JP2004293718A - 動力伝達シャフト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】FRP製パイプへのセレーションの圧入を行うことに起因する不具合を解消でき、フィラメントワインディング(FW)及び樹脂硬化工程において撓みを抑制して動力伝達シャフトを精度良く製造することを可能にする。
【解決手段】プロペラシャフトは、芯出し固定工程、FW工程、硬化工程、取外し工程及び溶着工程を経て製造される。芯出し固定工程で、被巻付け部材15と、繊維束被巻付け部13a,14aを備えた中空の端部部材13,14とを被巻付け部材15及び端部部材13,14を貫通するシャフト18に対して、治具19,20を介して芯出しした状態で一体回転可能に固定する。FW工程では芯出し固定工程が完了した組立品21をFW装置のチャックに支持してFWを行い、硬化工程では巻き付けられた樹脂含浸繊維束を硬化させる。取り外し工程で治具19,20及びシャフト18を取り外した後、端部部材13,14に継手部を溶着する。
【選択図】 図2
【解決手段】プロペラシャフトは、芯出し固定工程、FW工程、硬化工程、取外し工程及び溶着工程を経て製造される。芯出し固定工程で、被巻付け部材15と、繊維束被巻付け部13a,14aを備えた中空の端部部材13,14とを被巻付け部材15及び端部部材13,14を貫通するシャフト18に対して、治具19,20を介して芯出しした状態で一体回転可能に固定する。FW工程では芯出し固定工程が完了した組立品21をFW装置のチャックに支持してFWを行い、硬化工程では巻き付けられた樹脂含浸繊維束を硬化させる。取り外し工程で治具19,20及びシャフト18を取り外した後、端部部材13,14に継手部を溶着する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達シャフト及びその製造方法に係り、詳しくは筒状の被巻付け部材の少なくとも一端に端部部材が結合されている動力伝達シャフト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の軽量化を図るために各構造部材のさらなる軽量化が要求され、プロペラシャフトにおいてもFRP(繊維強化プラスチック)製のものに切り替えることによる軽量化が検討され、一部実施されている。FRP製プロペラシャフトとして、FRP製パイプの両端に、FRP製パイプを駆動軸や従動軸等と連結する金属製の継手(ヨーク)を圧入接合した構造のものが一般的である。FRP製パイプの製造には一般にフィラメントワインディング法が用いられる。
【0003】
そして、継手にはFRP製パイプとの接合部となる外周面に、FRP製パイプの端部内径より大きな外径のセレーションが形成されている。そして、FRP製パイプに継手の接合部を圧入することで、継手のセレーションの歯によって、FRP製パイプの内周面に溝が刻設され、歯が溝に食い込むことで継手とFRP製パイプとが一体回転するための接合強度が確保される。継手はFRP製パイプの内面とセレーションの溝の底部との間に隙間が存在する状態でFRP製パイプに結合されている。
【0004】
ところで、プロペラシャフトは、その太さや肉厚が、車両の使用トルクに応じて異なり、車両の車種に応じてプロペラシャフトの内径が異なる。そのため、FRP製プロペラシャフトに使われている継手の接合部の外径も、使用されるプロペラシャフトの内径に応じて変化する。そして、一般に継手は、駆動軸や従動軸に連結される継手部(連結部)と、FRP製パイプに圧入される接合部とが鍛造等にて一体に成形されているため、異なる車種毎に対応して多品種の継手を製造するとコストアップになる。この問題を解消するため、継手を接合部となる接合部材と、連結部となる連結部材とを溶接手段にて結合させて形成したものが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、図10(a)に示すように、外側端に中心軸55を突設した端部金具56を両端にそれぞれ嵌着した薄肉円筒57を使用してフィラメントワインディング法により製造する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この製造方法では、図10(b)に示すように、樹脂が含浸された炭素繊維58を端部金具56から薄肉円筒57にかけて連続して巻き付けて樹脂含浸炭素繊維層を形成し、そのまま硬化成形した後、必要により中心軸55を除去してプロペラシャフトを製造する。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−337343号公報(明細書の段落[0024]〜[0027]、図1〜図3)
【特許文献2】
特開昭55−118831号公報(2頁、図3、図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されたプロペラシャフトの継手は、別々に形成した連結部材と接合部材とを溶接することにより形成される。従って、継手の製造コストを低減することができる。しかし、継手を備えたFRP製パイプの製造は、従来と同様に、FRP製パイプに対して継手の接合部を嵌合させることで行われる。
【0008】
特許文献1に開示されたFRP製プロペラシャフトのように、FRP製パイプに継手の接合部を圧入する構成では、圧入時にFRP製パイプに掛かる多大な応力の対策が必要である。また、FRP製パイプの内面とセレーションの溝の底部との間に隙間が存在するため、FRP製パイプの端面から水分が侵入するのを防止するシール等の対策が必要であった。また、FRP製パイプをフィラメントワインディング法で製造する際に、マンドレルの脱型の工程が必要であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、継手に相当する端部金具56をFRP製パイプに圧入する工程やマンドレルの脱型が不要となり、シール工程も不要となる。しかし、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、マンドレルに代えて、薄肉円筒57の両端に端部金具56を嵌着したものに樹脂含浸繊維束が巻き付けられる。プロペラシャフトは車種にもよるが、長さが1m程度で細長いため、薄肉円筒57が薄いと撓みが生じ易く、芯出しされた状態でフィラメントワインディングを行うのが難しくなり、薄肉円筒57の触れが発生し易くなる。また、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、端部金具56に中心軸55が必須のため、孔を有する一対の支持部を備えたヨークタイプの継手(特許文献1に開示されたもの)を設けることができない。その結果、プロペラシャフトをドライブシャフトと連結するユニバーサルジョイントに一般的な十字軸でなく特別な構造のものが必要となるという問題もある。
【0010】
また、繊維束に含浸される樹脂の粘度が低いと、フィラメントワインディングの終了後に樹脂硬化を行う際、樹脂含浸繊維束を回転させた状態で硬化を行わないと、樹脂が下方に偏った状態で樹脂含浸繊維束が硬化されてしまう。従って、特許文献2のように薄肉円筒57の両端に端部金具56を嵌着したものに樹脂含浸繊維束を巻き付けてプロペラシャフトを製造する場合は、フィラメントワインディング時だけでなく、硬化時にも撓みによる悪影響が発生する場合がある。
【0011】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、第1の目的は、FRP製パイプへのセレーションの圧入を行うことに起因する不具合を解消でき、フィラメントワインディング及び樹脂硬化工程において撓みを抑制して精度良く製造することが可能な動力伝達シャフトを提供することにある。第2の目的は、前記動力伝達シャフトを容易に製造できるとともに、ヨークタイプの継手を設けることが可能な動力伝達シャフトの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、筒状の被巻付け部材の少なくとも一端に端部部材を備え、前記被巻付け部材及び前記端部部材の外周面にFRP製の筒部材が成形されている動力伝達シャフトであって、前記端部部材は中空に形成されている。
【0013】
この発明の動力伝達シャフトは、端部部材をFRP製の筒部材に圧入せずに形成可能なため、FRP製の筒部材へのセレーションの圧入を行うための構成に起因する従来の不具合を解消できる。また、端部部材が中空のため、少なくとも一端に端部部材を備えた筒状の被巻付け部材にフィラメントワインディング法で樹脂含浸繊維束を巻き付ける際や樹脂硬化の際に、被巻付け部材を貫通するシャフトに治具を介して固定した状態で行うことができる。そのため、被巻付け部材として薄肉の筒部材を使用しても、撓みを抑制して芯出しされた状態でフィラメントワインディングや樹脂硬化を行うことが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被巻付け部材は紙製である。この発明では、被巻付け部材が樹脂製や金属製の場合に比較して軽量化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、芯出し固定工程、フィラメントワインディング工程、硬化工程及び取外し工程を備えている。芯出し固定工程では、筒状の被巻付け部材及び外周面に係止部が形成された繊維束被巻付け部を備えた中空の端部部材を、該被巻付け部材及び該端部部材を貫通するシャフトに対して、治具を介して芯出しした状態で一体回転可能に固定する。フィラメントワインディング工程では、前記芯出し固定工程が完了した組立品をフィラメントワインディング装置の回転支持部に一体回転可能に支持した状態でフィラメントワインディングを行う。硬化工程では、フィラメントワインディング後、巻き付けられた樹脂含浸繊維束を硬化させる。取外し工程では前記硬化工程の完了後に前記治具及びシャフトを取り外す。
【0016】
この発明の方法では、マンドレルを使用せずに、端部部材が取り付けられて製品の一部を構成する被巻付け部材及び端部部材の繊維束被巻付け部に樹脂含浸繊維束が巻き付けられて硬化されることにより、端部部材がFRP製の筒部材に結合される。被巻付け部材及び端部部材は、それらを貫通するシャフトに対して、治具を介して芯出しされた状態で一体回転可能に固定される。そして、フィラメントワインディング装置の回転支持部に支持されて、フィラメントワインディングが行われる。従って、被巻付け部材が薄肉円筒であっても、フィラメントワインディングの際や樹脂硬化の際に撓みを抑制して、精度良く容易に製造することができる。また、端部部材としてヨークタイプの継手部を備えた動力伝達シャフトを容易に製造することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記治具は前記繊維束被巻付け部を除いた箇所を覆うカバー部を備えている。この発明では、端部部材は、樹脂含浸繊維束が巻き付けられる必要が無い部分をカバー部で覆われた状態でシャフトに対して固定される。従って、フィラメントワインディング後に製品として不要な樹脂含浸繊維束の除去が簡単になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記被巻付け部材及び前記端部部材の組み合わせが、前記シャフトに複数組固定され、複数組同時にフィラメントワインディング及び樹脂含浸繊維束の硬化が行われた後に、複数に分割される。この発明では、一回のフィラメントワインディングにより、複数の動力伝達シャフトが製造されるため、生産性が高くなる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材として継手部を備えないものが使用され、前記取外し工程の完了後、前記端部部材に継手部が溶着される溶着工程を備えている。この発明では、被巻付け部材及び端部部材の周囲にFRP製の筒部材が形成された後、継手部が端部部材に溶着される。従って、継手部として軸部を備えたタイプあるいはヨークタイプの区別無く、動力伝達シャフトを製造できる。また、動力伝達シャフトをプロペラシャフトとして使用する際、車種に合わせた適正な継手部を溶着することで、多品種少量生産に対応し易い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を動力伝達シャフトとしてのプロペラシャフトに具体化した一実施の形態を図1〜図7に従って説明する。図1(a)はプロペラシャフトの一部破断模式側面図、(b)は(a)のA−A線における模式拡大断面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、プロペラシャフト11は、FRP製の筒部材12と、その第1端部に接合された第1の端部部材13と、第2端部に接合された第2の端部部材14と、筒部材12の内側で第1及び第2の端部部材13,14間に配置された筒状の被巻付け部材15とを備えている。被巻付け部材15には紙製の円筒が使用されている。第1の端部部材13には自在継手を構成する継手としての金属製のヨークが使用され、第2の端部部材14には金属製の滑り継手が使用されている。筒部材12は、第1及び第2の端部部材13,14との結合部分12aが肉厚に形成されている。
【0022】
第1の端部部材13及び第2の端部部材14は、筒部材12との結合部分となる円筒状の繊維束被巻付け部13a,14aを備え、その外周面には係止部としてのセレーション16が形成されている。筒部材12の強化繊維は複数の層を構成するように巻き付けられた繊維束からなり、最内層にヘリカル巻層が設けられている。繊維束は同一層においては互いに平行に配列されており、セレーション16はその歯が繊維束の配列方向に沿って延びるように形成されている。ヘリカル巻層を構成する繊維束は、セレーション16により端部部材13,14に対する周方向への相対移動が規制されるとともに筒部材12の全長にわたって連続している。即ち、セレーション16が形成された端部部材をFRP製のパイプに後から圧入する構成と異なり、セレーション16と係合する繊維束が切断されていない。
【0023】
セレーション16の歯は、最内層のヘリカル巻層を構成する繊維束が第1及び第2の端部部材13,14の軸方向と成す角度(配列角度)に等しい角度で、第1及び第2の端部部材13,14の軸方向に対して延びるように形成されている。また、セレーション16の歯の高さ、即ち溝の深さは1層分の繊維束の厚さとほぼ同じに形成されている。
【0024】
第1及び第2の端部部材13,14は、中空に形成されるとともに、繊維束被巻付け部13a,14aを挟んで、その一端側に継手部13b,14bが溶着された円筒状の突出部13c,14cが、他端側に繊維束被巻付け部13a,14aより小径の嵌合筒部13d,14dが突設されている。継手部13b,14bは、基端に繊維束被巻付け部13a,14aの外径より小径の円筒部13e,14eを備え、円筒部13e,14eにおいて繊維束被巻付け部13a,14aの突出部13c,14cに溶着されている。第1の端部部材13の継手部13bには例えば十字軸式ジョイントを取り付けるための孔13fが形成されている。第2の端部部材14の継手部14bはシャフト状に形成されている。
【0025】
被巻付け部材15はその端部が嵌合筒部13d,14dの外周に嵌合された状態で第1及び第2の端部部材13,14に連結されている。被巻付け部材15は紙製(例えば、ボール紙製)で円筒状に形成されている。被巻付け部材15は筒部材12をフィラメントワインディング法で形成する際に、樹脂含浸繊維束が巻き付けられても所定の円筒形状を保つ強度があればよく、プロペラシャフト11が使用される際のトルク伝達に寄与する強度を有する必要はない。以下、フィラメントワインディングをFWと記載する。
【0026】
筒部材12は、第1及び第2の端部部材13,14との結合部分12aが肉厚に形成されている。筒部材12はFW法によって形成され、強化繊維としては炭素繊維のロービングが使用される。ロービングとは細い単繊維のフィラメントを多数本束ねた実質無撚りの繊維束を意味する。マトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂が使用されている。
【0027】
筒部材12は主にヘリカル巻層で構成されているが、結合部分12a及びその近くにはフープ巻層が形成されている。また、筒部材12の最外層には炭素繊維束ではなく、ポリエステル糸が全長にわたってフープ巻で巻き付けられている。図1(b)に示すように、第1の端部部材13と筒部材12との結合部分の構成は、繊維束被巻付け部13aと接触する最内層側から順に、ヘリカル巻層17a、フープ巻層17b、ヘリカル巻層17c、ポリエステル糸層17dが設けられた構成となる。
【0028】
次に前記のように構成されたプロペラシャフト11を2本同時に製造する製造方法を説明する。プロペラシャフト11を製造する際は、マンドレルを使用せずに、治具及びシャフトを使用して、第1及び第2の端部部材13,14が両端に結合された被巻付け部材15をフィラメントワインディング装置(FW装置)に支持してFWが行われる。
【0029】
図2(a)は第1の端部部材13、第2の端部部材14、被巻付け部材15、シャフト18及び治具19,20等の関係を示す模式側面図である。図2(b)は図2(a)のシャフト18及び治具19の組み付け部の一部破断部分模式断面図であり、図3は図2(a)の第1及び第2の端部部材13,14の連結部分の一部破断部分模式断面図である。図5はFW装置の模式側面図、図4は図5のB−B線における模式部分断面図である。
【0030】
図2(a)に示すように、被巻付け部材15及び端部部材13,14の組み合わせが、被巻付け部材15及び端部部材13,14を貫通するシャフト18に対して、治具19,20を介して2組固定され、この組立品21がFW装置に取り付けられてFWが行われる。
【0031】
第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の端部寄りに固定する治具19は、図2(b)に示すように、シャフト18の端部に固定される本体部22と、本体部22に一体回転可能に固定されるピンリング23とから構成されている。本体部22は軸部22aとその先端に一体に形成された嵌合筒部22bとを備えている。軸部22aの先端側にはシャフト18の端部に嵌合される嵌合穴22cが形成され、軸部22aの後端側には嵌合穴22cより小径の穴22dが形成され、嵌合穴22c及び穴22dは孔22eにより連通されている。ピンリング23は外径が嵌合筒部22bと同じに形成され、軸部22aにキーを介して一体回転可能に固定されている。ピンリング23の外周面にはピン24が一定ピッチで周方向に沿って環状に設けられている。
【0032】
シャフト18の端部には蓋体25が固着され、蓋体25の中心にはねじ孔25aが形成されている。本体部22は穴22dに頭部が収容されるとともに孔22eを貫通してねじ孔25aに螺合されるボルト26により、シャフト18に一体回転可能に固定される。
【0033】
嵌合筒部22bは突出部13c,14cの外周に嵌合可能に形成され、外径が13a,14aとほぼ同じ、かつ若干小さく形成されている。本体部22は、突出部13c,14cの先端に当接されて軸方向の位置決めが行われ、かつ嵌合筒部22bの先端と繊維束被巻付け部13a,14aとの間に隙間がある状態でシャフト18に固定される。嵌合筒部22bは、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aを除いた箇所を覆うカバー部を構成する。
【0034】
図3に示すように、第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の中央部に固定する治具20は、シャフト18に嵌挿される筒部20aの外側の軸方向の中央部にフランジ20bが形成され、その両側に嵌合筒部20cが形成されている。嵌合筒部20cは突出部13c,14cの外周に嵌合可能に形成され、外径が13a,14aとほぼ同じ、かつ若干小さく形成されている。第1及び第2の端部部材13,14は、突出部13c,14cの先端がフランジ20bに当接して軸方向の位置決めが行われ、かつ嵌合筒部20cの先端と繊維束被巻付け部13a,14aとの間に隙間がある状態でシャフト18に固定される。第1及び第2の端部部材13,14は、突出部13c,14cの外面が、嵌合筒部20cに嵌合されて、芯出しが行われるようになっている。
【0035】
図5に示すように、FW装置31は組立品21の軸部を回転可能に支持する一組の回転支持部としてのチャック32を備えている。FW装置31は、本願出願人が先に提案した装置(特開2002−283467号公報に開示された装置)と同様な巻付けヘッド(ヘリカル巻用ヘッド及びフープ巻用ヘッド)33を備えており、図5ではヘリカル巻用ヘッドのみが図示されている。巻付けヘッド33はベースプレート34上に設けられたレール35(図4に図示)上をチャック32に支持された組立品21に沿って、図示しない駆動手段により移動可能となっている。チャック32は可変速モータ(図示せず)により回転駆動され、制御装置Cの指令によってチャック32が巻付けヘッド33の移動速度と同期した状態で回転駆動される。そして、図示しない繊維束供給部から樹脂含浸装置を経て供給される樹脂含浸繊維束Rを、組立品21に対する巻付け角度を任意の角度に設定して巻き付けることができるようになっている。なお、以下、樹脂含浸繊維束Rを単に繊維束Rと称す場合もある。
【0036】
図4に示すように、巻付けヘッド33は、組立品21に貫通される孔を有する支持板36を備えている。ヘリカル巻用ヘッドの支持板36には、複数本の繊維束を同時に組立品21に対してヘリカル巻で巻付け可能とするため、図4に示すように複数のガイド37が組立品21の周方向に沿って配列された状態で設けられている。この実施の形態では28本の繊維束を案内可能にそれぞれ28個の大小2種のガイド37が2個の同心円上に配列されている。フープ巻部を備えたフープ巻用ヘッドは、繊維束Rを組立品21に対して2本同時にフープ巻で巻付け可能とするためのガイドを備えている。ヘリカル巻用ヘッドとフープ巻用ヘッドとは一体的な移動と、独立した状態での移動とが可能に構成されている。そして、多数本の繊維束Rを同時に組立品21に対してヘリカル巻で巻付け可能となり、ヘリカル巻用ヘッドが組立品21に沿って一回往動又は復動することで組立品21の全周面に亘って繊維束Rがヘリカル巻で巻き付けられる。
【0037】
プロペラシャフト11は、芯出し固定工程、フィラメントワインディング工程、硬化工程、取外し工程及び溶着工程を経て製造される。先ず芯出し固定工程では、シャフト18に第1及び第2の端部部材13,14が、シャフト18の異なる端部からそれぞれ突出部13c,14c側から1個ずつ遊挿されるとともに、治具20に嵌合固定される。第1及び第2の端部部材13,14は突出部13c,14cが治具20の嵌合筒部20cと嵌合して、芯出しされた状態で固定される。
【0038】
次に被巻付け部材15がシャフト18に、シャフト18の異なる端部からそれぞれ1個ずつ遊挿されるとともに、第1及び第2の端部部材13,14の嵌合筒部13d,14dに嵌合される。次に第1及び第2の端部部材13,14がそれぞれ嵌合筒部13d,14d側からシャフト18に遊挿されるとともに、嵌合筒部13d,14dが被巻付け部材15に嵌合される。次に、治具19の本体部22が、嵌合筒部22b側からシャフト18に嵌挿され、嵌合筒部22bが第1及び第2の端部部材13,14の突出部13c,14cに嵌合される。その状態でボルト26が穴22dに入れられ、孔22eを貫通して蓋体25のねじ孔25aに螺着される。その結果、二組の被巻付け部材15及び端部部材13,14が、シャフト18に対して芯出しされた状態で一体回転可能に固定された状態となる。
【0039】
次にピンリング23が治具19の軸部22aに嵌合される。ピンリング23はキーを介して軸部22aに一体回転可能に固定される。以上により、芯出し固定工程が完了し、被巻付け部材15及び端部部材13,14を二組備えた組立品21が完成する。なお、治具19,20及びピンリング23には、樹脂含浸繊維束Rが固着しないように離型剤が塗布された状態で組み付けられる。
【0040】
次にFW工程において、組立品21をFW装置31のチャック32に支持した状態でFWが行われる。FWを行う場合は、作業者により組立品21がFW装置31のチャック32に支持される。次に作業者は、繊維束供給部から繊維束を引き出し、開繊機構、樹脂含浸槽、張力調整部等を経て巻付けヘッド33に導き、巻付けヘッド33のガイド37に挿通した後、繊維束Rの端部を組立品21の一端側の治具19の所定位置に固定する。繊維束Rの端部の固定作業は作業者が手作業で行い、例えば粘着テープを使用して行われる。
【0041】
また、作業者は、FW時の回転速度、巻付けヘッド33の巻付け時の往復移動幅等の巻付け条件を制御装置Cに入力する。繊維束として炭素繊維のロービングが使用される。ロービングとは細い単繊維のフィラメントを多数本束ねた実質無撚りの繊維束を意味する。
【0042】
次にFW装置31による繊維束Rの巻付け運転が開始される。FW装置31が駆動されると、組立品21が一定方向に回転され、巻付けヘッド33が組立品21の長手方向に沿って往復移動される。繊維束Rは少なくとも最内層となる一層目がヘリカル巻層を形成するように、組立品21の軸方向となす角度(巻付け角度)が所定の角度となるように巻き付けられる。巻付け角度は製品のFRP製パイプに要求される、曲げ、ねじり、振動等の特性を満足する所定の値(例えば、10〜15°)に設定される。そして、この巻付け角度がセレーション16の歯の延びる方向と軸方向との成す角度と同じため、繊維束Rはセレーション16の溝内に配列されるように巻き付けられる。また、繊維束Rはピンリング23に設けられたピン24の間を通過するように巻き付けられ、ピン24によってピンリング23の周方向への移動が規制された状態で巻き付けられる。
【0043】
ヘリカル巻層が所定層(例えば4層)形成された後、第1及び第2の端部部材13,14と対応する部分及び被巻付け部材15の第1及び第2の端部部材13,14の近傍部に、繊維束Rの巻付け角度がほぼ90°に近い状態で巻き付けられる所謂フープ巻層が所定層(例えば1層)形成される。その後、再びヘリカル巻層が所定層(例えば2層)形成された段階で樹脂含浸繊維束Rの巻き付けが完了する。次にポリエステル糸がフープ巻で巻き付けられる。ポリエステル糸が巻き付けられる際に、内側に巻き付けられている繊維束Rに含浸されている樹脂の一部が染み出しポリエステル糸の表面が樹脂で被覆された状態となる。
【0044】
ポリエステル糸の巻付けが完了した後、組立品21上に形成された成形体38(図6に図示)の両端部が、ピン24の突設位置より繊維束被巻付け部13a,14a寄りとなる位置、例えばピンリング23と嵌合筒部22bとの境と対向する位置でそれぞれ切断される。そして、繊維束供給部に繋がる繊維束Rから成形体38が切り離された後、組立品21がFW装置31のチャック32から取り外され、成形体38の未硬化の段階で、前記切断位置より軸部22a側に巻き付けられた樹脂含浸繊維束Rが除去される。
【0045】
その後、硬化工程で、組立品21が成形体38と共に加熱炉に入れられ、回転されながら所定温度で樹脂が硬化される。硬化温度は樹脂により異なるが、例えばエポキシ樹脂の場合は180℃程度である。
【0046】
硬化工程の完了後、取外し工程において、成形体38が繊維束被巻付け部13a,14aと、治具19の嵌合筒部22bの先端との間に対応する位置及び繊維束被巻付け部13a,14aと、治具20の嵌合筒部20cの先端との間に対応する位置で切断される。図6に示すように、切断はカッター39により行われる。次にボルト26とねじ孔25aとの螺合を解除して、両治具19が取り外された後、2個の成形体38がシャフト18から取り外される。
【0047】
次に溶着工程において、第1及び第2の端部部材13,14に継手部13b,14bが摩擦圧接により溶着される。継手部13bを第1の端部部材13に溶着する際には、筒部材12を固定し、継手部13b側を回転させた状態で、継手部13bの円筒部13eの端面を突出部13cの端面に圧接させる。摩擦圧接装置(図示せず)には、図7に鎖線で示すように、突出部13cと係合して突出部13cを芯出しした状態で支持する金属製の芯出し支持部40が設けられている。そして、芯出し支持部40が突出部13cと係合することにより、突出部13cはその回転が阻止された状態で支持されて摩擦圧接が行われる。
【0048】
また、継手部14bも同様にして第2の端部部材14の突出部14cに摩擦圧接により溶着される。そして、継手部13b,14bの溶着が完了すると、プロペラシャフト11が完成する。
【0049】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 筒状の被巻付け部材15の両端に端部部材13,14を備え、かつ被巻付け部材15及び端部部材13,14の外周面に樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられて硬化されたFRP製の筒部材12を備えている。従って、FRP製の筒部材12への第1及び第2の端部部材13,14の圧入を行うことに起因する不具合を解消できる。
【0050】
(2) 端部部材13,14が中空のため、両端に端部部材13,14を備えた筒状の被巻付け部材15にFW法で樹脂含浸繊維束Rを巻き付ける際や樹脂硬化の際に、被巻付け部材15を貫通するシャフト18に治具19,20を介して固定した状態で行うことができる。従って、被巻付け部材15として薄肉円筒を使用しても、撓みを抑制して芯出しされた状態でFWや樹脂硬化を行うことが可能となり、軸ずれや曲がりが発生し難い。
【0051】
(3) 被巻付け部材15は紙製であるため、被巻付け部材15が樹脂製や金属製の場合に比較して軽量化することができる。また、径の異なる被巻付け部材15を製造する場合、例えば、金属製の筒に紙を巻き付けることで被巻付け部材15を製造できる。従って、金属や樹脂を型から押し出して被巻付け部材を形成したり、マンドレルに樹脂含浸繊維束を巻き付けて加熱硬化し、脱型して熱硬化性樹脂製の被巻付け部材を製造する場合に比較して、被巻付け部材15のサイズ変更が容易で、種々の動力伝達シャフトに対応し易い。
【0052】
(4) マンドレルを使用せずに、製品の一部を構成する被巻付け部材15及び端部部材13,14が、それらを貫通するシャフト18に対して、樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられる必要が無い部分を嵌合筒部20c,22bで覆われた状態で治具19,20を介して芯出しされた状態で一体回転可能に固定される。そして、FW装置31のチャック32に支持されて、FWが行われる。従って、被巻付け部材15が薄肉円筒であっても、FWの際や樹脂硬化の際に撓みを抑制して、精度良く容易に製造することができる。また、端部部材13としてヨークタイプの継手部13bを備えた動力伝達シャフトを容易に製造することができる。
【0053】
(5) 被巻付け部材15及び端部部材13,14の組み合わせが、シャフト18に複数組固定され、複数組同時にFW及び樹脂含浸繊維束の硬化が行われた後に、複数に分割される。従って、一回のFWにより、複数のプロペラシャフト11を製造できるため、生産性が高くなる。また、複数の筒部材12を形成する箇所に連続して樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられるため、1本ずつ形成する場合に比較して、繊維束の歩留まりが良くなり、強化繊維に炭素繊維やポリアラミド繊維等の比較的高価なものを使用した場合、コスト低減に寄与する。
【0054】
(6) シャフト18の中央部に配置される第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18に対して芯出しした状態で固定する治具20は、シャフト18の中央に固着されている。従って、シャフト18にその両端から第1及び第2の端部部材13,14を遊挿することで第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の所定位置に簡単に固定することができる。
【0055】
(7) 端部部材13,14として継手部13b,14bを備えないものが使用され、取外し工程完了後、端部部材13,14に継手部13b,14bが溶着される。従って、継手部13b,14bとして軸部を備えたタイプあるいはヨークタイプの区別無く、動力伝達シャフトを製造できる。また、動力伝達シャフトをプロペラシャフト11として使用する際、車種に合わせた適正な継手部13b,14bを溶着することで、多品種少量生産に対応し易い。
【0056】
(8) 端部部材13,14には外周面に係止部(セレーション16)が形成され、筒部材12の強化繊維は最内層にヘリカル巻層が設けられ、係止部により端部部材13,14に対する周方向への相対移動が規制されるとともに全長にわたって連続するように配列されている。従って、端部部材13,14間のねじり強度が、FRP製の筒部材に端部部材のセレーションを圧入して製造されたプロペラシャフトに比較して大きくなり、回転トルクの伝達が良好に行われる。
【0057】
(9) 治具19はFW時に樹脂含浸繊維束Rの配列を規制するピン24が突設されたピンリング23を備えている。従って、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aに巻き付けられる樹脂含浸繊維束Rの巻付け角度が適正な値に規制され、プロペラシャフト11のねじり強度の向上に寄与する。
【0058】
なお、実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇 複数本のプロペラシャフト11を1回のFWで同時に形成する場合、シャフト18を複数に分割可能に構成してもよい。例えば、2本のプロペラシャフト11を同時に形成する際、図8(a),(b)示すように、シャフト18を、治具19が組み付けられる側と反対側の端部に雄ねじ部41aが形成されたシャフト18aと、治具19が組み付けられる側と反対側の端部に雌ねじ部41bが形成されたシャフト18bとで構成する。そして、治具20を雌ねじ部41bが形成されたシャフト18bに固着する。この場合、シャフト18を保管する際や組み付ける際に、シャフト18を短く重量の軽い分割されたシャフト18a,18bの状態で取り扱えるため、保管スペースの確保や取りまわしがよくなる。
【0059】
〇 シャフト18に治具19を介して第1及び第2の端部部材13,14を芯出しした状態で固定してFW装置31に支持する組立品21として、チャック32に支持される部分を治具19の軸部22aとする構成に代えて、シャフト18の端部をチャック32に支持する構成としてもよい。例えば、図9に示すように、シャフト18を長く形成するとともに、治具19の本体部22をシャフト18に貫通される筒状に形成する。そして、例えば、ボルト42により本体部22をシャフト18に対して一体回転可能に固定する。この場合、前記実施の形態においてシャフト18の端部に固着した蓋体25が不要となるため、構成が簡単になる。
【0060】
〇 ピンリング23が治具19の本体部22に取り外し可能に固定された構成に限らず、ピンリング23が本体部22に一体形成された構成としてもよい。また、ピン24を省略してもよい。
【0061】
〇 プロペラシャフト11の製造は、複数本のプロペラシャフト11を1回のFWで同時に形成する方法に限らず、1本ずつ形成してもよい。1本ずつ形成する場合は、1組の端部部材13,14と被巻付け部材15との組合わせを治具19を介して組み付けるのに適した長さのシャフト18を使用して、1本のシャフト18に端部部材13,14及び被巻付け部材15を1組分組み付けて、FW等を同様に行う。
【0062】
〇 シャフト18を3本以上に分割する場合は、中間に配置されるシャフトとして、一端に雌ねじ部41b有するとともに治具20が固着され、他端に雄ねじ部41aを有するものを使用することにより対応できる。
【0063】
〇 ヨークタイプの継手部13bを備えた第1の端部部材13を継手として備えるプロペラシャフト11の場合は、継手部13bをFW後に溶着する代わりに、継手部13bを備えた第1の端部部材13を最初からシャフト18に固定してFWを行ってもよい。なお、継手部13bにはシャフト18が貫通可能な孔が形成されており、その孔は、FW、樹脂硬化、治具19,20等の取り外し完了後に、必要に応じて塞がれる。但し、ヨーク径が繊維束被巻付け部13aの外径より大きいと、継手部13bを嵌合筒部22bで覆った状態で、嵌合筒部22bと繊維束被巻付け部13aとの間に段差部が存在する状態となるため、繊維束Rをセレーション16の溝内に配列するのが困難となる。従って、治具19の嵌合筒部22bの外径を繊維束被巻付け部13aの外径より大きくせずに、継手部13bが嵌合筒部22bに収容できる大きさの場合に可能となる。この場合、FW後に継手部13bを溶着する工程が不要となる。
【0064】
〇 被巻付け部材15は樹脂含浸繊維束Rを巻き付ける際に変形しない程度の強度を持つものであればよく、紙製に限らず樹脂製や金属製としてもよい。樹脂製とする場合は、成形体38を硬化させる際の温度で変形し難いものが好ましい。金属製とする場合は、軽量で耐熱性及び剛性の高い金属で形成されたものが好ましい。この場合も紙製より被巻付け部材15の真円精度が高く、回転バランスが良くなる。
【0065】
○ 繊維束被巻付け部13a,14aの外周面に形成される係止部は、最内層に形成されるヘリカル巻層を構成する繊維束Rが該係止部により第1及び第2の端部部材13,14に対する周方向への相対移動を規制可能な形状であればよく、セレーション16に限らない。例えば、繊維束Rの配列方向に沿って延びるように形成された複数の凸条や、軸方向に対する配列角度が互いに反対となるヘリカル巻層を構成するいずれの繊維束Rに対してもその配列を案内可能な多数の凸部(例えば、ピン)を係止部として設けてもよい。凸部が設けられた端部部材13,14を使用した場合は、同一層において繊維束Rが互いに平行に配列される構成は必ずしも必要ではない。同時に巻き付ける繊維束の本数が1本の一般的なFW装置を使用してヘリカル巻層を形成しても、繊維束が係止部によって案内されて所定の巻付け角度で良好に配列される。
【0066】
〇 被巻付け部材15として熱硬化性樹脂を含浸、硬化させた紙製としてもよい。この場合も樹脂製の被巻付け部材15を使用した場合と同様な効果が得られる他に、熱硬化性樹脂だけで被巻付け部材15を製造する場合に比較して製造が簡単になる。
【0067】
〇 端部部材の組み合わせは、ヨークタイプの第1の端部部材13と、シャフトを有するタイプの第2の端部部材14との組み合わせに限られない。例えば、プロペラシャフト11の使用態様に応じて、ヨークタイプの第1の端部部材13が筒部材12の両端に結合された構成や、シャフトを有するタイプの第2の端部部材14が筒部材12の両端に結合された構成としてもよい。これらのプロペラシャフト11も前記各実施の形態と同様にして製造することができる。
【0068】
○ 筒部材12は必ずしも結合部分12aの肉厚が厚く形成されるものに限らず、全長にわたって一定の厚さであってもよい。両端部部材13,14はFRP製の筒部材12に後から圧入するのではなく、各端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aに樹脂が含浸された繊維束Rを巻き付けて硬化させることにより形成される。従って、圧入時にFRP製の筒部材12に掛かる応力に対抗する機能を有するフープ巻層17bの層数を少なくしたり省略してもよい。省略した場合は、筒部材12は全長にわたって一定の厚さとなり、軽量化にも寄与する。
【0069】
○ 筒部材12の最内層を構成し、互いに交差せずに配列される繊維束は、ヘリカル巻に限らず、フープ巻であってもよい。この場合、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aの外周面に形成される係止部として、ねじ状の溝が形成される。また、フープ巻の範囲はFRP製の筒部材12の全長に亘ってもよいし、繊維束被巻付け部13a,14aを覆う部分のみでもよい。
【0070】
〇 成形体38の硬化前には繊維束供給部に繋がる繊維束の切断だけを行い、不要な部分の除去は成形体38の硬化後に、ピン24を抜いた状態で除去するようにしてもよい。
【0071】
○ セレーション16の歯の高さ、即ち溝の深さは1層分の繊維束の厚さとほぼ同じに限らず、最内層の繊維束の厚さの1/4層程度〜1層分あれば充分である。
【0072】
○ 治具19,20と端部部材13,14とを連結する際、端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aと、治具19,20との隙間から、樹脂が治具19,20の内側に入り込むのを防止した状態で繊維束Rの巻き付けを行ってもよい。例えば、耐熱性のテープを端部部材13,14と治具19,20に跨るように巻き付ける。ここで言う「耐熱性のテープ」とは、FWの後の樹脂の硬化時の温度で溶融しないテープを意味する。この場合、治具19,20と端部部材13,14との連結を解除する際、治具19,20の取り外しが難くなるのを防止することができる。
【0073】
○ 治具19,20は、端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aを除いた箇所を覆うカバー部を備えていなくてもよい。例えば、端部部材13,14の突出部13c,14cの内径を嵌合筒部22b,20cの外径より大きく形成し、突出部13c,14cが嵌合筒部22b,20cの外側に嵌合するように構成する。この場合、嵌合筒部22b,20cはカバー部として機能しない。
【0074】
○ 突出部13c,14cと継手部13b,14bとの溶着は、摩擦圧接に限らず、例えば、溶接によって両者を溶着してもよい。
○ 動力伝達シャフトは、プロペラシャフト11に限定されず、その他の動力伝達シャフトに適用してもよい。
【0075】
○ 筒部材12の形状は全体を円筒状とするものに限定されず、両端部を円筒状とし、中間部を多角形筒状としてもよい。その場合、被巻付け部材15も対応する多角形筒状に形成される。
【0076】
○ 筒部材12の材料であるFRPは、強化繊維として炭素繊維を、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を使用したものに限らない。例えば、強化繊維として、アラミド繊維、ガラス繊維等の一般に高弾性・高強度といわれるその他の繊維を採用したり、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等のその他の熱硬化性樹脂を採用してもよい。しかし、プロペラシャフト11の場合は、炭素繊維とエポキシ樹脂の組み合わせが強度やコストの点で好ましい。
【0077】
○ FRPのマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であることに限定されない。例えば紫外線硬化樹脂をマトリックス樹脂として使用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
【0078】
(1) 請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記端部部材には外周面に係止部が形成されている。
(2) 請求項1、請求項2及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材には継手部が溶着により固着されている。
【0079】
(3) 請求項1、請求項2及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材は少なくとも一方がヨークタイプの継手部を備えている。
【0080】
(4) 請求項5に記載の発明において、前記シャフトは前記被巻付け部材及び前記端部部材の組合せの数に分割可能に形成されている。
【0081】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1及び請求項2に記載の発明の動力伝達シャフトによれば、FRP製パイプへのセレーションの圧入を行うことに起因する不具合を解消できる。また、フィラメントワインディング及び樹脂硬化工程において撓みを抑制して精度良く製造することが可能になる。また、請求項3〜請求項6に記載の発明によれば、前記動力伝達シャフトを容易に製造できるとともに、ヨークタイプの継手を設けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は一実施の形態のプロペラシャフトの一部破断側面図、(b)は(a)のA−A線における模式拡大断面図。
【図2】(a)は被巻付け部材及び治具等が組み付けられた状態の模式図、(b)は(a)の部分拡大部分断面図。
【図3】図2(a)の部分拡大部分断面図。
【図4】図5のB−B線における模式拡大断面図。
【図5】FW装置の部分概略図。
【図6】FWにより成形体が形成された状態の部分模式断面図。
【図7】摩擦圧接を説明する模式部分断面図。
【図8】(a)は別の実施の形態の治具とシャフトの関係を示す模式側面図、(b)はシャフトの連結状態を示す模式断面図。
【図9】別の実施の形態の治具とシャフトの関係を示す模式断面図。
【図10】(a),(b)は従来技術のプロペラシャフトの製法を示す模式斜視図。
【符号の説明】
R…樹脂含浸繊維束、11…動力伝達シャフトとしてのプロペラシャフト、12…筒部材、13,14…端部部材、13a,14a…繊維束被巻付け部、13b,14b…継手部、15…被巻付け部材、16…係止部としてのセレーション、18,18a,18b…シャフト、19,20…治具、20c,22b…カバー部としての嵌合筒部、21…組立品、31…FW装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達シャフト及びその製造方法に係り、詳しくは筒状の被巻付け部材の少なくとも一端に端部部材が結合されている動力伝達シャフト及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両の軽量化を図るために各構造部材のさらなる軽量化が要求され、プロペラシャフトにおいてもFRP(繊維強化プラスチック)製のものに切り替えることによる軽量化が検討され、一部実施されている。FRP製プロペラシャフトとして、FRP製パイプの両端に、FRP製パイプを駆動軸や従動軸等と連結する金属製の継手(ヨーク)を圧入接合した構造のものが一般的である。FRP製パイプの製造には一般にフィラメントワインディング法が用いられる。
【0003】
そして、継手にはFRP製パイプとの接合部となる外周面に、FRP製パイプの端部内径より大きな外径のセレーションが形成されている。そして、FRP製パイプに継手の接合部を圧入することで、継手のセレーションの歯によって、FRP製パイプの内周面に溝が刻設され、歯が溝に食い込むことで継手とFRP製パイプとが一体回転するための接合強度が確保される。継手はFRP製パイプの内面とセレーションの溝の底部との間に隙間が存在する状態でFRP製パイプに結合されている。
【0004】
ところで、プロペラシャフトは、その太さや肉厚が、車両の使用トルクに応じて異なり、車両の車種に応じてプロペラシャフトの内径が異なる。そのため、FRP製プロペラシャフトに使われている継手の接合部の外径も、使用されるプロペラシャフトの内径に応じて変化する。そして、一般に継手は、駆動軸や従動軸に連結される継手部(連結部)と、FRP製パイプに圧入される接合部とが鍛造等にて一体に成形されているため、異なる車種毎に対応して多品種の継手を製造するとコストアップになる。この問題を解消するため、継手を接合部となる接合部材と、連結部となる連結部材とを溶接手段にて結合させて形成したものが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、図10(a)に示すように、外側端に中心軸55を突設した端部金具56を両端にそれぞれ嵌着した薄肉円筒57を使用してフィラメントワインディング法により製造する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この製造方法では、図10(b)に示すように、樹脂が含浸された炭素繊維58を端部金具56から薄肉円筒57にかけて連続して巻き付けて樹脂含浸炭素繊維層を形成し、そのまま硬化成形した後、必要により中心軸55を除去してプロペラシャフトを製造する。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−337343号公報(明細書の段落[0024]〜[0027]、図1〜図3)
【特許文献2】
特開昭55−118831号公報(2頁、図3、図4)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されたプロペラシャフトの継手は、別々に形成した連結部材と接合部材とを溶接することにより形成される。従って、継手の製造コストを低減することができる。しかし、継手を備えたFRP製パイプの製造は、従来と同様に、FRP製パイプに対して継手の接合部を嵌合させることで行われる。
【0008】
特許文献1に開示されたFRP製プロペラシャフトのように、FRP製パイプに継手の接合部を圧入する構成では、圧入時にFRP製パイプに掛かる多大な応力の対策が必要である。また、FRP製パイプの内面とセレーションの溝の底部との間に隙間が存在するため、FRP製パイプの端面から水分が侵入するのを防止するシール等の対策が必要であった。また、FRP製パイプをフィラメントワインディング法で製造する際に、マンドレルの脱型の工程が必要であった。
【0009】
一方、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、継手に相当する端部金具56をFRP製パイプに圧入する工程やマンドレルの脱型が不要となり、シール工程も不要となる。しかし、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、マンドレルに代えて、薄肉円筒57の両端に端部金具56を嵌着したものに樹脂含浸繊維束が巻き付けられる。プロペラシャフトは車種にもよるが、長さが1m程度で細長いため、薄肉円筒57が薄いと撓みが生じ易く、芯出しされた状態でフィラメントワインディングを行うのが難しくなり、薄肉円筒57の触れが発生し易くなる。また、特許文献2に開示されたプロペラシャフトでは、端部金具56に中心軸55が必須のため、孔を有する一対の支持部を備えたヨークタイプの継手(特許文献1に開示されたもの)を設けることができない。その結果、プロペラシャフトをドライブシャフトと連結するユニバーサルジョイントに一般的な十字軸でなく特別な構造のものが必要となるという問題もある。
【0010】
また、繊維束に含浸される樹脂の粘度が低いと、フィラメントワインディングの終了後に樹脂硬化を行う際、樹脂含浸繊維束を回転させた状態で硬化を行わないと、樹脂が下方に偏った状態で樹脂含浸繊維束が硬化されてしまう。従って、特許文献2のように薄肉円筒57の両端に端部金具56を嵌着したものに樹脂含浸繊維束を巻き付けてプロペラシャフトを製造する場合は、フィラメントワインディング時だけでなく、硬化時にも撓みによる悪影響が発生する場合がある。
【0011】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、第1の目的は、FRP製パイプへのセレーションの圧入を行うことに起因する不具合を解消でき、フィラメントワインディング及び樹脂硬化工程において撓みを抑制して精度良く製造することが可能な動力伝達シャフトを提供することにある。第2の目的は、前記動力伝達シャフトを容易に製造できるとともに、ヨークタイプの継手を設けることが可能な動力伝達シャフトの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、筒状の被巻付け部材の少なくとも一端に端部部材を備え、前記被巻付け部材及び前記端部部材の外周面にFRP製の筒部材が成形されている動力伝達シャフトであって、前記端部部材は中空に形成されている。
【0013】
この発明の動力伝達シャフトは、端部部材をFRP製の筒部材に圧入せずに形成可能なため、FRP製の筒部材へのセレーションの圧入を行うための構成に起因する従来の不具合を解消できる。また、端部部材が中空のため、少なくとも一端に端部部材を備えた筒状の被巻付け部材にフィラメントワインディング法で樹脂含浸繊維束を巻き付ける際や樹脂硬化の際に、被巻付け部材を貫通するシャフトに治具を介して固定した状態で行うことができる。そのため、被巻付け部材として薄肉の筒部材を使用しても、撓みを抑制して芯出しされた状態でフィラメントワインディングや樹脂硬化を行うことが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被巻付け部材は紙製である。この発明では、被巻付け部材が樹脂製や金属製の場合に比較して軽量化することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、芯出し固定工程、フィラメントワインディング工程、硬化工程及び取外し工程を備えている。芯出し固定工程では、筒状の被巻付け部材及び外周面に係止部が形成された繊維束被巻付け部を備えた中空の端部部材を、該被巻付け部材及び該端部部材を貫通するシャフトに対して、治具を介して芯出しした状態で一体回転可能に固定する。フィラメントワインディング工程では、前記芯出し固定工程が完了した組立品をフィラメントワインディング装置の回転支持部に一体回転可能に支持した状態でフィラメントワインディングを行う。硬化工程では、フィラメントワインディング後、巻き付けられた樹脂含浸繊維束を硬化させる。取外し工程では前記硬化工程の完了後に前記治具及びシャフトを取り外す。
【0016】
この発明の方法では、マンドレルを使用せずに、端部部材が取り付けられて製品の一部を構成する被巻付け部材及び端部部材の繊維束被巻付け部に樹脂含浸繊維束が巻き付けられて硬化されることにより、端部部材がFRP製の筒部材に結合される。被巻付け部材及び端部部材は、それらを貫通するシャフトに対して、治具を介して芯出しされた状態で一体回転可能に固定される。そして、フィラメントワインディング装置の回転支持部に支持されて、フィラメントワインディングが行われる。従って、被巻付け部材が薄肉円筒であっても、フィラメントワインディングの際や樹脂硬化の際に撓みを抑制して、精度良く容易に製造することができる。また、端部部材としてヨークタイプの継手部を備えた動力伝達シャフトを容易に製造することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記治具は前記繊維束被巻付け部を除いた箇所を覆うカバー部を備えている。この発明では、端部部材は、樹脂含浸繊維束が巻き付けられる必要が無い部分をカバー部で覆われた状態でシャフトに対して固定される。従って、フィラメントワインディング後に製品として不要な樹脂含浸繊維束の除去が簡単になる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記被巻付け部材及び前記端部部材の組み合わせが、前記シャフトに複数組固定され、複数組同時にフィラメントワインディング及び樹脂含浸繊維束の硬化が行われた後に、複数に分割される。この発明では、一回のフィラメントワインディングにより、複数の動力伝達シャフトが製造されるため、生産性が高くなる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材として継手部を備えないものが使用され、前記取外し工程の完了後、前記端部部材に継手部が溶着される溶着工程を備えている。この発明では、被巻付け部材及び端部部材の周囲にFRP製の筒部材が形成された後、継手部が端部部材に溶着される。従って、継手部として軸部を備えたタイプあるいはヨークタイプの区別無く、動力伝達シャフトを製造できる。また、動力伝達シャフトをプロペラシャフトとして使用する際、車種に合わせた適正な継手部を溶着することで、多品種少量生産に対応し易い。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を動力伝達シャフトとしてのプロペラシャフトに具体化した一実施の形態を図1〜図7に従って説明する。図1(a)はプロペラシャフトの一部破断模式側面図、(b)は(a)のA−A線における模式拡大断面図である。
【0021】
図1(a)に示すように、プロペラシャフト11は、FRP製の筒部材12と、その第1端部に接合された第1の端部部材13と、第2端部に接合された第2の端部部材14と、筒部材12の内側で第1及び第2の端部部材13,14間に配置された筒状の被巻付け部材15とを備えている。被巻付け部材15には紙製の円筒が使用されている。第1の端部部材13には自在継手を構成する継手としての金属製のヨークが使用され、第2の端部部材14には金属製の滑り継手が使用されている。筒部材12は、第1及び第2の端部部材13,14との結合部分12aが肉厚に形成されている。
【0022】
第1の端部部材13及び第2の端部部材14は、筒部材12との結合部分となる円筒状の繊維束被巻付け部13a,14aを備え、その外周面には係止部としてのセレーション16が形成されている。筒部材12の強化繊維は複数の層を構成するように巻き付けられた繊維束からなり、最内層にヘリカル巻層が設けられている。繊維束は同一層においては互いに平行に配列されており、セレーション16はその歯が繊維束の配列方向に沿って延びるように形成されている。ヘリカル巻層を構成する繊維束は、セレーション16により端部部材13,14に対する周方向への相対移動が規制されるとともに筒部材12の全長にわたって連続している。即ち、セレーション16が形成された端部部材をFRP製のパイプに後から圧入する構成と異なり、セレーション16と係合する繊維束が切断されていない。
【0023】
セレーション16の歯は、最内層のヘリカル巻層を構成する繊維束が第1及び第2の端部部材13,14の軸方向と成す角度(配列角度)に等しい角度で、第1及び第2の端部部材13,14の軸方向に対して延びるように形成されている。また、セレーション16の歯の高さ、即ち溝の深さは1層分の繊維束の厚さとほぼ同じに形成されている。
【0024】
第1及び第2の端部部材13,14は、中空に形成されるとともに、繊維束被巻付け部13a,14aを挟んで、その一端側に継手部13b,14bが溶着された円筒状の突出部13c,14cが、他端側に繊維束被巻付け部13a,14aより小径の嵌合筒部13d,14dが突設されている。継手部13b,14bは、基端に繊維束被巻付け部13a,14aの外径より小径の円筒部13e,14eを備え、円筒部13e,14eにおいて繊維束被巻付け部13a,14aの突出部13c,14cに溶着されている。第1の端部部材13の継手部13bには例えば十字軸式ジョイントを取り付けるための孔13fが形成されている。第2の端部部材14の継手部14bはシャフト状に形成されている。
【0025】
被巻付け部材15はその端部が嵌合筒部13d,14dの外周に嵌合された状態で第1及び第2の端部部材13,14に連結されている。被巻付け部材15は紙製(例えば、ボール紙製)で円筒状に形成されている。被巻付け部材15は筒部材12をフィラメントワインディング法で形成する際に、樹脂含浸繊維束が巻き付けられても所定の円筒形状を保つ強度があればよく、プロペラシャフト11が使用される際のトルク伝達に寄与する強度を有する必要はない。以下、フィラメントワインディングをFWと記載する。
【0026】
筒部材12は、第1及び第2の端部部材13,14との結合部分12aが肉厚に形成されている。筒部材12はFW法によって形成され、強化繊維としては炭素繊維のロービングが使用される。ロービングとは細い単繊維のフィラメントを多数本束ねた実質無撚りの繊維束を意味する。マトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂が使用されている。
【0027】
筒部材12は主にヘリカル巻層で構成されているが、結合部分12a及びその近くにはフープ巻層が形成されている。また、筒部材12の最外層には炭素繊維束ではなく、ポリエステル糸が全長にわたってフープ巻で巻き付けられている。図1(b)に示すように、第1の端部部材13と筒部材12との結合部分の構成は、繊維束被巻付け部13aと接触する最内層側から順に、ヘリカル巻層17a、フープ巻層17b、ヘリカル巻層17c、ポリエステル糸層17dが設けられた構成となる。
【0028】
次に前記のように構成されたプロペラシャフト11を2本同時に製造する製造方法を説明する。プロペラシャフト11を製造する際は、マンドレルを使用せずに、治具及びシャフトを使用して、第1及び第2の端部部材13,14が両端に結合された被巻付け部材15をフィラメントワインディング装置(FW装置)に支持してFWが行われる。
【0029】
図2(a)は第1の端部部材13、第2の端部部材14、被巻付け部材15、シャフト18及び治具19,20等の関係を示す模式側面図である。図2(b)は図2(a)のシャフト18及び治具19の組み付け部の一部破断部分模式断面図であり、図3は図2(a)の第1及び第2の端部部材13,14の連結部分の一部破断部分模式断面図である。図5はFW装置の模式側面図、図4は図5のB−B線における模式部分断面図である。
【0030】
図2(a)に示すように、被巻付け部材15及び端部部材13,14の組み合わせが、被巻付け部材15及び端部部材13,14を貫通するシャフト18に対して、治具19,20を介して2組固定され、この組立品21がFW装置に取り付けられてFWが行われる。
【0031】
第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の端部寄りに固定する治具19は、図2(b)に示すように、シャフト18の端部に固定される本体部22と、本体部22に一体回転可能に固定されるピンリング23とから構成されている。本体部22は軸部22aとその先端に一体に形成された嵌合筒部22bとを備えている。軸部22aの先端側にはシャフト18の端部に嵌合される嵌合穴22cが形成され、軸部22aの後端側には嵌合穴22cより小径の穴22dが形成され、嵌合穴22c及び穴22dは孔22eにより連通されている。ピンリング23は外径が嵌合筒部22bと同じに形成され、軸部22aにキーを介して一体回転可能に固定されている。ピンリング23の外周面にはピン24が一定ピッチで周方向に沿って環状に設けられている。
【0032】
シャフト18の端部には蓋体25が固着され、蓋体25の中心にはねじ孔25aが形成されている。本体部22は穴22dに頭部が収容されるとともに孔22eを貫通してねじ孔25aに螺合されるボルト26により、シャフト18に一体回転可能に固定される。
【0033】
嵌合筒部22bは突出部13c,14cの外周に嵌合可能に形成され、外径が13a,14aとほぼ同じ、かつ若干小さく形成されている。本体部22は、突出部13c,14cの先端に当接されて軸方向の位置決めが行われ、かつ嵌合筒部22bの先端と繊維束被巻付け部13a,14aとの間に隙間がある状態でシャフト18に固定される。嵌合筒部22bは、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aを除いた箇所を覆うカバー部を構成する。
【0034】
図3に示すように、第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の中央部に固定する治具20は、シャフト18に嵌挿される筒部20aの外側の軸方向の中央部にフランジ20bが形成され、その両側に嵌合筒部20cが形成されている。嵌合筒部20cは突出部13c,14cの外周に嵌合可能に形成され、外径が13a,14aとほぼ同じ、かつ若干小さく形成されている。第1及び第2の端部部材13,14は、突出部13c,14cの先端がフランジ20bに当接して軸方向の位置決めが行われ、かつ嵌合筒部20cの先端と繊維束被巻付け部13a,14aとの間に隙間がある状態でシャフト18に固定される。第1及び第2の端部部材13,14は、突出部13c,14cの外面が、嵌合筒部20cに嵌合されて、芯出しが行われるようになっている。
【0035】
図5に示すように、FW装置31は組立品21の軸部を回転可能に支持する一組の回転支持部としてのチャック32を備えている。FW装置31は、本願出願人が先に提案した装置(特開2002−283467号公報に開示された装置)と同様な巻付けヘッド(ヘリカル巻用ヘッド及びフープ巻用ヘッド)33を備えており、図5ではヘリカル巻用ヘッドのみが図示されている。巻付けヘッド33はベースプレート34上に設けられたレール35(図4に図示)上をチャック32に支持された組立品21に沿って、図示しない駆動手段により移動可能となっている。チャック32は可変速モータ(図示せず)により回転駆動され、制御装置Cの指令によってチャック32が巻付けヘッド33の移動速度と同期した状態で回転駆動される。そして、図示しない繊維束供給部から樹脂含浸装置を経て供給される樹脂含浸繊維束Rを、組立品21に対する巻付け角度を任意の角度に設定して巻き付けることができるようになっている。なお、以下、樹脂含浸繊維束Rを単に繊維束Rと称す場合もある。
【0036】
図4に示すように、巻付けヘッド33は、組立品21に貫通される孔を有する支持板36を備えている。ヘリカル巻用ヘッドの支持板36には、複数本の繊維束を同時に組立品21に対してヘリカル巻で巻付け可能とするため、図4に示すように複数のガイド37が組立品21の周方向に沿って配列された状態で設けられている。この実施の形態では28本の繊維束を案内可能にそれぞれ28個の大小2種のガイド37が2個の同心円上に配列されている。フープ巻部を備えたフープ巻用ヘッドは、繊維束Rを組立品21に対して2本同時にフープ巻で巻付け可能とするためのガイドを備えている。ヘリカル巻用ヘッドとフープ巻用ヘッドとは一体的な移動と、独立した状態での移動とが可能に構成されている。そして、多数本の繊維束Rを同時に組立品21に対してヘリカル巻で巻付け可能となり、ヘリカル巻用ヘッドが組立品21に沿って一回往動又は復動することで組立品21の全周面に亘って繊維束Rがヘリカル巻で巻き付けられる。
【0037】
プロペラシャフト11は、芯出し固定工程、フィラメントワインディング工程、硬化工程、取外し工程及び溶着工程を経て製造される。先ず芯出し固定工程では、シャフト18に第1及び第2の端部部材13,14が、シャフト18の異なる端部からそれぞれ突出部13c,14c側から1個ずつ遊挿されるとともに、治具20に嵌合固定される。第1及び第2の端部部材13,14は突出部13c,14cが治具20の嵌合筒部20cと嵌合して、芯出しされた状態で固定される。
【0038】
次に被巻付け部材15がシャフト18に、シャフト18の異なる端部からそれぞれ1個ずつ遊挿されるとともに、第1及び第2の端部部材13,14の嵌合筒部13d,14dに嵌合される。次に第1及び第2の端部部材13,14がそれぞれ嵌合筒部13d,14d側からシャフト18に遊挿されるとともに、嵌合筒部13d,14dが被巻付け部材15に嵌合される。次に、治具19の本体部22が、嵌合筒部22b側からシャフト18に嵌挿され、嵌合筒部22bが第1及び第2の端部部材13,14の突出部13c,14cに嵌合される。その状態でボルト26が穴22dに入れられ、孔22eを貫通して蓋体25のねじ孔25aに螺着される。その結果、二組の被巻付け部材15及び端部部材13,14が、シャフト18に対して芯出しされた状態で一体回転可能に固定された状態となる。
【0039】
次にピンリング23が治具19の軸部22aに嵌合される。ピンリング23はキーを介して軸部22aに一体回転可能に固定される。以上により、芯出し固定工程が完了し、被巻付け部材15及び端部部材13,14を二組備えた組立品21が完成する。なお、治具19,20及びピンリング23には、樹脂含浸繊維束Rが固着しないように離型剤が塗布された状態で組み付けられる。
【0040】
次にFW工程において、組立品21をFW装置31のチャック32に支持した状態でFWが行われる。FWを行う場合は、作業者により組立品21がFW装置31のチャック32に支持される。次に作業者は、繊維束供給部から繊維束を引き出し、開繊機構、樹脂含浸槽、張力調整部等を経て巻付けヘッド33に導き、巻付けヘッド33のガイド37に挿通した後、繊維束Rの端部を組立品21の一端側の治具19の所定位置に固定する。繊維束Rの端部の固定作業は作業者が手作業で行い、例えば粘着テープを使用して行われる。
【0041】
また、作業者は、FW時の回転速度、巻付けヘッド33の巻付け時の往復移動幅等の巻付け条件を制御装置Cに入力する。繊維束として炭素繊維のロービングが使用される。ロービングとは細い単繊維のフィラメントを多数本束ねた実質無撚りの繊維束を意味する。
【0042】
次にFW装置31による繊維束Rの巻付け運転が開始される。FW装置31が駆動されると、組立品21が一定方向に回転され、巻付けヘッド33が組立品21の長手方向に沿って往復移動される。繊維束Rは少なくとも最内層となる一層目がヘリカル巻層を形成するように、組立品21の軸方向となす角度(巻付け角度)が所定の角度となるように巻き付けられる。巻付け角度は製品のFRP製パイプに要求される、曲げ、ねじり、振動等の特性を満足する所定の値(例えば、10〜15°)に設定される。そして、この巻付け角度がセレーション16の歯の延びる方向と軸方向との成す角度と同じため、繊維束Rはセレーション16の溝内に配列されるように巻き付けられる。また、繊維束Rはピンリング23に設けられたピン24の間を通過するように巻き付けられ、ピン24によってピンリング23の周方向への移動が規制された状態で巻き付けられる。
【0043】
ヘリカル巻層が所定層(例えば4層)形成された後、第1及び第2の端部部材13,14と対応する部分及び被巻付け部材15の第1及び第2の端部部材13,14の近傍部に、繊維束Rの巻付け角度がほぼ90°に近い状態で巻き付けられる所謂フープ巻層が所定層(例えば1層)形成される。その後、再びヘリカル巻層が所定層(例えば2層)形成された段階で樹脂含浸繊維束Rの巻き付けが完了する。次にポリエステル糸がフープ巻で巻き付けられる。ポリエステル糸が巻き付けられる際に、内側に巻き付けられている繊維束Rに含浸されている樹脂の一部が染み出しポリエステル糸の表面が樹脂で被覆された状態となる。
【0044】
ポリエステル糸の巻付けが完了した後、組立品21上に形成された成形体38(図6に図示)の両端部が、ピン24の突設位置より繊維束被巻付け部13a,14a寄りとなる位置、例えばピンリング23と嵌合筒部22bとの境と対向する位置でそれぞれ切断される。そして、繊維束供給部に繋がる繊維束Rから成形体38が切り離された後、組立品21がFW装置31のチャック32から取り外され、成形体38の未硬化の段階で、前記切断位置より軸部22a側に巻き付けられた樹脂含浸繊維束Rが除去される。
【0045】
その後、硬化工程で、組立品21が成形体38と共に加熱炉に入れられ、回転されながら所定温度で樹脂が硬化される。硬化温度は樹脂により異なるが、例えばエポキシ樹脂の場合は180℃程度である。
【0046】
硬化工程の完了後、取外し工程において、成形体38が繊維束被巻付け部13a,14aと、治具19の嵌合筒部22bの先端との間に対応する位置及び繊維束被巻付け部13a,14aと、治具20の嵌合筒部20cの先端との間に対応する位置で切断される。図6に示すように、切断はカッター39により行われる。次にボルト26とねじ孔25aとの螺合を解除して、両治具19が取り外された後、2個の成形体38がシャフト18から取り外される。
【0047】
次に溶着工程において、第1及び第2の端部部材13,14に継手部13b,14bが摩擦圧接により溶着される。継手部13bを第1の端部部材13に溶着する際には、筒部材12を固定し、継手部13b側を回転させた状態で、継手部13bの円筒部13eの端面を突出部13cの端面に圧接させる。摩擦圧接装置(図示せず)には、図7に鎖線で示すように、突出部13cと係合して突出部13cを芯出しした状態で支持する金属製の芯出し支持部40が設けられている。そして、芯出し支持部40が突出部13cと係合することにより、突出部13cはその回転が阻止された状態で支持されて摩擦圧接が行われる。
【0048】
また、継手部14bも同様にして第2の端部部材14の突出部14cに摩擦圧接により溶着される。そして、継手部13b,14bの溶着が完了すると、プロペラシャフト11が完成する。
【0049】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 筒状の被巻付け部材15の両端に端部部材13,14を備え、かつ被巻付け部材15及び端部部材13,14の外周面に樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられて硬化されたFRP製の筒部材12を備えている。従って、FRP製の筒部材12への第1及び第2の端部部材13,14の圧入を行うことに起因する不具合を解消できる。
【0050】
(2) 端部部材13,14が中空のため、両端に端部部材13,14を備えた筒状の被巻付け部材15にFW法で樹脂含浸繊維束Rを巻き付ける際や樹脂硬化の際に、被巻付け部材15を貫通するシャフト18に治具19,20を介して固定した状態で行うことができる。従って、被巻付け部材15として薄肉円筒を使用しても、撓みを抑制して芯出しされた状態でFWや樹脂硬化を行うことが可能となり、軸ずれや曲がりが発生し難い。
【0051】
(3) 被巻付け部材15は紙製であるため、被巻付け部材15が樹脂製や金属製の場合に比較して軽量化することができる。また、径の異なる被巻付け部材15を製造する場合、例えば、金属製の筒に紙を巻き付けることで被巻付け部材15を製造できる。従って、金属や樹脂を型から押し出して被巻付け部材を形成したり、マンドレルに樹脂含浸繊維束を巻き付けて加熱硬化し、脱型して熱硬化性樹脂製の被巻付け部材を製造する場合に比較して、被巻付け部材15のサイズ変更が容易で、種々の動力伝達シャフトに対応し易い。
【0052】
(4) マンドレルを使用せずに、製品の一部を構成する被巻付け部材15及び端部部材13,14が、それらを貫通するシャフト18に対して、樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられる必要が無い部分を嵌合筒部20c,22bで覆われた状態で治具19,20を介して芯出しされた状態で一体回転可能に固定される。そして、FW装置31のチャック32に支持されて、FWが行われる。従って、被巻付け部材15が薄肉円筒であっても、FWの際や樹脂硬化の際に撓みを抑制して、精度良く容易に製造することができる。また、端部部材13としてヨークタイプの継手部13bを備えた動力伝達シャフトを容易に製造することができる。
【0053】
(5) 被巻付け部材15及び端部部材13,14の組み合わせが、シャフト18に複数組固定され、複数組同時にFW及び樹脂含浸繊維束の硬化が行われた後に、複数に分割される。従って、一回のFWにより、複数のプロペラシャフト11を製造できるため、生産性が高くなる。また、複数の筒部材12を形成する箇所に連続して樹脂含浸繊維束Rが巻き付けられるため、1本ずつ形成する場合に比較して、繊維束の歩留まりが良くなり、強化繊維に炭素繊維やポリアラミド繊維等の比較的高価なものを使用した場合、コスト低減に寄与する。
【0054】
(6) シャフト18の中央部に配置される第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18に対して芯出しした状態で固定する治具20は、シャフト18の中央に固着されている。従って、シャフト18にその両端から第1及び第2の端部部材13,14を遊挿することで第1及び第2の端部部材13,14をシャフト18の所定位置に簡単に固定することができる。
【0055】
(7) 端部部材13,14として継手部13b,14bを備えないものが使用され、取外し工程完了後、端部部材13,14に継手部13b,14bが溶着される。従って、継手部13b,14bとして軸部を備えたタイプあるいはヨークタイプの区別無く、動力伝達シャフトを製造できる。また、動力伝達シャフトをプロペラシャフト11として使用する際、車種に合わせた適正な継手部13b,14bを溶着することで、多品種少量生産に対応し易い。
【0056】
(8) 端部部材13,14には外周面に係止部(セレーション16)が形成され、筒部材12の強化繊維は最内層にヘリカル巻層が設けられ、係止部により端部部材13,14に対する周方向への相対移動が規制されるとともに全長にわたって連続するように配列されている。従って、端部部材13,14間のねじり強度が、FRP製の筒部材に端部部材のセレーションを圧入して製造されたプロペラシャフトに比較して大きくなり、回転トルクの伝達が良好に行われる。
【0057】
(9) 治具19はFW時に樹脂含浸繊維束Rの配列を規制するピン24が突設されたピンリング23を備えている。従って、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aに巻き付けられる樹脂含浸繊維束Rの巻付け角度が適正な値に規制され、プロペラシャフト11のねじり強度の向上に寄与する。
【0058】
なお、実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇 複数本のプロペラシャフト11を1回のFWで同時に形成する場合、シャフト18を複数に分割可能に構成してもよい。例えば、2本のプロペラシャフト11を同時に形成する際、図8(a),(b)示すように、シャフト18を、治具19が組み付けられる側と反対側の端部に雄ねじ部41aが形成されたシャフト18aと、治具19が組み付けられる側と反対側の端部に雌ねじ部41bが形成されたシャフト18bとで構成する。そして、治具20を雌ねじ部41bが形成されたシャフト18bに固着する。この場合、シャフト18を保管する際や組み付ける際に、シャフト18を短く重量の軽い分割されたシャフト18a,18bの状態で取り扱えるため、保管スペースの確保や取りまわしがよくなる。
【0059】
〇 シャフト18に治具19を介して第1及び第2の端部部材13,14を芯出しした状態で固定してFW装置31に支持する組立品21として、チャック32に支持される部分を治具19の軸部22aとする構成に代えて、シャフト18の端部をチャック32に支持する構成としてもよい。例えば、図9に示すように、シャフト18を長く形成するとともに、治具19の本体部22をシャフト18に貫通される筒状に形成する。そして、例えば、ボルト42により本体部22をシャフト18に対して一体回転可能に固定する。この場合、前記実施の形態においてシャフト18の端部に固着した蓋体25が不要となるため、構成が簡単になる。
【0060】
〇 ピンリング23が治具19の本体部22に取り外し可能に固定された構成に限らず、ピンリング23が本体部22に一体形成された構成としてもよい。また、ピン24を省略してもよい。
【0061】
〇 プロペラシャフト11の製造は、複数本のプロペラシャフト11を1回のFWで同時に形成する方法に限らず、1本ずつ形成してもよい。1本ずつ形成する場合は、1組の端部部材13,14と被巻付け部材15との組合わせを治具19を介して組み付けるのに適した長さのシャフト18を使用して、1本のシャフト18に端部部材13,14及び被巻付け部材15を1組分組み付けて、FW等を同様に行う。
【0062】
〇 シャフト18を3本以上に分割する場合は、中間に配置されるシャフトとして、一端に雌ねじ部41b有するとともに治具20が固着され、他端に雄ねじ部41aを有するものを使用することにより対応できる。
【0063】
〇 ヨークタイプの継手部13bを備えた第1の端部部材13を継手として備えるプロペラシャフト11の場合は、継手部13bをFW後に溶着する代わりに、継手部13bを備えた第1の端部部材13を最初からシャフト18に固定してFWを行ってもよい。なお、継手部13bにはシャフト18が貫通可能な孔が形成されており、その孔は、FW、樹脂硬化、治具19,20等の取り外し完了後に、必要に応じて塞がれる。但し、ヨーク径が繊維束被巻付け部13aの外径より大きいと、継手部13bを嵌合筒部22bで覆った状態で、嵌合筒部22bと繊維束被巻付け部13aとの間に段差部が存在する状態となるため、繊維束Rをセレーション16の溝内に配列するのが困難となる。従って、治具19の嵌合筒部22bの外径を繊維束被巻付け部13aの外径より大きくせずに、継手部13bが嵌合筒部22bに収容できる大きさの場合に可能となる。この場合、FW後に継手部13bを溶着する工程が不要となる。
【0064】
〇 被巻付け部材15は樹脂含浸繊維束Rを巻き付ける際に変形しない程度の強度を持つものであればよく、紙製に限らず樹脂製や金属製としてもよい。樹脂製とする場合は、成形体38を硬化させる際の温度で変形し難いものが好ましい。金属製とする場合は、軽量で耐熱性及び剛性の高い金属で形成されたものが好ましい。この場合も紙製より被巻付け部材15の真円精度が高く、回転バランスが良くなる。
【0065】
○ 繊維束被巻付け部13a,14aの外周面に形成される係止部は、最内層に形成されるヘリカル巻層を構成する繊維束Rが該係止部により第1及び第2の端部部材13,14に対する周方向への相対移動を規制可能な形状であればよく、セレーション16に限らない。例えば、繊維束Rの配列方向に沿って延びるように形成された複数の凸条や、軸方向に対する配列角度が互いに反対となるヘリカル巻層を構成するいずれの繊維束Rに対してもその配列を案内可能な多数の凸部(例えば、ピン)を係止部として設けてもよい。凸部が設けられた端部部材13,14を使用した場合は、同一層において繊維束Rが互いに平行に配列される構成は必ずしも必要ではない。同時に巻き付ける繊維束の本数が1本の一般的なFW装置を使用してヘリカル巻層を形成しても、繊維束が係止部によって案内されて所定の巻付け角度で良好に配列される。
【0066】
〇 被巻付け部材15として熱硬化性樹脂を含浸、硬化させた紙製としてもよい。この場合も樹脂製の被巻付け部材15を使用した場合と同様な効果が得られる他に、熱硬化性樹脂だけで被巻付け部材15を製造する場合に比較して製造が簡単になる。
【0067】
〇 端部部材の組み合わせは、ヨークタイプの第1の端部部材13と、シャフトを有するタイプの第2の端部部材14との組み合わせに限られない。例えば、プロペラシャフト11の使用態様に応じて、ヨークタイプの第1の端部部材13が筒部材12の両端に結合された構成や、シャフトを有するタイプの第2の端部部材14が筒部材12の両端に結合された構成としてもよい。これらのプロペラシャフト11も前記各実施の形態と同様にして製造することができる。
【0068】
○ 筒部材12は必ずしも結合部分12aの肉厚が厚く形成されるものに限らず、全長にわたって一定の厚さであってもよい。両端部部材13,14はFRP製の筒部材12に後から圧入するのではなく、各端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aに樹脂が含浸された繊維束Rを巻き付けて硬化させることにより形成される。従って、圧入時にFRP製の筒部材12に掛かる応力に対抗する機能を有するフープ巻層17bの層数を少なくしたり省略してもよい。省略した場合は、筒部材12は全長にわたって一定の厚さとなり、軽量化にも寄与する。
【0069】
○ 筒部材12の最内層を構成し、互いに交差せずに配列される繊維束は、ヘリカル巻に限らず、フープ巻であってもよい。この場合、第1及び第2の端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aの外周面に形成される係止部として、ねじ状の溝が形成される。また、フープ巻の範囲はFRP製の筒部材12の全長に亘ってもよいし、繊維束被巻付け部13a,14aを覆う部分のみでもよい。
【0070】
〇 成形体38の硬化前には繊維束供給部に繋がる繊維束の切断だけを行い、不要な部分の除去は成形体38の硬化後に、ピン24を抜いた状態で除去するようにしてもよい。
【0071】
○ セレーション16の歯の高さ、即ち溝の深さは1層分の繊維束の厚さとほぼ同じに限らず、最内層の繊維束の厚さの1/4層程度〜1層分あれば充分である。
【0072】
○ 治具19,20と端部部材13,14とを連結する際、端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aと、治具19,20との隙間から、樹脂が治具19,20の内側に入り込むのを防止した状態で繊維束Rの巻き付けを行ってもよい。例えば、耐熱性のテープを端部部材13,14と治具19,20に跨るように巻き付ける。ここで言う「耐熱性のテープ」とは、FWの後の樹脂の硬化時の温度で溶融しないテープを意味する。この場合、治具19,20と端部部材13,14との連結を解除する際、治具19,20の取り外しが難くなるのを防止することができる。
【0073】
○ 治具19,20は、端部部材13,14の繊維束被巻付け部13a,14aを除いた箇所を覆うカバー部を備えていなくてもよい。例えば、端部部材13,14の突出部13c,14cの内径を嵌合筒部22b,20cの外径より大きく形成し、突出部13c,14cが嵌合筒部22b,20cの外側に嵌合するように構成する。この場合、嵌合筒部22b,20cはカバー部として機能しない。
【0074】
○ 突出部13c,14cと継手部13b,14bとの溶着は、摩擦圧接に限らず、例えば、溶接によって両者を溶着してもよい。
○ 動力伝達シャフトは、プロペラシャフト11に限定されず、その他の動力伝達シャフトに適用してもよい。
【0075】
○ 筒部材12の形状は全体を円筒状とするものに限定されず、両端部を円筒状とし、中間部を多角形筒状としてもよい。その場合、被巻付け部材15も対応する多角形筒状に形成される。
【0076】
○ 筒部材12の材料であるFRPは、強化繊維として炭素繊維を、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を使用したものに限らない。例えば、強化繊維として、アラミド繊維、ガラス繊維等の一般に高弾性・高強度といわれるその他の繊維を採用したり、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等のその他の熱硬化性樹脂を採用してもよい。しかし、プロペラシャフト11の場合は、炭素繊維とエポキシ樹脂の組み合わせが強度やコストの点で好ましい。
【0077】
○ FRPのマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であることに限定されない。例えば紫外線硬化樹脂をマトリックス樹脂として使用してもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
【0078】
(1) 請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記端部部材には外周面に係止部が形成されている。
(2) 請求項1、請求項2及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材には継手部が溶着により固着されている。
【0079】
(3) 請求項1、請求項2及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の発明において、前記端部部材は少なくとも一方がヨークタイプの継手部を備えている。
【0080】
(4) 請求項5に記載の発明において、前記シャフトは前記被巻付け部材及び前記端部部材の組合せの数に分割可能に形成されている。
【0081】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1及び請求項2に記載の発明の動力伝達シャフトによれば、FRP製パイプへのセレーションの圧入を行うことに起因する不具合を解消できる。また、フィラメントワインディング及び樹脂硬化工程において撓みを抑制して精度良く製造することが可能になる。また、請求項3〜請求項6に記載の発明によれば、前記動力伝達シャフトを容易に製造できるとともに、ヨークタイプの継手を設けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は一実施の形態のプロペラシャフトの一部破断側面図、(b)は(a)のA−A線における模式拡大断面図。
【図2】(a)は被巻付け部材及び治具等が組み付けられた状態の模式図、(b)は(a)の部分拡大部分断面図。
【図3】図2(a)の部分拡大部分断面図。
【図4】図5のB−B線における模式拡大断面図。
【図5】FW装置の部分概略図。
【図6】FWにより成形体が形成された状態の部分模式断面図。
【図7】摩擦圧接を説明する模式部分断面図。
【図8】(a)は別の実施の形態の治具とシャフトの関係を示す模式側面図、(b)はシャフトの連結状態を示す模式断面図。
【図9】別の実施の形態の治具とシャフトの関係を示す模式断面図。
【図10】(a),(b)は従来技術のプロペラシャフトの製法を示す模式斜視図。
【符号の説明】
R…樹脂含浸繊維束、11…動力伝達シャフトとしてのプロペラシャフト、12…筒部材、13,14…端部部材、13a,14a…繊維束被巻付け部、13b,14b…継手部、15…被巻付け部材、16…係止部としてのセレーション、18,18a,18b…シャフト、19,20…治具、20c,22b…カバー部としての嵌合筒部、21…組立品、31…FW装置。
Claims (6)
- 筒状の被巻付け部材の少なくとも一端に端部部材を備え、前記被巻付け部材及び前記端部部材の外周面に繊維強化プラスチック製の筒部材が成形されている動力伝達シャフトであって、
前記端部部材は中空に形成されている動力伝達シャフト。 - 前記被巻付け部材は紙製である請求項1に記載の動力伝達シャフト。
- 筒状の被巻付け部材及び外周面に係止部が形成された繊維束被巻付け部を備えた中空の端部部材を、該被巻付け部材及び該端部部材を貫通するシャフトに対して、治具を介して芯出しした状態で一体回転可能に固定する芯出し固定工程と、
前記芯出し固定工程が完了した組立品をフィラメントワインディング装置の回転支持部に一体回転可能に支持した状態でフィラメントワインディングを行うフィラメントワインディング工程と、
フィラメントワインディング後、巻き付けられた樹脂含浸繊維束を硬化させる硬化工程と、
前記硬化工程の完了後に前記治具及びシャフトを取り外す取外し工程と
を備えた動力伝達シャフトの製造方法。 - 前記治具は前記繊維束被巻付け部を除いた箇所を覆うカバー部を備えている請求項3に記載の動力伝達シャフトの製造方法。
- 前記被巻付け部材及び前記端部部材の組み合わせが、前記シャフトに複数組固定され、複数組同時にフィラメントワインディング及び樹脂含浸繊維束の硬化が行われた後に、複数に分割される請求項3又は請求項4に記載の動力伝達シャフトの製造方法。
- 前記端部部材として継手部を備えないものが使用され、前記取外し工程完了後、前記端部部材に継手部が溶着される溶着工程を備えた請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の動力伝達シャフトの製造方法。
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