで樹脂10に含浸させた紐状プリプレグ12cなどがある。これは炭素繊維9が編みこまれているために、より大きな強度が多方向に得られる。
図4には、前述の3種のプリプレグ12をチャックボディ1へ巻き付けている状態を説明する説明図である。
図4(a)には、シート状プリプレグ12aを用いて炭素繊維強化プラスチック7を成形する状態を示している。図4(b)には、糸状プリプレグ12bを用いて炭素繊維強化プラスチック7を成形する状態を示し、図4(c)には、紐状プリプレグ12cを用いて炭素繊維強化プラスチック7を成形する状態を示している。
シート状プリプレグ12aの一端側をチャックボディ1の側面外周13の一部へ固定し、引張力を加えながら側面外周13へ巻きつけていく。
シート状プリプレグ12aは、一方向に炭素繊維が配置されるので、本実施例においては、長手方向へ炭素繊維9が設けられるようになしている。したがってチャックボディ1の円筒形状の周方向へ炭素繊維9が配置されるようになされる。また、プリプレグ12の炭素繊維含有率は50〜85%が望ましい。
本実施例では、プリプレグ12の巻き数は5〜10周を巻いて、炭素繊維強化プラスチック8の多重部位としているが、この巻き数はこれに限定されず、必要強度の度合い、成形後の炭素繊維強化プラスチック8の厚みなどにより適宜変更される。
この際に望ましくは、シート状プリプレグ12aの炭素繊維9の方向に対して45〜90°の角度で異なる方向の炭素繊維クロス11を設けることでより強靭な強度を発現できるものである。
また、このピールフライは、成形後に除去することになるが、その際に炭素繊維クロス11の外周へ除去痕が残り、表面へ微小な凹凸が形成される。この凹凸は、チャック完成後の表面処理における塗装またはメッキ処理を行う際に、塗装成分やメッキ成分が入り込むことでアンカー効果を発現し、表面処理の密着度の向上を図ることができる。さらには、前記表面処理の直前までピールフライの除去を行わないため、表面の保護を担うことにもなり、表面処理時の洗浄、サイディングを行う必要がなくなる。
さらにその外周には、熱収縮テープを巻き付けておき、後工程の加熱成形工程において、前記したプリプレグ12の積層に対してチャックの半径方向内方へ圧縮力を作用するようにする
。
また、前記熱収縮テープを加熱することで熱収縮テープの収縮作用が生じ、プリプレグ12の積層に対してチャックの半径方向内方へ圧縮力が作用する。これによりプリプレグ12がチャックボディ1へ圧縮されて硬化形成され、チャックボディ1と炭素繊維強化プラスチック8との一体化をより促進させるものである。
本実施例においては、この加熱成形工程は、乾燥炉にて2〜5時間かけて常温から140°Cまで温度上昇させ、1時間高温を維持させて加熱する。その後1時間炉内にて冷却し、常温にて空冷を実施した。しかしながら、この加熱時間、冷却時間はこの実施例に限定するものではなく、チャックボディ1の外形寸法、炭素繊維強化プラスチック8の厚み、プリプレグ12の樹脂成分の違いなどの条件により適宜最適な数値に調整されるものである。
図5にチャックに働く作用力を模式的に示した図を示す。
チャックがワークを把持する際には外部の駆動力により、プランジャ4が図5に示すP1の作用力でP1矢印方向(回転軸芯方向)へ移動される。プランジャ4の移動に伴いブッシュ5も同様に移動し、プランジャ4と同一方向へ移動する。この移動によりブッシュ5の傾斜面7にガイドされてマスタージョウ6が摺動するが、この時ワークを把持する力の反力がマスタージョウ6を介してブッシュ5に伝わり、ブッシュ5がチャック内部からチャックボディ1を半径方向の外方へ押す作用力P2が作用する。この作用力P2に対抗するために、チャックボディ1には高い剛性が必要となる。
本発明によるチャックは、このブッシュ5からの作用力P2を受けるチャックボディ1の半径方向の側面外周へ鉄鋼材料よりも高剛性の炭素繊維強化プラスチック8を設けることでチャックボディ1の外方への変形を抑制する。
3 爪
4 プランジャ
5 ブッシュ
6 マスタージョウ
8 炭素繊維強化プラスチック
9 炭素繊維
10 樹脂
12 プリプレグ
Claims (8)
- 工作機械のワークの把持に用いられるチャックであって、チャックボディの半径方向の側面外周へ炭素繊維強化プラスチックを設け、チャックの把握力及び遠心力によるチャックボディの外方への変形を抑制することを特徴とする高剛性チャック。
- 前記炭素繊維強化プラスチックが、あらかじめ円筒形状に硬化形成され、前記チャックボディの半径方向の側面外周へ嵌合されてチャックボディへ一体化されることを特徴とする請求項1に記載の高剛性チャック。
- 前記炭素繊維強化プラスチックが、前記チャックボディの半径方向の側面外周へ未硬化のプリプレグを多重に巻き付けた後に加熱により熱硬化されてチャックボディへ一体化されることを特徴とする請求項1に記載の高剛性チャック。
- 前記プリプレグが、シート形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高剛性チャック。
- 前記プリプレグが、糸状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高剛性チャック。
- 前記プリプレグが、紐形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の高剛性チャック。
- 工作機械のワークの把持に用いられるチャックボディへ炭素繊維強化プラスチックを設ける高剛性チャックの製造方法であって、炭素繊維強化プラスチックをあらかじめ円筒形状に硬化形成する工程と、硬化形成された炭素繊維強化プラスチックをチャックボディの半径方向の側面外周へ嵌合させてチャックボディへ一体化させる工程を実施することを特徴とする高剛性チャックの製造方法。
- 工作機械のワークの把持に用いられるチャックボディへ炭素繊維強化プラスチックを設ける高剛性チャックの製造方法であって、チャックボディの半径方向の側面外周へ未硬化のプリプレグを多重に巻き付ける工程と、巻き付けられたプリプレグを熱硬化させるための加熱成形工程を実施することを特徴とする高剛性チャックの製造方法。
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